説明

電子回路装置

【課題】磁界ノイズを低減する電子回路装置の提供。
【解決手段】電気回路20を有する回路基板10を備える電子回路装置100において、回路基板10に実装されることにより電気回路20と接続される周回状の内部電極32を有するインダクタ30と、回路基板10に実装されることにより電気回路20と接続され周回状の内部電極52を有するインダクタ50であって、インダクタ30と相対する位置に、極性が同一の磁極が近接するよう配置されるインダクタ50と、を備える電子回路装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路を有する回路基板を備える電子回路装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気回路に接続された導電部に電流が流れると、導線部の近傍に磁極が形成される。この磁極の形成によって生じる、所謂磁界ノイズの放射は、電気回路に接続された電子部品および電子素子の導電部に誘導電流を誘起して、誤作動や信号の乱れ等を引き起こす。
【0003】
従来、この磁界ノイズを低減する手法として、特許文献1には、電気回路に接続されて、特定方向に電流が流れる直線状の第一導線と、当該特定方向とは逆方向に電流が流れる直線状の第二導線と、を近接して配置する構成が開示されている。この構成によれば、第一導線および第二導線によって形成される磁極のうち、極性が同一の磁極が近接するので、第一導線および第二導線の近傍に形成された磁束が互いに交差する。故に、第一導線による磁界と第二導線による磁界とが互いに打ち消しあうので、電気回路が放射する磁界ノイズの低減を実現される。
【特許文献1】特開2002−368358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、電気回路を有する回路基板を備える電子回路装置においては、電子素子および電気回路の配線を密集して配置することで、小型化が進められている。このような小型化が図られた電子回路装置において、特許文献1に開示の手法を用いて、対向する電流が流れる第一導線および第二導線に相当する配線を、互いにずらして配置する。これにより、磁界ノイズの低減を試みたところ、電子回路装置から放射される磁界ノイズを十分に低減するには至らなかった。その理由は、電子回路装置から放射される磁界ノイズのうち、電気回路の形成される直線状の配線から放射される磁界ノイズよりも、電気回路に接続される周回状の導電部を有する電子素子から放射される磁界ノイズが多くを占めるためである。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁界ノイズを低減する電子回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、電気回路を有する回路基板と、回路基板に実装されることにより電気回路と接続される周回状の導電部を有する第一電子素子と、回路基板に実装されることにより電気回路と接続され周回状の導電部を有する第二電子素子であって、第一電子素子と相対する位置に、極性が同一の磁極が近接するよう配置される第二電子素子と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、第一電子素子が回路基板に実装されることによって、第一電子素子が有する周回状の導線部には、接続された電気回路から電流が印加される。これにより、第一電子素子には磁極が形成され、当該磁極の方向に沿って周回する磁束による磁界ノイズが放射されることとなる。また、第二電子素子が回路基板に実装されることによって、第二電子素子が有する周回状の導線部には、接続された電気回路から電流が印加される。これにより、第二電子素子には磁極が形成され、当該磁極の方向に沿って周回する磁束による磁界ノイズ放射されることとなる。加えて、第二電子素子は、第一電子素子と相対する位置に、極性が同一の磁極が近接するよう配置されるので、各電子素子の何れかの磁極において、当該磁極近傍の磁束の方向が互いに交差する。故に、各電子素子から放射される磁界ノイズが互いに打ち消しあうこととなる。したがって、電子回路装置から放射される磁界ノイズの多くを占める、電子素子による磁界ノイズが低減されるので、放射される磁界ノイズの低減を実現する電子回路装置を提供することができるのである。
【0008】
請求項2に記載の発明では、第一電子素子が形成する磁極の陰極側から陽極側へ向う第一方向と、第二電子素子が形成する磁極の陰極側から陽極側へ向う第二方向とが対向することを特徴とする。この発明によれば、第一電子素子が形成する磁極の第一方向と、第二電子素子が形成する磁極の第二方向とが対向するので、各電子素子の何れかの磁極において、当該磁極近傍の磁束の方向が互いに対向する。そして、第二電子素子は、第一電子素子と相対する位置に配置されるので、第一電子素子によって形成される磁束と、第二電子素子によって形成される磁束とが対向に近い角度で交差することとなる。このような磁束の交差によれば、それぞれの電子素子から放射される磁界が効果的に打ち消しあう。したがって、放射される磁界ノイズのさらなる低減を実現する電子回路装置を提供することができるのである。
【0009】
請求項3に記載の発明では、第一電子素子および第二電子素子は、第一方向の軸線と第二方向の軸線とが同軸となるよう電子回路装置に配置されて実装される。この発明によれば、第一電子素子および第二電子素子は、第一方向と第二方向とが対向するとともに、第一方向の軸線と第二方向の軸線とが同軸となるよう配置される。故に、第一電子素子および第二電子素子のいずれかの磁極同士が確実に近接する。加えて、第一電子素子の近傍に形成される磁束と、第二電子素子の近傍に形成される磁束とが、確実に対向して交差する。これらによれば、それぞれの電子素子から放射される磁界がさらに効果的に打ち消しあうこととなる。したがって、放射される磁界ノイズのさらなる低減を実現する電子回路装置を提供することができるのである。
【0010】
請求項4に記載の発明では、第一電子素子が形成する磁極の陰極側から陽極側へ向う第一方向と、第二電子素子が形成する磁極の陰極側から陽極側へ向う第二方向とが同一の方向であり、第二電子素子は、第一電子素子に対して第一方向と直交する方向に相対するよう実装されることを特徴とする。この発明によれば、第一電子素子および第二電子素子における陽極同士、および陰極同士が等しく近接することとなる。故に、第一電子素子の近傍に形成される磁束と、第二電子素子の近傍に形成される磁束とを、広範囲に亘って対向に近い角度で交差させ得る。故に、それぞれの電子素子から放射される磁界は、さらに効果的に打ち消しあう。したがって、放射される磁界ノイズのさらなる低減を実現する電子回路装置を提供することができるのである。
【0011】
ここで、第一電子素子および第二電子素子が回路基板の同一の実装面に実装される場合、各電子素子の周囲には、各電子素子を実装するための作業空間を要することとなる。故に、第一電子素子および第二電子素子を近接させ難くなり、それぞれの電子素子から放射される磁界が効果的に打ち消しあわなくなる懸念がある。そこで、請求項5に記載の発明では、第一電子素および第二電子素子を、回路基板の互いに異なる実装面に実装する。これにより、第一電子素子および第二電子素子の磁極を容易に近接させることができるので、第一電子素子の近傍に形成される磁束と、第二電子素子の近傍に形成される磁束とを広範囲に亘り交差させることができる。故に、それぞれの素子から放射される磁界はさらに効果的に打ち消しあうので、放射される磁界ノイズのさらなる低減を実現する電子回路装置が提供し得るのである。
【0012】
請求項6に記載の発明では、第一電子素子および第二電子素子は、同一の仕様の電子素子である。この発明によれば、同一の仕様である第一電子素子および第二電子素子の近傍に形成される磁束同士は相似する。故に、それぞれの電子素子の近傍に形成される磁束同士が対向に近い角度で交差するよう、第一電子素子および第二電子素子を配置し易い。したがって、それぞれの電子素子から放射される磁界を効果的に打ち消しあわせ、放射される磁界ノイズの低減を実現する電子回路装置を容易に提供し得るのである。
【0013】
請求項7に記載の発明では、第一電子素子および第二電子素子は、周回状の導電部を収容するケース部を有する。この発明によれば、周回状の導電部がケース部に収容されることで、電子部品から外部へ放射される磁界ノイズの一部が当該ケース部によって遮蔽される。加えてケース部は、外部で放射された磁界ノイズの一部を遮蔽して、当該ケース部内へ収容された導電部における誘導電流の誘起を抑制する。このケース部による磁界ノイズの遮蔽作用により、第一電子素子および第二電子素子を近接させた場合においても、一方の電子素子から放射された磁界ノイズに起因した他方の電子素子の誤作動や信号の乱れが引き起こされ難い。故に、電子素子の作動を損なうことなく、第一電子素子および第二電子素子をさらに近接させて、効果的に磁界ノイズを打ち消し合わせることができるのである。
【0014】
請求項8に記載の発明では、第一電子素子および第二電子素子の導電部には、電気回路からパルス電流が印加される。この発明によれば、電気回路から導電部にパルス電流が印加されることによれば、それぞれの電子素子の近傍では大きな磁束の密度変化が生じる。しかし、第一電子素子および第二電子素子の双方に磁極が形成されて、近接する磁極の近傍に形成される磁束が交差することによれば、放射される磁界ノイズは低減される。故に、パルス電流が流れる第一電子素子および第二電子素子において、本発明による磁界ノイズの低減効果は顕著に発揮されるのである。
【0015】
請求項9に記載の発明では、第一電子素子および第二電子素子は、直列で接続される。この発明によれば、第一電子素子および第二電子素子が直列で接続されている場合、第一電子素子および第二電子素子に流れる電流が同期する。故に、第一電子素子および第二電子素子から放射される磁界ノイズが同期することとなり、それぞれの電子素子から放射される磁界を安定的に打ち消しあわせることができる。したがって、放射される磁界ノイズの安定的な低減を実現する電子回路装置を提供することができるのである。
【0016】
請求項10に記載の発明では、第一電子素子および第二電子素子は、周回状の導電部を有するインダクタである。この発明によれば、インダクタが有する導電部は、一般に導線が幾重にも周回している導電部であることから、放射される磁界ノイズが大きい。故に、第一電子素子および第二電子素子がインダクタである場合、第一電子素子および第二電子素子近傍に形成される磁束の方向を交差させることによる、本発明の磁界ノイズ低減効果を顕著に獲得することができるのである。
【0017】
請求項11に記載の発明では、電気回路は、入力された電流から必要とされる出力電流を生成する電源回路部を有し、第一電子素子および第二電子素子は、電源回路部の入力側に接続されることを特徴とする。この発明によれば、入力された電流から必要とされる出力電流を生成する電源回路部には、一般に電気回路の中で最大級の電流が流入する。加えて、第一電子素子および第二電子素子が、電源回路部の入力側に接続されるインダクタであるため、当該各電子素子の近傍では大きな磁束の密度変化が生じる。しかし、第一電子素子および第二電子素子の双方に磁極が形成されて、近接する磁極の近傍に形成される磁束が交差することによれば、放射される磁界ノイズの増加を抑えることができる。故に、電源回路部の入力側に接続されるインダクタに本発明を適用することで、放射する磁界ノイズの大幅な低減を実現する電子回路装置を提供することができるのである。
【0018】
請求項12に記載の発明では、回路基板は、第一電子素子が実装される第一回路基板部、および第二電子素子が実装され第一基板部と相対して配置される第二回路基板部を有する。この発明によれば、回路基板が第一回路基板部および第二回路基板部を有し、第一電子素子および第二電子素子が異なる第一回路基板部および第二回路基板部に実装される。以上の構成においても、第一電子素子および第二電子素子の双方に磁極が形成されて、近接する磁極の近傍に形成される磁束が交差することになるので、放射される磁界ノイズは低減されることとなる。したがって、それぞれの電子素子が別れて実装されて、相対するよう配置された配線基板部を備える電子回路装置であっても、磁界ノイズの低減を実現することができるのである。
【0019】
請求項13に記載の発明では、電気回路は、第一回路基板部に設けられる第一回路部、および第二回路基板部に設けられる第二回路部を具備し、第一電子素子は、第一回路部に接続され、第二電子素子は、第二回路部に接続される。この発明によれば、第一電子素子および第二電子素子は、相対する第一回路基板部および第二回路基板部のそれぞれに設けられた、電気回路が有する第一回路部および第二回路部にそれぞれ接続される。以上の構成においても第一電子素子および第二電子素子の双方に磁極が形成されて、近接する磁極の近傍に形成される磁束が交差することになるので、放射される磁界ノイズは低減されることとなる。したがって、それぞれの電子素子が、相対するよう配置された各回路基板部にそれぞれ設けられた第一回路部および第二回路部に接続されている場合であっても、磁界ノイズの低減を実現することができるのである。
【0020】
請求項14に記載の発明では、車載される計器に搭載されることを特徴とする。上述したように、第一電子素子および第二電子素子の配置によって極性が同一の磁極を近接させ、磁束を交差させる本発明の作用発揮によれば、電子素子および電気回路の配線が密集して配置された電子回路装置であっても、磁界ノイズの低減を図ることができる。したがって、空間的制約が厳しく、磁界ノイズによる他の電子機器への影響が懸念される車載用計器の電子回路装置として、請求項14に記載の発明は、特に好適なのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0022】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態による電子回路装置100である。電子回路装置100は、回路基板10に、インダクタ30,50および図示しない他の電子部品等が実装されてなる。尚、インダクタ30が配置されている側(図1の上方)を回路基板10の表面側とする。
【0023】
まず回路基板10が有する、図2に示す電気回路20について説明する。電気回路20は、回路基板10(図1参照)に形成され、インダクタ30,50、コンデンサ23、および電源供給回路部21を有している。インダクタ30,50は、入力される電流を平滑化するための電子素子であって、入力電流の増加に対して抵抗する。インダクタ30およびインダクタ50は、同一の仕様であり、同一のインダクタンスを備えている。インダクタ30およびインダクタ50は、直列で接続されており、電源供給回路部21の入力側に接続されている。コンデンサ23は、インダクタ30,50と同様に、入力される電流を平滑化するための電子素子であって、入力電流の減少に対して抵抗する。コンデンサ23の一端側はインダクタ30の出力側に接続され、他端側は接地されている。このような構成において、インダクタ30,50およびコンデンサ23には、整流器(図示しない)によって整流された、例えば100〜300Hzで脈動する、数100mA程度のパルス電流が流れる。インダクタ30,50およびコンデンサ23は、電気回路から流されるパルス電流の脈動を低減し、平滑な直流電流を電源供給回路部21に供給する。
【0024】
加えて、電源供給回路部21は、入力された電流から所望の電圧値を備えた電流を供給するDC−DC電源回路であって、特にスイッチング素子(図示しない)を用いるスイッチング制御方式の電源回路である。電源供給回路部21は、供給された直流電流をスイッチング素子によって矩形波状の電流に変換する。この矩形波状の電流は、電源供給回路部21によって再び整流および平滑化される。電源供給回路部21は、スイッチング素子を制御することにより、矩形波の一周期における電圧が高い時間の割合を変化させる。このスイッチング素子の制御によって、電源供給回路部21は所望の電圧値を備える出力電流を生成するのである。
【0025】
図1に示すように回路基板10は、以上説明した構成の電気回路20を複数の層に亘り形成している多層基板である。回路基板10は、電気回路20を構成している4つの配線層13を備える4層基板である。回路基板10は、配線層13に加えて、絶縁層11、スルーホール15、および被覆層17を備えている。絶縁層11は、絶縁性材料であって、ガラス繊維の織物であるガラス繊維布をエポキシ樹脂によって固めたガラス・エポキシ板により形成されている。絶縁層11は、表面側絶縁層11a、内部絶縁層11b、裏面側絶縁層11cを有している。
【0026】
配線層13は、導電性材料である銅箔等からなり、所定の配線パターンに形成されている。配線層13は、表面側配線層13a、裏面側配線層13d、電源配線層13b、および接地配線層13cを有している。表面側配線層13aおよび裏面側配線層13dは、回路基板10に実装されている各電子部品間を電気的に接続しており、各配線層13a,13dによって主に各電子部品間での電気信号の交信が行われる。表面側配線層13aは表面側絶縁層11aの表面側に、裏面側配線層13dは裏面側絶縁層11cの裏面側に、それぞれ形成されている。電源配線層13bは各電子部品へ接続されており、電源配線層13bによって各電子部品に電力が供給される。接地配線層13cは各電子部品へ接続されており、接地配線層13cによって各電子素子における接地が行われている。
【0027】
スルーホール15は、絶縁層11および配線層13を板厚方向に貫通する貫通孔である。スルーホール15の周壁部および表面側開口部の周縁部には、導電性材料である銅材等からなるスルーホール・メッキ16が設けられている。スルーホール・メッキ16は、表面側開口部の周縁部に設けられた実装部16aと、周壁部に設けられた接続部16bとを形成している。実装部16aは、表面側配線層13aの表面側に設けられており、はんだ18によってインダクタ30が表面側に接続されている。また実装部16aは、接続部16bによって電源配線層13bと電気的に接続されている。これらによれば、スルーホール・メッキ16により電源配線層13bおよびインダクタ50や、インダクタ30およびインダクタ50の電気的な接続が形成されている。
【0028】
被覆層17は、表面側絶縁層11aおよび表面側配線層13aの表面側と、裏面側絶縁層11cおよび裏面側配線層13dの裏面側とに形成される薄膜状の被覆である。被覆層17は、耐熱性を備えた絶縁性材料であるエポキシ樹脂系材料等により形成されている。被覆層17は、実装部16aの表面側等には形成されておらず、はんだ18による各電子回路の接続を妨げないようにされている。
【0029】
インダクタ30,50は、それぞれの軸線30ax,50axを基準に、導線が周回状に設けられた積層型のインダクタである。インダクタ30,50は、内部電極32,52、フェライトコア36,56、および外部電極34,54等を有している。インダクタ30,50は、数分の1周分に相当する導線パターンを印刷したフェライトからなる薄いシート基材が積層されることによって構成されている。内部電極32,52は、積層された導線パターンによって周回状に形成されている。フェライトコア36,56は、積層されたフェライトの基材によって形成されている。外部電極34,54は、周回状に配置された内部電極32,52と電気的に接続されているとともに、回路基板10の配線層13と接続される接点部34a,54aを有している。尚、インダクタ30およびインダクタ50は、請求項に記載の「第一電子素子」および「第二電子素子」に、内部電極32,52は、請求項に記載の「導電部」に、それぞれ相当する。
【0030】
インダクタ30は回路基板10に実装されることによって、周回状の内部電極32が電気回路20に接続される。インダクタ30の内部電極32に電気回路20から電流が印加されることにより、インダクタ30は、回路基板10側に陰極30bを、当該陰極30bと相対する側に陽極30hをそれぞれ形成する。これにより、本実施形態における第一方向30dは、回路基板10の平面方向と直交し、裏面側から表面側に向う方向となる。インダクタ30がこのような磁極を形成する場合、内部電極32は第一方向30dに対して右回りに周回しており、且つ電流は第一方向30dに向って流れている。以上の構成により、インダクタ30には第一方向30dに対して右回りに周回する電流40arが流れ、第一方向30dに沿って周回する磁束30fが形成されるのである。
【0031】
インダクタ50が回路基板10に実装されることによって、インダクタ50の周回状の内部電極52は電気回路20に接続される。インダクタ50の内部電極52に電気回路20から電流が印加されることにより、インダクタ50は、回路基板10側に陰極50bを、当該陰極50bと相対する側に陽極50hをそれぞれ形成する。これにより、本実施形態における第二方向50dは、回路基板10の平面方向と直交し、表面側から裏面側に向う方向となる。インダクタ50がこのような磁極を形成する場合、内部電極52は第二方向50dに対して右回りに周回しており、且つ電流は第二方向50dに向って流れている。以上の構成により、インダクタ50には第二方向50dに対して右回りに周回する電流40arが流れ、第二方向50dに沿って周回する磁束50fが形成されるのである。
【0032】
加えてインダクタ50は、インダクタ30と相対する位置に、極性が同一である陰極30bおよび50bが近接するよう配置される。また、インダクタ50の実装される第二方向50dは、インダクタ30の実装される第一方向30dと対向している。さらに、インダクタ50の第二方向50dに沿った軸線50axは、インダクタ30の第一方向30dに沿った軸線30axと同軸となっている。また、インダクタ30およびインダクタ50は、回路基板10の互いに異なる実装面に実装されている。
【0033】
以上説明した本実施形態では、それぞれのインダクタ30,50は、陽極30h,50h側がら陰極30b,50b側に向って周回する磁束30f,50fを形成する。そして、インダクタ30およびインダクタ50の陰極30bおよび陰極50bが互いに近接するよう配置されていることで、当該陰極30b,50b近傍の磁束30f,50fの方向が互いに交差するのである。このように、磁束30f,50fの方向が互いに交差することで、それぞれのインダクタ30,50が放射する磁界ノイズが互いに打ち消しあうこととなる。したがって、インダクタ30,50による磁界ノイズが抑えられるので、放射される磁界ノイズの低減を実現する電子回路装置100を提供することができるのである。
【0034】
加えて本実施形態では、インダクタ30,50は、第一方向30dと第二方向50dとが対向し、且つ第一方向30dの軸線30axと第二方向50dの軸線50axとが同軸となるよう配置されている。そのため、陰極30b,50b近傍の磁束30f,50fの方向が互いに近接した状態で、対向して交差する。さらに、インダクタ30およびインダクタ50が回路基板10の互いに異なる実装面に実装されることによって、インダクタ30の陰極30bおよびインダクタ50の陰極50bの間隔を小さくすることができる。故に、磁束30fおよび磁束50fが、広範囲に亘って、対向する方向に交差することとなる。したがって、それぞれのインダクタ30,50から放射される磁界ノイズが効果的に打ち消しあうこととなり、さらなる磁界ノイズの低減を実現する電子回路装置100を提供することができるのである。
【0035】
また本実施形態では、インダクタ30およびインダクタ50が同一の仕様であることから、それぞれのインダクタ30,50の近傍に形成される磁束30fおよび磁束50fは互いに相似することとなる。さらに、第一方向30dの軸線30axと第二方向50dの軸線50axとが同軸となるよう配置されているので、磁束30f,50fを互いに対向に近い角度で交差させることができる。このように、インダクタ30およびインダクタ50を同一の仕様とすることで、磁界ノイズが効果的に打ち消しあうインダクタ30,50の配置が容易となる。したがって、放射される磁界ノイズの低減を実現する電子回路装置100を容易に提供し得るのである。
【0036】
さらに本実施形態では、インダクタ30およびインダクタ50が直列で接続されているので、当該インダクタ30,50に流れる電流が同期する。故に、インダクタ30およびインダクタ50から放射される磁界ノイズが同期することとなり、それぞれのインダクタ30,50から放射される磁界は安定的に打ち消しあうこととなる。加えて、本実施形態では、一つのインダクタが、インダクタ30,50に敢えて分割され、直列で接続されている。インダクタが放射する磁界ノイズは、当該インダクタが備えるインダクタンスに比例するので、分割された個々のインダクタ30,50から放射される磁界ノイズは減少する。そして、分割によって減少した磁界ノイズ同士が打ち消しあうこととなる。以上によれば、二つのインダクタ30,50に分割して直列に接続することにより、一つのインダクタを接続する場合と比較して、インダクタンスを維持したままで、放射される磁界ノイズの大幅な低減が実現されるのである。
【0037】
また加えて本実施形態では、インダクタ30,50は幾重にも周回する内部電極32,52を有している。このように、種々の電子素子の中でも、インダクタは特に放射される磁界ノイズが大きくなり易い。故に、インダクタに本発明を適用することで、磁界ノイズの同士の打ち消しあいによる、本発明の磁界ノイズ低減効果を顕著に獲得することができるのである。
【0038】
さらに加えて本実施形態では、電源供給回路部21の入力側に接続されるインダクタ30およびインダクタ50には、電気回路20のなかでも最大級の電流が印加される。さらに、インダクタ30およびインダクタ50に流入する電流が脈動を備えていることによって、磁束30fおよび磁束50fは大きな密度変化を生じる。しかし、インダクタ30およびインダクタ50の双方によって磁束30fおよび磁束50fが形成されて、当該磁束30f,50fが互いに打ち消しあう本発明の作用発揮によれば、放射される磁界ノイズの増加を抑えることができる。このように、電源供給回路部21の入力側に接続されるインダクタ30,50に本発明を適用することで、放射する磁界ノイズの大幅な低減を実現する電子回路装置100を提供することができるのである。
【0039】
(第二実施形態)
図3に示すように、本発明の第二実施形態は第一実施形態の変形例である。第二実施形態における電子回路装置200は、回路基板210の同一面に、インダクタ230,250が実装されている。尚、インダクタ230,250が実装されている実装面を、回路基板210の表面側とする。加えて図3では、回路基板210に実装される他の電子素子等は省略する。
【0040】
インダクタ230,250は、フェライトコア236,256、巻線部231,251、外部電極234,254、および外装部237,257を有している。フェライトコア236,256は、フェライト材よりなり、軸線230ax,250axを中心線とする円柱状の部材である。巻線部231,251は、フェライトコア236,256の軸線230ax,250axを中心に、周回状に巻かれている。外部電極234,254は、周回状に配置された巻線部231,251と電気的に接続されているとともに、回路基板210の表面側に形成されている配線層13と接続される接点部234a,254aを具備している。外装部237,257は、樹脂材料からなり、巻線部231,251が巻かれたフェライトコア236,256を収容している。尚、インダクタ230およびインダクタ250は、請求項に記載の「第一電子素子」および「第二電子素子」に、巻線部231,251は、請求項に記載の「導電部」に、外装部237,257は、請求項に記載の「ケース部材」に、それぞれ相当する。
【0041】
インダクタ230は回路基板210に実装されることによって、周回状の巻線部231が電気回路20に接続される。インダクタ230の巻線部231に電気回路20から電流が印加されることにより、インダクタ230は、インダクタ250側(図3の左側)に陰極230bを、当該陰極230bと相対する側(図3の右側)に陽極230hをそれぞれ形成する。これにより、第二実施形態における第一方向230dは、図3において、回路基板210の平面方向に沿って右方向とする。インダクタ230がこのような磁極を形成する場合、巻線部231は第一方向230dに対して右回りに周回するよう巻設されており、且つ電流は第一方向230dに向って流れている。以上の構成によれば、インダクタ230には第一方向230dに対して右回りに周回する電流40arが流れ、第一方向230dに沿って周回する磁束230fが形成されるのである。
【0042】
インダクタ250は回路基板210に実装されることによって、周回状の巻線部251が電気回路20に接続される。インダクタ250の巻線部251に電気回路20から電流が印加されることにより、インダクタ250は、インダクタ230側(図3の右側)に陰極250bを、当該陰極250bと相対する側(図3の左側)に陽極250hをそれぞれ形成する。これにより、第二実施形態における第二方向250dは、図3において、回路基板210の平面方向に沿って左方向とする。インダクタ250がこのような磁極を形成する場合、巻線部251は第二方向250dに対して右回りに周回するよう巻設されており、且つ電流は第二方向250dに向って流れている。以上の構成により、インダクタ250には第二方向250dに対して右回りに周回する電流40arが流れ、第二方向250dに沿って周回する磁束250fが形成されるのである。
【0043】
以上の構成によれば、インダクタ230およびインダクタ250は、第一方向230dおよび第二方向250dが対向して配置され、それぞれの陰極230b,250bが近接することによれば、陰極230b,250b近傍の磁束230fおよび磁束250fが互いに交差することになるのである。したがって、インダクタ230,250から磁界がノイズ放射されても、磁界ノイズ同士が打ち消しあうので、放射される磁界ノイズの低減を実現する電子回路装置200を提供することができるのである。
【0044】
加えて第二実施形態では、周回状の巻線部231,251が外装部237,257に収容されることで、当該外装部237,257によってインダクタ230,250から外部へ放射される磁界ノイズの一部が遮蔽される。加えて外装部237,257は、外部で放射された磁界ノイズの一部を遮蔽して、当該外装部237,257内へ収容された巻線部231,251における誘導電流の誘起を抑制する。この外装部237,257による磁界ノイズの遮蔽作用により、インダクタ230およびインダクタ250を近接させた場合においても、一方のインダクタから放射された磁界ノイズに起因した他方のインダクタの誤作動が引き起こされ難い。故に、インダクタ230,250の作動を損なうことなく、インダクタ230およびインダクタ250の間のずれを小さくできるので、効果的に磁界ノイズを打ち消し合わせることができるのである。
【0045】
(第三,第四実施形態)
図4に示すように、本発明の第三実施形態は第二実施形態の変形例である。第二実施形態における電子回路装置300では、回路基板310の異なる面に、インダクタ230,250が実装されている。尚、インダクタ230が実装されている面を回路基板310の表面側とする。加えて図4では、回路基板310に実装される他の電子素子等は省略する。
【0046】
第三実施形態において、インダクタ230が実装される第一方向330dは、図4において回路基板310の平面方向に沿って左方向とする。加えて、インダクタ250が実装される第二方向350dは、第一方向330dと同一方向であって、図4において回路基板310の平面方向に沿って左方向とする。また、インダクタ250は、インダクタ230に対して、第一方向330dと直交する方向であって、回路基板310の板厚方向にずれた位置に配置されている。
【0047】
図5に示すように、本発明の第四実施形態は第三実施形態の変形例である。第三実施形態における電子回路装置400では、回路基板410の同一の面に、インダクタ230,250が実装されている。尚、図5においては、回路基板410に実装される他の電子素子等は省略する。
【0048】
第四実施形態において、インダクタ230が実装される第一方向430dは、回路基板410の平面方向に沿った方向であって、図4において上方向とする。加えて、インダクタ250が実装される第二方向450dは、第一方向430dと同一方向であって、回路基板410の平面方向に沿った、図4の上方向とする。また、インダクタ250は、インダクタ230に対して、第一方向330dと直交する方向であって、回路基板410の平面方向に沿ってずれた位置に配置されている。
【0049】
以上の第三実施形態および第四実施形態の配置によれば、それぞれのインダクタ230,250の陽極230h,250h同士、および陰極230b,250b同士が等しく近接することとなる。故に、インダクタ230の両磁極230h,230b近傍に形成される磁束230fと、インダクタ250の両磁極250h,250b近傍に形成される磁束250fとを、広範囲に亘って対向に近い角度で交差させ得る。故に、それぞれのインダクタ230,250から放射される磁界がさらに効果的に打ち消しあうのである。したがって、放射される磁界ノイズの低減を実現する電子回路装置300,400を提供することができるのである。
【0050】
(第五実施形態)
図6に示すように、本発明の第五実施形態は第一実施形態のさらに別の変形例である。
【0051】
第五実施形態における電子回路装置500は、インダクタ30が実装される第一回路基板部510a、およびインダクタ50が実装され、第一回路基板部510aと相対して配置される第二回路基板部510bを備える。加えて、電気回路520は、第一回路基板部510aに設けられる電源供給回路部521a、および第二回路基板部510bに設けられる照明駆動回路部521bを有している。さらに、インダクタ30は電源供給回路部521aに接続されており、インダクタ50は照明駆動回路部521bに接続されている。
【0052】
第五実施形態におけるインダクタ30は、第一回路基板部510aの第二回路基板部510b側に配置されている。加えてインダクタ30の実装方向である第一方向530dは、第一回路基板部510aの板厚方向に沿って第一回路基板部510a側から第二回路基板部510b側に向う方向である。また、インダクタ50は、第二回路基板部510bの第一回路基板部510a側に配置されている。加えてインダクタ50の実装方向である第二方向550dは、第二回路基板部510bの板厚方向に沿って第二回路基板部510b側から第一回路基板部510a側に向う方向である。
【0053】
第五実施形態における電気回路520は、例えば車載される計器であって、ステッパモータ、ダイオード、制御回路等を備える計器に用いられる電気回路である。電源供給回路部521aは、ステッパモータ、ダイオード、制御回路等に電力を供給する回路部である。電源供給回路部521aに接続されているインダクタ30は、当該電源供給回路部521aに供給される電流の平滑化を行う。照明駆動回路部521bは、ダイオードに電力を供給して発光させる回路部である。照明駆動回路部521bに接続されているインダクタ50は、当該照明駆動回路部521bに供給される電流の平滑化を行う。尚、第五実施形態においては、電源供給回路部521aが請求項に記載の「第一回路部」に、照明駆動回路部521bが請求項に記載の「第二回路部」に、それぞれ相当する。
【0054】
第五実施形態では、電子回路装置500が第一回路基板部510aおよび第二回路基板部510bを備えるとともに、インダクタ30およびインダクタ50が異なる第一回路基板部510aおよび第二回路基板部510bに実装される。以上の構成においても、インダクタ30およびインダクタ50の双方に磁極が形成されて、近接する陽極30h,50h近傍に形成される磁束30fおよび磁束50fを交差させることができる。故に、インダクタ30およびインダクタ50から放射される磁界ノイズが打ち消しあうこととなる。したがって、それぞれのインダクタ30,50が別れて実装され、相対するよう配置された各配線基板部510a,510bを備える電子回路装置500であっても、磁界ノイズの低減を実現することができるのである。
【0055】
加えて第五実施形態では、インダクタ30およびインダクタ50は、第一回路基板部510aおよび第二回路基板部510bのそれぞれに設けられた、電気回路520が有する電源供給回路部521aおよび照明駆動回路部521bにそれぞれ接続されている。以上の構成においても、インダクタ30およびインダクタ50の双方に磁極が形成されて、近接する陽極30h,50h近傍に形成される磁束30fおよび磁束50fを交差させることができる。故に、インダクタ30およびインダクタ50から放射される磁界ノイズが打ち消しあうこととなる。したがって、それぞれのインダクタ30,50が、異なる電源供給回路部521aおよび照明駆動回路部521bに接続されている場合であっても、磁界ノイズの低減を実現することができるのである。
【0056】
さらに本発明によるインダクタ30およびインダクタ50の配置による磁束30f,50fを交差させて打ち消しあう作用発揮によれば、インダクタ等の電子素子および電気回路の配線が密集して配置された電子回路装置であっても、磁界ノイズの低減を図ることができる。したがって、空間的制約が厳しく、磁界ノイズによる他の電子機器への影響が懸念される車載用計器の電子回路装置として、本発明は、特に好適なのである。
【0057】
(第六実施形態)
図7に示すように、本発明の第六実施形態は第五実施形態の変形例である。第六実施形態における電子回路装置600は、インダクタ130a,130b,130cが実装される第一回路基板部610a、およびインダクタ150a,150b,150cが実装され、第一回路基板部610aと相対して配置される第二回路基板部610bを備える。
【0058】
インダクタ130a,130b,130cは、それぞれ直列に接続されている。そのため、インダクタ130a,130b,130cのインダクタンスの総和は、インダクタ30のインダクタンスに等しくなるよう設定されている。また、インダクタ130a,130b,130cは、すべて第一回路基板部610aの第二回路基板部610b側に配置されている。さらに、インダクタ130a,130b,130cの実装方向である第一方向630dは、すべて同一方向であって、第一回路基板部610aの板厚方向に沿って第一回路基板部610a側から第二回路基板部610b側に向う方向である。
【0059】
また、インダクタ150a,150b,150cは、それぞれ直列に接続されている。そのため、インダクタ150a,150b,150cのインダクタンスの総和は、インダクタ50のインダクタンスに等しくなるよう設定されている。また、インダクタ150a,150b,150cは、すべて第二回路基板部610bの第一回路基板部610a側に配置されている。さらに、インダクタ150a,150b,150cの実装方向である第二方向650dは、すべて同一方向であって、第二回路基板部610bの板厚方向に沿って第二回路基板部610b側から第一回路基板部610a側に向う方向である。
【0060】
第六実施形態では、一つのインダクタが、複数のインダクタに敢えて分割され、直列で接続されている。故に、複数に分割された個々のインダクタから放射される磁束130f,150fは、磁束30f,50fと比較して弱い。さらに、対向する各インダクタ130a,130b,130c,および各インダクタ150a,150b,150cの各陽極130h,150hが近接して配置されるので、当該各陽極130h,150h近傍の磁束130f,150fが交差することとなり磁界ノイズ同士が打ち消しあうこととなる。また加えて、第一回路基板部610aに並べて配置された各インダクタ130の各磁極同士が近接して配置されるので、当該各磁極近傍の磁束130fが交差することとなり、磁界ノイズ同士が打ち消しあうこととなる。これは、第二回路基板部610bに並べて配置された各インダクタ150も同様であり、隣接するインダクタ150同士で磁界ノイズを打ち消しあうこととなる。したがって、インダクタ30,50を複数のインダクタ130a,130b,130cおよび150a,150b,150cに分割することにより、磁界ノイズを著しく低減できる電子回路装置600を提供することができるのである。
【0061】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0062】
上記実施形態において、各インダクタの導電部は第一方向又は第二方向に対して右回りに周回するよう設けられ、且つ第一方向又は第二方向に向って電流を流す構成であった。そして、この構成により、第一方向又は第二方向に対して右回りに周回する電流40arの流れを形成していた。しかし、導電部は第一方向又は第二方向に対して左回りに周回するよう設けられ、且つ第一方向又は第二方向とは逆側に向って電流を流す構成でもよい。この構成においても、第一方向又は第二方向に対して右回りに周回する電流40arの流れが形成される。或いは、各インダクタには、第一方向又は第二方向に対して左回りに周回する電流40arの流れが形成されてもよい。この場合、各インダクタの導電部は第一方向又は第二方向に対して右回りに周回するよう設けられ、且つ第一方向又は第二方向とは逆側に向って電流を流す構成、又は、各インダクタの導電部は第一方向又は第二方向に対して左回りに周回するよう設けられ、且つ第一方向又は第二方向に向って電流を流す構成、であればよい。
【0063】
上記実施形態においては、請求項に記載の「第一電子素子」および「第二電子素子」として、同一の仕様のインダクタを用いた例を説明した。しかし、「第一電子素子」および「第二電子素子」は同一の仕様に限定するものではない。さらに、インダクタ以外の周回状の導電部を有する電子素子、例えばトランスや各種のモータ等であってもよい。
【0064】
上記実施形態において、「第一電子素子」および「第二電子素子」は直列に接続されていたが、並列に接続されていてもよい。また上記実施形態では、「第一電子素子」および「第二電子素子」は、電源供給回路部や照明駆動回路部に接続されていたが、パルス電流が流れる、例えばステッパモータの駆動制御回路に接続されていてもよい。さらには、第一電子素子」および「第二電子素子」に流れる電流は、脈動するパルス電流でなくてもよく、平滑な電流が流れる電気回路に接続されていてもよい。
【0065】
上記実施形態においては、本発明による電子回路装置を車載用の計器に用いられる例を説明した。しかし、計器以外にも、各種の車載される「電子機器」に用いられる電子回路装置に本発明を適用することが可能である。さらには、車両以外の各種の「電子機器」に用いられる電子回路装置に本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第一実施形態による電子回路装置のノイズ低減効果を説明するための模式図である。
【図2】本発明の一実施形態による電子回路装置が備える電気回路の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第一実施形態の変形例であって、第二実施形態による電子回路装置のノイズ低減効果を説明するための模式図である。
【図4】本発明の第二実施形態の変形例であって、第三実施形態による電子回路装置のノイズ低減効果を説明するための模式図である。
【図5】本発明の第三実施形態の変形例であって、第四実施形態による電子回路装置のノイズ低減効果を説明するための模式図である。
【図6】本発明の第一実施形態の別の変形例であって、第五実施形態による電子回路装置のノイズ低減効果を説明するための模式図である。
【図7】本発明の第五実施形態の変形例であって、第六実施形態による電子回路装置のノイズ低減効果を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0067】
10,210,310,410 回路基板、510a,610a 第一回路基板部、510b,610b 第二回路基板部、11 絶縁層、11a 表面側絶縁層、11b 内部絶縁層、11c 裏面側絶縁層、13 配線層、13a 表面側配線層、13b 電源配線層、13c 接地配線層、13d 裏面側配線層、15 スルーホール、16 スルーホール・メッキ、16a 実装部、16b 接続部、17 被覆層、18 はんだ、20,520 電気回路、21,521a 電源供給回路部(第一回路部)、521b 照明駆動回路部(第二回路部)、23 コンデンサ、30,130a,130b,130c,230 インダクタ(第一電子素子)、50,150a,150b,150c,250 インダクタ(第二電子素子)、30ax,230ax,50ax,250ax 軸線、30d,230d,330d,430d,530d,630d 第一方向、50d,250d,350d,450d,550d,650d 第二方向、30b,230b,50b,250b 陰極、30h,230h,50h,250h 陽極、30f,130f,230f,50f,150f,250f 磁束、231,251 巻線部(導電部)、32,52 内部電極(導電部)、34,234,54,254 外部電極、34a,234a,54a,254a 接点部、36,56 フェライトコア、237,257 外装部、40ar 電流、100,200,300,400,500,600 電子回路装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を有する回路基板と、
前記回路基板に実装されることにより前記電気回路と接続される周回状の導電部を有し、前記導電部へ電流の印加によって磁極を形成する第一電子素子と、
前記回路基板に実装されることにより前記電気回路と接続される周回状の導電部を有し、前記導電部へ電流の印加によって磁極を形成する第二電子素子であって、前記第一電子素子と相対する位置に、極性が同一の磁極が近接するよう配置される第二電子素子と、を備えることを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
前記第一電子素子が形成する磁極の陰極側から陽極側へ向う第一方向と、前記第二電子素子が形成する磁極の陰極側から陽極側へ向う第二方向とが対向することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項3】
前記第一電子素子および前記第二電子素子は、前記第一方向の軸線と前記第二方向の軸線とが同軸となるよう前記回路基板に実装されることを特徴とする請求項2に記載の電子回路装置。
【請求項4】
前記第一電子素子が形成する磁極の第一方向と、前記第二電子素子が形成する磁極の第二方向とが同一の方向であり、
前記第二電子素子は、前記第一電子素子に対して前記第一方向と直交する方向に相対するよう実装されることを特徴とする請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項5】
前記第一電子素および前記第二電子素子は、前記回路基板の互いに異なる実装面に実装されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子回路装置。
【請求項6】
前記第一電子素子および前記第二電子素子は、同一の仕様の電子素子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子回路装置。
【請求項7】
前記第一電子素子および前記第二電子素子は、周回状の前記導電部を収容するケース部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子回路装置。
【請求項8】
前記第一電子素子および前記第二電子素子が有する前記導電部には、前記電気回路からパルス電流が印加されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子回路装置。
【請求項9】
前記第一電子素子および前記第二電子素子は、直列で接続されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子回路装置。
【請求項10】
前記第一電子素子および前記第二電子素子は、周回状の前記導電部を有するインダクタであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子回路装置。
【請求項11】
前記電気回路は、入力された電流から必要とされる出力電流を生成する電源回路部を有し、
前記第一電子素子および前記第二電子素子は、前記電源回路部の入力側に接続されることを特徴とする請求項10に記載の電子回路装置。
【請求項12】
前記回路基板は、前記第一電子素子が実装される第一回路基板部、および前記第二電子素子が実装され前記第一基板部と相対して配置される第二回路基板部を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子回路装置。
【請求項13】
前記電気回路は、前記第一回路基板部に設けられる第一回路部、および前記第二回路基板部に設けられる第二回路部を具備し、
前記第一電子素子は、前記第一回路部に接続され、
前記第二電子素子は、前記第二回路部に接続されることを特徴とする請求項12に記載の電子回路装置。
【請求項14】
車載される計器に搭載されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の電子回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−87025(P2010−87025A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251417(P2008−251417)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】