説明

電子基板から熱を放散させるシステムおよび方法

【課題】 電子素子から発せられる熱を効率よく外部に導き、放熱して電子素子を冷却する。
【解決手段】 複数の素子11が搭載される電子基板12にデバイスカバー15が装着される。デバイスカバー15と電子基板12とで素子11を密封する空間が形成され、その空間内部には伝熱グリース等の伝熱材料13が充填される。素子11とデバイスカバー15とは熱的に接続されていて、素子11から発せられる熱は、デバイスカバー15の表面を経て放熱される。素子11の接続端子(足)102の部分から発せられる熱は、伝熱材料13、デバイスカバー15を介して放熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電子回路基板に関し、詳細には、均一な放熱が必要とされる電子回路基板に関し、より詳細には、電子基板から熱を放散させるシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子基板上の構成要素が熱を発生し、構成要素の適切な動作を妨げないようにその熱を放散させなければならないことは周知である。一般に、そのような放熱は、基板の軸に沿って空気を送り、その空気が電子基板の構成要素と接するようにすることによって達成される。移動する空気が、熱を運び去る。そのような技術を図3に示し、ここで、矢印は、電子基板30上の構成要素31の上に流れる空気を表す。
【0003】
図4のより具体的な例に示したように、メモリ11などの回路素子は、電子基板12に、コネクタ・ピン(足)を基板にはんだ付けするかまたはピンを結合ソケットに差し込むことによって接続される。図3に表したように、これらの素子ならびに基板は、基板の上を通常は長手方向に流れる空気によって冷却される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放熱を改善する試みにおいて、カバー41などのカバーが、個々の電子素子、ここではメモリ11の上に配置され、そしてカバーの上に空気が通される。カバーは、各素子と接触することができ、素子の上面から熱を取り除く働きをする。伝熱要素2などの伝熱要素が、個々の電子素子、ここではメモリ11の上に配置され、素子からカバーに熱が伝達するのを助ける。カバーは、素子から生成された熱に関して放熱を多少改善することができるが、物理的表面積が小さくかつ熱伝達率が低いコネクタ・ピンからの熱と関連した問題のような、基板12のホット・スポットの問題には対処していない。本発明は、このようなホット・スポットの問題にも対処可能な放熱の方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、電子基板を提供し、この電子基板は、基板上のレセプタクルに結合された複数の接続端子をそれぞれ有する複数の個別の素子と、基板に接続され、複数の素子を取り囲む空隙を形成し、複数の個別素子と熱的に接触し、外側の表面積がその平面領域よりも大きくなるように(外側が、平坦な表面形状を有する場合の表面積よりも大きくなるように)寸法的(立体形状)パターンを有する放熱カバーとを備える。
【0006】
本発明のもう1つの実施形態は、電子回路基板からの放熱を高めるのに使用する熱伝導カバーを提供し、その回路基板は、接続端子によって回路基板に電子的に接続された複数の電子素子を有し、そのカバーが、比較的平坦な内側面を有する板であって、複数の電子素子のうちのいくつかと熱的に結合する平坦な領域を有し、空気と接触する外側面をさらに有し、この外側面が内側面の平坦な領域の面積よりも大きい面積を有する板と、さらにその板に結合されたリムであって、リム、板、および電子回路基板によって定義される空隙内で複数の電子素子のうちのいくつかの電子素子を取り囲むように上記板と協働するようサイズと形状が決められたリムとを有する。
【0007】
本発明の1つの実施形態は、電子基板を組み立てる方法を提供し、この方法は、複数の接続端子を使用して、電子基板に接続したときに接触可能な上面を有する複数の電子素子を電子基板に接続することと、その電子素子の上面を覆うようにカバーを配置することと、電子素子間に熱伝導材料を充填することであって、これにより熱伝導材料がカバーと電子素子のと間およびカバーと電子素子の接続端子との間に熱伝導性を提供するように充填することとを有する方法である。
【0008】
本発明のもう1つの実施形態は、回路基板上に配置された構成要素に対して高い熱伝達率を提供する方法を提供し、この方法は、構成要素の上にデバイスカバーを配置することと、デバイスカバーを回路基板に固着することと、デバイスカバーを回路基板に固着した後でデバイスカバーと回路基板との間に形成された空隙内に熱伝導材料を充填することとを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1Aには、電子または回路基板12に取り付けられた複数の個別の電子素子11を有する本発明の1つの実施形態による放熱パッケージ10の分解斜視図を示す。示した実施形態によれば、伝熱材料(thermal material)13が、素子11とデバイスカバー15の間に分散される。伝熱材料13は、1つの実施形態において、Shin−Etsu G−751伝熱グリースなどの自由な形態またはきわめて形状自由度の高い(malleable)形態であり、デバイスカバー15と回路基板12の間の空隙の体積を実質的に満たす。本明細書において、自由な形態の材料は、空気以外のものである。
【0010】
実施形態による放熱パッケージ10を提供する際、素子11(デュアル・インライン・メモリ・モジュール(DIMM)でよい)は、図2のボックス201に示したようにコネクタ(足、あるいは接続端子)102を介して回路基板12にはんだ付けまたは接続される。デバイスカバー15は、図2のボックス202に示したように、素子11を覆うようにおよび/または素子11の上部に配置される。その後で、図2のボックス203に示したように、デバイスカバー15が、例えばねじ、リベット、クリップ、または他の都合のよい固定手段を含む締結部材101によって、穴100を介して、回路基板12に固定することができる。例示した実施形態では締結部材101と穴100を示したが、例えば接着剤、はんだ、タブと受け板などの他の固着技術を使用し、あるいはリム14を使用して、デバイスカバー15を回路ボード12に固着できることを理解されたい。
【0011】
次に、図2のボックス204に示したように、例えば前述の伝熱グリースを含む伝熱材料13が、例えば回路基板12および/またはカバー15の穴(図示せず)から、回路基板12とデバイスカバー15との間の空隙に挿入される。伝熱材料13は、きわめて形状自由度の高い形態であるため、本発明の実施形態によれば、素子11間の領域および/または接点102間の領域を含む、デバイスカバー15と回路基板12との間の空隙を実質的に満たす。素子11間の領域を含むデバイスカバー15と回路基板12との間の空隙を伝熱材料13によって充填する様子は、図1Bの部分断面図に最も良く見られる。伝熱材料13が、空隙の容積を実質的に満たすのに十分な力で空隙に注入されることができ、図示した実施形態において伝熱材料13は、回路基板12に固着されているデバイスカバー15により、回路基板12とデバイスカバー15とのに保持されることを理解されたい。
【0012】
伝熱材料13を挿入した後で、図2のボックス205に示したように、空隙を封止することができる。伝熱材料13充填用かつ/または空気抜き用に形成されたデバイスカバー15および/または回路基板12の穴を封止するために、例えば、伝熱材料13を回路基板12とデバイスカバー15の間の空隙の領域内に保持する(封止する)ための固い境界を提供する固体障壁、はんだ、プラスチック、ワックスまたは他の材料を利用することができる。必要に応じて、後で、伝熱材料13を除去したり、この材料を追加したりできるように、封止は、除去可能である。
【0013】
本発明の実施形態によれば、デバイスカバー15を素子11の上部に配置する前に伝熱材料13が塗布されてもよく、配置した後で充填されてもよい。伝熱材料13は、1つの実施形態において、実際に、素子11の上、素子11の間、およびデバイスカバー15の内側を覆って、素子11とデバイスカバー15との間の熱接触をより良好にする。
【0014】
動作において、図1Aの矢印110で示したように、空気をデバイスカバー15の外側面の上を通して素子11を冷却することができる。空気は、自然に循環してもよく、ファン(図示せず)によって送風されてもよい。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の伝熱材料13が、高い伝熱特性を有し、素子11の表面ならびにコネクタ102の両方に接しているので、素子11からの熱がデバイスカバー15に容易に伝達される。本発明の実施形態のデバイスカバー15は、例えばアルミニウム、銅、グラファイトなどの高伝熱材料から作成されると有利である。デバイスカバー15の外側面(および、必要に応じて内側面)は、表面積が、平坦な場合の表面積(長さ×幅)よりも大きくなるように、寸法パターン(立体の形状パターン)や他の構成を有することができる。図1Bに例示した実施形態の場合、ストリップ(細長い形状部)151と152とが異なる高さを有しており、それにより、空気と接している面積が、素子11を覆うデバイスカバー15がそのようになっていない場合に得られる平坦な表面積よりも大きくなる。本発明の実施形態は、デバイスカバー15の外側の表面積を大きくするためのものとして他のパターンを実施することができる。そのようなパターンは、デバイスカバー15の表面に対して垂直または斜め方向に延在するような直線状または曲線状の側面でもよく、ピン、くぼみ、または他の摂動(凹凸形状等)を含んでもよい。
【0016】
伝熱材料13を挿入(充填)する1つの方法は、素子11の上部(図示せず)および複数の素子11の中とまわりを含む、複数の素子11の間にグリースや他のきわめて形状自由度の高い材料の形態の伝熱材料13を挿入することによるものであることに注意されたい。しかしながら、グリースや他のきわめて形状自由度の高い材料の代わりに、素子の存在する部分を切り欠いた、もっと固い材料を配置することもでき、それにより、グリースなどの形状自由度が高い材料が使用されない場合、伝熱材料13は、単一のものとなるかまたは分割された複数の部分となる。伝熱材料13としてグリースなどの順応性の高い材料が使用されるとき、材料を収容するために、おそらく、回路基板の周辺のまわりを例えばリム14によって形成されたL字形(断面の)ブラケットによってデバイスカバー15の外側を封止するのが好ましい場合がある。
【0017】
図1Bでは分かりにくいが、デバイスカバー15と素子11および/または材料13の間の熱接触をよくするために、デバイスカバー15を、素子11の方に少し湾曲させる(湾曲した形状とする)ことできることを理解されたい。追加または代替として、デバイスカバー15の内側面と素子11の上面および/または側面との間の良好な接触を容易にするために、デバイスカバー15の内側面にレリーフ部分など、デバイスカバー15と素子11との間の表面接触を改善する他の技術を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の実施形態による放熱パッケージの分解図である。
【図1B】図1Aの放熱パッケージの部分断面図である。
【図2】本発明の実施形態による流れ図である。
【図3】従来の技術に係る放熱機構の図である。
【図4】従来の技術に係る放熱機構の図である。
【符号の説明】
【0019】
11 素子(DIMMメモリ素子)
12 電子基板
13 伝熱材料
14 リム
15 デバイスカバー(放熱カバー)
101 締結部材
102 コネクタ(接続端子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子基板であって、
前記基板上のレセプタクルに結合された複数の接続端子をそれぞれ有する複数の個別の素子と、
前記基板に接続され、前記複数の素子を取り囲む空隙を形成し、複数の前記個別素子と熱的に接触し、外側の表面積がその平面領域よりも大きくなるように寸法的パターンを有する放熱カバーと、
を備えることを特徴とする電子基板。
【請求項2】
前記カバーが、前記基板上に配設されたときに前記複数の個別の素子間に隙間があり、前記隙間内に、自由な形態の熱伝導材料が存在することを特徴とする請求項1に記載の電子基板。
【請求項3】
前記熱伝導材料が、前記複数の接続端子および前記カバーと物理的に接触していることを特徴とする請求項2に記載の電子基板。
【請求項4】
前記電子基板が、DIMMを担持する基板であり、前記複数の個別の素子が、DIMM素子であることを特徴とする請求項1に記載の電子基板。
【請求項5】
前記熱的接触が、前記カバーへの内側の湾曲によって強化されることを特徴とする請求項1に記載の電子基板。
【請求項6】
電子回路基板からの放熱を強化するために使用される熱伝導カバーであって、前記回路基板が、接続端子によって前記回路基板に電子的に接続された複数の電子素子を有し、
前記熱伝導カバーは、
比較的平坦な内側面を有する板であって、前記複数の電子素子のうちのいくつかと熱的に結合する平坦領域を有し、空気と接触する外側面をさらに有し、前記外側面が前記内側面の前記平坦領域の面積よりも大きい面積を有する板と、
前記板と結合されたリムであって、前記リム、前記板および前記電子回路基板によって定義される空隙内で前記複数の電子素子中の複数の電子素子を取り囲むように前記板と協働するようサイズと形状が決められたリムと、
を有することを特徴とする熱伝導カバー。
【請求項7】
前記板が前記電子素子と結合関係にある状態で前記空隙内の前記電子素子のまわりの領域に熱伝導材料を充満させる手段を有することを特徴とする請求項6に記載のカバー。
【請求項8】
前記内側面が、前記電子素子の方に湾曲していることを特徴とする請求項6に記載のカバー。
【請求項9】
電子基板を組み立てる方法であって、
複数の接続端子を使用して複数の電子素子を前記電子基板に接続することであって、前記電子基板に接続されたときに前記複数の電子素子が接触可能な上面を有する、前記電子基板に接続することと、
前記電子素子の前記上面を覆うようにカバーを配置することと、
前記複数の電子素子の間に熱伝導材料を充填することであって、これにより前記熱伝導材料が、前記カバーと前記電子素子との間および前記カバーと前記電子素子の前記接続端子との間の熱伝導を提供する、充填することと、
を有することを特徴とする電子基板を組み立てる方法。
【請求項10】
前記組み立てた電子基板を、前記カバーと前記電子基板とで形成される領域内に前記熱伝導材料が残るように封止することをさらに有することを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2004−247724(P2004−247724A)
【公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−28218(P2004−28218)
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】