説明

電子内視鏡装置

【課題】拡大操作で親画面の画像が電子拡大された場合でも、子画面には、電子拡大されていない動画を表示し、被観察体の状態等を良好に観察・把握できるようにする。
【解決手段】CCD11の撮像に基づいて被観察体の動画及び静止画を形成すると共に、主電子拡大回路23を用いて任意倍率の電子拡大画像を形成し、静止画の親画面に動画の子画面を表示する電子内視鏡装置で、上記主電子拡大回路23で電子拡大されない動画で、子画面用に縮小変換された動画を形成する子画面用縮小回路18を設け、フリーズスイッチ14の操作と拡大スイッチ15の操作が行われたとき、拡大された静止画を親画面に表示し、この親画面の右下の子画面に、上記子画面用縮小回路18で得られた電子拡大しない動画を表示する。また、この子画面に表示する動画の大きさは、補助電子拡大回路24により設定された固定倍率で拡大することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子内視鏡装置、特に電子内視鏡で撮像された被観察体の動画、静止画及び電子拡大画像をモニタ上に設定された親画面及び子画面に表示することのできる電子内視鏡装置の画像形成及び表示の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子内視鏡装置が消化器官等の体腔内の観察のために用いられており、この電子内視鏡装置では、光照明された被観察体が電子内視鏡(スコープ)の先端部に搭載された例えば固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device)で撮像され、このCCDからの撮像信号をプロセッサ装置へ供給し、このプロセッサ装置にて所定の信号処理を施すことにより、被観察体画像がモニタに表示される。このモニタ上には、被観察体の動画が表示されると共に、例えばフリーズスイッチ(静止画形成釦等)により静止画が形成・表示され、この静止画はレリーズスイッチ(記録トリガー)によりハードコピー、デジタルファイリング装置等の記録装置に記録される。
そして、このような電子内視鏡装置では、同一のモニタ上に親画面と子画面の領域が設定され、親画面に静止画を表示するとき、子画面に被観察体の動画を表示することが行われる。
【0003】
図4には、従来の電子内視鏡装置の親子画面に関する画像形成のための回路構成が示されており、この画像形成の回路として、所定の画像処理が施された画像データを記憶する画像メモリ1、拡大スイッチの拡大及び縮小の操作に基づいて任意の倍率で画像を拡大する電子拡大回路2、この電子拡大回路2からの画像信号を入力し、画像を子画面の大きさに縮小(子画面用の画像に縮小変換)する子画面用縮小回路3、上記電子拡大回路2から出力された親画面の画像に子画面用縮小回路3から出力された子画面の画像を重ね合わせるオーバーレイ回路4が設けられる。
【0004】
このような構成によれば、通常では、画面全体を用いて被観察体の動画が表示され、フリーズスイッチの操作が行われたとき、図5(A)に示されるように、モニタの画面全体の親画面6aに静止画が表示されると共に、例えば右下に設定された子画面6bに動画が縮小表示される。次いで、拡大スイッチにより拡大操作が行われたときは、上記電子拡大回路2で画像拡大処理が行われ、図5(B)に示されるように、親画面6aに拡大された静止画が表示されると共に、子画面6bにも、拡大された動画が表示される。そして、図5(A)の静止画又は図5(B)の拡大された静止画は、レリーズスイッチを操作することにより記録装置へ記録される。
【特許文献1】特開2002−291694号公報
【特許文献2】特開2003−93339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電子内視鏡装置では、図5(B)で説明したように、拡大スイッチに基づいて画像が拡大されると、子画面6bの画像も拡大された状態の画像(動画)となり、広い範囲の被観察体の状態を把握し難いという問題があった。即ち、親画面6aには、フリーズスイッチが操作された時点の静止画が表示されるのに対し、子画面6bには、現時点の被観察体内の動画が表示されており、この子画面6bにおいて、現在の被観察体の状態を確認・把握するためには、拡大された画像よりも、被観察体を広く観察できる拡大前の画像の方が好ましい。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、拡大操作で親画面の画像が電子拡大された場合でも、子画面には、電子拡大されていない動画を表示し、被観察体の状態等を良好に観察・把握することができる電子内視鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、撮像素子の出力信号に基づき被観察体の動画及び静止画を形成する画像形成機能と、拡大操作に基づき撮像素子の出力信号から被観察体の任意倍率の電子拡大画像を形成する主電子拡大(親画面用電子拡大)機能とを有し、同一モニタの画面上に設定された親画面と子画面に、被観察体の画像を表示する電子内視鏡装置において、上記主電子拡大機能により電子拡大されない動画で、子画面用に縮小変換された動画を形成する子画面動画形成回路を設け、上記主電子拡大機能で形成された電子拡大画像を親画面に表示するとき、上記子画面動画形成回路で縮小変換された動画を上記子画面に表示するように制御することを特徴とする。
請求項2の発明は、被観察体の静止画を形成するためのフリーズ操作が行われたとき、上記主電子拡大機能で形成された拡大静止画を親画面に表示すると共に、上記子画面動画形成回路により縮小変換された動画を子画面に表示することを特徴とする。
請求項3の発明は、上記子画面動画形成回路に、子画面用に縮小変換された動画を子画面用に設定された固定倍率で拡大する補助電子拡大(子画面用電子拡大)機能を備え、この子画面用固定倍率で拡大された動画を子画面に表示することを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、例えばフリーズ操作が行われると、親画面には動画に代わって静止画が表示され、右下等に現れた子画面に動画が表示され、次いで拡大操作が行われると、主電子拡大機能で拡大された静止画が親画面に表示されるが、子画面には拡大されない状態の動画が継続して表示される。そして、レリーズ操作が行われると、拡大された静止画が記録装置に記録される。また、フリーズ操作が行われず、単に拡大操作が行われた場合に、親画面に拡大した動画を表示し、出現させた子画面に拡大しない動画を表示するようにしてもよい。
【0009】
また、請求項3の構成によれば、補助電子拡大機能により、子画面用に縮小変換された動画が任意の固定倍率で拡大され、子画面の大きさはそのままで、CCD等で得られたサイズの動画より少し大きくした(画像自体を拡大した)動画が子画面に表示される。即ち、プロセッサ装置のユーザーメニュー等の設定画面で、キーボード等を利用して子画面用動画の固定倍率を設定することにより、子画面に表示される動画の大きさを、観察し易い任意の倍率、例えば1.4倍、2倍等の倍率に拡大することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子内視鏡装置によれば、拡大操作により親画面の画像が任意倍率で電子拡大された場合でも、子画面には、電子拡大されていない動画が表示されるので、この子画面では、親画面の被観察体画像よりも視野の広い動画を視認することができ、被観察体の状況を良好に観察・把握することが可能になる。
【0011】
また、請求項3の発明によれば、親画面の画像拡大に関係なく、子画面の画像の固定倍率を予め任意に設定することができ、子画面の動画を被観察部位、観察状況、手術状況、術者の要望等に合わせた大きさとして、被観察体を更に観察し易く、把握し易くすることが可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1には、実施例に係る電子内視鏡装置の構成が示されており、この電子内視鏡装置は、電子内視鏡(電子スコープ)、プロセッサ装置、モニタ等を有して構成される。図1に示されるように、被観察体を撮像するCCD(固体撮像素子)11、このCCD11から出力された撮像信号をアナログ/デジタル変換するA/D変換器12等が電子内視鏡に搭載され、この電子内視鏡の操作部等に、静止画の表示(1段目又は1回目の操作)と記録(2段目又は2回目の操作)の両方を操作するフリーズスイッチ14、電子拡大の倍率を操作する拡大スイッチ15等が設けられる。なお、上記の静止画の記録をフリーズスイッチ14とは別に配置したレリーズ(記録)スイッチで操作するようにしてもよい。
【0013】
一方、例えば図1のDSP(デジタルシグナルプロセッサ)回路17とこれから後段の回路がプロセッサ装置に設けられており、このDSP回路17は、上記A/D変換器12から出力された画像(映像)信号に対し、各種の画像処理を施すものである。そして、このDSP回路17の後段に、このDSP回路17で得られた画像を子画面の大きさに縮小変換(子画面用の画像に縮小)する子画面用縮小回路18、動画及び静止画の画像データを記憶する画像メモリ20、メモリコントロール回路21が設けられる。
【0014】
また、電子拡大機能を実現する回路として、上記画像メモリ20から出力された画像信号に対し走査線数或いは水平同期周波数等を変換するスキャンコンバータ22、親画面用の画像(動画及び静止画)を拡大(倍率1.0も含まれる)するための主電子拡大回路23、子画面用の動画を拡大(倍率1.0も含まれる)するための補助電子拡大回路24が設けられる。更に、この主電子拡大回路23から出力された親画面の画像と補助電子拡大回路24から出力された子画面の画像とを例えばピクチャーインピクチャー方式で重ね合わせるオーバーレイ回路25、このオーバーレイ回路25から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器26が設けられ、このD/A変換器26からの出力がモニタへ供給される。なお、親画面に子画面を重ね合わせる方式は、ピクチャーオンピクチャー方式、スーパーインポーズ等のその他の方式でもよい。
【0015】
また、上記各回路を統括制御する回路としてCPU(又はマイコン)28が設けられており、このCPU28は、上記フリーズスイッチ14の操作信号に基づいた静止画の表示及び記録の制御、拡大スイッチ15の操作信号に基づいた任意倍率の電子拡大の制御、子画面に表示される動画の固定倍率の設定及びこの固定倍率での動画拡大制御等を実行する。この子画面用動画の固定倍率は、プロセッサ装置に設けられたキーボードや制御パネル等を用い、ユーザーメニューの中に設けられている子画面用動画の固定倍率設定画面から、任意の倍率を選択することができる。この固定倍率は、拡大スイッチ15で設定される大きな倍率(数十倍以上)ではなく、子画面の動画が見やすくなる程度の小さい倍率(例えば大きくても数倍程度)となる。
【0016】
実施例は以上の構成からなり、まず装置電源がオンされると、図1のCCD11にて被観察体が撮像され、その後、DSP17で画像処理された画像信号は画像メモリ20に一旦格納され、この画像信号がD/A変換器26からモニタへ出力されることにより、図2(A)に示されるように、子画面が表示されることなく、モニタ30の画面上には、被観察体の動画が表示される。
【0017】
そして、フリーズスイッチ14の1段目(又は1回目)が押されると、CPU28は静止画表示のための制御を行い、DSP回路17から出力された画像信号が親画面の静止画信号として画像メモリ20の静止画用メモリに記憶され、この画像メモリ20から読み出された静止画信号がオーバーレイ回路25へ供給される。これと同時に、DSP回路17から出力された動画信号は、子画面用縮小回路18にて子画面サイズに適合する大きさに縮小変換され、この動画信号は画像メモリ20に一旦格納された後、オーバーレイ回路25へ供給される。このオーバーレイ回路25では、ピクチャーインピクチャー方式で、静止画信号と動画信号とが重ね合わせられ、この結果、図2(B)に示されるように、モニタ30の親画面30aに静止画が表示され、右下の子画面30bに動画が表示される。
【0018】
この後、拡大スイッチ15にて電子拡大操作が行われると、画像メモリ20から読み出された静止画信号がスキャンコンバータ22及び主電子拡大回路23を介して、操作された倍率に拡大され、この拡大静止画信号は、オーバーレイ回路25にて子画面用の動画信号と重ね合わされ、この結果、図2(C)に示されるように、親画面30aに拡大された静止画が表示され、右下の子画面30bには、図2(B)と同じ大きさの視野の広い動画が表示される。即ち、親画面30aの静止画が拡大されても、動画は拡大されず、静止画よりも広い範囲を撮影した動画が子画面30bに表示される。その後、フリーズスイッチ14の2段目(又は1回目)の記録(レリーズ)操作が行われると、図2(D)に示される拡大された静止画が記録装置に記録、保持される。
【0019】
また、図3に示されるように、図3(A)の親画面動画表示の状態から、拡大スイッチ15にて電子拡大操作が行われると、CPU28の電子拡大制御に基づき、図3(B)のように、モニタ30の画面には、子画面が現れることなく、操作された倍率に電子拡大された画像が表示される。その後に、フリーズスイッチ14の1段目が押されると、図3(C)のように、親画面30aに拡大された静止画が表示され、子画面30bに拡大されていない動画が表示される。即ち、実施例では、フリーズスイッチ14にて静止画が表示されるとき、動画を表示した子画面30bを出現させ、この動画で、静止画表示中の被観察体の現在の状態を確認できるようになっている。
【0020】
なお、この子画面30bによる動画の表示は、静止画表示のときだけでなく、電子拡大のときにも表示することができる。即ち、図3(A)の状態で拡大スイッチ15が操作されたとき、図3(C)に移行するように制御し、拡大された静止画を表示した親画面30aの右下に、動画を表示した子画面30bを出現させることができる。
【0021】
また、実施例では、子画面30bの大きさ(領域)はそのままで、ここに表示する動画の大きさを変えることもできる。この場合は、上述のように、例えばプロセッサ装置のキーボードを用い、モニタ30に表示されたユーザーメニューの中の設定画面で、子画面30bの動画の固定倍率を予め設定する。そうすると、CPU28は補助電子拡大回路24による動画拡大を制御し、これによって子画面30bに表示される動画が設定倍率で拡大され、被観察部位や術者の好み等に応じた視野の広い動画を子画面30bで観察することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係る電子内視鏡装置の構成を示す回路図である。
【図2】実施例において静止画表示、電子拡大、静止画記録の順に操作を実行したときのモニタ上の表示状態を示す図である。
【図3】実施例において電子拡大、静止画表示の順に操作を実行したときのモニタ上の表示状態を示す図である。
【図4】従来の電子内視鏡装置の親子画面に関する画像形成のための構成を示す回路図である。
【図5】従来の電子内視鏡装置において静止画表示の後、電子拡大の操作を実行したときのモニタ上の表示状態を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1,20…画像メモリ、 3,18…子画面用縮小回路、
4,25…オーバーレイ回路、 6a,30a…親画面、
6b,30b…子画面、 14…フリーズスイッチ、
15…拡大スイッチ、 22…スキャンコンバータ、
23…主電子拡大回路、 24…補助電子拡大回路、
28…CPU、 30…モニタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子の出力信号に基づき被観察体の動画及び静止画を形成する画像形成機能と、拡大操作に基づき撮像素子の出力信号から被観察体の任意倍率の電子拡大画像を形成する主電子拡大機能とを有し、同一モニタの画面上に設定された親画面と子画面に、被観察体の画像を表示する電子内視鏡装置において、
上記主電子拡大機能により電子拡大されない動画で、子画面用に縮小変換された動画を形成する子画面動画形成回路を設け、
上記主電子拡大機能で形成された電子拡大画像を親画面に表示するとき、上記子画面動画形成回路で縮小変換された動画を上記子画面に表示するように制御することを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】
被観察体の静止画を形成するためのフリーズ操作が行われたとき、上記主電子拡大機能で形成された拡大静止画を親画面に表示すると共に、上記子画面動画形成回路により縮小変換された動画を子画面に表示することを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡装置。
【請求項3】
上記子画面動画形成回路に、子画面用に縮小変換された動画を子画面用に設定された固定倍率で拡大する補助電子拡大機能を備え、この子画面用固定倍率で拡大された動画を子画面に表示することを特徴とする請求項1又は2記載の電子内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−229205(P2008−229205A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75936(P2007−75936)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】