説明

電子写真用トナー、画像形成方法、色素及び金属キレート色素

【課題】熱可塑性樹脂への分散性を問題にすることなく良好な着色を可能とし、しかも透明性及び色再現性に優れ、耐熱性、帯電性、耐オフセットに優れた電子写真用トナー及び該電子写真用トナーを用いた画像形成方法を提供すること、更には新たな金属キレート可能な色素、金属キレート色素を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂中に下記一般式(1)で表される金属キレート可能な色素及び下記一般式(2)で表される銅化合物を分散してなることを特徴とする電子写真用トナー。
【化1】


一般式(2) Cu2+(X1)m(X2)n・W1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナー、該電子写真用トナーを用いた画像形成方法、色素及び金属キレート色素に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分光された光を感光体上に露光して原稿の静電潜像を形成せしめ、これを各色のカラートナーで現像して色付きの複写画像を得、あるいは各色の複写画像を重ね合わせてフルカラーの複写画像を得るカラー複写の方法が実用化され、これに用いるカラートナーとしてバインダー樹脂中に各色の顔料及び/または染料を分散せしめてなるイエロー、マゼンタ、シアンなどのカラートナーが製造されている。
【0003】
上述の電子写真法とは、一般に以下の工程により画像を形成するものである。先ず、光導電性物質から構成された感光体上に、種々の方法で画像情報に応じた光情報を照射することにより前記感光体上に静電潜像を形成する。次に、感光体上に形成された前記静電潜像を帯電されたトナーによりトナー像として現像し、このトナー像を画像記録媒体(例えば、普通紙等や中間転写体等)に転写し、熱定着装置を用いて普通紙上に画像を定着する。
【0004】
そして、上述の電子写真法を用いたカラー画像形成方法において、感光体上に形成される静電潜像は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色に分解された画像情報に対応しており、それぞれの画像情報と同じ色のトナーを現像する。そして、この現像工程を各色ごとに合計4回繰り返し行うことにより、カラー画像が形成される。
【0005】
従来から電子写真用トナーに使用される着色剤としては、公知の有機顔料及び染料が使用されているが、それぞれに種々の欠点を有している。例えば、有機顔料は染料に比べて一般的に耐熱性や耐光性に優れているが、トナー中において粒子状で分散された状態で存在するため隠蔽力が強くなってしまい、透明性が低下してしまう。また、一般に顔料の分散性は悪いため透明性が損なわれ、彩度が低下し、画像の色再現性を阻害する。また、色重ねされたトナーのうち最下層のものがそれより上層のものに隠蔽されず、最下層のトナーの色彩を視覚により確認することが可能となるようにするためには、定着されたトナーの透明性が必要とされ、原稿の色再現性を保つためには着色剤の分散性や着色力が必要となる。
【0006】
顔料の欠点を解消する方法としては、例えば、顔料分散の手法としてフラッシング法を用いることにより、凝集二次粒子のない一次粒子によるサブミクロンオーダーの顔料分散径を達成することにより透明性を向上させる手段や、顔料粒子を結着樹脂及び外殻樹脂で被覆することにより帯電性、定着性、画像均一性を改良する手段が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0007】
しかしながら、これらに提案されているトナーによって出力した場合においても、顔料使用トナーの場合、未だ十分な透明性を得ることは困難である。
【0008】
また、カラー画像形成装置において、原理的には全ての色再現をイエロー、マゼンタ、シアンの3原色による減法混色により行うことができるが、現実には熱可塑性樹脂に顔料を分散したときの分光特性、異なる色のトナー同士を重ね合わせたときの混色性によって、色再現可能な範囲や彩度が低下させられるので、原稿の色を忠実に再現することには、まだまだ課題が多く残されている。
【0009】
一方、染料を用いたトナーや染料と顔料を混合したトナーなどが公開されている(例えば、特許文献3、4参照。)。
【0010】
一般に、染料を用いたトナー中で染料はトナーの結着樹脂中に溶解した状態で存在するため透明性や彩度等が優れているが、耐光性や耐熱性が顔料に比べて大きく劣るという欠点を有している。耐熱性に関しては、染料の分解による濃度の低下の他にトナー像を熱ローラーによって定着させる場合に、染料が昇華して機内汚染を生じやすく、且つ定着時に用いられるシリコンオイルに染料が溶解し、最終的には加熱ロールに融着し、オフセット現象を引き起こすという問題があった。
【0011】
染料のこれらの欠点を解消するような提案として、例えば、金属キレート染料を用いることにより耐光性や昇華性と色再現性を両立させる手段が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0012】
上記金属キレート色素を含有するトナーは耐光性には優れるが、凝集が原因でOHPや紙面上に塗布後の反射スペクトルが異なる等、色再現性が十分ではなく、更なる彩度の向上が望まれている。
【0013】
金属キレート色素の色再現性を向上する提案として、トナーの着色剤としてテトラメチン色素の金属キレート色素を用いることにより色再現性と耐光性を両立させる手段が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。しかしながら、分散性と耐光性が不十分であるため、更なる改良が望まれている。
【特許文献1】特開平9−26673号公報
【特許文献2】特開平11−160914号公報
【特許文献3】特開平5−11504号公報
【特許文献4】特開平5−34980号公報
【特許文献5】特開平10−20559号公報
【特許文献6】特開2001−159832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、熱可塑性樹脂への分散性を問題にすることなく良好な着色を可能とし、しかも透明性及び色再現性に優れ、耐熱性、帯電性、耐オフセットに優れた電子写真用トナー及び該電子写真用トナーを用いた画像形成方を提供することを目的とする。また、新たな金属キレート可能な色素、金属キレート色素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、以下の手段によって達成される。
【0016】
1.熱可塑性樹脂中に下記一般式(1)で表される金属キレート可能な色素及び下記一般式(2)で表される銅化合物を分散してなることを特徴とする電子写真用トナー。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、R1、R2、R3、R4は各々水素原子または置換基を表す。Z1は窒素原子を少なくとも1つ含む5または6員の複素環を表し、該複素環は置換基を有していてもよく、縮合環を形成してもよい。Z2は5または6員の複素環を表し、該複素環は置換基を有していてもよく、縮合環を形成してもよい。)
一般式(2) Cu2+(X1)m(X2)n・W1
(式中、X1及びX2はそれぞれ独立に1座または2座配位子を表し、同一であっても異なっていてもよく、X1及びX2は連結していてもよい。m及びnは0〜2の整数を表す。W1は電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。)
2.前記一般式(1)において、Z1が下記一般式(3)または(4)で表されることを特徴とする前記1に記載の電子写真用トナー。
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R10、R11、R12、R13、R14は各々独立に水素原子または置換基を表し、R10、R11の少なくとも1つは一般式(3)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、R12、R13の少なくとも1つは一般式(4)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、*は前記一般式(1)で表される色素が結合している炭素原子との結合部位を表す。)
3.前記一般式(1)において、Z1が下記一般式(5)または(6)で表されることを特徴とする前記1に記載の電子写真用トナー。
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R15、R16、R17、R18は各々独立に水素原子または置換基を表し、R15、R16の少なくとも1つは一般式(5)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、R17、R18の少なくとも1つは一般式(6)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、*は前記一般式(1)で表される色素が結合している炭素原子との結合部位を表す。)
4.前記一般式(1)において、Z1が下記一般式(7)または(8)で表されることを特徴とする前記1に記載の電子写真用トナー。
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R19、R20、R22、R23、R24は各々独立に水素原子または置換基を表し、R20、R21の少なくとも1つは一般式(7)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、R22、R23、R24の少なくとも1つは一般式(8)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、*は前記一般式(1)で表される色素が結合している炭素原子との結合部位を表す。)
5.前記一般式(1)において、Z1が下記一般式(9)で表されることを特徴とする前記1に記載の電子写真用トナー。
【0025】
【化5】

【0026】
(式中、R31、R32は置換基を表し、R31、R32の少なくとも一方が一般式(9)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基であり、pは0〜5の整数を表す。)
6.前記窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基が下記一般式(10)または(11)で表されることを特徴とする前記2〜4のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【0027】
【化6】

【0028】
(式中、Z3は窒素原子と共に5または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子団を表し、R41は水素原子または置換基を表す。L1は炭素数1または2の連結基または環構造の一部を表し、Q1は水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基を表す。)
7.前記一般式(1)において、Z2が下記一般式(12)〜(16)のいずれかで表されることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【0029】
【化7】

【0030】
(式中、R51、R52は各々独立に水素原子または置換基を表し、m1は0〜2の整数を表し、m2は0〜4までの整数を表す。X11、X12は酸素原子、硫黄原子、−(NR53)−または−CR5455−を表し、X11とX12の少なくとも一方が−(NR53)−を表し、R53、R54、R55は各々独立に水素原子または置換基を表す。X13、X14、X15は酸素原子、硫黄原子、−(NR56)−または−C(R57)=を表し、X13、X14、X15の少なくとも1つは酸素原子、硫黄原子または−(NR56)−を表す。R56、R57は水素原子または置換基を表す。)
8.前記一般式(2)で表される銅化合物の配位子(X1またはX2)の少なくとも1つが下記一般式(17)で表されることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【0031】
【化8】

【0032】
(式中、E1及びE2はハメット置換基定数(σp)が0.1以上0.9以下の電子吸引性基を表し、Rはアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアミノ基を表し、置換基を有していてもよい。)
9.熱可塑性樹脂中に色素を着色成分として含有する着色微粒子を分散してなる電子写真用トナーにおいて、該着色微粒子中に前記1〜7のいずれか1項に記載の一般式(1)で表される金属キレート可能な色素及び前記1または8に記載の一般式(2)で表される銅化合物を含有することを特徴とする電子写真用トナー。
【0033】
10.前記着色微粒子が更に熱可塑性樹脂とは異なる樹脂を含有することを特徴とする前記9に記載の電子写真用トナー。
【0034】
11.前記着色微粒子が前記1〜7のいずれか1項に記載の一般式(1)で表される金属キレート可能な色素、前記1または8に記載の一般式(2)で表される銅化合物及び熱可塑性樹脂とは異なる組成の樹脂とからなるコアと該コアを被覆する外殻樹脂(シェル)とからなることを特徴とする前記9に記載の電子写真用トナー。
【0035】
12.静電画像担持体上に形成した静電荷像をトナーにより現像する工程、及び現像により形成したトナー画像を転写材上に転写する工程を少なくとも含む画像形成方法において、該トナーとして前記1〜11のいずれか1項に記載の電子写真用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【0036】
13.下記一般式(18)で表されることを特徴とする金属キレート可能な色素。
【0037】
【化9】

【0038】
(式中、R1〜R4、Z2は前記1に記載の一般式(1)におけるR1〜R4、Z2と同義であり、R31、R32は置換基を表し、R31、R32の少なくとも一方が一般式(18)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基であり、pは0〜5の整数を表す。)
14.前記13に記載の一般式(18)で表される金属キレート可能な色素を少なくとも1つの配位子として有することを特徴とする金属キレート色素。
【発明の効果】
【0039】
本発明の電子写真用トナー及び該電子写真用トナーを用いた画像形成方法は、熱可塑性樹脂への分散性を問題にすることなく良好な着色を可能とし、しかも透明性及び色再現性に優れ、耐熱性、帯電性、耐オフセットに優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の電子写真用トナー(以下、単にトナーともいう)は、熱可塑性樹脂(以下、結着樹脂ともいう)中に特定構造を有する色素及び特定構造を有する銅化合物を分散してなることを特徴とし、更にはかかる分散が水中での乳化分散で行われることを特徴とする。
【0041】
また、本発明の電子写真用トナーは熱可塑性樹脂中に少なくとも着色微粒子を分散してなり、該着色微粒子は該熱可塑性樹脂とは異なる組成の樹脂、特定構造を有する色素及び銅化合物を水中で乳化分散して得られることを特徴としており、染料を用いたトナーとして一般的に知られているトナー結着樹脂中に染料を直接分散、もしくは溶解させるのとは異なる。
【0042】
本発明者等は上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、熱可塑性樹脂とは異なる組成の樹脂と請求項1〜7のいずれか1項に記載の特定構造を有する色素、及び請求項1または8に記載の特定構造を有する銅化合物を含有する着色微粒子を熱可塑性樹脂中に分散させたカラートナーが優れた色相及び画像堅牢性を示すことを見出した。
【0043】
まず、前記一般式(1)で表される金属キレート可能な色素について説明する。
【0044】
前記一般式(1)においてR1、R2、R3、R4は各々独立に水素原子または置換基を表し、該置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基)、ヘテロ環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、トリフルオロメチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ハロゲン化アルキル(例えば、フッ化メチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、パーフルオロプロピル)などが挙げられる。
【0045】
上記の置換基の中でも、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、フッ素原子)、炭素数1〜8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(例えば、イミダゾリル基、チアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、インドリル基、ピリミジニル基)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基)、アミノ基(例えば、アミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)が好ましい。
【0046】
一般式(1)において、Z1は窒素原子を少なくとも1つ含む5または6員の複素環を形成するために必要な原子団を表し、置換基を有していてもよく、該置換基により縮合環を形成してもよく、具体的には前記一般式(3)〜(9)で表される基が好ましい。
【0047】
一般式(3)において、R10、R11は各々独立に水素原子または置換基を表す。該置換基としては、前述のR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられる。
【0048】
10、R11の少なくとも一方は、一般式(3)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表す。配位結合を形成可能な基とは、非共有電子対を有する原子を含有する置換基を表し、具体的には複素環基、ヒドロキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、複素環オキシ基、カルボニルオキシ基、ウレタン基、スルホニルオキシ基、アミノ基、イミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホニル基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及び複素環チオ基等が挙げられ、一般式(3)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基とは、一般式(3)の窒素原子から配位結合を形成可能な基及び金属イオンと5〜6員環の結合を形成するものである。
【0049】
一般式(3)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基としては、前記一般式(10)または(11)で表される基が好ましい。
【0050】
一般式(10)において、Z3は窒素原子と共に5または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子団を表す。具体的には、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環等が挙げられる。これらのうち、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環が好ましい。これら含窒素芳香族複素環は置換基を有していてもよく、該置換基としては前述のR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられる。更に縮合環を有していてもよい。
【0051】
41は水素原子または置換基を表し、該置換基としては前述のR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられる。これらのうち、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。
【0052】
一般式(11)において、Q1は水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基を表し、好ましくは水酸基、アルコキシ基、アルキルスルホニルアミノ基である。L1は炭素数1または2の連結基または環構造の一部を表し、例えば、置換または無置換のメチレン基、エチレン基、エチン基または下記一般式(19)で表される。
【0053】
【化10】

【0054】
一般式(19)において、Z4は5または6員の芳香族環または複素環を表し、置換基を有していてもよく、**で前記一般式(1)のZ1に隣接する炭素原子と結合し、***でQ1と結合する。
【0055】
1として好ましくはメチレン基、前記一般式(19)においてZ4で表される環がベンゼン環、ピリジン環であることが好ましい。該環構造は置換基を有していてもよく、好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、ウレイド基等の各基が挙げられるが、更に好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基が挙げられる。
【0056】
一般式(3)においては、R10、R11の両方が一般式(3)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基であることが好ましい。
【0057】
10またはR11のいずれか一方が一般式(3)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基でない場合は、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基であることが好ましく、更に好ましくはアリール基、複素環基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基である。
【0058】
一般式(4)において、R12〜R14は各々独立に水素原子または置換基を表す。該置換基としては前述のR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられる。
【0059】
一般式(4)において、R12、R13の少なくとも一方は一般式(4)の窒素原子と共に、少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表す。配位結合を形成可能な基は前述の一般式(3)における配位結合を形成可能な基と同義であり、好ましくは前述の一般式(10)または(11)で表される構造である。
【0060】
12またはR13のいずれか一方が一般式(4)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基でない場合、及びR14は水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基であることが好ましく、更に好ましくはアリール基、複素環基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基である。
【0061】
一般式(5)においてR15、R16は各々独立に水素原子または置換基を表す。該置換基としては前述のR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられ、更にR1〜R4で表される置換基と同様の置換基を有していてもよい。
【0062】
15、R16の少なくとも一方は、一般式(5)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、R16が配位結合を形成可能な基であることが好ましい。配位結合を形成可能な基とは、前述の一般式(3)における配位結合を形成可能な基と同義であり、好ましくは前述の一般式(10)または(11)で表される構造である。
【0063】
15またはR16のいずれか一方が配位結合を形成可能な基でない場合、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイル基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基であり、より好ましくはアルキル基(特にメチル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基)、アリール基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基であり、更に好ましくはアリール基である。
【0064】
一般式(6)において、R17、R18は各々独立に水素原子または置換基を表す。該置換基としては、前述のR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられ、更にR1〜R4で表される置換基と同様の置換基を有していてもよい。
【0065】
17、R18の少なくとも一方は、一般式(6)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、R18が配位結合を形成可能な基であることが好ましい。配位結合を形成可能な基とは、前述の一般式(3)における配位結合を形成可能な基と同義であり、好ましくは前述の一般式(10)または(11)で表される構造である。
【0066】
17またはR18のいずれか一方が配位結合を形成可能な基でない場合、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、アシルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイル基、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基であり、より好ましくはアルキル基(特にメチル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基)、アリール基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基であり、更に好ましくはアリール基である。
【0067】
一般式(7)において、R19〜R21は各々独立に水素原子または置換基を表し、該置換基としては前述のR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられる。
【0068】
20、R21の少なくとも一方は、一般式(7)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、R21が配位結合を形成可能な基であることが好ましい。配位結合を形成可能な基とは前述の一般式(3)における配位結合を形成可能な基と同義であり、好ましくは前述の一般式(10)または(11)で表される構造である。
【0069】
20またはR21のいずれかが一般式(7)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基でない場合、及びR19は水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはニトロ基が好ましく、更に好ましくはアルコキシカルボニル基、シアノ基である。
【0070】
一般式(8)において、R22〜R24は各々独立に水素原子または置換基を表し、該置換基としては前述のR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられる。
【0071】
22〜R24は一般式(8)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、R24が配位結合を形成可能な基であることが好ましい。配位結合を形成可能な基とは前述の一般式(3)における配位結合を形成可能な基と同義であり、好ましくは前述の一般式(10)または(11)で表される構造である。
【0072】
22〜R24のうち1つまたは2つが一般式(8)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基でない場合、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはニトロ基が好ましく、更に好ましくはアルコキシカルボニル基、シアノ基である。
【0073】
前記一般式(1)で表される本発明に係る金属とキレート可能な色素のうち、Z1が一般式(5)で表される構造が好ましく、中でも前記一般式(9)で表される構造は特異的に耐光性が向上し、より好ましい。
【0074】
一般式(9)において、R31、R32で表される置換基としては、前述のR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられる。R31、R32の少なくとも一方は、一般式(9)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基であり、R32が前記一般式(9)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基であることが好ましい。
【0075】
一般式(9)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基とは、具体的には前述の一般式(3)における配位結合を形成可能な基と同義であり、好ましくは前述の一般式(10)または(11)で表される構造である。pは0〜5の整数を表し、より好ましくは0、1、2である。
【0076】
一般式(1)において、Z2は5または6員の複素環を表し、置換基を有していても無置換でもよく、縮合環を形成してもよい。該置換基としては前述のR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられる。
【0077】
2としては、上記の一般式(12)〜(16)で表される基がより好ましい。
【0078】
一般式(12)〜(16)において、R51、R52は各々独立に水素原子または置換基を表し、該置換基としてはR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられる。R51、R52、R53として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルキル基、チオアリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アニリノ基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基である。
【0079】
m1は0〜2の整数を表し、m1が2以上の場合は複数のR51が同一であっても異なっていてもよい。m1は好ましくは1または2であり、更に好ましくは2である。m2は0〜4までの整数を表し、m2が2以上の場合、複数のR42が同一であっても異なっていてもよく、複数のR52が互いに結合して縮合環を形成していてもよい。m2は好ましくは0〜2の整数である。
【0080】
11、X12は酸素原子、硫黄原子、−(NR53)−または−CR5455−を表し、X11とX12の少なくとも一方が−(NR53)−を表す。R53、R54、R55は各々独立に水素原子または置換基を表し、該置換基としてはR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられ、更にR1〜R4で表される置換基と同様の基が置換していてもよい。R53として好ましくは炭素数1〜18のアルキル基であり、更に好ましくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基である。R54、R55として好ましくは、R54、R55の少なくとも一方がアルキル基であり、更に好ましくは両方ともアルキル基である。より好ましくはX11とX12の少なくとも一方が−(NR53)−且つもう一方が硫黄原子または−CR5455−である。
【0081】
13、X14、X15は酸素原子、硫黄原子、−(NR56)−または−C(R57)=を表し、X13〜X15の少なくとも1つは酸素原子、硫黄原子または−(NR56)−を表す。R56、R57は各々独立に水素原子または置換基を表し、該置換基としてはR1〜R4で表される置換基と同様の基が挙げられる。R56として好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは無置換のアルキル基である。R57として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基である。
【0082】
以下に前記一般式(1)で表される本発明に係る金属とキレート可能な色素の代表的な具体例を示すが、本発明は以下の具体例によって限定されない。また位置異性体が存在する場合においても、以下には代表的な形の一つとして記載しているが、本発明の記述と異なる異性体も本発明に係る化合物に含まれる。なお、Z1が一般式(9)に相当する色素はD−85〜D−120に相当する。
【0083】
【化11】

【0084】
【化12】

【0085】
【化13】

【0086】
【化14】

【0087】
【化15】

【0088】
【化16】

【0089】
【化17】

【0090】
【化18】

【0091】
【化19】

【0092】
【化20】

【0093】
【化21】

【0094】
【化22】

【0095】
【化23】

【0096】
【化24】

【0097】
【化25】

【0098】
本発明に係る前記一般式(1)で表される本発明に係る金属キレート可能な色素は、例えば、特願2006−144986号公報、特開2001−159832号公報に記載された従来公知の方法を参考にして容易に合成することができる。
【0099】
前記一般式(2)において、X1及びX2はそれぞれ独立に1座または2座配位子を表し、同一であっても異なっていてもよく、X1及びX2は連結していてもよい。m及びnは0〜2の整数を表す。W1は電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。
【0100】
X1及びX2としては、例えば、特開2000−251957号、同2000−311723号、同2000−323191号、同2001−6760号、同2001−59062号、同2001−60467号の各公報等に記載されているようなものが挙げられる。具体的にはハロゲンイオン、水酸イオン、アンモニア、ピリジン、アミン(例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン)、シアン化物イオン、シアン酸イオン、チオラートイオン、チオシアン酸イオン、及びビピリジン類、アミノポリカルボン酸類、8−ヒドロキシキノリン等の各種のキレート配位子が挙げられ、キレート配位子については上野景平著「キレート化学」等に例示されている。
【0101】
1座配位子としてはアシル基、カルボニル基、チオシアネート基、イソシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基で配位する配位子、あるいはジアルキルケトンまたはカルボンアミドからなる配位子が好ましい。
【0102】
2座配位子としてはアシルオキシ基、オキザリレン基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アルキルチオ基またはアリールチオ基で配位する配位子、あるいはジアルキルケトンまたはカルボンアミドからなる配位子が好ましい。
【0103】
以下にX1及びX2の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されることはない。なお、ここに示す構造式はいくつも取り得る共鳴構造の中の1つの極限構造に過ぎず、共有結合(−で示す)と配位結合(…で示す)の区別も形式的なもので、絶対的な区別を表すものではない。
【0104】
【化26】

【0105】
【化27】

【0106】
【化28】

【0107】
【化29】

【0108】
【化30】

【0109】
【化31】

【0110】
また、前記一般式(17)で表される化合物も配位子として好ましい。
【0111】
式中、E1及びE2はハメット置換基定数(σp)が0.10以上0.90以下の電子吸引性基を表し、Rはアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基を表し、置換基を有していてもよい。E1及びE2で表されるσp値が0.10以上0.90以下の置換基について説明する。
【0112】
ここで言うハメットの置換基定数σpの値としては、Hansch,C.Leoらの報告(例えば、J.Med.Chem.16,1207(1973);ibid.20,304(1977))に記載の値を用いるのが好ましい。
【0113】
σpの値が0.10以上の置換基または原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン置換アルキル基(例えば、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、トリフルオロメチルチオメチル、トリフルオロメタンスルホニルメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族、芳香族もしくは複素環アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、ベンゾイル)、脂肪族、芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロ−フェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、置換芳香族基(例えば、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル)、複素環残基(例えば、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンズチアゾリル、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ)、ジトリフルオロメチルアミノ基、トリフルオロメトキシ基、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ)、アシロキシ基(例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えば、ジメトキシホスホニル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−(2−ドデシルオキシエチル)スルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)などが挙げられる。
【0114】
また、σpの値が0.35以上の置換基としてはシアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、フッ素置換アルキル基(例えば、トリフルオロメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロ−フェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、フッ素またはスルホニル基置換芳香族基(例えば、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル)、複素環残基(例えば、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えば、ジメトキシホスホリル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基などが挙げられる。
【0115】
σpの値が0.60以上の置換基としては、シアノ基、ニトロ基、脂肪族、芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、ジフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)などが挙げられる。
【0116】
1及びE2として好ましくは、ハロゲン化アルキル基(特にフッ素置換アルキル基)、カルボニル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基等が挙げられる。Rの好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基が挙げられ、更に好ましくはアルキル基またはアルコキシ基、アリールオキシ基、である。
【0117】
以下に前記一般式(17)で示される配位子の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されることはない。
【0118】
【化32】

【0119】
【化33】

【0120】
【化34】

【0121】
W1は電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表し、例えば、ある色素が陽イオン、陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうかはその金属、配位子、及び置換基に依存する。置換基が解離性基を有する場合、解離して負電荷を持ってもよく、この場合にも分子全体の電荷はW1によって中和される。典型的な陽イオンは無機または有機のアンモニウムイオン(例えば、テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン)、アルカリ金属イオン及びプロトンであり、一方、陰イオンは具体的に無機陰イオン、あるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、例えば、ハロゲン陰イオン、(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えば、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(例えば、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えば、メチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0122】
このような銅化合物としては、例えば、酢酸銅、ステアリン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、硫酸銅、塩化第2銅等も挙げられる。
【0123】
以下に、一般式(2)で表される具体的な化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されることはない。
【0124】
【表1】

【0125】
一般式(17)で表される銅化合物の配位子は、特開2002−332259号公報、同2003−237246号公報等を参考にして合成することができる。
【0126】
(銅化合物の添加量)
本発明に係る色素固体分散物及び着色微粒子は、一般式(2)で表される銅化合物の含有量が一般式(1)で表される金属キレート可能な色素に対して0.5〜3倍モルの範囲が好ましく、1〜2倍モルの範囲が更に好ましい。銅化合物が1〜3倍モル含有されることで十分な濃度が得られ、光堅牢性が向上し、また微粒子分散体としての保存安定性にも優れるため、凝集等による粒径増大を防止することができる。
【0127】
(金属キレート色素)
前記一般式(1)のZ1が一般式(9)で表される化合物を少なくとも1つの配位子として有する金属キレート色素は、好ましくは下記一般式(20)で表される。
【0128】
【化35】

【0129】
一般式(20)において、Mは金属イオンを表し、X3は陰イオンを表し、n1は1〜3の整数を表し、n2は0〜3の整数を表す。R1〜R4、Z2は一般式(1)におけるR1〜R4、Z2と同義であり、R31、R32、pは一般式(9)におけるR31、R32、pと同義である。
【0130】
一般式(20)において、Mで表される金属イオンとしては、VIII族、Ib族、IIb族、IIIa族、IVa族、Va族、VIa族、VIIa族の金属原子から選ばれ、好ましくは2価の遷移金属イオンである。具体的にはNi、Cu、Co、Cr、Zn、Fe、Pd、Ptの2価の金属イオンが挙げられ、更に好ましくはCu、Co、Znの2価の金属イオンが挙げられ、特に好ましくはCuの2価の金属イオンである。
【0131】
本発明において、一般式(20)で表される金属キレート色素を得るためには、M(X3n2で表される金属含有化合物と前記一般式(18)で表される化合物とを溶液中で溶解、混合することによって得ることができる。
【0132】
一般式(20)において、X3で表される陰イオンとしては、エノレート(アセチルアセトナート、ヘキサフルオロアセチルアセトナート)、ハロゲンイオン(フルオライド、クロライド、ブロマイド、アイオダイドなど)、水酸イオン、亜硫酸イオン、硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、アリールカルボン酸イオン、テトラアルキルボレート、サリシネート、ベンゾエート、PF6-、BF4-、SbF6-等が挙げられるが、具体的には一般式(2)におけるX1、X2で挙げた陰イオンが挙げられ、好ましくはエノレートイオンであり、更に好ましくは一般式(17)で表される化合物である。
【0133】
n2が2、3である場合、複数のX3は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0134】
以下に前記一般式(20)で表される本発明に係る金属キレート色素の代表的な具体例を表2に示すが、本発明は以下の具体例によって限定されない。また位置異性体が存在する場合においても、以下には代表的な形の一つとして記載しているが、本発明の記述と異なる異性体も本発明に係る化合物に含まれる。
【0135】
【表2】

【0136】
一般式(1)のZ1が一般式(8)で表される化合物を配位子として有する金属キレート色素は特開平10−86517号公報、特開2001−159832号公報等に記載された従来公知の方法を参考にして容易に合成することができる。
【0137】
(染料分散方法)
本発明の電子写真用トナーは染料分散液を結着樹脂中に直接分散、あるいは着色微粒子分散液を混合し、更に後述する所望の添加剤を使用し、混練・粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化分散造粒法、カプセル化法等その他の公知の方法により製造することができる。これらの製造方法の中で、画像の高画質化に伴うトナーの小粒径化を考慮すると、製造コスト及び製造安定性の観点から乳化重合法が好ましい。乳化重合法は、乳化重合によって製造された熱可塑性樹脂エマルジョンを、他の染料固体分散物等、トナー粒子成分の分散液と混合し、pH調整により生成した粒子表面の反発力と電解質添加による凝集力のバランスを取りながら緩慢凝集させ、粒径・粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に加熱撹拌することで微粒子間の融着・形状制御を行うことによりトナー粒子を製造する。
【0138】
染料分散液を直接分散する場合は通常用いられるロール練肉分散機、ビーズ分散機、高速攪拌分散機、媒体型攪拌機などを用いて分散することも可能であるが、以下の着色微粒子分散物と同様の方法により作成することができる。即ち、染料を有機溶剤中に溶解(あるいは分散)し、水中で乳化分散後、有機溶剤を除去することにより得ることができる。
【0139】
(着色微粒子)
本発明の電子写真用トナーの1つの形態として、熱可塑性樹脂中に少なくとも着色微粒子を分散することができる。該着色微粒子は少なくとも一般式(1)で表される色素及び一般式(2)で表される銅化合物を含有することを特徴としており、後述の液中乾燥法などの分散方法を使用することで着色微粒子の分散粒径を制御可能である。また、該熱可塑性樹脂とは異なる組成の樹脂(後述のコア用樹脂と同様の樹脂が挙げられる)または公知のジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の高沸点溶剤を更に含有してなることも好ましく、上述の染料を用いたトナーとして一般に知られているトナー結着樹脂中に染料を直接分散、もしくは、溶解させる代わりに、着色微粒子を熱可塑性樹脂中に分散させることができる。
【0140】
着色微粒子中の色素は樹脂中に分子レベルで溶解するため、トナー中において光を遮断する隠蔽性粒子などの成分を無くすことが可能となり、それぞれのトナーの単色における透明性が向上し、更には重ね合わせ色における透明性も向上すると考えられる。図1は熱可塑性樹脂中に着色微粒子を分散させた本発明の電子写真用トナー粒子の断面を模式的に示している。また本発明の電子写真用トナーは、図2で示す様に着色微粒子が外殻樹脂(シェル)で被覆されていてもよく、この場合、着色微粒子の内部(コア)を構成する樹脂と熱可塑性樹脂(結着樹脂)の組み合わせに制限がなく、材料の自由度が大きく、またカラートナー4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に関して外殻樹脂(シェル)のみが同一であれば、同様の製造条件で製造可能となるため、コスト面での利点も大きい。また、着色剤である染料の着色微粒子外への移行(着色微粒子表面への露出)が起こらないため、一般的に染料を使用したトナーにおいて問題視される、熱定着時の染料の昇華やオイル汚染が生じる心配がない。
【0141】
(着色微粒子の作製方法)
次いで、本発明に係る好ましい形態の1つである着色微粒子の作製方法について説明する。
【0142】
本発明に係る着色微粒子は、例えば、色素(または、色素及び樹脂、高沸点有機溶媒、添加剤など)を有機溶剤中に溶解(あるいは分散)し、水中で乳化分散後、有機溶剤を除去すること(液中乾燥法と言う)により得ることができ、更に樹脂を添加し外殻樹脂(シェル)で被覆する場合は、該着色微粒子に重合性不飽和二重結合を有するモノマーを添加し、活性剤の存在下、乳化重合を行い、重合と同時にコア表面に沈着させることによってコアシェル構造を有する着色微粒子を得ることができる。あるいは、例えば、乳化重合により予め樹脂微粒子の水性分散体を形成し、この樹脂微粒子水性分散体に染料を溶解した有機溶媒溶液を混合し、あとから樹脂微粒子中に染料を含浸した後、該着色微粒子をコアとして、シェルを形成する等の方法等、種々の方法により得ることができる。
【0143】
シェルは有機樹脂からなることが好ましく、シェルを形成する方法としては有機溶剤に溶解した樹脂を徐々に滴下し、析出と同時に樹脂を該着色微粒子コア表面に吸着させる方法などもあるが、本発明においては色素と樹脂を含有したコアとなる着色微粒子を形成した後、重合性不飽和二重結合を有するモノマーを添加し活性剤の存在下、乳化重合を行い、重合と同時にコア表面に沈着させシェルを形成する方法が好ましい。
【0144】
(コアシェル構造)
本発明において、コアシェル構造とは組成の異なる2種以上の樹脂や色素が粒子中に相分離して存在する形態を意味する。従って、シェル部がコア部を完全に被覆している形態のみならず、コア部の一部を被覆しているものであってもよい。また、シェルを形成している樹脂の一部がコア粒子内にドメインなどを形成しているものであってもよい。更に、コア部とシェル部の中間に更にもう一層以上の組成の異なる層を含む3層以上の多層構造を持つものであってもよい。
【0145】
本発明においては、着色微粒子がコアシェル構造を形成しており、該着色微粒子中の樹脂と色素によって形成される着色部分をコアとして、これを更に外殻樹脂で被覆しシェルとし、コアシェル構造とすることが好ましい。
【0146】
(コア用樹脂)
次に、本発明に係る着色微粒子の内部(コア)を形成する樹脂について説明する。
【0147】
本発明に係る着色微粒子の内部(コア)に使用される樹脂は、前記熱可塑性樹脂と異なる組成であれば特に限定はされず、例えば、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アラミド樹脂などが挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などの重合性エチレン性不飽和二重結合を重合させることによって得られる樹脂が好ましい。最も好ましくは(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂である。
【0148】
ここで(メタ)アクリレート系樹脂とは、種々のメタクリレート系モノマー、もしくは、アクリレート系モノマーを単独重合、もしくは共重合することにより合成され、モノマー種及びモノマー組成比を種々変えることによって、望みの(メタ)アクリレート系樹脂を得ることができる。また、本発明においては、(メタ)アクリレート系モノマーと一緒に、(メタ)アクリレート系モノマー以外の不飽和二重結合を有する共重合可能なモノマーと共に共重合しても使用可能であり、更に本発明においては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂と一緒に他の複数の樹脂を混合しても使用可能である。
【0149】
本発明に用いられる(メタ)アクリレート系樹脂を形成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、塩化エチルトリメチルアンモニウム(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−アセトアミドメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−トリメトキシシランプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0150】
ポリスチレン系樹脂とは、スチレンモノマーの単独重合物、あるいはスチレンモノマーと共重合可能な他の不飽和二重結合を有するモノマーを共重合したランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。更に、かかるポリマーに他のポリマーを配合したブレンド物やポリマーアロイも含まれる。前記スチレンモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチルスチレン−p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、等の核アルキル置換スチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、ジクロルスチレン、ジブロモスチレン、トリクロルスチレン、トリブロモスチレンなどの核ハロゲン化スチレンなどが挙げられるが、この中でスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0151】
これらを単独重合、もしくは共重合することによって本発明に用いられる樹脂は合成され、例えば、ベンジルメタクリレート/エチルアクリレート、あるいはブチルアクリレート等の共重合体樹脂、またメチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート等の共重合体樹脂、またメチルメタクリレート/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート/アセトアセトキシエチルメタクリレートの共重合体樹脂、またスチレン/アセトアセトキシエチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体樹脂、またスチレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体、更に2−エチルヘキシルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の共重合体樹脂等が例として挙げられる。
【0152】
本発明に用いられる樹脂としては、その数平均分子量が500〜100,000、特に1,000〜30,000であることが耐久性及び微粒子の形成性の点から好ましい。
【0153】
(外殻樹脂)
本発明において、着色微粒子の外殻を被覆してシェルを形成する外殻樹脂としては特に限定はされず、例えば、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アラミド樹脂などが挙げられるが、特にトナー結着樹脂(熱可塑性樹脂)との組み合わせの観点より、好ましくはポリ(メタ)アクリレート系樹脂である。
【0154】
ここでポリ(メタ)アクリレート系樹脂とは、種々の(メタ)アクリレート系モノマーを単独重合、もしくは共重合することにより合成され、モノマー種及びモノマー組成比を種々変えることによって、望みのポリ(メタ)アクリレート系樹脂を得ることができる。また、本発明においては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂と一緒に他の複数の樹脂を混合して使用可能である。
【0155】
本発明に用いられるポリ(メタ)アクリレート系樹脂を形成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、塩化エチルトリメチルアンモニウム(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−アセトアミドメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−トリメトキシシランプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。更に好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートである。
【0156】
また、本発明における外殻樹脂は反応性乳化剤との共重合体でもよい。
【0157】
(反応性乳化剤)
本発明で好ましく用いられる反応性乳化剤としては、アニオン系、及びノニオン系のいずれの反応性乳化剤でもよいが、下記A、BまたはCの置換基を有する化合物が好ましい。
【0158】
A:直鎖アルキル基、分岐アルキル基、または置換もしくは無置換の芳香族基であって、総炭素数が6以上の置換基
B:界面活性能を発現するノニオン性置換基もしくはアニオン性置換基
C:ラジカル重合可能な重合性基。
【0159】
A項に記載の直鎖アルキル基としては、例えば、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられ、分岐アルキル基としては、例えば、2−エチルヘキシル基などが挙げられ、芳香族基としては、例えば、フェニル基、ノニルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0160】
B項に記載の乳化能(界面活性能)を発現するノニオン性置換基もしくはアニオン性置換基としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、その共重合体のポリアルキレンオキサイドなどが挙げられる。アニオン性置換基の具体例としては、カルボン酸、リン酸、スルホン酸、それらの塩などが挙げられる。また、アルキレンオキサイドの末端に前述のアニオン性基が置換したものも、アニオン性基の具体例の一つである。B項で表される置換基としてはアニオン性基が好ましく、末端が塩になっているものがより好ましい。
【0161】
C項に記載のラジカル重合可能な重合性基とは、ラジカル活性種により重合、架橋反応を起こす基であり、例えば、エチレン性不飽和結合を有するビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、アクリル基、メタクリル基、マレイミド基、アクリルアミド基、スチリル基などが挙げられる。
【0162】
本発明に用いる反応性乳化剤として、下記一般式(A)〜(C)で表される化合物が好ましい。
【0163】
【化36】

【0164】
上記一般式(A)において、R1は炭素数6〜20の直鎖アルキル基、分岐アルキル基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、例えば、上記A項に記載のヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などの直鎖アルキル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基、フェニル基、ノニルフェニル基、ナフチル基などの芳香族基などが挙げられる。R2はラジカル重合可能な重合性基を有する置換基を表し、例えば、上記C項に記載のエチレン性不飽和結合であるアクリル基、メタクリル基、マレイミド基などが挙げられる。Y1はスルホン酸、カルボン酸、またはそれら塩を表す。
【0165】
一般式(A)で表される化合物は、当業者が公知の方法で合成し得ることができる。また、市販品より容易に入手することができ、例えば、花王社製の「ラムテル S−120」、「ラムテル S−120A」、「ラムテル S−180」、「ラムテル S−180A」や、三洋化成工業社製の「エレミノール JS−2」などを挙げることができる。
【0166】
【化37】

【0167】
上記一般式(B)において、R3は上記一般式(A)のR1と同義であり、R4は上記一般式(A)のR2と同義である。Y2は水素原子、スルホン酸、カルボン酸、もしくはそれらの塩を表す。AOはアルキレンオキサイドを表す。
【0168】
一般式(B)で表される化合物は、当業者が公知の方法で合成し得ることができる。また市販品より容易に入手することができ、例えば、旭電化工業社製の「アデカリアソープNE−10」、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」などのNEシリーズ、「アデカリアソープSE−10N」、「アデカリアソープSE−20N」、「アデカリアソープSE−20N」などのSEシリーズ、第一工業製薬社製の「アクアロンRN−10」、「アクアロンRN−20」、「アクアロンRN−30」、「アクアロンRN−50」などのRNシリーズ、「アクアロンHS−05」、「アクアロンHS−10」、「アクアロンHS−20」、「アクアロンHS−30」などのHSシリーズ、あるいはアクアロンBCシリーズなどを挙げることができる。
【0169】
【化38】

【0170】
上記一般式(C)において、R5は上記一般式(A)のR1と同義であり、R6は上記一般式(A)のR2と同義であり、Y2は前記一般式(A)のY1と同義であり、AOは上記一般式(B)のAOと同義である。
【0171】
一般式(C)で表される化合物は、当業者が公知の方法で合成し得ることができる。また市販品より容易に入手することができ、例えば、第一工業製薬社製の「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」、「アクアロンKH−20」などを挙げることができる。
【0172】
上記一般式(B)及び(C)において、アルキレンオキサイド鎖(AO)の平均重合度nが1〜10であることが好ましく、例えば、上記の第一工業製薬社製の「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」、「アクアロンHS−05」、「アクアロンHS−10」などを挙げることができる。
【0173】
また、本発明においては反応性乳化剤がアニオン性であることが好ましく、例えば、上述の「アデカリアソープSEシリーズ」(旭電化工業社製)、「アクアロンHSシリーズ」(第一工業製薬社製)、「ラテムルSシリーズ」(花王社製)、「エレミノールJSシリーズ」(三洋化成工業社製)などを挙げることができる。
【0174】
本発明において、これら反応性乳化剤の使用量は本発明に用いられる着色微粒子を形成している樹脂の合計100質量部あたり、一般に0.1〜80質量部用いられ、好ましくは1〜70質量部、特に好ましくは10〜60質量部用いられる。
【0175】
(界面活性剤)
本発明に用いられる色素固体分散物及び着色微粒子調製時の乳化に際しては、必要に応じて、通常のアニオン系乳化剤(界面活性剤)、及び/またはノニオン系乳化剤(界面活性剤)を用いることができる。
【0176】
上記通常のノニオン系乳化剤として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックコポリマーなどを挙げることができる。
【0177】
また、上記通常のアニオン系乳化剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル類、ポリエトキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩、及びその誘導体類などを挙げることができる。
【0178】
(色素)
本発明に用いられる色素固体分散物中及び着色微粒子中の色素について説明する。
【0179】
本発明に用いられる一般式(1)で表される金属キレート可能な色素は単独で用いても他の色素と併用してもよく、共に用いられる色素としては、一般に知られている色素を用いることができるが、本発明においては、色材が油溶性色素であることが好ましい。油溶性色素は、通常カルボン酸やスルホン酸等の水溶性基を有さない有機溶剤に可溶で水に不溶な色素であるが、水溶性色素を長鎖の塩基と造塩することにより油溶性を示す色素も含まれる。例えば、酸性色素、直接色素、反応性色素と長鎖アミンとの造塩色素が知られている。以下に限定されるものではないが、例えば、オリエント化学工業株式会社製のValifast Yellow 4120、Valifast Yellow 3150、Valifast Yellow 3108、Valifast Yellow 2310N、Valifast Yellow 1101、Valifast Red 3320、Valifast Red 3304、Valifast Red 1306、Valifast Blue 2610、Valifast Blue2606、Valifast Blue 1603、Oil YellowGG−S、Oil Yellow 3G、Oil Yellow 129、Oil Yellow 107、Oil Yellow 105、Oil Scarlet 308、Oil Red RR、Oil Red OG、Oil Red 5B、Oil Pink 312、Oil Blue BOS、Oil Blue 613、Oil Blue 2N、Oil Black BY、OilBlack BS、Oil Black 860、Oil Black 5970、Oil Black 5906、Oil Black 5905、日本化薬株式会社製のKayaset Yellow SF−G、Kayaset Yellow K−CL、Kayaset Yellow GN、KayasetYellow A−G、Kayaset Yellow 2G、Kayaset Red SF−4G、Kayaset Red K−BL、KayasetRed A−BR、Kayaset Magenta312、KayasetBlue K−FL、有本化学工業株式会社製のFS Yellow 1015、FS Magenta 1404、FS Cyan 1522、FS Blue 1504、C.I.Solvent Yellow 88、83、82、79、56、29、19、16、14、04、03、02、01、C.I.Solvent Red 84:1、C.I.Solvent Red 84、218、132、73、72、51、43、27、24、18、01、C.I.Solvent Blue 70、67、44、40、35、11、02、01、C.I.Solvent Black 43、70、34、29、27、22、7、3、C.I.Solvent Violet 3、C.I.SolventGreen 3及び7、Plast Yellow DY352、Plast Red 8375、三井化学社製MS Yellw HD−180、MS Red G、MS Msgenta HM−1450H、MS Blue HM−1384、住友化学社製ES Red 3001、ES Red 3002、ES Red 3003、TS Red 305、ES Yellow 1001、ES Yellow 1002、TS Yellow 118、ES Orange 2001、ES Blue 6001、TS Turq Blue 618、Bayer社製MACROLEX Yellow 6G、Ceres Blue、GNNEOPAN Yellow O75、Ceres Blue GN、MACROLEX Red、Violet R等が挙げられる。
【0180】
油溶性色素として分散色素を用いることができ、以下に限定されるものではないが、例えば、C.I.ディスパーズイエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット33;C.I.ディスパーズブルー56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368並びにC.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等が挙げられる。
【0181】
その他、油溶性色素として、フェノール、ナフトール類、ピラゾロン、ピラゾロトリアゾールなどの環状メチレン化合物、開鎖メチレン化合物などのカプラー、p−ジアミノピリジン類、アゾメチン色素、インドアニリン色素なども好ましく用いられる。
【0182】
(粒径)
本発明における着色微粒子は、体積基準のメジアン径が10〜100nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜50nmである。体積基準のメジアン径が10nm以下になると単位体積あたりの表面積が非常に大きくなるため、色素固体分散物の安定性が悪くなりやすく、保存安定性が劣化し易い。100nmを越える大粒子では、トナーでの単位色材量あたりの彩度が低下してしまう。体積基準のメジアン径は、動的光散乱法、レーザー回折法、遠心沈降法、FFF法、電気的検知体法などを用いて求めることが可能であるが、本発明ではマイクロトラックUPA−150(日機装株式会社)を用いて動的光散乱法で求めるのが好ましい。
【0183】
(熱可塑性樹脂)
本発明のトナーに含有される熱可塑性樹脂(結着樹脂)としては、色素固体分散物及び着色微粒子との密着性が高くなる熱可塑性樹脂が好ましく、特に溶剤可溶性のものが好ましい。更にポリマーの前駆体が溶剤可溶性であれば、3次元構造を形成する硬化性樹脂も使用可能である。熱可塑性樹脂としては、一般にトナーの結着樹脂として用いられているものが特に制限なく用いられるが、例えば、スチレン系の樹脂やアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート等のアクリル系樹脂、スチレンアクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコン系樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂あるいはエポキシ系樹脂などが好適に用いられるが、透明性や重ね合わせ画像の色再現性を高めるため、透明性が高く、溶融特性が低粘度でシャープメルト性の高い樹脂が要求される。このような特性を有する結着樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が適している。
【0184】
また結着樹脂としては、数平均分子量(Mn)が3000〜6000、好ましくは3500〜5500、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが2〜6、好ましくは2.5〜5.5、ガラス転移点が50〜70℃、好ましくは55〜70℃及び軟化温度が90〜110℃、好ましくは90〜105℃である樹脂を使用することが望ましい。
【0185】
結着樹脂の数平均分子量が3000より小さいと、フルカラーのベタ画像を折り曲げた際に画像部が剥離して画像欠損が発生し(折り曲げ定着性が悪化し)、6000より大きいと定着時の熱溶融性が低下して定着強度が低下する。また、Mw/Mnが2より小さいと高温オフセットが発生しやすくなり、6より大きいと定着時のシャープメルト特性が低下して、トナーの透光性並びにフルカラー画像形成時の混色性が低下してしまう。
【0186】
また、ガラス転移点が50℃より低いとトナーの耐熱性が不十分となって、保管時にトナーの凝集が発生しやすくなり、70℃より高いと溶融しにくくなって定着性が低下すると共にフルカラー画像形成時の混色性が低下する。また、軟化温度が90℃より低いと高温オフセットが生じやすくなり、110℃より高いと定着強度、透光性、混色性及びフルカラー画像の光沢性が低下する。
【0187】
(トナー)
本発明のトナーは、上記の熱可塑性樹脂及び着色微粒子の他、公知の荷電制御剤、オフセット防止剤等を使用することができる。
【0188】
荷電制御剤としては特に限定されるものではない。カラートナーに用いる負荷電制御剤としては、カラートナーの色調、透光性に悪影響を及ぼさない無色、白色あるいは淡色の荷電制御剤が使用可能であり、例えば、サリチル酸誘導体の亜鉛やクロムの金属錯体、カリックスアレーン系化合物、有機ホウ素化合物、含フッ素4級アンモニウム塩系化合物等が好適に用いられる。上記サリチル酸金属錯体としては、例えば、特開昭53−127726号公報、同62−145255号公報等に記載のものが、カリックスアレーン系化合物としては、例えば、特開平2−201378号公報等に記載のものが、有機ホウ素化合物としては、例えば、特開平2−221967号公報に記載のものが、有機ホウ素化合物としては、例えば、特開平3−1162号公報に記載のものが使用可能である。
【0189】
このような荷電制御剤を用いる場合、熱可塑性樹脂(結着樹脂)100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5.0質量部使用することが望ましい。
【0190】
オフセット防止剤としても特に制限されることはなく、例えば、ポリエチレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ホホバ油ワックス、蜜ろうワックス等が使用可能である。このようなワックスの添加量は、熱可塑性樹脂(結着樹脂)100質量部に対して0.5〜5質量部、好ましくは1〜3質量部が望ましい。これは添加量が0.5質量部より少ないと添加による効果が不十分となり、5質量部より多くなると透光性や色再現性が低下するためである。
【0191】
本発明のトナーは上記した熱可塑性樹脂(結着樹脂)、着色微粒子及びその他の所望の添加剤を使用し、混練・粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化分散造粒法、カプセル化法等その他の公知の方法により製造することができる。これらの製造方法の中で、画像の高画質化に伴うトナーの小粒径化を考慮すると製造コスト及び製造安定性の観点から乳化重合法が好ましい。
【0192】
乳化重合法は、乳化重合によって製造された熱可塑性樹脂エマルジョンを他の着色微粒子等、トナー粒子成分の分散液と混合し、pH調整により生成した粒子表面の反発力と電解質添加による凝集力のバランスを取りながら緩慢凝集させ、粒径・粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に加熱撹拌することで微粒子間の融着・形状制御を行うことによりトナー粒子を製造する。本発明に係るトナー粒子は、体積平均粒径を4〜10μm、好ましくは6〜9μmに調整することが画像の高精細再現性の観点から好ましい。
【0193】
本発明のトナーにおいては、トナーの流動性付与やクリーニング性向上等の観点から後処理剤を添加・混合して使用することができ、特に限定されるものではない。このような後処理剤としては、例えば、シリカ微粒子やアルミナ微粒子、チタニア微粒子等の無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子等の無機ステアリン酸化合物微粒子、またチタン酸ストロンチウムやチタン酸亜鉛等の無機チタン酸化合物微粒子等を使用することができ、単独あるいは異種の添加剤を併用して使用することが可能である。これらの微粒子は、耐環境安定性や耐熱保管性の観点からシランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコンオイル等で表面処理して用いることが望ましく、添加量はトナー100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部用いることが望ましい。
【0194】
本発明のトナーは、キャリアと混合して用いる2成分現像用トナーとして、またキャリアを使用しない1成分現像用トナーとして使用可能である。
【0195】
本発明のトナーと組み合わせて使用するキャリアとしては、従来より2成分現像用のキャリアとして公知のものを使用することができ、例えば、鉄やフェライト等の磁性体粒子からなるキャリア、このような磁性体粒子を樹脂で被覆してなる樹脂コートキャリア、あるいは磁性体微粉末を結着樹脂中に分散してなるバインダー型キャリア等を使用することができる。これらのキャリアの中でも、被覆樹脂としてシリコン系樹脂、オルガノポリシロキサンとビニル系単量体との共重合樹脂(グラフト樹脂)またはポリエステル系樹脂を用いた樹脂コートキャリアを使用することがトナースペント等の観点から好ましく、特にオルガノポリシロキサンとビニル系単量体との共重合樹脂にイソシアネートを反応させて得られた樹脂で被覆したキャリアが、耐久性、耐環境安定性及び耐スペント性の観点から好ましい。上記ビニル系単量体としては、イソシアネートと反応性を有する水酸基等の置換基を有する単量体を使用する必要がある。また、キャリアの体積平均粒径は20〜100μm、好ましくは20〜60μmのものを使用することが高画質の確保とキャリアかぶり防止の観点から好ましい。
【0196】
(画像形成方法)
次に、本発明のトナーを用いる画像形成方法について説明する。
【0197】
本発明において、画像形成の方式については特に限定されるものではない。例えば、感光体上に複数の画像を形成し、一括で転写する方式、感光体に形成された画像を転写ベルトなどに逐次転写する方式など特に限定されないが、より好ましくは感光体上の複数の画像を形成し、一括で転写する方式である。
【0198】
この方式は感光体に対して均一帯電させ第一の画像に応じた露光を与え、その後第一回目の現像を行い、感光体上に第一のトナー像を形成させる。次いで、その第一の画像が形成された感光体を均一帯電し第二の画像に応じた露光を与え、第二回目の現像を行い、感光体上に第二のトナー像を形成させる。更に、第一及び第二の画像が形成された感光体を均一帯電し、第3の画像に応じた露光を与え、第3回目の現像を行い、感光体上に第3のトナー像を形成させる。更に、第一、第二及び第3の画像が形成された感光体を均一帯電し第四の画像に応じた露光を与え、第四回目の現像を行い、感光体上に第四のトナー像を形成させる。
【0199】
例えば、第一回目をイエロー、第二回目をマゼンタ、第3回目をシアン、第四回目を黒トナーで現像することで、フルカラートナー画像を感光体上に形成するものである。その後、感光体上に形成された画像を紙等の画像支持体に一括して転写を行い、更に画像支持体に定着し、画像を形成する。
【0200】
本方式では、感光体上に形成された画像を一括して紙等に転写し、画像を形成する方式であるため、所謂中間転写方式とは異なり、画像を乱す要因となる転写の回数が1回ですみ、画像品質を高くすることができる。
【0201】
感光体に現像する方式としては、複数の現像が必要であることから、非接触現像が好ましい。また、現像に際しては交番電界を印加する方式も好ましい方式である。また、前記した如く現像方式としては像形成体上に重ね合わせカラー画像を形成し、一括転写する方式については非接触現像方式が好ましい。
【0202】
二成分現像剤として使用することのできるキャリアの体積平均粒径は15〜100μm、より好ましくは25〜60μmのものがよい。キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0203】
キャリアは更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させた所謂樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エステル系樹脂あるいはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0204】
本発明に使用される好適な定着方法としては、所謂接触加熱方式を挙げることができる。特に、接触加熱方式の代表的なものとして、熱ロール定着方式及び固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式を挙げることができる。
【0205】
(画像)
本発明のトナーを使用して現像・転写・定着を行う画像形成において、その転写から定着の状態は、転写材の上に転写された本発明のトナーが定着後においてもその着色微粒子が崩壊せず、トナー粒子中に分散された状態で紙の表面に付着した状態である。
【0206】
本発明においては、上記のように着色微粒子をトナー粒子中に分散させることにより、トナー粒子が高濃度の色素を含むにもかかわらず、色素がトナー粒子の表面に遊離しない(移行しない)ため、従来のように色素をそのまま熱可塑性樹脂(トナー結着樹脂)中に分散、もしくは溶解して得られた色素がトナー粒子表面に露出しているトナーの問題点である。
【0207】
1.帯電量が低い、
2.高温高湿下及び低温低湿下での帯電量の差が大きい(環境依存性)、
3.着色剤の種類、例えば、フルカラー画像記録のようにシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各顔料を用いる場合の各色トナーについて、帯電量がばらつく等を払拭することができる。
【0208】
また、転写材への熱定着の際、着色剤である色素の着色微粒子外への移行(着色微粒子表面への露出)が起こらないため、一般的な色素を使用したトナーにおいて問題となる熱定着時の色素の昇華やオイル汚染が生じることはない。
【実施例】
【0209】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0210】
以下、具体的に一般式(1)で表される化合物の合成法の一例を示すが、その他の化合物も同様にして合成することが可能であり、合成法としてはこれらに限定されない。
【0211】
実施例1
〔色素D−18の合成〕
【0212】
【化39】

【0213】
化合物1−1、4.92g、化合物1−2、1.91g、無水酢酸カリウム0.86g、メタノール20mlを混合し60℃で3.5時間加熱撹拌した。放冷後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール=95:5)、D−18を0.81g得た。MASS、1H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0214】
実施例2
〔色素D−30の合成〕
【0215】
【化40】

【0216】
化合物2−1、2.91g、化合物2−2、2.20g、無水酢酸カリウム0.54g、メタノール22mlを混合し3時間加熱還流した。放冷後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール=95:5)、D−30を1.09g得た。MASS、1H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0217】
実施例3
〔色素D−37の合成〕
【0218】
【化41】

【0219】
化合物3−1、1.93g、化合物3−2、1.69g、無水酢酸カリウム0.76g、エタノール20mlを混合し、60℃で3.5時間加熱撹拌した。放冷後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール=95:5)、D−37を0.81g得た。MASS、1H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0220】
実施例4
〔色素D−53の合成〕
【0221】
【化42】

【0222】
化合物4−1、4.22g、化合物4−2、2.68g、無水酢酸カリウム0.76g、エタノール30mlを混合し、60℃で3.5時間加熱撹拌した。放冷後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール=93:7)、D−53を1.15g得た。MASS、1H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0223】
実施例5
〔色素D−63の合成〕
【0224】
【化43】

【0225】
化合物5−1、3.87g、化合物5−2、2.94g、無水酢酸カリウム0.65g、メタノール30mlを混合し、2時間加熱還流した。放冷後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール=95:5)、D−63を1.14g得た。MASS、1H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0226】
実施例6
〔色素D−76の合成〕
【0227】
【化44】

【0228】
化合物6−1、3.77g、化合物6−2、2.38g、無水酢酸カリウム0.65g、メタノール25mlを混合し、3時間加熱還流した。放冷後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール=95:5)、D−76を1.23g得た。MASS、1H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0229】
実施例7
〔色素D−94の合成〕
【0230】
【化45】

【0231】
化合物7−1、3.69g、化合物7−2、1.74g、無水酢酸カリウム0.59g、メタノール37mlを混合し、3時間加熱還流した。放冷後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール=95:5)、D−94を1.10g得た。MASS、1H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0232】
実施例8
〔金属キレート色素MD−7の合成〕
【0233】
【化46】

【0234】
色素D−10、0.598gにメタノール5mlを加えて加熱撹拌溶解させ、銅化合物C−17、0.480gを酢酸エチル2.5mlに溶解した溶液を5分で滴下し、1時間室温下で撹拌した。反応液を濃縮した後、酢酸エチル20mlに溶解し、中和、水洗、濃縮し、金属キレート色素(MD−7)0.97gを得た。元素分析によって同定し、目的物であることを確認した。酢酸エチル溶液の最大極大吸収波長=631nm、モル吸光係数=170,000であった。
【0235】
実施例9
〔色素D−110の合成〕
【0236】
【化47】

【0237】
化合物9−1、4.51g、化合物9−2、2.31g、無水酢酸カリウム0.69g、メタノール45mlを混合し、3時間加熱還流した。放冷後、水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶出溶媒:酢酸エチル/メタノール=95:5)、D−110を1.21g得た。MASS、1H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0238】
実施例10
〔金属キレート色素MD−16の合成〕
【0239】
【化48】

【0240】
色素D−110、1.00gにメタノール10mlを加えて加熱撹拌溶解させ、銅化合物C−28、1.14gを酢酸エチル6mlに溶解した溶液を5分で滴下し、1時間室温下で撹拌した。反応液を濃縮した後、酢酸エチル20mlに溶解し、中和、水洗、濃縮し、金属キレート色素MD−16、1.87gを得た。元素分析によって同定し、目的物であることを確認した。酢酸エチル溶液の最大極大吸収波長=646nm、モル吸光係数=115,000であった。金属キレート色素MD−16の吸収波形を図3に示す。
【0241】
実施例11
〔トナーの調製〕
《調製例1:着色微粒子分散液1の調製》
3.0gの色素(A−1)、及び界面活性剤EM−27C、27%液(花王株式会社製)3.0gを含む水溶液80.0gをステンレスビーカーに入れ、ウルトラタラックスUTC(IKA社製)を用いて混合、撹拌した。次いで、媒体型撹拌機SLC−12(独 ゲッツマン社製)を用いて、0.5mmφのジルコニアビーズを用いて3時間分散を実施し、「着色微粒子分散液1」を得た。
【0242】
【化49】

【0243】
《調製例2:着色微粒子分散液2の調製》
3.0gの色素(A−1)、及び50.0gの酢酸エチルをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌して上記色素を完全溶解させた。次いで、界面活性剤EM−27C、27%液(花王株式会社製)3.0gを含む水溶液80.0gを滴下して撹拌した後、超音波分散機UH−600(S.M.T社製)を用いて、5分間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、「着色微粒子分散液2」を得た。
【0244】
《調製例3:着色微粒子分散液3の調製》
調製例1において、3.0gの色素(A−1)を1.26gのD−38に変更し、銅化合物(C−28)、1.74gを加えた以外は、同様にして「着色微粒子分散液3」を得た。
【0245】
《調製例4:着色微粒子分散液4の調製》
調製例2において、3.0gの色素(A−1)を1.26gのD−38に変更し、銅化合物C−28、1.74gを加えた以外は、同様にして「着色微粒子分散液4」を得た。
【0246】
《調製例5:着色微粒子分散液5の調製》
調製例2において、3.0gの色素(A−1)を1.26gのD−3に変更し、銅化合物C−23、1.74gを加えた以外は、同様にして「着色微粒子分散液5」を得た。
【0247】
《調製例6〜27:着色微粒子分散液6〜27の調製》
調製例5において、色素D−3及び銅化合物C−23を表3の通り変更した以外は、同様にして「着色微粒子分散液6〜27」を得た。
【0248】
表3に「着色微粒子分散液1〜27」の色素と銅化合物の種類と添加量のモル比を示す。
【0249】
【表3】

【0250】
《調製例28:着色微粒子分散液28の調製》
13.5gの下記構成の樹脂(P−1)、16.0gの上記色素(A−1)、及び123.5gの酢酸エチルをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌して上記色素を完全溶解させた。次いで、アクアロンKH−05(第一工業製薬社製)8.0gを含む水溶液238gを滴下して撹拌した後、「クリアミックスWモーションCLM−0.8W」(エムテクニック製)を用いて、300秒間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、色素を含浸するコア型の「着色微粒子分散液28」を得た。
【0251】
樹脂(P−1):St/HEMA/SMA=30/40/30
St:スチレン
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
SMA:ステアリルメタクリレート。
【0252】
《調製例29:着色微粒子分散液29の調製》
調製例28で調製した色素を含浸するコア型着色微粒子分散液に、更に0.5gの過硫酸カリウムを加え、ヒーターを付して70℃に加温した後、10.0gのメチルメタクリレートを滴下しながら5時間反応させて、コアシェル型の「着色微粒子分散液29」を得た。
【0253】
《調製例30:着色微粒子分散液30の調製》
調製例28において、16.0gの色素(A−1)を9.46gのD−44に変え、銅化合物C−18、9.62gを加えた以外は、同様にしてコア型の「着色微粒子分散液30」を得た。
【0254】
《調製例31:着色微粒子分散液31の調製》
調製例29において、16.0gの色素(A−1)を9.46gのD−44に変え、銅化合物C−18、9.62gを加えた以外は、同様にしてコアシェル型の「着色微粒子分散液31」を得た。
【0255】
《調製例32〜50:着色微粒子分散液32〜50の調製》
調製例31において、D−44、銅化合物C−18を表4に示すように変えた以外は、同様にしてコアシェル型の「着色微粒子分散液32〜50」を得た。
【0256】
表4に「着色微粒子分散液28〜50」の色素と銅化合物の種類と添加量のモル比を示す。
【0257】
【表4】

【0258】
《熱可塑性樹脂(ラテックス)調製》
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、予めアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gをイオン交換水2760gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0259】
一方、離型剤として下記式(1)で表される化合物72.0gを、スチレン115.1g、n−ブチルアクリレート42.0g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液に添加し、80℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。循環経路を有する機械式分散機により、前記界面活性剤溶液(80℃)中に前記単量体溶液(80℃)を混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子(油滴)の分散液を調製した。次いで、この分散液に重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)0.84gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて3時間に亘り加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、ラテックスを調製した。次いで、このラテックスに重合開始剤(KPS)7.73gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、15分経過後、80℃でスチレン383.6g、n−ブチルアクリレート140.0g、メタクリル酸36.4g、t−ドデシルメルカプタン13.7gからなる単量体混合液を126分間かけて滴下した。滴下終了後、60分に亘り加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行った後、40℃まで冷却しラテックスを得た。このラテックスを「ラテックス(1)」とする。
【0260】
【化50】

【0261】
〔トナー粒子1の作製〕
前記熱可塑性樹脂(ラテックス)調製例で得られた「ラテックス(1)」1250gと、イオン交換水2000gと、上記のようにして得られた「着色微粒子分散液1」の分散液とを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた5Lの四つ口フラスコに入れ撹拌した。内温を30℃に調整した後、この溶液に5Mの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを10.0に調整した。次いで、塩化マグネシウム6水和物52.6gをイオン交換水72mlに溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6分間かけて90℃まで昇温した(昇温速度=10℃/分)。その状態で「コールターカウンターTA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、体積平均粒径が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム115gをイオン交換水700gに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に液温度90℃±2℃にて6時間に亘り加熱撹拌することにより融着を継続させた。その後、6℃/分の条件で30℃まで冷却した。
【0262】
そして、この会合粒子の分散液から会合粒子を濾別し、会合粒子全体に対して質量比で10倍の量のイオン交換水(pH=3)に再分散させて洗浄処理を行った後、洗浄水から会合粒子を濾別する工程を2回繰り返した後、イオン交換水のみで洗浄処理を行い、40℃の温風で乾燥してトナー粒子を得た。このようにして得られたトナー粒子を「トナー粒子1」とする。
【0263】
〔トナー粒子2〜27の作製〕
トナー粒子1の作製において、「着色微粒子分散液1」の分散液をそれぞれ「着色微粒子分散液2〜27」に変えた以外は、同様にしてトナー粒子を得た。このようにして得られたトナー粒子を「トナー粒子2〜27」とする。
【0264】
〔トナー粒子28〜50の作製〕
トナー粒子1の作製において、「着色微粒子分散液1」の分散液をそれぞれ「着色微粒子分散液28〜50」に変えた以外は、同様にしてトナー粒子を得た。このようにして得られたトナー粒子を「トナー粒子28〜50」とする。
【0265】
〔トナー粒子51の作製〕
低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=3200)を加熱しながら、界面活性剤により固形分濃度が30質量%となるように水中に乳化させた低分子量ポリプロピレン乳化分散液を調製した。上記調製した低分子量ポリプロピレン乳化分散液の60gと、着色微粒子分散液3、338gとを混合し、更にスチレンモノマー220g、n−ブチルアクリレートモノマー40g、メタクリル酸モノマー12g、及び連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン5.4g、脱気処理した純水2000mlを追加した後に、窒素気流下にて撹拌を行いながら70℃で3時間保持し、乳化重合を行った。
【0266】
得られた樹脂微粒子分散液に酸化ナトリウムを加えて、pHを7.0に調整した後、2.7mol%の塩化カリウム水溶液を700g添加し、更にイソプロピルアルコール420ml、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド平均重合度=10)23.4gを純水175gに溶解して添加し、75℃に保持して6時間撹拌しながら反応を行った。その後、6℃/分の条件で30℃まで冷却した。そして、このトナー粒子の分散液から粒子を濾別し、粒子全体に対して質量比で10倍の量のイオン交換水(pH=3)に再分散させて洗浄処理を行った後、洗浄水からトナー粒子を濾別する工程を2回繰り返した後、イオン交換水のみで洗浄処理を行い、40℃の温風で乾燥してトナー粒子を得た。このようにして得られたトナー粒子を「トナー粒子51」とする。
【0267】
〔比較トナー粒子52の作製〕
調製例1において、色素(A−1)をC.I.ピグメントレッド48:3(クラリアントジャパン社製)に変えた以外は、同様にして着色微粒子分散液52を得た。
【0268】
トナー粒子51の作製において、着色微粒子分散液3を着色微粒子分散液52に変えた以外は、同様にしてトナー粒子を得た。このようにして得られたトナー粒子を「トナー粒子52」とする。
【0269】
〔比較トナー粒子53の作製〕
トナー粒子51の作製において、色素をC.I.ピグメントブルー15:3(大日本インキ社製)に変えた以外は、同様にしてトナー粒子を得た。このようにして得られたトナー粒子を「トナー粒子53」とする。
【0270】
〔現像剤作製〕
以上のようにして得られたトナー粒子1〜53の各々に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)を1質量%となる割合で添加すると共に、疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)を1.2質量%となる割合でそれぞれ添加し、ヘンシェルミキサーにより混合してトナーを得た。これらのトナーをトナー粒子に対応して、それぞれ「トナー1」〜「トナー53」とする。
【0271】
以上のようにして得られたトナーの各々とシリコン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアとを混合し、トナー濃度が6%の現像剤を調製した。これらの現像剤をトナーに対応して、それぞれ「現像剤1」〜「現像剤53」とする。
【0272】
〔評価装置、条件〕
以上のようにして得られた「現像剤1」〜「現像剤53」の各々について、定着器の構成が下記のような構成に変更されたデジタル複写機「Konica7075」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用い、常温常湿環境下(温度25℃、相対湿度55%)で転写媒体として上質紙(64g/m2)及びOHP用透明シートを用い、実写テストを行った。
【0273】
〈感光体の帯電〉
感光体表面電位:−700V
〈現像条件〉
DCバイアス:−500V
Dsd(感光体と現像スリーブ間距離):600μm
現像剤層規制:磁性H−Cut方式
現像剤層厚:700μm
現像スリーブ径:40mm。
【0274】
〈定着器〉
定着器としては、熱ロール定着方式のものを用いた。具体的には、中央部にヒーターを内蔵するアルミ合金からなる円筒状(内径=40mm、肉厚=1.0mm、全幅=310mm)の芯金表面を、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)の厚み120μmのチューブで被覆することにより加熱ローラーを構成し、鉄からなる円筒状(内径=40mm、肉厚=2.0mm)の芯金表面を、スポンジ状シリコンゴム(アスカーC硬度48、厚み2mm)で被覆することにより加圧ローラーを構成し、当該加熱ローラーと当該加圧ローラーとを150Nの荷重により当接させて5.8mm幅のニップを形成させた。
【0275】
この定着装置を使用して、印字の線速を480mm/secに設定した。なお、定着装置のクリーニング機構として、ポリジフェニルシリコン(20℃の粘度が10Pa・sのもの)を含浸したウェッブ方式の供給方式を使用した。定着温度は加熱ローラーの表面温度で制御した(設定温度175℃)。なお、シリコンオイルの塗布量は0.1mg/A4とした。
【0276】
〔特性評価〕
得られた実写プリントから(1)色再現性、(2)透明性、(3)帯電性、(4)耐オフセット性、(5)耐光性について評価を行った。なお、評価基準は、◎、○、△は合格、×は不合格とする。
【0277】
(1)色再現性
色再現性は転写媒体として上質紙を用い、得られた単色プリント画像の色再現性を10人のモニターによる目視評価により下記評価基準に従って評価した。なお、トナー付着量は0.7±0.05(mg/cm2)の範囲で評価した。結果を下記表5、6に示す。
【0278】
◎:色再現性が特に優れている
○:色再現性が優れている
△:多少の色汚染があるが、実用上問題ないレベルである
×:色汚染大で画像品質上問題あり。
【0279】
(2)透明性
画像の透明性は転写媒体としてOHP用透明シートを用い、透過画像を作製し、定着された画像について、「330型自記分光光度計」(日立製作所製)によりトナーが担持されていないOHP用透明シートをリファレンスとして画像の可視分光透過率を測定し、イエロートナーでは650nmと450nmでの分光透過率の差、マゼンタトナーでは650nmと550nmでの分光透過率の差、シアントナーでは500nmと600nmでの分光透過率の差を求め、OHP画像の透過性を下記のようにランク評価した。この値が70%以上である場合、良好な透過性であると判断し得る。なお、トナー付着量は0.7±0.05(mg/cm2)の範囲で評価した。
【0280】
◎:90%以上
○:70%〜90%未満
×:70%未満。
【0281】
(3)帯電性
帯電量の経時変化は、現像剤をセットして1枚目の画像を出したときの帯電量をQa、100万枚の画像を出したときの帯電量をQbとし、Qb/Qaの値を下記評価基準に従って評価した。
【0282】
◎:0.9以上1.1未満
○:0.8以上0.9未満、または1.1以上1.2未満
△:0.7以上0.8未満、または1.2以上1.3未満
×:0.7未満または1.3以上。
【0283】
(4)耐オフセット性
耐オフセット性は転写媒体として上質紙を用い、搬送方向に対して垂直方向に5mm幅のベタ帯状画像を有するA4の上質紙を縦送りで1万枚搬送定着した後に、搬送方向に対して垂直に20mm幅のハーフトーン画像を有するA4画像を横送りで1万枚連続して搬送し、一旦休止する。一晩機械を停止した後に再度機械を立ち上げ、最初の1枚目に発生する定着オフセット現象による画像汚れの有無を下記評価基準に従って目視評価した。
【0284】
◎:画像上に汚れの発生がない
○:画像上に極軽微な汚れが発生(実用上問題無し)
△:画像上に若干の汚れが発生
×:画像上に汚れがあり、実用に適さない。
【0285】
(5)耐光性
耐光性については、記録した直後の画像濃度Ciを測定した後、ウェザーメーター「アトラスC.165」を用いて、画像にキセノン光(8万5千ルクス)を10日間照射した後、再び画像濃度Cfを測定し、キセノン光照射前後の画像濃度の差から色素残存率(((Ci−Cf)/Ci)×100%)を算出した。画像濃度は反射濃度計「X−Rite310TR」を用いて測定した。
【0286】
表5、6に評価結果を示す。
【0287】
【表5】

【0288】
【表6】

【0289】
評価結果より、本発明に係る前記一般式(1)で表される金属キレート可能な色素と前記一般式(2)で表される銅化合物を含有するトナーは、優れた透明性、耐オフセット性、耐光性が得られ、高画質の画像を確実に形成することができる。中でも「現像剤3、4、11、12、19〜27」及び「現像剤30、31、36〜38、44〜50」は色再現性に優れている。
【0290】
更に耐光性については、前記一般式(18)で表される金属キレート可能な色素を含有する「現像剤20〜27」及び「現像剤44〜50」は特に耐光性に優れており、本発明の金属キレート色素が優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0291】
【図1】熱可塑性樹脂中に着色微粒子を分散させたトナー粒子の断面を模式的に表した図である。
【図2】内部(コア)を外殻樹脂(シェル)で被覆してなるコアシェル構造の着色微粒子の断面を模式的に表した図である。
【図3】本発明の金属キレート色素MD−16の吸収波形を示す図である。
【符号の説明】
【0292】
1 トナー粒子
2 熱可塑性樹脂
3 着色微粒子
4 樹脂
5 色素
6 内部(コア)
7 外殻樹脂(シェル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂中に下記一般式(1)で表される金属キレート可能な色素及び下記一般式(2)で表される銅化合物を分散してなることを特徴とする電子写真用トナー。
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4は各々水素原子または置換基を表す。Z1は窒素原子を少なくとも1つ含む5または6員の複素環を表し、該複素環は置換基を有していてもよく、縮合環を形成してもよい。Z2は5または6員の複素環を表し、該複素環は置換基を有していてもよく、縮合環を形成してもよい。)
一般式(2) Cu2+(X1)m(X2)n・W1
(式中、X1及びX2はそれぞれ独立に1座または2座配位子を表し、同一であっても異なっていてもよく、X1及びX2は連結していてもよい。m及びnは0〜2の整数を表す。W1は電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、Z1が下記一般式(3)または(4)で表されることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
【化2】

(式中、R10、R11、R12、R13、R14は各々独立に水素原子または置換基を表し、R10、R11の少なくとも1つは一般式(3)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、R12、R13の少なくとも1つは一般式(4)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、*は前記一般式(1)で表される色素が結合している炭素原子との結合部位を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)において、Z1が下記一般式(5)または(6)で表されることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
【化3】

(式中、R15、R16、R17、R18は各々独立に水素原子または置換基を表し、R15、R16の少なくとも1つは一般式(5)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、R17、R18の少なくとも1つは一般式(6)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、*は前記一般式(1)で表される色素が結合している炭素原子との結合部位を表す。)
【請求項4】
前記一般式(1)において、Z1が下記一般式(7)または(8)で表されることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
【化4】

(式中、R19、R20、R22、R23、R24は各々独立に水素原子または置換基を表し、R20、R21の少なくとも1つは一般式(7)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、R22、R23、R24の少なくとも1つは一般式(8)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基を表し、*は前記一般式(1)で表される色素が結合している炭素原子との結合部位を表す。)
【請求項5】
前記一般式(1)において、Z1が下記一般式(9)で表されることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
【化5】

(式中、R31、R32は置換基を表し、R31、R32の少なくとも一方が一般式(9)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基であり、pは0〜5の整数を表す。)
【請求項6】
前記窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基が下記一般式(10)または(11)で表されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【化6】

(式中、Z3は窒素原子と共に5または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子団を表し、R41は水素原子または置換基を表す。L1は炭素数1または2の連結基または環構造の一部を表し、Q1は水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基を表す。)
【請求項7】
前記一般式(1)において、Z2が下記一般式(12)〜(16)のいずれかで表されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【化7】

(式中、R51、R52は各々独立に水素原子または置換基を表し、m1は0〜2の整数を表し、m2は0〜4までの整数を表す。X11、X12は酸素原子、硫黄原子、−(NR53)−または−CR5455−を表し、X11とX12の少なくとも一方が−(NR53)−を表し、R53、R54、R55は各々独立に水素原子または置換基を表す。X13、X14、X15は酸素原子、硫黄原子、−(NR56)−または−C(R57)=を表し、X13、X14、X15の少なくとも1つは酸素原子、硫黄原子または−(NR56)−を表す。R56、R57は水素原子または置換基を表す。)
【請求項8】
前記一般式(2)で表される銅化合物の配位子(X1またはX2)の少なくとも1つが下記一般式(17)で表されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【化8】

(式中、E1及びE2はハメット置換基定数(σp)が0.1以上0.9以下の電子吸引性基を表し、Rはアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアミノ基を表し、置換基を有していてもよい。)
【請求項9】
熱可塑性樹脂中に色素を着色成分として含有する着色微粒子を分散してなる電子写真用トナーにおいて、該着色微粒子中に請求項1〜7のいずれか1項に記載の一般式(1)で表される金属キレート可能な色素及び請求項1または8に記載の一般式(2)で表される銅化合物を含有することを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項10】
前記着色微粒子が更に熱可塑性樹脂とは異なる樹脂を含有することを特徴とする請求項9に記載の電子写真用トナー。
【請求項11】
前記着色微粒子が請求項1〜7のいずれか1項に記載の一般式(1)で表される金属キレート可能な色素、請求項1または8に記載の一般式(2)で表される銅化合物及び熱可塑性樹脂とは異なる組成の樹脂とからなるコアと該コアを被覆する外殻樹脂(シェル)とからなることを特徴とする請求項9に記載の電子写真用トナー。
【請求項12】
静電画像担持体上に形成した静電荷像をトナーにより現像する工程、及び現像により形成したトナー画像を転写材上に転写する工程を少なくとも含む画像形成方法において、該トナーとして請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子写真用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
下記一般式(18)で表されることを特徴とする金属キレート可能な色素。
【化9】

(式中、R1〜R4、Z2は請求項1に記載の一般式(1)におけるR1〜R4、Z2と同義であり、R31、R32は置換基を表し、R31、R32の少なくとも一方が一般式(18)の窒素原子と共に少なくとも2座の配位結合を形成可能な基であり、pは0〜5の整数を表す。)
【請求項14】
請求項13に記載の一般式(18)で表される金属キレート可能な色素を少なくとも1つの配位子として有することを特徴とする金属キレート色素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−328312(P2007−328312A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230264(P2006−230264)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】