説明

電子写真用導電性ゴムローラーおよびその製造方法

【課題】セル分布が均一で抵抗ムラの小さい電子写真装置用導電性ゴムローラーとその製造方法を提供する。
【解決手段】導電性芯材上にゴム層が成形された電子写真用導電性ゴムローラーの製造方法において、チューブヘッドからゴム材料を押し出して円筒状に成形する成形工程とこのゴム材料をマイクロ波加硫炉中で連続的に加硫発泡する工程とを有し、成形工程でマンドレル、マンドレルの外側に配された内筒、内筒の外側に配された外筒、マンドレルと内筒とを接続する内側支持脚および内筒と外筒とを接続する外側支持脚を有するスパイダー並びにブレーカーを有するチューブヘッドを用い、ゴム材料を押し出す際、内筒によりゴム材料を内側層と外側層の二層に区画し、内側層を内側支持脚により区画し、外側層を外側支持脚により区画し、総区画数を6〜8にする。この方法により製造された電子写真用導電性ゴムローラー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において、使用される電子写真用導電性ローラー及び製造方法に関する。さらには、感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による転写画像を紙等の記録媒体、転写材に転写させる電子写真用転写ローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなど、電子写真方式の画像形成装置の多くに帯電ローラー、転写ローラー、現像ローラー等の導電性ローラーが用いられている。これらのゴムローラーに導電性を付与する方法として、カーボンブラックなどの導電性の充填材を加える方法、あるいはアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性のゴム材料を配合する方法が挙げられる。これらのローラーは各々ドラム(感光体)に対して荷重が加えられた状態で接触しており、また、これらのゴムローラーは用途の上で長時間通電される。そのため、抵抗値の変動が小さいゴム材料が望ましく、また、製造方法の問題等から転写ローラーや帯電ローラーではアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム等のゴム材料が使用されている(特許文献1)。
【0003】
これらのローラーに用いるゴム材料は、加硫剤、発泡剤、充填剤などを混練した原料組成物を用い、金型、押し出し機などで未加硫の円筒状ゴム成形体とした後、この未加硫の成形体を加熱により加硫・発泡させて円筒状の発泡体に調製される。その後、円筒状の発泡体に芯金を圧入し、外径を円筒研磨してローラー形状にする手法が用いられている。
【0004】
上記円筒状の発泡体の製造方法としては、例えば高圧蒸気による加硫缶加硫、筒型等による金型加硫、マイクロ波照射によるUHF加硫が知られている(特許文献2)。しかしながら、加硫缶加硫では発泡体のセルが不均一で所望のセルを表面に出す為に多量の研磨を行わなくてはならず、金型加硫においては段取りに時間が掛かり且つ、金型洗浄を行う必要がある為、量を数多く作るのには不向きであった。一方、UHF加硫では段取りが良く、セルも均一となりうるが、ゴムチューブが炉内で軟化した時にコンベアやローラーとの接触面が増大し、セルの発泡ムラが増加することがあった。更にUHF炉の温度が高い場合ではさらにゴムが軟化し、チューブの内径が保持できず、チューブの製造が困難となる場合があった。更にこのチューブの不均一に起因して周方向の硬度、抵抗ムラの原因となっていた(特許文献3)。上記内外径の不均一に対して、複層構造のチューブを用いて内層のゴム組成物を選択的に加硫してチューブの内径を保持することが報告されている(特許文献4)。
【0005】
また、ゴムやプラスチック等を円筒状に押出す押出成形機のダイは、図2に示した様にマンドレル2を中心部に有する。マンドレルとマンドレル外筒4との間をゴム材料が通過する。マンドレルを支持する脚部5は、四方から伸びて筒状流路を横切るので、クモの巣に例えて、そのマンドレル支持機構をスパイダーと称している。このようなスパイダーを持つ装置で押し出し成型をした場合、この脚構造によりゴムは分岐されて通過し、再び合流した位置にはフローマークやウェルドラインと称する線状の合流痕が生ずることがある。
【0006】
特にゴム材料に対し充填材比率10%程度の低充填配合で充填剤を混合する場合、上記フローマーク等が顕著に発生することがある。このような現象の回避のために装置側での種々の工夫がなされている(非特許文献1)。
【0007】
この合流痕のある部分は、他より品質が劣るため、これを消すため合流後の出口までの流路を伸ばしたり、マンドレルや支持脚部を加熱したり、あるいは支持脚部を少なくしたり、ボカシネジを使ったり、流路を絞ったり、種々の対策が行われている。また、円筒状に押し出し成型をする場合では、スパイダーの先に材料攪拌を促す障害物(フィン等)を設けることで、スパイダー経由後に生ずるフローマーク又はウェルドラインを最低限に目立たなくする方法がとられている(特許文献5)。
【0008】
しかしながら、上記の方法の場合、フローマークやウェルドラインが部分的に残ってしまうため、製品の物性、特に電気抵抗、硬度、発泡状態にムラが発生することがあった。特に、ウェルドラインが少ないほど、他の領域との物性の差が大きく、より大きなムラとなっていた。さらに材料によっては、ヘッド内の圧力が上昇してしまいスコーチなどの物性の低下も発生する場合もあった。
【0009】
また、UHF加硫のような連続加硫の場合においては、押出成型直後に加硫発泡を行う為、最終製品にフローマークやウェルドラインが発生しやすい場合があり、更なる改善が求められていた。
【特許文献1】特開平11−201140号公報
【特許文献2】特開平11−114978号公報
【特許文献3】特開2002−221859号公報
【特許文献4】特開2003−246485号公報
【特許文献5】特開平8−207021号公報
【非特許文献1】伊藤公正「やさしい押し出し成形の成形不良対策」三光出版社、平成4年7月、第2版、P88〜P93
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、周方向のセル分布がより均一で、抵抗ムラの小さい電子写真装置用導電性ゴムローラーとその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、導電性芯材上にゴム層が成形されている電子写真用導電性ゴムローラーの製造方法において、
チューブヘッドからゴム材料を押し出して円筒状に成形する成形工程と、該成型工程で成形されたゴム材料をマイクロ波加硫炉中で連続的に加硫発泡する工程とを有し、
該成形工程において、
マンドレル、該マンドレルの外側に配されたマンドレル内筒、該マンドレル内筒の外側に配されたマンドレル外筒、該マンドレルとマンドレル内筒とを接続する内側支持脚および該マンドレル内筒とマンドレル外筒とを接続する外側支持脚を有したスパイダーと、ブレーカープレートとを有するチューブヘッドを用い、
マンドレルとマンドレル外筒との間を通してゴム材料を押し出す際に、該マンドレル内筒によってゴム材料を内側の層と外側の層の二層に区画するとともに、該内側の層を内側支持脚によって区画し、かつ該外側の層を外側支持脚によって区画し、この際の内側および外側をあわせた総区画数を6、7または8にする
ことを特徴とする電子写真用導電性ゴムローラーの製造方法が提供される。
【0012】
本発明により、上記電子写真用導電性ゴムローラーの製造方法により製造された電子写真用導電性ゴムローラーが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、周方向のセル分布がより均一で、抵抗ムラの小さい電子写真装置用導電性ゴムローラーとその製造方法が提供される。
【0014】
本発明の電子写真装置用導電性ローラーは、特には転写ローラーに好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の形態についてさらに詳しく説明する。
【0016】
本発明は、導電性芯材上にゴム層が成形されている電子写真用導電性ゴムローラーの製造方法に関する。
【0017】
本発明の製造方法は、チューブヘッドからゴム材料を押し出して円筒状に成形する成形工程と、この成型工程で成形されたゴム材料をマイクロ波加硫炉中で連続的に加硫発泡する工程とを有する。
【0018】
成形工程においては、チューブヘッドを用いてゴム材料を押し出す。チューブヘッドはスパイダーとブレーカープレートとを有する。スパイダーは、マンドレル、マンドレル内筒、マンドレル外筒、内側支持脚および外側支持脚を有する。マンドレル内筒はマンドレルの外側に配され、マンドレル外筒はマンドレル内筒の外側に配される。内側支持脚は、マンドレルとマンドレル内筒とを接続し、外側支持脚はマンドレル内筒とマンドレル外筒とを接続する。
【0019】
このとき、マンドレルとマンドレル外筒との間を通してゴム材料を押し出す。この際に、マンドレル内筒によりゴム材料を内側の層と外側の層の二層に区画するとともに、この内側の層を内側支持脚によって区画し、かつ、この外側の層を外側支持脚によって区画する。内側の層の区画数と、外側の層の区画数とを合計した総区画数は、6、7または8にする。
【0020】
(ゴム材料)
本発明において、ゴム層を形成するためのゴム材料が、ゴム主成分として少なくともアクリロニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。なぜなら、通電時の耐久性に優れ、また特に適切な抵抗領域を有するからである。ただしこの限りではなく、ポリスチレン系高分子材料、ポリオレフィン系高分子材料、ポリエステル系高分子材料、ポリウレタン系高分子材料、RVC(硬質塩化ビニル)などの熱可塑性エラストマー、アクリル系樹脂、スチレン酢酸ビニル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などの高分子材料などや、これらゴム、エラストマー、樹脂の混合物を用いることができる。
【0021】
(導電材・充填材)
ゴム層を形成するためのゴム材料に、導電性を付与するため導電性物質や、その他の充填剤を配合することができる。導電性物質や充填剤としては電子写真用導電性ゴムローラーの分野で公知の物質から適宜選んで用いることができる。
【0022】
導電性物質については、例えば、導電性粒子として、導電性カーボンブラック、TiO2、SnO2、ZnO、SnO2とSbO3の固溶体等の金属酸化物、Cu、Agなどの金属粉末等、また、イオン導電剤として、LiCIO4、NaSCNなどが挙げられる。これらをゴム材料に単独で若しくは複数を添加し分散させることによって、所望の電気抵抗を得ることが可能である。また、ゴム主鎖中あるいは側鎖に極性を有する分子などを導入することにより導電化することもできる。
【0023】
その他の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウムを用いることができる。
【0024】
(発泡剤)
ゴム層を形成するためのゴム材料に発泡剤を配合することができる。発泡剤としては、有機発泡剤例えばA.D.C.A(アゾジカルボンアミド)系、D.P.T(ジニトロソペンタメチレンテトラアミン)系、T.S.H(P.トルエンスルホニルヒドラジド)系、O.B.S.H(オキシビスベンゼンスルフェニルヒドラジド)系などを単独で若しくは混合して用いることが可能である。発泡剤の分解温度は、尿素樹脂や酸化亜鉛などの発泡助剤などを加えて低下させることもできる。
【0025】
(発泡助剤)
発泡助剤としては、尿素系化合物、酸化亜鉛、酸化鉛などの金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸などを主成分とする化合物などが挙げられ、発泡剤に対応して添加することができる。
【0026】
(加硫剤・加硫促進剤)
ゴム層を形成するためのゴム材料に加硫剤や加硫促進剤を配合することができる。加硫剤としては、硫黄、金属酸化物などが挙げられる。加硫促進剤は各種知られているが、例えば、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤を使用することができる。具体的なチアゾール系促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等があるが、スコーチ性が少なく、チウラム系促進剤との併用に賞用されるジベンゾチアジルジスルフィドが好ましい。また、チウラム系促進剤としては、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が知られている。スコーチ性に優れたテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが好ましい。なお、その他のチアゾール系促進剤及びチウラム促進剤においても必要に応じて使用条件を整えて使用することができる。
【0027】
(製造方法)
本発明の導電性ローラーは、例えば、以下のようにして作成できる。
【0028】
図4に導電性ローラーのマイクロ波を用いた連続加硫による製造装置を示す。11は押出機、12はマイクロ波加硫装置(以下、UHFと称す。)、13は熱風加硫装置(以下、HAVと称す。)、14は引取機、15は定尺切断機である。
【0029】
UHF12は、テフロンでコーティングされたメッシュのベルト、又はテフロン樹脂を被覆したコロで上記押出機11より押出されたゴムチューブを搬送し、HAV13はテフロン樹脂を被覆したコロで搬送を行っている。UHF12とHAV13間は、テフロン樹脂を被覆したコロで連結されている。
【0030】
ゴム材料をバンバリーミキサー又はニーダー等の密閉式混練機を用い混練した後、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形し、押出機11に投入する。
【0031】
押出機11よりチューブ状に成形され押出されたゴム材料(ゴムチューブ)は、押出機11より押し出された直後にUHF12内に搬送される。ここでゴムチューブにマイクロ波を照射させて、ゴムチューブを加熱させて加硫発泡し、つづいて、HAV13に搬送し、加硫を完了させる。
【0032】
加硫、発泡後に巻引取機14より排出された直後に、ゴムチューブを定尺切断機15により所望の寸法に切断し、チューブ状の導電性ゴム成形物を作成する。
【0033】
次いでホットメルト接着剤、又は加硫接着剤を所望の領域に塗布した導電性芯材(例えば直径4mmから10mm)を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラー状の成形体を得る。
【0034】
この成形体を、研磨機(不図示)にセットして研磨し、導電性発泡ゴムローラーを作成する。
【0035】
上記押出機において、ゴム材料を押し出すチューブヘッドは、図3のようにブレーカープレート6およびスパイダー30を有する構成をとる。マンドレル2の周囲の材料の流れ101は、スパイダーとブレーカープレートとを通過する。ブレーカープレートは通常使用されるものであれば特に限定されない。スパイダーは図1に示すように、マンドレル2、マンドレル内筒3、マンドレル外筒4、内側支持脚1aおよび外側支持脚1bを有する。マンドレルとマンドレル内筒との間に内側の材料流路100aが形成され、マンドレル内筒とマンドレル外筒との間に外側の材料流路100bが形成される。マンドレル、マンドレル内筒およびマンドレル外筒は同心に配置される。
【0036】
ゴム材料がマンドレルとマンドレル外筒との間を通過する際に、マンドレル内筒によってゴム材料が二層に区画される。つまり、内側の材料流路100aを流れる内側の層と、外側の材料流路100bを流れる外側の層との二層に半径方向に分割される。
【0037】
内側の材料流路100aは内側支持脚によって区画されている。つまり、ゴム材料の内側の層は、内側支持脚によって周方向に区画される。外側の材料流路100bは外側支持脚によって区画されている。つまり、ゴム材料の外側の層は、外側支持脚によって周方向に区画される。内側の区画数と外側の区画数の合計(総区画数)は、6、7または8とする。図1に示した例では、内側の区画数が3であり、外側の区画数も3であり、総区画数は6である。スパイダーの構造上、内側区画数、外側区画数とも2以上となる。
【0038】
上記の構造は、従来のウェルドラインやフローマークを消す構造ではなく、ゴム層内にウェルドラインをより均一にかつ、より全域に発生させることを意図した構造である。また、二層構造にすることにより、ウェルドライン起因の裂けを防止できる効果もあり、ゴム層としての強度も低下しない。この結果、ローラー周方向でウェルドラインが均一に存在することとなり、抵抗周ムラの改善に効果があることを本発明者等は見出している。
【0039】
ゴム材料の半径方向の分割方式が一層の場合(マンドレル内筒を設けない場合)、例えば単層で6〜8つの区画に分割する場合では、ゴム材料が層全域において分割されることになり、加硫発泡後にウェルドラインを起因として裂ける場合がある。また、単層で分割数が6つ未満の場合では、周方向におけるウェルドライン部位の割合が低くなり、ウェルドラインが均一に存在していないため、本発明のような効果は得られない。一方、単層で分割数が8つより大きい場合、分割数に対する効果は本発明と大差はないが、ゴムにかかるせん断が多く、物性を低下させるだけではなく、作業性が悪化してしまうため、実用性に欠ける。
【0040】
さらに、分割方式が二層の場合において、加硫発泡後にウェルドラインを起因として裂けることを一層確実に防止する観点から、ゴム材料の流路方向に平行な面において内側支持脚と外側支持脚の設置位置は同一面上にないことが好ましい。
【0041】
なお、半径方向の分割方式が二層であっても、総区画数が6未満の場合は周方向におけるウェルドライン部位の割合が低くなり、ウェルドラインが均一に存在していないため、本発明のような効果は得られない。一方、総区画数が8を超える場合、ゴム材料にかかるせん断が大きいだけでなく、極めて作業性が悪くなるため、好ましくない。
【0042】
さらに分割方式を二層より増やした場合においては、耐圧構造的に製作が困難であるだけではなく、スパイダー内部のせん断熱の増加による物性の著しい低下及び作業性の悪化が発生する。
【0043】
また、半径方向の分割方式が二層であって、内側区画数と外側区画数が異なる場合において、各層における区画数が3つないし4つの区画数であることが好ましい。耐圧強度の観点から各区画数は3以上が好ましい。一方、ゴム材料にかかるせん断を抑制して物性低下を防ぎ、作業性の悪化を防止する観点から、各区画数は4以下が好ましい。なお、内側区画数と外側区画数が同じ場合、総区画数が6から8であるので、それぞれの区画数は3または4となる。
【0044】
上記スパイダーは製造するゴムチューブの径に関わらず適用が可能である。
【0045】
本発明の電子写真用導電性ゴムローラーは、転写ローラーに好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、帯電ローラーや現像ローラーにも適用可能である。
【実施例】
【0046】
以下に本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
図4に示した構成を有する押出し加硫成形装置を用い、導電性発泡ゴムローラーを作成した。
【0048】
押出し加硫装置は全長13mで、UHF12、HAV13および引取機14の長さはそれぞれ4m、6m、1mである。UHF12とHAV13間、及びHAV13と引取機14間は0.1〜1.0mとなるように設定されている。
【0049】
この装置の押出し機11は、表1に示す半径方向に二層分割、総区画数6(内側区画数、外側区画数とも3)のチューブヘッドを備える。
【0050】
1)ゴム及び充填剤等
・アクリロニトリルブタジエンゴム[商品名:ニポールDN401LL。日本ゼオン(株)社製]。
・エピクロルヒドリンゴム[商品名:ハイドリンT3106。日本ゼオン(株)社製]。
・酸化亜鉛[商品名:亜鉛華2種。ハクスイテック(株)社製]。
・ステアリン酸[商品名:ルナックS−20。花王(株)社製]。
・カーボンブラック[商品名:旭#35。旭カーボン(株)社製]。
【0051】
2)加硫剤
・ジベンゾチアジルジスルフィド[商品名:ノクセラーDM−P。大内新興化学(株)社製]。
・テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド[商品名:ノクセラーTOT−N。大内新興化学(株)社製]。
・硫黄[商品名:サルファックスPMC。鶴見化学(株)社製]。
【0052】
3)発泡剤
・アゾジカルボンアミド[商品名:ビニホールAC。永和化成工業(株)社製]。
【0053】
原料ゴムとして、アクリロニトリルブタジエンゴム80質量部とエピクロルヒドリンゴム20質量部を混合して用い、これに、その他配合剤として、カーボンブラック30質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部を添加した。さらに加硫剤として、硫黄5質量部、加硫促進剤として、ジベンゾチアジルジスルフィド2質量部及びテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド1質量部を配合した。さらに、発泡剤として、アゾジカルボンアミド5質量部を添加し、バンバリーミキサーで混練した後、リボンブレンダーで分出しして、押出機に供給した。次に押出し機11で円筒形に成形し、次いでUHF12及びHAV13で加熱発泡を行った。さらに、引取機14で引き取り、定尺切断機15で切断し、チューブ状の導電性ゴム成形物を作成した。これを接着剤を塗布した導電性芯材に圧入し、ローラー状の成形体とした。これを研磨砥石(商品名:GC80。テイケン株式会社製)を取り付けた研磨機にセットし、研磨条件として回転速度2000RPM、送り速度500mm/分で外直径が17mmになるようにゴム層を研磨し、導電性発泡ゴムローラーを作成した。
【0054】
(ローラーの電気抵抗ムラの測定方法)
作製した導電性ローラーを、N/N(23℃、相対湿度55%)環境下において48時間放置した。その後、導電性ローラーの軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにし、外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、回転させた状態で、軸体とアルミドラムとの間に2kVの電圧を印加して電気抵抗を測定した。この時の抵抗値の最大値を最小値で割ったものを、抵抗周ムラとして表1に示した。この値は1.2桁未満が好ましい。
【0055】
(ローラーの抵抗プロフィールの測定方法)
ローラーの抵抗プロフィールは上記抵抗測定と同じ方法でローラーをセットし、出力端子を通常用いられるペンレコーダーに接続し、ローラー3回転分のプロフィールの測定を行った。記録条件は200mm/min、測定レンジは0〜100mVとした。得られたプロフィールは縦軸に測定時間、縦軸を電圧値(mV)とし、得られる波形により評価を行った。表1に抵抗プロフィールのグラフを示した。このグラフ中、垂直な太線はローラー1周分の境を示す。波形から読み取れる電圧値(mV)変動幅が小さく、また、スパイダーによるウエルドラインに由来する形状がグラフに見られないプロフィールが電気抵抗ムラの少ないということを示す。
【0056】
(画像評価)
上記方法で得られた導電性ゴムローラを電子写真装置(レーザージェット5100(ヒューレット・パッカード社製))に組込みこんで印字し、目視にて画像評価を行った。
【0057】
<実施例2>
表1に示すように、半径方向の分割が二層で、総区画数8(内側区画数、外側区画数とも4)のチューブヘッドを用いたこと以外は実施例1と同様にしてローラーの作製および評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0058】
<実施例3>
表1に示すように、半径方向の分割が二層で、総区画数7(内側区画数が4、外側区画数が3)のチューブヘッドを用いたこと以外は実施例1と同様にしてローラーの作製および評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0059】
<比較例1>
表2に示すように、半径方向の分割は行わず(単層)、総区画数3のチューブヘッドを用いたこと以外は実施例1と同様にしてローラーの作製および評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0060】
<比較例2>
表2に示すように、半径方向の分割は行わず(単層)、総区画数4のチューブヘッドを用いたこと以外は実施例1と同様にしてローラーの作製および評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0061】
<比較例3>
表2に示すように、半径方向の分割は行わず(単層)、総区画数9のチューブヘッドを用いたこと以外は実施例1と同様にしてローラーの作製を試みたが、ローラーを作製することができなかった。
【0062】
表1から分かるように、実施例においては抵抗ムラが1.2桁以下と良好であり、また、抵抗プロフィールも良好であり、抵抗ムラの少ない転写ローラを得ることができる。さらに、画像評価においても実用レベルの画像が得られている。一方、ゴムの分岐が6未満の場合(比較例1および2)では、抵抗周ムラが大きく、またその抵抗プロフィールもウェルドラインに対応した形状となっている。いずれの比較例においても画像評価は実用レベル以下であった。さらに分割数が9の場合(比較例3)では、ゴムにせん断がかかり過ぎてしまい、ローラーを作成することができなかった。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明で用いることのできるスパイダーの例を示す模式的断面図である。
【図2】従来のスパイダーの例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明で用いることのできるチューブヘッドの例について内部を説明するための模式的側面図である。
【図4】本発明を実施することのできる加硫成形装置の全体を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1a 内側支持脚
1b 外側支持脚
2 マンドレル
3 マンドレル内筒
4 マンドレル外筒
5 マンドレル支持脚
6 ブレーカープレート
11 押出機
12 マイクロ波加硫装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引取機
15 定尺切断機
30 スパイダー
100a 内側材料流路
100b 外側材料流路
101 材料の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上にゴム層が成形されている電子写真用導電性ゴムローラーの製造方法において、
チューブヘッドからゴム材料を押し出して円筒状に成形する成形工程と、
該成型工程で成形されたゴム材料をマイクロ波加硫炉中で連続的に加硫発泡する工程とを有し、
該成形工程において、
マンドレル、該マンドレルの外側に配されたマンドレル内筒、該マンドレル内筒の外側に配されたマンドレル外筒、該マンドレルとマンドレル内筒とを接続する内側支持脚および該マンドレル内筒とマンドレル外筒とを接続する外側支持脚を有したスパイダーと、ブレーカープレートとを有するチューブヘッドを用い、
マンドレルとマンドレル外筒との間を通してゴム材料を押し出す際に、該マンドレル内筒によってゴム材料を内側の層と外側の層の二層に区画するとともに、該内側の層を内側支持脚によって区画し、かつ該外側の層を外側支持脚によって区画し、この際の内側および外側をあわせた総区画数を6、7または8にする
ことを特徴とする電子写真用導電性ゴムローラーの製造方法。
【請求項2】
該ゴム材料が、少なくともアクリロニトリルブタジエンゴム及びエピクロルヒドリンゴムから選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラーの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の電子写真用導電性ゴムローラーの製造方法により製造された電子写真用導電性ゴムローラー。
【請求項4】
転写ローラーである請求項3記載の電子写真用導電性ゴムローラー。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−233646(P2008−233646A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74870(P2007−74870)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】