説明

電子機器の冷却システム

【課題】発熱量が大きな電子機器を、小さなランニングコストで効率的に冷却することができる電子機器の冷却システムを提供する。
【解決手段】電子機器に近接してそれぞれ設けられ、冷媒を気化させることにより該電子機器を冷却する蒸発器と、前記気化した冷媒を外気によって冷却して凝縮させる冷却塔と、前記冷媒を冷却する熱交換器と、前記蒸発器と前記冷却塔との間で前記冷媒が自然循環するように接続された第1の循環ラインと、前記第1の循環ラインを分岐させ、前記蒸発器と前記熱交換器との間で前記冷媒が循環するように接続された第2の循環ラインと、前記第1の循環ラインから前記第2の循環ラインからの冷媒量を制御する制御手段と、外気センサと、を有し、前記制御手段は、前記外気センサの測定結果に基づき前記熱交換器に流す前記冷媒の冷媒量を制御する電子機器の冷却システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器の冷却システムに係り、特に、コンピュータ及びサーバ等の精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を効率的に冷却するための電子機器の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理技術の向上やインタネット環境の発達に伴って、必要とされる情報処理量が増大しており、各種の情報を大量に処理するためのデータ処理センターがビジネスとして脚光をあびている。このデータ処理センターの例えばサーバルームには、コンピュータやサーバ等の電子機器が集約された状態で多数設置され、昼夜にわたって連続稼働されている。一般的に、サーバルームにおける電子機器の設置は、ラックマウント方式が主流になっている。ラックマウント方式は、電子機器を機能単位別に分割して収納するラック(筐体)を、キャビネットに段積みする方式であり、かかるキャビネットがサーバルームの床上に多数整列配置されている。これら情報を処理する電子機器は、処理速度や処理能力が急速に向上してきており電子機器からの発熱量も上昇の一途をたどっている。
【0003】
一方、これらの電子機器は、動作に一定の温度環境が必要とされ、正常に動作するための温度環境が比較的低く設定されているため、電子機器が高温状態に置かれるとシステム停止等のトラブルを引き起こす。このため、サーバルーム内を冷房するための空調器を運転する空調動力も大幅に増加しているのが実情であり、企業経営におけるコスト削減の観点のみならず地球環境の保全の観点からも、空調動力の削減が急務となっている。
【0004】
このような背景から、特許文献1や特許文献2にみられるように、電子機器を効率的に冷却するための技術が提案されている。特許文献1には、後部カバーと前部カバーと側面取付け式の冷却空気サブフレームとを電子機器に取り付けると共に、冷却空気サブフレーム内にファンと熱交換器を設けることにより、電子機器を介して冷風が閉ループで流れる流路を形成することが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、内部に蒸発器とファンを搭載した電子機器収納用ラック群を備えた電算機室用空調システムにおいて、室外から取り入れられた冷却用空気を床下の内部空間に流動させ、蒸発器を通じて電子機器収納用ラックに収納された電子機器を冷却すると共に、電子機器収納用ラックの背面に搭載される凝縮器を冷却して電子機器収納用ラックの背面又は上方の空間を流動し、換気装置を介して室外に排出することが提案されている。また、特許文献3は、電子機器の冷却の発明ではないが、蒸発器と凝縮器との間で冷媒を自然循環させる技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−507676号公報
【特許文献2】特開2004−232927号公報
【特許文献3】特開2007−127315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の電子機器の冷却システムは、電子機器の冷却を空調器による冷却のみならず、電子機器に直接取り付けた冷却器を併用することで、空調器の空調動力を削減する効果を期待できる。
【0008】
しかしながら、空調動力は削減される反面、電子機器に直接取り付けた冷却器の運転動力が加算されるため、トータル的な省エネの観点からみると未だ十分とは言えない。したがって、更なる省エネによるランニングコストの低減が要望されている。また、電子機器を安全に管理する上で、全ての電子機器が同時にダウンすることのない冷却システムが要望されている。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、コンピュータ及びサーバ等の精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を、小さなランニングコストで効率的に冷却することができる電子機器の冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、複数の電子機器が配設された機器ルームと、前記電子機器に近接してそれぞれ設けられ、前記電子機器から発生する熱で冷媒を気化させることにより該電子機器を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に設けられ、前記気化した冷媒を外気によって冷却して凝縮させる冷却塔と、前記冷媒を冷却する熱交換器と、前記蒸発器と前記冷却塔との間で前記冷媒が自然循環するように接続された第1の循環ラインと、前記第1の循環ラインを分岐させて前記熱交換器に接続することによって、前記蒸発器と前記熱交換器との間で前記冷媒が循環するように接続された第2の循環ラインと、前記第1の循環ラインから前記第2の循環ラインに流す前記冷媒の冷媒量を制御する制御手段と、外気の温度を測定する外気センサと、を有し、前記制御手段は、前記外気センサの測定結果に基づき前記熱交換器に流す前記冷媒の冷媒量を制御することを特徴とする電子機器の冷却システムを提供する。
【0011】
本発明者は、機器ルームに複数配設された電子機器によって安定した発熱量が得られることに着目した。そして、電子機器の近傍に蒸発器を配設すれば、蒸発器と冷却塔との間で冷媒が自然に循環する自然循環ラインを構築でき、消費エネルギーの小さい冷却システムが得られるという知見を得た。さらに、その冷媒を冷凍サイクルの冷媒と熱交換させることによって、消費エネルギーの増加を抑えつつ、制御の安定した冷却を行うことができるという知見を得た。
【0012】
本発明はこのような知見に基づいて成されたものであり、蒸発器と冷却塔との間で冷媒を自然循環させる自然循環式の冷却システムを構築する一方で、その冷媒を冷凍サイクルの一次冷媒と熱交換させる熱交換器を設けて安定した冷却システムを構築するようにしたので、消費エネルギーを大幅に削減でき、且つ、安定した制御を行うことができる。
【0013】
また、外気の温度を測定するセンサを備え、該センサの測定値に基づいて前記制御手段が前記冷媒の量を制御することを特徴とする。本発明によれば、外気の温度に基づいて、気化した冷媒の流れ、冷媒量を第1、第2の循環ラインで切り換えるので、冷却塔による自然循環式の冷却システムと、冷凍サイクルを利用した冷却システムとを適切な外気の温度で切り換えることができる。これにより、常に熱効率の良い冷却運転を行うことができる。
【0014】
請求項2は請求項1において、前記冷却塔は、前記外気の送風とともに散水を行うことによって前記二次冷媒を冷却することを特徴とする。本発明によれば、散水を行うことによって二次冷媒の冷却効果を高めることができる。
【0015】
請求項3は請求項1又は2において、前記電子機器はサーバであると共に、前記機器ルームは、サーバルームであることを特徴とする。本発明は、精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器の全てに適用することができるが、電子機器がサーバで、機器ルームがサーバルームである場合に一層の効果を期待できるからである。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、コンピュータ及びサーバ等の精密動作が要求され且つそれ自体からの発熱量が大きな電子機器を、小さなランニングコストで効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電子機器の冷却システムの第1の実施の形態を説明する概念図
【図2】サーバ及びサーバラックを説明する説明図
【図3】本発明の電子機器の冷却システムの第2の実施の形態を説明する概念図
【図4】切替制御方法の一例を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に係る電子機器の冷却システムの好ましい実施の形態について詳説する。尚、電子機器の一例として、サーバルームに配設されたサーバの例で説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の電子機器の冷却システム10を示した概念図である。
【0020】
図1に示すように、建屋12内には、サーバルーム14が形成される。そして、サーバルーム14の床面の裏側には、床下チャンバ22が形成される。サーバルーム14の床面は、不図示の複数の吹出口が配置され、後記する空調機78(図3参照)からの冷風が床下チャンバ22を通って床面からサーバルーム14に吹き出される。吹出口は、好ましくはサーバ28の前面側近傍に配置され、吹き出された冷風がサーバ28に供給されることによって、サーバ28が効率よく冷却される。尚、建屋12の構成は図1で示したものに限定するものではなく、例えばサーバルーム14を複数の部屋に仕切ったり、複数階にわたってサーバルーム14を設けたりしたりしてもよい。
【0021】
図2に示すように、サーバルーム14にはサーバラック26が配設され、サーバラック26に複数のサーバ28が段積み状態で収納される。サーバラック26には、移動用キャスタ24を設けて、移動可能に配置することが好ましい。サーバ28は、ファン30を備えており、矢印32に示すようにサーバルーム14の空気を吸い込んで排気することにより、サーバ28で発生した熱がサーバ28から排出される。尚、サーバ28の配置等の構成は、上記したものに限定されるものではなく、サーバラック26を使用しない形態等も可能である。
【0022】
図1に示すように、サーバ28の近傍には蒸発器34が設けられる。蒸発器34の内部には不図示の冷却コイルが設けられ、冷却コイル内を流れる二次冷媒の液体がサーバ28から発生する熱風で蒸発することにより周囲から気化熱を奪いガス化する。これにより、サーバ28自体やサーバ28から排出される熱風を冷却することができる。
【0023】
一方、建屋12の屋上には冷却塔38が設けられる。冷却塔38内には、前述した二次冷媒が流れる螺旋状配管40が収納されており、この螺旋状配管40の上方には、水を螺旋状配管40に散水する散水管42が設けられる。また、散水管42の上方にはファン44が設けられ、外気を冷却塔38側面開口から取り込んで上面開口から排出することで、散水される水と取り込まれた外気とのカウンタカレントが形成され、散水される水が冷却される。ファン44にはインバータ43が設置され、このインバータ43が後述の制御装置72に電気的に接続される。制御装置72は、冷却塔38の出口の液冷媒の温度、圧力を測定する温度センサ45、圧力センサ47に接続され、これらの測定値に基づいてファン44の回転数を制御する。たとえば、温度センサ45の測定値が設定温度になるようにファン44の回転数を制御する。
【0024】
冷却塔38の螺旋状配管40には戻し配管46と供給配管48が接続される。戻し配管46及び供給配管48は床下チャンバ22を通ってサーバルーム14に配設された蒸発器34に接続される。したがって、蒸発器34でガス化した二次冷媒ガスは戻し配管46を通ることによって、上方に配置された冷却塔38に自然に戻され、冷却塔38によって冷却されて凝縮した後、その液化した二次冷媒液体が供給配管48を通ることによって、下方に配置された蒸発器34に自然に送液される。これにより、冷却塔38と蒸発器34との間には二次冷媒が自然循環する自然循環ライン(第1の循環ラインに相当)、即ち、内部に二次冷媒を封入した無動力のヒートパイプが構築される。この自然循環ラインでは、サーバ28からの発熱量が大きくなって高温の二次冷媒ガスを形成できることで、二次冷媒ガスを凝縮する冷却温度を高めに設定することができ、冷却塔38による冷却能力でも二次冷媒ガスを凝縮することができる。かかる構成において、近年のサーバ28からの発熱量の急速な上昇により、サーバ28から発生(排出)される高温の熱を高温状態のままで蒸発器34を流れる二次冷媒と直接熱交換して二次冷媒の蒸発を促進することにより、蒸発器34よりも高所に設置された冷却塔38へ蒸発した二次冷媒ガスを輸送する輸送動力を得ることができる。使用される二次冷媒としては、フロン、あるいは代替えフロンとしてのHFC(ハイドロフロロカーボン)等を使用することができる。また、大気圧よりも低い圧力で使用するならば、水を使用することも可能である。ここで、二次冷媒と表現する場合には、ガス状態の二次冷媒ガスと、液体状態の二次冷媒液体の両方を含むものであり、図1には、二次冷媒ガスの流れ方向を白矢印で示し、二次冷媒液体の流れ方向を黒矢印で示した。
【0025】
蒸発器34には、サーバ28から排出された熱風が蒸発器34で冷却された後の風の温度を測定する温度センサ50が設けられると共に、冷却コイル36の入口には、冷却コイル36に供給する二次冷媒の供給流量を調整するための膨張弁52が設けられる。そして、温度センサ50による測定温度に基づいて膨張弁52の開度が自動調整される。これにより、蒸発器34で冷却された後の風の温度が設定温度よりも低くなり過ぎた場合には、膨張弁52の開度が絞られて二次冷媒の供給流量が減少される。
【0026】
以上は外気温度が低い冬場の運転方法であるが、冬場と夏場で運転方法が異なる。次に夏場の運転方法を述べる。
【0027】
戻り配管58には熱交換器54が設けられる。熱交換器54の位置は本実施例では屋上であるが、屋上以外の例えばサーバルーム14内でも良い。熱交換器54の内部にはコイル56が設けられており、このコイル56には、戻り配管46から分岐された分岐戻り配管58と、供給配管48から分岐された分岐供給配管60とが接続される。これにより、戻り配管46の一部と、分岐戻り配管58と、分岐供給配管60と、供給配管48の一部とから成る第2の循環ラインが形成される。
【0028】
分岐戻り配管58、分岐供給配管60にはそれぞれ開閉弁57、59が設けられる。また、戻り配管46、供給配管48にはそれぞれ、分岐戻り配管58、分岐供給配管60との接続位置よりも冷却塔38側に、開閉弁53、55が設けられる。これらの開閉弁53、55、57、59(切換手段)を開閉操作することによって、二次冷媒の流れが冷却塔38と熱交換器54とで切り替えられる。すなわち、冷却塔38を用いて二次冷媒を自然循環させる第1の循環ラインと、後述の冷凍サイクル64を利用して二次冷媒を冷却させる第2の循環ラインとで、二次冷媒の流れを切り替えることができる。
【0029】
開閉弁53、55、57、59は、制御装置61に接続されており、この制御装置61によって開閉操作される。また、制御装置61は、外気の温湿度を測定する外気センサ63に接続されており、この外気センサ63の測定値に基づいて、開閉弁53、55、57、59の開閉操作が行われる。これにより、適切な外気の温湿度において、第1の循環ラインと第2の循環ラインとを切り替えることができる。
【0030】
ところで、前述した熱交換器54は、冷凍サイクル64の蒸発器を兼ねており、この冷凍サイクル64を循環する一次冷媒と前述の二次冷媒とを熱交換させるように構成される。具体的には、熱交換器54には、冷凍サイクル64を循環する一次冷媒が貯留されており、その貯留された一次冷媒に前述のコイル56が浸漬されている。したがって、熱交換器54内に貯留された一次冷媒が蒸発した際にコイル56から熱が奪われ、コイル56内の二次冷媒が冷却されて凝縮される。なお、一次冷媒としては、前述の二次冷媒と同様のものを使用することができ、たとえばフロン、あるいは代替えフロンとしてのHFC(ハイドロフロロカーボン)等を使用することができる。
【0031】
一次冷媒による冷凍サイクル64は、熱交換器54(蒸発器)、圧縮機66、凝縮器68、膨張弁70、気液分離装置72を備え、これらを送気配管73、74、75や送液配管76、77で接続することによって構成される。熱交換器54の上部は送気配管73を介して圧縮機66の入口に接続されており、熱交換器54で蒸発した一次冷媒ガスが圧縮機66に送気される。圧縮機66の構成は特に限定するものではないが、たとえば二段の羽根車66A、66Bをモータ66Cで高速回転させ、その遠心力で一次冷媒を圧縮する遠心圧縮機が用いられる。また、遠心圧縮機に限らず、ロータリー圧縮機、スクロール圧縮機でもよい。
【0032】
圧縮機66の出口は、送気配管74を介して凝縮器68が接続される。凝縮器68には冷却水が別途供給され、この冷却水によって一次冷媒が冷却され、凝縮される。凝縮器68は送液配管76によって膨張弁70を介して気液分離装置72に接続されており、凝縮後の一次冷媒は、膨張した状態で気液分離装置72に送液される。そして、気液分離装置72によって気液分離された後、一次冷媒の液体が送液配管77を介して熱交換器54に送液され、一次冷媒の気体が送気配管75によって圧縮機66の中間部、即ち一段目の羽根車66Aと二段目の羽根車66Bとの間に送気される。なお、図1には、エコノマイザサイクルを適用した例を示したが、これに限定するものではない。
【0033】
上記の如く構成された冷凍サイクル64によれば、一次冷媒が循環することによって熱交換器54で一次冷媒が蒸発し、二次冷媒が冷却される。これにより、熱交換器54によって二次冷媒を凝縮させることができる。
【0034】
上述したように本実施の形態によれば、外気の温湿度に基づいて、二次冷媒の流れを冷却塔38と熱交換器54とで切り替える。たとえば、外気の温度が低く、冷却塔38の冷却能力が大きい場合には、冷却塔38のみに二次冷媒が流れるように制御し、反対に外気の温度が高く、冷却塔38の能力が不足する場合には、二次冷媒が熱交換器54にも流れるように制御する。これにより、例えば冬場等のように冷却塔38の冷却能力が高いときには、冷却塔38のみを利用してコストを削減することができる。また、夏場等のように冷却塔38のみでは冷媒の冷却能力が不足し易い場合には、二次冷媒を熱交換器54、あるいは冷却塔38と熱交換器54の両方に流すことによって、二次冷媒の冷却量を確保することができる。その際、熱交換器54では、冷凍サイクル64の一次冷媒と前述の二次冷媒とを直接熱交換させるので、熱交換のロスを抑えることができ、ランニングコストが小さく、且つ、安定した冷却システムを提供することができる。
【0035】
自然循環と冷凍サイクルとの具体的な切替制御方法としては、以下の(1)、(2)が考えられる。
【0036】
(1)外気の湿球温度、比エンタルピーによる切替方法
外気センサ74で外気の温度と湿度を計測し、それを基に、制御装置72が、外気の湿球温度あるいは外気の比エンタルピーを計算する。そして、計算した湿球温度あるいは比エンタルピーが、設定した圧縮機54の運転開始の設定値よりも大きい場合に、圧縮機54を運転して冷凍サイクル運転を行う。また、計算した湿球温度あるいは比エンタルピーが、設定した圧縮機54の運転停止の設定値よりも小さい場合に自然循環運転を行う。なお、運転が頻繁に切り替わらないように、圧縮機54の運転開始の設定値は圧縮機54の運転停止の設定値よりも大きくするとよい。
【0037】
(2)冷媒負荷(あるいは冷媒流量)による切替方法
制御装置72は、冷媒の質量流量と液冷媒とガス冷媒の比エンタルピーの差により冷却負荷を求める。冷媒の質量流量は、冷媒の流量と比重により求め、その冷媒の流量は、図1に示すように、供給配管48にオリフィス71を設けるとともに、そのオリフィス71の前後の差圧を差圧計73によって測定することによって求める。一方、液冷媒とガス冷媒との比エンタルピーは、それぞれの圧力と温度(すなわち、温度センサ45、圧力センサ47、温度センサ75、圧力センサ77)によって求める。制御装置72は、このように求めた冷媒負荷と、外気センサ74で測定した温度と湿度から求めた外気の湿球温度との組み合わせによって図4に示す如く切替制御を行う。図4において、L1は圧縮機54の運転ラインであり、L2は圧縮機54の停止ラインであってL1よりも外側(湿球温度または冷却負荷が大きくなる側)に設定される。この例では、L1よりも内側の範囲Xにおいて圧縮機54を停止しておく。そして、L1を超えた際に圧縮機54の運転を開始し、L2よりも外側の範囲Yにおいて、定格の冷凍能力で圧縮機54を運転する。そして、L2よりも小さくなった際に、圧縮機54を停止する。
【0038】
なお、外気の湿球温度の代わりに外気の比エンタルピーでもよい。また、多少精度が悪くなるが、冷媒負荷の代わりに冷媒質量を用いてもよい。冷媒流量を用いる場合は、精度が悪くなった分の余裕を見て切り替えればよい。
【0039】
上記の(1)、(2)のいずれかの方法により自然循環と冷凍サイクルとの切替制御を行うことが好ましい。
【0040】
以上説明したように第1の実施形態の冷却システム10によれば、発熱量が大きいサーバ28の近傍に設けた蒸発器34と、それよりも高所に設けた冷却塔38との間を二次冷媒が自然循環するシステムを構築したので、サーバ28を小さなランニングコストで冷却することができる。
【0041】
また、第1の実施形態によれば、二次冷媒の流れを熱交換器54に切り替えられるようにしたので、自然循環システムで冷却量が不足した際であっても冷却量を確保することができる。
【0042】
さらに、第1の実施形態によれば、自然循環システムで用いられる二次冷媒を冷凍サイクルの一次冷媒と直接熱交換させるようにしたので、熱交換に伴うロスを極力抑えることができ、熱効率を向上させることができる。
【0043】
尚、上述した第1の実施形態において、複数のサーバ28をグループ分けし、グループごとに二次冷媒の循環ラインを構築するとよい。すなわち、各グループの蒸発器をそれぞれ冷却塔38と熱交換器54とに接続するように循環ラインを構築するとよい。これにより、サーバ28全体が同時に影響を受けることを防止することができる。たとえば、あるグループの膨張弁52を操作した場合であっても、他のグループでは、二次冷媒の流れに影響がないので、常に安定した冷却を行うことができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態の電子機器の冷却システム100を示した概念図である。尚、第1の実施の形態と同じ部材及び構成について省略する。
【0045】
第2の実施の形態の冷却システム100は、第1の実施の形態の冷却システム10の構成に、サーバルーム14を冷却するための空調機78を設け、空調機78の冷熱源として前述の二次冷媒を使用するようにしたものである。
【0046】
即ち、図3に示すように、サーバルーム14に隣接して機械室80が設けられ、機械室80に空調機78が設置される。空調機78の吸込口には吸込ダクト81が接続されており、この吸込ダクト81は、サーバルーム14と機械室80とを仕切る隔壁82を貫通してサーバルーム14まで延設されている。また、空調機78の吹出口には、吹出ダクト83が接続されており、この吹出ダクト83は隔壁82を貫通して床下チャンバ22まで延設されている。したがって、空調機78の送風機86を駆動することによって、サーバルーム14の空気が吸込ダクト81を介して空調機78に取り込まれ、冷却部84によって冷却された後、吹出ダクト83を介して床下チャンバ22に吹き出され、床面からサーバルーム14に吹き出される。その際、床面の吹出口をサーバ28の前面(蒸発器34の反対側)の近傍に形成することによって、床面から吹き出したエアがサーバ28に吸い込まれるように構成することが好ましい。空調機78の冷却部84には、戻り配管46から分岐された空調用戻り配管90と、供給配管48から分岐された空調用供給配管88とが接続され、二次冷媒が冷却部84を循環するように構成される。
【0047】
上記の如く構成された第2の実施の形態の冷却システム100によれば、上記した第1の実施の形態の効果に加えて以下の効果を発揮することができる。即ち、上述した二次冷媒を、サーバルーム14を冷風で冷却するための空調機78の冷熱源として使用するようにしたので、空調機78を運転するためのランニングコストをも低減することができる。また、サーバ28を冷却する蒸発器34と併用することにより、従来方式(特開2004-232927に示される、床吹き出し空調で全体の空気を循環して空調する方式)の空調システムに比べ、サーバルーム14内での熱溜まり(局所的高温部位)の発生を抑制でき、全体を空調する空調機78からの給気温度を高温化することが可能となる。よって、本実施の形態では従来方式に比べて、蒸発温度が高くてよく、冷却塔38の能力を十分に活用することができる。したがって、自然循環ラインの冷媒を空調機78の冷却部84に供給することは、空調機78の省エネと、冷却塔38の能力発揮の両方に寄与する。
【0048】
尚、上記した第1、第2の実施の形態における冷却システム10、100は、電子機器としてサーバ28の例で説明したが、本発明は、それ自体からの発熱量が大きな電子機器の全てに適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10、100…冷却システム、12…建屋、14…サーバルーム、22…床下チャンバ、24…キャスタ、26…サーバラック、28…サーバ、30…サーバのファン、32…熱風、34…蒸発器、38…冷却塔、40…螺旋状配管、42…螺旋状配管、44…冷水装置のファン、46…戻り配管、48…供給配管、50…温度センサ、52…膨張弁、53…開閉弁、54…熱交換器、55…開閉弁、56…コイル、57…開閉弁、58…分岐戻り配管、59…開閉弁、60…分岐供給配管、61…制御装置、63…外気センサ、64…冷凍サイクル、66…圧縮機、68…凝縮器、70…膨張弁、72…気液分離装置、73〜75…送気配管、76〜77…送液配管、78…空調機、80…機械室、82…隔壁、84…冷却部、86…ファン、88…空調用供給配管、90…空調用戻り配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子機器が配設された機器ルームと、
前記電子機器に近接してそれぞれ設けられ、前記電子機器から発生する熱で冷媒を気化させることにより該電子機器を冷却する蒸発器と、
前記蒸発器よりも高所に設けられ、前記気化した冷媒を外気によって冷却して凝縮させる冷却塔と、
前記冷媒を冷却する熱交換器と、
前記蒸発器と前記冷却塔との間で前記冷媒が自然循環するように接続された第1の循環ラインと、
前記第1の循環ラインを分岐させて前記熱交換器に接続することによって、前記蒸発器と前記熱交換器との間で前記冷媒が循環するように接続された第2の循環ラインと、
前記第1の循環ラインから前記第2の循環ラインに流す前記冷媒の冷媒量を制御する制御手段と、
外気の温度を測定する外気センサと、を有し、
前記制御手段は、前記外気センサの測定結果に基づき前記熱交換器に流す前記冷媒の冷媒量を制御することを特徴とする電子機器の冷却システム。
【請求項2】
前記冷却塔は、前記外気の送風とともに散水を行うことによって前記冷媒を冷却することを特徴とする請求項1に記載の電子機器の冷却システム。
【請求項3】
前記電子機器はサーバであると共に、前記機器ルームは、サーバルームであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−59276(P2012−59276A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225186(P2011−225186)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【分割の表示】特願2008−32100(P2008−32100)の分割
【原出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】