説明

電子制御装置

【課題】メインマイコンとサブマイコンとで制御プログラムのバージョンを自動的に一致させることができ、動作信頼性が極めて高く、コンパクトで低廉な電子制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の電子制御装置1は、メモリ部と、通信部と、制御処理部と、をそれぞれ備えるメインマイコン2と少なくとも一つのサブマイコン3とが協働して所定の制御機能を果たす電子制御装置であって、該メインマイコン2は自身及び該サブマイコン3の該制御プログラム27、37の全部を外部の書き込み装置91から一括受信する外来受信部25を備えるとともに、該メモリ部(フラッシュメモリ21)に該全部を記憶し、該通信部(I/Oポート23)から該サブマイコン3に必要分の該制御プログラム37を送信し、該サブマイコン3は該通信部(33)で該必要分の該制御プログラム37を受信し、該メモリ部(31)に該必要分を記憶することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のマイクロコンピュータ(マイコン)からなる電子制御装置に関し、より詳細には制御プログラム及び制御データの更新手段に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の負担を軽減し、安全性の向上と快適な乗り心地を実現するため、自動車にはマイコンを応用した電子制御装置が広く用いられている。例えば、特許文献1に開示されるクラッチ制御装置は、クラッチの断続制御を自動で行うものであり、クラッチディスクのスタンバイ位置を学習制御する機能を備えている。また、特許文献2に開示されるクラッチ制御装置は、クラッチのストローク位置を検出しつつ伝達されるクラッチトルクを補正制御するものである。この2つのクラッチ制御装置には、演算処理を行うCPU、制御プログラムや数値テーブル等の制御データを記録したROM、データ等の読み書きが可能なRAM、バックアップ電源なしでデータ等を保持するEEPROM、入出力部、などからなるマイコンを応用した電子制御装置が用いられている。
【0003】
近年では、制御内容の複雑化や高い信頼性へ対応するために、例えば特許文献3に開示されるように複数のマイコンを搭載した電子制御装置が主流となってきている。そして、メインマイコンとサブマイコンとで入出力を分担して協働したり、あるいはメインマイコンの制御処理内容に矛盾がないかをサブマイコンで監視したりしている。このため、リファイン等の理由により制御プログラムや制御データを変更する場合には、メインマイコンとサブマイコンの両方のメモリを書き換える必要がある。この対応策として、特許文献3の電子制御装置では、外部の書き込み装置と接続する通信ラインを共用するようにしている。すなわち、書き込み装置からの通信ライン及び制御信号ラインを電子制御装置内で分岐させて、メインマイコンとサブマイコンの両方に接続している。そして制御信号ラインの内容により、通信ラインで伝送する制御プログラム及び制御データの行き先を制御していた。
【特許文献1】特開2003−65364公報
【特許文献2】特開2004−138176公報
【特許文献3】特開2003−196256公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献3の電子制御装置では、メインマイコンとサブマイコンとで制御プログラムのバージョンが一致しなくなることがある。例えば、メモリ書き換え中に電源電圧低下やノイズが発生したり、通信ラインの接続不完全や、書き込み装置の操作ミスなどの原因が考えられる。また、電子制御装置内で通信ライン及び制御信号ラインを分岐させて配線する必要があり、装置が大形化するとともに、コスト的にも高価になっていた。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、メインマイコンとサブマイコンとで制御プログラムのバージョンを自動的に一致させることができ、動作信頼性が極めて高く、コンパクトで低廉な電子制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子制御装置は、制御プログラム及び制御データを記憶するとともに不揮発性でかつ電気的に書き換え可能なメモリ部と、送信及び受信を行う通信部と、記憶している該制御プログラムに基づいて制御を実行する制御処理部と、をそれぞれ備えるメインマイクロコンピュータと少なくとも1つのサブマイクロコンピュータとからなるとともに、協働して所定の制御機能を果たす電子制御装置であって、該メインマイクロコンピュータは、該メインマイクロコンピュータ自身及び該サブマイクロコンピュータの該制御プログラム及び該制御データの全部を外部の書き込み装置から一括受信する外来受信部を備えるとともに、該メモリ部に該全部を記憶し、該通信部から該サブマイクロコンピュータに必要分の該制御プログラム及び該制御データを送信し、該サブマイクロコンピュータは該通信部で該必要分の該制御プログラム及び該制御データを受信し、該メモリ部に該必要分を記憶する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の電子制御装置では、メインマイクロコンピュータ(メインマイコン)と少なくとも1つのサブマイクロコンピュータ(サブマイコン)とが協働して所定の制御機能を果たすように構成されている。サブマイコンの数量に限定はないが、簡明を期するため以降は1つのサブマイコンの構成について説明する。メインマイコン及びサブマイコンは、それぞれメモリ部、通信部、制御処理部を備えている。
【0008】
メモリ部は、制御プログラム及び制御データを記憶するために不揮発性であり、例えば車両用でイグニッションスイッチが切られて電子制御装置の電源がなくなっても、制御プログラムは保持される。また、制御プログラムの更新の便宜を図るため、電気的な書き換えができることが条件となる。これにより、メモリ部を取り外すことなく電子制御装置内に実装したままでメモリ内容を更新することができ、取り扱いが便利である。メモリ部には、一般的なEEPROMやフラッシュメモリを用いることができ、メモリ容量は制御プログラム及び制御データの大きさに合わせて選定することになる。従来のROMはメモリ内容の更新に際して取り外しが必要であり、適さない。なお、動作中の一過性のメモリ装置として、揮発性ではあるが高速アクセスのできるRAMを併用することが一般的であり、本発明でも当然適用してよい。
【0009】
通信部は、メインマイコンとサブマイコンとの間で各種データを交換するためのものであり、例えば車両用の一般的な有線通信線および通信手順を適用することができる。必要に応じ、光ファイバ通信や無線通信を適用してもよい。
【0010】
制御処理部は、一般的にはCPUと呼ばれ制御を司る本質部分である。制御処理部は、前記のメモリ部や通信部の内容を制御する他、本来の制御機能を備えている。例えば、車両用変速機の制御では、駆動軸の回転数や変速段のデータを受け取り、必要に応じて制御データを参照しつつ、必要な演算を行って、アクチュエータなどをコントロールしている。この制御は、メモリ部に記憶された制御プログラムを基にして行われている。したがって、開発途上などにおいて、より好ましい制御方法が確立されると、制御プログラムを更新する必要が生じるのである。
【0011】
本発明では、メインマイコンは外部の書き込み装置からデータを受信する外来受信部を備えるものとしている。外来受信部には一般的な通信インターフェイスを用いることができ、書き込み装置からのデータを受け取ることができればよい。そして、メインマイコン自身の制御プログラム及び制御データだけでなく、サブマイコンに必要な制御プログラム及び制御データも一括して受け取るようにしておく。メインマイコンは、自身のメモリ部に両者の制御プログラム及び制御データを記憶するように動作する。このとき、制御プログラム及び制御データのバージョン情報も一緒に記憶するようにしておく。
【0012】
次に、メインマイコンはサブマイコン対して、必要分の制御プログラム及び制御データを、バージョン情報を付して送信する。サブマイコンはこれを受信して、自身のメモリ部に記憶する。
【0013】
以上の説明のように、書き込み装置からメインマイコンへの送信と、メインマイコンからサブマイコンへの送信との2動作で、制御プログラム及び制御データの更新が完了する。この2番目の動作は、電子制御装置が自動で行うため、メインマイコンとサブマイコンの2つの制御プログラムのバージョンは必ず一致するようになり、信頼性は格段に高まる。また、従来と比較した場合に、サブマイコンと書き込み装置とを接続する必要がなくなるため、装置の小形化・低コスト化に寄与できる。
【0014】
なお、前記の外来受信部は受信専用である必要はなく、送信機能を備えてもよい。例えば、書き込み装置の代わりにモニタ装置を接続し、電子制御装置側からデータを送信し、動作状況をモニタすることもできる。
【0015】
前記メインマイクロコンピュータは、予め定められた書き換え条件が成立したときに一括受信する前記制御プログラム及び前記制御データの全部を前記メモリ部に記憶し、バージョン情報を更新することが好ましい。また、前記書き換え条件は、前記外来受信部への前記書き込み装置の接続、該書き込み装置が送信する書き込み要求信号、該書き込み装置が送信するセキュリティコード、の3つが全て成立する条件であってもよい。
【0016】
制御プログラムの更新を確実に行い、誤用・悪用を防止するために、書き換え条件を設定することが好ましい。上記の3つの書き換え条件は一例であり、書き込み装置が正規の特定の装置であり、かつ書き換えの準備が整って要求信号が送出されたときにのみ、メインマイコンが書き換えを許容するようになっている。
【0017】
前記メインマイクロコンピュータの起動時に、前記サブマイクロコンピュータから前記バージョン情報を収集して自己の該バージョン情報と比較し、一致しているときには前記制御の実行に移行し、一致していないときには該サブマイクロコンピュータに対して前記必要分の該制御プログラム及び該制御データを送信した後リセットを行いさらに再度該バージョン情報を収集し比較するバージョン確認手段を備えるようにしてもよい。
【0018】
メインマイコンとサブマイコンとの制御プログラムのバージョンの一致を確かなものとするため、電源投入時に動作する上述のバージョン確認手段を設けてもよい。バージョン確認手段は、メインマイコンの制御プログラムの一部で実現することができる。まず、電子制御装置の電源を統一して、メインマイコン起動時にサブマイコンも一緒に起動するようしておく。そして、起動時にメインマイコンがサブマイコンからバージョン情報を収集して、自己のバージョン情報と比較するようにしておく。その結果が一致していれば問題点は生じていないので、通常の制御の実行に移行することができる。ところが、一致していないときには何らかの不具合が生じたと想定される。したがって、この対策としてサブマイコンに対して必要分の制御プログラム及び制御データを送信して、サブマイコンのメモリ部を更新すればよい。しかるのち、サブマイコンをリセットし再度バージョン情報を収集し一致を確認すれば、さらに信頼性は向上する。
【0019】
なお、この起動時の処理は、メインマイコンからサブマイコンへ必要分の制御プログラム及び制御データを送信する動作に、共通に用いてもよい。
【0020】
前記メインマイクロコンピュータは前記バージョン更新の動作を前記サブマイクロコンピュータに通達し、該サブマイクロコンピュータは該メインマイクロコンピュータの制御状況を監視する異常監視機能を一時中断することが好ましい。
【0021】
電子制御装置では、サブマイコンに異常監視機能をもたせ、メインマイコンの制御状況を監視するように構成することもある。この態様では、メインマイコンのバージョン更新の動作中は通常の制御が行えないため、異常判定されるおそれが生じる。したがって、この間だけ異常監視機能を一時中断することが好ましい。
【0022】
本発明の電子制御装置は特に用途は限定されないが、車両に搭載されて変速機を制御する用途に好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電子制御装置では、メインマイコンは自身及びサブマイコンの制御プログラム及び制御データの全部を外部の書き込み装置から一括受信して記憶し、必要分をサブマイコンに送信するようにした。このため、メインマイコンとサブマイコンの2つの制御プログラムのバージョンは必ず一致するようになり、信頼性が格段に高まった。また、従来と比較した場合に、サブマイコンと書き込み装置とを接続する必要がなくなるため、装置の小形化・低コスト化に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図4を参考にして説明する。図1は、本発明の実施例の電子制御装置を説明するブロック図である。実施例の電子制御装置1は車両変速機制御用であり、メインマイコン2、1つのサブマイコン3、及び電源回路4により構成されている。
【0025】
メインマイコン2は、メモリ部に相当するフラッシュメモリ21及びRAM22、通信部に相当するI/Oポート23、制御処理部に相当するCPU24、外来受信部25、これらを接続する内部配線26、で構成され、フラッシュメモリ21に記憶される制御プログラム27に基づいて動作するようになっている。メインマイコン2は、車両に搭載されている図略のセンサやアクチュエータからの入力信号にしたがい、変速機を制御するようになっている。なお、実施例において、制御データは制御プログラムの一部として扱い、詳細な説明は省略する。
【0026】
フラッシュメモリ21は、不揮発性でかつ電気的な書き換えができるメモリ装置であり、自身の制御プログラム27の他にサブマイコン3用の制御プログラム37及びバージョン情報28が記憶されている。さらに、フラッシュメモリ21には、特定の書き換え条件が成立したときに制御プログラム27、37、及びバージョン情報28を書き換える専用のブートプログラム29も記憶されている。RAM22は揮発性であり、動作中に一時記憶用として用いられる。I/Oポート23は、通信線231でサブマイコン3に接続され、車両用の一般的な通信手順で相互に送信及び受信ができるようになっている。CPU24は制御を司る本質部分であり、内部配線26を経緯して制御指令を発するとともに、データを転送している。また、CPU24の主機能である変速機の制御は、図略のインターフェイスを介して行われている。外来受信部25は、書き込み装置91を接続するコネクタ着脱部251をもち、外部から送信されたデータを受信する機能を有している。
【0027】
サブマイコン3は、フラッシュメモリ31及びRAM32、I/Oポート33、CPU34、これらを接続する内部配線36、で構成され、フラッシュメモリ31に記憶される制御プログラム37、あるいはブートプログラム39に基づいて動作するようになっている。なお、制御プログラム37にはバージョン情報38が付されている。サブマイコン3の各部位の構成は概ねメインマイコン2と同様であるが、制御プログラム37によって規定されるCPU34の機能は異なっている。すなわち、CPU34は、メインマイコン2の制御に矛盾を生じていないかを監視して異常の有無を判定する異常監視機能を主な役割としている。
【0028】
電源回路4は、メインマイコン2及びサブマイコン3に電源を供給するものである。 電源回路4の入力端子41はイグニッションスイッチ92を介して車載のバッテリ93の高圧端子に接続され、接地端子42はグランドされている。また、出力端子43と接地端子42が、メインマイコン2及びサブマイコン3に接続されている。電源回路4は、出力端子43に生起される電圧が規定値で安定するように回路構成されている。したがって、イグニッションスイッチ92が入れられたときのみ電源回路4が機能し、電子制御装置1として動作する。なお、イグニッションスイッチ92での起動の代わりにドアの開閉に反応するドアスイッチを用い、ドアの開閉に応じて電源を供給するなど、他のスイッチで電源が入るようにしても構わない。
【0029】
次に、図2を参考にして電子制御装置の1の制御プログラム27、37の書き換え(更新)方法について説明する。図2は制御処理装置1の動作、処理の概要を説明するフローチャートであり、T01〜T10は処理内容に付した番号である。
【0030】
まず、T01により、オペレータが書き換え条件を成立させる。次にT02で、メインマイコン2は、書き換え条件が成立したことを確認した後に書き込みモードに移行しブートプログラム29を起動して、制御プログラム27、37を受信する。もし、書き換え条件が成立しなければ、メインマイコン2は、書き換えを行わずに、現状の制御プログラム27に基づいて通常の変速機制御を行う。T03では、メインマイコン2は、フラッシュメモリ21内の制御プログラム27、37とバージョン情報28とが、書き換えられたことを確認する。
【0031】
次にT04で、イグニッションスイッチ92一旦切って再度入れることにより、電子制御装置1を再起動する。T05で、メインマイコン2は、I/Oポート23からサブマイコン3のバージョン情報38を収集する。T06で、メインマイコン2は、サブマイコン3のバージョン情報38を、自身のバージョン情報28と比較する。すると、サブマイコン3のバージョン情報38のほうが旧いことがわかるので、T07に移る。T07で、メインマイコン2は、フラッシュメモリ21内のサブマイコン37の新しい制御プログラム37と、新しいバージョン情報28とをI/Oポート23から送信する。これをサブマイコン3は受信して、フラッシュメモリ31内を書き換える。この時点で、サブマイコン3の制御プログラム37の書き換えが完了し、バージョン情報38も書き換えられる。
【0032】
T08では、メインマイコン2によりサブマイコン3がリセットされて再始動する。再度のT05で、メインマイコン2は、再度サブマイコン3のバージョン情報38を収集する。再度のT06では、両者のバージョン情報28、38は一致するため、T09に移る。T09では、書き込みモードが終了し、新しい制御プログラム27、37が起動して制御モードに移行する。そしてT10で、本来の変速機制御が行われる。
【0033】
次に、上述の手順及び動作、処理を、メインマイコン2側と、サブマイコン3側に分けて詳述する。図3は、メインマイコン2の動作、処理を詳細に説明するフローチャートであり、M01〜M18は処理内容に付した番号である。以下、順に説明する。
【0034】
M01でイグニッションスイッチ92が入れられると、電源回路4が機能して電源が供給され、メインマイコン2が動作を開始する。まず、M02で書き込み装置91が接続されているかをチェックし、次いでM03で書き込み装置91から書き込み要求信号が送信されているかをチェックし、最後にM04で書き込み装置91から送信されたセキュリティコードが正規であるかチェックする。上記3つの書き換え条件のうち1つでも成立しない場合は制御プログラム27の書き換えは行わず、M11の処理に移る。
【0035】
3つ書き換え条件が全て成立するとM05に移り、サブマイコン3に対し、制御プログラムの書き換えを行う旨を通達する。次いでM06で、ブートプログラムを起動し書き込みモードに移行する。M07で、書き込み装置91に対して書き込み許可信号を送信する。するとM08で、自身の新しい制御プログラム27と、サブマイコン37の新しい制御プログラム37と、新しいバージョン情報28とが、書き込み装置91から外来受信部25に送信されて、フラッシュメモリ21に記憶される。M09では、書き換えの完了を確認している。
【0036】
次に、書き込み装置91を取り外した後、M10でイグニッションスイッチ92を再度入れて、メインマイコン2を再度立ち上げる。すると、上述の書き換え条件は成立しておらずM11で、メインマイコン2では書き換えられた新しい制御プログラム27が起動する。そしてM12で、イニシャル処理としてサブマイコン3のバージョン情報38を収集する。次いでM13で、収集したサブマイコン3のバージョン情報38を、メインマイコン2自身のバージョン情報28と比較する。バージョン情報28、38が一致すればM14に移って本来の変速機制御を行い、一致しなければM15に移る。
【0037】
ここで、メインマイコン2の制御プログラム27を書き換えた直後は、サブマイコン3の制御プログラム37は旧バージョンであるためバージョン情報28、38は一致せず、メインマイコン2からサブマイコン3への書き換えを行うことになる。すなわちM15で、サブマイコン3に対して書き込み要求信号を送信し、次にリセット信号を送信する。M16でサブマイコン3からの書き込み許可信号を受信すると、M17ではサブマイコン3の必要分の制御プログラム37とバージョン情報28とを送信する。そして、M18でサブマイコン3をソフトウェアリセットする。
【0038】
次にM11に戻り、再度制御プログラム27が起動する。再度M12でサブマイコン3のバージョン情報38を収集すると、M13で今度はバージョン情報28、38が一致するためM14に移り、新しい制御プログラム27、37で変速機制御を行うことができる。
【0039】
図4は、サブマイコン3の動作、処理を詳細に説明するフローチャートであり、S01〜S13は処理内容に付した番号である。以下、順に説明する。
【0040】
S01でイグニッションスイッチ92が入れられると、電源回路4が機能して電源が供給され、サブマイコン3が動作を開始する。まず、S02でチェックサムの値が算出される。次にS03では、メインマイコン2のM12の要求に応じて、バージョン情報38及びチェックサムを返信する。しかるのちS04で、制御プログラム37を起動する。このときS05で、メインマイコン2からM05の書き込みの通達がある場合は、S06でメインマイコン2の異常監視を中断して停止する。通達がない場合は次にS07で、メインマイコン2からのM15の書き込み要求信号の有無をチェックする。そして、書き込み要求信号がなければ、S08で本来の制御であるメインマイコン2の異常監視を行う。
【0041】
書き込み要求信号がある場合は、続いて受信するリセット信号によりS09で再始動し、S10でブートプログラム39を起動し、書き込みモードに移行する。そしてS11で書き込み許可信号をメインマイコン2のM16の処理に向けて送信する。次いでS12で、メインマイコン2から制御プログラム37及びバージョン情報28を受信してフラッシュメモリ31に記憶し、S13で書き換え完了を確認する。
【0042】
新しい制御プログラム37に書き換えた後は、メインマイコン2のM18によるソフトウェアリセットにより、サブマイコン3は再度S02から動作し、S03、S04、S05、S07を経て、本来のS08の制御を行うことができる。
【0043】
以上の説明のように構成し、動作する実施例の電子制御装置1では、メインマイコン2起動時に、サブマイコン3のバージョン情報38を収集し自身のバージョン情報28と比較するようにしている。そして、バージョン情報28、38が一致しないとき、メインマイコン2内に記憶されたサブマイコン3の制御プログラム37を自動的に転送するようにしている。したがって、バージョンが不一致の状態で変速機の制御を行うことはなく、サブマイコン3がメインマイコン2の制御を誤って異常判定するおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例の電子制御装置を説明するブロック図である。
【図2】図1の電子制御装置の動作、処理の概要を説明するフローチャートである。
【図3】図1の電子制御装置のうち、メインマイコンの動作、処理を詳細に説明するフローチャートである。
【図4】図1の電子制御装置のうち、サブマイコンの動作、処理を詳細に説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1:電子制御装置
2:メインマイコン(メインマイクロコンピュータ)
21:フラッシュメモリ(メモリ部) 22:RAM
23:I/Oポート(通信部) 24:CPU 25:外来受信部
27:制御プログラム 28:バージョン情報
29:ブートプログラム
3:サブマイコン(サブマイクロコンピュータ)
31:フラッシュメモリ(メモリ部) 32:RAM
33:I/Oポート(通信部) 34:CPU
37:制御プログラム 38:バージョン情報
39:ブートプログラム
4:電源回路
41:入力端子 42:接地端子 43:出力端子
91:書き込み装置
92:イグニッションスイッチ
93:バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御プログラム及び制御データを記憶するとともに不揮発性でかつ電気的に書き換え可能なメモリ部と、送信及び受信を行う通信部と、記憶している該制御プログラムに基づいて制御を実行する制御処理部と、をそれぞれ備えるメインマイクロコンピュータと少なくとも1つのサブマイクロコンピュータとからなるとともに、協働して所定の制御機能を果たす電子制御装置であって、
該メインマイクロコンピュータは、該メインマイクロコンピュータ自身及び該サブマイクロコンピュータの該制御プログラム及び該制御データの全部を外部の書き込み装置から一括受信する外来受信部を備えるとともに、該メモリ部に該全部を記憶し、該通信部から該サブマイクロコンピュータに必要分の該制御プログラム及び該制御データを送信し、
該サブマイクロコンピュータは該通信部で該必要分の該制御プログラム及び該制御データを受信し、該メモリ部に該必要分を記憶する、
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記メインマイクロコンピュータは、予め定められた書き換え条件が成立したときに一括受信する前記制御プログラム及び前記制御データの全部を前記メモリ部に記憶し、バージョン情報を更新する請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記書き換え条件は、前記外来受信部への前記書き込み装置の接続、該書き込み装置が送信する書き込み要求信号、該書き込み装置が送信するセキュリティコード、の3つが全て成立する条件である請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記メインマイクロコンピュータの起動時に、前記サブマイクロコンピュータから前記バージョン情報を収集して自己の該バージョン情報と比較し、一致しているときには前記制御の実行に移行し、一致していないときには該サブマイクロコンピュータに対して前記必要分の該制御プログラム及び該制御データを送信した後リセットを行いさらに再度該バージョン情報を収集し比較するバージョン確認手段を備える請求項1〜3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記メインマイクロコンピュータは前記バージョン更新の動作を前記サブマイクロコンピュータに通達し、該サブマイクロコンピュータは該メインマイクロコンピュータの制御状況を監視する異常監視機能を一時中断する請求項1〜4に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−92621(P2007−92621A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282287(P2005−282287)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】