電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
【課題】リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止でき、長寿命化及び高画質化を可能とする電子写真感光体、電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性支持体表面に感光層を設けてなり、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子の複合体を含む下引き層と、グアナミンあるいはメラミンとホルムアルデヒドとを用いて合成した特定構造の化合物、−OH、−NH2、−SH、又は−COOHを有する電荷輸送材料を用いた架橋物を含む感光層の最表面層とを有し、感光層のダイナミック硬度が20×109〜20×1010N/m2、感光層の弾性変形率が25%〜70%である電子写真感光体、該電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び画像形成装置。
【解決手段】導電性支持体表面に感光層を設けてなり、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子の複合体を含む下引き層と、グアナミンあるいはメラミンとホルムアルデヒドとを用いて合成した特定構造の化合物、−OH、−NH2、−SH、又は−COOHを有する電荷輸送材料を用いた架橋物を含む感光層の最表面層とを有し、感光層のダイナミック硬度が20×109〜20×1010N/m2、感光層の弾性変形率が25%〜70%である電子写真感光体、該電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置としては、電子写真感光体(以下、場合により「感光体」という)を用いて帯電、露光、現像、転写、クリーニング等の工程を順次行う装置が広く知られている。このような画像形成装置の分野では、近時、装置の高画質化及び長寿命化に対する要求が高まりつつあり、かかる要求に応えるべく各部材、システムの改善が検討され、感光層の最表面層のダイナミック硬度を13.0×109N/m2以上100.0×109N/m2以下に規定することにより、感光体表面の傷及び感光体に接触する部材の欠損を防止する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−318459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の感光体は、画像書き込みに使用される感光体は帯電やクリーニング等の際にストレスを受けやすく、感光体表面に傷や磨耗が発生すると画像欠陥の原因となる。その一方で、感光体に接触する部材(例えば、帯電ローラやクリーニングブレードなど)もストレスを受けるため、かかる部材の欠損を防止する必要があるため、開発されたものである。
【0004】
ところで、近年、転写される紙の自由度が広がることから、中間転写体を用いて転写する方式が盛んに用いられている。しかし、中間転写体を備える画像形成装置では、装置内で発生する或いは装置内に混入する異物が中間転写体と感光体との間に挟まることがあり、これにより感光体が傷つく、或いは、感光体に突き刺さった異物が導電性支持体にまで達することが起こりやすい。特に、中間転写体が電子写真感光体と比較して硬い場合には、これらの問題が起こりやすい。このような問題が起こると、感光体リーク(感光体に局所過大電流が流れる現象)が発生し、形成される画像に色点などの画質欠陥が生じてしまう。
【0005】
また、近年、電子写真装置の帯電装置として、コロナ放電器などの非接触型帯電装置に代わり、帯電ロール等の接触帯電方式の帯電装置が用いられるようになっている。接触型帯電装置は、低オゾン及び低電力という利点を有するが、この接触型帯電装置を用いた場合は、非接触型帯電装置よりも感光体に高い電圧が印加されるため、感光体に上記の問題が生じるとリークが発生しやすくなる。
上記のように画像形成装置の長期使用に伴って、装置内から(例えば、劣化した現像器や中間転写体から)放出される或いは装置内に混入する異物は増加することから、装置の長寿命化及び高画質化を高水準で達成する上で上述のリークを防止することが重要となる。
【0006】
これに対して、上記特許文献1に記載の方法は感光体の傷を防止することを目的の一つとしているが、本発明らの検討によるとリーク防止に対しては必ずしも十分な解決策であるとはいえないことが判明しており、上記特許文献1に記載の感光体であってもリーク防止性の観点からは更なる改善の必要がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止でき、長寿命化及び高画質化を可能にする電子写真感光体、並びに、かかる電子写真感光体を備え、長寿命化及び高画質化を達成できるプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
導電性支持体表面に感光層を設けてなり、
前記感光層の最も導電性支持体側の層が、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体を含む下引き層であり、
前記感光層の最表面層が、下記一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種と、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、
前記感光層のダイナミック硬度が20×109N/m2以上20×1010N/m2以下であり、且つ、前記感光層の弾性変形率が25%以上70%以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0009】
【化1】
【0010】
(前記一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、又は炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素原子、又は炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。)
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記感光層の最表面層が、電子受容材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体である。
【0012】
請求項3に係る発明は、
前記感光層の最表面層が、粒子を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体である。
【0013】
請求項4に係る発明は、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0014】
請求項5に係る発明は、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像形成する静電潜像手段と、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0015】
請求項6に係る発明は、
前記電子写真感光体表面の残留電位を除電する除電手段を更に備え、前記帯電手段が、2本以上の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置である。
【0016】
請求項7に係る発明は、
前記電子写真感光体の基準点において、電子写真感光体の回転に応じて除電手段による除電の動作が開始してから、帯電手段による帯電の動作が終了するまでの時間をT1(sec)、該電子写真感光体の感光層の最表面層の膜厚をd(mm)、該感光層の最表面層の比誘電率をεとした場合に、下記関係式(a)を満たすことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置である。
・関係式(a)
120≦2.5×103/√T1×exp(0.724d/ε)/d≦255
【0017】
請求項8に係る発明は、
前記感光層の最表面層の誘電膜厚(d/ε)が、0.2μm以上3.5μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置である。
【0018】
請求項9に係る発明は、
前記時間T1が、55mmsec以上200mmsec以下であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止できる。
請求項2に係る発明によれば、残留電位のサイクル特性を安定させることができる、あるいは残留電位を下げることができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、残留電位を下げる、あるいは強度を上げることができる。
請求項4に係る発明によれば、長寿命化及び高画質化を達成できるプロセスカートリッジを提供できる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、長寿命化及び高画質化を達成できる画像形成装置を提供できる。
請求項6に係る発明によれば、帯電ムラを少なくできる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、電子写真感光体が長寿命でありながら、帯電性能の低下や帯電ムラに基づく画質の低下を抑制できる。
請求項8に係る発明によれば、画質欠陥が現れにくい。
請求項9に係る発明によれば、感度の低下や画像のボケを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体(以下、「本発明の感光体」という場合がある。)は、導電性支持体表面に感光層を設けてなり、前記感光層の最も導電性支持体側の層が、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体を含む下引き層であり、前記感光層の最表面層(導電性支持体から最も遠い層)が、下記一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種と、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、前記感光層のダイナミック硬度が20×109N/m2以上20×1010N/m2以下であり、且つ、前記感光層の弾性変形率が25%以上70%以下であることを特徴とする。
尚、本発明において、感光層とは、下引き層から最表面層まですべての層の総称である。
【0024】
【化2】
【0025】
前記一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、又は炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素原子、又は炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。
【0026】
ここで、本発明でいう「ダイナミック硬度」とは、以下のように定義される。すなわち、本発明のダイナミック硬度とは、ベルコビッチ型圧子(三角錐型、稜間角115°、先端曲率半径0.1μm以下のダイアモンド圧子)を電子写真感光体の感光層表面に対して垂直に0.3mNの応力で押し込んだときの押込み深さから、下記式(1)に基づき算出される値をいう。22℃、55%RHの条件下で測定したときの値を本発明におけるダイナミック硬度とする。
DH=3.8584×(P/D2)…(1)
式(1)中、DHはダイナミック硬度[N/m2]、Pは押込み荷重[N]、Dは押込み深さ[m]を表す。ここで、ダイアモンド圧子は、微小硬度測定装置(島津製作所社製、「DUH−201」)に装着されているものであり、押込み深さは、圧子の変位から、押込み荷重は圧子につけたロードセルから読み取る。
【0027】
また、本発明でいう「弾性変形率」とは、以下のように定義される。すなわち、本発明の弾性変形率とは、ベルコビッチ型圧子(三角錐型、稜間角115°、先端曲率半径0.1μm以下のダイアモンド圧子)を電子写真感光体の感光層表面に対して垂直に0.3mNの応力で押し込み、その後、再び圧子にかかる応力を0mNに戻したときの、圧子を0.3mNの応力で押し込んだときの押込み深さ、及び、応力解放後の圧子の変位から、下記式(2)に基づき算出される値をいう。22℃、55%RHの条件下で測定したときの値を本発明における弾性変形率とする。
ED=(D−M)/D×100…(2)
式(2)中、EDは弾性変形率(%)、Mは応力解放後の圧子の変位[m]、Dは押込み深さ[m]を表す。ここで、ダイアモンド圧子は、微小硬度測定装置(島津製作所社製、「DUH−201」)に装着されているものであり、押込み深さは、圧子の変位から、押込み荷重は圧子につけたロードセルから読み取る。
【0028】
ここで、上記の弾性変形率に関して図を用いて更に説明する。図11は、上記の測定を行った際の、圧子の押し込み荷重と圧子の変位との関係を示すグラフである。本発明においては、図11中のP1が0.3mNである。感光層に押し込む圧子にかかる応力を0からP1まで増加させることにより、感光層に食い込む圧子の変位はD1まで増加する(グラフA−B)。その後、圧子にかかる応力をP1から0に減少させることにより、圧子は感光層が弾性変形した分だけ押し戻され、圧子の変位はD1からM1へと減少する(グラフB−C)。このとき、M1が感光層の塑性変形量を意味し、全変形量D1から塑性変形量M1を引いた(D1−M1)が感光層の弾性変形量を意味する。よって、(D1−M1)/D1×100を計算することにより感光層の弾性変形率が求められる。
【0029】
本発明の感光体は、リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止することができ、長寿命化及び高画質化を高水準で達成することが可能となる。
本発明によって上記の効果が奏される理由としては、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、既述の特許文献1に記載の方法のように感光層の表面層を単に硬くするだけでは、トナーのキャリア片や装置内に進入した硬い異物などが感光層に突き刺さった場合、そこを起点として割れや欠けが生じたり、突き刺さった異物が除去されにくくなったりすると考えられる。そのため、画像形成装置の長期使用に伴って装置内から放出される異物が増えてくると、リークを十分防止することできなくなると考えられる。
【0030】
これに対して、本発明の感光体では、感光層の硬度と弾性とが上記範囲でバランスされることにより、感光層への異物の突き刺さりが抑制されつつ、異物が突き刺さった場合には、適度な弾性によって、導電性支持体まで或いはその近傍まで達する前に異物が容易に除去され、且つ、割れや欠けの発生が防止されると考えられる。つまり、本発明の感光体によれば、画像形成装置が長期使用された場合であってもリークの発生要因を十分少なくできることから、リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止することができ、長寿命化及び高画質化を高水準で達成できたものと推察される。
【0031】
また、感光層の硬度と弾性とが上記範囲でバランスされていることにより、感光層に傷が発生することを防止できるとともに、感光体と感光体に接触する部材との間にスティックスリップ現象が発生することを十分防止できることも、長寿命化及び高画質化を高水準で達成できる要因の一つと考えられる。
【0032】
また、本発明の感光体は、カラー画像形成装置に適用した場合、以下の理由により従来に比べて高水準の長寿命化及び高画質化を達成することができる。すなわち、記録媒体にカラー画像を形成する場合は中間転写体を利用することが好適であるが、導電性異物が感光体に貫入してリークが発生すると、各色の点欠陥が連続した色点連欠陥が記録媒体に形成されることがある。これに対して、本発明の電子写真感光体によれば、中間転写体を用いた場合であっても感光体への異物の貫入や感光体の傷の発生を十分防止できることから、リークの発生を十分防止でき、カラー画像形成装置においても記録媒体に色点連欠陥が形成されるのを十分防止できる。
【0033】
前記感光層のダイナミック硬度は、20×109N/m2以上20×1010N/m2以下であり、20×109N/m2以上15×1010N/m2以下であることが好ましく、25×109N/m2以上75×109N/m2以下であることがより好ましく、25×109N/m2以上45×109N/m2以下であることが更に好ましい。前記ダイナミック硬度が20×109N/m2未満であると、感光層に導電性異物が突き刺さりやすく、更に突き刺さった導電性異物が導電性支持体まで達しやすくなり、ピンホールリークに起因する画質欠陥の発生を長期に亘って十分防止することができない。一方、前記ダイナミック硬度が150×109N/m2を超えると、異物が感光層に突き刺さった場合、そこを起点として割れや欠けが生じやすくなると考えられ、欠陥部分のリークに起因する画質欠陥の発生を長期に亘って十分防止することができない。
【0034】
前記感光層の弾性変形率は、25%以上70%以下であり、25%以上45%以下であることが好ましい。前記弾性変形率が25%未満であると、トナーのキャリア片や装置内に進入した硬い異物などによって感光層に傷や割れが発生しやすくなり、また、導電性異物が感光層に突き刺さった場合にはそこを起点として生じた割れや欠けがリークの原因になると考えられ、リークに起因する画質欠陥の発生を長期に亘って十分防止することができない。一方、前記弾性変形率が70%以上であると、感光体と感光体に接触する部材(特には、クリーニングブレード及び中間転写体)との間にスティックスリップ現象が発生しやすくなると考えられ、バンディングなどの画質欠陥が発生し、十分な高画質化を達成できない。
【0035】
本発明の感光体は、例えば、感光層が前記ダイナミック硬度及び弾性変形率の条件を満足するように、後述する感光層を構成する各層の組成及び層厚を適宜選択することにより得ることができる。
本発明においては、より確実かつ容易に長寿命化及び高画質化を達成する観点から、感光層が保護層(最表面層)と下引き層とを有しており、これらの層の組成及び層厚をコントロールすることにより上記の条件を満足する感光層を形成することが特に好ましい。
【0036】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(電子写真感光体)
図1は、本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2と、感光層3とから構成されている。感光層3は、導電性支持体2上に、下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7がこの順序で積層された構造を有している。
また、図2及び3は、それぞれ本発明の電子写真感光体の他の好適な実施形態を示す模式断面図である。図2に示す電子写真感光体は、図1に示す電子写真感光体と同様に電荷発生層5と電荷輸送層6とに機能が分離された感光層3を備えるものである。また、図3は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層8)に含有するものである。
【0037】
図2に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、電荷輸送層6、電荷発生層5、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
また、図3に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、単層型感光層8及び保護層7が順次積層された構造を有するものである。
【0038】
上記のように、本発明の感光体が備える感光層は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する単層型感光層、又は電荷発生材料を含有する層(電荷発生層)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層)とを別個に設けた機能分離型感光層のいずれであってもよい。機能分離型感光層の場合、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序はいずれが上層であってもよい。なお、機能分離型感光層の場合、それぞれの層がそれぞれの機能を満たせばよいという機能分離ができるため、より高い機能を実現できる。
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体1に基づいて、各要素について説明する。
【0039】
−導電性支持体−
導電性支持体2としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、金属ベルト等が挙げられる。また、導電性支持体2としては、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等も使用できる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。尚、本発明において、体積抵抗率は20℃における体積抵抗率とする。
【0040】
導電性支持体2の表面は、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが好ましい。導電性支持体2の表面のRaが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向がある。他方、Raが0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が不十分となる傾向がある。非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性支持体2表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0041】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が好ましい。
また、他の粗面化の方法としては、導電性支持体2表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も好ましく用いられる。
【0042】
上記陽極酸化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、そのままの多孔質陽極酸化膜は、化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0043】
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0044】
また、導電性支持体2には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が好ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が好ましいが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0045】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行うことができる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0046】
−下引き層−
下引き層4は、導電性支持体2上に形成される。下引き層4は、積層構造を有する感光層3の帯電の際に、導電性支持体2から感光層3への電荷の注入を阻止するとともに、感光層3を導電性支持体2に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用を有するものである。また、下引き層4は、場合によっては導電性支持体2の光の反射防止作用等示すことができる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った支持体を用いる場合は、支持体の欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、下引き層を形成することが好ましい。
さらに、本発明にかかる電子写真感光体は、下引き層を備えていることから、感光層の弾性変形率のコントロールが容易となること、及び、繰り返し使用時の残留電位の上昇を抑制しつつリーク防止性を更に向上させることができる。
【0047】
本発明において、下引き層4は、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体を含んで構成されるものである。
上記複合体に含まれるアクセプター性化合物としては、所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用可能であるが、特にキノン基を有する化合物が好ましく用いられる。さらにアントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が好ましく用いられる。アントラキノン構造を有する化合物としては、アントラキノン以外に、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等があげられ、いずれも好ましく用いることができる。さらに具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が特に好ましく用いられる。
【0048】
上記複合体に含まれる金属酸化物粒子としては、102Ω・cm以上1011Ω・cm以下程度の粉体抵抗(体積抵抗率)を有するものが好ましい。これにより、下引き層4はリーク耐性獲得のために適切な抵抗を得ることが可能となる。上記範囲の下限よりも金属酸化物粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られにくくなる場合があり、一方、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こしやすくなる場合がある。
【0049】
本発明においては、上記抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子を用いるのが好ましい。特に酸化亜鉛は好ましく用いられる。また、金属酸化物粒子は表面処理の異なるものあるいは粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いることもできる。
また、金属酸化物粒子としては、比表面積が10m2/g以上のものが好ましく用いられる。比表面積値が10m2/g以下のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性が得られにくい傾向にある。
【0050】
アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体を得る方法としては、例えば、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって金属酸化物粒子へアクセプター化合物を均一に付与する方法が挙げられる。アクセプター化合物を添加あるいは噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが好ましく、溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、アクセプター化合物が局部的にかたまってしまい均一な処理ができにくい場合がある。添加あるいは噴霧した後、さらに溶剤の沸点温度以上で乾燥を行うことができる。また、金属酸化物粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、アクセプター化合物の有機溶剤溶液を添加し、還流あるいは有機溶剤の沸点以下で攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に付与される。また、溶剤除去方法はろ過あるいは蒸留、加熱乾燥により留去される。
【0051】
上記アクセプター性化合物の付与量は所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定できるが、好ましくは金属酸化物粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下付与される。さらに好ましくは金属酸化物粒子に対して0.05質量%以上10質量%以下付与される。アクセプター性化合物の付与量が0.01質量%未満では下引き層4内の電荷蓄積改善に寄与するだけの十分なアクセプター性を付与できないため、繰り返し使用時に残留電位の上昇などを十分抑制する効果が得られにくくなる場合がある。また、20質量%を超えると金属酸化物同士の凝集を引き起こしやすく、下引き層4の形成時に下引き層4内で金属酸化物が良好な導電路を形成することが困難となり、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる場合がある。
【0052】
また、金属酸化物粒子はアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施すことができる。表面処理剤としては所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択することができる。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため好ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤は下引き層4に良好なブロッキング性を与えるため好ましく用いられる。
【0053】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、所望の電子写真感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができるが、具体例としてはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用することもできる。上記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いることができるシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
乾式法にて表面処理を施す場合には金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒に溶解させたシランカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。添加あるいは噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが好ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的にかたまってしまい均一な処理ができにくい欠点があり、好ましくない。添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
【0056】
湿式法としては、金属酸化物粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去方法はろ過あるいは蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては表面処理剤を添加する前に金属酸化物粒子含有水分を除去することもでき、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いることもできる。
【0057】
下引き層4中の金属酸化物粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定できる。
【0058】
下引き層4に含有されるバインダー樹脂としては、良好な膜を形成できるもので、かつ所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでも使用可能であるが、例えばポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることができる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特に、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
【0059】
尚、本発明において、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体には、金属酸化物粒子、金属酸化物粒子と反応して結合可能な基を有するアクセプター性化合物(以下、「反応性官能基を有するアクセプター性化合物」という場合もある)も含むものとする。
【0060】
反応性官能基を有するアクセプター性化合物としては、所望の特性が得られる金属酸化物粒子と反応可能な基を有するものならばいかなるものでも使用可能であるが、特に水酸基を有する化合物が好ましく用いられる。さらに水酸基を有するアントラキノン構造を有しするアクセプター性化合物が好ましく用いられる。水酸基を有するアントラキノン構造を有する化合物としては、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。さらに具体的にはアリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン、1−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノンなどが特に好ましく用いられる。
【0061】
金属酸化物粒子としては、上述の複合体に用いられる金属酸化物粒子と同様のものが用いられる。また、金属酸化物粒子は表面処理を施すことができ、表面処理剤及び表面処理方法についても上記と同様とすることができる。
【0062】
反応性官能基を有するアクセプター性化合物は、好ましくは金属酸化物粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下となるように、より好ましくは0.05質量%以上10質量%以下となるように下引き層4中に配合される。
【0063】
本発明において、下引き層4の厚みを大きく設定することによって感光層の弾性変形率を既述の範囲とした場合であっても繰り返し使用による残留電位の上昇を十分防止できることから、画質低下を十分抑制しつつ導電性異物が導電性支持体まで達することをより確実に防止することができる。これにより、更に高水準の高画質化を達成できる。
上述の効果をより確実に得る観点から、上記下引き層4の厚さは、15μm以上50μm以下であることが好ましく、17μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0064】
下引き層4は、上述の下引き層を構成する各成分を溶媒に分散させて得られる下引き層形成用塗布液を用いて形成できる。なお、下引き層形成用塗布液中の、上記複合体とバインダー樹脂、又は、金属酸化物粒子と反応性官能基を有するアクセプター性化合物とバインダー樹脂との配合比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0065】
下引き層形成用塗布液には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0066】
シランカップリング剤は金属酸化物粒子の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いることもできる。ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。
【0067】
ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0068】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0069】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0070】
下引き層形成用塗布液を調製するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。これらの溶媒は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。2種以上混合して用いる場合、混合溶媒としてバインダー樹脂を溶かすことができる溶媒であれば、いかなる組み合わせでも使用することが可能である。
【0071】
分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の分散機を用いる方法により分散できる。
【0072】
下引き層形成用塗布液を塗布する方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
【0073】
下引き層は、塗布したものを乾燥させて形成されるが、乾燥は溶媒を蒸発させ製膜可能な温度であればよい。
【0074】
また、下引き層4は、所定のダイナミック硬度及び弾性変形率が得られるのであれば、いかなる厚さに設定することができるが、厚さが15μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは15μm以上50μm以下である。下引き層の厚さが15μm未満であると、充分な耐リーク性能が得られにくくなる場合があり、また50μmを超えると、長期使用時に残留電位が残りやすくなるため画像濃度異常を招きやすい傾向にある。
【0075】
また、下引き層4の表面粗さはモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)以上1/2λ以下に調整されることが好ましい。このような表面粗さ調整のために下引き層中に樹脂などの粒子を添加することができる。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂粒子等を用いることができる。
【0076】
また、表面粗さの調整のために下引き層を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
【0077】
−電荷発生層−
電荷発生層5は、電荷発生材料を含有して、又は電荷発生材料及び結着樹脂を含有して構成される。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フラトシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対しては、金属及又は無金属フタロシアニン顔料が好ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対してはジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン等がより好ましい。
【0078】
電荷発生層5に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1〜1:10の範囲内であることが好ましい。
【0079】
電荷発生層5の形成は、電荷発生材料及び結着樹脂を所定の溶剤中に分散した塗布液を用いて行うことができる。分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0080】
また、電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができる。これらの分散方法により、分散による電荷発生材料の結晶型の変化を防止することができる。さらにこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0081】
電荷発生層5を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
このようにして得られる電荷発生層5の厚みは、好ましくは0.1μm以上5μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0082】
−電荷輸送層−
電荷輸送層6は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して構成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0083】
また、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材を用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも成膜可能であるが、後述する結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0084】
電荷輸送材料としては、モビリティーの観点から、下記一般式(a−1)、(a−2)又は(a−3)で示される化合物が好ましい。
【0085】
【化3】
【0086】
上記式(a−1)中、R34は、水素原子又はメチル基を、k10は、1又は2を示す。また、Ar6及びAr7は、それぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基、−C6H4−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−C6H4−CH=CH−CH=C(Ar)2を示し、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。また、R38、R39、R40は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。
【0087】
【化4】
【0088】
上記式(a−2)中、R35及びR35’はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を、R36、R36’、R37及びR37’はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を、R38、R39及びR40はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。また、m4及びm5はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。
【0089】
【化5】
【0090】
ここで、上記式(a−3)中、R41は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換若しくは未置換のアリール基、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を示す。Arは、置換又は未置換のアリール基を示す。R42、R42’、R43、及びR43’はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示す。
【0091】
電荷輸送層6に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。また、上述のように、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材等高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1〜1:5が好ましい。
【0092】
電荷輸送層6の形成は、電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶剤に分散した電荷輸送層形成溶塗布液を用いて行うことができる。溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0093】
電荷輸送層形成溶塗布液の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
【0094】
電荷輸送層6の厚みは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0095】
−保護層−
保護層7は、下記一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種と、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成される。
【0096】
【化6】
【0097】
前記一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、又は炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素原子、又は炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。
【0098】
一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数4以上10以下の置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素原子、又は炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。
【0099】
一般式(A)において、R1で示されるアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、好ましくは炭素数が1以下8以上であり、より好ましくは炭素数が1以上5以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。
【0100】
一般式(A)中、R1で示されるフェニル基は、炭素数6以上10以下であるが、より好ましくは6以上8以下である。当該フェニル基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0101】
一般式(A)中、R1で示される脂環式炭化水素基は、炭素数4以上10以下であるが、より好ましくは5以上8以下である。当該脂環式炭化水素基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0102】
一般式(A)中、R2〜R5で示される「−CH2−O−R6」において、R6で示されるすアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、好ましくは炭素数が1以下8以上であり、より好ましくは炭素数が1以上6以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。
【0103】
一般式(A)で示される化合物としては、特に好ましくは、R1が炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示し、R2〜R5がそれぞれ独立に−CH2−O−R6を示される化合物である。また、R6は、メチル基またはn−ブチル基から選ばれることが好ましい。
【0104】
一般式(A)で示される化合物は、グアナミンあるいはメラミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページ)で合成することができる。
【0105】
以下、一般式(A)で示される化合物の具体例として、例示化合物:(A)−1〜(A)−22を示すが、これらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。更に、以下の具体例は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよいが、混合、あるいは、オリゴマーとして使用することで溶解性を向上できるため、より好ましい。尚、以下の具体例において、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Bu」はブチル基を示す。
【0106】
【化7】
【0107】
【化8】
【0108】
また、スーパーベッカミン(R)L−148−55、スーパーベッカミン(R)13−535、スーパーベッカミン(R)L−145−60、スーパーベッカミン(R)TD−126(大日本インキ社製)、ニカラックBL−60、ニカラックBX−4000(日本カーバイド社製)など、市販のものをそのまま用いることもできる。
さらに、残留触媒の影響を取り除くためにトルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄しても良いし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
【0109】
次に、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料(以下、「特定の電荷輸送材料」という場合がある。)について説明する。
特定の電荷輸送性材料としては、下記一般式(I)で示される化合物であることが好ましい。
F−((−R7−X)n1R8−Y)n2 (I)
【0110】
一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R7及びR8はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、n2は1以上4以下の整数を示す。Xは酸素、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−NH2、−SH、又は−COOHを示す。
【0111】
一般式(I)中、Fを示す正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基における正孔輸送能を有する化合物としては、アリールアミン誘導体が好適に挙げられる。アリールアミン誘導体としては、トリフェニルアミン誘導体、テトラフェニルベンジジン誘導体が好適に挙げられる。
【0112】
そして、一般式(I)で示される化合物は、下記一般式(II)で示される化合物であることが好ましい。一般式(II)で示される化合物は、特に、電荷移動度、酸化などに対する安定性等に優れる。
【0113】
【化9】
【0114】
一般式(II)中、Ar1〜Ar4は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(−R7−X)n1R8−Yを示し、cはそれぞれ独立に0又は1を示し、kは0又は1を示し、Dの総数は1以上4以下である。また、R7及びR8はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、Xは酸素、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−NH2、−SH、又は−COOHを示す。
【0115】
一般式(II)中、Dで示される「−(−R7−X)n1R8−Y」は、一般式(I)と同様であり、R7及びR8はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基である。また、n1として好ましくは、1である。また、Xとして好ましくは、酸素である。また、Yとして好ましくは水酸基である。なお、一般式(II)におけるDの総数は、一般式(I)におけるn2に相当し、好ましくは、2以上4以下であり、さらに好ましくは3以上4以下である。つまり、一般式(I)や一般式(II)において、好ましくは一分子中に2以上4以下、さらに好ましくは3以上4以下とすると、架橋密度が上がり、より強度の高い架橋膜が得られる。
一般式(II)中、Ar1〜Ar4としては、下記式(1)〜(7)のうちのいずれかであることが好ましい。なお、下記式(1)〜(7)は、各Ar1〜Ar4に連結され得る「−(D)C」と共に示す。
【0116】
【化10】
【0117】
式(1)〜(7)中、R9は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R10〜R12はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、D及びcは一般式(II)における「D」、「c」と同様であり、sはそれぞれ0又は1を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
【0118】
ここで、式(7)中のArとしては、下記式(8)又は(9)で表されるものが好ましい。
【0119】
【化11】
【0120】
[式(8)、(9)中、R13及びR14はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
【0121】
また、式(7)中のZ’としては、下記式(10)〜(17)のうちのいずれかで表されるものが好ましい。
【0122】
【化12】
【0123】
[式(10)〜(17)中、R15及びR16はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。]
【0124】
上記式(16)〜(17)中のWとしては、下記(18)〜(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0125】
【化13】
【0126】
また、一般式(II)中、Ar5は、kが0のときはAr1〜Ar4の説明で例示されたアリール基であり、kが1のときはかかるアリール基から所定の水素原子を除いたアリーレン基である
【0127】
一般式(I)で示される化合物の具体例として、以下に示す例示化合物(I−1)〜(I−25)を挙げる。なお、上記一般式(I)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0128】
【化14】
【0129】
【化15】
【0130】
【化16】
【0131】
【化17】
【0132】
【化18】
【0133】
【化19】
【0134】
一般式(A)で示される化合物と、特定の電荷輸送性材料との割合としては、電気特性、強度の観点から、一般式(A)で示される化合物1質量部に対して、特定の電荷輸送性材料が0.2質量部以上4質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量部以上3質量部以下であり、さらに好ましくは0.4質量部以上2質量部以下である。
また、本発明の感光体は、保護層7が、電子受容材料を含有することが電気特性の改善,特に高残留電位および残留電位のサイクル安定性の点で好ましい。該電子受容材料としては、所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用可能であるが、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが好ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が好ましい。さらに、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が好ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
【0135】
保護層7における電子受容材料の含有量は、一般式(I)で示される化合物1質量部に対し、0.005質量部以上4質量部以下が好ましく、その中でも0.01質量部以上1質量部以下が最も好ましい。保護層7における電子受容材料の含有量が5質量%を超えると、画質欠陥を発生させる場合があり、0.01質量%未満であると、高残留電位となる場合がある。
【0136】
本発明の感光体は、保護層7が、フェノール樹脂又はメラミン樹脂の少なくとも1種を含有することが好ましい。かかるフェノール樹脂又はメラミン樹脂の少なくとも1種を含有することによって感光層の表面の耐摩耗性を向上させることができることから、長期使用によって膜厚が減少することで導電性異物が導電性支持体まで達しやすくなることをより確実に防止できる。さらには、感光層の機械的強度及び電気特性の双方が高められることから、高画質化及び長寿命化を更に高水準で達成できる。
【0137】
保護層7には、さらに、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、フッ素化合物と混合して用いても良い。この化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
【0138】
前記シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等を用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えても良い。シランカップリング剤は任意の量で使用できるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが好ましい。この使用量を超えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
【0139】
また、保護層7の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的でアルコールに溶解する樹脂を加えることもできる。
アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、ポリビニルフェノール樹脂などがあげられる。特に、電気特性の点でポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が好ましい。当該樹脂の重量平均分子量は2,000以上100,000以下が好ましく、5,000以上50,000以下がより好ましい。樹脂の重量平均分子量が2,000未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、100,000を超えると溶解度が低下して添加量が制限され、さらには塗布時に製膜不良を招く傾向にある。また、当該樹脂の添加量は固形分に対し1質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。当該樹脂の添加量が1質量%未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、40質量%を超えると高温高湿下での画像ボケが発生しやすくなる。
【0140】
これらの成分を含有する表面層用塗布液の調製は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン、3―ヒドロキシ−3―メチルー2−ブタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶剤を用いて行うことができる。かかる溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用可能であるが、好ましくは沸点が100℃以下のものである。溶剤量は任意に設定できるが、少なすぎると一般式(A)、一般式(I)で表される化合物が析出しやすくなるため、一般式(I)で表される化合物1質量部に対し0.5質量部以上30質量部以下、好ましくは、1質量部以上20質量部以下で使用される。
【0141】
また、上記成分を反応させて塗布液を得るときには、単純に混合、溶解させるだけでもよいが、室温以上100℃、好ましくは、30℃以上80℃以下で10分以上100時間以下、好ましくは1時間以上50時間以下加温しても良い。また、この際に超音波を照射することも好ましい。これにより、恐らく部分的な反応が進行し、塗布液の均一性が高まり、塗膜欠陥のない均一な膜が得られやすくなる。
【0142】
保護層7には、帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、劣化防止剤を添加することが好ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。劣化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が好ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。劣化防止剤の添加量としては20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0143】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」が挙げられ、チオエーテル系として「スミライザ−TPS」、「スミライザーTP−D」が挙げられ、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」等が挙げられる。
【0144】
また、残留電位を下げるために保護層7に粒子を添加してもよい。該粒子としては、導電性粒子(体積抵抗が10以上107以下の粒子)、後記有機、無機粒子等の粒子が挙げられる。導電性粒子としては、金属、金属酸化物およびカーボンブラック等が挙げられるが、金属または金属酸化物がより好ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀およびステンレス等、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズおよびアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。
これら導電性粒子は単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。
【0145】
これら導電性粒子の体積平均粒径としては、保護層7の透明性の点で、0.3μm以下、特に0.1μm以下が好ましい。
保護層7中の導電性粒子の含有量は,製膜性、電気特性、画質特性の面から、保護層7の全固形分全量を基準として、0.05質量%以上15質量%以下、好ましくは0.3質量%以上10質量%以下の範囲で用いられる。
【0146】
更に、保護層7には残留電位を下げるため、あるいは強度を上げるために導電性粒子の他にも、有機、無機粒子等の粒子を添加してもよい。粒子の一例として、ケイ素含有粒子を挙げることができる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性もしくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。保護層7中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、保護層7の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0147】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。すなわち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。保護層7中のシリコーン粒子の含有量は、保護層7の全固形分全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0148】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集p89”に示されるような、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO2−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。
【0149】
また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0150】
保護層7には、一般式(A)で示される化合物や特定の電荷輸送材料の硬化を促進するために触媒を使用することができ、硬化触媒として酸系の触媒を好ましく用いることができる。酸系の触媒としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族カルボン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、などの脂肪族、および芳香族スルホン酸類などが用いられるが、含硫黄系材料を用いることが好ましい。
【0151】
保護層7が硬化触媒として含硫黄系材料を用いることにより、この含硫黄系材料が一般式(A)で示される化合物や特定の電荷輸送材料の硬化触媒として優れた機能を発揮し、硬化反応を十分に促進して得られる保護層の機械的強度をより向上させることができる。また、前記一般式(I)で示される化合物を更に含む場合、含硫黄系材料は、これら電荷輸送性物質に対するドーパントとしても優れた機能を発揮し、得られる機能層の電気特性をより向上させることができる。その結果、本発明の、電子写真感光体を形成した場合に、機械強度、成膜性及び電気特性の全てを高水準で達成することができるこの触媒としても常温、あるいは、加熱後に酸性を示すものが好ましく、接着性、ゴースト、電気特性の観点で有機スルホン酸及び/又はその誘導体が最も好ましい。保護層中にこれら触媒の存在は、XPS等により容易に確認できる。
【0152】
有機スルホン酸及び/又はその誘導体としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、触媒能、成膜性の観点から、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。また、硬化性樹脂組成物中で、ある程度解離可能であれば、有機スルホン酸塩を用いることもできる。
【0153】
また、一定以上の温度をかけたときに触媒能力が高くなる、所謂、熱潜在性触媒を用いることで、液保管温度では触媒能が低く、硬化時に触媒能が高くなるため、硬化温度の低下と、保存安定性を両立することができる。
【0154】
熱潜在性触媒として、たとえば有機スルホン化合物等をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル、ゼオライトのような空孔化合物に酸等を吸着させたもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックした熱潜在性プロトン酸触媒や、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を一級もしくは二級のアルコールでエステル化したもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をビニルエーテル類及び/又はビニルチオエーテル類でブロックしたもの、三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素のピリジン錯体などがあげられる。
【0155】
中でも、触媒能、保管安定性、入手性、コストの面でプロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたものが好ましい。
【0156】
熱潜在性プロトン酸触媒のプロトン酸として、硫酸、塩酸、酢酸、硫酸、ギ酸、硝酸、リン酸、スルホン酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、o、m、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、プロトン酸誘導体として、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属円などの中和物、プロトン酸骨格が高分子鎖中に導入された高分子化合物(ポリビニルスルホン酸等)等が挙げられる。プロトン酸をブロックする塩基として、アミン類が挙げられる。
【0157】
アミン類として、1級、2級又は3級アミンに分類される。特に制限はなく、本発明ではいずれも使用できる。
【0158】
1級アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、セカンダリーブチルアミン、アリルアミン、メチルヘキシルアミン等が挙げられる。
【0159】
2級アミンとして、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジt−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−イソプロピルN−イソブチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジセカンダリーブチルアミン、ジアリルアミン、N−メチルヘキシルアミン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、モルホリン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
【0160】
3級アミンとして、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N,N’,N’ーテトラメチルー1,2ージアミノエタン、N,N,N’,N’ーテトラメチルー1,3ージアミノプロパン、N,N,N’,N’ーテトラアリルー1,4ージアミノブタン、Nーメチルピペリジン、ピリジン、4ーエチルピリジン、Nープロピルジアリルアミン、3ージメチルアミノプロパノール、2ーエチルピラジン、2,3ージメチルピラジン、2,5ージメチルピラジン、2,4ールチジン、2,5ールチジン、3,4ールチジン、3,5ールチジン、2,4,6ーコリジン、2ーメチルー4ーエチルピリジン、2ーメチルー5ーエチルピリジン、N,N,N’,N’ーテトラメチルヘキサメチレンジアミン、Nーエチルー3ーヒドロキシピペリジン、3ーメチルー4ーエチルピリジン、3ーエチルー4ーメチルピリジン、4ー(5ーノニル)ピリジン、イミダゾール、Nーメチルピペラジン等が挙げられる。
【0161】
市販品としては、キングインダストリーズ社製の「NACURE2501」(トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.0〜7.2、解離温度80℃)、「NACURE2107」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH8.0〜9.0、解離温度90℃)、「NACURE2500」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0〜7.0、解離温度65℃)、「NACURE2530」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH5.7〜6.5、解離温度65℃)、「NACURE2547」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH8.0〜9.0、解離温度107℃)、「NACURE2558」(p−トルエンスルホン酸解離、エチレン/グリコール溶媒、pH3.5〜4.5、解離温度80℃)、「NACUREXP−357」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール溶媒、pH2.0〜4.0、解離温度65℃)、「NACUREXP−386」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH6.1〜6.4、解離温度80℃)、「NACUREXC―2211」(p−トルエンスルホン酸解離、pH7.2〜8.5、解離温度80℃)、「NACURE5225」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0〜7.0、解離温度120℃)、「NACURE5414」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE5528」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH7.0〜8.0、解離温度120℃)、「NACURE5925」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、pH7.0〜7.5、解離温度130℃)、「NACURE1323」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン溶媒、pH6.8〜7.5、解離温度150℃)、「NACURE1419」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン/メチルイソブチルケトン溶媒、解離温度150℃)、「NACURE1557」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、ブタノール/2−ブトキシエタノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度150℃)、「NACUREX49−110」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度90℃)、「NACURE3525」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH7.0〜8.5、解離温度120℃)、「NACUREXP−383」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE3327」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度150℃)、「NACURE4167」(リン酸解離、イソプロパノール/イソブタノール溶媒、pH6.8〜7.3、解離温度80℃)、「NACUREXP−297」(リン酸解離、水/イソプロパノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度90℃、「NACURE4575」(リン酸解離、pH7.0〜8.0、解離温度110℃)等が挙げられる。
これらの熱潜在性触媒は単独又は二種類以上組み合わせても使用することができる。
【0162】
熱潜在性触媒の配合量は樹脂溶液中の固形分100質量部に対して、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、特に0.1質量%以上10質量%以下が適している。20質量%を超える添加量であると、焼成処理後に異物となって析出することがあり、0.01質量%以下では触媒活性が低くなる。
【0163】
また、単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)8中の電荷発生材料の含有量は、10質量%以上85質量%以下程度、好ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)6の形成方法は、電荷発生層3や電荷輸送層4の形成方法と同様である。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)6の膜厚は5μm以上50μm以下程度が好ましく、10μm以上40μm以下とするのがさらに好ましい。
【0164】
また、上記の保護層形成用塗布液から形成される保護層7は、優れた機械強度を有する上に光電特性も十分であるため、これをそのまま積層型感光体の電荷輸送層として用いることもできる。
【0165】
図3に示す電子写真感光体のように単層型感光層8を構成する場合、単層型感光層8は、電荷発生材料、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有して形成される。これらの成分は電荷発生層5及び電荷輸送層6の説明で例示されたものと同様のものを用いることができる。単層型感光層8中の電荷発生材料の含有量は、単層型感光層における固形分全量を基準として好ましくは10質量%以上85質量%以下、より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、単層型感光層6中の電荷輸送材料の含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましい。単層型感光層には、光電特性を改善する等の目的で電荷輸送材料や高分子電荷輸送材料を添加してもよい。その添加量は単層型感光層における固形分全量を基準として5質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。また、塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上記各層と同様のものを用いることができる。単層型感光層の膜厚は、5μm以上50μm以下程度が好ましく、10μm以上40μm以下とすることがさらに好ましい。
【0166】
また、本発明においては、感光層が上記ダイナミック硬度及び弾性変形率を満足するのであれば、感光層に保護層を必ずしも設ける必要はない。具体的には、例えば、図1の電子写真感光体において、電荷輸送層6が一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種と、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成される場合、保護層7を省略することができる。すなわち、感光層を、下引き層/電荷発生層/電荷輸送層の構成にすることができる。
【0167】
また、感光層3には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。
【0168】
電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl、CN、NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
【0169】
また、感光層3には、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、又は光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0170】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
【0171】
さらに、電子写真感光体1の最外層である保護層7を、フッ素系樹脂を含有する水性分散液で処理すると、電子写真感光体の回転に要するトルク低減が図れるとともに転写効率の向上も図れるため好ましい。
【0172】
(画像形成装置及びプロセスカートリッジ)
本発明の画像形成装置は、既述の本発明の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像形成する静電潜像手段と、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明のプロセスカートリッジは、既述の本発明の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とする。以下、本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジを図を用いて説明する。
【0173】
図4は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。図4に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体(図示せず)に、電子写真感光体1を備えるプロセスカートリッジ20と、露光装置(静電潜像手段)30と、転写装置(転写手段)40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置30はプロセスカートリッジ20の開口部から電子写真感光体1に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体1に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体1に接するように配置されている。
【0174】
プロセスカートリッジ20は、ケース内に電子写真感光体1とともに帯電装置(帯電手段)21、現像装置(現像手段)25及びクリーニング装置27を取り付けレールにより組み合わせて一体化したものである。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。
【0175】
帯電装置21としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器を使用することができる。また、帯電ローラを感光体1近傍で用いる非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用することができる。
【0176】
現像装置25としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行うことができる。そのような現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体1に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。
【0177】
次に、現像装置25(本発明)に用いられるトナーについて説明する。
本発明に用いられるトナーは、高い現像性及び転写性並びに高画質を得る観点から、平均形状係数SF1が100以上150以下であることが好ましく、105以上145以下であることがより好ましく、110以上140以下であることがさらに好ましい。
ここで、上記形状係数SF1は、下記式により求められる。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0178】
さらに、本発明に用いられるトナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが好ましく、3.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、4μm以上9μm以下であることがさらに好ましい。このような平均形状係数及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、現像性及び転写性が高まり、いわゆる写真画質と呼ばれる高画質の画像を得ることができる。
【0179】
本発明に用いられるトナーの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0180】
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用することができる。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
【0181】
本発明に用いられるトナーは、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含み、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
【0182】
本発明に用いられるトナーに使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0183】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることもできる。
【0184】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
【0185】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
【0186】
また、帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが好ましい。
また、本発明に用いられるトナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0187】
本発明に用いられるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナーを湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0188】
現像装置11に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。但し、平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が好ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0189】
本発明に用いられるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えることができる。
【0190】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0191】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも好ましく使用される。
【0192】
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0193】
前記複合粒子等の粒子径としては、個数平均粒子径で好ましくは5nm以上1000nm以下、より好ましくは5nm以上800nm以下、さらに好ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが好ましい。
【0194】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等の為、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御の為、それより大径の無機酸化物を添加することが好ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものを使用できるが、精密な帯電制御を行う為にはシリカと酸化チタンを併用することが好ましい。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電精製物を除去するために好ましい。
【0195】
複合粒子等はキャリアと混合して使用してもよい。該キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
【0196】
露光装置30としては、例えば、感光体1表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下近傍に発振波長を有するレーザーも利用できる。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0197】
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0198】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いることもできる。
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体1に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
【0199】
図5は、本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。図5に示す画像形成装置110は、電子写真感光体1が画像形成装置本体に固定され、帯電装置(帯電手段)22、現像装置(現像手段)25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されており、それぞれ帯電カートリッジ、現像カートリッジ、クリーニングカートリッジとして独立して備えられている。なお、帯電装置22は、コロナ放電方式により帯電させる帯電装置を備えている。
画像形成装置110においては、電子写真感光体1とそれ以外の各装置が分離されており、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27が画像形成装置本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能である。
【0200】
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体1が既述の本発明の感光体であるため、感光体表面の磨耗を十分抑制することができる。また、電子写真感光体1は、装置内で発生する或いは装置内に混入する異物に対して優れた耐性を有し長寿命である。これにより、カートリッジ化することが不要となる場合がある。したがって、帯電装置22、現像装置25又はクリーニング装置27をそれぞれ本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能な構成とすることで、1プリント当りの部材コストを低減することができる。また、これらの装置のうち2つ以上を一体化したカートリッジとして着脱可能とすることもでき、それにより1プリント当りの部材コストをさらに低減することができる。
なお、画像形成装置110は、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されている以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0201】
図6は、本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。画像形成装置120は、プロセスカートリッジ20を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ20がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用できる構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0202】
タンデム方式の画像形成装置120では、各色のトナー画像を形成させる感光体として本発明の電子写真感光体を備えることにより、長期使用された場合であっても導電性異物によるピンホールリークの発生を十分抑制できるため、色連点欠陥の発生を十分防止でき、長期に亘って高品質の画像を形成することができる。
【0203】
図7は、本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。図7に示す画像形成装置130は、1つの電子写真感光体で複数の色のトナー画像を形成させる、所謂4サイクル方式の画像形成装置である。画像形成装置130は、駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で図中の矢印Aの方向に回転される電子写真感光体1を備えており、電子写真感光体1の上方には、電子写真感光体1の外周面を帯電させる帯電装置22が設けられている。電子写真感光体1は、上記電子写真感光体1と同一の構成を有している。
【0204】
また、帯電装置22の上方には面発光レーザーアレイを露光光源として備える露光装置30が配置されている。露光装置30は、光源から射出される複数本のレーザービームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、電子写真感光体1の外周面上を電子写真感光体1の軸線と平行に走査させる。これにより、帯電した電子写真感光体1の外周面上に静電潜像が形成される。
【0205】
電子写真感光体1の側方には現像装置(現像手段)25が配置されている。現像装置25は回転可能に配置されたローラ状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器25Y,25M,25C,25Kが設けられている。現像器25Y,25M,25C,25Kは各々現像ローラ26を備え、内部に各々Y,M,C,Kの色のトナーを貯留している。
【0206】
画像形成装置130でのフルカラーの画像の形成は、電子写真感光体1が4回転する間に行われる。すなわち、電子写真感光体1が4回転する間、帯電装置(帯電手段)22は電子写真感光体1の外周面の帯電、露光装置(静電潜像手段)20は形成すべきカラー画像を表すY,M,C,Kの画像データのうちの何れかに応じて変調したレーザービームを電子写真感光体1の外周面上で走査させることを、電子写真感光体1が1回転する毎にレーザービームの変調に用いる画像データを切替えながら繰り返す。
【0207】
また、現像装置25は、現像器25Y,25M,25C,25Kの何れかの現像ローラ26が電子写真感光体1の外周面に対応している状態で、外周面に対応している現像器を作動させ、電子写真感光体1の外周面に形成された静電潜像を特定の色に現像し、電子写真感光体1の外周面上に特定色のトナー像を形成させることを、電子写真感光体1が1回転する毎に、静電潜像の現像に用いる現像器が切り替わるように収容体を回転させながら繰り返す。これにより、電子写真感光体1がA方向に1回転する毎に、電子写真感光体1の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が形成されることになる。
【0208】
また、電子写真感光体1の略下方には無端の中間転写ベルト50が配設されている。中間転写ベルト50はローラ51、53、55に巻掛けられており、外周面が電子写真感光体1の外周面に接触するように配置されている。ローラ51,53,55は図示しないモータの駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト50を図1矢印B方向に回転させる。
【0209】
中間転写ベルト50を挟んで電子写真感光体1の反対側には転写装置(転写手段)40が配置されており、電子写真感光体1の外周面上に形成されたトナー像は転写装置40によって中間転写ベルト50の画像形成面に転写される。そして、電子写真感光体1の回転にあわせて、中間転写ベルト50も回転し、電子写真感光体1が4回転した時点で中間転写ベルト50上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
【0210】
また、電子写真感光体1を挟んで現像装置25の反対側には、電子写真感光体1の外周面に潤滑剤供給装置31及びクリーニング装置27が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト50に転写されると、潤滑剤供給装置31により電子写真感光体1の外周面に潤滑剤が供給され、当該外周面のうち転写されたトナー像を担持していた領域がクリーニング装置27により清浄化される。
【0211】
中間転写ベルト50よりも下方側にはトレイ60が配置されており、トレイ60内には記録材料としての用紙(被転写体)Pが多数枚積層された状態で収容されている。トレイ60の左斜め出し方向下流側にはローラ対63、ローラ65が順に配置されている。積層状態で最も上方に位置している記録紙は、取り出しローラ61が回転されることによりトレイ60から取り出され、ローラ対63、ローラ65によって搬送される。
【0212】
また、中間転写ベルト50を挟んでローラ55の反対側には転写装置42が配置されている。ローラ対63、ローラ65によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト50と二次転写装置42の間に送り込まれ、中間転写ベルト50の画像形成面に形成されたトナー像が二次転写装置42によって転写される。二次転写装置42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着装置44が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着装置44によって溶融定着された後に画像形成装置130の機体外へ排出され、排紙トレイ(図示せず)上に載置される。
【0213】
定着装置44としては、例えば、熱ロール定着器、オーブン定着器等の通常使用される装置を使用できる。定着装置44により、被転写媒体上に転写したトナー像を定着することができる。
【0214】
次に、本発明のプロセスカートリッジについて説明する。図8は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
プロセスカートリッジ300は、ケース311内に、電子写真感光体1とともに帯電装置(帯電手段)21、露光装置(静電潜像手段)30、現像装置(現像手段)25、及びクリーニング装置27、並びに、取り付けレール313を用いて組み合わせて一体化したものである。かかるプロセスカートリッジ300は、転写装置(転写手段)40と、定着装置(定着手段)44と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱可能としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0215】
また、本発明の画像形成装置は、前記電子写真感光体表面の残留電位を除電する除電手段を更に備え、前記帯電手段が2本以上の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンであることが好ましい。
図9は、2本以上の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンである帯電手段を備える本発明の画像形成装置の一実施形態の模式図である。
【0216】
図9に示される画像形成装置は、矢印B方向に回転する感光体(電子写真感光体)121を備えており、感光体121の周囲には、感光体121の回転方向(矢印B方向)に沿って順に、感光体121の表面を帯電する帯電装置(帯電手段)123、感光体121の表面を像様に露光して潜像を形成する露光装置(静電潜像手段)124、感光体121の表面にトナーを供給することで前記潜像を現像する現像装置(現像手段)125、現像されたトナー像を被転写媒体(被転写体)Pに転写する転写装置(転写手段)126、転写後の残トナー等を除去し感光体121表面を清浄化するクリーニング装置(クリーニング手段)127、感光体121表面の残留電位を除電する除電装置(除電手段)122が配置されている。また、128は定着装置(定着手段)であり、Pは紙等の被転写媒体(被転写体)である。
帯電装置123は、電源装置129により電位が与えられるようになっている。クリーニング装置127は、クリーニングブレード127’を有しており、これが感光体121の表面に接触するように配置されている。
感光体121は既述の本発明の電子写真感光体である。
【0217】
図9に示される画像形成装置は、感光体121の表面に帯電装置123が接触していても、導電性異物の突き刺さりが防止できるため、リークの発生を防ぐことができる。従って、画像上の色点を防止することができる。
【0218】
図10は、図9における除電装置122と帯電装置123との間のみを抜き出した拡大図である。除電装置122からは感光体121に向けて除電光122’が照射されている。また、帯電装置123は2本の放電ワイヤー123a,123bを有する帯電スコロトロンであり、これら放電ワイヤー123a,123bからの放電により感光体121表面が帯電されるようになっている。
【0219】
このとき、除電装置122による除電の動作が開始する点(つまりは、除電光122’が照射される開始点)である除電開始点Xと、帯電装置123による帯電の動作が終了する点(2本の放電ワイヤーの内、感光体121の回転方向(矢印B方向)下流側の放電ワイヤー23bによる帯電の作用が及ぶ点)である帯電終了点Yとの間を、感光体121の基準点(本発明において、当該「基準点」とは、下記関係式(a)を求めるための電子写真感光体外周表面における任意の一点を指す。)が移動するのに要する時間をT1(sec)、感光体121の最表面層の膜厚(感光層の最表面層の厚み)をd(mm)、感光体121の最表面層の比誘電率をεとした場合に、下記関係式(a)を満たすことで、感光体121が長寿命でありながら、帯電性能の低下や帯電ムラに基づく画質の低下を抑制できる画像形成装置を提供することができる。
・関係式(a)
120≦2.5×103/√T1×exp(0.724d/ε)/d≦255
【0220】
上記関係式(a)において、中央の辺の式(2.5×103/√T1×exp(0.724d/ε))をFとすると、当該Fが255を超える場合には帯電終了後の電子写真感光体表面の帯電低下が画質に著しい影響を及ぼすことになる。一方、当該Fが120未満の場合には帯電には問題ないが、感光層の最表面層内に電荷が溜まり易くなるためサイクルアップの現象が発生してしまう場合がある。
Fの下限値としては120以上であることが好ましく、125以上であることがより好ましく、135以上であることが更に好ましい。また、Fの上限値としては255以下であることが好ましく、250以下であることがより好ましく、247以下であることが更に好ましい。
上記関係式(a)を満たすことで、感光体121が長寿命でありながら、帯電性能の低下や帯電ムラに基づく画質の低下を抑制し得る理由については定かではないが、本発明者らの検証試験によりその効果は実証されている。その一部については、後述する実施例を参照頂きたい。
【0221】
次に、上記関係式(a)の妥当性について、本発明者らの検討した推論を述べる。
まず、既述の本発明の電子写真感光体における最表面層は強度が強く、また、帯電装置から発生されるオゾンが付着し難いので、長寿命化が望まれる画像形成装置に対して非常に有効な特徴をもっているが、その反面、プラス電荷の移動速度が比較的遅い場合がある。
このため、転写後に電子写真感光体表面に残った電荷を消去する除電工程において除電光を使用した場合、大量のプラス電荷が電荷発生層から電荷輸送層を通って感光層の最表面層に到達する。
【0222】
このとき、感光層の最表面層における電荷の移動速度が遅い場合、次サイクルの帯電工程や、さらには帯電工程が終了した後にまでも電荷が電子写真感光体の表面に移動してくる。帯電工程終了後に電子写真感光体表面に到達する、除電光により生じたプラス電荷の量が多いほど、帯電工程における帯電低下が起こり、帯電性の悪い電子写真感光体になるものと考えられる。
このことから、本発明者らは、除電開始から帯電終了までの時間が非常に重要になってくるとの着想を得た。
【0223】
また、感光層の最表面層の膜厚、特に誘電膜厚(d/ε)が、電子写真感光体表面に電荷が到達するまでの時間に大きな影響を及ぼすことが予想された。
さらに、画像部と非画像部とでは除電光によって発生する電荷の量が異なり、帯電終了後の帯電低下の度合いが変ってくるため、画像部と非画像部との間で帯電ムラが発生し易くなることも予想された。
以上の検討結果から、本発明者らが上記影響因子について種々検証した所、これら影響因子と前記目的の実現との間に相関がある。
【0224】
電子写真感光体の感光層の最表面層の誘電膜厚(d/ε)としては、0.2μm以上3.5μm以下であることが好ましく、0.25μm以上3.3μm以下であることがより好ましい。誘電膜厚が1μm未満であると、キャリア片、金属片等のトナーに紛れ込んだ異物によってついた傷が電荷輸送層まで達し易く、その結果画質欠陥として現われやすくなる場合があり、一方、12μmを超えると、高温多湿環境において、長期使用時に伴い露光後の電位が高くなる場合がある。
ここで、誘電膜厚(d/ε)は、感光層の最表面層の実際の膜厚d(mm)を該感光層の最表面層の比誘電率をεで割った値である。比誘電率は,ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1260型を用いて温度22℃、湿度55%、周波数1Hzの条件で測定した。
【0225】
また、除電手段による除電の動作が開始してから、帯電手段による帯電の動作が終了するまでの時間(以下、「除電開始−帯電終了間」と称する。)T1としては、55msec以上200mmsec以下であることが好ましく、60mmsec以上150mmsec以下であることがより好ましい。除電開始−帯電終了間が55mmsec未満の場合には、電荷輸送層(単層型の場合には、後述する「単層型感光層」)内での電荷移動が追従しなくなり感度の低下が発生する場合があり、200mmsecを超える場合には、特に高温高湿下で電子写真感光体表面の電荷が表面方向に移動し易くなるため、画像がボケる可能性が高くなる場合がある。
また、本発明者らは、さらに検討した結果、帯電装置として複数本のワイヤーを有するスコロトロンを用いることで、帯電ムラを少なくできることを見出した。
【0226】
これは、帯電装置の帯電能力そのものが大きくなるだけではなく、帯電装置の幅も大きくなることから結果的に除電開始から帯電終了までの時間が長くなることが良い結果をもたらしていると考えられる。
【0227】
2本以上の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンである帯電手段を備える本発明の画像形成装置における帯電手段及び除電手段の好ましい態様について説明する。
本態様において、帯電手段(図9における、感光体121の表面を帯電する帯電装置123に相当。)は、複数本の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンである。帯電スコロトロンとは、コロナ放電を利用した非接触方式の帯電器の一種であり、放電ワイヤーの周囲に半空間を占めるケーシング電極とそのほぼ中央に置かれた放電ワイヤーにより構成されるコロトロンに対し、さらにグリッド電極を追加したものである。
【0228】
帯電スコロトロンには、一般的に前記放電ワイヤーが1本の物と2本の物とがあり、本発明においては後者の物が用いられる。また、本発明においては、当該放電ワイヤーの本数としては複数本であれば特に制限は無く3本以上でも構わない。
本態様において帯電スコロトロンとしては、2本以上の放電ワイヤーを有する物であれば特に制限は無く、電子写真分野で従来公知の如何なる物も使用できる。
【0229】
本態様において、除電手段(図9における、感光体121表面の残留電位を除電する除電装置122に相当。)は、図9に描かれた除電装置122のように、光を照射するいわゆる除電ランプのほか、コロトロンやスコロトロンによる静電的な除電手段や導電性ブラシなどを採用しても構わない。これらの場合、除電能力は、静電気力の大小により制御することができる。また、チャージする電圧としては、交流と直流の重畳電圧とすることが好ましい。
【0230】
除電ランプを用いる場合には、その光源としてはタングステンランプ、LED、EL(Electro Luminescence)、蛍光灯などが挙げられる。また、その光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。
なお、除電手段として除電ランプ(除電装置122)を用いた場合を例に挙げて図10を用いて説明した除電開始点Xは、静電的な除電手段や導電性ブラシなどを採用した場合には、これらの方式により除電の作用が生じ始めた点(静電気的影響が作用し始めた点、並びに、導電性ブラシが接して帯電され始めた点)が相当する。
【実施例】
【0231】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の実施例において、特にことわらない限り「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ示す。
【0232】
<電子写真感光体の作製>
下引き層用塗布液(U−1)の調製
酸化亜鉛(テイカ社製、「MZ−300」、平均粒子径70nm、比表面積値15m2/g)100部と、テトラヒドロフラン500部とを攪拌混合し、シランカップリング剤(「KBM603」、信越化学社製)を1.25部添加し、2時間攪拌した。その後テトラヒドロフランを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
上記で得られたシランカップリング剤表面処理酸化亜鉛100部と、テトラヒドロフラン500部とを攪拌混合し、この混合物に、アリザリン1部をテトラヒドロフラン50部に溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧濾過により、アリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、続いて、60℃で減圧乾燥を行うことによりアリザリン付与酸化亜鉛顔料(アリザリンと酸化亜鉛とを含む複合体)を得た。
【0233】
次に、上記で得られたアリザリン付与酸化亜鉛顔料を100部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(「スミジュール3175」、住友バイエルンウレタン社製)を13.5部、ブチラール樹脂(「BM−1」、積水化学社製)を15部及びメチルエチルケトンを85部を混合し、次に、この溶液を38部とメチルエチルケトン25部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.005部、及び、シリコーン樹脂粒子(「トスパール145」、GE東芝シリコーン社製)を40部添加し、下引き層形成用塗布液(U−1)を得た。
【0234】
下引き層用塗布液(U−2)の調製
酸化亜鉛(テイカ社製、「MZ−300」、平均粒子径70nm)100部と、テトラヒドロフラン500部とを攪拌混合し、シランカップリング剤(「KBM603」、信越化学社製)を1.25部添加し、2時間攪拌した。その後テトラヒドロフランを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
【0235】
次に、上記で得られたシランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を60部、アリザリンを0.6部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(「スミジュール3175」、住友バイエルンウレタン社製)を13.5部、ブチラール樹脂(「BM−1」、積水化学社製)を15部及びメチルエチルケトンを85部を混合し、次に、この溶液を38部とメチルエチルケトン25部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.005部、及び、シリコーン樹脂粒子(「トスパール145」、GE東芝シリコーン社製)を40部添加し、下引き層形成用塗布液(U−2)を得た。
【0236】
<グアナミン樹脂−1(G−1)>
スーパーベッカミン(R)L−145−60(大日本インキ社製)500部をキシレン500部に溶解し、各々蒸留水400mlを用いて7回水洗した。この溶液を減圧にて溶剤留去し、水あめ状の樹脂250部を得た。これをグアナミン樹脂−1とする。
【0237】
<グアナミン樹脂−2(G−2)>
前記例示化合物:A−(7) 500部をキシレン500部に溶解し、各々蒸留水400mlを用いて7回水洗した。この溶液を減圧にて溶剤留去し、水あめ状の樹脂270部を得た。これをグアナミン樹脂−2とする。
【0238】
<グアナミン樹脂−3(G−3)>
スーパーベッカミン(R)L−148−60そのままをグアナミン樹脂−3とする。
【0239】
<グアナミン樹脂−4(G−4)>
前記例示化合物:(A)−7そのままをグアナミン樹脂−4とする。
【0240】
<触媒−1>
ドデシルベンゼンスルホン酸を触媒−1とする。
【0241】
<触媒−2>
NACURE5225(キングインダストリー社製)を触媒−2とする。
【0242】
<導電性粒子−1>
酸化亜鉛(テイカ社製 MZ150:平均粒径70nm)を導電性粒子−1とする。
【0243】
<導電性粒子−2>
トルエン100ml中に、スルホン酸エステル基を持った加水分解性の有機ケイ素化合物2.5gを溶解させた酸化亜鉛(テイカ社製 MZ150:平均粒径70nm)25gを加えた。95℃で2.5時間環流し、その後減圧下で溶剤を留去、溶剤がなくなった時点で150℃へ昇温し、1.5時間保持することでスルホン酸基を有する酸化亜鉛を得た。これを導電性粒子−2とする。
【0244】
(実施例1)
先ず、円筒状のアルミニウム基材(直径30mm、長さ404mm、肉厚1mm)を用
意した。
(下引き層の作製)
下引き層用塗布液(U−1)を浸漬塗布法にて上記のアルミニウム基材上に塗布し、163℃で33分の乾燥硬化を行い、膜厚23μmの下引き層を得た。
【0245】
(電荷発生層の作製)
X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が少なくとも7.3°、16.0°、24.9°、28.0°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン15部を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10部及び酢酸n−ブチル200部と混合し、これを外径1mmのガラスビーズと共にサンドミルで4時間分散処理した。得られた分散液に、酢酸n−ブチル175部及びメチルエチルケトン180部を添加することにより電荷発生層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引き層が設けられた導電性支持体上に浸漬塗布し、常温で乾燥して膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0246】
(電荷輸送層の作製)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)6部とをクロロベンゼン80部に十分に溶解させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、45分の加熱を行い膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0247】
(保護層の作製)
グアナミン樹脂−1(G−1)を3部、前記例示化合物(I−3)を3部、ポリビニルフェノール樹脂(重量平均分子量約8000、Aldrich製)を0.2部、1−メトキシ−2−プロパノールを8部、及び3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.2を部、ドデシルベンゼンスルホン酸(触媒−1)を0.01部を混合した。さらに導電性粒子−1を0.3部加え、サンドミルで5時間分散させ保護層用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上に浸漬塗布法により塗布し、150℃で0.8時間加熱処理して硬化させ、膜厚約7μmの保護層を形成して実施例1の感光体Aを作製した。
【0248】
(実施例2〜10)
実施例1の感光体Aの作製において、下引き層用塗布液の種類、保護層用塗布液に用いる一般式(A)及びで示される化合物の種類、電荷輸送材料の種類、導電性粒子の種類及び添加量、触媒の種類及び添加量を表1に示すように変更した以外は実施例1の感光体Aを作製と同様にして、感光体B〜Jを作製した。
【0249】
【表1】
【0250】
(実施例11)
実施例1の感光体Aの作製において、保護層用塗布液にアリザリン0.3部を加えた以外は、実施例1と同様に感光体Kを作製した。
【0251】
(実施例12)
実施例1の感光体Aの作製において、保護層の膜厚を11μmとする以外は、実施例11と同様にして、感光体Lを作製した。
【0252】
(比較例1)
実施例1の感光体Aを作製において、電荷輸送層まで感光体Aの作製と同様に形成した。次に、下記式(CT−1)で示される化合物2部及び下記式(CP−1)で示される化合物2部を、イソプロピルアルコール5部、テトラヒドロフラン3部及び蒸留水0.3部の混合溶媒に加えて混合し、この混合物にさらに、イオン交換樹脂(アンバーリスト15E、ローム・アンド・ハース社製)0.05部を加え、室温で攪拌することにより24時間加水分解を行った。なお、式(CT−1)中、−i−Prはイソプロピル基を示す。
【0253】
【化20】
【0254】
加水分解したものからイオン交換樹脂を濾過分離した溶液2部に対し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(aqaq)3)0.03部を加えて、保護層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で10分風乾した。その後、140℃で40分間加熱処理して硬化し、膜厚2.8μmの保護層を形成し、導電性支持体上に下引き層/電荷発生層/電荷輸送層/保護層からなる感光層が設けられた電子写真感光体を得た。この電子写真感光体を感光体aとした。
【0255】
(比較例2)
実施例1の感光体Aの作製において、電荷輸送層まで感光体Aの作製と同様に形成した。次に、メチルシロキサン単位80モル%、メチル−フェニルシロキサン単位20モル%からなるポリシロキサン樹脂(1%のシラノール基を含む)10部をトルエン8部に溶解し、これにメチルトリシロキサン12.0部とジブチル錫ジアセテート0.2部を更に添加して溶液を得た。そして、この溶液10部に、トルエン20部、及び、4−[N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)アミノ]−[2−(トリエトキシシリル)エチル]ベンゼン4部を添加して保護層形成用塗布液を得た。この塗布液を上記電荷輸送層上にスプレー塗布法により塗布し、110℃で10分間風乾した。その後、170℃で2時間加熱処理して硬化し、膜厚約2.8μmの保護層を形成し、導電性支持体上に下引き層/電荷発生層/電荷輸送層/保護層からなる感光層が設けられた電子写真感光体を得た。この電子写真感光体を感光体bとした。
【0256】
(比較例3)
実施例1の感光体Aの作製において、電荷輸送層まで感光体Aの作製と同様に形成し、導電性支持体上に下引き層/電荷発生層/電荷輸送層からなる感光層が設けられた電子写真感光体を得た。この電子写真感光体を感光体cとした。
【0257】
(比較例4)
実施例2の感光体Bの作製において、電荷輸送層まで感光体Aの作製と同様に形成し、と同様にして電荷輸送層までを形成し,導電性支持体上に下引き層/電荷発生層/電荷輸送層からなる感光層が設けられた電子写真感光体を得た。この電子写真感光体を感光体dとした。
【0258】
(比較例5)
先ず、円筒状のアルミニウム基材(直径30mm、長さ404mm、肉厚1mm)を用
意した。次に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部、有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名「エスレックBM−S」、積水化学社製)4部、n−ブチルアルコール170部を撹拌混合して得られた下引き層形成用塗布液を浸漬塗布法により上記アルミニウム基材上に塗布し、150℃で1時間の硬化処理を行うことにより膜厚1.2μmの下引き層を形成した。
【0259】
次に、実施例1の感光体Aの作製と同様にして、上記下引き層上に電荷発生層を形成し、更にその上に電荷輸送層を形成した。
【0260】
次に、ドデシルベンゼンスルホン酸を0.2部にした以外は、実施例1と同様にして保護層形成用塗布液を調製し、この塗布液を電荷輸送層の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、200℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚2.8μmの保護層を形成して、導電性支持体上に下引き層/電荷発生層/電荷輸送層/保護層からなる感光層が設けられた電子写真感光体を得た。この電子写真感光体を感光体eとした。
【0261】
<ダイナミック硬度及び弾性変形率の測定>
実施例1〜12で得られた電子写真感光体A〜L及び比較例1〜5で得られた電子写真感光体a〜eについて、下記の方法に従って感光層のダイナミック硬度及び弾性変形率を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0262】
(ダイナミック硬度)
ベルコビッチ圧子(稜間角115°、先端曲率半径0.07μmのダイアモンド三角錐圧子)を装着した超微小硬度計(島津製作所社製、「DUH−201」)に上記の感光体を10mm角に切断後セットし、圧子押し込み測定モード(押し込み速さは、0.045mN/sec)にて感光層の硬度を測定した。測定は、感光層の保護層側から上記圧子を押し込み荷重0.3mNで押し込み、0.3mNの圧力を1秒間保持し、その後、圧子にかかる圧力を0mNに戻す(圧力の開放速度は0.045mN/sec)ことにより行った。圧子を押し込み荷重0.3mNで押し込んだときの押し込み深さから下記式(1)を用いて硬度を計算し、この計算値を感光層のダイナミック硬度とした。なお、押し込み深さは圧子の変位から、押し込み荷重は圧子に接続したロードセルから読み取った。
DH=3.8584×(P/D2)…(1)
式中、DHはダイナミック硬度、Pは押し込み荷重(単位はN)、Dは押し込み深さ(単位はm)を表す。
【0263】
(弾性変形率)
弾性変形率は、上記の測定において、圧子を押し込み荷重0.3mNで押し込んだときの押し込み深さ、及び、圧子にかかる圧力を解放した後の圧子の変位から、下記式(2)に基づき算出した。
ED=(D−M)/D×100…(2)
式中、EDは弾性変形率(%)、Mは応力解放後の圧子の変位(塑性変形量)[m]、Dは押込み深さ[m]を表す。
【0264】
実施例1〜12で得られた電子写真感光体A〜L及び比較例1〜5で得られた電子写真感光体a〜eをそれぞれ、富士ゼロックス社製フルカラープリンタDocuCentre Color A450に装着して画像形成装置を作製し、下記の画像形成試験1及び画像形成試験2を行った。
【0265】
<画像形成試験1>
上記で作製した画像形成装置を用い、30℃、85%RHの環境下で連続して3万枚の画像形成を行った。その後、同環境下で画像(A3サイズ)形成を行い、そのときの画質を以下の評価基準に基づいて目視により評価した。その結果を表2に示す。
A:良好
B:極僅かな色点欠陥が見られる
C:色点又は色線欠陥が目立つ
また、発生した色点欠陥の個数(色点発生数)をカウントした。その結果を表2に示す。
【0266】
<画像形成試験2>
画像形成装置の長期使用に伴って、劣化した現像器や中間転写体から導電性材料の放出が発生し、それが感光体上に突き刺さる場合を想定して、意図的に円柱状のカーボンファイバー(直径:5μm以上10μm以下、長さ:3μm以上300μm以下)を上記で作製した画像形成装置のトナーカートリッジ中に添加した。なお、カーボンファイバーは、トナーとカーボンファイバーとの質量比が、トナー:カーボンファイバー=1000:1の割合となるように添加した。この画像形成装置を用いて、30℃、85%RHの環境下で連続して10枚の画像形成を行い、10枚目の画像(A3サイズ)を以下の評価基準に基づいて目視により評価した。結果を表2に示す。
A:良好
B:極僅かな色点欠陥が見られる
C:色点又は色線欠陥が目立つ
また、発生した色点欠陥について、0.2mmを超える色点数及び0.2mm以下の色点数をそれぞれカウントし、その結果を表2に示す。
【0267】
【表2】
【0268】
表2に示されるように、感光層のダイナミック硬度が20×109N/m2以上200×109N/m2以下であり且つ感光層の弾性変形率が20%以上80%以下である感光体を備える実施例1〜10の画像形成装置は、画像形成試験2においても良好な画像を形成することができることが確認された。従って、本発明によれば、リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止でき、長期に亘って高画質の画像を形成することが可能である。
【0269】
一方、感光層のダイナミック硬度が20×109N/m2未満である感光体を備える比較例の画像形成装置は、画像形成試験1及び画像形成試験2において良好な画質を形成することができないことが確認された。また、感光層のダイナミック硬度が200×109N/m2を超える感光体を備える比較例の画像形成装置は、画像形成試験2において、感光層の傷や割れに起因すると考えられる0.2mmを超える色点数が多く発生することが分かった。また、感光層の弾性変形率が15%未満である感光体を備える比較例5の画像形成装置は、画像形成試験1及び画像形成試験2において良好な画質を形成することができないことが確認され、また、感光層の傷や割れに起因すると考えられる0.2mmを超える色点数が多く発生することが分かった。
【0270】
<画像形成試験3>
更に、実施例1で得られた電子写真感光体A、及び実施例11で得られた電子写真感光体Kをそれぞれ装着したDocuCentre Color A450それぞれにおいて、低温低湿(8℃、20%RH)、及び高温高湿(28℃、85%RH)の条件下で、1枚画像(A3サイズ)形成を行ったときの画像の状態及び残留電位の状態と、10000枚画像(A3サイズ)形成を行ったときの画像の状態及び残留電位の状態と、を表3に示す。
【0271】
【表3】
【0272】
<画像形成試験4>
富士ゼロックス社製フルカラープリンタDocu Color 1250を改造し、装備されている電子写真感光体を、実施例1で得られた電子写真感光体Aに替えた上で、除電開始から帯電終了までの時間T1が100mmsecとなるように除電装置の位置を変更した画像形成装置を用意した。なお、この画像形成装置は、帯電装置にスコロトロンを用いており、放電ワイヤーを2本有する。
この条件において、関係式(a)の中央の辺(2.5×103/√T1×exp(0.724d/ε))の値を、保護層の比誘電率と共に表4に示す。
【0273】
また、この画像形成装置(上記Docu Color 1250改造機)を用いて、画像密度20%ハーフトーン画像の画出し試験(出力枚数:A3用紙縦5枚=約22サイクル)を実施し、さらにA3用紙縦1000枚出力後、ゴースト評価を実施して、以下の基準で評価した。その結果を表4に示す。
評価基準
○:濃度ムラ及びゴーストとも、発生が見られなかった。
△:濃度ムラ及びゴーストの何れか又は両方において、僅かな発生が見られた。
×:濃度ムラ及びゴーストの何れか又は両方において、発生が見られた。
【0274】
更に、実施例1で得られた電子写真感光体Lの代わりに、実施例12で得られた電子写真感光体Lを用い、除電開始から帯電終了までの時間T1を205mmsecとして、上記画像形成試験4を実施し、ゴースト評価を実施した。その結果を表4に示す。
【0275】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0276】
【図1】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。
【図6】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。
【図8】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図9】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。
【図10】図9における除電装置と帯電装置との間のみを抜き出した概略構成図である。
【図11】感光層の弾性変形率の測定を行った際の、圧子の押し込み荷重と圧子の変位との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0277】
1…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…感光層、4…下引き層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、8…単層型感光層、21,22…帯電装置、24…現像装置、27…クリーニング装置、30…露光装置、40…転写装置、50…中間転写体、100,110,120,130…画像形成装置、121…感光体、122…除電装置、123…帯電装置、123a,123b…放電ワイヤー、124…露光装置、125…現像装置、126…転写装置、127…クリーニング装置、127’…クリーニングブレード、128…定着装置、129…電源装置、300…プロセスカートリッジ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置としては、電子写真感光体(以下、場合により「感光体」という)を用いて帯電、露光、現像、転写、クリーニング等の工程を順次行う装置が広く知られている。このような画像形成装置の分野では、近時、装置の高画質化及び長寿命化に対する要求が高まりつつあり、かかる要求に応えるべく各部材、システムの改善が検討され、感光層の最表面層のダイナミック硬度を13.0×109N/m2以上100.0×109N/m2以下に規定することにより、感光体表面の傷及び感光体に接触する部材の欠損を防止する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−318459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の感光体は、画像書き込みに使用される感光体は帯電やクリーニング等の際にストレスを受けやすく、感光体表面に傷や磨耗が発生すると画像欠陥の原因となる。その一方で、感光体に接触する部材(例えば、帯電ローラやクリーニングブレードなど)もストレスを受けるため、かかる部材の欠損を防止する必要があるため、開発されたものである。
【0004】
ところで、近年、転写される紙の自由度が広がることから、中間転写体を用いて転写する方式が盛んに用いられている。しかし、中間転写体を備える画像形成装置では、装置内で発生する或いは装置内に混入する異物が中間転写体と感光体との間に挟まることがあり、これにより感光体が傷つく、或いは、感光体に突き刺さった異物が導電性支持体にまで達することが起こりやすい。特に、中間転写体が電子写真感光体と比較して硬い場合には、これらの問題が起こりやすい。このような問題が起こると、感光体リーク(感光体に局所過大電流が流れる現象)が発生し、形成される画像に色点などの画質欠陥が生じてしまう。
【0005】
また、近年、電子写真装置の帯電装置として、コロナ放電器などの非接触型帯電装置に代わり、帯電ロール等の接触帯電方式の帯電装置が用いられるようになっている。接触型帯電装置は、低オゾン及び低電力という利点を有するが、この接触型帯電装置を用いた場合は、非接触型帯電装置よりも感光体に高い電圧が印加されるため、感光体に上記の問題が生じるとリークが発生しやすくなる。
上記のように画像形成装置の長期使用に伴って、装置内から(例えば、劣化した現像器や中間転写体から)放出される或いは装置内に混入する異物は増加することから、装置の長寿命化及び高画質化を高水準で達成する上で上述のリークを防止することが重要となる。
【0006】
これに対して、上記特許文献1に記載の方法は感光体の傷を防止することを目的の一つとしているが、本発明らの検討によるとリーク防止に対しては必ずしも十分な解決策であるとはいえないことが判明しており、上記特許文献1に記載の感光体であってもリーク防止性の観点からは更なる改善の必要がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止でき、長寿命化及び高画質化を可能にする電子写真感光体、並びに、かかる電子写真感光体を備え、長寿命化及び高画質化を達成できるプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
導電性支持体表面に感光層を設けてなり、
前記感光層の最も導電性支持体側の層が、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体を含む下引き層であり、
前記感光層の最表面層が、下記一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種と、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、
前記感光層のダイナミック硬度が20×109N/m2以上20×1010N/m2以下であり、且つ、前記感光層の弾性変形率が25%以上70%以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0009】
【化1】
【0010】
(前記一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、又は炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素原子、又は炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。)
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記感光層の最表面層が、電子受容材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体である。
【0012】
請求項3に係る発明は、
前記感光層の最表面層が、粒子を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体である。
【0013】
請求項4に係る発明は、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0014】
請求項5に係る発明は、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像形成する静電潜像手段と、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0015】
請求項6に係る発明は、
前記電子写真感光体表面の残留電位を除電する除電手段を更に備え、前記帯電手段が、2本以上の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置である。
【0016】
請求項7に係る発明は、
前記電子写真感光体の基準点において、電子写真感光体の回転に応じて除電手段による除電の動作が開始してから、帯電手段による帯電の動作が終了するまでの時間をT1(sec)、該電子写真感光体の感光層の最表面層の膜厚をd(mm)、該感光層の最表面層の比誘電率をεとした場合に、下記関係式(a)を満たすことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置である。
・関係式(a)
120≦2.5×103/√T1×exp(0.724d/ε)/d≦255
【0017】
請求項8に係る発明は、
前記感光層の最表面層の誘電膜厚(d/ε)が、0.2μm以上3.5μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置である。
【0018】
請求項9に係る発明は、
前記時間T1が、55mmsec以上200mmsec以下であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止できる。
請求項2に係る発明によれば、残留電位のサイクル特性を安定させることができる、あるいは残留電位を下げることができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、残留電位を下げる、あるいは強度を上げることができる。
請求項4に係る発明によれば、長寿命化及び高画質化を達成できるプロセスカートリッジを提供できる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、長寿命化及び高画質化を達成できる画像形成装置を提供できる。
請求項6に係る発明によれば、帯電ムラを少なくできる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、電子写真感光体が長寿命でありながら、帯電性能の低下や帯電ムラに基づく画質の低下を抑制できる。
請求項8に係る発明によれば、画質欠陥が現れにくい。
請求項9に係る発明によれば、感度の低下や画像のボケを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体(以下、「本発明の感光体」という場合がある。)は、導電性支持体表面に感光層を設けてなり、前記感光層の最も導電性支持体側の層が、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体を含む下引き層であり、前記感光層の最表面層(導電性支持体から最も遠い層)が、下記一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種と、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、前記感光層のダイナミック硬度が20×109N/m2以上20×1010N/m2以下であり、且つ、前記感光層の弾性変形率が25%以上70%以下であることを特徴とする。
尚、本発明において、感光層とは、下引き層から最表面層まですべての層の総称である。
【0024】
【化2】
【0025】
前記一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、又は炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素原子、又は炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。
【0026】
ここで、本発明でいう「ダイナミック硬度」とは、以下のように定義される。すなわち、本発明のダイナミック硬度とは、ベルコビッチ型圧子(三角錐型、稜間角115°、先端曲率半径0.1μm以下のダイアモンド圧子)を電子写真感光体の感光層表面に対して垂直に0.3mNの応力で押し込んだときの押込み深さから、下記式(1)に基づき算出される値をいう。22℃、55%RHの条件下で測定したときの値を本発明におけるダイナミック硬度とする。
DH=3.8584×(P/D2)…(1)
式(1)中、DHはダイナミック硬度[N/m2]、Pは押込み荷重[N]、Dは押込み深さ[m]を表す。ここで、ダイアモンド圧子は、微小硬度測定装置(島津製作所社製、「DUH−201」)に装着されているものであり、押込み深さは、圧子の変位から、押込み荷重は圧子につけたロードセルから読み取る。
【0027】
また、本発明でいう「弾性変形率」とは、以下のように定義される。すなわち、本発明の弾性変形率とは、ベルコビッチ型圧子(三角錐型、稜間角115°、先端曲率半径0.1μm以下のダイアモンド圧子)を電子写真感光体の感光層表面に対して垂直に0.3mNの応力で押し込み、その後、再び圧子にかかる応力を0mNに戻したときの、圧子を0.3mNの応力で押し込んだときの押込み深さ、及び、応力解放後の圧子の変位から、下記式(2)に基づき算出される値をいう。22℃、55%RHの条件下で測定したときの値を本発明における弾性変形率とする。
ED=(D−M)/D×100…(2)
式(2)中、EDは弾性変形率(%)、Mは応力解放後の圧子の変位[m]、Dは押込み深さ[m]を表す。ここで、ダイアモンド圧子は、微小硬度測定装置(島津製作所社製、「DUH−201」)に装着されているものであり、押込み深さは、圧子の変位から、押込み荷重は圧子につけたロードセルから読み取る。
【0028】
ここで、上記の弾性変形率に関して図を用いて更に説明する。図11は、上記の測定を行った際の、圧子の押し込み荷重と圧子の変位との関係を示すグラフである。本発明においては、図11中のP1が0.3mNである。感光層に押し込む圧子にかかる応力を0からP1まで増加させることにより、感光層に食い込む圧子の変位はD1まで増加する(グラフA−B)。その後、圧子にかかる応力をP1から0に減少させることにより、圧子は感光層が弾性変形した分だけ押し戻され、圧子の変位はD1からM1へと減少する(グラフB−C)。このとき、M1が感光層の塑性変形量を意味し、全変形量D1から塑性変形量M1を引いた(D1−M1)が感光層の弾性変形量を意味する。よって、(D1−M1)/D1×100を計算することにより感光層の弾性変形率が求められる。
【0029】
本発明の感光体は、リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止することができ、長寿命化及び高画質化を高水準で達成することが可能となる。
本発明によって上記の効果が奏される理由としては、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、既述の特許文献1に記載の方法のように感光層の表面層を単に硬くするだけでは、トナーのキャリア片や装置内に進入した硬い異物などが感光層に突き刺さった場合、そこを起点として割れや欠けが生じたり、突き刺さった異物が除去されにくくなったりすると考えられる。そのため、画像形成装置の長期使用に伴って装置内から放出される異物が増えてくると、リークを十分防止することできなくなると考えられる。
【0030】
これに対して、本発明の感光体では、感光層の硬度と弾性とが上記範囲でバランスされることにより、感光層への異物の突き刺さりが抑制されつつ、異物が突き刺さった場合には、適度な弾性によって、導電性支持体まで或いはその近傍まで達する前に異物が容易に除去され、且つ、割れや欠けの発生が防止されると考えられる。つまり、本発明の感光体によれば、画像形成装置が長期使用された場合であってもリークの発生要因を十分少なくできることから、リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止することができ、長寿命化及び高画質化を高水準で達成できたものと推察される。
【0031】
また、感光層の硬度と弾性とが上記範囲でバランスされていることにより、感光層に傷が発生することを防止できるとともに、感光体と感光体に接触する部材との間にスティックスリップ現象が発生することを十分防止できることも、長寿命化及び高画質化を高水準で達成できる要因の一つと考えられる。
【0032】
また、本発明の感光体は、カラー画像形成装置に適用した場合、以下の理由により従来に比べて高水準の長寿命化及び高画質化を達成することができる。すなわち、記録媒体にカラー画像を形成する場合は中間転写体を利用することが好適であるが、導電性異物が感光体に貫入してリークが発生すると、各色の点欠陥が連続した色点連欠陥が記録媒体に形成されることがある。これに対して、本発明の電子写真感光体によれば、中間転写体を用いた場合であっても感光体への異物の貫入や感光体の傷の発生を十分防止できることから、リークの発生を十分防止でき、カラー画像形成装置においても記録媒体に色点連欠陥が形成されるのを十分防止できる。
【0033】
前記感光層のダイナミック硬度は、20×109N/m2以上20×1010N/m2以下であり、20×109N/m2以上15×1010N/m2以下であることが好ましく、25×109N/m2以上75×109N/m2以下であることがより好ましく、25×109N/m2以上45×109N/m2以下であることが更に好ましい。前記ダイナミック硬度が20×109N/m2未満であると、感光層に導電性異物が突き刺さりやすく、更に突き刺さった導電性異物が導電性支持体まで達しやすくなり、ピンホールリークに起因する画質欠陥の発生を長期に亘って十分防止することができない。一方、前記ダイナミック硬度が150×109N/m2を超えると、異物が感光層に突き刺さった場合、そこを起点として割れや欠けが生じやすくなると考えられ、欠陥部分のリークに起因する画質欠陥の発生を長期に亘って十分防止することができない。
【0034】
前記感光層の弾性変形率は、25%以上70%以下であり、25%以上45%以下であることが好ましい。前記弾性変形率が25%未満であると、トナーのキャリア片や装置内に進入した硬い異物などによって感光層に傷や割れが発生しやすくなり、また、導電性異物が感光層に突き刺さった場合にはそこを起点として生じた割れや欠けがリークの原因になると考えられ、リークに起因する画質欠陥の発生を長期に亘って十分防止することができない。一方、前記弾性変形率が70%以上であると、感光体と感光体に接触する部材(特には、クリーニングブレード及び中間転写体)との間にスティックスリップ現象が発生しやすくなると考えられ、バンディングなどの画質欠陥が発生し、十分な高画質化を達成できない。
【0035】
本発明の感光体は、例えば、感光層が前記ダイナミック硬度及び弾性変形率の条件を満足するように、後述する感光層を構成する各層の組成及び層厚を適宜選択することにより得ることができる。
本発明においては、より確実かつ容易に長寿命化及び高画質化を達成する観点から、感光層が保護層(最表面層)と下引き層とを有しており、これらの層の組成及び層厚をコントロールすることにより上記の条件を満足する感光層を形成することが特に好ましい。
【0036】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(電子写真感光体)
図1は、本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2と、感光層3とから構成されている。感光層3は、導電性支持体2上に、下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7がこの順序で積層された構造を有している。
また、図2及び3は、それぞれ本発明の電子写真感光体の他の好適な実施形態を示す模式断面図である。図2に示す電子写真感光体は、図1に示す電子写真感光体と同様に電荷発生層5と電荷輸送層6とに機能が分離された感光層3を備えるものである。また、図3は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層8)に含有するものである。
【0037】
図2に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、電荷輸送層6、電荷発生層5、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
また、図3に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引き層4、単層型感光層8及び保護層7が順次積層された構造を有するものである。
【0038】
上記のように、本発明の感光体が備える感光層は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する単層型感光層、又は電荷発生材料を含有する層(電荷発生層)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層)とを別個に設けた機能分離型感光層のいずれであってもよい。機能分離型感光層の場合、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序はいずれが上層であってもよい。なお、機能分離型感光層の場合、それぞれの層がそれぞれの機能を満たせばよいという機能分離ができるため、より高い機能を実現できる。
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体1に基づいて、各要素について説明する。
【0039】
−導電性支持体−
導電性支持体2としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、金属ベルト等が挙げられる。また、導電性支持体2としては、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等も使用できる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。尚、本発明において、体積抵抗率は20℃における体積抵抗率とする。
【0040】
導電性支持体2の表面は、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが好ましい。導電性支持体2の表面のRaが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向がある。他方、Raが0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が不十分となる傾向がある。非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性支持体2表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0041】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が好ましい。
また、他の粗面化の方法としては、導電性支持体2表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も好ましく用いられる。
【0042】
上記陽極酸化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、そのままの多孔質陽極酸化膜は、化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0043】
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0044】
また、導電性支持体2には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が好ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が好ましいが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0045】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行うことができる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0046】
−下引き層−
下引き層4は、導電性支持体2上に形成される。下引き層4は、積層構造を有する感光層3の帯電の際に、導電性支持体2から感光層3への電荷の注入を阻止するとともに、感光層3を導電性支持体2に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用を有するものである。また、下引き層4は、場合によっては導電性支持体2の光の反射防止作用等示すことができる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った支持体を用いる場合は、支持体の欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、下引き層を形成することが好ましい。
さらに、本発明にかかる電子写真感光体は、下引き層を備えていることから、感光層の弾性変形率のコントロールが容易となること、及び、繰り返し使用時の残留電位の上昇を抑制しつつリーク防止性を更に向上させることができる。
【0047】
本発明において、下引き層4は、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体を含んで構成されるものである。
上記複合体に含まれるアクセプター性化合物としては、所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用可能であるが、特にキノン基を有する化合物が好ましく用いられる。さらにアントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が好ましく用いられる。アントラキノン構造を有する化合物としては、アントラキノン以外に、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等があげられ、いずれも好ましく用いることができる。さらに具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が特に好ましく用いられる。
【0048】
上記複合体に含まれる金属酸化物粒子としては、102Ω・cm以上1011Ω・cm以下程度の粉体抵抗(体積抵抗率)を有するものが好ましい。これにより、下引き層4はリーク耐性獲得のために適切な抵抗を得ることが可能となる。上記範囲の下限よりも金属酸化物粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られにくくなる場合があり、一方、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こしやすくなる場合がある。
【0049】
本発明においては、上記抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子を用いるのが好ましい。特に酸化亜鉛は好ましく用いられる。また、金属酸化物粒子は表面処理の異なるものあるいは粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いることもできる。
また、金属酸化物粒子としては、比表面積が10m2/g以上のものが好ましく用いられる。比表面積値が10m2/g以下のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性が得られにくい傾向にある。
【0050】
アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体を得る方法としては、例えば、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって金属酸化物粒子へアクセプター化合物を均一に付与する方法が挙げられる。アクセプター化合物を添加あるいは噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが好ましく、溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、アクセプター化合物が局部的にかたまってしまい均一な処理ができにくい場合がある。添加あるいは噴霧した後、さらに溶剤の沸点温度以上で乾燥を行うことができる。また、金属酸化物粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、アクセプター化合物の有機溶剤溶液を添加し、還流あるいは有機溶剤の沸点以下で攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に付与される。また、溶剤除去方法はろ過あるいは蒸留、加熱乾燥により留去される。
【0051】
上記アクセプター性化合物の付与量は所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定できるが、好ましくは金属酸化物粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下付与される。さらに好ましくは金属酸化物粒子に対して0.05質量%以上10質量%以下付与される。アクセプター性化合物の付与量が0.01質量%未満では下引き層4内の電荷蓄積改善に寄与するだけの十分なアクセプター性を付与できないため、繰り返し使用時に残留電位の上昇などを十分抑制する効果が得られにくくなる場合がある。また、20質量%を超えると金属酸化物同士の凝集を引き起こしやすく、下引き層4の形成時に下引き層4内で金属酸化物が良好な導電路を形成することが困難となり、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる場合がある。
【0052】
また、金属酸化物粒子はアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施すことができる。表面処理剤としては所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択することができる。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため好ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤は下引き層4に良好なブロッキング性を与えるため好ましく用いられる。
【0053】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、所望の電子写真感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができるが、具体例としてはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用することもできる。上記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いることができるシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
乾式法にて表面処理を施す場合には金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒に溶解させたシランカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。添加あるいは噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが好ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的にかたまってしまい均一な処理ができにくい欠点があり、好ましくない。添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
【0056】
湿式法としては、金属酸化物粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去方法はろ過あるいは蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては表面処理剤を添加する前に金属酸化物粒子含有水分を除去することもでき、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いることもできる。
【0057】
下引き層4中の金属酸化物粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定できる。
【0058】
下引き層4に含有されるバインダー樹脂としては、良好な膜を形成できるもので、かつ所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでも使用可能であるが、例えばポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることができる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特に、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
【0059】
尚、本発明において、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体には、金属酸化物粒子、金属酸化物粒子と反応して結合可能な基を有するアクセプター性化合物(以下、「反応性官能基を有するアクセプター性化合物」という場合もある)も含むものとする。
【0060】
反応性官能基を有するアクセプター性化合物としては、所望の特性が得られる金属酸化物粒子と反応可能な基を有するものならばいかなるものでも使用可能であるが、特に水酸基を有する化合物が好ましく用いられる。さらに水酸基を有するアントラキノン構造を有しするアクセプター性化合物が好ましく用いられる。水酸基を有するアントラキノン構造を有する化合物としては、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。さらに具体的にはアリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン、1−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノンなどが特に好ましく用いられる。
【0061】
金属酸化物粒子としては、上述の複合体に用いられる金属酸化物粒子と同様のものが用いられる。また、金属酸化物粒子は表面処理を施すことができ、表面処理剤及び表面処理方法についても上記と同様とすることができる。
【0062】
反応性官能基を有するアクセプター性化合物は、好ましくは金属酸化物粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下となるように、より好ましくは0.05質量%以上10質量%以下となるように下引き層4中に配合される。
【0063】
本発明において、下引き層4の厚みを大きく設定することによって感光層の弾性変形率を既述の範囲とした場合であっても繰り返し使用による残留電位の上昇を十分防止できることから、画質低下を十分抑制しつつ導電性異物が導電性支持体まで達することをより確実に防止することができる。これにより、更に高水準の高画質化を達成できる。
上述の効果をより確実に得る観点から、上記下引き層4の厚さは、15μm以上50μm以下であることが好ましく、17μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0064】
下引き層4は、上述の下引き層を構成する各成分を溶媒に分散させて得られる下引き層形成用塗布液を用いて形成できる。なお、下引き層形成用塗布液中の、上記複合体とバインダー樹脂、又は、金属酸化物粒子と反応性官能基を有するアクセプター性化合物とバインダー樹脂との配合比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0065】
下引き層形成用塗布液には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0066】
シランカップリング剤は金属酸化物粒子の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いることもできる。ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。
【0067】
ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0068】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0069】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0070】
下引き層形成用塗布液を調製するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。これらの溶媒は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。2種以上混合して用いる場合、混合溶媒としてバインダー樹脂を溶かすことができる溶媒であれば、いかなる組み合わせでも使用することが可能である。
【0071】
分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の分散機を用いる方法により分散できる。
【0072】
下引き層形成用塗布液を塗布する方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
【0073】
下引き層は、塗布したものを乾燥させて形成されるが、乾燥は溶媒を蒸発させ製膜可能な温度であればよい。
【0074】
また、下引き層4は、所定のダイナミック硬度及び弾性変形率が得られるのであれば、いかなる厚さに設定することができるが、厚さが15μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは15μm以上50μm以下である。下引き層の厚さが15μm未満であると、充分な耐リーク性能が得られにくくなる場合があり、また50μmを超えると、長期使用時に残留電位が残りやすくなるため画像濃度異常を招きやすい傾向にある。
【0075】
また、下引き層4の表面粗さはモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)以上1/2λ以下に調整されることが好ましい。このような表面粗さ調整のために下引き層中に樹脂などの粒子を添加することができる。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂粒子等を用いることができる。
【0076】
また、表面粗さの調整のために下引き層を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
【0077】
−電荷発生層−
電荷発生層5は、電荷発生材料を含有して、又は電荷発生材料及び結着樹脂を含有して構成される。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フラトシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対しては、金属及又は無金属フタロシアニン顔料が好ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対してはジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン等がより好ましい。
【0078】
電荷発生層5に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1〜1:10の範囲内であることが好ましい。
【0079】
電荷発生層5の形成は、電荷発生材料及び結着樹脂を所定の溶剤中に分散した塗布液を用いて行うことができる。分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0080】
また、電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができる。これらの分散方法により、分散による電荷発生材料の結晶型の変化を防止することができる。さらにこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0081】
電荷発生層5を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
このようにして得られる電荷発生層5の厚みは、好ましくは0.1μm以上5μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0082】
−電荷輸送層−
電荷輸送層6は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して構成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0083】
また、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材を用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも成膜可能であるが、後述する結着樹脂と混合して成膜してもよい。
【0084】
電荷輸送材料としては、モビリティーの観点から、下記一般式(a−1)、(a−2)又は(a−3)で示される化合物が好ましい。
【0085】
【化3】
【0086】
上記式(a−1)中、R34は、水素原子又はメチル基を、k10は、1又は2を示す。また、Ar6及びAr7は、それぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基、−C6H4−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−C6H4−CH=CH−CH=C(Ar)2を示し、置換基としてはハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数1〜3のアルキル基で置換された置換アミノ基が挙げられる。また、R38、R39、R40は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。
【0087】
【化4】
【0088】
上記式(a−2)中、R35及びR35’はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を、R36、R36’、R37及びR37’はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R38)=C(R39)(R40)、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を、R38、R39及びR40はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を、Arは置換又は未置換のアリール基を示す。また、m4及びm5はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。
【0089】
【化5】
【0090】
ここで、上記式(a−3)中、R41は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換若しくは未置換のアリール基、又は、−CH=CH−CH=C(Ar)2を示す。Arは、置換又は未置換のアリール基を示す。R42、R42’、R43、及びR43’はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、又は置換若しくは未置換のアリール基を示す。
【0091】
電荷輸送層6に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。また、上述のように、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材等高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1〜1:5が好ましい。
【0092】
電荷輸送層6の形成は、電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶剤に分散した電荷輸送層形成溶塗布液を用いて行うことができる。溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0093】
電荷輸送層形成溶塗布液の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
【0094】
電荷輸送層6の厚みは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0095】
−保護層−
保護層7は、下記一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種と、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成される。
【0096】
【化6】
【0097】
前記一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、又は炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素原子、又は炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。
【0098】
一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基、又は炭素数4以上10以下の置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素原子、又は炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。
【0099】
一般式(A)において、R1で示されるアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、好ましくは炭素数が1以下8以上であり、より好ましくは炭素数が1以上5以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。
【0100】
一般式(A)中、R1で示されるフェニル基は、炭素数6以上10以下であるが、より好ましくは6以上8以下である。当該フェニル基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0101】
一般式(A)中、R1で示される脂環式炭化水素基は、炭素数4以上10以下であるが、より好ましくは5以上8以下である。当該脂環式炭化水素基に置換される置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0102】
一般式(A)中、R2〜R5で示される「−CH2−O−R6」において、R6で示されるすアルキル基は、炭素数が1以上10以下であるが、好ましくは炭素数が1以下8以上であり、より好ましくは炭素数が1以上6以下である。また、当該アルキル基は、直鎖状であってもよし、分鎖状であってもよい。
【0103】
一般式(A)で示される化合物としては、特に好ましくは、R1が炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示し、R2〜R5がそれぞれ独立に−CH2−O−R6を示される化合物である。また、R6は、メチル基またはn−ブチル基から選ばれることが好ましい。
【0104】
一般式(A)で示される化合物は、グアナミンあるいはメラミンとホルムアルデヒドとを用いて公知の方法(例えば、実験化学講座第4版、28巻、430ページ)で合成することができる。
【0105】
以下、一般式(A)で示される化合物の具体例として、例示化合物:(A)−1〜(A)−22を示すが、これらに限られるわけではない。また、以下の具体例は、単量体のものを示すが、これらを構造単位とする多量体(オリゴマー)であってもよい。更に、以下の具体例は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよいが、混合、あるいは、オリゴマーとして使用することで溶解性を向上できるため、より好ましい。尚、以下の具体例において、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Bu」はブチル基を示す。
【0106】
【化7】
【0107】
【化8】
【0108】
また、スーパーベッカミン(R)L−148−55、スーパーベッカミン(R)13−535、スーパーベッカミン(R)L−145−60、スーパーベッカミン(R)TD−126(大日本インキ社製)、ニカラックBL−60、ニカラックBX−4000(日本カーバイド社製)など、市販のものをそのまま用いることもできる。
さらに、残留触媒の影響を取り除くためにトルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄しても良いし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
【0109】
次に、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料(以下、「特定の電荷輸送材料」という場合がある。)について説明する。
特定の電荷輸送性材料としては、下記一般式(I)で示される化合物であることが好ましい。
F−((−R7−X)n1R8−Y)n2 (I)
【0110】
一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R7及びR8はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、n2は1以上4以下の整数を示す。Xは酸素、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−NH2、−SH、又は−COOHを示す。
【0111】
一般式(I)中、Fを示す正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基における正孔輸送能を有する化合物としては、アリールアミン誘導体が好適に挙げられる。アリールアミン誘導体としては、トリフェニルアミン誘導体、テトラフェニルベンジジン誘導体が好適に挙げられる。
【0112】
そして、一般式(I)で示される化合物は、下記一般式(II)で示される化合物であることが好ましい。一般式(II)で示される化合物は、特に、電荷移動度、酸化などに対する安定性等に優れる。
【0113】
【化9】
【0114】
一般式(II)中、Ar1〜Ar4は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(−R7−X)n1R8−Yを示し、cはそれぞれ独立に0又は1を示し、kは0又は1を示し、Dの総数は1以上4以下である。また、R7及びR8はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0又は1を示し、Xは酸素、NH、又は硫黄原子を示し、Yは−OH、−NH2、−SH、又は−COOHを示す。
【0115】
一般式(II)中、Dで示される「−(−R7−X)n1R8−Y」は、一般式(I)と同様であり、R7及びR8はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基である。また、n1として好ましくは、1である。また、Xとして好ましくは、酸素である。また、Yとして好ましくは水酸基である。なお、一般式(II)におけるDの総数は、一般式(I)におけるn2に相当し、好ましくは、2以上4以下であり、さらに好ましくは3以上4以下である。つまり、一般式(I)や一般式(II)において、好ましくは一分子中に2以上4以下、さらに好ましくは3以上4以下とすると、架橋密度が上がり、より強度の高い架橋膜が得られる。
一般式(II)中、Ar1〜Ar4としては、下記式(1)〜(7)のうちのいずれかであることが好ましい。なお、下記式(1)〜(7)は、各Ar1〜Ar4に連結され得る「−(D)C」と共に示す。
【0116】
【化10】
【0117】
式(1)〜(7)中、R9は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R10〜R12はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、D及びcは一般式(II)における「D」、「c」と同様であり、sはそれぞれ0又は1を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
【0118】
ここで、式(7)中のArとしては、下記式(8)又は(9)で表されるものが好ましい。
【0119】
【化11】
【0120】
[式(8)、(9)中、R13及びR14はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
【0121】
また、式(7)中のZ’としては、下記式(10)〜(17)のうちのいずれかで表されるものが好ましい。
【0122】
【化12】
【0123】
[式(10)〜(17)中、R15及びR16はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。]
【0124】
上記式(16)〜(17)中のWとしては、下記(18)〜(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0125】
【化13】
【0126】
また、一般式(II)中、Ar5は、kが0のときはAr1〜Ar4の説明で例示されたアリール基であり、kが1のときはかかるアリール基から所定の水素原子を除いたアリーレン基である
【0127】
一般式(I)で示される化合物の具体例として、以下に示す例示化合物(I−1)〜(I−25)を挙げる。なお、上記一般式(I)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0128】
【化14】
【0129】
【化15】
【0130】
【化16】
【0131】
【化17】
【0132】
【化18】
【0133】
【化19】
【0134】
一般式(A)で示される化合物と、特定の電荷輸送性材料との割合としては、電気特性、強度の観点から、一般式(A)で示される化合物1質量部に対して、特定の電荷輸送性材料が0.2質量部以上4質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量部以上3質量部以下であり、さらに好ましくは0.4質量部以上2質量部以下である。
また、本発明の感光体は、保護層7が、電子受容材料を含有することが電気特性の改善,特に高残留電位および残留電位のサイクル安定性の点で好ましい。該電子受容材料としては、所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用可能であるが、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが好ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が好ましい。さらに、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が好ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
【0135】
保護層7における電子受容材料の含有量は、一般式(I)で示される化合物1質量部に対し、0.005質量部以上4質量部以下が好ましく、その中でも0.01質量部以上1質量部以下が最も好ましい。保護層7における電子受容材料の含有量が5質量%を超えると、画質欠陥を発生させる場合があり、0.01質量%未満であると、高残留電位となる場合がある。
【0136】
本発明の感光体は、保護層7が、フェノール樹脂又はメラミン樹脂の少なくとも1種を含有することが好ましい。かかるフェノール樹脂又はメラミン樹脂の少なくとも1種を含有することによって感光層の表面の耐摩耗性を向上させることができることから、長期使用によって膜厚が減少することで導電性異物が導電性支持体まで達しやすくなることをより確実に防止できる。さらには、感光層の機械的強度及び電気特性の双方が高められることから、高画質化及び長寿命化を更に高水準で達成できる。
【0137】
保護層7には、さらに、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、フッ素化合物と混合して用いても良い。この化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
【0138】
前記シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等を用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えても良い。シランカップリング剤は任意の量で使用できるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが好ましい。この使用量を超えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
【0139】
また、保護層7の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的でアルコールに溶解する樹脂を加えることもできる。
アルコール系溶剤に可溶な樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、ポリビニルフェノール樹脂などがあげられる。特に、電気特性の点でポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が好ましい。当該樹脂の重量平均分子量は2,000以上100,000以下が好ましく、5,000以上50,000以下がより好ましい。樹脂の重量平均分子量が2,000未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、100,000を超えると溶解度が低下して添加量が制限され、さらには塗布時に製膜不良を招く傾向にある。また、当該樹脂の添加量は固形分に対し1質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。当該樹脂の添加量が1質量%未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、40質量%を超えると高温高湿下での画像ボケが発生しやすくなる。
【0140】
これらの成分を含有する表面層用塗布液の調製は、無溶媒で行うか、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン、3―ヒドロキシ−3―メチルー2−ブタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の溶剤を用いて行うことができる。かかる溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用可能であるが、好ましくは沸点が100℃以下のものである。溶剤量は任意に設定できるが、少なすぎると一般式(A)、一般式(I)で表される化合物が析出しやすくなるため、一般式(I)で表される化合物1質量部に対し0.5質量部以上30質量部以下、好ましくは、1質量部以上20質量部以下で使用される。
【0141】
また、上記成分を反応させて塗布液を得るときには、単純に混合、溶解させるだけでもよいが、室温以上100℃、好ましくは、30℃以上80℃以下で10分以上100時間以下、好ましくは1時間以上50時間以下加温しても良い。また、この際に超音波を照射することも好ましい。これにより、恐らく部分的な反応が進行し、塗布液の均一性が高まり、塗膜欠陥のない均一な膜が得られやすくなる。
【0142】
保護層7には、帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、劣化防止剤を添加することが好ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。劣化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が好ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。劣化防止剤の添加量としては20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0143】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」が挙げられ、チオエーテル系として「スミライザ−TPS」、「スミライザーTP−D」が挙げられ、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」等が挙げられる。
【0144】
また、残留電位を下げるために保護層7に粒子を添加してもよい。該粒子としては、導電性粒子(体積抵抗が10以上107以下の粒子)、後記有機、無機粒子等の粒子が挙げられる。導電性粒子としては、金属、金属酸化物およびカーボンブラック等が挙げられるが、金属または金属酸化物がより好ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀およびステンレス等、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズおよびアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。
これら導電性粒子は単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。
【0145】
これら導電性粒子の体積平均粒径としては、保護層7の透明性の点で、0.3μm以下、特に0.1μm以下が好ましい。
保護層7中の導電性粒子の含有量は,製膜性、電気特性、画質特性の面から、保護層7の全固形分全量を基準として、0.05質量%以上15質量%以下、好ましくは0.3質量%以上10質量%以下の範囲で用いられる。
【0146】
更に、保護層7には残留電位を下げるため、あるいは強度を上げるために導電性粒子の他にも、有機、無機粒子等の粒子を添加してもよい。粒子の一例として、ケイ素含有粒子を挙げることができる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性もしくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。保護層7中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、保護層7の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0147】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。すなわち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。保護層7中のシリコーン粒子の含有量は、保護層7の全固形分全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0148】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集p89”に示されるような、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO2−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。
【0149】
また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0150】
保護層7には、一般式(A)で示される化合物や特定の電荷輸送材料の硬化を促進するために触媒を使用することができ、硬化触媒として酸系の触媒を好ましく用いることができる。酸系の触媒としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族カルボン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、などの脂肪族、および芳香族スルホン酸類などが用いられるが、含硫黄系材料を用いることが好ましい。
【0151】
保護層7が硬化触媒として含硫黄系材料を用いることにより、この含硫黄系材料が一般式(A)で示される化合物や特定の電荷輸送材料の硬化触媒として優れた機能を発揮し、硬化反応を十分に促進して得られる保護層の機械的強度をより向上させることができる。また、前記一般式(I)で示される化合物を更に含む場合、含硫黄系材料は、これら電荷輸送性物質に対するドーパントとしても優れた機能を発揮し、得られる機能層の電気特性をより向上させることができる。その結果、本発明の、電子写真感光体を形成した場合に、機械強度、成膜性及び電気特性の全てを高水準で達成することができるこの触媒としても常温、あるいは、加熱後に酸性を示すものが好ましく、接着性、ゴースト、電気特性の観点で有機スルホン酸及び/又はその誘導体が最も好ましい。保護層中にこれら触媒の存在は、XPS等により容易に確認できる。
【0152】
有機スルホン酸及び/又はその誘導体としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、触媒能、成膜性の観点から、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。また、硬化性樹脂組成物中で、ある程度解離可能であれば、有機スルホン酸塩を用いることもできる。
【0153】
また、一定以上の温度をかけたときに触媒能力が高くなる、所謂、熱潜在性触媒を用いることで、液保管温度では触媒能が低く、硬化時に触媒能が高くなるため、硬化温度の低下と、保存安定性を両立することができる。
【0154】
熱潜在性触媒として、たとえば有機スルホン化合物等をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル、ゼオライトのような空孔化合物に酸等を吸着させたもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックした熱潜在性プロトン酸触媒や、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を一級もしくは二級のアルコールでエステル化したもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をビニルエーテル類及び/又はビニルチオエーテル類でブロックしたもの、三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素のピリジン錯体などがあげられる。
【0155】
中でも、触媒能、保管安定性、入手性、コストの面でプロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたものが好ましい。
【0156】
熱潜在性プロトン酸触媒のプロトン酸として、硫酸、塩酸、酢酸、硫酸、ギ酸、硝酸、リン酸、スルホン酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、o、m、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、プロトン酸誘導体として、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属円などの中和物、プロトン酸骨格が高分子鎖中に導入された高分子化合物(ポリビニルスルホン酸等)等が挙げられる。プロトン酸をブロックする塩基として、アミン類が挙げられる。
【0157】
アミン類として、1級、2級又は3級アミンに分類される。特に制限はなく、本発明ではいずれも使用できる。
【0158】
1級アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、セカンダリーブチルアミン、アリルアミン、メチルヘキシルアミン等が挙げられる。
【0159】
2級アミンとして、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジt−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−イソプロピルN−イソブチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジセカンダリーブチルアミン、ジアリルアミン、N−メチルヘキシルアミン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、モルホリン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
【0160】
3級アミンとして、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N,N’,N’ーテトラメチルー1,2ージアミノエタン、N,N,N’,N’ーテトラメチルー1,3ージアミノプロパン、N,N,N’,N’ーテトラアリルー1,4ージアミノブタン、Nーメチルピペリジン、ピリジン、4ーエチルピリジン、Nープロピルジアリルアミン、3ージメチルアミノプロパノール、2ーエチルピラジン、2,3ージメチルピラジン、2,5ージメチルピラジン、2,4ールチジン、2,5ールチジン、3,4ールチジン、3,5ールチジン、2,4,6ーコリジン、2ーメチルー4ーエチルピリジン、2ーメチルー5ーエチルピリジン、N,N,N’,N’ーテトラメチルヘキサメチレンジアミン、Nーエチルー3ーヒドロキシピペリジン、3ーメチルー4ーエチルピリジン、3ーエチルー4ーメチルピリジン、4ー(5ーノニル)ピリジン、イミダゾール、Nーメチルピペラジン等が挙げられる。
【0161】
市販品としては、キングインダストリーズ社製の「NACURE2501」(トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.0〜7.2、解離温度80℃)、「NACURE2107」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH8.0〜9.0、解離温度90℃)、「NACURE2500」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0〜7.0、解離温度65℃)、「NACURE2530」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH5.7〜6.5、解離温度65℃)、「NACURE2547」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH8.0〜9.0、解離温度107℃)、「NACURE2558」(p−トルエンスルホン酸解離、エチレン/グリコール溶媒、pH3.5〜4.5、解離温度80℃)、「NACUREXP−357」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール溶媒、pH2.0〜4.0、解離温度65℃)、「NACUREXP−386」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH6.1〜6.4、解離温度80℃)、「NACUREXC―2211」(p−トルエンスルホン酸解離、pH7.2〜8.5、解離温度80℃)、「NACURE5225」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0〜7.0、解離温度120℃)、「NACURE5414」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE5528」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH7.0〜8.0、解離温度120℃)、「NACURE5925」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、pH7.0〜7.5、解離温度130℃)、「NACURE1323」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン溶媒、pH6.8〜7.5、解離温度150℃)、「NACURE1419」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン/メチルイソブチルケトン溶媒、解離温度150℃)、「NACURE1557」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、ブタノール/2−ブトキシエタノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度150℃)、「NACUREX49−110」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度90℃)、「NACURE3525」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH7.0〜8.5、解離温度120℃)、「NACUREXP−383」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE3327」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度150℃)、「NACURE4167」(リン酸解離、イソプロパノール/イソブタノール溶媒、pH6.8〜7.3、解離温度80℃)、「NACUREXP−297」(リン酸解離、水/イソプロパノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度90℃、「NACURE4575」(リン酸解離、pH7.0〜8.0、解離温度110℃)等が挙げられる。
これらの熱潜在性触媒は単独又は二種類以上組み合わせても使用することができる。
【0162】
熱潜在性触媒の配合量は樹脂溶液中の固形分100質量部に対して、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、特に0.1質量%以上10質量%以下が適している。20質量%を超える添加量であると、焼成処理後に異物となって析出することがあり、0.01質量%以下では触媒活性が低くなる。
【0163】
また、単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)8中の電荷発生材料の含有量は、10質量%以上85質量%以下程度、好ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)6の形成方法は、電荷発生層3や電荷輸送層4の形成方法と同様である。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)6の膜厚は5μm以上50μm以下程度が好ましく、10μm以上40μm以下とするのがさらに好ましい。
【0164】
また、上記の保護層形成用塗布液から形成される保護層7は、優れた機械強度を有する上に光電特性も十分であるため、これをそのまま積層型感光体の電荷輸送層として用いることもできる。
【0165】
図3に示す電子写真感光体のように単層型感光層8を構成する場合、単層型感光層8は、電荷発生材料、電荷輸送材料及び結着樹脂を含有して形成される。これらの成分は電荷発生層5及び電荷輸送層6の説明で例示されたものと同様のものを用いることができる。単層型感光層8中の電荷発生材料の含有量は、単層型感光層における固形分全量を基準として好ましくは10質量%以上85質量%以下、より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、単層型感光層6中の電荷輸送材料の含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましい。単層型感光層には、光電特性を改善する等の目的で電荷輸送材料や高分子電荷輸送材料を添加してもよい。その添加量は単層型感光層における固形分全量を基準として5質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。また、塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上記各層と同様のものを用いることができる。単層型感光層の膜厚は、5μm以上50μm以下程度が好ましく、10μm以上40μm以下とすることがさらに好ましい。
【0166】
また、本発明においては、感光層が上記ダイナミック硬度及び弾性変形率を満足するのであれば、感光層に保護層を必ずしも設ける必要はない。具体的には、例えば、図1の電子写真感光体において、電荷輸送層6が一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種と、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成される場合、保護層7を省略することができる。すなわち、感光層を、下引き層/電荷発生層/電荷輸送層の構成にすることができる。
【0167】
また、感光層3には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。
【0168】
電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl、CN、NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
【0169】
また、感光層3には、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、又は光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0170】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
【0171】
さらに、電子写真感光体1の最外層である保護層7を、フッ素系樹脂を含有する水性分散液で処理すると、電子写真感光体の回転に要するトルク低減が図れるとともに転写効率の向上も図れるため好ましい。
【0172】
(画像形成装置及びプロセスカートリッジ)
本発明の画像形成装置は、既述の本発明の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像形成する静電潜像手段と、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明のプロセスカートリッジは、既述の本発明の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とする。以下、本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジを図を用いて説明する。
【0173】
図4は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。図4に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体(図示せず)に、電子写真感光体1を備えるプロセスカートリッジ20と、露光装置(静電潜像手段)30と、転写装置(転写手段)40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置30はプロセスカートリッジ20の開口部から電子写真感光体1に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体1に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体1に接するように配置されている。
【0174】
プロセスカートリッジ20は、ケース内に電子写真感光体1とともに帯電装置(帯電手段)21、現像装置(現像手段)25及びクリーニング装置27を取り付けレールにより組み合わせて一体化したものである。なお、ケースには、露光のための開口部が設けられている。
【0175】
帯電装置21としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器を使用することができる。また、帯電ローラを感光体1近傍で用いる非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用することができる。
【0176】
現像装置25としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行うことができる。そのような現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体1に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。
【0177】
次に、現像装置25(本発明)に用いられるトナーについて説明する。
本発明に用いられるトナーは、高い現像性及び転写性並びに高画質を得る観点から、平均形状係数SF1が100以上150以下であることが好ましく、105以上145以下であることがより好ましく、110以上140以下であることがさらに好ましい。
ここで、上記形状係数SF1は、下記式により求められる。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0178】
さらに、本発明に用いられるトナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが好ましく、3.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、4μm以上9μm以下であることがさらに好ましい。このような平均形状係数及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、現像性及び転写性が高まり、いわゆる写真画質と呼ばれる高画質の画像を得ることができる。
【0179】
本発明に用いられるトナーの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0180】
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法を使用することができる。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
【0181】
本発明に用いられるトナーは、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含み、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
【0182】
本発明に用いられるトナーに使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0183】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることもできる。
【0184】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
【0185】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
【0186】
また、帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが好ましい。
また、本発明に用いられるトナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0187】
本発明に用いられるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナーを湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0188】
現像装置11に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用できる。但し、平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が好ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0189】
本発明に用いられるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えることができる。
【0190】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0191】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも好ましく使用される。
【0192】
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0193】
前記複合粒子等の粒子径としては、個数平均粒子径で好ましくは5nm以上1000nm以下、より好ましくは5nm以上800nm以下、さらに好ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける傾向があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる傾向がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが好ましい。
【0194】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等の為、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御の為、それより大径の無機酸化物を添加することが好ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものを使用できるが、精密な帯電制御を行う為にはシリカと酸化チタンを併用することが好ましい。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電精製物を除去するために好ましい。
【0195】
複合粒子等はキャリアと混合して使用してもよい。該キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
【0196】
露光装置30としては、例えば、感光体1表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下近傍に発振波長を有するレーザーも利用できる。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0197】
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0198】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いることもできる。
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体1に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
【0199】
図5は、本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。図5に示す画像形成装置110は、電子写真感光体1が画像形成装置本体に固定され、帯電装置(帯電手段)22、現像装置(現像手段)25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されており、それぞれ帯電カートリッジ、現像カートリッジ、クリーニングカートリッジとして独立して備えられている。なお、帯電装置22は、コロナ放電方式により帯電させる帯電装置を備えている。
画像形成装置110においては、電子写真感光体1とそれ以外の各装置が分離されており、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27が画像形成装置本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能である。
【0200】
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体1が既述の本発明の感光体であるため、感光体表面の磨耗を十分抑制することができる。また、電子写真感光体1は、装置内で発生する或いは装置内に混入する異物に対して優れた耐性を有し長寿命である。これにより、カートリッジ化することが不要となる場合がある。したがって、帯電装置22、現像装置25又はクリーニング装置27をそれぞれ本体にビス、かしめ、接着又は溶接により固定されることなく、引き出し、押しこみによる操作にて脱着可能な構成とすることで、1プリント当りの部材コストを低減することができる。また、これらの装置のうち2つ以上を一体化したカートリッジとして着脱可能とすることもでき、それにより1プリント当りの部材コストをさらに低減することができる。
なお、画像形成装置110は、帯電装置22、現像装置25及びクリーニング装置27がそれぞれカートリッジ化されている以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0201】
図6は、本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。画像形成装置120は、プロセスカートリッジ20を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ20がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用できる構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0202】
タンデム方式の画像形成装置120では、各色のトナー画像を形成させる感光体として本発明の電子写真感光体を備えることにより、長期使用された場合であっても導電性異物によるピンホールリークの発生を十分抑制できるため、色連点欠陥の発生を十分防止でき、長期に亘って高品質の画像を形成することができる。
【0203】
図7は、本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。図7に示す画像形成装置130は、1つの電子写真感光体で複数の色のトナー画像を形成させる、所謂4サイクル方式の画像形成装置である。画像形成装置130は、駆動装置(図示せず)により所定の回転速度で図中の矢印Aの方向に回転される電子写真感光体1を備えており、電子写真感光体1の上方には、電子写真感光体1の外周面を帯電させる帯電装置22が設けられている。電子写真感光体1は、上記電子写真感光体1と同一の構成を有している。
【0204】
また、帯電装置22の上方には面発光レーザーアレイを露光光源として備える露光装置30が配置されている。露光装置30は、光源から射出される複数本のレーザービームを、形成すべき画像に応じて変調すると共に、主走査方向に偏向し、電子写真感光体1の外周面上を電子写真感光体1の軸線と平行に走査させる。これにより、帯電した電子写真感光体1の外周面上に静電潜像が形成される。
【0205】
電子写真感光体1の側方には現像装置(現像手段)25が配置されている。現像装置25は回転可能に配置されたローラ状の収容体を備えている。この収容体の内部には4個の収容部が形成されており、各収容部には現像器25Y,25M,25C,25Kが設けられている。現像器25Y,25M,25C,25Kは各々現像ローラ26を備え、内部に各々Y,M,C,Kの色のトナーを貯留している。
【0206】
画像形成装置130でのフルカラーの画像の形成は、電子写真感光体1が4回転する間に行われる。すなわち、電子写真感光体1が4回転する間、帯電装置(帯電手段)22は電子写真感光体1の外周面の帯電、露光装置(静電潜像手段)20は形成すべきカラー画像を表すY,M,C,Kの画像データのうちの何れかに応じて変調したレーザービームを電子写真感光体1の外周面上で走査させることを、電子写真感光体1が1回転する毎にレーザービームの変調に用いる画像データを切替えながら繰り返す。
【0207】
また、現像装置25は、現像器25Y,25M,25C,25Kの何れかの現像ローラ26が電子写真感光体1の外周面に対応している状態で、外周面に対応している現像器を作動させ、電子写真感光体1の外周面に形成された静電潜像を特定の色に現像し、電子写真感光体1の外周面上に特定色のトナー像を形成させることを、電子写真感光体1が1回転する毎に、静電潜像の現像に用いる現像器が切り替わるように収容体を回転させながら繰り返す。これにより、電子写真感光体1がA方向に1回転する毎に、電子写真感光体1の外周面上には、Y,M,C,Kのトナー像が形成されることになる。
【0208】
また、電子写真感光体1の略下方には無端の中間転写ベルト50が配設されている。中間転写ベルト50はローラ51、53、55に巻掛けられており、外周面が電子写真感光体1の外周面に接触するように配置されている。ローラ51,53,55は図示しないモータの駆動力が伝達されて回転し、中間転写ベルト50を図1矢印B方向に回転させる。
【0209】
中間転写ベルト50を挟んで電子写真感光体1の反対側には転写装置(転写手段)40が配置されており、電子写真感光体1の外周面上に形成されたトナー像は転写装置40によって中間転写ベルト50の画像形成面に転写される。そして、電子写真感光体1の回転にあわせて、中間転写ベルト50も回転し、電子写真感光体1が4回転した時点で中間転写ベルト50上にフルカラーのトナー像が形成されることになる。
【0210】
また、電子写真感光体1を挟んで現像装置25の反対側には、電子写真感光体1の外周面に潤滑剤供給装置31及びクリーニング装置27が配置されている。電子写真感光体12の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト50に転写されると、潤滑剤供給装置31により電子写真感光体1の外周面に潤滑剤が供給され、当該外周面のうち転写されたトナー像を担持していた領域がクリーニング装置27により清浄化される。
【0211】
中間転写ベルト50よりも下方側にはトレイ60が配置されており、トレイ60内には記録材料としての用紙(被転写体)Pが多数枚積層された状態で収容されている。トレイ60の左斜め出し方向下流側にはローラ対63、ローラ65が順に配置されている。積層状態で最も上方に位置している記録紙は、取り出しローラ61が回転されることによりトレイ60から取り出され、ローラ対63、ローラ65によって搬送される。
【0212】
また、中間転写ベルト50を挟んでローラ55の反対側には転写装置42が配置されている。ローラ対63、ローラ65によって搬送された用紙Pは、中間転写ベルト50と二次転写装置42の間に送り込まれ、中間転写ベルト50の画像形成面に形成されたトナー像が二次転写装置42によって転写される。二次転写装置42よりも用紙Pの搬送方向下流側には、定着ローラ対を備えた定着装置44が配置されており、トナー像が転写された用紙Pは、転写されたトナー像が定着装置44によって溶融定着された後に画像形成装置130の機体外へ排出され、排紙トレイ(図示せず)上に載置される。
【0213】
定着装置44としては、例えば、熱ロール定着器、オーブン定着器等の通常使用される装置を使用できる。定着装置44により、被転写媒体上に転写したトナー像を定着することができる。
【0214】
次に、本発明のプロセスカートリッジについて説明する。図8は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
プロセスカートリッジ300は、ケース311内に、電子写真感光体1とともに帯電装置(帯電手段)21、露光装置(静電潜像手段)30、現像装置(現像手段)25、及びクリーニング装置27、並びに、取り付けレール313を用いて組み合わせて一体化したものである。かかるプロセスカートリッジ300は、転写装置(転写手段)40と、定着装置(定着手段)44と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱可能としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0215】
また、本発明の画像形成装置は、前記電子写真感光体表面の残留電位を除電する除電手段を更に備え、前記帯電手段が2本以上の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンであることが好ましい。
図9は、2本以上の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンである帯電手段を備える本発明の画像形成装置の一実施形態の模式図である。
【0216】
図9に示される画像形成装置は、矢印B方向に回転する感光体(電子写真感光体)121を備えており、感光体121の周囲には、感光体121の回転方向(矢印B方向)に沿って順に、感光体121の表面を帯電する帯電装置(帯電手段)123、感光体121の表面を像様に露光して潜像を形成する露光装置(静電潜像手段)124、感光体121の表面にトナーを供給することで前記潜像を現像する現像装置(現像手段)125、現像されたトナー像を被転写媒体(被転写体)Pに転写する転写装置(転写手段)126、転写後の残トナー等を除去し感光体121表面を清浄化するクリーニング装置(クリーニング手段)127、感光体121表面の残留電位を除電する除電装置(除電手段)122が配置されている。また、128は定着装置(定着手段)であり、Pは紙等の被転写媒体(被転写体)である。
帯電装置123は、電源装置129により電位が与えられるようになっている。クリーニング装置127は、クリーニングブレード127’を有しており、これが感光体121の表面に接触するように配置されている。
感光体121は既述の本発明の電子写真感光体である。
【0217】
図9に示される画像形成装置は、感光体121の表面に帯電装置123が接触していても、導電性異物の突き刺さりが防止できるため、リークの発生を防ぐことができる。従って、画像上の色点を防止することができる。
【0218】
図10は、図9における除電装置122と帯電装置123との間のみを抜き出した拡大図である。除電装置122からは感光体121に向けて除電光122’が照射されている。また、帯電装置123は2本の放電ワイヤー123a,123bを有する帯電スコロトロンであり、これら放電ワイヤー123a,123bからの放電により感光体121表面が帯電されるようになっている。
【0219】
このとき、除電装置122による除電の動作が開始する点(つまりは、除電光122’が照射される開始点)である除電開始点Xと、帯電装置123による帯電の動作が終了する点(2本の放電ワイヤーの内、感光体121の回転方向(矢印B方向)下流側の放電ワイヤー23bによる帯電の作用が及ぶ点)である帯電終了点Yとの間を、感光体121の基準点(本発明において、当該「基準点」とは、下記関係式(a)を求めるための電子写真感光体外周表面における任意の一点を指す。)が移動するのに要する時間をT1(sec)、感光体121の最表面層の膜厚(感光層の最表面層の厚み)をd(mm)、感光体121の最表面層の比誘電率をεとした場合に、下記関係式(a)を満たすことで、感光体121が長寿命でありながら、帯電性能の低下や帯電ムラに基づく画質の低下を抑制できる画像形成装置を提供することができる。
・関係式(a)
120≦2.5×103/√T1×exp(0.724d/ε)/d≦255
【0220】
上記関係式(a)において、中央の辺の式(2.5×103/√T1×exp(0.724d/ε))をFとすると、当該Fが255を超える場合には帯電終了後の電子写真感光体表面の帯電低下が画質に著しい影響を及ぼすことになる。一方、当該Fが120未満の場合には帯電には問題ないが、感光層の最表面層内に電荷が溜まり易くなるためサイクルアップの現象が発生してしまう場合がある。
Fの下限値としては120以上であることが好ましく、125以上であることがより好ましく、135以上であることが更に好ましい。また、Fの上限値としては255以下であることが好ましく、250以下であることがより好ましく、247以下であることが更に好ましい。
上記関係式(a)を満たすことで、感光体121が長寿命でありながら、帯電性能の低下や帯電ムラに基づく画質の低下を抑制し得る理由については定かではないが、本発明者らの検証試験によりその効果は実証されている。その一部については、後述する実施例を参照頂きたい。
【0221】
次に、上記関係式(a)の妥当性について、本発明者らの検討した推論を述べる。
まず、既述の本発明の電子写真感光体における最表面層は強度が強く、また、帯電装置から発生されるオゾンが付着し難いので、長寿命化が望まれる画像形成装置に対して非常に有効な特徴をもっているが、その反面、プラス電荷の移動速度が比較的遅い場合がある。
このため、転写後に電子写真感光体表面に残った電荷を消去する除電工程において除電光を使用した場合、大量のプラス電荷が電荷発生層から電荷輸送層を通って感光層の最表面層に到達する。
【0222】
このとき、感光層の最表面層における電荷の移動速度が遅い場合、次サイクルの帯電工程や、さらには帯電工程が終了した後にまでも電荷が電子写真感光体の表面に移動してくる。帯電工程終了後に電子写真感光体表面に到達する、除電光により生じたプラス電荷の量が多いほど、帯電工程における帯電低下が起こり、帯電性の悪い電子写真感光体になるものと考えられる。
このことから、本発明者らは、除電開始から帯電終了までの時間が非常に重要になってくるとの着想を得た。
【0223】
また、感光層の最表面層の膜厚、特に誘電膜厚(d/ε)が、電子写真感光体表面に電荷が到達するまでの時間に大きな影響を及ぼすことが予想された。
さらに、画像部と非画像部とでは除電光によって発生する電荷の量が異なり、帯電終了後の帯電低下の度合いが変ってくるため、画像部と非画像部との間で帯電ムラが発生し易くなることも予想された。
以上の検討結果から、本発明者らが上記影響因子について種々検証した所、これら影響因子と前記目的の実現との間に相関がある。
【0224】
電子写真感光体の感光層の最表面層の誘電膜厚(d/ε)としては、0.2μm以上3.5μm以下であることが好ましく、0.25μm以上3.3μm以下であることがより好ましい。誘電膜厚が1μm未満であると、キャリア片、金属片等のトナーに紛れ込んだ異物によってついた傷が電荷輸送層まで達し易く、その結果画質欠陥として現われやすくなる場合があり、一方、12μmを超えると、高温多湿環境において、長期使用時に伴い露光後の電位が高くなる場合がある。
ここで、誘電膜厚(d/ε)は、感光層の最表面層の実際の膜厚d(mm)を該感光層の最表面層の比誘電率をεで割った値である。比誘電率は,ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1260型を用いて温度22℃、湿度55%、周波数1Hzの条件で測定した。
【0225】
また、除電手段による除電の動作が開始してから、帯電手段による帯電の動作が終了するまでの時間(以下、「除電開始−帯電終了間」と称する。)T1としては、55msec以上200mmsec以下であることが好ましく、60mmsec以上150mmsec以下であることがより好ましい。除電開始−帯電終了間が55mmsec未満の場合には、電荷輸送層(単層型の場合には、後述する「単層型感光層」)内での電荷移動が追従しなくなり感度の低下が発生する場合があり、200mmsecを超える場合には、特に高温高湿下で電子写真感光体表面の電荷が表面方向に移動し易くなるため、画像がボケる可能性が高くなる場合がある。
また、本発明者らは、さらに検討した結果、帯電装置として複数本のワイヤーを有するスコロトロンを用いることで、帯電ムラを少なくできることを見出した。
【0226】
これは、帯電装置の帯電能力そのものが大きくなるだけではなく、帯電装置の幅も大きくなることから結果的に除電開始から帯電終了までの時間が長くなることが良い結果をもたらしていると考えられる。
【0227】
2本以上の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンである帯電手段を備える本発明の画像形成装置における帯電手段及び除電手段の好ましい態様について説明する。
本態様において、帯電手段(図9における、感光体121の表面を帯電する帯電装置123に相当。)は、複数本の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンである。帯電スコロトロンとは、コロナ放電を利用した非接触方式の帯電器の一種であり、放電ワイヤーの周囲に半空間を占めるケーシング電極とそのほぼ中央に置かれた放電ワイヤーにより構成されるコロトロンに対し、さらにグリッド電極を追加したものである。
【0228】
帯電スコロトロンには、一般的に前記放電ワイヤーが1本の物と2本の物とがあり、本発明においては後者の物が用いられる。また、本発明においては、当該放電ワイヤーの本数としては複数本であれば特に制限は無く3本以上でも構わない。
本態様において帯電スコロトロンとしては、2本以上の放電ワイヤーを有する物であれば特に制限は無く、電子写真分野で従来公知の如何なる物も使用できる。
【0229】
本態様において、除電手段(図9における、感光体121表面の残留電位を除電する除電装置122に相当。)は、図9に描かれた除電装置122のように、光を照射するいわゆる除電ランプのほか、コロトロンやスコロトロンによる静電的な除電手段や導電性ブラシなどを採用しても構わない。これらの場合、除電能力は、静電気力の大小により制御することができる。また、チャージする電圧としては、交流と直流の重畳電圧とすることが好ましい。
【0230】
除電ランプを用いる場合には、その光源としてはタングステンランプ、LED、EL(Electro Luminescence)、蛍光灯などが挙げられる。また、その光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。
なお、除電手段として除電ランプ(除電装置122)を用いた場合を例に挙げて図10を用いて説明した除電開始点Xは、静電的な除電手段や導電性ブラシなどを採用した場合には、これらの方式により除電の作用が生じ始めた点(静電気的影響が作用し始めた点、並びに、導電性ブラシが接して帯電され始めた点)が相当する。
【実施例】
【0231】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の実施例において、特にことわらない限り「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ示す。
【0232】
<電子写真感光体の作製>
下引き層用塗布液(U−1)の調製
酸化亜鉛(テイカ社製、「MZ−300」、平均粒子径70nm、比表面積値15m2/g)100部と、テトラヒドロフラン500部とを攪拌混合し、シランカップリング剤(「KBM603」、信越化学社製)を1.25部添加し、2時間攪拌した。その後テトラヒドロフランを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
上記で得られたシランカップリング剤表面処理酸化亜鉛100部と、テトラヒドロフラン500部とを攪拌混合し、この混合物に、アリザリン1部をテトラヒドロフラン50部に溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧濾過により、アリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、続いて、60℃で減圧乾燥を行うことによりアリザリン付与酸化亜鉛顔料(アリザリンと酸化亜鉛とを含む複合体)を得た。
【0233】
次に、上記で得られたアリザリン付与酸化亜鉛顔料を100部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(「スミジュール3175」、住友バイエルンウレタン社製)を13.5部、ブチラール樹脂(「BM−1」、積水化学社製)を15部及びメチルエチルケトンを85部を混合し、次に、この溶液を38部とメチルエチルケトン25部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.005部、及び、シリコーン樹脂粒子(「トスパール145」、GE東芝シリコーン社製)を40部添加し、下引き層形成用塗布液(U−1)を得た。
【0234】
下引き層用塗布液(U−2)の調製
酸化亜鉛(テイカ社製、「MZ−300」、平均粒子径70nm)100部と、テトラヒドロフラン500部とを攪拌混合し、シランカップリング剤(「KBM603」、信越化学社製)を1.25部添加し、2時間攪拌した。その後テトラヒドロフランを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
【0235】
次に、上記で得られたシランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を60部、アリザリンを0.6部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(「スミジュール3175」、住友バイエルンウレタン社製)を13.5部、ブチラール樹脂(「BM−1」、積水化学社製)を15部及びメチルエチルケトンを85部を混合し、次に、この溶液を38部とメチルエチルケトン25部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.005部、及び、シリコーン樹脂粒子(「トスパール145」、GE東芝シリコーン社製)を40部添加し、下引き層形成用塗布液(U−2)を得た。
【0236】
<グアナミン樹脂−1(G−1)>
スーパーベッカミン(R)L−145−60(大日本インキ社製)500部をキシレン500部に溶解し、各々蒸留水400mlを用いて7回水洗した。この溶液を減圧にて溶剤留去し、水あめ状の樹脂250部を得た。これをグアナミン樹脂−1とする。
【0237】
<グアナミン樹脂−2(G−2)>
前記例示化合物:A−(7) 500部をキシレン500部に溶解し、各々蒸留水400mlを用いて7回水洗した。この溶液を減圧にて溶剤留去し、水あめ状の樹脂270部を得た。これをグアナミン樹脂−2とする。
【0238】
<グアナミン樹脂−3(G−3)>
スーパーベッカミン(R)L−148−60そのままをグアナミン樹脂−3とする。
【0239】
<グアナミン樹脂−4(G−4)>
前記例示化合物:(A)−7そのままをグアナミン樹脂−4とする。
【0240】
<触媒−1>
ドデシルベンゼンスルホン酸を触媒−1とする。
【0241】
<触媒−2>
NACURE5225(キングインダストリー社製)を触媒−2とする。
【0242】
<導電性粒子−1>
酸化亜鉛(テイカ社製 MZ150:平均粒径70nm)を導電性粒子−1とする。
【0243】
<導電性粒子−2>
トルエン100ml中に、スルホン酸エステル基を持った加水分解性の有機ケイ素化合物2.5gを溶解させた酸化亜鉛(テイカ社製 MZ150:平均粒径70nm)25gを加えた。95℃で2.5時間環流し、その後減圧下で溶剤を留去、溶剤がなくなった時点で150℃へ昇温し、1.5時間保持することでスルホン酸基を有する酸化亜鉛を得た。これを導電性粒子−2とする。
【0244】
(実施例1)
先ず、円筒状のアルミニウム基材(直径30mm、長さ404mm、肉厚1mm)を用
意した。
(下引き層の作製)
下引き層用塗布液(U−1)を浸漬塗布法にて上記のアルミニウム基材上に塗布し、163℃で33分の乾燥硬化を行い、膜厚23μmの下引き層を得た。
【0245】
(電荷発生層の作製)
X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が少なくとも7.3°、16.0°、24.9°、28.0°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン15部を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10部及び酢酸n−ブチル200部と混合し、これを外径1mmのガラスビーズと共にサンドミルで4時間分散処理した。得られた分散液に、酢酸n−ブチル175部及びメチルエチルケトン180部を添加することにより電荷発生層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引き層が設けられた導電性支持体上に浸漬塗布し、常温で乾燥して膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0246】
(電荷輸送層の作製)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)6部とをクロロベンゼン80部に十分に溶解させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、45分の加熱を行い膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0247】
(保護層の作製)
グアナミン樹脂−1(G−1)を3部、前記例示化合物(I−3)を3部、ポリビニルフェノール樹脂(重量平均分子量約8000、Aldrich製)を0.2部、1−メトキシ−2−プロパノールを8部、及び3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.2を部、ドデシルベンゼンスルホン酸(触媒−1)を0.01部を混合した。さらに導電性粒子−1を0.3部加え、サンドミルで5時間分散させ保護層用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上に浸漬塗布法により塗布し、150℃で0.8時間加熱処理して硬化させ、膜厚約7μmの保護層を形成して実施例1の感光体Aを作製した。
【0248】
(実施例2〜10)
実施例1の感光体Aの作製において、下引き層用塗布液の種類、保護層用塗布液に用いる一般式(A)及びで示される化合物の種類、電荷輸送材料の種類、導電性粒子の種類及び添加量、触媒の種類及び添加量を表1に示すように変更した以外は実施例1の感光体Aを作製と同様にして、感光体B〜Jを作製した。
【0249】
【表1】
【0250】
(実施例11)
実施例1の感光体Aの作製において、保護層用塗布液にアリザリン0.3部を加えた以外は、実施例1と同様に感光体Kを作製した。
【0251】
(実施例12)
実施例1の感光体Aの作製において、保護層の膜厚を11μmとする以外は、実施例11と同様にして、感光体Lを作製した。
【0252】
(比較例1)
実施例1の感光体Aを作製において、電荷輸送層まで感光体Aの作製と同様に形成した。次に、下記式(CT−1)で示される化合物2部及び下記式(CP−1)で示される化合物2部を、イソプロピルアルコール5部、テトラヒドロフラン3部及び蒸留水0.3部の混合溶媒に加えて混合し、この混合物にさらに、イオン交換樹脂(アンバーリスト15E、ローム・アンド・ハース社製)0.05部を加え、室温で攪拌することにより24時間加水分解を行った。なお、式(CT−1)中、−i−Prはイソプロピル基を示す。
【0253】
【化20】
【0254】
加水分解したものからイオン交換樹脂を濾過分離した溶液2部に対し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(aqaq)3)0.03部を加えて、保護層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で10分風乾した。その後、140℃で40分間加熱処理して硬化し、膜厚2.8μmの保護層を形成し、導電性支持体上に下引き層/電荷発生層/電荷輸送層/保護層からなる感光層が設けられた電子写真感光体を得た。この電子写真感光体を感光体aとした。
【0255】
(比較例2)
実施例1の感光体Aの作製において、電荷輸送層まで感光体Aの作製と同様に形成した。次に、メチルシロキサン単位80モル%、メチル−フェニルシロキサン単位20モル%からなるポリシロキサン樹脂(1%のシラノール基を含む)10部をトルエン8部に溶解し、これにメチルトリシロキサン12.0部とジブチル錫ジアセテート0.2部を更に添加して溶液を得た。そして、この溶液10部に、トルエン20部、及び、4−[N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)アミノ]−[2−(トリエトキシシリル)エチル]ベンゼン4部を添加して保護層形成用塗布液を得た。この塗布液を上記電荷輸送層上にスプレー塗布法により塗布し、110℃で10分間風乾した。その後、170℃で2時間加熱処理して硬化し、膜厚約2.8μmの保護層を形成し、導電性支持体上に下引き層/電荷発生層/電荷輸送層/保護層からなる感光層が設けられた電子写真感光体を得た。この電子写真感光体を感光体bとした。
【0256】
(比較例3)
実施例1の感光体Aの作製において、電荷輸送層まで感光体Aの作製と同様に形成し、導電性支持体上に下引き層/電荷発生層/電荷輸送層からなる感光層が設けられた電子写真感光体を得た。この電子写真感光体を感光体cとした。
【0257】
(比較例4)
実施例2の感光体Bの作製において、電荷輸送層まで感光体Aの作製と同様に形成し、と同様にして電荷輸送層までを形成し,導電性支持体上に下引き層/電荷発生層/電荷輸送層からなる感光層が設けられた電子写真感光体を得た。この電子写真感光体を感光体dとした。
【0258】
(比較例5)
先ず、円筒状のアルミニウム基材(直径30mm、長さ404mm、肉厚1mm)を用
意した。次に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部、有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名「エスレックBM−S」、積水化学社製)4部、n−ブチルアルコール170部を撹拌混合して得られた下引き層形成用塗布液を浸漬塗布法により上記アルミニウム基材上に塗布し、150℃で1時間の硬化処理を行うことにより膜厚1.2μmの下引き層を形成した。
【0259】
次に、実施例1の感光体Aの作製と同様にして、上記下引き層上に電荷発生層を形成し、更にその上に電荷輸送層を形成した。
【0260】
次に、ドデシルベンゼンスルホン酸を0.2部にした以外は、実施例1と同様にして保護層形成用塗布液を調製し、この塗布液を電荷輸送層の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、200℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚2.8μmの保護層を形成して、導電性支持体上に下引き層/電荷発生層/電荷輸送層/保護層からなる感光層が設けられた電子写真感光体を得た。この電子写真感光体を感光体eとした。
【0261】
<ダイナミック硬度及び弾性変形率の測定>
実施例1〜12で得られた電子写真感光体A〜L及び比較例1〜5で得られた電子写真感光体a〜eについて、下記の方法に従って感光層のダイナミック硬度及び弾性変形率を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0262】
(ダイナミック硬度)
ベルコビッチ圧子(稜間角115°、先端曲率半径0.07μmのダイアモンド三角錐圧子)を装着した超微小硬度計(島津製作所社製、「DUH−201」)に上記の感光体を10mm角に切断後セットし、圧子押し込み測定モード(押し込み速さは、0.045mN/sec)にて感光層の硬度を測定した。測定は、感光層の保護層側から上記圧子を押し込み荷重0.3mNで押し込み、0.3mNの圧力を1秒間保持し、その後、圧子にかかる圧力を0mNに戻す(圧力の開放速度は0.045mN/sec)ことにより行った。圧子を押し込み荷重0.3mNで押し込んだときの押し込み深さから下記式(1)を用いて硬度を計算し、この計算値を感光層のダイナミック硬度とした。なお、押し込み深さは圧子の変位から、押し込み荷重は圧子に接続したロードセルから読み取った。
DH=3.8584×(P/D2)…(1)
式中、DHはダイナミック硬度、Pは押し込み荷重(単位はN)、Dは押し込み深さ(単位はm)を表す。
【0263】
(弾性変形率)
弾性変形率は、上記の測定において、圧子を押し込み荷重0.3mNで押し込んだときの押し込み深さ、及び、圧子にかかる圧力を解放した後の圧子の変位から、下記式(2)に基づき算出した。
ED=(D−M)/D×100…(2)
式中、EDは弾性変形率(%)、Mは応力解放後の圧子の変位(塑性変形量)[m]、Dは押込み深さ[m]を表す。
【0264】
実施例1〜12で得られた電子写真感光体A〜L及び比較例1〜5で得られた電子写真感光体a〜eをそれぞれ、富士ゼロックス社製フルカラープリンタDocuCentre Color A450に装着して画像形成装置を作製し、下記の画像形成試験1及び画像形成試験2を行った。
【0265】
<画像形成試験1>
上記で作製した画像形成装置を用い、30℃、85%RHの環境下で連続して3万枚の画像形成を行った。その後、同環境下で画像(A3サイズ)形成を行い、そのときの画質を以下の評価基準に基づいて目視により評価した。その結果を表2に示す。
A:良好
B:極僅かな色点欠陥が見られる
C:色点又は色線欠陥が目立つ
また、発生した色点欠陥の個数(色点発生数)をカウントした。その結果を表2に示す。
【0266】
<画像形成試験2>
画像形成装置の長期使用に伴って、劣化した現像器や中間転写体から導電性材料の放出が発生し、それが感光体上に突き刺さる場合を想定して、意図的に円柱状のカーボンファイバー(直径:5μm以上10μm以下、長さ:3μm以上300μm以下)を上記で作製した画像形成装置のトナーカートリッジ中に添加した。なお、カーボンファイバーは、トナーとカーボンファイバーとの質量比が、トナー:カーボンファイバー=1000:1の割合となるように添加した。この画像形成装置を用いて、30℃、85%RHの環境下で連続して10枚の画像形成を行い、10枚目の画像(A3サイズ)を以下の評価基準に基づいて目視により評価した。結果を表2に示す。
A:良好
B:極僅かな色点欠陥が見られる
C:色点又は色線欠陥が目立つ
また、発生した色点欠陥について、0.2mmを超える色点数及び0.2mm以下の色点数をそれぞれカウントし、その結果を表2に示す。
【0267】
【表2】
【0268】
表2に示されるように、感光層のダイナミック硬度が20×109N/m2以上200×109N/m2以下であり且つ感光層の弾性変形率が20%以上80%以下である感光体を備える実施例1〜10の画像形成装置は、画像形成試験2においても良好な画像を形成することができることが確認された。従って、本発明によれば、リークに起因する画質欠陥の発生を十分防止でき、長期に亘って高画質の画像を形成することが可能である。
【0269】
一方、感光層のダイナミック硬度が20×109N/m2未満である感光体を備える比較例の画像形成装置は、画像形成試験1及び画像形成試験2において良好な画質を形成することができないことが確認された。また、感光層のダイナミック硬度が200×109N/m2を超える感光体を備える比較例の画像形成装置は、画像形成試験2において、感光層の傷や割れに起因すると考えられる0.2mmを超える色点数が多く発生することが分かった。また、感光層の弾性変形率が15%未満である感光体を備える比較例5の画像形成装置は、画像形成試験1及び画像形成試験2において良好な画質を形成することができないことが確認され、また、感光層の傷や割れに起因すると考えられる0.2mmを超える色点数が多く発生することが分かった。
【0270】
<画像形成試験3>
更に、実施例1で得られた電子写真感光体A、及び実施例11で得られた電子写真感光体Kをそれぞれ装着したDocuCentre Color A450それぞれにおいて、低温低湿(8℃、20%RH)、及び高温高湿(28℃、85%RH)の条件下で、1枚画像(A3サイズ)形成を行ったときの画像の状態及び残留電位の状態と、10000枚画像(A3サイズ)形成を行ったときの画像の状態及び残留電位の状態と、を表3に示す。
【0271】
【表3】
【0272】
<画像形成試験4>
富士ゼロックス社製フルカラープリンタDocu Color 1250を改造し、装備されている電子写真感光体を、実施例1で得られた電子写真感光体Aに替えた上で、除電開始から帯電終了までの時間T1が100mmsecとなるように除電装置の位置を変更した画像形成装置を用意した。なお、この画像形成装置は、帯電装置にスコロトロンを用いており、放電ワイヤーを2本有する。
この条件において、関係式(a)の中央の辺(2.5×103/√T1×exp(0.724d/ε))の値を、保護層の比誘電率と共に表4に示す。
【0273】
また、この画像形成装置(上記Docu Color 1250改造機)を用いて、画像密度20%ハーフトーン画像の画出し試験(出力枚数:A3用紙縦5枚=約22サイクル)を実施し、さらにA3用紙縦1000枚出力後、ゴースト評価を実施して、以下の基準で評価した。その結果を表4に示す。
評価基準
○:濃度ムラ及びゴーストとも、発生が見られなかった。
△:濃度ムラ及びゴーストの何れか又は両方において、僅かな発生が見られた。
×:濃度ムラ及びゴーストの何れか又は両方において、発生が見られた。
【0274】
更に、実施例1で得られた電子写真感光体Lの代わりに、実施例12で得られた電子写真感光体Lを用い、除電開始から帯電終了までの時間T1を205mmsecとして、上記画像形成試験4を実施し、ゴースト評価を実施した。その結果を表4に示す。
【0275】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0276】
【図1】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。
【図6】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。
【図8】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図9】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。
【図10】図9における除電装置と帯電装置との間のみを抜き出した概略構成図である。
【図11】感光層の弾性変形率の測定を行った際の、圧子の押し込み荷重と圧子の変位との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0277】
1…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…感光層、4…下引き層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、8…単層型感光層、21,22…帯電装置、24…現像装置、27…クリーニング装置、30…露光装置、40…転写装置、50…中間転写体、100,110,120,130…画像形成装置、121…感光体、122…除電装置、123…帯電装置、123a,123b…放電ワイヤー、124…露光装置、125…現像装置、126…転写装置、127…クリーニング装置、127’…クリーニングブレード、128…定着装置、129…電源装置、300…プロセスカートリッジ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体表面に感光層を設けてなり、
前記感光層の最も導電性支持体側の層が、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体を含む下引き層であり、
前記感光層の最表面層が、下記一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種と、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、
前記感光層のダイナミック硬度が20×109N/m2以上20×1010N/m2以下であり、且つ、前記感光層の弾性変形率が25%以上70%以下であることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(前記一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、又は炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素原子、又は炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記感光層の最表面層が、電子受容材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記感光層の最表面層が、粒子を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像形成する静電潜像手段と、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記電子写真感光体表面の残留電位を除電する除電手段を更に備え、前記帯電手段が、2本以上の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記電子写真感光体の基準点において、電子写真感光体の回転に応じて除電手段による除電の動作が開始してから、帯電手段による帯電の動作が終了するまでの時間をT1(sec)、該電子写真感光体の感光層の最表面層の膜厚をd(mm)、該感光層の最表面層の比誘電率をεとした場合に、下記関係式(a)を満たすことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
・関係式(a)
120≦2.5×103/√T1×exp(0.724d/ε)/d≦255
【請求項8】
前記感光層の最表面層の誘電膜厚(d/ε)が、0.2μm以上3.5μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記時間T1が、55mmsec以上200mmsec以下であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項1】
導電性支持体表面に感光層を設けてなり、
前記感光層の最も導電性支持体側の層が、アクセプター性化合物と金属酸化物粒子との複合体を含む下引き層であり、
前記感光層の最表面層が、下記一般式(A)で示される化合物の少なくとも1種と、−OH、−NH2、−SH、−COOHから選択される置換基を少なくとも1つ以上有する電荷輸送材料の少なくとも1種とを用いた架橋物を含んで構成され、
前記感光層のダイナミック硬度が20×109N/m2以上20×1010N/m2以下であり、且つ、前記感光層の弾性変形率が25%以上70%以下であることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(前記一般式(A)中、R1は、炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基、又は炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のフェニル基を示す。R2〜R5は、それぞれ独立に水素原子、−CH2−OH、又は−CH2−O−R6を示す。R6は、水素原子、又は炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記感光層の最表面層が、電子受容材料を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記感光層の最表面層が、粒子を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存したトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に静電潜像形成する静電潜像手段と、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像する現像手段と、前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記電子写真感光体表面の残留電位を除電する除電手段を更に備え、前記帯電手段が、2本以上の放電ワイヤーを有する帯電スコロトロンであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記電子写真感光体の基準点において、電子写真感光体の回転に応じて除電手段による除電の動作が開始してから、帯電手段による帯電の動作が終了するまでの時間をT1(sec)、該電子写真感光体の感光層の最表面層の膜厚をd(mm)、該感光層の最表面層の比誘電率をεとした場合に、下記関係式(a)を満たすことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
・関係式(a)
120≦2.5×103/√T1×exp(0.724d/ε)/d≦255
【請求項8】
前記感光層の最表面層の誘電膜厚(d/ε)が、0.2μm以上3.5μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記時間T1が、55mmsec以上200mmsec以下であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−198707(P2009−198707A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39027(P2008−39027)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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