説明

電子機器、固定制御方法

【課題】近接無線通信によってデータ通信を行う場合に、通信相手とする機器との通信状況に最適な近接状態にする。
【解決手段】パーソナルコンピュータ10には、近接無線通信用アンテナ21と、近接無線通信用アンテナ21の近傍にデジタルカメラ25を自機と固定するための固定装置22a,22bが設けられる。パーソナルコンピュータ10は、近接されたデジタルカメラ25との通信状態を検知して、この検知された通信状態に応じて固定装置22a,22bによるデジタルカメラ25の固定を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接無線通信を行う電子機器、及び固定制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線を介して近接通信を行う電子機器は、通信相手とする他の機器に近接させることにより通信を開始するものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載された近接交信システムは、無線による問いかけに応答して情報を無線出力する情報保持装置と、この情報保持装置に対して無線により問いかけを行い、それに応答して情報保持装置から無線で送信される情報を受信する質問装置とにより構成される。情報保持装置と質問装置には、互いに装置が近接すると互いに引き合う作用を起こす部材を設けている。例えば、情報保持装置には、保持装置により発生される磁界に反応して、位置を変位させる磁気感応部が設けられている。
【0004】
質問装置を情報保持装置に近接させることにより、情報保持装置に設けられた磁気感応部が変位する。このため、情報保持装置が取り付けられた複数の対象物が存在する場合に、特定の対象物に取り付けられている情報保持装置の磁気感応部が変位していることが確認できる。従って、複数の情報保持装置のうち何れか1つの磁気感応部が変位する状態となるように質問装置を近接させて、特定の情報保持装置とのみ交信可能な状態にすることができる。
【特許文献1】特開2002−123804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来のシステムでは、質問装置を情報保持装置に近接させることで、磁力によって情報保持装置に設けられた磁気感応部を変位させ、通信の対象とする特定の情報保持装置を捉えることができる。
【0006】
しかしながら従来のシステムでは、通信の対象を捉えることができたとしても、質問装置と情報保持装置との位置関係を安定させることができない。すなわち、質問装置を特定の情報保持装置に近接させて交信を開始した後、質問装置が情報保持装置から離れてしまうと交信が途絶えてしまう。
【0007】
また、電子機器間においてデータ通信を実行する場合、通信相手とする機器との通信状況によって、機器間の最適な近接状態が異なる。例えば、データ転送サイズが小さかったり、通信時間が短い通信種別であったりする場合では、電子機器間の近接状態を維持する時間は短くて良い。逆に、データ転送サイズが大きかったり、通信時間が長い通信種別(例えば、大容量記憶装置のデータ転送)であったりする場合では、電子機器間の近接状態を長い時間維持しなければならない。
【0008】
このように従来のシステムでは、近接無線通信によってデータ通信を行う場合に、通信相手とする機器との通信状況に最適な近接状態にすることができなかった。
【0009】
本発明は上述の事情を考慮してなされたものであり、近接無線通信によってデータ通信を行う場合に、通信相手とする機器との通信状況に最適な近接状態にすることが可能な電子機器、及び固定制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明は、近接無線通信用のアンテナと、前記アンテナの近傍に設けられた、他の機器を自機と固定するための固定手段と、前記アンテナを通じた近接無線通信により前記他の機器とデータ通信を行うデータ通信手段と、前記データ通信手段による前記他の機器との通信状態を検知する通信状態検知手段と、前記通信状態検知手段により検知された通信状態に応じて、前記固定手段による前記他の機器の固定を制御する固定制御手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、近接無線通信によってデータ通信を行う場合に、通信相手とする機器との通信状況に最適な近接状態にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
まず、図1、図2、及び図3を参照して、本発明の実施形態に係る電子機器の構成について説明する。本実施形態の電子機器は、例えば、図1に示すノートブック型のパーソナルコンピュータ10、デジタルカメラ25により実現されている。以下の説明では、パーソナルコンピュータ10とデジタルカメラ25との間で近接無線通信を実行する場合を例にして説明する。
【0013】
なお、本発明の電子機器は、パーソナルコンピュータ10やデジタルカメラ25だけでなく、例えば携帯電話機、PDA(personal digital assistant)、携帯型オーディオ/ビデオプレイヤ、デジタルビデオカメラ、携帯型カーナビゲーション装置など、プログラムを実行するプロセッサが搭載された機器であれば良い。
【0014】
図1はコンピュータ10のディスプレイユニットを開いた状態における斜視図である。本コンピュータ10は、コンピュータ本体11と、ディスプレイユニット12とから構成されている。ディスプレイユニット12には、LCD(Liquid Crystal Display)17から構成される表示装置が組み込まれている。
【0015】
ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11に対し、コンピュータ本体11の上面が露出される開放位置とコンピュータ本体11の上面を覆う閉塞位置との間を回動自在に取り付けられている。コンピュータ本体11は薄い箱形の筐体を有しており、その上面にはキーボード13、パワーオン/パワーオフするためのパワーボタン14、入力操作パネル15、タッチパッド16、およびスピーカ18A,18Bなどが配置されている。
【0016】
入力操作パネル15は、押されたボタンに対応するイベントを入力する入力装置であり、複数の機能をそれぞれ起動するための複数のボタンを備えている。
【0017】
さらに、コンピュータ本体11の上面部には、近接無線通信用アンテナ21が配設されている。パーソナルコンピュータ10には、他の電子機器と近接させた状態で無線通信を行う近接無線通信機能が搭載されており、近接無線通信用アンテナ21を通じて他の電子機器とデータ通信を実行する。また、近接無線通信用アンテナ21の近傍には、近接無線通信の対象とする他の機器(例えば、デジタルカメラ25)を自機に固定するための複数の固定装置22a,22bが配置されている。複数の固定装置22a,22bは、例えば近接無線通信用アンテナ21を挟む位置に配置している(詳細については、図4(A)に示す)。
【0018】
一方、図1に示すデジタルカメラ25は、パーソナルコンピュータ10と近接させた状態で無線通信を行う近接無線通信機能が搭載されている。デジタルカメラ25には、例えば裏面側筐体(通常、ディスプレイが設けられた側)に近接無線通信用アンテナ26が配設されている。また、デジタルカメラ25には、パーソナルコンピュータ10と同様にして、近接無線通信用アンテナ26の近傍には、近接無線通信の対象とする他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ10)との位置関係を固定するための複数の固定装置28a,28bが配置されている。複数の固定装置28a,28bは、パーソナルコンピュータ10に設けられた固定装置22a,22bと同様にして、近接無線通信用アンテナ26を挟む位置に配置している(詳細については、図4(B)に示す)。
【0019】
デジタルカメラ25に設けられた近接無線通信用アンテナ26と固定装置28a,28bとの相対的な位置関係は、近接無線通信の相手となるパーソナルコンピュータ10に設けられた近接無線通信用アンテナ21と固定装置22a,22bとの相対的な位置関係と対象関係にある。すなわち、パーソナルコンピュータ10の近接無線通信用アンテナ21に対して、デジタルカメラ25の近接無線通信用アンテナ26を相対させて近接させると、固定装置22a,22bと固定装置28a,28bとがそれぞれ相対するようになっている。
【0020】
図2は、本実施形態におけるパーソナルコンピュータ10の主要な構成を示すブロック図である。
本実施形態におけるパーソナルコンピュータ10には、他の機器と近接させた状態で高速無線通信を行う近接無線通信機能が搭載されている。パーソナルコンピュータ10は、デジタルカメラ25との間で近接無線通信を実行する際に、固定装置22a,22bにより、通信状況に応じてデジタルカメラ25を自機と固定することで、通信状況に最適な近接通信状況をユーザに提供する。
【0021】
図1に示すように、パーソナルコンピュータ10には、CPU30、ROM31、RAM32、NVRAM(Non-volatile RAM)33、表示制御部34、ディスプレイ35、近接無線通信部36(近接無線通信用アンテナ21)、電源部37、固定装置制御部38、及び固定装置39(22a,22b)が設けられている。
【0022】
CPU30は、プログラムに従って装置全体の制御を司る。CPU30は、データ通信プログラムを実行することでデータ通信を制御するデータ通信機能、通信制御プログラムを実行することで近接無線通信部36による近接無線通信を制御する近接無線通信制御機能、固定制御プログラムを実行することで固定装置制御部38による固定装置39(22a,22b)の駆動を制御する固定制御機能を実現する。
【0023】
ROM31は、各種プログラムやデータが記録される。
RAM32は、CPU30により実行される各種プログラムやデータが一時的に記録される。
NVRAM13は、各種設定データや各種プログラムにより処理されるデータが記録される。
表示制御部34は、CPU30の制御のもとで、ディスプレイ35における表示を制御する。
【0024】
ディスプレイ35は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)により構成され、パーソナルコンピュータ10による通常の処理に伴う情報が表示される。
【0025】
近接無線通信部36は、CPU30の制御(近接無線通信制御機能)のもとで、他の機器との間で近接無線通信を実行する。近接無線通信部36による近接無線通信は、例えばP2P(peer-to-peer)に特化した高速無線通信を実行する。近接無線通信部36は、筐体に実装された近接無線通信用アンテナ21と他の機器に設けられたアンテナとの通信距離が、例えば30mm以内にある場合に無線通信を実行可能とする。近接無線通信用アンテナ21は、誘導電界を用いた無線アンテナである。誘導電界を用いた無線アンテナは、近距離では高い利得を得ることができ、離れると急激に利得が減衰する特徴を有する。
【0026】
電源部37は、各部に対して電力を供給する。
固定装置制御部38は、CPU30の制御(固定制御機能)のもとで、データ通信機能により実行される通信の状況に応じて、通信相手とする他の機器を自装置に固定させるために固定装置39の駆動を制御する。本実施形態では、固定装置39を電磁石により構成し、固定装置制御部38は、固定装置39による磁力の発生と停止、及び磁力の強度を制御することができる。
【0027】
固定装置39は、例えば電磁石により構成され、固定装置制御部38の制御により磁力を発生させる。固定装置39は、磁力を発生させることで、他の機器の固定装置に設けられた、磁石により吸引される例えば金属部材を吸引する。固定装置39は、他の機器に設けられた固定装置を磁力により結合することで、パーソナルコンピュータ10の筐体に他の機器を固定して位置関係が変更されないようにする。
【0028】
なお、固定装置39は、電磁石により構成するだけでなく、他の方法によって近接無線通信の相手となる他の機器を自機に固定させる構成にしても良い。例えば、吸気することにより他の機器を吸い付ける構成としたり、あるいは機械的に他の機器を固定する構成としたりしても良い。なお、何れの構成をとる場合であっても、固定強度を調整(変更)できるようにすることが好ましい。
【0029】
図3は、データ通信プログラム、固定制御プログラムにより実現される機能の構成を示すブロック図である。
パーソナルコンピュータ10は、データ通信プログラムをCPU30により実行することでデータ通信部40を実現する。データ通信部40は、近接無線通信用アンテナ21を通じて、他の機器との近接無線通信によりデータ通信を実行する。データ通信部40は、ユーザからの要求に応じたデータ通信の種別に応じた通信プロトコルに従い、他の機器との間でデータ通信を実行する。例えば、ユーザからファイル転送が要求された場合には、ファイル転送用の通信プロトコルとしてOBEXプロトコルに従い、データ通信を制御する。データ通信部40は、近接無線通信用アンテナ21が他の機器(例えばデジタルカメラ25)の近接無線通信用アンテナ26に近接され、通信可能な距離(例えば30mm)に到達すると、近接無線通信部36を通じて近接無線通信が可能な状態となる。
【0030】
また、パーソナルコンピュータ10は、固定制御プログラムをCPU30により実行することで、固定制御機能として、通信状態検知部42、通信プロトコル判別部44、及び転送時間判別部46を実現する。
【0031】
通信状態検知部42は、データ通信部40による他の機器との通信状態を検知する。通信状態検知部42は、データ通信部40によるデータ通信の開始/終了を検知する。
【0032】
通信プロトコル判別部44は、データ通信部40によるデータ通信の種別に応じた通信プロトコルを検知する。例えば、データ通信部40によりファイル転送が実行される場合、通信プロトコル判別部44は、ファイル転送用のOBEXプロトコルによるデータ通信を実行する通知をデータ通信部40から受信する。通信プロトコル判別部44は、データ通信部40
また、転送時間判別部46は、データ通信部40によりデータ通信を実行する通信プロトコルによりデータ転送サイズ判別できる場合に、データ通信部40からデータ転送サイズの通知を受信する。転送時間判別部46は、このデータ転送サイズをもとにして転送時間を判別する。
【0033】
固定制御機能では、通信状態検知部42により検知されるデータ通信部40によるデータ通信の開始/終了、通信プロトコル判別部44により判別される通信プロトコル、あるいは転送時間判別部46により判別されたデータ転送時間などの通信状況に応じて、固定装置制御部38を制御する。すなわち、固定装置39(22a,22b)による他の機器を自機に固定するための動作を調整する。
【0034】
次に、パーソナルコンピュータ10とデジタルカメラ25に配置された近接無線通信用アンテナ21,26と固定装置22a,22b,28a,28bの配置について詳細に説明する。
【0035】
図4(A)は、コンピュータ本体11に設けられた近接無線通信用アンテナ21と複数の固定装置22a,22bの配置を示す図である。近接無線通信用アンテナ21は、コンピュータ本体11の上面部に取り付けられている。例えば、近接無線通信用アンテナ21は、筐体表面、あるいは筐体内側に装着されているものとする。近接無線通信用アンテナ21が配置された位置は、ユーザが外部から認識できるように筐体表面が所定の形状とする、あるいはマークなどを付すものとする。2つの固定装置22a,22bは、図4(A)に示すように、例えば近接無線通信用アンテナ21を挟み、対角線上に配置されている。
【0036】
図4(B)は、デジタルカメラ25に設けられた近接無線通信用アンテナ26と固定装置28a,28bの配置関係を示す図である。図4(B)に示すように、デジタルカメラ25には、例えば裏側に近接無線通信用アンテナ26と固定装置28a,28bが設けられている(破線によって表している)。近接無線通信用アンテナ26と固定装置28a,28bとの位置関係は、図4(A)(B)に示すように、パーソナルコンピュータ10に設けられた近接無線通信用アンテナ21と固定装置22a,22bとの配置と同じとなっている。従って、デジタルカメラ25を近接無線通信用アンテナ26がパーソナルコンピュータ10の近接無線通信用アンテナ21と近接させることにより、固定装置28a,28bは、それぞれパーソナルコンピュータ10の固定装置22a,22bと相対して、相互に吸着することができる。
【0037】
固定装置22a,22b,28a,28bにより、相互に通信相手を自機に固定することにより、パーソナルコンピュータ10とデジタルカメラ25の位置関係が固定される。また、近接無線通信用アンテナ21,26は、それぞれ固定装置22a,22b,28a,28bに挟まれた位置に配置されているため、固定装置22a,22b,28a,28bが相互に吸着されることで、近接無線通信用アンテナ21と近接無線通信用アンテナ26とが中心を一致させるようにして相対し、密着された状態で固定される。このため、データ通信時の近接無線通信用アンテナ21と近接無線通信用アンテナ26との近接状態を安定化させることができる。
【0038】
なお、パーソナルコンピュータ10に対して、1つの近接無線通信用アンテナ21に2つの固定装置22a,22bを配置する場合には、一方の固定装置22aが他の機器の固定装置を吸引するように作用し、他方の固定装置22bが通信相手となる他の機器の固定装置により吸引されるように構成することができる。
【0039】
例えば、パーソナルコンピュータ10の固定装置22aは、磁力を発生することでデジタルカメラ25の固定装置28aを吸着し、デジタルカメラ25の固定装置28bは、磁力を発生することでパーソナルコンピュータ10の固定装置22bを吸着する。この場合、複数の固定装置を配置したとしても1つの固定装置に対する駆動制御のみで良いため構成を簡単にすることができる。
【0040】
また、比較的大型のパーソナルコンピュータ10に設けられる固定装置22a,22bは、他の機器の固定装置28a,28bを吸引するように作用し、小型携帯用のデジタルカメラ25などの電子機器に設けられる固定装置28a,28bは、パーソナルコンピュータ10の固定装置22a,22bによって吸引される金属材料により構成されるようにしても良い。これにより、小型の電子機器における固定装置の実装を容易にすることができる。
【0041】
さらに、図1及び図4に示す構成では、1つの近接無線通信用アンテナ21に対して2つの固定装置22a,22bを設けた構成としているが、3つ以上の固定装置を配置する構成としても良い。この場合、3つ以上の固定装置は、近接無線通信用アンテナ21を挟むように配置されることが好ましい。
【0042】
また、図1及び図4では、固定装置22a,22bの形状を円形としているが、その他の形状としても良い。この場合、コンピュータ本体11に配置された固定装置の形状によって、固定装置に対する近接無線通信用アンテナ21が配置された位置を特定できれば、1つの固定装置を設ける構成としても良い。
【0043】
図5には、パーソナルコンピュータ10の近接無線通信用アンテナ21に対して、デジタルカメラ25の近接無線通信用アンテナ26を近接させる様子を示している。
【0044】
図5に示すように、近接無線通信用アンテナ21と近接無線通信用アンテナ26とを相対させることで、固定装置22a,22bと固定装置28a,28bとがそれぞれ相対する。そして、近接無線通信が可能な距離Aにまでデジタルカメラ25が近接されると通信可能な状態となる。近接無線通信用アンテナ21,26は、誘導電界を利用しているため、近接無線通信の可能な距離(例えば30mm)になることで高い利得が得られるようになり、近接無線通信が可能な状態となったことを検知できる。
【0045】
本実施形態におけるパーソナルコンピュータ10、デジタルカメラ25では、近接無線通信が可能な状態になると、固定装置22a,22b,28a,28bを駆動させて、通信相手とする機器を吸引するように動作する。
【0046】
図6には、パーソナルコンピュータ10とデジタルカメラ25が相互に通信相手とする機器を自機に固定している状態を示している。
【0047】
図6に示すように、固定装置22a固定装置28a、固定装置22bと固定装置28bがそれぞれ相対して相手を固定するため、近接無線通信用アンテナ21,26を近接(この場合は密着)させた状態で固定することができる。
【0048】
次に、本実施形態のパーソナルコンピュータ10による固定制御処理についてフローチャートを参照しながら説明する。
まず、図7に示すフローチャートを参照しながら、基本的な固定制御処理の動作について説明する。
データ通信部40は、ユーザからの要求に応じたデータ通信が可能な状態となっているものとする。例えば、パーソナルコンピュータ10は、キーボード13に対するユーザの操作により、近接無線通信によるデータ転送の実行が指示され、転送対象とするファイルが設定されているものとする。この時、デジタルカメラ25は、パーソナルコンピュータ10に近接されていないものとする。
【0049】
通信状態検知部42は、データ通信部40により実行されるデータ通信の通信状態を監視している(ステップA1)。通信状態に変化がない場合には(ステップA2、No)、通信状態検知部42は、データ通信部40による通信状態の監視を継続する(ステップA1)。
【0050】
ここで、デジタルカメラ25がパーソナルコンピュータ10に近接され、パーソナルコンピュータ10の近接無線通信用アンテナ21と、デジタルカメラ25の近接無線通信用アンテナ26との距離が、近接無線通信が可能な距離に到達したものとする。この場合、データ通信部40は、予め設定さたれ近接無線通信の実行要求に応じて、転送対象とするファイルの転送動作を開始する。
【0051】
一方、通信状態検知部42は、通信状態に変化があったことを検知すると(ステップA2、Yes)、データ通信が開始された場合には、固定装置制御部38に対して固定装置22a,22bの駆動を指示する(ステップA5)。
【0052】
固定装置22a,22bは、固定装置制御部38により駆動されることで磁力を発生し、近接されているデジタルカメラ25に設けられた固定装置28a,28bを吸着するように作用する。なお、デジタルカメラ25においても、同様にして、パーソナルコンピュータ10と近接されることで固定装置28a,28bを駆動し、パーソナルコンピュータ10の固定装置22a,22bを吸着するように作用する。
【0053】
この結果、図6に示すように、パーソナルコンピュータ10の近接無線通信用アンテナ21とデジタルカメラ25の近接無線通信用アンテナ26とが密着された状態で、パーソナルコンピュータ10とデジタルカメラ25とが固定される。通信状態検知部42は、通信状態の感じ状態に戻る(ステップA1)。
【0054】
一方、通信状態検知部42は、データ通信部40によるデータ通信の通信状態に変化があり(ステップA2、Yes)、それが通信終了であった場合には(ステップA4、Yes)、固定装置22a,22bによる固定を解除するため、固定装置制御部38に対して固定装置22a,22bの駆動停止を指示する(ステップA6)。
【0055】
これにより、パーソナルコンピュータ10とデジタルカメラ25の固定状態は解除され、デジタルカメラ25をパーソナルコンピュータ10から離すことができる。
【0056】
なお、ステップA6において、固定装置制御部38に対して固定装置22a,22bの駆動停止を指示して完全に固定状態を解除するのではなく、固定強度を弱くするように固定装置制御部38に指示するようにしても良い。これにより、パーソナルコンピュータ10の上にデジタルカメラ25を載置させた状態でデータ通信を実行しているように場合に、データ通信の終了と同時に固定が解除されて、デジタルカメラ25がパーソナルコンピュータ10から落下するといったことを回避できる。
【0057】
このように、本実施形態における固定制御処理では、データ通信の状態を監視し、パーソナルコンピュータ10にデジタルカメラ25が近接されることで近接無線通信が開始されると、固定装置22a,22bを駆動して、通信相手となる近接されたデジタルカメラ25を自機に固定することができる。
【0058】
次に、図8に示すフローチャートを参照しながら、通信プロトコルに応じて固定装置22a,22bの駆動を制御する場合の固定制御処理の動作について説明する。なお、図7に示す固定制御処理と基本的な動作が同じであるので、異なる処理についてのみ説明する。
【0059】
データ通信部40は、ユーザからの要求に応じたデータ通信の種別に応じた通信プロトコルに従い、データ通信を実行する。例えば、ファイル転送処理の実行が要求されている場合にはOBEXプロトコル(プロトコル1)に従ってデータ通信を実行する。また、大容量記憶装置のデータ転送を実行する場合には、大規模データ転送用の通信プロトコル(プロトコルn)に従ってデータ通信を実行する。
【0060】
通信プロトコル判別部44は、通信状態検知部42によってデータ通信の開始が検知された場合に(ステップB3、Yes)、データ通信部40により実行されるデータ通信の通信プロトコルを判別する(ステップB5)。
【0061】
ここで、データ通信部40によるデータ通信の通信プロトコルがOBEXプロトコルであった場合には、通信プロトコル判別部44は、固定装置制御部38に対して固定装置22a,22bの駆動を指示する。この場合、通信プロトコル判別部44は、固定装置22a,22bによる固定力が弱くなるように固定装置制御部38に対して駆動を指示する(ステップB6)。なお、固定力については、通信プロトコル判別部44において、プロトコル毎に予め設定されているものとする。ここでは、OBEXプロトコルに対して予め設定された固定力となるように、固定装置制御部38に対して固定装置22a,22bの駆動を指示する。
【0062】
一方、データ通信部40によるデータ通信の通信プロトコルが大規模データ転送用の通信プロトコルであった場合には、通信プロトコル判別部44は、固定装置制御部38に対して、固定力が強くなるように固定装置制御部38に対して駆動を指示する(ステップB7)。
【0063】
なお、通信が終了した場合には、前述と同様にして、固定装置制御部38による固定装置22a,22bに対する駆動を停止させて、固定装置22a,22bによる固定を解除する(ステップB4,B8)。
【0064】
このように、近接無線通信により実行されるデータ通信の通信プロトコルを判別し、通信プロトコルに応じて固定装置22a,22bの強度を制御することで、通信状況に最適な近接無線通信の状況を確保することができる。例えば、大規模なデータ転送を実行する場合には、固定装置22a,22bにより通信相手とする電子機器を強力に自機に固定することで、不意の通信状態切断によるファイル破損などを回避する環境をユーザに提供することができる。
【0065】
次に、図9に示すフローチャートを参照しながら、データ転送の転送時間(通信時間)に応じて固定装置22a,22bの駆動を制御する場合の固定制御処理の動作について説明する。なお、図7に示す固定制御処理と基本的な動作が同じであるので、異なる処理についてのみ説明する。
【0066】
データ通信部40は、ユーザからの要求に応じたデータ通信の種別に応じた通信プロトコルに従い、データ通信を実行する。
【0067】
転送時間判別部46は、通信状態検知部42によってデータ通信の開始が検知された場合に(ステップC3、Yes)、データ通信部40により実行されるデータ通信の通信プロトコルがデータ転送サイズが判別可能なプロトコルであるかを判別する。ここで、データ転送サイズが判別できないプロトコルの場合(ステップC5、No)、転送時間判別部46は、固定装置制御部38に対して固定装置22a,22bの駆動を指示する(ステップC8)。
【0068】
一方、データ転送サイズが判別可能なプロトコルの場合、転送時間判別部46は、データ通信部40からデータ転送サイズを取得して転送時間を判別する。ここで、転送時間が予め設定された基準時間より短い場合には(ステップC6、転送時間短い)、転送時間判別部46は、固定装置制御部38に対して固定装置22a,22bに対する駆動を指示しない。すなわち、デジタルカメラ25がパーソナルコンピュータ10に近接されたとしても、デジタルカメラ25を自機に固定させない。
【0069】
なお、デジタルカメラ25の近接無線通信用アンテナ26と近接無線通信用アンテナ21に誘導するために、固定装置制御部38に対して弱く固定力となるように固定装置22a,22bの駆動を指示するようにしても良い(ステップC7)。
【0070】
また、転送時間が予め設定された基準時間より短くない場合には(ステップC6、転送時間長い)、転送時間判別部46は、固定装置制御部38に対して固定装置22a,22bに対する駆動を指示する。
【0071】
なお、通信が終了した場合には、前述と同様にして、固定装置制御部38による固定装置22a,22bに対する駆動を停止させて、固定装置22a,22bによる固定を解除する(ステップC4,C9)。
【0072】
このように、データ転送時間が短い通信状況では、パーソナルコンピュータ10に対してデジタルカメラ25を固定しないことにより、ユーザは、デジタルカメラ25をパーソナルコンピュータ10に近接させる操作を簡単に行ってデータ転送を完了させることができ、転送時間が長い通信状況では、前述のようにして、固定装置22a,22bによってデジタルカメラ25を自機に固定させた状態でデータ通信を実行することで、不意の通信状態切断によるファイル破損などを回避することができる。
【0073】
なお、前述した説明では、図8と図9のフローチャートに示す固定制御処理について個々に説明しているが、両方の固定制御処理を組み合わせて実行することも可能である。
【0074】
また、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施形態における電子機器としてパーソナルコンピュータ10とデジタルカメラ25を示す図。
【図2】本実施形態におけるパーソナルコンピュータ10の主要な構成を示すブロック図。
【図3】データ通信プログラム、固定制御プログラムにより実現される機能の構成を示すブロック図。
【図4】本実施形態におけるコンピュータ本体11に設けられた近接無線通信用アンテナ21と複数の固定装置22a,22bの配置と、デジタルカメラ25に設けられた近接無線通信用アンテナ26と固定装置28a,28bの配置関係を示す図。
【図5】本実施形態におけるパーソナルコンピュータ10の近接無線通信用アンテナ21に対して、デジタルカメラ25の近接無線通信用アンテナ26を近接させる様子を示す図。
【図6】本実施形態におけるパーソナルコンピュータ10とデジタルカメラ25が相互に通信相手とする機器を自機に固定している状態を示す図。
【図7】本実施形態における基本的な固定制御処理の動作について示すフローチャート。
【図8】本実施形態における通信プロトコルに応じて固定装置22a,22bの駆動を制御する場合の固定制御処理の動作について示すフローチャート。
【図9】本実施形態におけるデータ転送の転送時間に応じて固定装置22a,22bの駆動を制御する場合の固定制御処理の動作について示すフローチャート。
【符号の説明】
【0076】
10…パーソナルコンピュータ、21,26…近接無線通信用アンテナ、22a,22b,28,28b…固定装置、25…デジタルカメラ、30…CPU、36…近接無線通信部、38…固定装置制御部、40…データ通信部、42…通信状態検知部、44…通信プロトコル判別部、46…転送時間判別部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接無線通信用のアンテナと、
前記アンテナの近傍に設けられた、他の機器を自機と固定するための固定手段と、
前記アンテナを通じた近接無線通信により前記他の機器とデータ通信を行うデータ通信手段と、
前記データ通信手段による前記他の機器との通信状態を検知する通信状態検知手段と、
前記通信状態検知手段により検知された通信状態に応じて、前記固定手段による前記他の機器の固定を制御する固定制御手段と
を具備したことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記通信状態検知手段は、前記他の機器との通信開始と通信終了を検知し、
前記固定制御手段は、前記通信状態検知手段により検知された前記通信開始と前記通信終了に応じて、前記固定手段による固定を制御することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記固定制御手段は、前記通信状態検知手段により検知された前記通信開始に応じて、前記固定手段による固定を開始させ、前記通信終了に応じて、前記固定手段による固定の強度を弱くすることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記データ通信手段によるデータ通信の種別を判別する通信判別手段をさらに具備し、
前記固定制御手段は、前記通信判別手段により判別された通信プロトコルに応じて、前記固定手段による固定の強度を制御することを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項5】
前記データ通信手段によるデータ通信に要する時間を判別する通信時間判別手段をさらに具備し、
前記固定制御手段は、前記通信時間判別手段により判別された通信時間に応じて、前記固定手段により前記他の機器の固定を制御することを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項6】
前記固定制御手段は、前記通信時間判別手段により判別された通信時間が、予め設定された基準時間より短い場合には、前記固定手段により前記他の機器を固定せず、前記通信時間が前記基準時間以下より長い場合には、前記固定手段により前記他の機器を固定することを特徴とする請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
前記アンテナを機器筐体に配置し、前記アンテナを挟む位置に複数の前記固定手段を配置することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項8】
近距離無線用のアンテナの近傍に他の機器を自機と固定するための固定手段が設けられた電子機器における固定制御方法であって、
前記アンテナを通じた近接無線通信による、前記他の機器とのデータ通信の状態を検知し、
この検知された通信状態に応じて、前記固定手段による前記他の機器の固定を制御することを特徴とする固定制御方法。
【請求項9】
前記他の機器とのデータ通信の種別をさらに判別し、
この判別されたデータの種別に応じて、前記固定手段による固定の強度を制御することを特徴とする請求項8記載の固定制御方法。
【請求項10】
前記他の機器とのデータ通信に要する時間をさらに判別し、
この判別されたデータ通信の時間に応じて、前記固定手段による前記他の機器の固定を制御することを特徴とする請求項8記載の固定制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−41477(P2010−41477A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202990(P2008−202990)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【特許番号】特許第4405570号(P4405570)
【特許公報発行日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】