説明

電子写真画像形成用トナー、電子写真画像形成用トナーの製造方法、画像形成方法、及びプロセスカートリッジ

【課題】本発明は、非常に優れた低温定着性と、高い耐ホットオフセット特性と、良好な保管安定性を両立し、長期的にも高品質な画像を形成することができる電子写真画像形成用トナーを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも4種類以上の結着樹脂を含有するトナーであって、該結着樹脂が少なくとも、結晶性を有するポリエステル樹脂(A)と、非結晶性樹脂(B)と、非結晶性樹脂(C)と、縮重合系樹脂ユニット及び付加重合系樹脂ユニットを含む複合樹脂(D)を含み、該非結晶性樹脂(B)はクロロホルム不溶分を含有し、該非結晶性樹脂(C)は該非結晶性樹脂(B)よりも軟化温度(T1/2)が25℃以上低く、該トナーのTHF可溶分により求められたGPCによる分子量分布において1000〜10000の間にメインピークを有し、該分子量分布の半値幅が15000以下であることを特徴とする電子写真画像形成用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真における画像形成用トナー、電子写真画像形成用トナーの製造方法、画像形成方法、およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真においてトナーの低温定着化が求められている。これは、定着に要するエネルギーを少なくすることによる省エネルギー化はもとより、電子写真画像形成装置の高速化、高画質化の要求にも起因している。
一般に、電子写真画像形成装置を高速化すると画像品質は低下していく。これには様々な要因が関係するが、その中でも特に寄与が大きいのは定着工程における定着不良の影響である。
定着工程では、紙に代表される記録媒体上の未定着トナー画像が、熱と圧力により記録媒体上に固着されて定着画像となるが、システム速度が高速となると、定着工程で未定着トナー画像が充分な熱量を得られなくなり、その結果、定着不良が発生し、最終的なトナー画像の表面が荒れたり、コールドオフセットと呼ばれる残像現象が発生して不良画像となったりする。そのため、システム速度を高速にする際には、それに伴い、画像品質を落とさないために定着温度を上げることが考えられる。しかし、定着装置から漏れる温度の画像形成装置内の他プロセスに対する副作用、定着部材の消耗速度の加速、消費エネルギー増加の観点から、定着温度の高温化は必ずしも最善の対策とはなり得ない。
そこで、特に、高速な画像形成装置においてはトナー自身の定着性能の向上が求められており、より具体的には、定着工程において、より低温で十分な定着性を有するトナーが求められている。
【0003】
従来、トナーの定着性を向上させるため、様々な検討がなされている。例えば、トナーの定着性能を向上させるため、ガラス転移温度(Tg)や軟化温度(T1/2)に代表される、樹脂そのものの熱特性をコントロールする方法が知られている。しかしながら、樹脂の低Tg化は耐熱保存性を悪化させる原因となり、また樹脂の低分子量化等によるT1/2温度の低下では、ホットオフセットの発生等の問題が生じる。そのため、樹脂そのものの熱特性をコントロールするだけでは、低温定着性、耐熱保存性、耐ホットオフセット性の全てが良好なトナーを得るには至っていない。
【0004】
低温定着化に対応すべく、従来多用されてきたスチレン-アクリル系樹脂に代えて、低温定着性に優れ、耐熱保存性も比較的良いポリエステル樹脂の使用が試みられている。(特許文献1〜6)また、低温定着性の改善を目的にバインダー中にガラス転移温度でシャープメルト性を有する特定の非オレフィン系結晶性重合体を添加する試み(特許文献7)がある。しかし、これらは分子構造、分子量について最適化がされているとはいえない。
【0005】
特許文献8及び9では、上記した特定の非オレフィン系結晶性重合体と同様にシャープメルト性を有する結晶性ポリエステルをトナーに用いることで、定着性を向上させる技術が開示されている。しかしながら、特許文献8に記載の結晶性ポリエステルを用いたトナーは、酸価、水酸基価がそれぞれ5以下、20以下と低く、紙と結晶性ポリエステルとの親和性が低いため充分な低温定着性を有しない。
また、特許文献9に記載の結晶性ポリエステルを用いたトナーは、最終的に得られるトナーの分子量や結晶性ポリエステルの存在状態について最適化がなされていない。そのため、特許文献9に記載の結晶性ポリエステルを用いたトナーは、実際にトナー化した後に結晶性ポリエステルに起因する優れた低温定着性、耐熱保存性が十分に発揮されるとは限らない。また、耐ホットオフセットに対する対応がとられておらず、良好な画像の定着が可能な温度幅が確保できるとは限らない。
【0006】
特許文献10では、非相溶である結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂を海島状の相分離構造とする技術が提案されている。しかし、特許文献10に記載のトナーは、樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含む3種類の樹脂を使用しているが、この技術で結晶性ポリエステル樹脂の海島構造を維持しようとすると、結晶性ポリエステル樹脂の分散径が大きくなりすぎ、耐熱保存性に支障をきたしたり、電気抵抗が低くなりすぎて転写工程において転写不良が発生し、最終的に得られる画像が荒れる原因になったりすることがある。
【0007】
特許文献11では、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、吸熱側に出現するピークの吸熱量を規定することにより、結晶性ポリエステル樹脂の存在状態を制御し、結晶性ポリエステル樹脂の効果を有意に発揮させ、トナーに低温定着性と耐熱保存性を付与する技術が提案されている。しかし、特許文献11では結晶性ポリエステル樹脂と併用する非結晶性ポリエステル樹脂として、比較的軟化温度の高い樹脂を用いることが想定されており、低温定着性の役割は結晶性ポリエステル樹脂に担保させることになるため、必然的に結晶性ポリエステル樹脂の使用量が多くなり、非結晶性樹脂との相溶により耐熱保存性が悪化するリスクが高くなる。
【0008】
特許文献12では、トナーが結晶性ポリエステル樹脂を多く含有する技術が提案されているが、結晶性ポリエステル樹脂が非常に多いため、非結晶性樹脂との相溶により耐熱保存性が悪化するリスクが高い。
特許文献13では、トナーの分子量分布のピーク及び半値幅、クロロホルム不溶分の量を規定したり、結着樹脂として軟化温度が異なる2種類以上の樹脂を使用したりする技術が提案されている。しかし、結晶性ポリエステル樹脂を使用していないため、結晶性ポリエステル樹脂を用いた場合と比較して低温定着性が不十分となる。
【0009】
従来、トナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を用いる現像装置として、図14に示す構造のものが知られている。図14に示す現像装置(4)は、現像剤担持体である現像ローラ(5)に現像剤を供給する搬送路と現像剤を攪拌する搬送路とを分けて設けており、2つの搬送路で現像剤を逆方向に搬送することにより現像剤を循環させている。
図14に示す現像装置では、現像ローラ(5)に現像剤を供給する搬送路と、現像ローラ(5)に供給され現像領域を通過した現像剤を回収する搬送路とが共通である。よって、現像ローラ(5)に供給する搬送路の搬送方向下流側ほど現像ローラ(5)に供給する現像剤のトナー濃度が低下するという問題があった。現像ローラ(5)に供給するトナー濃度が低下すると、現像時の画像濃度も低下する。
【0010】
このような問題は、特許文献14及び特許文献15に記載された現像装置のように現像ローラへの現像剤の供給用オーガと現像済みの現像剤の回収用オーガとを異なる現像剤搬送路に設けることによる解消策が示されている。以下、特許文献14及び特許文献15のそれぞれに記載された現像装置の構成について説明する。
特許文献14に記載の現像装置を図15に示す。
図15に示す現像装置(4)は、現像ローラ(5)に現像剤を供給する供給搬送路(9)と現像領域を通過した現像剤を回収する回収搬送路(7)とを分けて設けている。
このような現像装置(4)では、現像領域を通過した現像剤は回収搬送路(7)に送られるため、供給搬送路(9)に混入することがない。これにより、供給搬送路(9)内の現像剤のトナー濃度が変化することなく、現像ローラ(5)に供給される現像剤のトナー濃度も一定となる。
しかし、回収搬送路(7)に送られた現像剤をすぐに供給搬送路(9)に供給するため、トナーの補給がなされトナー濃度が適切に保たれていても、攪拌が不充分となり、現像時の画像濃度の不均一や濃度低下が発生するという問題がある。このような問題は、回収現像剤のトナー濃度が低下する高印字率の画像ほど顕著となる。
【0011】
次に、特許文献15に記載の現像装置を図3に示す。
図16に示す現像装置(4)も、現像ローラ(5)に現像剤を供給する供給搬送路(9)と現像領域を通過した現像剤を回収する回収搬送路(7)とを分けて設けている。さらに、供給搬送路(9)の最下流側まで搬送された現像剤と、回収搬送路(7)の最下流側まで搬送された回収現像剤とを攪拌しながら供給搬送路(9)とは逆方向に現像剤を搬送する攪拌搬送路(10)を備えている。
このような現像装置(4)では、現像済みの現像剤は回収搬送路(7)に送られるため、供給搬送路(9)に混入することがない。これにより、供給搬送路(9)内の現像剤のトナー濃度が変化することなく、現像ローラ(5)に供給される現像剤のトナー濃度も一定となる。
【0012】
さらに、回収現像剤をすぐに供給搬送路(9)に供給するのではなく、攪拌搬送路(10)で攪拌した後で供給搬送路(9)に現像剤を供給するため、現像されずに供給搬送路(9)を通過した現像剤と回収現像剤が攪拌された状態で再び供給搬送路に供給することができる。これにより、図15で説明した現像装置(4)の問題点であった、現像時の画像濃度の不均一や画像濃度の低下を防止する手法が示されている。
【0013】
しかし、これら特許文献の技術は出力画像の濃度の安定化を目的としており、低温定着性や耐ホットオフセット特性、トナーの保管安定性など、電子写真画像形成システム全体での総合的な品質向上を目指したものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記従来技術を鑑みてなされたものであり、即ち、非常に優れた低温定着性と、高い耐ホットオフセット特性と、良好な保管安定性を両立し、長期的にも高品質な画像を形成することができる電子写真画像形成用トナーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。本発明はこれに基づいてなされたものである。
上記課題は以下の本発明によって解決される。
少なくとも4種類以上の結着樹脂を含有するトナーであって、
該結着樹脂が少なくとも、
結晶性を有するポリエステル樹脂(A)と、
非結晶性樹脂(B)と、
非結晶性樹脂(C)と、
縮重合系樹脂ユニット及び付加重合系樹脂ユニットを含む複合樹脂(D)とを含み、
該非結晶性樹脂(B)はクロロホルム不溶分を含有し、
該非結晶性樹脂(C)は該非結晶性樹脂(B)よりも軟化温度(T1/2)が25℃以上低く、
該トナーのTHF可溶分により求められたGPCによる分子量分布において1000〜10000の間にメインピークを有し、
該分子量分布の半値幅が15000以下である
ことを特徴とする電子写真画像形成用トナー。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、非常に優れた低温定着性と、高い耐ホットオフセット特性と、良好な保管安定性を両立し、長期的にも高品質な画像を形成することができる電子写真画像形成用トナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】結晶性ポリエステル樹脂のX線回折結果を示すグラフである。
【図2】本発明トナーのX線回折結果を示すグラフの一例である。
【図3】本発明における電子写真現像装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明で用いられる現像装置の一例を示す概略図である。
【図5】図4の現像装置を有する画像形成装置の一例を示す図である。
【図6】本発明で用いられる画像形成装置の他の例を示す
【図7】仕切り部材により仕切られた現像剤供給搬送路、現像剤回収搬送路、現像剤攪拌搬送路をもつ現像方式の1例を示す。
【図8】図7の現像方式における現像剤搬送路内の現像剤の流れを説明する図である。
【図9】図7の現像方式内の現像剤の流れの模式図である。
【図10】潜像担持体例としての感光体を用いた画像形成装置に、現像剤供給搬送路と現像剤攪拌搬送路をもつ現像装置を用いたときの感光体まわりの概略を示した各部材配置構成図である。
【図11】現像剤供給搬送部材と現像剤攪拌搬送部材との関係を含む現像装置の内部の構成例を組み立て状態で示した図である。
【図12】現像剤供給搬送部材と現像剤攪拌搬送部材との関係を含む現像装置の内部の個々の構成例を示した図である。
【図13】本発明のプロセスカートリッジの一例が示される
【図14】現像剤供給搬送路と、現像剤回収搬送路とが共通である従来の二成分現像装置の1例を示す図である。
【図15】現像剤供給搬送路と、現像剤回収搬送路とを分けて設けた二成分現像装置の1例を示す図である。
【図16】現像剤供給搬送路と、現像剤回収搬送路と、現像剤攪拌搬送路とを備えた二成分現像装置の別の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
近年、電子写真においてトナーの低温定着化が求められている。これは、定着に要するエネルギーを少なくすることによる省エネルギー化はもとより、電子写真画像形成装置の高速化、高画質化の要求にも起因しており、電子写真画像形成装置の使用目的が多様化していることも相まって、要求が高まってきている。
単にトナーを低温定着化とさせるためには、トナーの軟化温度(T1/2)を低いものにすればよい。しかし、軟化温度を低くするとガラス転移温度も低下し、耐熱保存性が悪化する。また、画像品質に問題の発生しない定着可能な温度の下限(定着下限温度)の低下と共に定着可能な温度の上限(定着上限温度)も低下してしまうため、耐ホットオフセット性も損ねてしまう。そのため、低温定着性と耐熱保存性、耐ホットオフセット性の三者を両立させることは電子写真画像形成用トナーの設計者にとって非常に難しい命題であった。
【0019】
本発明者らは、上記命題に対し、鋭意検討を行なった。その結果、以下の技術構想を見出し、上記課題を解決するに至った。
電子写真画像形成用トナーに用いる結着樹脂に結晶性ポリエステル(A)を用いると、そのシャープメルト性により、トナーに低温定着性及び耐熱保存性を付与することができる。
しかし、結着樹脂として結晶性ポリエステル(A)を単体で使用したのでは、耐ホットオフセット性が非常に悪くなるため、定着温度幅が非常に狭くなり実用に耐えられない。
そこで、本発明者らは、結晶性ポリエステル樹脂(A)と共に、クロロホルム不溶分を含む非結晶性樹脂(B)を用いることで、耐ホットオフセット性が向上し、定着可能な温度に幅を持たせることができると考えた。
【0020】
しかし、結晶性ポリエステル(A)と非結晶性樹脂(B)だけを処方した場合、非結晶性樹脂(B)が多すぎると低温定着性が薄れてしまう。結晶性ポリエステル(A)が多いと、製造工程において溶融混練を施した際に非結晶性樹脂(B)のクロロホルム不溶分以外の成分と相溶してしまい、非結晶性樹脂(B)のガラス転移温度を著しく低下させてしまうため、耐熱保存性が極端に悪化する。本発明者らが検討を重ねた結果、結晶性ポリエステル(A)と非結晶性樹脂(B)の配分をどのよう変化させても、これらの欠点が近年の電子写真に対する要求のすべてを許容できる水準になる混合比は存在しなかった。
【0021】
そこで、更に検討を重ねた結果、非結晶性樹脂(B)よりも軟化温度が25℃以上低い非結晶性樹脂(C)を更に併用すると、結晶性ポリエステル(A)の配分を少なくして相溶を抑制させ、かつ、結晶性ポリエステル(A)の低温定着性を非結晶性樹脂(C)が補助しつつ、非結晶性樹脂(B)の耐ホットオフセット性も阻害しないことを本発明者らは見出した。
【0022】
しかし、この場合でも、耐熱保存性へのリスクは完全には消滅しない。結晶性ポリエステル(A)の相溶が抑制され、結着樹脂のガラス転移温度の低下が抑えられても、分散径が大きいまま結晶性ポリエステル(A)が存在すると、粉砕工程の際に結晶性ポリエステル(A)と結着樹脂との界面が粉砕界面になりやすく、結果として結晶性ポリエステル(A)がトナー表面に現れやすくなる。結晶性ポリエステル(A)はシャープメルトな材料であるため、トナー粒子内部に存在する場合は前記のように優れた耐熱保存性を発揮するが、ガラス転移温度以下の温度でも僅かに融解するため、トナー粒子表面に存在する場合、僅かに融解した結晶性ポリエステル(A)がトナー粒子間でバインダーとして働き、結果としてトナーの耐熱保存性を悪化させる。この現象は、特に、結晶化度の低い結晶性ポリエステル樹脂で顕著となる。
【0023】
また、トナーの電気特性の観点でも、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)と非結晶性樹脂(B)、非結晶性樹脂(C)を組み合わせた処方のトナーでは懸念が生じる。結晶性を有するポリエステル樹脂は比較的電気抵抗が低いため、分散径が大きいままトナー中に存在するとトナーの電気抵抗が低くなる傾向がある。電気抵抗が低くなり、許容範囲を超えると、画像形成時に転写工程において転写不良の原因となる。特に、前記のように低温定着性の維持を目的として結晶性ポリエステル(A)の相溶を抑制した場合、結晶性ポリエステル(A)は分散径の大きい状態を維持しやすくなり、結晶性ポリエステル(A)の電気特性がトナー中で支配的になりやすいため、電気抵抗が低下しやすい。
【0024】
また、後述のように抵抗調整剤を含有させた場合、抵抗調整剤は結晶性ポリエステル樹脂(A)の構成しているドメイン内に入り込めないため、非結晶性樹脂(B)及び(C)の中に比較的濃度の高い状態で存在することになる。そのため、凝集体のままトナー中に閉じ込められやすくなり、抵抗が過剰に低下しやすくなる。抵抗調整剤を、単に抵抗を下げる目的だけのために用いているのであれば、抵抗調整剤の処方量を調整することにより解決できる場合もあるが、例えばカーボンブラックのように抵抗調整剤と着色剤を兼ねている場合は、着色力の観点から処方量を少なくすることができない場合があり、最適な電気抵抗に調整できないことがある。
【0025】
本発明者らはこれら技術課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、上記結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)、非結晶性樹脂(C)を組み合わせた処方に対して、縮重合系樹脂ユニット及び付加重合系樹脂ユニットを含む複合樹脂(D)を更に処方すると、上記結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)、非結晶性樹脂(C)を組み合わせた際に特徴的に発現する耐熱保存性低下の懸念と電気抵抗低下の懸念を同時に解決することが可能であることを見出した。
【0026】
複合樹脂(D)を処方すると、離型剤の分散を向上させることは従来知られているが、上記結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)、非結晶性樹脂(C)を組み合わせた処方では、結晶性ポリエステル(A)の分散性も向上し、結晶性を保持したまま微分散の状態でトナー中に存在させることができる。特に、樹脂(C)を併用して溶融混練を施した場合、樹脂(C)の粘度が著しく低下するため、原材料にシェアがかかりにくくなり、結晶性ポリエステル樹脂(A)の分散径はより大きくなる傾向があるが、結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非結晶性樹脂(C)と共に複合樹脂(D)を加えて溶融混練を施すと、適度にシェアが掛かるようになるため、結晶性ポリエステル樹脂(A)の微分散化が促される。結晶性ポリエステル樹脂(A)が微分散状態となると、粉砕時に結晶性ポリエステル樹脂(A)がトナー表面に現れる頻度が少なくなり、耐熱保存性が劇的に向上する。また、結晶性ポリエステル樹脂(A)が微分散となるため、適度な電気抵抗を維持することが可能となる。
【0027】
更に、複合樹脂(D)は、比較的低い分子量領域に分子量分布のピークを有する非結晶樹脂樹脂(C)よりも硬いため、粉砕時に界面になりやすい。そのため、比較的トナー表面に存在しやすく、軟化温度の低い非結晶樹脂(C)がトナー表面へ表れる確率を低減させる効果もあり、耐熱保存性の向上に貢献する。
加えて、トナー表面の硬度を高めることができるため、トナーに物理的なストレスが掛かったときのトナー劣化が少ない。特に、外添剤の埋め込まれが改善されるため、ストレス付与前後での帯電特性の変化が少なくなり、長期に渡って安定した画質を提供することが可能となる。
【0028】
ところが、上記の結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)、非結晶性樹脂(C)、複合樹脂(D)を併用しても、粉砕トナー製造工程において溶融混練を行なうと、原材料樹脂の熱特性に起因する各長所が発揮されない場合がある。これは、溶融混練工程において、樹脂の分子の繋がりが切断され、分子量が変化してしまうことが主要因である。特に、樹脂(B)に含有されるクロロホルム不溶分の分子の繋がりが切断されると、トナー全体の分子量分布がブロードになり、樹脂(C)に起因する熱特性に悪影響を及ぼし、低温定着性が損ねられてしまう。
【0029】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、例えば、後述するように、適度に温度を掛けて溶融混練を行なうことで原材料樹脂にかかるシェアを最適なものにしつつ、結晶性ポリエステル樹脂(A)を冷却工程にて再結晶させるような手法をとることで、THF可溶分により求められたGPCによるトナーの分子量分布において1000〜10000の間にメインピークを有し、かつ、分子量分布の半値幅を15000以下とすることで、低分子量分の絶対量が多く、かつ、シャープな分子量分布となり、上記結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)、非結晶性樹脂(C)、複合樹脂(D)のそれぞれの特徴を活かした、低温定着かつ耐熱保存性、耐ホットオフセット性の優れたトナーを提供することができるという知見を見出した。
【0030】
トナーにおける前記結晶性ポリエステル(A)の含有量は、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。前記非結晶性樹脂(B)の含有量は10〜40質量%が好ましく、前記非結晶性樹脂(C)の含有量は50〜90質量%が好ましく、前記複合樹脂(D)の含有量は3〜20質量%が好ましい。
【0031】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)は次のようにして測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調製した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。
試料(トナー)の分子量測定に当たっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.あるいは東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0032】
結着樹脂の軟化温度(T1/2)は、高架式フローテスターCFT-500(島津製作所製)を用い、ダイス穴径1mm、加圧20kg/cm2、昇温速度6℃/minの条件下で1cm2の試料を溶融流出させたときの流出開始点から流出終了点までの1/2に相当する温度により測定される。
【0033】
本発明における結晶性ポリエステル樹脂(A)は、アルコール成分として1.4−ブタンジオール、1.5−ペンタンジオール、1.6−ヘキサンジオール等、カルボン酸成分としてフマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、コハク酸、トリメリット酸等、従来公知の化合物を用いたものを使用することが可能ではあるが、より好ましくはその分子主鎖中に下記一般式(1)で表わされるエステル結合を含有することが好ましい。
[−OCO−R−COO−(CH2)n−] 一般式(1)
(式中、Rは炭素数2〜20の直鎖状不飽和脂肪族2価カルボン酸残基を示し、nは2〜20の整数を示す。)
一般式(1)の構造の存在は固体C13NMRにより確認することができる。
【0034】
前記直鎖状不飽和脂肪族基の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、1,3−n−プロペンジカルボン酸、1,4−n−ブテンジカルボン酸等の直鎖状不飽和2価カルボン酸由来の直鎖状不飽和脂肪族基などが挙げられる。
前記一般式(1)において、(CH2nは直鎖状脂肪族2価アルコール残基を示す。この場合の直鎖状脂肪族2価アルコール残基の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖状脂肪族2価アルコールから誘導されたものなどが挙げられる。
【0035】
ポリエステル樹脂(A)は、その酸成分として、直鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることで、芳香族ジカルボン酸を用いた場合よりも結晶構造を形成し易いという利点があり、結晶性ポリエステル樹脂の機能をより効果的に発揮させることができる。
ポリエステル樹脂(A)は、例えば、(i)直鎖状不飽和脂肪族2価カルボン酸またはその反応性誘導体(酸無水物、炭素数1−4の低級アルキルエステル、酸ハライド等)からなる多価カルボン酸成分と、(ii)直鎖状脂肪族ジオールからなる多価アルコール成分とを、重縮合反応をさせることによって製造することができる。この場合、多価カルボン酸成分には、必要に応じ、少量の他の多価カルボン酸を添加してもよい。
その場合、多価カルボン酸には、(i)分岐鎖を有する不飽和脂肪族二価カルボン酸、(ii)飽和脂肪族2価カルボン酸や、飽和脂肪族3価カルボン酸等の飽和脂肪族多価カルボン酸、(iii)芳香族2価カルボン酸や芳香族3価カルボン酸等の芳香族多価カルボン酸等が包含される。
これらの多価カルボン酸の添加量は、全カルボン酸に対して、通常、30モル%以下、好ましくは10モル%以下であり、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加される。
【0036】
必要に応じて添加することのできる多価カルボン酸の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の2価カルボン酸;無水トリメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の3価以上の多価カルボン酸等が挙げられる。
【0037】
前記多価アルコール成分には、必要に応じ、少量の脂肪族系の分岐鎖2価アルコールや環状2価アルコールの他、3価以上の多価アルコールを添加してもよい。
その添加量は、全アルコールに対して、30モル%以下、好ましくは10モル%以下であり、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加される。
【0038】
必要に応じて添加される多価アルコールを例示すると、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ポリエチレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、グリセリン等が挙げられる。
ポリエステル樹脂(A)において、その分子量分布は、低温定着性の観点からシャープであることが好ましく、また、その分子量は、比較的低分子量であることが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の分子量は、o−ジクロルベンゼン可溶分のGPCによる分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が5500〜6500、数平均分子量(Mn)が1300〜1500およびMw/Mn比が2〜5であることが好ましい。
【0039】
ポリエステル樹脂(A)についての前記分子量分布は、横軸をlog(M:分子量)とし、縦軸を質量%とする分子量分布図に基づくものである。本発明で用いるポリエステル樹脂(A)の場合、この分子量分布図において、3.5〜4.0(質量%)の範囲に分子量ピークを有することが好ましく、また、そのピークの半値幅が1.5以下であることが好ましい。
【0040】
ポリエステル樹脂(A)において、そのガラス転移温度(Tg)および軟化温度(T1/2)は、トナーの耐熱保存性が悪化しない範囲で低いことが望ましいが、一般的には、そのTgは80〜130℃、好ましくは80〜125℃であり、そのT1/2は80〜130℃、好ましくは80〜125℃である。TgおよびT1/2が前記範囲より高くなると、トナーの定着下限温度が高くなり、低温定着性が悪化する。
【0041】
本発明におけるポリエステル樹脂が結晶性を有するか否かは、粉末X線回折装置によるX線回折パターンにピークが存在するかどうかで確認できる。
本発明で用いる結晶性ポリエステル樹脂(A)は、その回折パターンにおいて、2θが19°〜25°の位置に少なくとも1つの回折ピークが存在すること、より好ましくは2θが(i)19°〜20°、(ii)21°〜22°、(iii)23°〜25°および(iv)29°〜31°の位置に回折ピークが存在することが好ましい。トナー化後にも、2θ=19°〜25°の位置に回折ピークが存在すると、即ちそれは、結晶性ポリエステル樹脂(A)が結晶性を維持していることを示しており、結晶性ポリエステル樹脂(A)の機能を確実に発揮させることができるため好ましい。
【0042】
粉末X線回折測定は、理学電機RINT1100を用い、管球をCu、管電圧−電流を50kV〜30mAの条件で広角ゴニオメーターを用いて測定した。
図1に、実施例で用いた結晶性ポリエステル樹脂a6のX線回折結果を、図2に実施例35のトナーのX線回折結果を示す。
【0043】
本発明に用いる非結晶性樹脂(B)はクロロホルム不溶分を含有している。特に、クロロホルム不溶分を5〜40質量%含有していると耐ホットオフセット性が発現しやすくなるため好ましい。また、トナー化後に、トナー中のクロロホルム不溶分が2〜20質量%となるようにすると、耐ホットオフセット性を維持しつつ、非結晶性樹脂(B)以外の樹脂の配分も確保できるため好ましい。トナー中のクロロホルム不溶分が2質量%より少なくなると、クロロホルム不溶分に起因する耐ホットオフセット性が希薄になり、20質量%よりも多くなると、低温定着性に寄与する分の結着樹脂の配分が相対的に少なくなるため、低温定着性が悪化する。
【0044】
クロロホルム不溶分は以下のように測定される。
トナー(もしくは結着樹脂)約1.0gを秤量し、これにクロロホルムを約50g加える。十分に溶解させた溶液を遠心分離で分け、JIS規格(P3801)5種Cの定性濾紙を用いて常温で濾過する。濾紙残渣が不溶分であり、用いたトナー質量と濾紙残渣質量の比(質量%)でクロロホルム不溶分の含有量を表わす。
なお、トナーとしたときのクロロホルム不溶分を測定する場合には、トナー約1.0gを秤量して結着樹脂と同様の方法で行なうが、濾紙残渣の中には顔料などの固形物が存在するので、熱分析により別途求める。
【0045】
本発明に用いる非結晶性樹脂(C)は非結晶性樹脂(B)よりも軟化温度(T1/2)が25℃以上低い。これは、前述のように、非結晶性樹脂(C)には結晶性ポリエステル樹脂(A)の低温定着性を補助させるべく、定着下限に寄与する機能、非結晶性樹脂(B)にはクロロホルム不溶分に起因する耐ホットオフセット性、つまり定着上限に寄与する機能というように、非結晶性樹脂(B)と非結晶性樹脂(C)で役割を分け、機能分離をさせているためである。
【0046】
非結晶性樹脂(C)は、THF可溶分により求められたGPCによる分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、該分子量分布の半値幅が15000以下であることが好ましい。このような非結晶性樹脂(C)は非常に良好な低温定着性を示すため、トナーに処方した際に結晶性ポリエステル樹脂(A)を減量しても十分に低温定着性を補助することができる。また、逆説的ではあるが、上記の分子量分布を持つ非結晶性樹脂(C)を用いても、トナーの分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、半値幅が15000以下となるのであれば、トナーを構成する結着樹脂のうち非結晶性樹脂(C)の占める割合は高くなる。本発明者らが検討を重ねた結果、結晶性ポリエステル樹脂(A)、非結晶性樹脂(B)、非結晶性樹脂(C)、複合樹脂(D)を組み合わせた処方でトナーを製造すると、非結晶性樹脂(C)の割合を高めた場合が最もバランスがよく、過剰な結晶性ポリエステル樹脂や過剰なTHF不溶分による副作用や、複合樹脂(D)の硬さによる定着下限への悪影響が顕在化せず、それぞれの樹脂の機能が有効に発揮され、低温定着性、耐熱保存性、耐ホットオフセット性が良好になるということを見出した。
【0047】
本発明において、非結晶性樹脂(B)、非結晶性樹脂(C)としては、前述のように、非結晶性樹脂(B)がクロロホルム不溶分の含有、非結晶性樹脂(C)が分子量分布、かつ、非結晶性樹脂(B)と非結晶性樹脂(C)の軟化温度の大小関係が満たされていれば従来公知の材料を用いることができる。例えば、以下に示すような樹脂を用いることが可能である。これらの樹脂は単独使用に限らず、二種以上併用することも可能である。
【0048】
ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン/クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/塩化ビニル共重合体、スチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体(スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン/メタクリル酸エステル共重合体(スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン/α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単独重合体又は共重合体)、塩化ビニル樹脂、スチレン/酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン/エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等、石油系樹脂、水素添加された石油系樹脂等が例として挙げられる。
これらの樹脂の製造法は、特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれも利用できる。
【0049】
本発明の非結晶性樹脂(B)及び非結晶性樹脂(C)は、より好ましくはポリエステル樹脂であると低温定着性の観点から好ましい。例えば、アルコールとカルボン酸との縮重合によって通常得られるものも使用可能である。
該アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1.4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、及びビスフェノールA等のエチル化ビスフェノール類、その他二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。
また、カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
特に、ポリエステル樹脂としては、熱保存性の関係から、ガラス転位温度Tgが55℃以上のものが好ましく、さらに60℃以上のものがより好ましい。
【0050】
前記複合樹脂(D)は、縮重合系モノマーと付加重合系モノマーとが化学的に結合した樹脂(ハイブリッド樹脂と称することもある)である。
即ち、前記複合樹脂(D)は、縮重合系樹脂ユニットと、付加重合系樹脂ユニットとを有している。
前記複合樹脂(D)は、原料となる縮重合系モノマーと付加重合系モノマーを含む混合物を、同一反応容器中で縮重合反応と付加重合反応を同時に並行反応して行うか、縮重合反応と付加重合反応、又は付加重合反応と縮重合反応を順次行うことによって得ることができる。
【0051】
前記複合樹脂(D)における縮重合系モノマーとしては、ポリエステル樹脂ユニットを形成する多価アルコールと多価カルボン酸、ポリアミド樹脂ユニットもしくはポリエステル−ポリアミド樹脂ユニットを形成する多価カルボン酸とアミン、又はアミノ酸が挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素添加ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオールなどが挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
これらの中でも、水素添加ビスフェノールA、又はビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール等のビスフェノールA骨格を有するアルコール成分は、樹脂に耐熱保存性や機械的強度を付与するので好適に用いることができる。
【0052】
カルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などが挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
これらの中でも、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸化合物が、樹脂の耐熱保存性、機械的強度の観点から好適に用いられる。
【0053】
アミン成分もしくはアミノ酸成分としては、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
前記ジアミン(B1)としては、例えば芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等)、脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等)、脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)などが挙げられる。
前記3価以上のポリアミン(B2)としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
前記アミノアルコール(B3)としては、例えばエタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
前記アミノメルカプタン(B4)としては、例えばアミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
前記アミノ酸(B5)としては、例えばアミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。
前記(B1)〜(B5)のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記(B1)〜(B5)のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。
【0054】
前記複合樹脂(D)中における縮重合系モノマー成分のモル比率は、5モル%〜40モル%であることが好ましく、10モル%〜25モル%がより好ましい。
前記モル比率が、5モル%未満であると、ポリエステル系樹脂との分散性が悪化し、50モル%を超えると、離型剤の分散が悪化する傾向が現れる。
また、縮重合反応を行う際にはエステル化触媒等を使用してもよく、前述したような触媒を全て用いることが可能である。
【0055】
前記複合樹脂(D)における付加重合系モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ビニル系モノマーが代表的である。
該ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン系ビニルモノマー;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ノマー;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸系ビニルモノマー;その他のビニルモノマー又は共重合体を形成する他のモノマー、などが挙げられる。
【0056】
前記その他のビニルモノマー又は共重合体を形成する他のモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステル等の不飽和二塩基酸のモノエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物;該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物又はこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマー;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有するモノマー、などが挙げられる。
これらの中でも、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等が好適に用いられ、少なくともスチレンとアクリル酸を含む組合せで用いると、離型剤の分散性が極めて良好であるので特に好ましい。
【0057】
更に必要に応じて付加重合系モノマーの架橋剤を添加することができる。
該架橋剤としては、例えば、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
【0058】
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。
【0059】
ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
前記架橋剤の添加量は、使用される付加重合系モノマー100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部が好ましく、0.03質量部〜5質量部がより好ましい。
【0060】
付加重合系モノマーを重合させる際に用いられる重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、n−ブチル−4,4−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)バレレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
これらは、樹脂の分子量及び分子量分布を調節する目的で二種類以上を混合して用いることが可能である。
前記重合開始剤の添加量は、使用される付加重合系モノマー100質量部に対して、0.01質量部〜15質量部が好ましく、0.1質量部〜10質量部がより好ましい。
【0061】
縮重合系樹脂ユニットと、付加重合系樹脂ユニットを化学的に結合するには、例えば、縮重合と付加重合のいずれでも反応可能なモノマーを用いる。
このような両反応性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物;ヒドロキシ基を有するビニル系モノマーなどが挙げられる。
前記両反応性モノマーの添加量は、使用される付加重合系モノマー100質量部に対して、1質量部〜25質量部が好ましく、2質量部〜20質量部がより好ましい。
【0062】
前記複合樹脂(D)は、同一反応容器内であれば、縮重合反応と付加重合反応の両反応の進行及び/又は完了を同時に行う他、それぞれの反応温度、時間を選択して、独立に反応の進行を完了することができる。
例えば、反応容器中に縮重合系モノマーの混合物中に、付加重合系モノマー及び重合開始剤からなる混合物を滴下してあらかじめ混合し、最初にラジカル重合反応により付加重合を完了させ、次いで反応温度を上昇させることにより縮重合を行う方法がある。
このように、反応容器中で独立した二つの反応を進行させることにより、二種の樹脂ユニットを効果的に分散、結合させることが可能である。
【0063】
複合樹脂(D)が、ポリエステルの縮重合系樹脂ユニットとビニル系樹脂の付加重合系ユニットを有する複合樹脂であることが好ましく、複合樹脂(D)の機能をより効果的に発揮させることができる。
前記複合樹脂(D)の軟化温度(T1/2)としては、90℃〜130℃が好ましく、100℃〜120℃がより好ましい。
前記軟化温度(T1/2)が、90℃より低い場合は、耐熱保存性、耐オフセット性が悪化することがあり、130℃より高い場合は、低温定着性を悪化させることがある。
また、前記複合樹脂(D)のガラス転移温度は、定着性、保存性及び耐久性の観点から、45℃〜80℃が好ましく、50℃〜70℃がより好ましく、53℃〜65℃が更に好ましい。
前記複合樹脂(D)の酸価は、帯電性と環境安定性の観点から、5mgKOH/g〜80mgKOH/gが好ましく、15mgKOH/g〜40mgKOH/gがより好ましい。
【0064】
本発明のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を配合することも可能である。
帯電制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、ホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類、有機金属錯体、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、第四級アンモニウム塩、サリチル酸金属化合物等がある。他にも、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類等があり、これら従来公知のいかなる極性制御剤も、単独あるいは混合して使用できる。これらの極性制御剤の使用量は、トナー樹脂成分100質量部に対し、0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。
【0065】
これら帯電制御剤の中でも、サリチル酸金属化合物を含有させると、同時に耐ホットオフセット性を改良できるため好ましい。特に、6配位の構成を取りうる3価以上の金属を有する錯体は、樹脂とワックスの反応性が高い部分と反応し、軽度の架橋構造を作るため、耐ホットオフセットへの効果が大きい。また、樹脂(D)と併用することで分散性が向上し、帯電極性制御の機能をより有効に発揮させることができる。
ここで、サリチル酸金属化合物としては、下式で表される化合物を用いることができ、Mが亜鉛である金属錯体の例としては、ボントロンE−84 オリエント化学工業(株)製が挙げられる。
更に、3価以上の金属の例としては、Al,Fe,Cr,Zr等が挙げられる。
【化1】

(式中、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、直鎖又は分枝鎖状の炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基、Mはクロム、亜鉛、カルシウム、鉄、ジルコニウム又はアルミニウム、mは2以上の整数、nは1以上の整数を示す)
【0066】
本発明における電子写真画像形成用トナーは、DSCによるトナーの吸熱ピーク測定にて、90〜130℃の範囲に結晶性ポリエステル樹脂(A)に起因する吸熱ピークを有することが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂(A)に起因する吸熱ピークが90〜130℃の範囲に存在すると、結晶性ポリエステル樹脂が常温では溶融せず、かつ、比較的低温な定着温度領域でトナーが溶融し、記録媒体に定着できるため、耐熱保存性と低温定着性をより効果的に発現させることができる。
【0067】
また、吸熱ピークの吸熱量が1J/g以上、15J/g以下であることが好ましい。
吸熱量が1J/g未満であると、トナー中で有効にはたらく結晶性ポリエステル樹脂の量が少なすぎるため、結晶性ポリエステル樹脂の機能が十分に発揮されない。吸熱量が15J/gより多いと、トナー中で有効な結晶性ポリエステル樹脂の量が過剰であるため、非結晶性ポリエステル樹脂と相溶する絶対量が多くなり、トナーのガラス転移温度が低下し、耐熱保存性の低下を招く。
【0068】
本発明におけるDSC測定(吸熱ピーク、ガラス転移温度Tg)は、示差走査熱量計(「DSC−60」;島津製作所製)を用い、10℃/分で20〜150℃まで昇温して測定する。
本発明では結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークは、結晶性ポリエステルの融点である80〜130℃付近に存在するものであり、吸熱量はベースラインと吸熱曲線で囲まれた範囲の面積から求められる。一般的に、DSC測定における吸熱量は温度上昇を二度行い測定を行なうことが多いが、本発明における吸熱ピーク及びガラス転移温度の測定は一度目の昇温の際の吸熱曲線を用いて導き出す。
結晶性ポリエステル(A)由来の吸熱ピークがワックスの吸熱ピークと重なる場合には、重なったピークの吸熱量からワックス分の吸熱量を減算する。ワックス分の吸熱量は、ワックス単独の吸熱量とトナー中のワックス含有量から計算される。
【0069】
本発明のトナーは、脂肪酸アミド化合物を含有することが好ましい。
トナー製造時に溶融混練工程を含む粉砕トナーに対し、結晶性ポリエステル樹脂と共に脂肪酸アミド化合物を配合すると、混練時に溶融していた結晶性ポリエステル樹脂が冷却される際の混練物中での再結晶が促進されるため、樹脂との相溶が少なくなり、トナーのガラス転移温度の低下を抑えることができるため、耐熱保存性を改善することができる。また、離型剤と併用した場合には、離型剤を定着画像表面に留めることが可能となるため、擦れに強く(耐スミア性の向上)なる。
トナーにおける脂肪酸アミド化合物の含有量は、0.5〜10質量%が好ましい。
【0070】
脂肪酸アミド化合物としては、R1−CO−NR23で表される化合物が適用される。
1は炭素数10〜30の脂肪族炭化水素基であり、R2、R3は各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基である。ここで、R2、R3のアルキル基、アリール基、アラルキル基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基等の通常不活性な置換基で置換されていても良い。より好ましくは無置換のものである。
【0071】
好ましい化合物としては、ステアリン酸アミド、ステアリン酸メチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミド、ステアリン酸ベンジルアミド、ステアリン酸フェニルアミド、ベヘン酸アミド、ベヘン酸ジメチルアミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド等が挙げられる。
【0072】
本発明では、脂肪酸アミド化合物としては、中でも、アルキレンビス脂肪酸アミドが特に好適に用いられる。
アルキレンビス脂肪酸アミドは、下記の一般式(II)で示される化合物である。
【化2】

(式中R1、R3は炭素数5〜21のアルキル基またはアルケニル基、R2は炭素数1〜20のアルキレン基を示す。)
【0073】
上記一般式(II)で示されるアルキレンビス飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサエチレンビスパルミチン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等を挙げることができる。これらのうちでは、エチレンビスステアリン酸アミドが最も好ましい。
これら脂肪酸アミド化合物は、軟化温度(T1/2)が、定着時の定着部材表面の温度より低いと、定着部材表面で離型剤としての効果も果たすことができる。
【0074】
上記の他に使用できるアルキレンビス脂肪酸アミド系の化合物として、具体的には、プロピレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、プロピレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、プロピレンビスラウリン酸アミド、ブチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、プロピレンビスミリスチン酸アミド、ブチレンビスミリスチン酸アミド、プロピレンビスパルミチン酸アミド、ブチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスパルミトレイン酸アミド、エチレンビスパルミトレイン酸アミド、プロピレンビスパルミトレイン酸アミド、ブチレンビスパルミトレイン酸アミド、メチレンビスアラキジン酸アミド、エチレンビスアラキジン酸アミド、プロピレンビスアラキジン酸アミド、ブチレンビスアラキジン酸アミド、メチレンビスエイコセン酸アミド、エチレンビスエイコセン酸アミド、プロピレンビスエイコセン酸アミド、ブチレンビスエイコセン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、プロピレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、プロピレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド等の、飽和または1〜2価の不飽和の脂肪酸のアルキレンビス脂肪酸アミド系の化合物を挙げることができる。
【0075】
本発明のトナーに用いる着色剤としては、例えばカーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料等の染顔料など、従来公知のいかなる染顔料をも単独あるいは混合して使用することが可能であり、ブラックトナーとしてもフルカラートナーとしても使用できる。
【0076】
特に、カーボンブラックは良好な黒色着色力を持つ。しかし、同時に、良好な導電性材料でもあるため、使用量が多かったり、トナー中で凝集状態で存在したりすると電気抵抗が低下し、転写工程において転写不良を招く原因になる。特に、結晶性ポリエステル樹脂と併用した場合、カーボンブラック粒子は結晶性ポリエステル樹脂のドメイン中に入り込めないため、結晶性ポリエステル樹脂が大きな分散径をもってトナー中に存在した場合、結晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂中に比較的濃度の高い状態で存在することになる。そのため、凝集体のままトナー中に閉じ込められやすくなり、抵抗が過剰に低下しやすくなる。
本発明の場合、複合樹脂(D)と併用するため、カーボンの分散も良好となり、上記のリスクは軽減することができる。また、カーボンブラックを含有すると、記録媒体へトナーを定着する際に、溶融したトナーの粘性を高いものにすることができるため、非結晶性樹脂(C)を多く処方した場合に、粘性低下に起因して発生するホットオフセットを抑制できるという効果も付与することができる。
これらの着色剤の使用量はトナー樹脂成分に対して、通常1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%である。
【0077】
本発明のトナーの離型剤には従来公知のものが使用できる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィンワックスやフィッシャー・トロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックスや蜜ロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス等の天然ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス類、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸及び高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド、合成エステルワックス等及びこれらの各種変性ワックスが挙げられる。
これら離型剤の中でも、カルナウバワックス及びその変性ワックスやポリエチレンワックス、合成エステル系ワックスが好適に用いられる。特にカルナウバワックスは、ポリエステル樹脂やポリオール樹脂に対して適度に微分散し、耐ホットオフセット性と転写性・耐久性ともに優れたトナーとすることが容易なため非常に好適である。また、脂肪酸アミド化合物と併用した場合、定着画像表面に留まる効果が非常に強くなり、耐スミア性が更に向上する。
これら離型剤は、1種又は2種以上を併用して用いることができる。また、これらの離型剤の使用量は、トナーに対して2〜15質量%が好適である。2質量%未満ではホットオフセット防止効果が不十分であり、15質量%を超えると転写性、耐久性が低下する。
離型剤の融点は70〜150℃であることが好ましい。70℃より低いとトナーの耐熱保存性が低下する。150℃より高いと離型性が十分に果たせない。
【0078】
本発明のトナーの粒径については、特に限定的でないが、細線再現性等に優れた高画質を得るためには、体積平均粒径が4〜10μmであることが好ましい。
4μmより小さいと現像工程におけるクリーニング性、転写工程における転写効率に支障をきたし、画像品質が低下する。10μmより大きいと、画像の細線再現性が低下する。
ここで、トナー体積平均粒径の測定は、種々の方法によって測定可能であるが、本発明では米国コールター・エレクトロニクス社製のコールターカウンターTAIIが用いられる。
【0079】
本発明のトナーは、製造工程に少なくとも溶融混練工程を含む、所謂粉砕法を用いて製造された粉砕トナーであることが好ましい。
粉砕法は、結晶性ポリエステル樹脂(A)、非晶性樹脂(B)、非晶性樹脂(C)、複合樹脂(D)、着色剤、及び離型剤を少なくとも含有するトナー材料を乾式混合し、混練機にて溶融混練し、粉砕して粉砕トナーを得る方法である。
まず、トナー材料を混合し、該混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。該溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。具体的な例としては、神戸製鋼所社製KTK型二軸押出機、東芝機械社製TEM型押出機、ケイシーケイ社製二軸押出機、池貝鉄工所社製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。溶融混練は、バインダー樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが好ましい。具体的には、溶融混練温度は結着樹脂の軟化点を参考にして行われ、該軟化点より高温過ぎると切断が激しく、低温すぎると分散が進まないことがある。
【0080】
粉砕工程では、前記混練で得られた混練物を粉砕する。この粉砕においては、まず、混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
分級工程では、前記粉砕工程にて得られた粉砕物を分級し、所定粒径の粒子に調整する。分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができる。
前記粉砕及び分級が終了した後に、粉砕物を遠心力などで気流中にて分級し、所定の粒径のトナーを製造する。
【0081】
本発明のトナーは、製造工程において溶融混練工程を経る粉砕トナーであるが、原材料を溶融混練させた後の冷却工程にて、混練物の厚さを2.5mm以上にすると、混練物の冷却速度が遅くなり、混練物中で溶融している結晶性ポリエステル樹脂(A)の再結晶行なわれる時間が長くなるため、再結晶が促進され、結晶性ポリエステル樹脂(A)の機能をより効果的に発揮させることができる。再結晶を促進させるには前述のように脂肪酸アミドを配合するのも有効な手段ではあるが、このように製造工程を調整することでも効果が得られる。混練物の厚さに上限はないが、8mmより厚くすると、粉砕工程において効率が著しく低下するため、8mm以下の厚さに留めることが好ましい。
【0082】
トナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、上記のようにして製造されたトナー母体粒子に更に疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。
このような添加剤の混合は、一般の粉体の混合機が用いられるがジャケット等装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。添加剤に与える負荷の履歴を変えるには、例えば、途中又は漸次に添加剤を加えていけばよい。
混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを適宜変化させてもよい。また、初めに強い負荷を与え、次いで、比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。
外添剤混合工程に使用できる混合設備としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。
混合工程を施した後に、250メッシュ以上の篩を通過させ、粗大粒子や凝集粒子を除去してもよい。
【0083】
本発明のトナーを現像剤として使用する際は、トナーのみにて構成される一成分現像剤として用いても、キャリアと混合して二成分現像剤として用いてもよく、特に限定はされないが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンター等に使用する場合には、寿命向上等の観点から、二成分現像剤として用いることが好ましい。
【0084】
本発明における電子写真現像装置の一例を図3に示す。
図3の符号101Aは駆動ローラ、101Bは従動ローラ、102は感光体ベルト、103は帯電器、104はレーザー書き込み系ユニット、105A〜105Dはそれぞれイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色のトナーを収容する現像ユニット、106は給紙カセット、107は中間転写ベルト、107Aは中間転写ベルト駆動用の駆動軸ローラ、107Bは中間転写ベルトを支持する従動軸ローラ、108はクリーニング装置、109は定着ローラ、109Aは加圧ローラ、110は排紙トレイ、113は紙転写ローラを示している。
【0085】
このカラー画像形成装置では、前記転写ドラムに対して可撓性の中間転写ベルト107が使用されており、該中間転写体たる中間転写ベルト107は駆動軸ローラ107Aと一対の従動軸ローラ107Bに張架されて時計方向に循環搬送されていて、一対の従動軸ローラ107B間のベルト面を駆動ローラ101Aの外周の感光体ベルト102に対して水平方向から当接させた状態としている。
通常のカラー画像出力時は、感光体ベルト102上に形成される各色のトナー像は、形成の都度前記中間転写ベルト107に転写されて、カラーのトナー像を合成し、これを給紙カセット106から搬送される転写紙に対し紙転写ローラ113によって一括転写し、転写後の転写紙は定着装置の定着ローラ109と加圧ローラ109Aの間へと搬送され、定着ローラ109と加圧ローラ109Aによる定着後、排紙トレイ110に排紙される。
【0086】
105A〜105Eの現像ユニットがトナーを現像すると、現像ユニットに収容されている現像剤のトナー濃度が低下する。現像剤のトナー濃度の低下はトナー濃度センサ(図示せず)により検知される。トナー濃度の低下が検知されると、各現像ユニットにそれぞれ接続されているトナー補給装置(図示せず)が稼動し、トナーを補給してトナー濃度を上昇させる。このとき、補給されるトナーは、現像ユニットに現像剤排出機構が備わっていれば、キャリアとトナーが混合されている所謂トリクル現像方式用現像剤であってもよい。
【0087】
図3では中間転写ベルト上にトナー像を重ねて画像を形成しているが、中間転写ベルトを用いることなく転写ドラムから直接に記録媒体へ転写を行なうシステムにおいても、同様に本発明の電子写真画像形成装置とすることができる。
【0088】
図4は、本発明で用いられる現像装置の一例を示す図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図4において、潜像担持体である感光体(20)に対向して配設された現像装置(40)は、現像剤担持体としての現像スリーブ(41)、現像剤収容部材(42)、規制部材としてのドクターブレード(43)、支持ケース(44)等から主に構成されている。
感光体(20)側に開口を有する支持ケース(44)には、内部にトナー(21)を収容するトナー収容部としてのトナーホッパー(45)が接合されている。トナーホッパー(45)に隣接した、トナー(21)と、キャリア(23)からなる現像剤を収容する現像剤収容部(46)には、トナー(21)とキャリア(23)を攪拌し、トナー(21)に摩擦/剥離電荷を付与するための、現像剤攪拌機構(47)が設けられている。
トナーホッパー(45)の内部には、図示しない駆動手段によって回動されるトナー供給手段としてのトナーアジテータ(48)及びトナー補給機構(49)が配設されている。トナーアジテータ(48)及びトナー補給機構(49)は、トナーホッパー(45)内のトナー(21)を現像剤収容部(46)に向けて攪拌しながら送り出す。
【0089】
感光体(20)とトナーホッパー(45)との間の空間には、現像スリーブ(41)が配設されている。図示しない駆動手段で図の矢印方向に回転駆動される現像スリーブ(41)は、キャリア(23)による磁気ブラシを形成するために、その内部に現像装置(40)に対して相対位置不変に配設された、磁界発生手段としての図示しない磁石を有する。
現像剤収容部材(42)の、支持ケース(44)に取り付けられた側と対向する側には、ドクターブレード(43)が一体的に取り付けられている。ドクターブレード(43)は、この例では、その先端と現像スリーブ(41)の外周面との間に一定の隙間を保った状態で配設されている。
このような装置を非限定的に用い、本発明の画像形成方法は、次のように遂行される。即ち、上記構成により、トナーホッパー(45)の内部からトナーアジテータ(48)、トナー補給機構(49)によって送り出されたトナー(21)は、現像剤収容部(46)へ運ばれ、現像剤攪拌機構(47)で攪拌されることによって、所望の摩擦/剥離電荷が付与され、キャリア(23)と共に現像剤として、現像スリーブ(41)に担持されて感光体(20)の外周面と対向する位置まで搬送され、トナー(21)のみが感光体(20)上に形成された静電潜像と静電的に結合することにより、感光体(20)上にトナー像が形成される。
【0090】
図5は、図4の現像装置を有する画像形成装置の一例を示す図である。ドラム状の感光体(20)の周囲に、帯電部材(32)、像露光系(33)、現像装置(40)、転写装置(50)、クリーニング装置(60)、除電ランプ(70)が配置されていて、この例の場合、帯電部材(32)の表面は、感光体(20)の表面とは約0.2mmの間隙を置いて非接触状態にあり、帯電部材(32)により感光体(20)に帯電を施す際、帯電部材(32)に図示してない電圧印加手段によって直流成分に交流成分を重畳した電界により、感光体(20)を帯電させることにより、帯電ムラを低減することが可能であり、効果的である。現像方法を含む画像形成方法は、以下の動作で行われる。
【0091】
画像形成の一連のプロセスは、ネガ−ポジプロセスで説明を行うことができる。有機光導電層を有する感光体(OPC)に代表される感光体(20)は、除電ランプ(70)で除電され、帯電チャージャ、帯電ローラー等の帯電部材(32)で均一にマイナスに帯電され、レーザー光学系等の像露光系(33)から照射されるレーザー光で潜像形成(この例では、露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行われる。
レーザー光は、半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等により、感光体(20)の表面を、感光体(20)の回転軸方向に走査する。このようにして形成された潜像が、現像装置(40)にある現像剤担持体である現像スリーブ(41)上に供給されたトナー及びキャリアの混合物からなる現像剤により現像され、トナー像が形成される。潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像スリーブ(41)に、感光体(20)の露光部と非露光部の間に、ある適当な大きさの直流電圧又はこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
【0092】
一方、転写媒体(例えば紙)(80)が、給紙機構(図示せず)から給送され、上下一対のレジストローラ(図示せず)で画像先端と同期をとって、感光体(20)と転写装置(50)との間に給送され、トナー像が転写される。このとき、転写装置(50)には、転写バイアスとして、トナー帯電の極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。その後、転写媒体(80)は、感光体(20)より分離され、転写像が得られる。
また、感光体(20)上に残存するトナーは、クリーニング部材としてのクリーニングブレード(61)により、クリーニング装置(60)内のトナー回収室(62)に回収される。
回収されたトナーは、トナーリサイクル手段(図示せず)により現像剤収容部(46)及び/又はトナーホッパー(45)に搬送され、再使用されてもよい。
画像形成装置は、上述の現像装置を複数配置し、転写媒体上へトナー像を順次転写した後、定着機構へ送り、熱等によってトナーを定着する装置であってもよく、一端中間転写媒体上へ複数のトナー像を転写し、これを一括して転写媒体に転写後同様の定着を行う装置であってもよい。
【0093】
図6には、本発明で用いられる画像形成装置の他の例を示す。感光体(20)は、導電性支持体上に少なくとも感光層が設けられており、駆動ローラー(24a)、(24b)により駆動され、帯電部材(32)による帯電、像露光系(33)による像露光、現像装置(40)による現像、転写装置(50)を用いる転写、クリーニング前露光光源(26)によるクリーニング前露光、ブラシ状クリーニング手段(64)及びクリーニングブレード(61)によるクリーニング、除電ランプ(70)による除電が繰り返し行われる。図6においては、感光体(20)(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光が行われる。
【0094】
また、現像装置として、本発明の電子写真画像形成用トナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を表面上に担持して回転し、潜像担持体と対向する箇所で該潜像担持体の表面の潜像に該トナーを供給して現像する現像剤担持体と、該現像剤担持体の軸線方向に沿って現像剤を搬送し、該現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給搬送部材を備えた現像剤供給搬送路と、該潜像担持体と対向する箇所を通過後の該現像剤担持体上から回収された該現像剤を該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、前記現像剤供給搬送部材と同方向に搬送する現像剤回収搬送部材を備えた現像剤回収搬送路と、現像に用いられずに該現像剤供給搬送路の搬送方向の最下流側まで搬送された余剰現像剤と、該現像剤担持体から回収され該現像剤回収搬送路の搬送方向の最下流側まで搬送された回収現像剤との供給を受け、該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、該余剰現像剤と該回収現像剤とを攪拌しながら該現像剤供給搬送部材とは逆方向に搬送する現像剤攪拌搬送部材を備え、該現像剤を該現像剤供給搬送路に供給する現像剤攪拌搬送路とを有し、該現像剤回収搬送路、該現像剤供給搬送路及び該現像剤攪拌搬送路からなる3つの現像剤搬送路はそれぞれ仕切り部材により仕切られ、該現像剤攪拌搬送路と該現像剤回収搬送路とはほぼ同じ水平位置に設けられ、該現像剤供給搬送路は他の2つの該現像剤搬送路の垂直方向上側に位置するように設けられているという特定構造の現像装置を用いることで、低温定着性と耐ホットオフセット特性、トナーの耐熱保存性を兼ね備えつつ、記録媒体上で濃度ムラの少ない画像を提供することができる。
【0095】
他方で、現像装置として、本発明の電子写真画像形成用トナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を表面上に担持して回転し、潜像担持体と対向する箇所で該潜像担持体の表面の潜像に該トナーを供給して現像する現像剤担持体と、該現像剤担持体の軸線方向に沿って現像剤を搬送し、該現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給搬送部材を備えた現像剤供給搬送路と、現像に用いられずに該現像剤供給搬送路の搬送方向の最下流側まで搬送された余剰現像剤の供給を受け、該現像剤担持体の軸線方向に沿って、該余剰現像剤を攪拌しながら該現像剤供給搬送部材とは逆方向に搬送する現像剤攪拌搬送部材を備え、該現像剤を該現像剤供給搬送路に供給する現像剤攪拌搬送路とを有し、該現像剤供給搬送路と該現像剤攪拌搬送路は、少なくとも長手方向両端部を除く中央部で仕切部材によって仕切られており、該潜像担持体と対向する箇所を通過した現像剤は、該現像剤攪拌搬送路に回収され、該現像剤攪拌搬送路を搬送されてきた現像剤と混合された後に該現像剤供給搬送路へ供給されるという特定構造の現像装置を用いると、低温定着性と耐ホットオフセット特性、トナーの耐熱保存性を兼ね備えつつ、同時に、トナー補給によるトナー濃度の変動に対しても迅速な対応が可能で、記録媒体上で濃度ムラの少ない画像を提供することができる。また、現像剤搬送経路が前記の現像装置よりも少ないため、現像装置をコンパクトなものにすることができるという利点もある。
【0096】
すなわち、本発明の電子写真画像形成用トナーは、供給部材(1軸目)による供給搬送路、攪拌搬送部材(2軸目)による攪拌搬送路、回収搬送部材(3軸目)による回収搬送路の3つの搬送路を要件とする現像装置、もしくは、供給部材(1軸目)による供給搬送路、攪拌搬送部材(2軸目)による攪拌搬送路からなる二つの搬送路を要件とする現像装置で用いると、記録媒体上で濃度ムラの少ない画像を提供することができるため好ましい。
どちらにも共通するのは、供給部材によって現像領域に供給された現像剤は、そのまま供給搬送路へは戻らず、直接、もしくは回収搬送路を経由して攪拌搬送路へ送られ、攪拌工程を経てから再度供給搬送路に送られるという点である。以降このような現像方式を本明細書では一方向循環現像と記載することもある。
前者の現像方式は、現像領域を通過した現像剤は一旦回収搬送路(3軸目)に回収され、攪拌搬送路へ送られる(3軸の一方向循環現像方式)が、これに対し、後者の現像方式においては、回収搬送部材による回収搬送路がなく、現像領域を通過した現像剤が、攪拌搬送路へ直で送られる(2軸の一方向循環現像方式)。
いずれの現像方式においても、現像領域に供給されることなく供給搬送路を通過してきた現像剤と、現像領域を通過して攪拌搬送路若しくは回収搬送路に回収された現像剤は、攪拌搬送路にて混合され、供給搬送路へ送られる。
そのため、供給搬送路に、現像に用いられたためにトナー濃度が低下した現像剤が混入することがないため、現像時にトナー濃度のムラに起因するトナー付着量のムラが発生しにくい。そのため、記録媒体上の何れの部分においても、濃度の安定した画像を提供することが可能となる。
【0097】
画像形成装置の構成を、2軸の一方向循環現像のように、現像剤回収搬送路を用いらず、潜像担持体を通過した現像剤が現像剤攪拌搬送路に回収され、現像剤攪拌搬送路を搬送されてきた現像剤と混合された後に現像剤供給搬送路へ供給されるようにすると、トナー補給を行なった際の、現像剤中へのトナーの分散及び均一化が非常に早いという利点がある。
画像形成装置内を現像剤が周回しているところにトナーを補給すると、補給直後には、どうしてもトナー濃度の高い箇所とトナー濃度の低い箇所が発生してしまう。トナー濃度を均一にするためには、補給したトナーが速やかに現像剤全体に行き届く必要がある。
【0098】
現像剤供給搬送路と現像剤攪拌搬送路しか現像剤の搬送経路がない従来の画像形成装置や、3軸の一方向循環現像装置のように、現像剤の周回経路長が決定している画像形成装置の場合、流動する現像剤の流れの中でトナーが補給された部分から最も遠い部分まで補給トナーが行き届くには時間がかかってしまう。そのため、その間に現像領域に供給される現像剤にはトナー濃度にムラが生じてしまう恐れがあり、その場合、出力画像濃度ムラの原因となる。
【0099】
2軸の一方向循環現像の場合、現像剤供給搬送路に流れ込んだトナー濃度の高い現像剤は、現像剤攪拌搬送路を流れる現像剤に対して現像領域を経由して長手方向全体に回収されるため、現像剤全体に対する補給トナーの行き届きが早い。その結果、トナー濃度の均一化が早く、トナー補給に起因する出力画像の濃度ムラ発生を防ぐことができる。
更に、2軸の一方向循環現像は、現像剤回収搬送路が存在しないため、現像装置をコンパクトなものにすることが可能であるという利点もある。
【0100】
一方向循環現像装置の構成について説明する。図7〜9は、仕切り部材により仕切られた現像剤供給搬送路、現像剤回収搬送路、現像剤攪拌搬送路をもつ現像方式を図示したものである。
【0101】
図7は、現像装置及び感光体を示す拡大構成図である。
図7に示すように感光体(1)は図中矢印(G)方向に回転しながら、その表面を不図示の帯電装置により帯電される。帯電された感光体(1)の表面は不図示の露光装置より照射されたレーザ光により静電潜像を形成された潜像に現像装置(4)からトナーを供給され、トナー像を形成する。
現像装置(4)は、図中矢印(I)方向に表面移動しながら感光体(1)の表面の潜像に現像剤を供給し、現像する現像剤担持体としての現像ローラ(5)を有している。また、現像ローラ(5)に現像剤を供給しながら図7の奥方向に現像剤を搬送する現像剤供給搬送部材としての供給スクリュー(8)を有している。
現像ローラ(5)の供給スクリュー(8)との対向部から表面移動方向下流側には、現像ローラ(5)に供給された現像剤を現像に適した厚さに規制する現像剤規制部材としての現像ドクタ(12)を備えている。
現像ローラ(5)の感光体(1)との対向部である現像部から表面移動方向下流側には、現像部を通過した現像済みの現像剤を回収し、回収した回収現像剤を供給スクリュー(8)と同方向に搬送する現像剤回収搬送部材としての回収スクリュー(6)を備えている。供給スクリュー(8)を備えた現像剤供給搬送路である供給搬送路(9)は、現像ローラ(5)の横方向に、回収スクリュー(6)を備えた現像剤回収搬送路としての回収搬送路(7)は現像ローラ(5)の下方に並設されている。
【0102】
現像装置(4)は、供給搬送路(9)の下方で回収搬送路(7)に並列して、現像剤攪拌搬送路である攪拌搬送路(10)を設けている。攪拌搬送路(10)は、現像剤を攪拌しながら供給スクリュー(8)とは逆方向である図中手前側に搬送する現像剤攪拌搬送部材としての攪拌スクリュー(11)を備えている。
供給搬送路(9)と攪拌搬送路(10)とは仕切り部材としての第一仕切り壁(133)によって仕切られている。第一仕切り壁(133)の供給搬送路(9)と攪拌搬送路(10)とを仕切る箇所は図中手前側と奥側との両端は開口部となっており、供給搬送路(9)と攪拌搬送路(10)とが連通している。
なお、供給搬送路(9)と回収搬送路(7)とも第一仕切り部材(133)によって仕切られているが、第一仕切り壁(133)の供給搬送路(9)と攪拌搬送路(7)とを仕切る箇所には開口部を設けていない。
【0103】
また、攪拌搬送路(10)と回収搬送路(7)との2つの搬送路は仕切り部材としての第二仕切り壁(134)によって仕切られている。第二仕切り壁(134)は、図中手前側が開口部となっており、攪拌搬送路(10)と回収搬送路(7)とが連通している。
現像剤搬送部材である供給スクリュー(8)、回収スクリュー(6)及び攪拌スクリュー(11)は、この例の装置では、樹脂のスクリューからなっており、一例としては、各スクリュー径を全てφ18[mm]、スクリューピッチを25[mm]、回転数を約600[rpm]としたものが挙げられる。
【0104】
現像ローラ(5)上にステンレスからなる現像ドクタ(12)によって薄層化された現像剤を感光体(1)との対抗部である現像領域まで搬送し現像を行なう。現像ローラ(5)の表面はV溝あるいはサンドブラスト処理されており、構成の一例としては、φ25[mm]のAl[アルミ]素管を用い、現像ドクタ(12)及び感光体(1)とのギャップを0.3[mm]程度にしたものが挙げられる。
【0105】
現像後の現像剤は回収搬送路(7)にて回収を行ない、図7中の断面手前側に搬送され、非画像領域部に設けられた第一仕切り壁(133)の開口部で、攪拌搬送路(10)へ現像剤が移送される。なお、攪拌搬送路(10)における現像剤搬送方向上流側の第一仕切り壁(133)開口部の付近で攪拌搬送路(10)の上側に設けられたトナー補給口から攪拌搬送路(10)にトナーが供給される。
【0106】
次に、3つの現像剤搬送路内での現像剤の循環について説明する。
図8は現像剤搬送路内の現像剤の流れを説明する現像装置(4)の斜視断面図である。図中の各矢印は現像剤の移動方向を示している。
また、図9は、現像装置(4)内の現像剤の流れの模式図であり、図8と同様、図中の各矢印は現像剤の移動方向を示している。
【0107】
攪拌搬送路(10)から現像剤の供給を受けた供給搬送路(9)では、現像ローラ(5)に現像剤を供給しながら、供給スクリュー(8)の搬送方向下流側に現像剤を搬送する。そして、現像ローラ(5)に供給され現像に用いられず供給搬送路(9)の搬送方向下流端まで搬送された余剰現像剤は第一仕切り壁(133)の開口部より攪拌搬送路(10)に供給される(図9中矢印(E))。
【0108】
現像ローラ(5)から回収搬送路(7)に送られ、回収スクリュー(6)によって回収搬送路(7)の搬送方向下流端まで搬送された回収現像剤は第二仕切り壁(134)の開口部より攪拌搬送路(10)に供給される(図9中矢印(F))。
そして、攪拌搬送路(10)は、供給された余剰現像剤と回収現像剤とを攪拌し、攪拌スクリュー(11)の搬送方向下流側であり、供給スクリュー(8)の搬送方向上流側に搬送し、第一仕切り壁(133)の開口部より供給搬送路(9)に供給される(図9中矢印(D))。
攪拌搬送路(10)では攪拌スクリュー(11)によって、回収現像剤、余剰現像剤及び移送部で必要に応じて補給されるトナーを、回収搬送路(7)及び供給搬送路(9)の現像剤と逆方向に攪拌搬送する。そして、搬送方向下流側で連通している供給搬送路(9)の搬送方向上流側に攪拌された現像剤を移送する。なお、攪拌搬送路(10)の下方には、不図示のトナー濃度センサが設けられ、センサ出力により不図示のトナー補給制御装置を作動し、不図示のトナー収容部からトナー補給を行なっている。
【0109】
図9に示す現像装置(4)では、供給搬送路(9)と回収搬送路(7)とを備え、現像剤の供給と回収とを異なる現像剤搬送路で行なうので、現像済みの現像剤が供給搬送路(9)に混入することがない。よって、供給搬送路(9)の搬送方向下流側ほど現像ローラ(5)に供給される現像剤のトナー濃度が低下することを防止することができる。また、回収搬送路(7)と攪拌搬送路(10)とを備え、現像剤の回収と攪拌とを異なる現像剤搬送路で行なうので、現像済みの現像剤が攪拌の途中に落ちることがない。よって、充分に攪拌がなされた現像剤が供給搬送路(9)に供給されるため、剤供給搬送路(9)に供給される現像剤が攪拌不足となることを防止することができる。このように、供給搬送路(9)内の現像剤のトナー濃度が低下することを防止し、供給搬送路(9)内の現像剤が攪拌不足となることを防止することができるので現像時の画像濃度を一定にすることができる。
【0110】
図10は、感光体(1)を用いた画像形成装置に、現像剤供給搬送路と現像剤攪拌搬送路をもつ現像装置(3)を用いたときの感光体(1)まわりの概略を示した各部材配置構成図である。
現像装置(3)はケーシング(301)内に、現像剤(320)を現像剤供給搬送路で攪拌搬送する現像剤供給搬送部材(304)及び現像剤攪拌搬送路で攪拌搬送する現像剤攪拌搬送部材(305)、現像ローラ(302)などの回転部材及びその他の部材を具備している。現像ローラ(302)はその長手方向の寸法が感光体(1)の長手方向と略同じ長さを有している。
現像ローラ(302)は感光体(1)に近接して対向させることで現像ニップ領域(A)を構成するようにして近接配置されている。この感光体(1)との対向部位に相当するケーシング(301)の部位は現像ローラ(302)を露出させるため開口している。
現像ローラ(302)によりケーシング(301)内の現像剤(320)は現像ニップ領域(A)へ搬送されるようになっている。現像ニップ領域(A)で感光体(1)の表面に形成されている静電潜像に現像剤(320)中のトナーが付着してトナー像として顕像化される。
【0111】
現像装置(3)は、ケーシング(301)の内部に現像ローラ(302)、現像剤供給搬送部材(304)、現像剤攪拌搬送部材(305)、現像剤規制部材(303)を有し、現像剤(320)を攪拌搬送して循環させている。
現像ローラの周囲に円筒状に位置するスリーブ(302c)は、アルミ等の非磁性の金属で形成されている。マグネットローラー(302d)は、各磁石が所定の方向を向くように不動部材、例えば、ケーシング(301)に固定されており、その周囲をスリーブ(302c)が回転して、現像ローラ内部に設けたマグネットローラー(302d)の円周方向に配置した、複数の磁石によって引き付けた現像剤(320)を搬送していく。
現像ローラ(302)と感光体(1)は現像ニップ領域(A)で直接には接触せずに、現像に適する一定の間隔、現像ギャップ(GP1)を保持して対向している。
【0112】
現像ローラ(302)上において現像剤(320)を穂立ちさせ、現像剤(320)を感光体(1)に接触させることで、感光体(1)表面の静電潜像にトナーを付着させて顕像化する。
この現像装置(3)では、固定軸(302a)には接地されたバイアス用の電源(図示せず)が接続されている。固定軸(302a)に接続された電源の電圧は、スリーブ(302c)に印加される。一方、感光体(1)を構成する最下層の導電性支持体(図示せず)は接地されている。
こうして、現像ニップ領域(A)には、キャリアから離脱したトナーを感光体(1)側へ移動させる電界を形成しておき、スリーブ(302c)と感光体(1)の表面に形成された静電潜像との電位差によりトナーを感光体(1)側に向けて移動させることに供している。
【0113】
なお、本例の現像装置は、露光用の光で書き込む方式の画像形成装置と組み合わせている。帯電装置(2)により感光体(1)上に一様に負極性の電荷を乗せ、書き込み量を少なくするために文字部を露光用の光で露光することで、低下した電位の文字部(静電潜像)に負極性のトナーで現像する所謂反転現像方式を採用している。これは一例であり、本発明の現像方式の中で、感光体(1)に乗せる帯電電荷の極性は大きな問題ではない。
【0114】
現像後、現像ローラ(302)上に担持された現像後の現像剤(320)は現像ローラ(302)の回転と共に下流側に搬送され、ケーシング(301)内に引き入れられる。該ケーシング(301)の一部はスリーブ(302c)の周面に近接して沿う湾曲形状をしており、シール効果により所謂トナー飛散防止機能を果たしている。
引き入れられた現像剤には、それまで現像ローラ(302)周囲に引き寄せていた現像剤(320)を現像ローラ(302)から引き離す“剤離し”の作用が働き、剤離し領域(図10に符号(9)で示す。)が形成される。
【0115】
感光体(1)にトナーを付着させた現像剤(320)は、現像剤中のトナー濃度が下がっているため、このトナー濃度が低下した現像剤が現像ローラ(302)から離れずに再度現像ニップ領域(A)に搬送され現像に供給されると、狙いの画像濃度を得ることができないという不具合が生じてしまう。
【0116】
これを防止するため、本例では、現像後の剤離し領域(9)で、現像ローラ(302)から現像剤を離す。現像ローラ(302)から離した現像剤はその後、狙いのトナー濃度、トナー帯電量になるように、ケーシング(301)内で充分に攪拌混合する。
【0117】
こうして、狙いのトナー濃度、帯電量にされた現像剤が、現像ローラ上の剤汲み上げ領域(図10に符号(10)で示す)で、現像ローラ(302)に汲み上げられる。
現像ローラ(302)に引き付けられ、所謂汲み上げられた現像剤は現像剤規制部材(303)を通過することにより、所定の厚さに整えられて、磁気ブラシを形成しながら現像ニップ領域(A)に搬送される。
【0118】
以下、必要に応じて、現像装置の内部の構成を組み立て状態で示した図11及び分解状態で示した図12等をも参照しつつ、各部材の配置構成などを説明する。図10に示したように、現像剤供給搬送部材(304)は現像ローラ(302)のまわりの位置で、剤汲み上げ領域(10)の近傍に配置されている。この位置は現像剤規制部材(303)の上流側でもある。図11、12に示すように、現像剤供給搬送部材(304)は回転軸の回りにスパイラルを設けたスクリュー形状をしており、現像ローラ(302)の中心(O―302をとおる中心線(O―302a)と平行な中心線(O−304a)を中心に回転し、該中心線(O−304a)の長手方向奥側から手前側に向けて矢印(11)で示すように現像剤を攪拌しながら搬送する。つまり、現像剤供給搬送部材(304)は回転軸の回転により現像剤をその軸方向に搬送する。
【0119】
現像剤攪拌搬送部材(305)は現像ローラ(302)のまわりの位置で、剤離し領域(9)の近傍に配置されている。図11に示すように、現像剤攪拌搬送部材(305)は回転軸の回りにスパイラルを設けたスクリュー形状をしており、現像ローラ(302)の中心(O―302)をとおる中心線(O−302a)と平行な中心線(O−305a)を中心に回転し、中心線(O−305a)の長手方向手前側から奥側に向けて矢印(12)で示すように現像剤を攪拌しながら搬送する。つまり、現像剤攪拌搬送部材(305)は回転軸の回転により現像剤を現像剤供給搬送部材(304)による搬送方向と逆向きに搬送する。
【0120】
現像剤供給搬送部材(304)に対して現像剤攪拌搬送部材(305)は斜め上方に位置する関係となっているのが好ましく、ケーシング(301)内で現像剤供給搬送部材(304)周囲の空間と現像剤攪拌搬送部材(305)周囲の空間とは隣接している。
現像剤供給搬送部材(304)及び現像剤攪拌搬送部材(305)の奥側端部は現像ローラ(302)の奥側端部よりも若干奥側に位置するように設定して、現像ローラ(302)の奥側端部の現像剤の供給を確保している。また、現像剤供給搬送部材(304)及び現像剤攪拌搬送部材(305)の手前側端部は現像ローラ(302)の手前側端部よりも手前側に位置するようにして後述するトナー補給のためのスペースを確保している。現像剤規制部材(303)は現像ローラ(302)の長さに合わせて設置されている。
【0121】
現像剤供給搬送部材(304)と現像剤攪拌搬送部材(305)の間であって、現像ローラ(302)の長手方向両端部を除く中央部で、現像剤供給搬送部材(304)周囲の空間と現像剤攪拌搬送部材(305)周囲の空間とを遮蔽する仕切板(306)がケーシング(301)の現像ローラ(302)から離れる側の内壁と一体に片持ち支持状に形成されている。
【0122】
仕切板(306)はその長手方向については、現像ローラ(302)の長手方向両端部を除く中央部に位置し、現像ローラ(302)の長手方向両端部に対応する部位にはない。一方、現像剤供給搬送部材(304)及び現像剤攪拌搬送部材(305)の各長手方向端部は現像ローラ(302)の長手方向両端部まで及んでいる。
現像剤攪拌搬送部材(305)で矢印(12)の向きに搬送された現像剤はその搬送方向端部でケーシング(301)の側壁で進路を絶たれるため該側壁に沿って現像剤供給搬送路へ移動し、矢印(13)に沿って現像剤供給搬送部材(304)により該現像剤供給搬送路を移動する。
同様に、現像剤供給搬送部材(304)で矢印(11)の向きに搬送された現像剤はその搬送方向端部でケーシング(301)の側壁で進路を絶たれるために該側壁に沿って移動し、矢印(14)に沿って現像剤攪拌搬送部材(305)により該現像剤攪拌搬送路を移動する。
【0123】
仕切板(306)はその長手方向については、現像ローラ(302)の長手方向両端部を除く中央部に位置するようにしたのは、その長手方向の端部での矢印(13)、(14)の現像剤の流れを可能にして、全体として矢印(11)、(14)、(12)、(13)に沿う循環搬送路を形成するためである。
なお、図示の例では、仕切板(306)はその奥側の端部近傍に開口(307)を設けていて、この開口(307)を介して現像剤攪拌搬送路から現像剤供給搬送路への現像剤の移動を行なうようにしているので、現像ローラ(302)の長手方向奥側端部まで仕切板(306)が及ぶ構成とすることもできる。
【0124】
こうして、本発明に係る現像装置(3)は、現像剤を担持して回転し感光体(1)に形成された静電潜像を可視像化する現像ローラ(302)と、現像ローラ(302)に現像剤を汲み上げる剤汲み上げ領域(10)の近傍に配置されていて現像ローラ(302)の中心線(O−302a)と平行な中心線(O−304a)を中心に回転し、その中心線(O−304a)の長手方向に現像剤を攪拌しつつ搬送する現像剤供給搬送部材(304)と、現像ローラ(302)から現像剤を離す剤離し領域(9)の近傍に配置されていて、現像ローラ(302)の中心線(302a)と平行な中心線(305a)を中心に回転し、現像剤供給搬送部材(304)が現像剤を搬送する向きの反対の向きに現像剤を攪拌しつつ搬送する現像剤攪拌搬送部材(305)と、現像剤供給搬送部材(304)と現像剤攪拌搬送部材(305)の間であって、かかる構成では、現像装置(3)内、つまりケーシング、現像ローラ(302)の長手方向両端部を除く中央部で、現像剤供給搬送路と現像剤攪拌搬送路を遮蔽する仕切板(306)とを有する構成により、矢印(11)、(14)、(12)、(13)に沿う循環搬送路を構成する(301)内の現像剤供給搬送部材(304)、現像剤攪拌搬送部材(305)が現像ローラ(302)の横に2本並べて配置されることから、現像ローラから離れる方向(水平方向に)に2つの攪拌搬送部材を配置する図7に示した技術に比べて、現像装置の横(水平方向)の大きさを小さくすることができる。
【0125】
さらに、こうして、水平方向のコンパクト化を図った現像装置(3)においても、仕切板(306)により現像ローラ(302)の長手方向両端部を除く中央部で現像剤供給搬送部材(304)周囲と現像剤攪拌搬送部材(305)周囲の空間が仕切られているので、現像ローラ(302)に対しては現像剤供給搬送部材(304)により、トナーとキャリアを充分に攪拌混合された現像剤(320)のみが供給され、現像直後のトナー濃度の下がった現像剤は専ら現像剤攪拌搬送部材(305)により攪拌搬送されるだけで、直ぐに現像ローラ(320)に供給されることがないので、現像ローラ(320)へは狙いの帯電量を持ったトナーだけが現像に用いられることとなり、高画質を得ることができる。
【0126】
仕切板(306)は、現像剤供給搬送部材(304)が攪拌搬送する現像剤(320)を支えて現像剤搬送経路を形成すると共に、剤離し領域(9)で該仕切部材(306)上流側にて現像ローラ(302)から離され現像剤攪拌搬送部材(305)により攪拌搬送される現像剤が再度現像ローラ(302)に引き付けられて、現像剤供給搬送部材(304)により攪拌される空間へ移動するのを防止する。
【0127】
この機能をより確実にするため、好ましくは現像ローラ(302)の外周部と仕切板(306)との間隔、仕切板ギャップ(GP2)を、0.2〜1mm程度のギャップに保持する。0.2mm未満では現像ローラ(302)の回転時の偏心により仕切板(306)が現像ローラにぶつかるおそれがあり、1mmを超えると穂切り性能が不完全になるからである。これにより、仕切板(306)の設定位置を剤離し領域(9)の任意の位置にしても充分な機能を得る。つまり、仕切板設定位置の自由度が増す。
【0128】
さらに、剤離し領域(9)からずれた配置としても、仕切板としての機能を得ることは可能である。しかし、剤離し領域(9)からずれた配置とした場合には、仕切板が多量の現像剤を規制するケースも生じ得ることから、現像剤が受けるストレスが大となり、好ましくない。
その場合、現像ローラ(302)を間にして感光体(1)と反対側の現像ローラ(302)の周りに剤離れ領域(9)が位置し、現像ローラの回転方向上で剤離れ領域(9)の下流側に隣接して剤汲み上げ位置(10)が位置する構成とし、剤離し領域(9)と剤汲み上げ位置(10)との間で、現像ローラ(302)の周囲に現像剤が付着する量が最も少ない位置に、現像剤供給搬送路の空間と、現像剤攪拌搬送路の空間を遮蔽するようにして、仕切板(306)を設け、かつ、仕切板(306)の現像ローラ(302)側の端部を現像ローラ(302)に対向させた構成とすることが好ましい。
【0129】
このような構成であれば、前記仕切板ギャップ(GP2)の0.2〜1mmの設定をしなくてもこの仕切板が設けられる部位では現像ローラ(302)の周囲に現像剤が付着する量が最も少ない位置であるので、仕切板(306)の機能を発揮できる。また、該仕切板により規制されることで現像剤が受けるストレスを最小限にすることができる。つまり、仕切板設定時のギャップ管理を緩和できる。尤も、その上で仕切板ギャップ(GP2)を0.2〜1mmの設定にする条件をさらに付加した構成とすれば、現像剤に与えるストレスをより少なくすることが可能となる。
【0130】
図11、12に示したように、現像剤攪拌搬送部材(305)は現像ローラ(302)から離された現像剤(320)を攪拌しながら現像装置の奥側に矢印(12)の向きに搬送する。現像剤攪拌搬送路の搬送方向下流側、現像装置の奥側の端部では、図11、図12に示すように仕切板(306)の一部に開口(307)が設けてあり、現像剤攪拌搬送部材(305)により搬送された現像剤(320)が、現像剤供給搬送路へ矢印(307)の向きに移動していく。
【0131】
図12に示すように、現像剤攪拌搬送部材(305)による現像剤の搬送方向下流部では、開口(307)に対応する範囲で、スクリュー部に代えて羽根車(308)の構成としてもよい。
この羽根車(308)は現像剤攪拌搬送部材(305)の軸部(305J)について軸心(中心線(O−305a))から法線方向に板状に延びる複数枚の羽根状部材を設けた構成であり、その回転に伴って現像剤(320)を跳ねる機能を有する。
【0132】
現像剤攪拌供給部材(304)の中心(O−304)と現像剤攪拌搬送部材(305)の中心(O−305)とは略同一鉛直線上にあり、羽根車(308)が回転することで、ケーシング(301)の内壁に沿って現像剤(320)を跳ねる。開口(307)はこの跳ねによる現像剤の進路を妨げないように、中心(O−304)と中心(O−305)とを結ぶ略鉛直線よりもわずかにケーシング内壁寄りの位置からケーシング内壁部に及ぶように形成すると好ましい。
【0133】
現像剤供給搬送部材(304)の回転方向は、現像ローラ(1)と逆向きにすることが好ましい。一般に、スクリューは、被搬送物を軸方向に送りながら、回転方向に寄せる作用があるので、現像剤供給搬送部材(304)は現像剤(320)を現像剤供給搬送路で現像ローラ(302)に寄せながら搬送することになる。従って、現像ローラ(302)への連続した現像剤供給が可能になる。
【0134】
現像剤攪拌搬送部材(305)を現像ローラ(302)と同じ向きに回転させていると、現像剤(320)を現像ローラ(302)から離れた方向に寄せながら搬送することになり、剤離し領域(9)で磁気力や仕切板(306)などにより一度現像ローラ(302)から離された現像剤が現像ローラ(302)に再度付着することが防止される。よって、現像後のトナー濃度が低下した現像剤が現像剤供給搬送部材(304)の領域に搬送されることを防ぐことができる。
【0135】
現像装置(3)内の現像剤(320)は、現像動作を繰り返す内にトナーが消費されていくので、現像装置外部から装置内の現像剤に対してトナーを補給する必要がある。現像ローラ(302)から現像剤(320)が離される剤離し領域(9)の近傍に配置した現像剤攪拌搬送路の上流側端部、即ち、現像装置の手前側の端部近傍に設けた現像剤の補給部より外部などからトナーの補給を行なうと、補給されたトナーが直ちに現像に供されることがなく、現像剤攪拌搬送部材(305)で攪拌され、安定した所定のトナー濃度で現像に供される。
【0136】
現像剤攪拌搬送路は、現像ローラ(302)に対しては、離れた現像剤(320)を回収するのみであり、現像ローラ(302)へのトナー供給は行なわないので、補給用開口(310)から新しく補給されたトナーにより充分に攪拌されていない、トナー濃度が不均一な状態の現像剤が現像に供されることがない。
【0137】
補給トナーは、現像ローラ(302)から離れた、トナー濃度の低下した現像剤(320)と共に攪拌混合されながら、現像装置(3)の奥側まで搬送される。それまでにトナー濃度は正常化され、現像剤供給搬送部材(304)により手前側に搬送されながら現像ローラ(302)に供給され現像に使用される。
【0138】
本例に係る現像装置(3)では、現像剤供給搬送部材(304)で搬送される現像剤(320)は、手前側に向けて搬送されながら、現像ローラ(302)に汲み上げられる。現像ローラ(302)に汲み上げられた現像剤(320)は、磁気ブラシを介して感光体(1)に接触して現像に供された後、現像装置(3)内で剤離し領域(9)で現像ローラ(302)から離され、現像剤攪拌搬送部材(305)により、奥側へ向けて搬送される。
【0139】
このような現像剤循環系路は図11、12等で矢印(11)、(14)、(12)、(13)で説明したとおりであるが、現像剤供給搬送部材(304)により手前側まで搬送される前に現像に使用されることから、現像剤攪拌搬送部材(305)により奥側へ戻される現像剤が多くなり、現像剤(320)が奥側に溜まる傾向にある。これを放置すると剤の円滑な循環が阻害される可能性がある。
【0140】
これは、現像剤供給搬送部材(304)の現像剤搬送能力を現像剤攪拌搬送部材(305)よりも大きくすることで、現像剤供給搬送部材(304)による単位時間あたりの現像剤搬送量を現像剤攪拌搬送部材(305)による単位時間あたりの現像剤搬送量よりも大きくし、奥行方向における現像剤の搬送バランスをとることで解決できる。これにより、円滑な現像剤の循環が長期にわたり維持できる。
現像剤攪拌搬送部材(305)に対して、現像剤供給搬送部材(304)のスクリューの外径を大きくすることで現像剤攪拌搬送部材(305)の現像剤搬送能力を上げることができる。現像剤供給搬送部材(304)のスクリューのスパイラルピッチを大きくすること、回転数を大きくすること、また、現像剤供給搬送部材(304)による現像剤搬送経路の空間を大きくすることによっても、同様の利益を得ることができる。
【0141】
図13には、本発明のプロセスカートリッジの一例が示される。このプロセスカートリッジは、本発明の現像剤を使用し、感光体(20)と、近接型のブラシ状接触帯電手段(32)、本発明の現像剤を収納せる現像手段(40)、クリーニング手段としてのクリーニングブレード(61)を少なくとも有するクリーニング手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジである。本発明においては、上述の各構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成することができる。
【実施例】
【0142】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて説明する。なお、本発明はここに例示される実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」は質量部を表す。
【0143】
(実施例1)
[粉砕トナーの作製]
<粉砕トナー1>
結晶性ポリエステル樹脂:a1 4質量部
非結晶性樹脂:b1 35質量部
非結晶性樹脂:c1 55質量部
複合樹脂:d1 10質量部
着色剤:p1 14質量部
離型剤:カルナウバワックス(融点:81℃) 6質量部
帯電制御剤:モノアゾ金属錯体
(クロム系錯塩染料(ボントロンS−34 オリエント化学工業(株)製)2質量部
下記表1〜5に記載の原材料と、上記離型剤、帯電制御剤によるトナー原材料を、へンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM−30)で100〜130℃の温度で溶融、混練した。得られた混練物はローラーにて2.8mmの厚さに圧延した後にベルトクーラーにて室温まで冷却し、ハンマーミルにて200〜300μmに粗粉砕した。次いで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製、MDS−I)で重量平均粒径が5.6±0.2μmとなるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子を得た。次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、添加剤(HDK−2000、クラリアント株式会社製)1.0質量部をヘンシェルミキサーで攪拌混合し、粉砕トナー1を作製した。
作製した粉砕トナーの分子量メインピーク、分子量分布の半値幅、結晶性ポリエステル樹脂(A)に起因する90〜130℃の範囲におけるDSCピーク温度・吸熱量、X線回折測定における19〜25°の範囲での回折ピークの有無、体積平均粒径を表7に示す。
【0144】
作製した粉砕トナー1を5質量%と、コーティングフェライトキャリア95質量%を、ターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一混合し、粉砕トナー現像剤1を作製した。
【0145】
(実施例2〜35、比較例1〜8)
以下、下記表1〜5に記載の原材料と表6に記載の離型剤、帯電制御剤、圧延厚さ、また、製造例によっては脂肪酸アミドを表6に記載の質量部にて実施例1と同様に混合、混練、粉砕、添加剤混合を施し、トナー2〜43を得、現像剤を作製した。
ただし、トナー31においては、樹脂中での顔料の分散が悪いため、他の原材料と混合する前に、非結晶性樹脂c3と純水を用いて予備混練を行い、マスターバッチ化を行って着色剤p2を用いたトナーを作製した。トナー化にあたっては、マスターバッチ中に含有されている非結晶性樹脂c3の量から逆算し、最終的に配合される原材料比率が表6の分量となるように調整した。
【0146】
<粉砕トナー31のマスターバッチ作製>
非結晶性樹脂:c3 100質量部
着色剤:p2 50質量部
純水 50質量部
無論、本発明において、マスターバッチの作製方法は上記に限定されるものではない。
尚、実施例30〜35で用いた帯電制御剤のサリチル酸金属化合物は、サリチル酸亜鉛化合物である金属錯体(ボントロンE−84 オリエント化学工業(株)製)を使用した。
【0147】
【表1】

【0148】
上記結晶性ポリエステルa1〜a6は、アルコール成分として1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールから選択される化合物を、カルボン酸成分としてフマル酸、マレイン酸、テレフタル酸から選択される化合物を用いて得られた樹脂である。
具体的には、表1に示すアルコール成分及びカルボン酸成分の単量体を、常圧下、170〜260℃、無触媒の条件でエステル化反応せしめた後、反応系に全カルボン酸成分に対し400ppmの3酸化アンチモンを加え3Torrの真空下でグリコールを系外へ除去しながら250℃で重縮合を行い、結晶性の樹脂を得た。尚、架橋反応は攪拌トルクが10kg・cm(100ppm)となるまで実施し、反応は反応系の減圧状態を解除して停止させた。
【0149】
また、上記結晶性ポリエステルa1〜a6は、粉末X線回折装置によるX線回折パターンにおいて、2θ=19°〜25°の位置に少なくとも1つの回折ピークが存在し、結晶性ポリエステルであることを確認した。結晶性ポリエステル樹脂a6のX線回折結果を図1に示す。
【0150】
【表2】

【0151】
【表3】

【0152】
上記非結晶性樹脂b1〜b5、c1、c3は以下のようにして得られた樹脂である。
芳香族ジオール成分及びエチレングリコール、グリセリン、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、イタコン酸より選ばれた単量体を、常圧下、170〜260℃、無触媒の条件でエステル化反応せしめた後、反応系に全カルボン酸成分に対し400ppmの3酸化アンチモンを加え3Torrの真空下でグリコールを系外へ除去しながら250℃で重縮合を行い樹脂を得た。尚、架橋反応は攪拌トルクが10kg・cm(100ppm)となるまで実施し、反応は反応系の減圧状態を解除して停止させた。
上記非結晶性樹脂b1〜b6、c1〜c3はX線回折パターンにより、回折ピークが存在せず、非結晶性であることを確認した。
【0153】
【表4】

【0154】
縮重合系モノマーである、テレフタル酸0.8mol、フマル酸0.6mol、無水トリメリット酸0.8mol、ビスフェノールA(2,2)プロピレンオキサイド1.1mol、ビスフェノールA(2,2)エチレンオキサイド0.5mol、及びエステル化触媒としてジブチル錫オキシド9.5molを、窒素導入管、脱水管、攪拌器、滴下ロート、及び熱電対を装備した5リットル容器の四つ口フラスコ内に入れ、窒素雰囲気下、135℃まで加熱した。
攪拌を行いながら、さらに付加重合系モノマーである、スチレン10.5mol、アクリル酸3mol、2-エチルヘキシルアクリレート1.5mol、重合開始剤としてt-ブチルハイドロパーオキサイド0.24molを滴下ロートに入れ、混合物を5時間かけて滴下し、6時間反応を行った。
続けて、210℃まで3時間かけて昇温を行い、210℃、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、複合樹脂d1を合成した。
得られた複合樹脂d1の軟化温度は115℃、ガラス転移温度は58℃、酸価は25mgKOH/gであった。
【0155】
また、縮重合系モノマーとしてヘキサメチレンジアミン、ε−カプロラクタム、付加重合系モノマーとしてスチレン、アクリル酸、2−エチルヘキシルアクリレートを用いること以外は複合樹脂d1と同様にして複合樹脂d2を合成した。
【0156】
【表5】

【0157】
【表6】

【0158】
【表7】

【0159】
粉砕トナー現像剤1〜43を図3の現像ユニット105D内に収容した。現像ユニット105Dは図4に示す現像装置と同様の構成である。現像ユニット105A〜Cは使用しなかった。
【0160】
(実施例36)
現像ユニット105Dを図7に示す現像装置に変更した以外は実施例35と同様にして評価を行った。
(実施例37)
現像ユニット105Dを図10に示す現像装置に変更した以外は実施例35と同様にして評価を行った。
【0161】
<低温定着性、耐ホットオフセット性、細線再現性(初期)>
上記画像形成装置を用いて粉砕トナー現像剤1〜43の画像出力を行なった。付着量0.4mg/cm2のベタ画像を、露光、現像、転写工程を経ることで紙(リコー製Type6200)上に出力した。定着の線速は160mm/秒とした。定着温度を5℃刻みで順次出力し、コールドオフセットが発生しない下限温度(定着下限温度:低温定着性)と、ホットオフセットが発生しない上限温度(定着上限温度:耐ホットオフセット性)を測定した。定着装置のNIP幅は11mmであった。また、別途、定着下限温度+20℃の定着温度にて粉砕トナーによる画像面積率5%の文字チャート(1文字の大きさが2mm×2mm程度)を出力し、目視による判定を行なうことで細線再現性評価とした。
【0162】
◆低温定着性
◎:130℃未満
○:130℃以上140℃未満
□:140℃以上150℃未満
△:150℃以上160℃未満
×:160℃以上
◆耐ホットオフセット性
◎:200℃以上
○:190℃以上200℃未満
□:180℃以上190℃未満
△:170℃以上180℃未満
×:170℃未満
◆細線再現性
◎:非常に良好
○:良好
□:一般的な水準
△:実用上は問題ない
×:許容できない
【0163】
<耐スミア性>
定着下限温度にて、紙(リコー製 Type6200紙)上に0.40±0.1mg/cmのトナー付着量で画像面積率が60%であるハーフトーン画像を出力し、定着画像部をクロックメータを用いて白綿布(JIS L0803 綿3号)で10回摺擦し、布に付着した汚れのID(以後スミアIDと呼ぶ)を測定した。スミアIDは、測色計(X−Rite938)で測定した。粉砕トナー31はシアンで測色し、それ以外のトナーはブラックで測色した。
◎:スミアIDが0.20未満
○:スミアIDが0.20以上0.35未満
△:スミアIDが0.35以上0.55未満
×:スミアIDが0.55以上
【0164】
<細線再現性(経時)>
初期の細線再現性を評価した後、トナーを補給しながら画像面積率5%のチャートを100k枚連続で出力し、その後、再度、定着下限温度+20℃の定着温度にて粉砕トナーによる画像面積率5%の文字チャート(1文字の大きさが2mm×2mm程度)を出力し、目視による判定を行なうことで、経時での細線再現性評価とした。判定基準は初期の細線再現性評価と同じとした。
【0165】
<耐熱保存性>
それぞれのトナー10gを30mlのスクリューバイアル瓶に入れ、タッピングマシンで100回タッピングした後、50℃環境の恒温槽で24時間保管し、室温に戻した後、針入度試験機で針入度を測定し、耐熱保存評価とした。
◎:貫通
○:20mm以上
□:15mm以上20mm未満
△:10mm以上15mm未満
×:10mm未満
【0166】
<濃度ムラ>
上記の精細再現性(経時)評価の後に全面ベタ画像を3枚連続にて出力し、出力画像の濃度ムラを目視にてランク評価を行なった。
◎:画像上にムラが一切存在しない状態
○:問題とはならないレベルの濃度ムラがわずかに観察される状態
△:問題とはならないレベルの濃度ムラが観察される状態
×:許容範囲外で濃度ムラが非常に目立つ状態
各評価の結果を表8に示す。
【0167】
【表8】

【符号の説明】
【0168】
(図3について)
101A 駆動ローラ
101B 従動ローラ
102 感光体ベルト
103 帯電器
104 レーザー書き込み系ユニット
105A〜105D それぞれイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色のトナーを収容する現像ユニット
106 給紙カセット
107 中間転写ベルト
107A 中間転写ベルト駆動用の駆動軸ローラ
107B 中間転写ベルトを支持する従動軸ローラ
108 クリーニング装置
109 定着ローラ
109A 加圧ローラ
110 排紙トレイ
113 紙転写ローラ
【0169】
(図4について)
20 感光体
21 トナー
23 キャリア
41 現像スリーブ
42 現像剤収容部材
43 現像剤供給規制部材
44 支持ケース
45 トナーホッパー
46 現像剤収容部
47 現像剤攪拌機構
48 トナーアジテータ
49 トナー補給機構
【0170】
(図5について)
20 感光体
32 帯電部材
33 像露光系
40 現像装置
41 現像スリーブ
45 トナーホッパー
47 現像剤攪拌機構
50 転写装置
60 クリーニング装置
61 クリーニングブレード
62 トナー回収室
70 除電ランプ
80 転写媒体
【0171】
(図6について)
20 感光体
24a 駆動ローラー
24b 駆動ローラー
26 クリーニング前露光光源
32 帯電部材
33 像露光系
40 現像装置
50 転写装置
61 クリーニングブレード
64 ブラシ状クリーニング手段
70 除電ランプ
【0172】
(図7〜図9について)
1 感光体
4 現像装置
5 現像ローラ
6 回収スクリュー
7 回収搬送路
8 供給スクリュー
9 供給搬送路
10 攪拌搬送路
11 攪拌スクリュー
12 現像ドクタ
133 第一仕切り壁
134 第二仕切り壁
【0173】
(図10〜図12について)
1 感光体
2 帯電装置
3 現像装置
9 剤離し領域
10 剤汲み上げ領域
11 現像剤循環系路
12 現像剤循環系路
13 現像剤循環系路
14 現像剤循環系路
301 ケーシング
302 現像ローラ
302a 固定軸
302c スリーブ
302d マグネットローラ
303 現像剤規制部材
304 現像剤供給搬送部材
305 現像剤攪拌搬送部材
305J 軸部
306 仕切板
307 開口
308 羽根車
310 補給用開口
320 現像剤
O−302 中心
O−302a 中心線
O−304a 中心線
O−305a 中心線
A 現像ニップ領域A
GP1 現像ギャップ
GP2 仕切板ギャップ
【0174】
(図13について)
20 感光体
32 帯電手段
40 現像手段
61 クリーニング手段
【0175】
(図14〜図16について)
1 静電潜像保持体
4 現像装置
5 現像ローラ
6 第2のオーガ
7 回収搬送路
8 第1のオーガ
9 供給搬送路
10 攪拌搬送路
11 第2のオーガ
15 現像ローラ回転軸
16 現像剤規制部材
27 濃度センサ
209 第3のオーガ
401 第1のオーガ
403 仕切り部材
404 仕切り部材
405 仕切り部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0176】
【特許文献1】特開昭60−90344号公報
【特許文献2】特開昭64−15755号公報
【特許文献3】特開平2−82267号公報
【特許文献4】特開平3−229264号公報
【特許文献5】特開平3−41470号公報
【特許文献6】特開平11−305486号公報
【特許文献7】特開昭62−63940号公報
【特許文献8】特許第2931899号公報
【特許文献9】特開2001−222138号公報
【特許文献10】特開2004−46095号公報
【特許文献11】特開2007−33773号公報
【特許文献12】特開2005−338814号公報
【特許文献13】特許第4118498号公報
【特許文献14】特許3127594号公報
【特許文献15】特開平11−167260号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4種類以上の結着樹脂を含有するトナーであって、
該結着樹脂が少なくとも、
結晶性を有するポリエステル樹脂(A)と、
非結晶性樹脂(B)と、
非結晶性樹脂(C)と、
縮重合系樹脂ユニット及び付加重合系樹脂ユニットを含む複合樹脂(D)とを含み、
該非結晶性樹脂(B)はクロロホルム不溶分を含有し、
該非結晶性樹脂(C)は該非結晶性樹脂(B)よりも軟化温度(T1/2)が25℃以上低く、
該トナーのTHF可溶分により求められたGPCによる分子量分布において1000〜10000の間にメインピークを有し、
該分子量分布の半値幅が15000以下である
ことを特徴とする電子写真画像形成用トナー。
【請求項2】
前記トナーのDSCによる吸熱ピーク測定において、90〜130℃の範囲に吸熱ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項3】
前記トナーのDSCによる吸熱ピーク測定において、90〜130℃の範囲に吸熱ピークを有し、該吸熱ピークの吸熱量が1〜15J/gであることを特徴とする、請求項2に記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項4】
前記非結晶性樹脂(C)が、THF可溶分により求められたGPCによる分子量分布において1000〜10000の間にメインピークを有し、該分子量分布の半値幅が15000以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに電子写真画像形成用トナー。
【請求項5】
前記トナーが、脂肪酸アミド化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項6】
前記非結晶性樹脂(B)が、クロロホルム不溶分を5〜40質量%含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項7】
前記トナーが、クロロホルム不溶分を2〜20質量%含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項8】
前記トナーが、カーボンブラックを含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項9】
前記非結晶性樹脂(B)及び非結晶性樹脂(C)が、いずれもポリエステルであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項10】
前記トナーが、サリチル酸金属化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項11】
前記トナーが離型剤を含有し、該離型剤のうち、少なくとも1種類がカルナウバワックスであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項12】
前記結晶性ポリエステル(A)が、分子主鎖中に下記一般式で表されるエステル結合を含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
[−OCO−R−COO−(CH2)n−]
(式中、Rは炭素数2〜20の直鎖状不飽和脂肪族2価カルボン酸残基を示し、nは2〜20の整数を示す。)
【請求項13】
前記複合樹脂(D)が、ポリエステルの縮重合系樹脂ユニットとビニル系樹脂の付加重合系ユニットを有する複合樹脂であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項14】
前記トナーが、粉体X線回折装置によるX線回折パターンにおいて、少なくとも2θ=19〜25°の位置に回折ピークを有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項15】
前記トナーの体積平均粒径が4〜10μmであることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナー。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナーの製造方法であって、製造工程において少なくとも溶融混練工程を含み、原材料を溶融混練させた後の冷却工程にて、混練物の厚さを2.5mm以上とすることを特徴とする、電子写真画像形成用トナーの製造方法。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナーを使用したことを特徴とする画像形成方法。
【請求項18】
前記画像形成方法の現像工程に用いる現像装置が、
電子写真画像形成用トナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を表面上に担持して回転し、潜像担持体と対向する箇所で該潜像担持体の表面の潜像にトナーを供給して現像する現像剤担持体と、
該現像剤担持体の軸線方向に沿って現像剤を搬送し、該現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給搬送部材を備えた現像剤供給搬送路と、
該潜像担持体と対向する箇所を通過後の該現像剤担持体上から回収された該現像剤を該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、前記現像剤供給搬送部材と同方向に搬送する現像剤回収搬送部材を備えた現像剤回収搬送路と、
現像に用いられずに該現像剤供給搬送路の搬送方向の最下流側まで搬送された余剰現像剤と、該現像剤担持体から回収され該現像剤回収搬送路の搬送方向の最下流側まで搬送された回収現像剤との供給を受け、該現像剤担持体の軸線方向に沿って、且つ、該余剰現像剤と該回収現像剤とを攪拌しながら該現像剤供給搬送部材とは逆方向に搬送する現像剤攪拌搬送部材を備え該現像剤を該現像剤供給搬送路に供給する現像剤攪拌搬送路と、を有し、
該現像剤回収搬送路、該現像剤供給搬送路及び該現像剤攪拌搬送路からなる3つの現像剤搬送路はそれぞれ仕切り部材により仕切られ、
該現像剤攪拌搬送路と該現像剤回収搬送路とはほぼ同じ水平位置に設けられ、
該現像剤供給搬送路は他の2つの該現像剤搬送路の垂直方向上側に位置するように設けられていることを特徴とする、請求項17に記載の画像形成方法。
【請求項19】
前記画像形成方法の現像工程に用いる現像装置が、
電子写真画像形成用トナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を表面上に担持して回転し、潜像担持体と対向する箇所で該潜像担持体の表面の潜像にトナーを供給して現像する現像剤担持体と、
該現像剤担持体の軸線方向に沿って現像剤を搬送し、該現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給搬送部材を備えた現像剤供給搬送路と、
現像に用いられずに該現像剤供給搬送路の搬送方向の最下流側まで搬送された余剰現像剤の供給を受け該現像剤担持体の軸線方向に沿って該余剰現像剤を攪拌しながら該現像剤供給搬送部材とは逆方向に搬送する現像剤攪拌搬送部材を備え該現像剤を該現像剤供給搬送路に供給する現像剤攪拌搬送路とを有し、
該現像剤供給搬送路と該現像剤攪拌搬送路は、少なくとも長手方向両端部を除く中央部で仕切部材によって仕切られており、該潜像担持体と対向する箇所を通過した現像剤は、該現像剤攪拌搬送路に回収され該現像剤攪拌搬送路を搬送されてきた現像剤と混合された後に該現像剤供給搬送路へ供給されることを特徴とする、請求項17に記載の画像形成方法。
【請求項20】
像担持体と、少なくとも像担持体上に形成された静電潜像をトナー及びキャリアを含む現像剤により可視像とする現像装置とを一体に支持し、画像形成装置本体に着脱可能に備えられるプロセスカートリッジであって、請求項1〜15のいずれかに記載の電子写真画像形成用トナーを用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−76997(P2013−76997A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−199607(P2012−199607)
【出願日】平成24年9月11日(2012.9.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】