説明

電子回路モジュール部品

【課題】封止樹脂の表面が導電性を有する層で被覆された電子回路モジュール部品において、電子回路モジュール部品を加熱することにより電子回路モジュール部品の内部で発生した水蒸気等の気体を外部へ抜けやすくすること。
【解決手段】電子回路モジュール部品1は、電子部品2と、電子部品2がはんだ6によって実装された基板3と、電子部品2及び基板3を覆う封止樹脂4と、複数の空隙を有する導電材料であり、封止樹脂4の少なくとも一部を被覆し、かつ基板3のグランド8と電気的に接続された多孔質導電層5と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を覆った封止樹脂の表面に導電材料のシールド層が形成された電子回路モジュール部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路モジュール部品は、複数の電子部品、例えば、受動素子や能動素子、あるいはIC(Integrated Circuit)等を基板に実装して、1つ又は複数の機能を持ったひとまとまりの電子部品としたものである。例えば、特許文献1には、グランドパターンを有する回路基板と、この回路基板の上面に実装された電子部品からなる実装部品と、この実装部品を封止する無機質フィラーを含有するエポキシ樹脂からなる封止体と、この封止体の表面に形成した第1層としての無電解銅めっき層と、第2層としての電解銅めっき層と、第3層としての銅の酸化を防止する皮膜層からなるシールド層とからなり、このシールド層を前記グランドパターンに接地したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−109306号公報、[0012]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子回路モジュール部品は、封止樹脂で基板に実装された電子部品を覆うが、電子回路モジュール部品の製造工程や保管環境によっては、封止樹脂あるいは実装された基板及び電子モジュールの内部に水分が浸入することがある。この水分は、電子回路モジュール部品を電子機器に実装する際のリフローで加熱されることによって蒸発し、膨張する。特許文献1に記載された技術は、封止樹脂の全面に第1層、第2層及びシールド層が設けられている。このため、電子回路モジュール部品が電子機器の基板に実装されるとき、リフロー時に加熱されることによって発生する水蒸気等の気体は、封止樹脂から抜けにくくなる。その結果、封止樹脂にクラックが発生したり、電子回路モジュール部品の変形等が発生したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、封止樹脂の表面が導電性を有する層で被覆された電子回路モジュール部品において、電子回路モジュール部品を加熱することにより電子回路モジュール部品の内部で発生した水蒸気等の気体を外部へ抜けやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電子部品と、前記電子部品がはんだによって実装された基板と、前記電子部品及び前記基板を覆う封止樹脂と、複数の空隙を有する導電材料であり、前記封止樹脂の少なくとも一部を被覆し、かつ前記基板のグランドと電気的に接続された多孔質導電層と、を含むことを特徴とする電子回路モジュール部品である。
【0007】
この電子回路モジュール部品は、封止樹脂の表面の少なくとも一部に多孔質導電層を設け、これを電磁波のシールド層として用いる。このような構造により、電子回路モジュール部品を電子機器に実装する際のリフローにおいて、電子回路モジュール部品の内部で発生した水蒸気等の気体は、多孔質導電層の空隙を通って電子回路モジュール部品の外部へ速やかに放出される。このように、この電子回路モジュール部品は、電子機器に実装される際のリフローにおいて、加熱により内部で発生した水蒸気等の気体は外部へ抜けやすくなる。その結果、電子回路モジュール部品が電磁波のシールド層を封止樹脂の表面に有している場合でも、電子回路モジュール部品を実装する際の加熱による内部の圧力の上昇が抑制されるので、封止樹脂の割れ及び電子回路モジュール部品の変形、あるいは電子回路モジュール部品が備える電子部品を基板に接合しているはんだの移動が発生するおそれを低減できる。
【0008】
本発明の望ましい態様としては、前記多孔質導電層の厚みは、2μm以上20μm以下であることが好ましい。多孔質導電層の厚みがこのような範囲であれば、多孔質導電層が有する電磁波のシールド効果と多孔質導電層の信頼性とを両立させることができる。
【0009】
本発明の望ましい態様としては、前記多孔質導電層の空隙率は、10%以上80%以下であることが好ましい。多孔質導電層の空隙率がこのような範囲であれば、電子回路モジュール部品をリフローした際における封止樹脂のクラックを効果的に抑制でき、かつ多孔質導電層の比抵抗を小さくして電磁波のシールド効果を向上させることができる。
【0010】
本発明の望ましい態様としては、前記多孔質導電層は、Cuであることが好ましい。Cuは非磁性であるため、電界シールドに加え、磁気シールドも可能になる。
【0011】
本発明の望ましい態様としては、前記多孔質導電層は、複数の導電材料の層を有し、最外部に多孔質のNiの層を有することが好ましい。このように、最外部に耐食性の高いNiの層を設けることにより、最外層よりも内側(絶縁樹脂側)の多孔質導電層の酸化を抑制できるので、多孔質導電層の耐久性が向上する。
【0012】
本発明の望ましい態様としては、前記多孔質導電層は、前記封止樹脂と接する層がCuであることが好ましい。基板の側面にはグランドが現れるので、複数層の多孔質導電層のうち、基板の側面と接する層がグランドと電気的に接続される。また、基板の側面と接する層は、封止樹脂の表面と接する。グランドは一般にCuが用いられるので、封止樹脂の表面と接する層をグランドと同じ材料であるCuとすることで、両者を確実に電気的に接続できる。
【0013】
本発明の望ましい態様としては、前記多孔質導電層とは異なる金属層が前記封止樹脂の一部を被覆することが好ましい。このような金属層を有することにより、リフロー時における電気回路モジュール部品の反りを抑制できる。また、この金属層により、低周波数でのシールド性能を向上させることができる。
【0014】
本発明の望ましい態様としては、前記金属層は、前記封止樹脂の表面であって、前記基板と対向する位置に設けられることが好ましい。リフロー時における電気回路モジュール部品の反りは、電気回路モジュール部品が有する基板が反ることにより発生するが、基板と対向する位置に金属層を設ければ、リフロー時における電気回路モジュール部品の反りを効果的に抑制できる。
【0015】
本発明の望ましい態様としては、前記封止樹脂よりも空隙率が高く、かつ前記電子部品の少なくとも一部及び前記封止樹脂の少なくとも一部及び前記多孔質導電層の少なくとも一部と接する多孔質樹脂を有することが好ましい。このようにすれば、多孔質樹脂が気体の通り道となるとともに、多孔質導電層につながっているので、封止樹脂から発生した水蒸気及びフラックスの残渣から発生したガス等の気体は、多孔質樹脂の空隙を通って多孔質導電層へ導かれ、ここから電子回路モジュール部品の外部へ放出される。このため、この電子回路モジュール部品は、電子機器に実装される際のリフローにおいて、内部に発生した気体を速やかに外部へ放出できるので、封止樹脂のクラックやはんだの移動を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、封止樹脂の表面が導電性を有する層で被覆された電子回路モジュール部品において、電子回路モジュール部品を加熱することにより電子回路モジュール部品の内部で発生した水蒸気等の気体を外部へ抜けやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施形態1に係る電子回路モジュール部品の断面図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る電子回路モジュール部品が有する多孔質導電層の模式図である。
【図3】図3は、実施形態1の変形例に係る電子回路モジュール部品が有する多孔質導電層の模式図である。
【図4】図4は、多孔質導電層の厚みと電磁波のシールド効果の関係を示す図である。
【図5】図5は、多孔質導電層の空隙率と樹脂クラック及び比抵抗の関係を示す図である。
【図6】図6は、実施形態1に係る電子回路モジュール部品の製造方法を示すフローチャートである。
【図7−1】図7−1は、本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図7−2】図7−2は、本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図7−3】図7−3は、本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図7−4】図7−4は、本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図7−5】図7−5は、本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図8】図8は、多孔質導電層を形成する手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の断面図である。
【図10】図10は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品が有する多孔質樹脂の模式図である。
【図11】図11は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法を示すフローチャートである。
【図12−1】図12−1は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図12−2】図12−2は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図12−3】図12−3は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図12−4】図12−4は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図12−5】図12−5は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図12−6】図12−6は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図13】図13は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の断面図である。
【図14】図14は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の製造方法を示すフローチャートである。
【図15−1】図15−1は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図15−2】図15−2は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図15−3】図15−3は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図15−4】図15−4は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図15−5】図15−5は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図15−6】図15−6は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【図15−7】図15−7は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。また、下記の実施形態で開示された構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電子回路モジュール部品の断面図である。図1に示すように、電子回路モジュール部品1は、複数の電子部品2を基板3に実装して、1つ又は複数の機能を持ったひとまとまりの電子部品としたものである。電子部品2は、基板3の表面に実装されたり、基板3の内部に実装されたりする。本実施形態において、電子回路モジュール部品1が有する電子部品2としては、例えば、コイル、コンデンサ及び抵抗等の受動素子、並びにダイオード及びトランジスタ等の能動素子がある。電子部品2は、これらに限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、電子回路モジュール部品1は、電子部品2と、基板3と、封止樹脂4と、多孔質導電層5とを含む。基板3は、電子部品2が実装されたものである。電子部品2は、はんだ6によって基板3、より具体的には基板3の実装面(電子部品2が実装される面)又は基板3の内部に実装される。樹脂基板を基板3に用いると、内部にIC等を実装しやすくなるので、好ましい。なお、本実施形態において、基板3は、樹脂基板であるが、本実施形態ではこれに限定されるものではない。例えば、基板3は、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics:低温同時焼成セラミック)基板であってもよい。
【0021】
基板3は、第1基板3Aと第2基板3Bとの間にグランド8を有している。グランド8は、例えば、Cu等で作製された電気の良導体である。グランド8は、電子部品2の端子電極と電気的に接続される、基板3の実装面に設けられた端子電極と、ビアホール等によって電気的に接続される。また、前記実装面にグランド端子を有する場合、グランド8は、そのグランド端子とビアホール等によって電気的に接続される。
【0022】
基板3は、前記実装面の反対側に、端子電極(モジュール端子電極)7を有する。モジュール端子電極7は、電子回路モジュール部品1が備える電子部品2の端子電極と電気的に接続される。また、前記実装面の反対側にグランド端子を有する場合、そのグランド端子とグランド8とはビアホール等によって電気的に接続される。基板3は、少なくとも表面に回路パターンを有しており、必要に応じて基板3の内部(例えば、第1基板3Aと第2基板3Bとの間)にも回路パターンを有している。
【0023】
封止樹脂4は、電子部品2及び基板3を覆う。より具体的には、基板3の実装面に実装された電子部品及び電子部品2が実装されていない部分における基板3の実装面を覆う。封止樹脂4は、電気絶縁性を有する絶縁樹脂であり、電子部品2を基板3上に封止する機能を有する。封止樹脂4は、例えば、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂であるが、これに限定されない)である。封止樹脂4は、強度を向上させるため、にフィラー(例えば、シリカやアルミナ)を添加して硬化させてもよい。
【0024】
多孔質導電層5は、複数の空隙を有する導電材料(導電性を有する材料であり、本実施形態では金属)であり、封止樹脂4の少なくとも一部を被覆し、かつ基板3のグランド8と電気的に接続している。グランド8は、基板3の側面3Sに現れるので、多孔質導電層5が基板3の側面3Sと接する側で多孔質導電層5と電気的に接続される。多孔質導電層5は、複数の空隙を気体が通過する。本実施形態において、多孔質導電層5は、無電解めっき及び電解めっきにより封止樹脂4の表面に形成されて、封止樹脂4の表面をすべて被覆する。しかし、多孔質導電層5は、封止樹脂4を被覆していない部分があってもよい。例えば、多孔質導電層5に開口部を設け、封止樹脂4の一部を露出させてもよい。このように、多孔質導電層5は、封止樹脂4の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。この場合、多孔質導電層5は、電磁波シールドとしての効果を発揮できる程度には、封止樹脂4の表面を被覆している必要がある。多孔質導電層5を形成する方法については後述する。
【0025】
電子回路モジュール部品1は、電子部品2が封止樹脂4で被覆されて封止されるので、電子部品2を基板3へ接合するはんだ6も封止樹脂4で被覆され、封止される。電子回路モジュール部品1の製造工程において、封止樹脂4又は基板3に水分が含まれることがある。また、電子回路モジュール部品1の保管環境によっても、同様の事態が起こり得る。この水分は、電子回路モジュール部品1が電子機器の基板に実装(二次実装)される際のリフローによって蒸発し、水蒸気となって膨張する。また、前記二次実装時のリフローによって、再溶融したはんだ6又はフラックスの残渣からガスが発生することもある。そして、前記水蒸気あるいは前記ガス等の気体に起因した力により、封止樹脂4にクラックが発生したり、封止樹脂4で封止されているはんだ6が基板3の部品実装面と封止樹脂4との隙間を移動したり、飛散したりしてしまうことがある。
【0026】
本実施形態においては、封止樹脂4の表面を多孔質導電層5で被覆している。このため、二次実装時において電子回路モジュール部品1をリフローすると、封止樹脂4中の水分が蒸発することにより発生した水蒸気、あるいははんだ6又はフラックスの残渣から発生したガス等の気体は、多孔質導電層5の空隙を通過して封止樹脂4の外部へ逃げやすくなる。その結果、前記気体に起因した力が抑制されるので、封止樹脂4のクラック及びはんだ6の移動あるいは飛散が抑制される。
【0027】
多孔質導電層5は、封止樹脂4の表面を被覆することにより、封止樹脂4に封入された電子部品2を、電子回路モジュール部品1の外部からの電磁波ノイズ等から遮蔽したり、電子部品2から放射される電磁波ノイズ等を遮蔽したりする。このように、多孔質導電層5は、電磁波シールドとして機能する。多孔質導電層5を電磁波シールドとして用いると、板金部材を電磁波シールドとした場合と比較して厚みを小さくできるので、電子回路モジュール部品1の外形をより小さくできる。
【0028】
図2は、実施形態1に係る電子回路モジュール部品が有する多孔質導電層の模式図である。図3は、実施形態1の変形例に係る電子回路モジュール部品が有する多孔質導電層の模式図である。図2に示すように、多孔質導電層5は、第1多孔質導電層5Aと第2多孔質導電層5Bとを有している。また、図3に示す多孔質導電層5aは、第1多孔質導電層5Aと第2多孔質導電層5Bと第3多孔質導電層5Cとを有している。このように、本実施形態において、多孔質導電層5、5aは、複数の導電材料(本実施形態では金属)の層を有している。多孔質導電層5、5aが複数の導電材料の層を有する場合、それぞれの材料は同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。なお、多孔質導電層5は、単一の層であってもよい。多孔質導電層5としては、例えば、Cu、Ni、Au、Pd、Ag、Pt、Co、Fe、及びこれらの元素を1種類以上含んだ合金を用いることができる。
【0029】
図4は、多孔質導電層の厚みと電磁波のシールド効果の関係を示す図である。図4のAは、導電層自体を有さない場合、Bは、厚みが2μmの銅箔(空隙を有さない)を導電層として単独で有する場合、Cは、厚みが5μmの銅箔を導電層として単独で有する場合である。Dは、厚みが2μmの多孔質導電層5を単独で有する場合、Eは、厚みが5μmの多孔質導電層5を単独で有する場合、Fは、厚みが20μmの多孔質導電層5を単独で有する場合である。Gは、厚みが10μmの銅箔の表面に、厚みが10μmの多孔質導電層5を設けた場合である。図4の結果は、電子回路モジュール部品1から放射された電磁波を周波数毎に測定し、その結果を出力(電磁波出力)として表したものである。電磁波出力が小さくなるほど、導電層又は多孔質導電層5が電磁波をシールドする効果は高くなる。なお、前記電磁波は、次のようにして評価した。まず、伝送線路を有する任意形状(10mm×10mm×1mm)の電子回路モジュール部品1に、シグナル・ジェネレータ(アジレント・テクノロジー製E8663D PSG RF アナログ信号発生器)から出力+20dBmの信号を周波数別に入力した。そして、評価対象の電子回路モジュール部品1から高さ3mm離れたところにスペクトラムアナライザ(アジレント・テクノロジー製E4440APSA スペクトラムアナライザ)に接続された磁界プローブを設置し、この磁界プローブを用いて電子回路モジュール部品1の近傍における磁界を測定し、得られた磁界強度からシールド効果を評価した。
【0030】
電子回路モジュール部品1の封止樹脂4に導電層を設けない場合(図4のA)と比較して、厚みが2μmの多孔質導電層5を単独で設けた場合(図4のD)は、電磁波のシールド効果が得られている。そして、多孔質導電層5の厚みが5μm以上の場合(図4のE、F)及び銅箔と多孔質導電層5とを組み合わせた場合(図4のG)は、厚みが2μm以上の銅箔(図4のB、C)を封止樹脂4の表面に設けた場合と同等の電磁波のシールド効果が得られる。
【0031】
多孔質導電層5の厚みが20μmを超えると、多孔質導電層5の内部応力により、二次実装時におけるリフローでの熱衝撃によって、多孔質導電層5の剥離が発生する場合があった。多孔質導電層5の厚みが20μm以下であると多孔質導電層5の応力が緩和されやすくなり、多孔質導電層5の厚みが13μm以下であると多孔質導電層5の応力緩和効果はより顕著になる。その結果、リフロー時における多孔質導電層5の剥離が抑制された。
【0032】
多孔質導電層5のピール強度は、多孔質導電層5の厚みが増加するにしたがって増加する。そして、前記厚みがさらに増加すると、ピール強度は極大値をとり、その後、前記厚みの増加にしたがってピール強度は低下する。ここで、ピール強度とは、単位幅あたりにおける多孔質導電層5が剥離するときの強度であり、単位はkg/mmである。本実施形態においては、多孔質導電層5の厚みが5μmのときにピール強度は0.25kg/mm、10μmのときに0.3kg/mm、13μmのときに0.25kg/mmであった。
【0033】
これらの結果から、多孔質導電層5の厚みは、2μm以上20μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上13μm以下であり、さらには10μmが好ましい。多孔質導電層5の厚みがこのような範囲であれば、電磁波のシールド効果と多孔質導電層5の信頼性とを両立させることができる。
【0034】
図5は、多孔質導電層の空隙率と樹脂クラック及び比抵抗の関係を示す図である。多孔質導電層5の空隙率P(%)は、式(1)から求めた。式(1)中のAは、多孔質導電層5の任意の断面中の所定領域に存在する空隙の面積である。Bは、多孔質導電層5の連続した部分の面積である。空隙率Pを求めるにあたって、完成した電子回路モジュール部品1を適切な位置で切断し、多孔質導電層5の切断面をイオンミリングすることで試料を作製した。そして、前記切断面の任意の3箇所を走査型電子顕微鏡(SEM、倍率は3000倍)で写真撮影して得られた画像の所定領域を規定し、当該所定領域に存在する空隙の面積A及び連続した部分の面積Bを求めた。
P=B/(A+B)×100・・・(1)
【0035】
完成した電子回路モジュール部品1を260℃でリフローした後、電子回路モジュール部品1の封止樹脂4のクラックを評価した。この評価においては、実体顕微鏡を使用し、リフロー後における封止樹脂4の外観に存在するクラックを観察した。また、リフロー後における封止樹脂4から得たサンプルをエポキシ樹脂に埋め込み、断面を研磨した後に金属顕微鏡でクラックの有無を観察した。これらの観察結果から、封止樹脂4のクラックを評価した。そして、評価に供した電子回路モジュール部品1中にクラックが発生したものの割合(%)を樹脂クラック率とした。
【0036】
多孔質導電層5の比抵抗は、直流四探針法で計測した。計測器は、共和理研製K−705RSを用いた。本実施形態において、樹脂クラック率は30%以下を許容とし、比抵抗は6×10−7Ω・m以下を許容とした。評価に供した電子回路モジュール部品1は、空隙を有する多孔質樹脂を、封止樹脂4と電子部品2及び基板3の実装面との間に配置するとともに、前記多孔質樹脂を多孔質導電層5に接するようにしたものである。この構造については、実施形態2で詳述する。
【0037】
図5中のAが樹脂クラックの結果を示し、Bが比抵抗の結果を示す。これらの結果から、多孔質導電層5の空隙率Pは、10%以上80%以下が好ましく、より好ましくは20%以上60%以下である。多孔質導電層5の空隙率Pがこのような範囲であれば、電子回路モジュール部品1をリフローした際の樹脂クラックを効果的に抑制でき、かつ多孔質導電層5の比抵抗を小さくして電磁波のシールド効果を向上させることができる。次に、電子回路モジュール部品1を製造する方法について説明する。
【0038】
図6は、実施形態1に係る電子回路モジュール部品の製造方法を示すフローチャートである。図7−1〜図7−5は、本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。ステップS11において、図7−1に示す基板3に電子部品2を実装する。基板3の内部には、グランド8が設けられる。電子部品2を実装した状態の基板3を、モジュール素体1Aという。
【0039】
モジュール素体1Aは、例えば、次のような手順で作製される。
(1)基板3の実装面に設けられた端子にはんだ6を含むはんだペーストを印刷する。
(2)実装装置(マウンタ)を用いて電子部品2を基板3に搭載する。
(3)電子部品2が搭載された基板3をリフロー炉に入れて前記はんだペーストを加熱する。すると、前記はんだペーストのはんだ6が溶融し、その後硬化するので、電子部品2の端子電極と基板3の端子電極とが接合される。
(4)電子部品2及び基板3の表面に付着したフラックスを洗浄する。
【0040】
モジュール素体1Aが完成したら、ステップS12へ進む。ステップS12においては、図7−2に示すように、封止樹脂4で電子部品2及び基板3を覆う。封止樹脂4は、例えば、エポキシ樹脂である。本実施形態では、エポキシ樹脂のシートを電子部品2及び基板3の表面に載置して、これを熱プレスすることにより、封止樹脂4を硬化させる。このような方法で、封止樹脂4で電子部品2及び基板3の表面を覆う。その結果、電子部品2は、封止樹脂4によって封止される。この状態の基板3を、封止体1Bという。
【0041】
次に、ステップS13に進み、図7−3に示すように、電子回路モジュール部品1の単位(以下、モジュール部品単位という)で、封止体1Bの基板3が途中まで切断される(ハーフダイシング)。図7−3のC1は、切断ラインを示す。隣接する切断ラインC1、C1で区画される部分がモジュール部品単位である。ハーフダイシングにおいては、封止樹脂4及び基板3内のグランド8が切断される。このため、基板3の切断面からは、グランド8が現れる。ステップS13が終了したら、ステップS14に進む。ステップS14において、図7−4に示すように、ハーフダイシング後の封止体1Bの表面に多孔質導電層5が形成される。多孔質導電層5が形成された状態を、モジュール集合体1Cという。次に、多孔質導電層5を形成する手順を説明する。
【0042】
図8は、多孔質導電層を形成する手順を示すフローチャートである。多孔質導電層5は、図2に示すように、第1多孔質導電層5Aと第2多孔質導電層5Bとを有しており、両者は同種の材料である。本実施形態において、第1多孔質導電層5A及び第2多孔質導電層5Bは、いずれも銅(Cu)である。多孔質導電層5を形成するにあたって、まず、ステップS141において、無電解めっきによって封止樹脂4の表面に第1多孔質導電層5Aが形成される。第1多孔質導電層5Aの厚みは、0.05μmから0.5μmである。この範囲であれば、無電解めっきによって形成された第1多孔質導電層5Aは、多孔質の構造となる。無電解めっきによって形成された第1多孔質導電層5Aは、空隙を有する多孔質の金属膜(銅の膜)である。第1多孔質導電層5Aを形成する方法は、無電解めっきに限定されるものではない。例えば、スパッタリング等によって第1多孔質導電層5Aを形成してもよい。
【0043】
第1多孔質導電層5Aが形成されたら、ステップS142へ進む。ステップS142において、電解めっきにより第1多孔質導電層5Aの表面に第2多孔質導電層5Bが形成される。電解めっきによって多孔質の金属膜を形成する方法は、めっきの成長段階から金属膜を多孔質状に形成する方法、及び予めめっき材料に添加物を加えておき、めっき後に酸又はアルカリ処理によって添加物を除去して空隙を形成する方法がある。本実施形態では前者の方法を用いた。
【0044】
本実施形態においては、めっき液として、ピロリン酸銅90g/L(リットル)、ピロリン酸カリウム350g/L(リットル)、28%アンモニア水3g/L(リットル)、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド0.03mol/L(リットル)を用いた。このようなめっき液を用いて電解めっきを施すことにより、第1多孔質導電層5Aの表面には空隙を有する第2多孔質導電層5Bが形成される。このようにして、第1多孔質導電層5A及び第2多孔質導電層5Bを有する多孔質導電層5が封止樹脂4の表面に形成される。多孔質導電層5は、図7−4に示すように、基板3の側面3Sに現れているグランド8と電気的に接続される。第1多孔質導電層5Aの厚みと第2多孔質導電層5Bの厚みとの和が多孔質導電層5の厚みである。
【0045】
多孔質導電層5の厚みは、電子回路モジュール部品1の仕様(周波数帯)によって決定する。例えば、電子回路モジュール部品1が2GHzの周波数帯を使用する場合、多孔質導電層5の厚みは10μmとする。この場合、第1多孔質導電層5Aの厚みと第2多孔質導電層5Bの厚みとの和が10μmになるように、電解めっきの条件(主として時間)が設定される。
【0046】
第2多孔質導電層5Bの表面に、防錆層として、例えばニッケル(Ni)を設けてもよい。この場合、防錆層も空隙を有する多孔質の膜である。また、防錆層は、図3に示す多孔質導電層5aの第3多孔質導電層5Cに相当する。防錆層を設けることにより、第1多孔質導電層5A及び第2多孔質導電層5Bの酸化を抑制できるので、多孔質導電層5の耐久性が向上する。また、本実施形態では、第1多孔質導電層5Aと第2多孔質導電層5Bとを同種の材料としたが、両者は異なる材料でもよい。例えば、第1多孔質導電層5Aを銅とし、第2多孔質導電層5Bをニッケルとしてもよい。第2多孔質導電層5Bをニッケルとすることで、銅の第1多孔質導電層5Aの酸化を抑制できるので、多孔質導電層5の耐久性が向上する。また、ニッケルは銅よりも剛性が高いため、多孔質導電層5を強固なものとして多孔質導電層5の耐久性を向上させることができる。
【0047】
封止樹脂4の表面に多孔質導電層5が形成されたら、図6に示すステップS15へ進む。ステップS15において、モジュール集合体1Cは、切断ラインC1で基板3まで完全に切断される。その結果、図7−5に示す電子回路モジュール部品1が得られる。電子回路モジュール部品1は、ステップS16で検査されて、検査に合格したものが製品となる。上述した手順が、本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法の手順である。このような手順によって、図7−5に示すような、多孔質導電層5が封止樹脂4の表面の少なくとも一部を被覆した電子回路モジュール部品1を製造できる。
【0048】
以上、電子回路モジュール部品1は、封止樹脂4の表面の少なくとも一部が多孔質導電層5で被覆されている。このような構造により、封止樹脂4の表面と多孔質導電層5の外部とは、気体が通過できる。このため、リフロー時の加熱によって電子回路モジュール部品1の内部で発生した水蒸気等の気体は、多孔質導電層5の空隙を通って電子回路モジュール部品1の外部へ速やかに放出される。このように、この電子回路モジュール部品1は、二次実装でのリフロー工程において、加熱により内部で発生した水蒸気等の気体が外部へ抜けやすくなる。このため、電子回路モジュール部品1が封止樹脂4の表面に電磁波シールドを有している場合でも、二次実装時の加熱による部品内部の圧力の上昇が抑制される。その結果、電子回路モジュール部品1は、封止樹脂4のクラック発生及びリフロー時におけるはんだ6の移動を抑制できるとともに、自身が変形するおそれを低減できる。
【0049】
特に、電子部品2の寸法が大きくなると(2012M以上)、基板3と電子部品2との熱膨張が大きくなる結果、封止樹脂4に無理な力が作用する。この状態で、電子回路モジュール部品1の内部の気体に起因した力が封止樹脂4に作用すると、封止樹脂4のクラック等が発生しやすくなる。電子回路モジュール部品1は、このような電子部品2を用いた場合でも、リフロー時に発生した気体を電子回路モジュール部品1の外部へ速やかに放出して前記気体に起因する力を緩和できるので、封止樹脂4のクラックを抑制できる。その結果、電子回路モジュール部品1は、電子部品2の寸法によらず、不良率を低下させることができる。本実施形態で開示した構成は、以下においても適宜組み合わせることが可能である。
【0050】
(実施形態2)
実施形態2に係る電子回路モジュール部品は、実施形態1に係る電子回路モジュール部品に対して、さらに、封止樹脂よりも空隙率が高く、かつ電子部品の少なくとも一部及び多孔質導電層の少なくとも一部と接する多孔質樹脂を加えた点に特徴がある。
【0051】
図9は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の断面図である。図10は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品が有する多孔質樹脂の模式図である。電子回路モジュール部品1aは、基板3に実装された電子部品2及び基板3の部品実装面が多孔質樹脂9で覆われる。多孔質樹脂9は、多孔質導電層5と接している。そして、多孔質樹脂9は、封止樹脂4で覆われる。このように、電子回路モジュール部品1aは、多孔質樹脂9を介して封止樹脂4が複数の電子部品2及び部品実装面を覆うことで、基板3及び複数の電子部品2が一体化されるとともに、強度が確保される。
【0052】
多孔質樹脂9は、樹脂9Pに複数の空隙9Hが含まれた構造である。多孔質樹脂9は、電気絶縁性を有する絶縁樹脂である。多孔質樹脂9は、例えば、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂であるが、これに限定されない)にフィラー(例えば、シリカやアルミナ)を添加して硬化させることにより、フィラー同士の隙間の一部に前記熱硬化性樹脂が配合されて図10に示す空隙9Hが形成される。
【0053】
封止樹脂4は、多孔質樹脂9の表面を覆い、かつ多孔質樹脂9よりも空隙率(樹脂空隙率)が低い。前記樹脂空隙率は、単位体積あたりに存在する空隙の体積の割合(体積%)である。封止樹脂4の空隙率を多孔質樹脂9よりも低くすることにより、封止樹脂4は多孔質樹脂9よりも強固になる。このような封止樹脂4によって電子部品2を多孔質樹脂9とともに基板3へ封止することにより、電子回路モジュール部品1aの強度を確保する。なお、封止樹脂4の空隙率は0体積%であってもよい。
【0054】
電子回路モジュール部品1aは、多孔質樹脂9が複数の電子部品2及び部品実装面を覆うとともに、多孔質樹脂9は、多孔質導電層5と接している。このような構造により、二次実装時において電子回路モジュール部品1aをリフローすると、封止樹脂4中の水分が蒸発することにより発生した水蒸気、あるいははんだ6又はフラックスの残渣から発生したガス等の気体は、多孔質樹脂9の空隙を通過して、多孔質導電層5まで到達する。そして、前記気体は、多孔質導電層5の空隙を通過して封止樹脂4の外部へ放出される。前記水蒸気は主として封止樹脂4から、前記ガスは主として電子部品2の近傍から発生する。電子回路モジュール部品1aが有する多孔質樹脂9は、封止樹脂4及び電子部品2の少なくとも一部と接し、かつ多孔質導電層5と接しているので、前記気体は、多孔質樹脂9の空隙及び多孔質導電層5の空隙を通って、速やかに電子回路モジュール部品1aの外部へ放出される。その結果、前記気体に起因した力が抑制されるので、封止樹脂4のクラック及びはんだ6の移動あるいは飛散が抑制され、また電子回路モジュール部品1aの膨張も抑制される。次に、多孔質樹脂9の評価例を説明する。
【0055】
次の評価においては、完成した電子回路モジュール部品1aを評価体とし、この評価体を適切な位置で切断して、切断面をイオンミリングすることで樹脂ダレのない切断面を作製した。そして、前記切断面の任意の3箇所を走査型電子顕微鏡(SEM、倍率は3000倍)で写真撮影して得られた画像から、空隙9Hの平均直径が求められた。このとき、前記写真撮影によって得られた画像は、空隙のみが黒くなるように二値化処理された。空隙9Hの分布は、前記画像から求めたD50と累積度数直径の10%に該当するD10と90%に該当するD90とから規定した。また、前記切断面の任意の3箇所を走査型電子顕微鏡で写真撮影して得られた画像から、空隙率が算出された。空隙率は、上述した式(1)を用いて算出した。
【0056】
(第1評価例)
平均直径が3μmの球状フィラーを用いて、空隙率の異なる多孔質樹脂9を有する評価体(電子回路モジュール部品1a)をそれぞれ作製した。評価結果を表1に示す。空隙率は、表1に示すように変化させた。なお、空隙の平均直径は0.7μmである。空隙の平均直径はD50の値である。平均直径(D50)は複数の空隙9Hの直径を測定した場合において、積算値50%の直径であり(メジアン径)、D90は積算値90%の直径でありD10は積算値10%の直径である。
【0057】
第1評価例では、はんだ6の移動及び多孔質樹脂9のクラックを評価した。多孔質樹脂9のクラックは、透過X線により観察した。表1から分かるように、空隙率が0.1%以上であれば、はんだ6の移動を十分に抑制できる。また、空隙率が40%未満であれば、多孔質樹脂9のクラックの発生を十分に抑制できる。このことから、多孔質樹脂9の空隙率は、0.1%以上40未満%が好ましく、より好ましくは、0.1%以上30%以下である。
【0058】
【表1】

【0059】
(第2評価例)
平均直径が1μm、3μm、5μm、7μm、30μmのフィラーから1つ、又は少なくとも二つの配合比率を変更することにより、空隙9Hの平均直径が異なる多孔質樹脂9を有する評価体(電子回路モジュール部品1a)をそれぞれ作製した。空隙の平均直径は、表2に示すように変化させた。空隙9Hの平均直径はD50の値である。評価結果を表2に示す。表2から分かるように、空隙の平均直径が0.1μm以上20μm未満、好ましくは0.1μm以上10μmであれば、はんだ6の移動を十分に抑制できる。
【0060】
【表2】

【0061】
(第3評価例)
平均直径が1μm、3μm、5μm、7μm、30μmのフィラーから1つ、又は少なくとも二つの配合比率を変更することにより、フィラーの平均直径が異なる多孔質樹脂9を有する評価体(電子回路モジュール部品1a)をそれぞれ作製した。フィラーの平均直径は、表3に示すように変化させた。フィラーの平均直径はD50の値である。評価結果を表3に示す。表3から分かるように、フィラーの平均直径(D50)が1μm以上であれば、はんだ6の移動を十分に抑制できる。また、フィラーの平均直径(D50)が15μm未満であれば、多孔質樹脂9のクラックの発生を十分に抑制できる。このことから、フィラーの平均直径(D50)は、1μm以上15μm未満が好ましく、より好ましくは1μm以上10μm以下である。このような範囲であれば、多孔質樹脂9の厚みを過度に増加させることはないので、電子回路モジュール部品1aの高さを抑制することができる。空隙9Hの分布は、D50/(D90−D10)を0.1以上0.8以下とすることが好ましい。このようにすれば、多孔質樹脂9内でのフィラーの分散や空隙9Hの分散が改善される。次に、電子回路モジュール部品1aを製造する方法について説明する。
【0062】
【表3】

【0063】
図11は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法を示すフローチャートである。図12−1〜図12−6は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。ステップS21において、図12−1に示す基板3に電子部品2を実装し、モジュール素体1Aaを作製する。モジュール素体1Aaを作製する手順は実施形態1に係る電子回路モジュール部品の製造方法と同様である。
【0064】
モジュール素体1Aaが完成したら、ステップS22へ進む。ステップS22においては、図12−2に示すように、モジュール素体1Aaの電子部品2の少なくとも一部と接するように、基板3の実装面に多孔質樹脂9が設けられる。この例では、多孔質樹脂9で電子部品2及び基板3を覆う。多孔質樹脂9は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂であるが、これに限定されない)にフィラー(例えば、シリカやアルミナ)を添加し、これを硬化させたものである。多孔質樹脂9は、例えば、熱硬化性樹脂の溶液にフィラーを添加して作製した多孔質樹脂9の溶液を、ディップ法、ノズルコート法、カーテンコート法又はスピンコート法等によってモジュール素体1Aaの表面に塗布し、熱硬化させる。このようにすることで、フィラー同士の隙間の一部に樹脂が配合されて空隙9Hが形成された多孔質樹脂9で電子部品2及び基板3が被覆される。
【0065】
多孔質樹脂9に含まれるフィラーは、球形状に近いものが好ましい。このようなフィラーを用いれば、多孔質樹脂9に含まれる空隙9Hの寸法及び形状及び分布を制御しやすいからである。しかし、フィラーの形状は、このようなものに限定されるものではない。フィラーの種類は、電子回路モジュール部品1aが有する電子部品2及び回路の電気的特性に影響を及ばさないものであれば特に限定されるものではないが、多孔質樹脂9となる熱硬化性樹脂に対して分散性がよいものであることが好ましい。フィラーは、小さい平均直径(D50)と大きい平均直径(D50)とを組み合わせてもよい。また、フィラーの平均直径(D50)は、10μm以上50μm以下であることが好ましい。このように、平均直径の異なるフィラーを混合することによって、フィラー同士のパッキング状態の調整が可能になる。そして、適切な樹脂配合により、所望の空隙直径、空隙分布を実現しやすくなる。平均直径の異なるフィラーを用いる場合、すべて同じ種類のフィラーを用いてもよく、異なる種類(組成)のフィラーを用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0066】
モジュール素体1Aaの表面に多孔質樹脂9の溶液が塗布されたら、所定の時間加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる。このようにすることで、モジュール素体1Aaの表面に多孔質樹脂9が設けられ、電子部品2の少なくとも一部と多孔質樹脂9とが接する。次に、ステップS23に進み、図12−3に示すように、多孔質樹脂9を封止樹脂4で覆うことにより、封止体1Baを得る。この手順は、実施形態1に係る電子回路モジュール部品の製造方法におけるステップS12と同様である。
【0067】
次に、ステップS24に進み、図12−4に示すように、モジュール部品単位で、封止体1Baの基板3が途中まで切断される(ハーフダイシング)。ハーフダイシングにおいては、封止樹脂4及び多孔質樹脂9及び基板3内のグランド8が切断される。ステップS24が終了したら、ステップS25に進み、図12−5に示すように、ハーフダイシング後の封止体1Bの表面に多孔質導電層5が形成される。多孔質導電層5が形成された状態を、モジュール集合体1Caという。多孔質導電層5を形成する手順は実施形態1に係る電子回路モジュール部品の製造方法と同様である。
【0068】
封止樹脂4の表面に多孔質導電層5が形成されたら、図11に示すステップS26へ進む。ステップS26において、モジュール集合体1Caは、切断ラインC1で基板3まで完全に切断される。その結果、図12−6に示す電子回路モジュール部品1aが得られる。電子回路モジュール部品1aは、ステップS27で検査されて、検査に合格したものが製品となる。上述した手順が、本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法の手順である。このような手順によって、図12−6に示すような、多孔質導電層5が封止樹脂4の表面の少なくとも一部を被覆し、かつ電子部品2及び封止樹脂4及び多孔質導電層5の少なくとも一部と接する多孔質樹脂9を有する電子回路モジュール部品1aを製造できる。
【0069】
以上、電子回路モジュール部品1aは、上述した電子回路モジュール部品1(図1、図7−5)が奏する作用、効果に加え、多孔質樹脂9により、電子回路モジュール部品1aが二次実装時にリフローされたときには、封止樹脂4の内部の気体を速やかに多孔質導電層5まで導くことができる。このため、電子回路モジュール部品1aは、二次実装のリフローでの加熱により、内部で発生した気体が外部へより早く抜ける。その結果、電子回路モジュール部品1aは、二次実装時の加熱による部品内部の圧力の上昇がより確実に抑制されるので、封止樹脂4のクラック発生及びリフロー時におけるはんだ6の移動をより効果的に抑制できるとともに、自身が変形するおそれをさらに低減できる。本実施形態で開示した構成は、以下においても適宜組み合わせることが可能である。
【0070】
(実施形態3)
実施形態に係る電子回路モジュール部品は、多孔質導電層とは異なる金属層が封止樹脂の一部を被覆する点に特徴がある。すなわち、多孔質導電層の一部と封止樹脂の一部との間に、金属層が設けられる点に特徴がある。以下においては、電子回路モジュール部品が実施形態2で説明した多孔質樹脂を有する例を説明するが、電子回路モジュール部品は、多孔質樹脂を有していなくてもよい。
【0071】
図13は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の断面図である。電子回路モジュール部品1bは、多孔質導電層5が封止樹脂4の一部を被覆する。本実施形態では、封止樹脂4の側部4S、すなわち、基板3と対向する部分(頂部4T)を除いた部分を多孔質導電層5が被覆する。多孔質導電層5は、封止樹脂4の側部4Sの表面に設けられ、これと接する。そして、多孔質導電層5が被覆しない封止樹脂4の部分、すなわち封止樹脂4の頂部4Tを金属層10が被覆する。すなわち、封止樹脂4の表面のうち、金属層10が直接被覆した部分以外を、多孔質導電層5が直接被覆する。
【0072】
本実施形態では、基板3と対向する部分、すなわち頂部4Tを金属層10が被覆する。金属層10は、封止樹脂4の頂部4Tの表面に設けられ、これと接する。多孔質導電層5は、金属層10の表面にも設けられる。このような構造により、電子回路モジュール部品1bは、多孔質導電層5の一部と封止樹脂4の一部との間に、金属層10が設けられる。金属層10は、リフロー時において電子回路モジュール部品1bの反りを抑制する効果及び低周波数(500kHz以下)でのシールド性能を向上させる効果がある。金属層10の厚みは、例えば、電子回路モジュール部品1bの仕様(周波数帯)によって決定する。
【0073】
本実施形態では、金属層10の表面を多孔質金属層5が被覆しているが、両者の関係は、これに限定されるものではない。例えば、多孔質金属層5の表面を金属層10が被覆してもよい。上述した例では、封止部材4の頂部4Tの表面を多孔質導電層5が被覆し、さらにその表面を金属層10が被覆するとともに、封止樹脂4の側部4Sの表面を多孔質導電層5が直接被覆する。このような形態であっても、金属層10による上述した効果を得ることができる。次に、電子回路モジュール部品1bを製造する方法について説明する。
【0074】
図14は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の製造方法を示すフローチャートである。図15−1〜図15−7は、実施形態3に係る電子回路モジュール部品の製造方法の説明図である。本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法のステップS31からステップS33は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法のステップS21からステップS23(図11参照)と同様なので説明を省略する。
【0075】
ステップS33において、図15−3に示すように、多孔質樹脂9を封止樹脂4で覆うことにより、封止体1Bbが得られたら、ステップS34に進む。ステップS34において、図15−4に示すように、封止樹脂4の表面に金属層10を設ける。本実施形態において、金属層10は厚みが10μmの銅箔である。金属層10は、封止樹脂4の表面に接着される。金属層10により、図13に示す電子回路モジュール部品1bをリフローした際における反りを抑制できる。このようにして、封止体1Bb’が得られる。次に、ステップS35に進み、モジュール部品単位で、封止体1Bb’の基板3が途中まで切断される(ハーフダイシング)。ハーフダイシングにおいては、金属層10及び封止樹脂4及び多孔質樹脂9及び基板3内のグランド8が切断される。
【0076】
ステップS35が終了したら、ステップS36に進む。本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法のステップS36からステップS38は、実施形態2に係る電子回路モジュール部品の製造方法のステップS25からステップS27(図11参照)と同様なので説明を省略する。このような手順によって、図15−7に示すような、多孔質導電層5が封止樹脂4の表面の少なくとも一部を被覆し、かつ電子部品2及び封止樹脂4及び多孔質導電層5の少なくとも一部と接する多孔質樹脂9を有する電子回路モジュール部品1bを製造できる。
【0077】
なお、多孔質導電層5の表面に金属層10を設ける場合、図15−3に示す封止体1Bbが有する封止樹脂4の表面に多孔質導電層5を設ける。次に、多孔質導電層5の表面のうち、金属層10を設ける部分以外をレジスト等の保護膜でマスキングして、マスキングされた部分以外の多孔質導電層5の表面に金属層10を設ける。その後、保護膜を除去することにより、多孔質導電層5の表面に金属層10を有した電子回路モジュール部品1bを製造することができる。以上、電子回路モジュール部品1bは、上述した電子回路モジュール部品1a(図9、図12−6)が奏する作用、効果に加え、金属層10により、低周波数でのシールド効果に優れるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明に係る電子回路モジュール部品は、電子部品を覆った封止樹脂の表面に金属層が形成される電子回路モジュール部品において、リフロー時に電子回路モジュール部品の内部で発生した気体を外部へ抜けやすくすることに有用である。
【符号の説明】
【0079】
1、1a、1b 電子回路モジュール部品
1B、1Ba 封止体
1A、1Aa モジュール素体
1C モジュール集合体
2 電子部品
3 基板
3A 第1基板
3B 第2基板
4S 側部
4T 頂部
4 封止樹脂
5、5a 多孔質導電層
5A 第1多孔質導電層
5B 第2多孔質導電層
8 グランド
9 多孔質樹脂
9H 空隙
9P 樹脂
10 金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、
前記電子部品がはんだによって実装された基板と、
前記電子部品及び前記基板を覆う封止樹脂と、
複数の空隙を有する導電材料であり、前記封止樹脂の少なくとも一部を被覆し、かつ前記基板のグランドと電気的に接続された多孔質導電層と、
を含むことを特徴とする電子回路モジュール部品。
【請求項2】
前記多孔質導電層の厚みは、2μm以上20μm以下である請求項1に記載の電子回路モジュール部品。
【請求項3】
前記多孔質導電層の空隙率は、10%以上80%以下である請求項1又は2に記載の電子回路モジュール部品。
【請求項4】
前記多孔質導電層は、Cuである請求項1から3のいずれか1項に記載の電子回路モジュール部品。
【請求項5】
前記多孔質導電層は、複数の導電材料の層を有し、最外部に多孔質のNiの層を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の電子回路モジュール部品。
【請求項6】
前記多孔質導電層は、前記封止樹脂と接する層がCuである請求項1から3のいずれか1項に記載の電子回路モジュール部品。
【請求項7】
前記多孔質導電層とは異なる金属層が前記封止樹脂の一部を被覆する請求項1から6のいずれか1項に記載の電子回路モジュール部品。
【請求項8】
前記金属層は、前記封止樹脂の表面であって、前記基板と対向する位置に設けられる請求項7に記載の電子回路モジュール部品。
【請求項9】
前記封止樹脂よりも空隙率が高く、かつ前記電子部品の少なくとも一部及び前記封止樹脂の少なくとも一部及び前記多孔質導電層の少なくとも一部と接する多孔質樹脂を有する請求項1から8のいずれか1項に記載の電子回路モジュール部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図12−6】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図15−4】
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【図15−5】
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【図15−6】
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【図15−7】
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