説明

電子機器用蓋

【課題】回転軸が円形である電子機器用蓋は回転軸と回転軸受け部との接触面積が小さく、摺動操作中に回転軸が回転軸受け部から外れてしまい破損する可能性があった。また、回動操作をし、電子機器用蓋が開放回動位置に達したとき、更に開放回動方向へ負荷をかけると、回転軸と回転軸受け部との接触面積が小さいため係止仕切れず、回動してしまい回転軸、あるいは、電池蓋が破損する可能性があった。特に、急いで電池蓋の開閉操作を行ったときに上述のような破損をする可能性があった。
【解決手段】電子機器用蓋の回転軸の両端部にアームを設け、回転軸方向のアーム部の幅よりも回転軸の軸心からアーム部先端部までのアーム部の腕の長さを大きくとることによりアーム部の回転半径が大きくなり、電子機器本体に設けられたアーム部受け部と電子機器用蓋のアーム部との接触面積を拡大した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等で使用される電子機器用蓋の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器、例えば、カメラ等の小型電子機器の電池収納装置における電池蓋は、電池収納室を開閉するための回動操作と、閉鎖後に上記電池蓋をロックさせるための摺動操作を行うものが一般的であった。
【0003】
特許文献1に開示されている発明では、電池蓋に設けられている回転軸は外形が円形であり、回転軸をカメラ本体に設けられている回転軸受け内で摺動と回動とをさせることにより、電池蓋を閉止ロック位置から開放回動位置まで操作可能である。
【0004】
また、特許文献2で開示されている発明では、電池蓋に設けられている回転軸の外周面を一部カットすることにより、回転軸をカット面付き円形断面の形状に成形している。カット面を電池蓋の摺動方向と一致するように成形することにより、カット面に沿って電池蓋を摺動操作することが可能となり、摺動時における電池蓋の誤操作防止となっている。
【特許文献1】公開実用新案昭63−125833号公報
【特許文献2】特開2001−84975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている発明では、回転軸が円形であるため、回転軸と回転軸受け部との接触面積が小さく、電池蓋の摺動操作中に回転軸が回転軸受け部から外れてしまい破損する可能性があった。また、回動操作をし、電池蓋が開放回動位置に達したとき、さらに開放回動方向へ負荷をかけると、回転軸と回転軸受け部との接触面積が小さいため係止仕切れず、開放回動位置から更に回動してしまい回転軸、あるいは、電池蓋が破損する可能性があった。特に、急いで電池蓋の開閉操作を行ったときに上述のような破損する可能性があった。
【0006】
また、特許文献2に開示されている発明では、円形の回転軸よりもカット面を有した回転軸の方が回転軸受け部に接する面積が大きいため、摺動操作中に電池蓋へ負荷がかかっても回転軸が回転軸受け部から外れて破損する可能性を低減できた。しかし、回動操作をし、電池蓋が開放回動位置に達したとき、さらに開放回動方向へ負荷をかけると、特許文献1の発明同様に回転軸と回転軸受け部との接触面積が摺動操作中の接触面積よりも小さいため係止仕切れず、開放回動位置からさらに回動してしまい回転軸、あるいは、電池蓋が破損する可能性が依然としてあった。
【0007】
電子機器用蓋の開閉操作において、誤操作と誤操作をしても破損を防ぐような回転軸と回転軸受け部との構造が必要とされた。
【0008】
本発明は、上述の不具合を解決するためになされたものであり、電子機器用蓋の回転軸と電子機器用蓋とが破損しにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1記載の電子機器本体に軸支されて、閉止ロック位置から開放回動位置まで摺動と回動とが可能な電子機器用蓋であって、該電子機器用蓋は一端に回転軸を有し、他端に閉止ロックに使用される係止爪を有し、前記回転軸は前記電子機器用蓋が開放回動位置に達したとき、前記回転軸全体で係止可能であり、前記回転軸部にはアーム部が設けられ、前記電子機器本体には前記電子機器用蓋を係止するストッパーが設けられ、また、前記回転軸と前記アーム部とが係合する回転軸受け部とアーム部受け部とが設けられており、該回転軸受け部と該アーム部受け部とにはそれぞれ摺動用受け部と回動用受け部とが連通して設けられており、前記回転軸受け部と前記アーム部受け部との内で前記回転軸と前記アーム部とが摺動と回動とをすることによって開閉可能となるように構成される。
【0010】
本発明の請求項2記載の電子機器用蓋は、前記アーム部の外形は、回転軸方向のアーム部の幅よりも回転軸の軸心からアーム部の先端部までアーム部の腕の長さを大きくとるように成形されている。
【発明の効果】
【0011】
電子機器用蓋を支持する回転軸としてアーム部を設けた回転軸を用いることにより、摺動操作中と回動操作中とにおいて電子機器用蓋ががたつくことなく操作可能となり、破損を防止することが出来るようになった。特に、電子機器用蓋が受け部から外れた状態や斜めになった状態で摺動操作されて破損されることが防止可能となった。また、ストッパーを設けることにより、電子機器用蓋を解放回動位置から更に開放回動方向へ誤って回動することを防止可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態である電子機器用蓋の開閉機構を適用した電子閃光装置の外観を示す。図1では電子閃光装置用蓋3は閉止ロック位置である。なお図1は電子閃光装置本体1底面側を上方とする図である。
【0013】
図2は電子閃光装置用蓋3を上から見た平面図である。
【0014】
図3は電子閃光装置用蓋3の斜視図である。電子閃光装置用蓋3の一端に回転軸3cを設け、回転軸3cの両端部にアーム部3bを設けた。また、電子閃光装置用蓋3の他端には閉止ロックに使用される係止爪3aを設けた。アーム部3bの腕の長さLを回転軸方向のアーム部3bの幅Wよりも回転軸3cの軸心からアーム部3bの先端部まで大きくとることによりアーム部3bの回転半径を大きくした。
【0015】
図4は、電子閃光装置用蓋3に設けられた回転軸3cとアーム部3bとが係合する電子閃光装置本体1の軸支部2に設けられた回転軸受け部2aとアーム部受け部2bを示す図である。電子閃光装置本体1には回転軸3cとアーム部3bとが係合する回転軸受け部2aとアーム部受け部2bとが設けられており、回転軸受け部2aとアーム部受け部2bとにはそれぞれ摺動用受け部2a1,2b1と摺動用受け部2a1,2b1より深く且つ扇形に成形された回動用受け部2a2,2b2とが設けられている。回転軸摺動用受け部2a1と回転軸回動用受け部2a2とが連通し、アーム部摺動用受け部2b1とアーム部回動用受け部2b2とが連通して設けられており、電子閃光装置用蓋3は回転軸受け部2a内で回転軸3cを、アーム部受け部2b内でアーム部3bを摺動と回動とによって操作される。以下の説明では電子閃光装置本体1底面側を上にした状態の電子閃光装置用蓋3を基準にして、電子閃光装置本体1の上方側を底面側として記述する。
【0016】
図5は図2においてA−A線に沿う断面図であり、電子閃光装置用蓋3は閉止ロック位置にある。閉止ロック位置から開放回動位置にするためには、図6に示すように、摺動方向C1へ電子閃光装置用蓋3を摺動させ、C1方向への摺動が終了したときに電子閃光装置本体1のロック溝1aから係止爪3aが外れる。このとき、アーム部3bが回動可能に成形されたアーム部受け部2bのアーム部回動用受け部2b2の扇形部まで摺動する。電子閃光装置用蓋3のアーム部3b全体がアーム部回動用受け部2b2まで完全に摺動していないとアーム部3bの先端部がアーム部摺動用受け部2b1内にあるため、電子閃光装置用蓋1aの回動操作が不可能となる。
【0017】
図7は電子閃光装置用蓋3の開放回動位置における各部材の動作の説明の図である。アーム部3bがアーム部回動用受け部2b2の終端部5で係止され、電子閃光装置用蓋3の回転軸3c側がストッパー4で係止されるため、開放回動方向D2へ向かう負荷を加えても電子閃光装置用蓋3は回動が不可能となる。これにより開放回動位置からの電子閃光装置用蓋3の開放回動方向への回動操作を防止することが可能となっている。
【0018】
図7において、電子閃光装置用蓋3を開放回動位置から閉止ロック位置にするには、電子閃光装置用蓋3をD1方向へ回動させ閉止させる。閉止後、電子閃光装置用蓋3をC2方向に摺動させ係止爪3aをロック溝1aに嵌入させることによって閉止ロック位置にする。この閉止ロック操作において、電子閃光装置用蓋3を完全な閉止位置まで回動させていない状態では、電子閃光装置用蓋3をC2方向に摺動させようとしてもアーム部3bがアーム部回動用受け部2b2内にあるため、アーム部摺動用受け部2b1への進入は不可能である。このため、回動操作が不完全な状態での電子閃光装置用蓋3の閉止ロックが防止されるのである。
【0019】
図8は図2においてB−B線に沿う中心部の断面図であり、電子閃光装置用蓋3は閉止ロック位置にある。閉止ロック位置から開放回動位置にするためには、図9に示すように、摺動方向C1へ電子閃光装置用蓋3を摺動させ、C1方向への摺動が終了したときにロック溝1aから係止爪3aが外れる。このとき、回転軸3cが回動可能に成形された回転軸受け部2aの回転軸回動用受け部2a2の扇形部まで摺動する。電子閃光装置用蓋3の回転軸3c全体が回転軸回動用受け部2a2まで摺動していないと回転軸3cの先端部が回転軸摺動用受け部2a1内にあるため、電子閃光装置用蓋3の回動操作が不可能となる。
【0020】
図10は電子閃光装置用蓋3の開放回動位置における各部材の動作の説明の図である。回転軸3cが回転軸回動用受け部2a2の終端部6で係止され、電子閃光装置用蓋3の回転軸3c側がストッパー4で係止されるため、電子閃光装置用蓋3に開放回動方向D2へ向かう負荷を加えても電子閃光装置用蓋3は回動が不可能となる。これにより開放回動位置からの電子閃光装置用蓋3の開放回動方向への回動操作を防止することが可能となった。
【0021】
図10において、電子閃光装置用蓋3を開放回動位置から閉止ロック位置にするには、電子閃光装置用蓋3をD1方向へ回動させ閉止させる。閉止後C2方向に摺動させ閉止ロック位置にする。この閉止ロック操作において、電子閃光装置用蓋3を完全な閉止位置まで回動させていない状態では、電子閃光装置用蓋3をC2方向に摺動させようとしても回転軸3cが回転軸回動用受け部2a2内にあるため、回転軸摺動用受け部への進入は不可能である。このため、回動操作が不完全な状態での電子閃光装置用蓋3の閉止ロック位置への誤操作が防止されるのである。
【0022】
一つの回転軸に2種類の係止部を備えることにより、電子閃光装置用蓋3が開放回動位置にあるときアーム部3bがストッパー4とアーム部回動用受け部2b2の終端部5とによって係止され、回転軸3cがストッパー4と回転軸回動用受け部2a2の終端部6とによって係止される。この二重に係止される効果により、電子閃光装置用蓋3が誤作動で開放回動位置から更に開放回動方向へ回動するのを防止される。また、各受け部に対する回転軸3cとアーム部3bとの接触面積が大きくなるほど、摺動操作中と回動操作中とにおいて電子閃光装置用蓋3の誤操作を防止可能となる。
【0023】
尚、上記実施例ではアーム部を回転軸の両端部に設けたが、アーム部を片方の端部のみに設けても同様の効果が得られる。
【0024】
また、少なくとも一つ以上のアーム部を回転軸端部以外の回転軸部内に設けても同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】電子閃光装置本体1の底面側に配設された電子閃光装置用蓋3を上方とした図である。
【図2】電子閃光装置用蓋3を上から見た図である。
【図3】電子閃光装置用蓋3と電子閃光装置用蓋3に配設された係止爪3a、アーム部3bと回転軸3cの図である。
【図4】電子閃光装置用蓋3の回転軸受け部2aとアーム部受け部2bとを配設された電子閃光装置1の図である。但し、回転軸受け部2aは回転軸摺動用受け部2a1と回転軸回動用受け部2a2とから構成され、アーム部受け部2bはアーム部摺動用受け部2b1とアーム部回動用受け部2b2とから構成される。
【図5】図2のA−A線における断面図である。このとき電子閃光装置用蓋3は閉止ロック位置にある。
【図6】電子閃光装置用蓋3をC1方向に摺動操作し、摺動操作終了後、D2方向に回動操作を始めたときのA−A線における断面図である。
【図7】電子閃光装置用蓋3が開放回動位置にあるときのA−A線における断面図である。
【図8】図2のB−B線における断面図である。このとき電子閃光装置用蓋3は閉止ロック位置にある。
【図9】電子閃光装置用蓋3をC1方向に摺動操作し、摺動操作終了後、D2方向に回動操作を始めたときのB−B線における断面図である。
【図10】電子閃光装置用蓋3が開放回動位置にあるときのB−B線における断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 電子閃光装置本体
1a ロック溝
2a 回転軸受け部
2a1 回転軸摺動用受け部
2a2 回転軸回動用受け部
2b アーム部受け部
2b1 アーム部摺動用受け部
2b2 アーム部回動用受け部
3 電子閃光装置用蓋
3a 係止爪
3b アーム部
3c 回転軸
4 ストッパー
5 アーム部回動用受け部2b2の終端部
6 回転軸回動用受け部2a2の終端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器本体に軸支されて、閉止ロック位置から開放回動位置まで摺動と回動とが可能な電子機器用蓋であって、該電子機器用蓋は一端に回転軸を有し、他端に閉止ロックに使用される係止爪を有し、前記回転軸は前記電子機器用蓋が開放回動位置に達したとき、前記回転軸全体で係止可能であり、前記回転軸部にはアーム部が設けられ、前記電子機器本体には前記電子機器用蓋を開放回動位置で係止するストッパーと、前記回転軸と前記アーム部とが係合する回転軸受け部とアーム部受け部とが設けられており、該回転軸受け部と該アーム部受け部とにはそれぞれ摺動用受け部と回動用受け部とが連通して設けられており、前記回転軸受け部と前記アーム部受け部との内で前記回転軸と前記アーム部とが摺動と回動とをすることによって開閉可能としたことを特徴とする電子機器用蓋。
【請求項2】
前記アーム部の外形は、回転軸方向のアーム部の幅よりも回転軸の軸心からアーム部の先端部までアーム部の腕の長さを係止爪側の反対方向へ大きくとるように成形したことを特徴とする請求項1記載の電子機器用蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−58820(P2009−58820A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226762(P2007−226762)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000131326)株式会社シグマ (167)
【Fターム(参考)】