説明

電子安定器および状態検出方法

【課題】インバータの品質に生じる経年変化の原因を究明することができないという問題を解決する電子安定器を提供する。
【解決手段】検出器3は、インバータ回路2に含まれる対象部品2aの状態を定期的に検出する。出力器4は、検出器3にて対象部品2aの状態が検出されるたびに、その状態を示す状態情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯への電力の供給を制御する電子安定器および状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯などの放電灯への電力を制御する電子安定器が有するインバータ回路では、インバータ回路を構成する個々の部品の性能にばらつきがあると、放電灯の輝度にばらつきが生じる。
【0003】
この放電灯の輝度のばらつきを補正するための技術には、特許文献1に記載の放電灯点灯装置がある。
【0004】
これらの放電灯点灯装置は、放電灯を点灯する際、各部品の動作値が予め記憶された設定値になるように各部品を制御する。各部品の動作値とは、直流変換器が出力する直流電圧の値や、スイッチング素子の動作周波数などである。
【0005】
また、放電灯点灯装置は、放電灯に出力される電流の値が検出され、その電流の値が基準値でないと、その電流の値が基準値になるような各部品の動作値を算出する。なお、基準値は、放電灯の輝度が所望の値になるときの放電灯に出力される電流の値である。
【0006】
そして、放電灯点灯装置は、その算出した動作値と設定値とのズレを示す補正値を算出し、その補正値を記憶する。
【0007】
放電灯点灯装置は、補正値を記録すると、その後、各部品の動作値が設定値に補正値を加えた値になるように制御する。
【0008】
これにより、部品の性能にばらつきがあっても、放電灯に出力される電流の値が一定になるので、部品の性能のばらつきによって生じる放電灯の輝度にばらつきを補正することが可能になる。
【0009】
また、これとは別に、品質基準を満たしていないインバータが発見された場合、通常、メーカにおいて、調査員などがその原因を調べる。なお、品質基準を満たしていないインバータは、例えば、放電灯の輝度を所望の値することができないインバータなどである。
【0010】
この場合、調査員は、そのインバータの実際の品質と品質基準との相違が目視で確認できない場合、インバータ内の部品の状態を一つ一つ測定して、それらの部品の状態が品質基準を満たしているか否かを調べる必要があった。このため、長大な時間がかかっていた。
【0011】
特許文献1に記載の放電灯点灯装置では、その動作値と設定値とのズレを示す補正値を記憶している。このため、調査員は、その記憶された補正値を確認することで、短時間で部品の状態を把握することが可能になる。
【特許文献1】特開2004−355858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
部品の状態は経年と共に変化するため、インバータの品質も経年と共に変化する。このとき、部品の状態に生じる経年変化を把握することができれば、インバータの品質に生じる経年変化の原因を究明することができる。
【0013】
特許文献1に記載の放電灯点灯装置は、上述のように放電灯の輝度のばらつきを補正するために提案されたものであり、製造後、最初に電源が投入されたときなどのばらつきの補正時にのみ補正量が記憶される。また、ばらつきの補正が複数回行われても、最新の補正量のみが記憶され、過去の補正量が消去される。
【0014】
このため、この放電灯点灯装置では、過去の一点における部品の状態を把握することができても、その部品の状態に生じる経年変化を把握することができないので、インバータの品質に生じる経年変化の原因を究明することができないという問題がある。
【0015】
本発明の目的は、上述の課題である、インバータの品質に生じる経年変化の原因を究明することができないという問題を解決する電子安定器および状態検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による電子安定器は、高周波電圧を出力するインバータを用いて放電灯への電力の供給を制御する電子安定器であって、前記インバータに含まれる対象部品の状態を定期的に検出する検出手段と、前記検出手段にて前記状態が検出されるたびに、該状態を示す状態情報を出力する制御手段と、前記制御手段にて前記状態情報が出力されるたびに、該出力された状態情報を記録していく記録手段を含む。
【0017】
また、本発明による状態検出方法は、高周波電圧を出力するインバータを用いて放電灯への電力の供給を制御する電子安定器による状態検出方法であって、前記インバータに含まれる対象部品の状態を定期的に検出し、前記状態が検出されるたびに、該状態を示す状態情報を出力する、前記出力された状態を記録していく。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インバータの品質に生じる経年変化の原因を究明することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の第一の実施形態の電子安定器の構成を示したブロック図である。図1において、電子安定器1は、インバータ回路2と、検出器3と、出力器4と、記録器5とを含む。
【0021】
電子安定器1は、高周波電圧を出力するインバータ回路2を用いて放電灯10への電力の供給を制御する。放電灯10は、例えば、蛍光灯である。なお、放電灯10は、蛍光灯に限らず適宜変更可能である。
【0022】
インバータ回路2は、放電灯10と接続可能であり、接続された放電灯10に高周波電圧を出力して、放電灯10を点灯する。
【0023】
検出器3は、インバータ回路2に含まれる対象部品2aの状態を定期的に検出する。
【0024】
対象部品2aは、インバータ回路2に含まれる部品であれば任意の部品でよいが、インバータ回路2の品質に大きな影響を与える部品や、経年と共に状態が変化し易いと考えられる部品であることが望ましい。例えば、対象部品2aは、電解コンデンサや電界効果トランジスタなどが望ましい。
【0025】
対象部品2aが電解コンデンサの場合、検出器3は、例えば、電解コンデンサの状態として、その電解コンデンサの温度や、電解コンデンサに蓄えられた電荷などを検出する。また、対象部品2aが電界効果トランジスタの場合、検出器3は、電界効果トランジスタの状態として、電界効果トランジスタに印加されるゲート電圧を検出する。
【0026】
出力器4は、検出器3にて対象部品2aの状態が検出されるたびに、その状態を示す状態情報を出力する。
【0027】
記録器5は、出力器4が状態情報を出力するたびに、その状態情報を記録していく。
【0028】
次に動作を説明する。
【0029】
先ず、検出器3は、インバータ回路2に含まれる対象部品2aの状態を定期的に検出する。
【0030】
例えば、対象部品2aが電解コンデンサの場合、検出器3は、温度センサを有し、その温度センサを用いて、電解コンデンサの温度を検出する。また、検出器3は、電解コンデンサに蓄えられた電荷を放電し、その放電によって生じた電流を積分して、電解コンデンサに蓄えられた電荷を検出する。
【0031】
また、対象部品2aが電界効果トランジスタの場合、検出器3は、その電界効果トランジスタのゲート電極に印加されるゲート電圧を検出する。
【0032】
検出器3は、対象部品2aの状態を定期的に検出し、その検出した状態を示す状態情報を出力器4に出力する。出力器4は、状態情報を受け付けるたびに、その状態情報を記録器5に出力する。
【0033】
記録器5は、状態情報を受け付けるたびに、その状態情報を記録していく。
【0034】
次に効果を説明する。
【0035】
本実施形態によれば、検出器3は、インバータ回路2に含まれる対象部品2aの状態を定期的に検出する。出力器4は、検出器3にて対象部品2aの状態が検出されるたびに、その状態を示す状態情報を出力する。記録器5は、出力器4が状態情報を出力するたびに、その状態情報を記録していく。
【0036】
この場合、対象部品2aの状態が定期的に検出され、対象部品2aの状態が検出されるたびに、その状態を示す状態情報が出力される。
【0037】
したがって、対象部品2aの状態に生じる経年変化を把握することが可能になるので、インバータ回路2の品質に生じる経年変化の原因を究明することが可能になる。
【0038】
また、本実施形態では、対象部品2aは電解コンデンサである。検出器3は、その電解コンデンサの状態として、電解コンデンサの温度を検出する。
【0039】
この場合、電解コンデンサは、インバータ回路2の品質に大きな影響を与え、また、電圧印加時に生じる電解コンデンサの温度は、経年と共に変化すると考えられるので、効率良く、インバータ回路2の品質に生じる経年変化の原因を究明することが可能になる。
【0040】
また、本実施形態では、検出器3は、電解コンデンサの状態として、電解コンデンサに蓄えられた電荷を検出する。
【0041】
この場合、電解コンデンサは、インバータ回路2の品質に大きな影響を与え、また、電圧印加時に電解コンデンサに蓄えられる電荷の量は、経年と共に変化すると考えられるので、効率良く、インバータ回路2の品質に生じる経年変化の原因を究明することが可能になる。
【0042】
また、本実施形態では、対象部品2aが電界効果トランジスタである、検出器3は、電界効果トランジスタの状態として、電界効果トランジスタに印加されるゲート電圧を検出する。
【0043】
この場合、電界効果トランジスタは、インバータ回路2の品質に大きな影響を与え、また、電界効果トランジスタに印加されるゲート電圧は、経年と共に変化すると考えられるので、効率良く、インバータ回路2の品質に生じる経年変化の原因を究明することが可能になる。
【0044】
次に第二の実施形態について説明する。
【0045】
図2は、本発明の第一の実施形態の電子安定器を示したブロック図である。なお、図2において、図1と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略することがある。
【0046】
図2において、電子安定器1は、インバータ回路2と、検出器3と、出力器4と、記録器5とを含む。また、出力器4は、変換回路6と、記録用マイコン7とを含む。
【0047】
インバータ回路2に含まれる対象部品2aは、複数ある。なお、対象部品2aの数は、図2では、2だけだが、実際には、2に限定されない。
【0048】
検出器3は、対象部品2aのそれぞれの状態を個別に検出する。なお、検出器3は、一つの対象部品2aの互いに異なる種別の状態のそれぞれを検出してもよい。例えば、検出器3は、電解コンデンサの温度と、その電解コンデンサに蓄えられた電荷とのそれぞれを検出する。
【0049】
また、検出器3が出力する状態情報には、状態を検出した対象部品2aを特定する部品識別情報と、その状態の種別を特定する状態識別情報とを含む。
【0050】
記録器5は、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体であり、記録用マイコン7の動作を規定するプログラムを記録する。
【0051】
また、記録器5は、インバータ回路2が品質基準を満たすような対象部品2aの基準状態を示す基準情報を状態特定情報ごとに対応付けて記録する。基準情報は、例えば、インバータ回路2が品質基準を満たすような、電解コンデンサの温度の範囲、および、電解コンデンサに蓄えられた電荷を示す。また、基準情報は、インバータ回路2が品質基準を満たすような、電解トランジスタに印加されるゲート電圧の範囲を示す。
【0052】
変換回路6は、検出器3が状態情報を出力するたびに、その状態情報の形式を記録用マイコン7にて処理可能な形式に変換する。例えば、変換回路6は、検出結果がアナログ信号の場合、そのアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0053】
記録用マイコン7は、制御手段の一例である。記録用マイコン7は、コンピュータであり、記録器5に記録されたプログラムを読み取り、その読み取ったプログラムを実行して、以下の処理を行う。
【0054】
記録用マイコン7は、変換回路6にて状態情報が変換されるたびに、その変換された状態情報を記録器5に出力する。
【0055】
また、記録用マイコン7は、変換回路6にて状態情報が変換されるたびに、記録器5に記録された、その状態情報内の状態識別情報に対応する基準情報を確認する。記録用マイコン7は、その状態情報にて示される状態が、その確認した基準情報が示す基準状態に含まれるか否かを判断する。
【0056】
記録用マイコン7は、その状態が基準状態に含まれないと、インバータ回路2が品質基準を満たしていない旨を通知する。例えば、記録用マイコン7は、インバータ回路2を制御して放電灯10を消灯してもよいし、LEDなどの放電灯10と異なる発光素子を電子安定器1に備え、その発光素子を点灯させてもよいし、その旨をインバータ回路2の品質を管理するサーバなどに送信してもよい。
【0057】
次に動作を説明する。
【0058】
検出器3は、定期的に対象部品2aのそれぞれの状態を個別に検出し、その検出した状態を示す状態情報を変換回路6に出力する。
【0059】
変換回路6は、その状態情報を受け付けるたびに、その状態情報の形式を記録用マイコン7にて処理可能な形式に変換する。変換回路6は、その変換した状態情報を記録用マイコン7に出力する。
【0060】
記録用マイコン7は、状態情報を受け付けるたびに、その状態情報を記録器5に出力する。記録器5は、状態情報を受け付けるたびに、その状態情報を記録していく。
【0061】
また、記録用マイコン7は、記録器5に記録された、状態情報内の状態識別情報に対応する基準情報を確認する。記録用マイコン7は、その状態情報にて示される状態が、その確認した基準情報が示す基準状態に含まれるか否かを判断する。
【0062】
記録用マイコン7は、その状態が基準状態に含まれないと、インバータ回路2が品質基準を満たしていない旨を通知し、その後、処理を終了する。
【0063】
一方、記録用マイコン7は、その状態が基準状態に含まれると、処理を終了する。
【0064】
次に効果を説明する。
【0065】
本実施形態によれば、記録用マイコン7は、状態情報が示す状態が記録器5に記録された基準情報が示す基準状態に含まれるか否かを判断する。記録用マイコン7は、その状態が基準状態に含まれないと、インバータ回路2が品質基準を満たしていない旨を通知する。
【0066】
この場合、インバータ回路2の品質が、経年と共に変化して品質基準を満たさなくなったことを通知することが可能なる。
【0067】
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第一の実施形態の電子安定器の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の第二の実施形態の電子安定器の構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0069】
1 電子安定器
2 インバータ回路
2a 対象部品
3 検出器
4 出力器
4a 変換回路
4b 記録用マイコン
5 記録器
10 放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電圧を出力するインバータを用いて放電灯への電力の供給を制御する電子安定器であって、
前記インバータに含まれる対象部品の状態を定期的に検出する検出手段と、
前記検出手段にて前記状態が検出されるたびに、該状態を示す状態情報を出力する出力手段と、
前記制御手段にて前記状態情報が出力されるたびに、該出力された状態情報を記録していく記録手段を含む、電子安定器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子安定器において、
前記記録手段は、前記インバータが品質基準を満たすような前記対象部品の基準状態を示す基準情報を記録し、
前記出力手段は、前記状態が前記記録手段に記録された基準情報が示す基準状態に含まれるか否かを判断し、前記状態が前記基準状態に含まれないと、前記インバータが前記品質基準を満たしていない旨を通知する制御手段を含む、電子安定器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子安定器において、
前記対象部品は、電解コンデンサであり、
前記検出手段は、前記電解コンデンサの状態として、該電解コンデンサの温度を検出する、電子安定器。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電子安定器において、
前記対象部品は、電解コンデンサであり、
前記検出手段は、前記電解コンデンサの状態として、該電解コンデンサに蓄えられた電荷を検出する、電子安定器。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電子安定器において、
前記対象部品は、電界効果トランジスタであり、
前記検出手段は、前記電界効果トランジスタの状態として、該電界効果トランジスタに印加されるゲート電圧を検出する、電子安定器。
【請求項6】
高周波電圧を出力するインバータを用いて放電灯への電力の供給を制御する電子安定器による状態検出方法であって、
前記インバータに含まれる対象部品の状態を定期的に検出し、
前記状態が検出されるたびに、該状態を示す状態情報を出力する、
前記出力された状態を記録していく、状態検出方法。
【請求項7】
請求項6に記載の状態検出方法において、
前記電子安定器は、前記インバータが品質基準を満たすような前記対象部品の基準状態を示す基準情報を記録する記録手段を含み、
前記状態が前記記録手段に記録された基準情報が示す基準状態に含まれるか否かを判断し、
前記状態が前記基準状態に含まれないと、前記インバータが前記品質基準を満たしていない旨を通知する、状態検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−194959(P2009−194959A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30513(P2008−30513)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】