説明

電子打楽器

【課題】演奏者が意図する楽音の制御を行うことができる電子打楽器を提供する。
【解決手段】振動フラグがセットされている場合は(S12:Yes)、タイマ2aが所定時間(例えば、100msec)を計時したか否かを判断し(S13)、タイマ2aが所定時間を計時した場合は(S13:Yes)、フラグメモリ4aに記憶される振動フラグをリセットする(S14)。タイマ2aにより計時された時間が所定時間に達していない場合(S13:No)は、この変位センサ処理を終了して、メイン処理に戻る。
振動フラグがセットされていない場合(S12:No)、またはS14の処理を終了した場合は、上部シンバル100がオープン位置からクローズ位置に移動したか否かを判断する(S15)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子打楽器に関し、特に、演奏者が意図する楽音の制御を行うことができる電子打楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アコースティックハイハットシンバルを模倣した電子打楽器が提供されており、このような電子打楽器では、フットペダルの踏み込み量、即ち、フットペダルの踏み込みに基づく上部シンバルの変位量に応じてハイハットの音色が制御されるように構成されている。特開2005−195981号公報(特許文献1)には、フットペダルの踏み込み量に応じて上部シンバルが上下動し、アコースティックハイハットシンバルと同様の演奏感を模擬し得る電子ハイハットシンバルが開示されている。
【0003】
図6は、特許文献1に開示されている電子ハイハット80を示し、図6(a)は、全体の側面断面図であって、上部シンバル100、下部シンバル200、及び、上部シンバル100と下部シンバル200とに挟まれた部分の断面は省略して図示し、これらの部分の断面を図6(b)に図示している。
【0004】
図6(a)に示すように、電子ハイハット80は、上部シンバル100と、下部シンバル200と、上部シンバル100が揺動可能に連結されているエクステンションロッド420と、下部シンバル200が揺動可能に連結されている中空シャフト部410と、この中空シャフト部410の内部下端に嵌め込まれているスプリング430と、踏み込み式のフットペダル440と、エクステンションロッド420とフットペダル440とを連結するジョイント450と、中空シャフト部410に連結されている電子ハイハット80全体の起立を支持するための脚部460などを備えている。
【0005】
エクステンションロッド420は、その下方において、ジョイント450を介してフットペダル440に連結され、フットペダル440の踏み込み操作に応じて、エクステンションロッド420が上下動するように構成されている。一方で、エクステンションロッド420の上方には、連結具によって上部シンバル100が揺動可能に連結されており、フットペダル440の踏み込み操作に応じて、エクステンションロッド420が上下動すると、それに伴って、上部シンバル100が上下動する。
【0006】
このエクステンションロッド420において、その下部は、上部中空シャフト411及び下部中空シャフト412を貫通すると共に、下部中空シャフト412の内部に嵌め込まれたスプリング430もまた貫通している。このスプリング430が、エクステンションロッド420に設けられている節部420aの下側と下部中空シャフト412の節部412の上側との間に挟持されることにより、エクステンションロッド420は、常時、上方への付勢力を受けるので、フットペダル440の踏み込み操作が行われていないときの上部シンバル100と下部シンバル200は、所定の間隔で離間されている。
【0007】
次に、図6(b)を参照して、上部シンバル100と下部シンバル200とについて説明する。図6(b)は、上部シンバル100と下部シンバル200とが離れた状態であるオープン位置を示し、電子ハイハット80のフットペダル440が踏み込まれた場合は、上部シンバル100と下部シンバル200とが密着する状態であるクローズ位置になる。
【0008】
上部シンバル100は、上面がゴムにより形成される打面110を有し、上部シンバル100の打面110の裏側には、振動を検出する振動センサ70が、振動センサ取り付けフレーム120に設けられている。振動センサ70は、上部シンバル100の打撃又は上部シンバル100と下部シンバルとの接触による上部シンバル100の振動の振動レベルを検出するセンサであり、例えば、ピエゾ圧電センサである。なお、この振動センサ70が振動レベルを検出すると、非図示の配線によりリンク出力用のステレオジャック150へ、その振動レベルに応じたアナログ電気信号が伝達される。このアナログ電気信号は、更に、ステレオジャック150から、プラグ130、ケーブル131、及び、ステレオジャック230を介して、下部シンバル200のリンク入力用のステレオジャック250へ入力され、非図示の出力用端子から出力される。
【0009】
変位センサ60は、図6(b)に示すように、上部シンバル100と下部シンバル200との間に配置され、この変位センサ60は、上面が開口された中空の円筒の内側の底部に収納された円形のセンサシートと、そのセンサシートの上に配置され、このセンサシートの上に配置され、上から下へ向かって広がる円錐状のコイルばねと、そのコイルばねの上部に接触する蓋部とから構成されている。フットペダル440が踏み込まれると、上部シンバル100と下部シンバル200との間がその踏み込み量に応じて次第に閉じる方向へ移行する。
【0010】
その際、フットペダル440の踏み込みによって下降すると蓋部が押し下げられ、それによって、コイルばねは、クッションシートに対して押しつけられて圧縮され、その圧縮力により上下方向に変形する。コイルばねが上下方向に圧縮されて生じた変形を、センサシート部を用いて電気的に検出することにより、フットペダル440の踏み込み量、即ち、上部シンバル100の変位量(以下、「上部シンバル位置」と称す)を検出する。フットペダル440の踏み込みによりコイルばねが圧縮変形されると、円錐形状であるそのコイルばねが、センサシート部の抵抗印刷シート材を押圧し、それによって、抵抗印刷シート材の一部がカーボン印刷基板に押しつけられる。その結果として、抵抗印刷シート材上の導電インクがカーボン印刷基板の電極パターンに接触し、カーボン印刷基板の電気抵抗値が変化する。この電気抵抗値は、コイルばねの圧縮変形の大きさ、即ち、フットペダル440の踏み込みによる上部シンバル位置に応じて変化する。この電気抵抗値は、非図示の出力端子を介して検出される。
【0011】
このように、上部シンバル100が可動する電子ハイハットシンバルにおいて、上部シンバル100の位置(上部シンバル位置)を変位センサ60により検出するように構成した場合、上部シンバル100が打撃されたり、フットペダルが踏み込まれて下部シンバル200と接触することにより振動した場合に、変位センサ60により検出された上部シンバル位置に応じた楽音が発生される。その際、振動センサ70が上部シンバル100の振動レベルを検出し、その振動レベルが所定の閾値を超えた場合に、音源へ楽音の発生を指示するトリガ信号が出力される。
【0012】
図7は、変位センサ60により検出された上部シンバル位置と音源により発音される楽音の音色との関係を概念的に示す図であり、横軸を変位センサ値とし、縦軸を発音される楽音のレベルとして示す。横軸を示す変位センサ値は、左端が上部シンバル100と下部シンバルとが密着した位置を示し、右方向に行くほど上部シンバル100と下部シンバル200との距離が大きくなる値を示す。なお、変位センサ値が所定の閾値より小さい範囲をクローズ位置、所定の閾値より大きい範囲をオープン位置と称す。
【0013】
変位センサ値の出力範囲に対して、5種類のハイハット音(オープン音、ハーフ音、スライト音、クローズ音、プレス音)が対応付けられており、オープン位置に対応するオープン音、ハーフ音、スライト音はオープン系の楽音であり、クローズ位置に対応するクローズ音、プレス音はクローズ系の楽音に分類される。
【0014】
オープン系の楽音(オープン音、ハーフ音、スライト音)は変位センサ値に応じてそれぞれの楽音がクロスフェードされ、クローズ系の楽音(クローズ音、プレス音)も同様に変位センサ値に応じてクロスフェードされる。
【0015】
また、オープン系の楽音とクローズ系の楽音は、アコースティックなハイハットシンバルがそうであるように、変位センサ値の所定の閾値で互いに排他的に切り換えられる。
【0016】
上部シンバル位置がオープン位置であってオープン系の楽音が発音しているときにペダルが踏み込まれ、変位センサ値が所定の閾値以下になるとクロ−ズ系の楽音の発音が指示され、現在発音中のオープン系の楽音を急速減衰(トランケート)させると共に、クローズ系の楽音を発生させるよう音源が制御される。
【特許文献1】特開2005−195981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記のような電子ハイハットシンバルにおいて、フットペダルを踏み込まない状態で、上部シンバルをスティックなどで強く打撃すると、上部シンバルが下降し、上部シンバルの位置が閾値に達すると、演奏者が意図しないのに、シンバル音が消音される場合があるという問題点があった。
【0018】
図8は、その問題点を示したタイミングチャートである。図8(a)は、横軸を時間、縦軸を変位センサ値として示す図であり、変位センサ値がこのように変化した場合に、音源により発生される楽音の様子を図8(b)、(c)に示す。
【0019】
図8(b)は、横軸を時間、縦軸を音源により発生されるオープン系の楽音のレベルを示し、図8(c)は、同様に横軸を時間、縦軸を音源により発生されるクローズ系の楽音のレベルを示す図である。
【0020】
変位センサ値が閾値(一点鎖線で示す)近傍のオープン位置にあるとき、タイミングaで上部シンバル100が打撃された場合を示し、図8(a)に示すように、変位センサ値は、タイミングaから下降を開始し、タイミングbで所定の閾値を下回りクローズ位置となる。一度下降した後、再び上昇し、タイミングcで閾値を上回り再びオープン位置になる。
【0021】
タイミングaにおいて上部シンバル100が打撃されたので、図8(b)に示すようにオープン系の楽音の発音が開始される。次に、タイミングbで上部シンバル100がオープン位置からクローズ位置に変化するので、発音しているオープン系の楽音が急速減衰される。同時に、図8(c)に示すようにクローズ系の波形が発音される。その後タイミングcで変位センサ値が元の値に戻ることで再度オープン系の楽音が発音され、クローズ系の楽音は、減衰される。したがって、タイミングb−c間では演奏者が意図しないオープン系の楽音の急速減衰が行われ、クローズ系の楽音の発生が行われてしまうことになる。
【0022】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、演奏者が意図する楽音の制御を行うことができる電子打楽器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、請求項1記載の電子打楽器は、任意に位置が操作される打面の位置を検出する位置検出手段と、前記打面が打撃されたかを検出する打撃検出手段と、その打撃検出手段により打面が打撃されたと検出された場合に前記位置検出手段により検出された打面の位置に応じた楽音の発生を音源に指示する楽音発生指示手段と、前記位置検出手段により検出された位置が第1の位置である場合に前記楽音発生指示手段による指示に応じて発生された楽音の停止を音源に指示する楽音停止指示手段と、前記打撃検出手段により前記打面が打撃されたと検出された時からの時間を計時する第1の計時手段と、その第1の計時手段により計時される時間が所定の時間を経過するまでの間、前記楽音停止指示手段による楽音の停止指示を抑制する制御手段とを備えている。
【0024】
請求項2記載の電子打楽器は、請求項1記載の電子打楽器において、前記制御手段は、前記第1の計時手段により計時される時間が前記所定の時間を経過した後、前記位置検出手段により検出された位置が第1の位置である場合に前記楽音停止指示手段による楽音の停止指示を行うように制御するものである。
【0025】
請求項3記載の電子打楽器は、請求項1または2記載の電子打楽器において、前記楽音発生指示手段は、前記位置検出手段により前記打面の位置が第2の位置であると検出された場合に所定の音色の楽音を発生するように音源に指示し、前記第1の計時手段は、前記打撃検出手段により前記打面が打撃されたと検出された時の前記位置検出手段により検出された打面の位置が第2の位置である場合に計時を行う。
【0026】
請求項4記載の電子打楽器は、請求項1から3のいずれかに記載の電子打楽器において、前記打面の振動のレベルを検出する振動レベル検出手段を備え、前記打撃検出手段は、前記振動レベル検出手段により検出された振動のレベルが第1の閾値より大きい場合に打面が打撃されたと検出し、前記第1の計時手段は、前記振動レベル検出手段により検出された振動のレベルが第1の閾値より大きい値である第2の閾値より大きい場合に計時を行うものである。
【0027】
請求項5記載の電子打楽器は、請求項1から4のいずれかに記載の電子打楽器において、前記第1の計時手段により計時される時間が前記所定の時間を経過するまでの間に前記位置検出手段により前記打面の位置が第1の位置であると検出された時、計時を開始する第2の計時手段を備え、その第2の計時手段が計時する時間が所定時間を経過した時、前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された打面の位置が第1の位置ではない場合は、前記楽音停止指示手段による楽音の停止指示を抑制し、前記位置検出手段により検出された打面の位置が第1の位置である場合は、前記楽音停止指示手段による楽音の停止指示を行うように制御するものである。
【0028】
請求項6記載の電子打楽器は、請求項1から4のいずれかに記載の電子打楽器において、前記位置検出手段により検出された位置の変動を緩慢な変動に変更するフィルタ手段を備え、前記制御手段は、前記第1の計時手段により計時される時間が前記所定の時間を経過するまでの間は、前記フィルタ手段により変更された位置が第1の位置である場合に前記楽音発生指示手段による指示に応じて発生された楽音の停止を音源に指示し、前記第1の計時手段により計時される時間が前記所定の時間を経過した後は、前記位置検出手段により検出された位置が第1の位置である場合に前記楽音停止指示手段による楽音の停止指示を行うように制御するものである。
【発明の効果】
【0029】
請求項1記載の電子打楽器によれば、位置検出手段により任意に位置が操作される打面の位置が検出され、打撃検出手段により打面が打撃されたかが検出される。打撃検出手段により打面が打撃されたと検出された場合に位置検出手段により検出された打面の位置に応じた楽音の発生が音源に楽音発生指示手段により指示される。例えば、電子ハイハットにおいて、上部シンバルが打撃された場合に、上部シンバルが上方に位置する場合は、オープン音が発生され、上部シンバルが下方に位置する場合は、クローズ音が発生される。
【0030】
楽音停止指示手段は、位置検出手段により検出された位置が第1の位置である場合に、楽音発生指示手段により発生された楽音の停止を音源に指示する。電子ハイハットにおいて、オープン音を発生している場合に、上部シンバルが下方に操作されるとオープン音は停止される。
【0031】
第1の計時手段は、打撃検出手段により打面が打撃されたと検出された時から時間を計時し、制御手段は、その第1の計時手段により計時される時間が所定の時間を経過するまで、楽音停止指示手段による楽音の停止指示を抑制する。よって、上部シンバルが打撃されることによって、上部シンバルの位置が下方に移動した場合であっても、所定の時間は、打撃により発生される楽音が停止されないよう制御される。従来、上部シンバルが打撃された場合は、比較的短い時間、上部シンバルが下方に移動されることがあり、演奏者が意図しない楽音の停止が行われたが、請求項1によれば、演奏者が意図しない楽音の停止が抑制され、演奏者が意図する楽音の制御を行うことができるという効果がある。
【0032】
請求項2に記載の電子打楽器によれば、請求項1記載の電子打楽器の奏する効果に加え、制御手段は、第1の計時手段により計時される時間が所定の時間を経過した後、位置検出手段により検出された位置が第1の位置であれば楽音発生指示手段により発生された楽音の停止を指示するものであるので、演奏者が意図して上部シンバルを下降させるなどの操作を行った場合は、発生している楽音を停止することができる。よって、演奏者が意図する楽音の制御を行うことができるという効果がある。
【0033】
請求項3記載の電子打楽器によれば、請求項1または2記載の電子打楽器の奏する効果に加え、楽音発生指示手段は、位置検出手段により検出された位置が第2の位置である場合に所定の音色の楽音を発生するように音源に指示し、第1の計時手段は、位置検出手段により検出された位置が第2の位置である場合に計時を行うものであるので、例えば、上部シンバルが上方に位置する場合に打撃されると、オープン音を発生し、その場合に計時が行われ、その計時された時間が所定の時間を経過するまでは、オープン音の停止が抑制される。よって、演奏者が意図する楽音の制御を行うことができるという効果がある。
【0034】
請求項4記載の電子打楽器によれば、請求項1から3のいずれかに記載の電子打楽器の奏する効果に加え、振動レベル検出手段は、打面の振動のレベルを検出し、第1の計時手段は、その振動レベル検出手段により検出された振動のレベルが第1の閾値より大きい場合に打面が打撃されたと検出し、第1の計時手段は、振動レベル検出手段により検出された振動のレベルが前記第1の閾値より大きい値である第2の閾値より大きい場合に計時を行うものである。よって、打撃が小さい場合は、楽音を発生し、楽音の停止を抑制しないが、打撃が大きい場合は、楽音を発生するとともに、楽音の停止を抑制する。振動レベルが小さい場合は、打撃強度が小さく、例えば、上部シンバルが移動されないが振動レベルが大きい場合は、打撃強度が大きく、上部シンバルが移動されて楽音が停止される場合があったが、打撃強度が大きい場合に、楽音の停止が抑制される。したがって、演奏者が意図する楽音の制御を行うことができるという効果がある。
【0035】
請求項5記載の電子打楽器によれば、請求項1から4のいずれかに記載の電子打楽器の奏する効果に加え、第1の計時手段により計時される時間が前記所定の時間を経過するまでの間に位置検出手段により検出された打面の位置が第1の位置であると検出した時、計時を開始する第2の計時手段を備え、制御手段は、その第2の計時手段が計時する時間が所定時間を経過した時、位置検出手段により検出された位置が第1の位置ではない場合は、楽音停止指示手段による楽音の停止指示を行なわないように制御し、位置検出手段により検出された位置が第1の位置である場合は、楽音停止指示手段による楽音の停止指示を行うように制御する。よって、演奏者が打面を打撃した場合に、打面が降下することによって楽音が停止されるのを抑制するとともに、演奏者が意図して打面の位置を第1の位置に移動した場合は、楽音をすぐに停止することができるという効果がある。
【0036】
請求項6記載の電子打楽器によれば、請求項1から4のいずれかに記載の電子打楽器の奏する効果に加え、フィルタ手段は、位置検出手段により検出された位置の変動を緩慢な変動に変更し、制御手段は、第1の計時手段により計時される時間が所定の時間を経過するまでの間は、フィルタ手段により変更された位置が第1の位置である場合に楽音発生指示手段による指示に応じて発生された楽音の停止を音源に指示するので、打面が打撃されることにより打面が下降した場合であっても、その下降による移動距離が小さく変更され、打面の打撃により開始された発音が停止されるのを抑制することができる。
【0037】
一方、その所定時間が経過した後は、変更手段により変更された位置ではなく位置検出手段により検出された打面の位置により第1の位置であるか否かが判断されるので、例えば、演奏者がフットペダルを操作することにより上部シンバルが下降された場合は、上部シンバルの打撃により開始された発音が停止され、演奏者が意図する楽音の制御を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい第1実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の電子打楽器1の電気的構成を示すブロック図である。電子打楽器1は、演奏者が意図するように楽音が制御されるものである。図1が示すように、電子打楽器1は、CPU2と、ROM3と、RAM4と、操作パネル5と、入力部6と、音源7と、D/A変換器8とを主に設けている。
【0039】
CPU2は、電子打楽器1全体を制御する中央演算処理装置であり、時間を計時するタイマ2aが、内蔵されている。ROM3は、このCPU2により実行される各種の制御プログラム3aや、その実行の際に参照される固定値データが格納されている。なお、後述する図2および図3に示すフローチャートの処理を実行するプログラムはこのROM3に記憶されている制御プログラム3aの一部である。
【0040】
RAM4は、CPU2で実行される制御プログラム3aを実行する際に使用される各種レジスタ群などが設定されたワーキングエリアや、処理中のデータを一時的に格納するテンポラリエリア等を有しランダムにアクセスできる書き換え可能なメモリである。このテンポラリエリアには、フラグメモリ4aと上部シンバル位置メモリ4bとが設けられる。フラグメモリ4aには、打撃フラグが記憶される。この打撃フラグは、上部シンバル100が打撃された場合にセットされ、タイマ2aによって所定時間が計時された後にリセットされる。この所定時間の間は、上部シンバル位置がオープン位置からクローズ位置に移動された場合でも、上部シンバルが打撃されたことに応じて発生される楽音を停止しないように制御される。
【0041】
上部シンバル位置メモリ4bには、変位センサ60により検出された上部シンバル100の位置(以下、「上部シンバル位置」と称す)が記憶される。上部シンバル位置は、所定時間毎に検出され、この上部シンバル位置メモリ4bには、前回検出された位置情報が記憶され、今回検出された位置と比較することにより、上部シンバル位置がオープン位置からクローズ位置へ移動したか否かが判定される。
【0042】
音源7は、CPU2の指示に従って、楽音を発生し、またはその発生している楽音を停止するものである。音源7には、非図示の波形ROMが設けられており、この波形ROMには、変位センサ60により検出される変位センサ値が示す上部シンバル位置に対応するハイハット音(オープン音、ハーフ音、クローズ音など)の波形データが記憶されている。振動センサ70により検出された振動レベルが閾値を超えた場合に、打面が打撃されたものと判断し、その時の変位センサ60から出力される変位センサ値に応じた音色のデジタル楽音を波形ROMから読み出し、フィルタやエフェクトなどの所定の処理を行って出力する。
【0043】
音源7には、フィルタやエフェクトなどの処理を行うDSP(Digital Signal Processor)が設けられ、そのDSPによりTVF(Time Valiant Filter)が形成される。このTVFは、遮断周波数を変更することができるローパスフィルタであり、例えば、音源7によりオープン音を発生する場合は、遮断周波数が高く設定され、クローズ音を発生する場合は、遮断周波数が低く設定される。
【0044】
音源7により出力されたデジタル楽音信号は、D/A変換器8に出力される。D/A変換器8は、入力されたデジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換し、アンプ21に出力する。アンプ21は、入力されたアナログ楽音信号を増幅し、スピーカ22を駆動する。
【0045】
操作パネル5には、音量などのパラメータを設定する操作子と、その操作子により設定されたパラメータの値などを表示する表示器が備えられている。センサに対する閾値なども、この操作パネルによって任意に設定される。
【0046】
入力部6は、上述の図6に示す電子ハイハットに設けられる変位センサ60と振動センサ70とからそれぞれアナログ信号を入力する入力端子を備え、変位センサ60により検出される変位センサ値(位置情報)、振動センサ70により検出される振動レベルがそれぞれ入力される。これらのアナログ値は、それぞれ、非図示のA/D変換器へ入力され、A/D変換器において各アナログ値は、所定時間毎にデジタル値に変換され、CPU2に出力される。
【0047】
次に、図2および図3を参照して、上記のように構成された電子打楽器1において、適切に楽音を制御するための処理について説明する。図2は、電子打楽器1で実行されるメイン処理を示すフローチャートである。このメイン処理は、電源が投入されると起動し、電源が投入されている間、CPU2によって繰り返し実行される。
【0048】
このメイン処理では、まず、フラグメモリ4aに記憶される打撃フラグをリセットする(S1)。次に、振動センサ70により検出された振動レベルを入力し、上部シンバル100が打撃されたか否かを判断する(S2)。この判断は、振動レベルが第1の閾値より大きい場合に打撃されたと判断し、振動レベルが第1の閾値より小さい場合は、打撃が行われていないと判断する。
【0049】
打撃が行われたと判断された場合は(S2:Yes)、変位センサ60により検出された現在の上部シンバル位置がオープン位置であるか否かを判断する(S3)。なお、この実施形態では、説明を簡単にするために上部シンバル位置が、所定の位置より上方である場合(図7におけるオープン位置)には、音源7はオープン音(オープン、ハーフ、スライト音)を出力し、所定の位置より下方である場合(図7におけるクローズ位置)は、クローズ音(クローズ、プレス)を出力するものとする。
【0050】
上部シンバル位置がオープン位置であると判断された場合は(S3:Yes)、音源7にオープン音を発生するように指示する(S4)。振動センサ70により検出された振動レベルが、第2の閾値より大きいか否か判断する(S5)。この第2の閾値は、上記第1の閾値より大きい値に設定されている。振動センサ70により検出された振動レベルが、第2の閾値より大きいと判断された場合は(S5:Yes)、フラグメモリ4aに記憶される打撃フラグをセットし(S6)、タイマ2aによる計時を開始する(S7)。
【0051】
一方、S3の判断処理において、上部シンバル位置が、所定の位置より下方であって、オープン音を出力する領域でないと判断された場合は(S3:No)、音源7にクローズ音を発生するように指示する(S8)。S2の判断処理において、打撃が行われていないと判断された場合(S2:No)、またはS7の処理を終了した場合、またはS8の処理を終了した場合、またはS5の判断処理において、振動センサ70により検出された振動レベルが、第2の閾値より大きいと判断されない場合(S5:No)は、次に変位センサ処理を行い(S9)変位センサ処理を終了した後、S2の処理に戻る。この変位センサ処理については、図3を参照して説明する。
【0052】
図3は、変位センサ処理を示すフローチャートである。変位センサ処理では、まず、変位センサ60から入力部6に入力されてA/D変換された変位センサ値を読み込み(S11)、次に、振動フラグがセットされているか否かを判断する(S12)。振動フラグがセットされている場合は(S12:Yes)、タイマ2aが所定時間T0(例えば、100msec)を計時したか否かを判断し(S13)、タイマ2aが所定時間T0を計時した場合は(S13:Yes)、フラグメモリ4aに記憶される振動フラグをリセットする(S14)。この所定時間T0は、演奏者が上部シンバル100を打撃することにより、上部シンバル100がクローズ位置に位置する時間の最大時間に設定され、この時間は、上部シンバル100の材質や、構造などによって定まる。
【0053】
振動フラグがセットされていない場合(S12:No)、またはS14の処理を終了した場合は、上部シンバル100がオープン位置からクローズ位置に移動したか否かを判断する(S15)。前回検出した上部シンバル位置は、上部シンバル位置メモリ4bに記憶され、今回検出された位置により、上部シンバル100の位置がオープン位置からクローズ位置に移動したか否かを判断する。判断を終了した後、今回検出した上部シンバル位置を上部シンバル位置メモリ4bに記憶する。
【0054】
上部シンバル位置がオープン位置からクローズ位置に移動した場合は(S15:Yes)、音源7にオープン音の停止を指示する(S16)。S13の判断処理において、タイマ2aにより計時された時間が所定時間T0に達していない場合(S13:No)、または、S15の判断処理において、上部シンバル位置がオープン位置からクローズ位置に移動したのではない場合は(S15:No)、またはS16の処理を終了した場合は、この変位センサ処理を終了して、メイン処理に戻る。
【0055】
以上、第1の実施形態について説明したように、上部シンバル100が打撃された場合に、上部シンバル100が打撃された時からタイマ2aによる計時を開始し、その計時が所定の時間に至るまでは、上部シンバル位置が検出されないので、クローズ位置に移動した場合であっても、上部シンバル100が打撃されたことにより発生される楽音を停止しないように制御される。よって、演奏者が上部シンバル100を打撃し、それによって上部シンバル100が下降してクローズ位置に至った場合であっても、演奏者が意図しない楽音の停止が行われない。実施形態では、特に上部シンバル100が強く打撃され、上部シンバル100の振動レベルが第2の閾値より大きい場合に、タイマ2aによる計時を行い、所定の時間、楽音の停止を抑制する。一方、タイマ2aによる計時時間が、所定時間T0を超えた場合は、上部シンバル位置が検出され、クローズ位置である場合には、オープン音が停止される。
【0056】
次に、図4を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、図3に示す変位センサ処理のみが異なり、他の部分については、第1の実施形態と同一である。なお、第2実施形態では、振動フラグに加えて、位置フラグがRAM4のフラグメモリ4aに記憶される。この位置フラグは、上部シンバル100が打撃された時から所定時間T1を経過するまでの間に、上部シンバル位置がオープン位置からクローズ位置に移動した場合にセットされ、その時から所定時間T2が経過した場合にリセットされる。
【0057】
第2実施形態では、上部シンバル100が打撃された時、タイマ2aにより計時が開始され、所定時間T1が経過するまでの間に、上部シンバル位置がオープン位置からクローズ位置に移動した場合に、タイマ2aによる計時を再開し、所定時間T2の後に上部シンバル位置が依然としてクローズ位置である場合は、発生される楽音を停止するように制御する。このようにすることにより、所定時間T1の間に、演奏者が電子ハイハット80のフットペダル440を操作して上部シンバル100をクローズ位置に移動した場合は、楽音をすぐに停止することができる。
【0058】
図4は、第2実施形態における変位センサ処理を示すフローチャートである。この変位センサ処理では、まず、変位センサ60から入力部6に入力されてA/D変換された変位センサ値を読み込み(S21)、次いで、位置フラグがセットされているか否かを判断する(S22)。なお、位置フラグは、振動フラグと同様、電子打楽器1の電源が投入された時点で、リセットされている。
【0059】
位置フラグがセットされていない場合は(S22:No)、タイマ2aが所定時間T1(例えば、100msec)を計時したか否かを判断し(S23)、タイマ2aが所定時間T1を計時した場合は(S23:Yes)、振動フラグをリセットする(S24)。
【0060】
S24の処理を終了した場合、またはタイマ2aが所定時間T1を計時していない場合は(S23:No)、上部シンバル位置がオープン位置からクローズ位置に移動したか否かを判断する(S25)。上部シンバル位置がオープン位置からクローズ位置に移動した場合は(S25:Yes)、振動フラグがセットされているか否かを判断し(S26)、振動フラグがセットされている場合は(S26:Yes)、位置フラグをセットする(S27)とともに振動フラグをリセットし(S28)、タイマ2aを再スタートする(S29)。一方、S26の判断処理において、振動フラグがセットされていなければ(S26:No)、発音中のオープン音を停止するように音源7に指示する(S30)。S25の判断処理において、上部シンバル位置がオープン位置からクローズ位置に移動していない場合(S25:No)、または、S29の処理を終了した場合は、またはS30の処理を終了した場合は、この変位センサ処理を終了する。
【0061】
S22の判断処理において、位置フラグがセットされている場合は(S22:Yes)、タイマ2aが所定時間T2を計時したか否かを判断する(S31)。この所定時間T2は、S13で判断した所定時間T1より短い時間(例えば、60msec)であり、演奏者がフットペダル440を踏み込んだ場合に、上部シンバル100がクローズ位置より下方に位置する最小時間である。
【0062】
タイマ2aが所定時間T2を計時した場合は(S31:Yes)、位置フラグをリセットし(S32)、上部シンバル位置がクローズ位置より下方に位置するか否かを判断する(S33)。上部シンバル位置がクローズ位置より下方に位置する場合は(S33:Yes)、演奏者がフットペダル440を踏み込んだ場合であるので、発音中のオープン音を停止するように音源7を制御する(S30)。タイマ2aが所定時間T2を計時していない場合(S31:No)、または、上部シンバル位置がクローズ位置より上方に位置する場合は(S33:No)、この変位センサ処理を終了し、メイン処理に戻る。
【0063】
以上、説明したように、第2の実施形態では、上部シンバル100に打撃が検出された場合に、タイマ2aにより計時が開始され、その計時が所定時間T1を経過するまでに、上部シンバル100がオープン位置からクローズ位置に移動した場合は、計時を再スタートし、その計時が所定時間T2を経過した場合においても上部シンバル位置がクローズ位置でない場合は、発生しているオープン音の停止を行わず、所定時間T2を経過した場合においても上部シンバル位置がクローズ位置である場合は、発生しているオープン音を停止するように構成されている。よって、演奏者が、上部シンバル100を打撃してオープン音が発生され、その打撃によって上部シンバルが下降してクローズ位置に至った場合でも、オープン音は停止されない。これにより、演奏者が意図する楽音の制御を行うことができる。
【0064】
次に、図5を参照して、第3の実施形態について説明する。第1の実施形態では、タイマ2aにより計時されている時間がT0の間は、上部シンバル位置を無視することにより、実際に上部シンバル100がクローズ位置であっても、発生しているオープン音を停止することを抑制している。第3の実施例では、タイマ2aにより計時されている時間が所定時間T3の間は、上部シンバル位置の変動をローパスフィルタに入力し、緩慢な変動に変更してその変更された位置情報に基づいて上部シンバル位置を判断する。この処理を行うことにより、上部シンバル100が打撃されて、上部シンバル100が実際にクローズ位置に至った場合でも、上部シンバル位置の変動が緩和されてクローズ位置に至らないと判断される。
【0065】
図5は、第3の実施形態における変位センサ処理を示すフローチャートである。第1の実施形態における変位センサ処理と同一処理であるステップについては、同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0066】
この第3の実施形態における変位センサ処理では、振動フラグがセットされている場合は(S12:Yes)、タイマ2aが所定時間T3(例えば、80msec)を計時したか否かを判断し(S13)、タイマ2aが所定時間T3を計時した場合は(S13:Yes)、フラグメモリ4aに記憶される振動フラグをリセットする(S14)。
【0067】
タイマ2aが計時した時間が所定時間T3以内であれば(S13:No)、S11の処理において検出された上部シンバル位置の値にローパスフィルタ処理を施す(S41)。このローパスフィルタ処理は、検出された上部シンバル位置の変動を緩慢な変動に変更する処理であって、例えば、前回検出された上部シンバル位置(上部シンバル位置メモリ4bに記憶されている)と今回検出された上部シンバル位置との差に所定の係数(1より小さい値)を乗算し、その積を前回検出された上部シンバル位置に加算して、その加算された値を現在の上部シンバル位置とするという積分処理である。この処理により変更された上部シンバル位置が上部シンバル位置メモリ4bに記憶される。
【0068】
振動フラグがセットされていない場合(S12:No)、またはS14の処理、またはS41の処理を終了した場合は、上部シンバル位置メモリ4bに記憶された上部シンバル位置に基づいて、上部シンバル位置がオープン位置からクローズ位置に移動したか否かを判断する(S15)。
【0069】
したがって、タイマ2aにより計時された時間が所定時間T3に至っていない場合は、ローパスフィルタ処理されて変更された上部シンバル位置により、上部シンバル100がオープン位置からクローズ位置に移動したか否かが判断される。よって、上部シンバル100が演奏者によって打撃され、その打撃によって上部シンバル100が下降した場合であっても、上部シンバル100の移動が少ない値に変更され、上部シンバル100がオープン位置からクローズ位置に移動したと判断されるのを抑制することができる。
【0070】
一方、タイマ2aにより計時された時間が所定時間T3を経過した場合は、ローパスフィルタ処理されない上部シンバル位置により、上部シンバル100がオープン位置からクローズ位置に移動したか否かが判断され、演奏者がフットペダル440を操作して上部シンバル100をクローズ位置に移動した場合は、楽音をすぐに停止することができる。
【0071】
上部シンバル100の位置がオープン位置からクローズ位置に移動した場合は(S15:Yes)、音源7にオープン音の停止を指示する(S16)。また、上部シンバル100の位置がオープン位置からクローズ位置に移動したのではない場合は(S15:No)、上部シンバル位置メモリ4bに記憶された上部シンバル位置に基づいて、上部シンバル位置がクローズ位置からオープン位置に移動したか否かを判断する(S42)。
【0072】
上部シンバル位置がクローズ位置からオープン位置に移動した場合は(S42:Yes)、音源7に形成されるTVFの遮断周波数を高域側に変更する(S43)。なお、このTVFの遮断周波数は、クローズ音を発生する場合に、低域側に設定されたものである。
【0073】
S16の処理、またはS43の処理を終了した場合、またはS42の判断処理において、上部シンバル位置がクローズ位置からオープン位置に移動したのではないと判断された場合は、この変位センサ処理を終了して、メイン処理に戻る。
【0074】
以上、第3の実施形態について説明したように、上部シンバル100が打撃された場合に、所定の時間の間は、検出された上部シンバル位置にローパスフィルタ処理を行って上部シンバル位置の変動を緩和し、実際に上部シンバル100がクローズ位置まで下降した場合であっても、上部シンバル位置がクローズ位置ではないと判断され、演奏者が意図しないオープン音の停止を抑制することができる。
【0075】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0076】
例えば、上記実施形態では、振動センサ70により検出された振動レベルが、所定の閾値より大きい場合に、計時を開始し、その計時された時間が所定時間T0、T1、T3を経過するまでは、楽音の停止を抑制するものとしたが、この所定の時間は、変位センサ60が検出した上部シンバル位置に応じて設定してもよい。例えば、上部シンバル100の位置がクローズ位置に近い場合には、この所定時間を短く設定し、上部シンバル100の位置がクローズ位置から離れた上方に位置する場合には、長く設定する。このように設定することにより、上部シンバル100の位置がクローズ位置に近い場合には、早く、フットペダル操作による発音の停止を行うことができ、上部シンバル100の位置がクローズ位置から離れた上方に位置する場合に、遅れて上部シンバル100の位置がオープン位置からクローズ位置に至った場合に、発音が停止されることを抑制することができる。
【0077】
また、この所定時間を、振動レベルに応じた時間に設定するようにしてもよい。即ち、振動レベルが小さい場合は、所定時間を0とし、振動レベルが所定の値以上の場合は、振動レベルに比例した所定時間を設定するようにしてもよい。
【0078】
また、上記第1の実施形態では、上部シンバル100の打面110の打撃が検出された場合に、所定時間T0の間は、上部シンバル100の位置を検出しないようにしたが、所定時間T0の間は、検出された上部シンバル位置に所定値を加算する、または、クローズ位置を所定値だけ低く設定し、上部シンバル100の位置がクローズ位置に至らないようにしてもよい。
【0079】
また、上記第3の実施形態では、上部シンバル位置の変動を緩和するフィルタ処理を、プログラムにより実行するものとしたが、上部シンバル100の位置をアナログ電気信号に変換し、抵抗とコンデンサなどにより構成される公知のアナログローパスフィルタにより行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の電子打楽器の構成を示すブロック図である。
【図2】CPUにより実行されるメイン処理を示すフローチャートである。
【図3】変位センサ処理を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態における変位センサ処理を示すフローチャートである。
【図5】第3の実施形態における変位センサ処理を示すフローチャートである。
【図6】従来の技術であるは電子ハイハットの構成を示す図であり、(a)は、電子ハイハットの全体側面図であり、(b)は、上部シンバルと下部シンバルとを示す断面側面図である。
【図7】上部シンバルの位置と音源により発生される楽音の音色との関係を示す概念図である。
【図8】従来の技術の問題点を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 電子打楽器
2 CPU
2a タイマ(計時手段の一例)
3 ROM
4 RAM
6 入力部
7 音源
60 変位センサ(位置検出手段の一例)
70 振動センサ(振動検出手段の一例)
100 上部シンバル
200 下部シンバル
440 フットペダル
S2 打撃検出手段
S11 位置検出手段
S4,S8 楽音発生指示手段
S16,S30 楽音停止指示手段
S7 計時手段
S41 フィルタ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に位置が操作される打面の位置を検出する位置検出手段と、
前記打面が打撃されたかを検出する打撃検出手段と、
その打撃検出手段により打面が打撃されたと検出された場合に前記位置検出手段により検出された打面の位置に応じた楽音の発生を音源に指示する楽音発生指示手段と、
前記位置検出手段により検出された位置が第1の位置である場合に前記楽音発生指示手段による指示に応じて発生された楽音の停止を音源に指示する楽音停止指示手段と、
前記打撃検出手段により前記打面が打撃されたと検出された時からの時間を計時する第1の計時手段と、
その第1の計時手段により計時される時間が所定の時間を経過するまでの間、前記楽音停止指示手段による楽音の停止指示を抑制する制御手段とを備えていることを特徴とする電子打楽器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の計時手段により計時される時間が前記所定の時間を経過した後、前記位置検出手段により検出された位置が第1の位置である場合に前記楽音停止指示手段による楽音の停止指示を行うように制御するものであること特徴とする請求項1記載の電子打楽器。
【請求項3】
前記楽音発生指示手段は、前記位置検出手段により前記打面の位置が第2の位置であると検出された場合に所定の音色の楽音を発生するように音源に指示し、
前記第1の計時手段は、前記打撃検出手段により前記打面が打撃されたと検出された時の前記位置検出手段により検出された打面の位置が第2の位置である場合に計時を行うことを特徴とする請求項1または2記載の電子打楽器。
【請求項4】
前記打面の振動のレベルを検出する振動レベル検出手段を備え、
前記打撃検出手段は、前記振動レベル検出手段により検出された振動のレベルが第1の閾値より大きい場合に打面が打撃されたと検出し、前記第1の計時手段は、前記振動レベル検出手段により検出された振動のレベルが第1の閾値より大きい値である第2の閾値より大きい場合に計時を行うものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子打楽器。
【請求項5】
前記第1の計時手段により計時される時間が前記所定の時間を経過するまでの間に前記位置検出手段により前記打面の位置が第1の位置であると検出された時、計時を開始する第2の計時手段を備え、
その第2の計時手段が計時する時間が所定時間を経過した時、前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された打面の位置が第1の位置ではない場合は、前記楽音停止指示手段による楽音の停止指示を抑制し、前記位置検出手段により検出された打面の位置が第1の位置である場合は、前記楽音停止指示手段による楽音の停止指示を行うように制御するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子打楽器。
【請求項6】
前記位置検出手段により検出された位置の変動を緩慢な変動に変更するフィルタ手段を備え、
前記制御手段は、前記第1の計時手段により計時される時間が前記所定の時間を経過するまでの間は、前記フィルタ手段により変更された位置が第1の位置である場合に前記楽音発生指示手段による指示に応じて発生された楽音の停止を音源に指示し、前記第1の計時手段により計時される時間が前記所定の時間を経過した後は、前記位置検出手段により検出された位置が第1の位置である場合に前記楽音停止指示手段による楽音の停止指示を行うように制御するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子打楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−80444(P2009−80444A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326753(P2007−326753)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】