説明

電子機器

【課題】消費電流を抑制して精度よく異常電流を検出する電子機器を得る。
【解決手段】バッテリ11と、バッテリ11の端子に接続する電流検出抵抗13と、電流検出抵抗13を介してバッテリ11からの電源電流が供給される複数のデバイスと、デバイスの状態に応じた消費電流に対応する閾値を記憶する記憶部6と、デバイスの動作を制御するとともに電流検出抵抗13の検出電流値を所定の周期で入力し、検出電流値と閾値とを比較して検出電流値が閾値を超えた回数をカウントし、この回数が所定の回数になったときに異常が発生したと判断する制御部2とを備え、制御部2は、比較に用いる閾値を第1の閾値から第2の閾値へ変更したとき、第1の閾値により検出した閾値を超えた回数をリセットし、第2の閾値へ変更した次の周期において電流検出抵抗13が検出した検出電流値から閾値を超えた回数のカウントを始める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電流を監視し、当該電流によって動作する装置の異常を検出する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市場に流通している携帯電話機に代表される電子機器には、様々なデバイスが搭載されている。これらの様々なデバイスは、それぞれ消費電流が異なる。
上記のような電子機器においては、複数の電源ラインを有しており、各々の電源ラインで上記のデバイスを含む負荷回路を動作させている。各電源ラインに各々接続される負荷回路を動作させるとき、いずれかの負荷回路等において不具合が生じると、他の正常な部分を保護すべく電源供給を遮断する機能を備える場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されている電源供給回路は、各電源ラインの電圧を監視し、この監視電圧の変化から負荷回路に短絡障害等が発生したことを検知すると、当該負荷回路の電源ラインを遮断し、他の負荷回路への影響を防いでいる。
上記の電源供給回路は、各々の電源ラインに挿入された遮断素子と、当該遮断素子の電源ラインをオン/オフする両端子間に接続された過電流検出用抵抗によって構成された遮断回路を備えている。遮断回路は、過電流検出用抵抗に過電流が流れると、このときの過電流検出用抵抗の両端電圧に応じて遮断素子が電源ラインを遮断するように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−288930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば携帯電話機のように高機能化が図られ、電源構成も複雑化した場合には、各電源ラインに過電流検出用抵抗ならびに遮断素子を備えると、回路基板や装置サイズの小型化が難しくなり、またさらに部品コストを増大させるという問題点があった。
また、複雑な制御を要する電源回路に、上述のような過電流検出用抵抗を備えた場合には、電源回路の動作に対応して精度よく過電流を検出することが難しく、異常発生時には不具合箇所などを拡大させる可能性があるという問題点があった。また、常時、異常の監視を行うと消費電流が増大するという問題点があった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、消費電流を抑制して精度よく異常電流を検出する電子機器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点による電子機器は、電池と、前記電池の端子に接続する電流検出部と、前記電流検出部を介して前記電池からの電源電流が供給される複数のデバイスと、前記デバイスの状態に応じた消費電流に対応して予め設定された閾値を複数記憶する記憶部と、前記デバイスの動作を制御するとともに前記電流検出部の検出電流値を所定の周期で入力し、前記検出電流値と前記記憶部に記憶されている前記デバイスの状態に対応する閾値とを比較し、前記比較により前記検出電流値が前記閾値を超えた回数をカウントし、前記カウントした回数が所定の回数になったときに異常が発生したと判断する制御部とを備え、前記制御部は、前記デバイスの状態に応じて前記比較に用いる閾値を第1の閾値から第2の閾値へ変更したとき、前記第1の閾値により検出した前記閾値を超えた回数をリセットし、前記第2の閾値へ変更した次の周期において前記電流検出部が検出した検出電流値から前記閾値を超えた回数のカウントを始める。
【0008】
好適には、前記制御部は、前記デバイスの状態に応じて前記比較に用いる閾値を第1の閾値から第2の閾値へ変更したとき、前記電流検出部から検出電流値を入力する周期を一定期間内において大きくする。
【0009】
好適には、前記制御部は、前記デバイスをスリープ状態としたとき、前記電流検出部から検出電流値を入力する周期を、外部との通信を行う通信部の間欠受信の動作タイミングに同期させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、消費電流を抑制して精度よく異常電流の検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による電子機器の構成を示すブロック図である。この図は、電子機器の一例である携帯電話機1の構成を示している。携帯電話機1は、制御部2、操作部3、通信部4、音源IC5a、スピーカ5b、記憶部6、表示部7、バッテリ11、電源回路12a,12b、電流検出抵抗13、ヒューズ14、電流アンプ15、IrDA近距離通信部16等によって構成されている。また、携帯電話機1は、図示を省略したカメラ等のデバイスを備えて構成してもよい。
なお、図中の実線によるブロック間の結線は制御信号ラインを示し、図中の破線による結線は電流供給ラインを示す。
【0012】
制御部2は、携帯電話機1の各部の動作制御を司るプロセッサ等から成る。
操作部3は、複数のキースイッチやスライドスイッチなどからなり、ユーザの操作内容を示す信号を制御部2へ入力するように構成されている。
通信部4は、制御部2の制御に応じて、携帯電話機1の外部と無線通信を行うように構成されている。
【0013】
音源IC5aは、制御部2の制御に応じて所定の音声等を示す信号を生成するように構成されており、当該生成した音声等を示す信号をスピーカ5bへ出力し、可聴音もしくは音声を出力するように接続構成されている。
記憶部6は、制御部2が用いる制御用プログラム、ユーザによって設定された動作モード等を示すデータ、携帯電話機1の使用履歴を示すデータ、メール等の文章を示すデータ、映像データ、また、電流検出の処理に用いるデータなどを記憶しているメモリである。
【0014】
表示部7は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置であり、制御部2の制御に応じて文字や画像などを表示するように構成されている。
バッテリ11は、充電式の二次電池であり、例えば高電位側の出力端子に電流検出抵抗13の一端を接続させている。
電源回路12a,12bは、各々複数の電圧を出力するように構成されており、リニアレギュレータ(以下、LDOと記載する)やDC/DCコンバータを備えている。
【0015】
電流検出抵抗13は、例えば23.5[mΩ]の抵抗値を有し、前述のように一端をバッテリ11に接続するとともに、他端を電源回路12a,12bの各入力端子に接続している。なお、上記の電源回路12bの入力端子には、所定の電流値以上になると溶断するヒューズ14を介して接続されている。
【0016】
電流アンプ15は、電流検出抵抗13の両端電圧を入力し、この電圧値を増幅して、バッテリ11から出力される電源電流値を示す信号を制御部2へ出力するように構成されている。電流検出抵抗13および電流アンプ15によって電流検出部が構成される。
IrDA近距離通信部16は、携帯電話機1の近傍に位置する他の装置と、制御部2の制御に応じて、赤外線を用いたデータの送受を行うように構成されている。
【0017】
また、携帯電話機1は、図示を省略した音声入出力部を備えており、例えば、スピーカやマイクロホンなどを備え、ユーザの通話音声等を示す信号を制御部2へ入力するとともに、制御部2の制御に応じた通話音声等を出力するように構成されている。なお、上記の通話音声等を示す信号は、制御部2の制御により、通信部4が外部と無線通信を行うときに処理される。
【0018】
電源回路12aは、例えば、操作部3へ出力電圧を供給するLDO31、通信部4へ出力電圧を供給するLDO32、音声入出力部5へ出力電圧を供給するDC/DCコンバータ33、制御部2へ出力電圧を供給するDC/DCコンバータ34等を備えている。
また、DC/DCコンバータ34は、出力電圧をLDO35へ供給するように接続されている。LDO35は、記憶部6へ出力電圧を供給するように接続されている。
【0019】
電源回路12bは、例えば、DC/DCコンバータ36を備えており、前述のように電流検出抵抗13およびヒューズ14を介してバッテリ11の出力電圧を入力するように接続されている。DC/DCコンバータ36は、出力電圧を表示部7へ供給する。
なお、IrDA近距離通信部16には、電流検出抵抗13およびヒューズ14を介してバッテリ11の電源電圧が供給される。
【0020】
図1に例示した携帯電話機1は、表示側筺体20と操作側筺体21とを備え、これらの筺体の一端部をヒンジ部22によって接続し、表示側筺体20と操作側筺体21が開閉可能なように構成されている。
表示側筺体20には、例えば、表示部7、電源回路12b、IrDA近距離通信部16などが配設されている。
操作側筺体21には、例えば、制御部2、操作部3、通信部4、音源IC5a、スピーカ5b、記憶部6、バッテリ11、電源回路12a、電流検出抵抗13、ヒューズ14、電流アンプ15、LDO35などが配設されている。
【0021】
図2は、第1の実施形態による携帯電話機の他の電源接続例を示す説明図である。この図は、携帯電話機1の他の電源接続例を示している。図1に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を使用し、その部分の重複説明を省略する。図2に示した各電源回路は、図1に示したものと同様に複数のLDOやDC/DCコンバータを備えて構成されている。
図2に示した電子デバイス(A)〜(C)、および、電子デバイス(1)〜(n)は、例えば図1に示した各部に備えられ、また前述のように制御部2によって動作等が制御されるように接続構成されている。
【0022】
電源回路12bは、電子デバイス(A)と電子デバイス(B)に対して、各々異なる電圧を供給するように接続されている。
ヒューズ14と電源回路12bの入力端子との接続点には、電子デバイス(C)が接続される。即ち、バッテリ11の高電位側端子から、電流検出抵抗13およびヒューズ14を介した電圧が、電子デバイス(C)へ供給されるように接続されている。
【0023】
電源回路12aは、前述のように各々異なる電圧を出力するように構成されており、各電圧を出力する端子に電子デバイス(1)〜(n)が接続されている。なお、例えば電子デバイス(2)には、二つの異なる電圧が供給され、電子デバイス(3)には、上記の電子デバイス(2)へ供給されている一方の電圧が供給される。また、電子デバイス(4)には、電源回路12aから異なる二つの電圧が供給される。
【0024】
このように、携帯電話機1は、バッテリ11の出力電流を検出する電流検出抵抗13を備え、制御部2が、携帯電話機1の電源電流値を認識することができるように構成されている。
【0025】
次に動作について説明する。
[携帯電話機の動作]
携帯電話機1は、操作部3になされた操作内容に応じて制御部2が各部を制御し、通信部4を制御して外部とのデータ等の送受信を行い、当該データが示す音声を音声入出力部から出力する。
また、音声入出力部へ入力された音声を所定のデータ形式に変換し、通信部4を用いて外部へ送信する。上記の通信動作を行うとき、通信先等の情報を表示部7に表示させる。
【0026】
また、制御部2は、このような通信動作を行うとき、記憶部6に記憶されている制御プログラム、通信先などに関するデータ等を用いる。
携帯電話機1は、例えば上記のような通信機能を備えており、また、図示を省略したカメラを用いた撮像機能などの各機能を備えている。ここでは、携帯電話機1を構成する上記の各部等によって実現される機能の動作説明を省略する。
【0027】
[異常電流の検出動作]
前述のような動作を行っているとき、制御部2は、電流検出抵抗13によって検出される電源電流を検出し、次に説明するような監視動作を行っている。なお、電流検出抵抗13の両端電圧、即ち電流検出抵抗13によって検出された電源電流値は制御部2の認識可能な信号値となるように、電流アンプ15によって例えば44倍に増幅される。
【0028】
図3は、第1の実施形態の携帯電話機の動作を示すフローチャートである。
制御部2は、前述のように電流アンプ15によって増幅された電流値、即ち電流検出抵抗13によって検出された電流値を読み取る(ステップST101)。
【0029】
異常電流が生じる場合には、デバイス等のハードウエアにおいて障害が発生した場合、また、当該ハードウエアを動作させているソフトウエアにおいて障害が発生した場合がある。これらの障害が発生したときには、電流値が増大する場合や電流値が小さくなる場合があり、特に、電流値が小さくなる障害を検出するためには、微小な電流変化を精度よく検出することが要求される。
図1等に示したように、携帯電話機1は、電流検出抵抗13の両端電圧から電源ラインの電流値を検出している。前述のように低抵抗値の電流検出抵抗13を電源ラインに直列接続させてバッテリ11から出力される電流値を検出することから、各デバイスへ印加する電圧の降下を極力防ぐことが可能となる。
【0030】
制御部2は、予め記憶部6に記憶されている閾値と、前述のステップST101の工程において読み取った電源電流値とを比較する(ステップST102,ST103)。上記の閾値は、例えば数百[mA]の値を有している。
【0031】
制御部2は、前述の比較において、電源電流値が閾値と等しい、または閾値を超えていると判定したときには、当該閾値を超えた回数をカウントして、例えば制御部2自らが備える記憶手段に上記の回数を記憶する(ステップST104)。詳しくは、上記の記憶手段に記憶されている回数に“1”を加算し、インクリメントした値を最新の“閾値を超えた回数”として記憶させる。
【0032】
前述のように、異常電流には、通常よりも電流値が増大する場合と、通常よりも減少する場合がある。これらの異常電流を検出するために、電流値が増大した場合の閾値と、電流値が減少した場合の閾値とを用いて、電流検出抵抗13の両端電圧から読み取った電源電流値と比較するようにしてもよい。このときには、前述の閾値を超えた回数を、電流値が閾値よりも大きい場合と閾値よりも小さい場合に分けてカウントする。
【0033】
ステップST103の工程において、読み取った電源電流値が閾値を超えておらず、また閾値と等しくもないと制御部2が判定したときには、前述の記憶手段に記憶されている閾値を超えた回数をリセットする(ステップST105)。また、上記の回数をリセットした後、処理タイミングを調整するウエイト処理を行って(ステップST106)、前述のステップST101の工程に戻り、以降の各工程を同様に行う。
上記のステップST106の工程において、制御部2は、電源電流の監視動作、即ち、前述の閾値を用いた判定動作を一定周期毎に行うように、次の処理動作を開始するタイミングを調整する。このように、制御部2は、所定の周期毎に電流検出動作を行い、電流検出に要する消費電流を抑制する。
【0034】
制御部2は、ステップST104の工程において、閾値を超えた回数を記憶手段に記憶させた後、この閾値を超えた回数がN回であるか否かを判定する(ステップST107)。
制御部2は、前述の閾値を超えた回数をカウントすることにより、各電源ラインに生じているノイズ、各信号等から発せられたノイズ、各部が動作を開始するときなどに生じる突入電流などによる誤判定を排除するようにしている。即ち、前述の“N回”は、上記のような誤判定を抑制することができる適当な回数である。また、このように複数回の閾値超えに対応して処理を行うことにより、制御部2自らを構成するデバイス等においてリードエラーなどが発生したときの誤判定に基づく誤った制御を、当該制御部2が行うことを防ぐことも可能になる。
【0035】
ステップST107の工程において、制御部2は、閾値を超えた回数がN回であると判定したときには、例えば、表示部7を制御して所定の表示動作を行い、ユーザに携帯電話機1の異常を警告する(ステップST108)。
また、制御部2は、前述のように異常電流を検出したとき、デバイスの動作状態もしくは設定状態等や、検出電流値等の詳細情報をエラーログとして例えば記憶部6へ記憶させる(ステップST109)。このエラーログは、操作部3等に所定の操作がなされたとき、または、障害解析装置等が外部接続されたとき、当該外部接続された装置へ出力される。または、制御部2の制御により表示部7などへ表示するようにしてもよい。
【0036】
制御部2は、前述のようにエラーログを記憶部6に記憶させた後、例えば、携帯電話機1をシャットダウン状態とする処理を実行する(ステップST110)。なお、携帯電話機1をリセット状態に制御し、正常状態に復帰させるようにしてもよい。
また、ステップST107の工程において、制御部2は、閾値を超えた回数がN回ではない、即ちN回未満であると判定したとき、処理タイミングを調整するウエイト処理を行い(ステップST106)、ステップST101の工程に戻って以降の各工程を同様に行う。
【0037】
[電流監視動作]
制御部2は、前述のステップST101〜ステップST107およびステップST110の各工程、即ち電源電流の監視動作を一定周期毎に行っている。
上記の監視動作は、例えば、通信部4が行っている通信動作に応じて行うようにしてもよい。
通信部4は、外部との無線通信を行うとき、例えば、TCXO(Temperature Compensated Xtal Oscillator)から出力されるクロック信号から生成された同期信号を用いている。
【0038】
制御部2は、通信部4の動作を制御していることから、当該通信部4の動作状態を認識している。
通信部4は、例えば操作部3になされた操作に応じて、外部と通信動作を行う。
制御部2は、上記のように通信部4が通信処理に関する動作を連続して行っているとき、前述の同期信号に同期させて、例えば5.12[sec]周期で電流検出抵抗13によって検出された電流値を入力し、異常電流であるか否かを判定する。
【0039】
通信部4は、いずれの操作もなされず、待機状態もしくはスリープ状態となっているとき、外部の基地局等と定期的に所定の通信処理を行う間欠動作を行っている。
制御部2は、通信部4が、間欠動作において、前述の基地局等からの電波を受信している状態であるとき、前述の同期信号に同期させて、例えば5.12[sec]周期で電流検出抵抗13によって検出された電流値を入力し、異常電流であるか否かを判定する。
【0040】
また、制御部2は、通信部4が、間欠動作において、いずれの電波も受信していないとき、即ち、圏外または電波OFFモードとなっているときには、次のように動作する。制御部2は、通信部4が動作に用いている前述の同期信号に同期させて、例えば6[sec]周期で電流検出抵抗13によって検出された電流値を入力し、異常電流であるか否かを判定する。
このように通信部4などのデバイスの稼働状態に応じて、電流検出の周期を変化させ、デバイスが頻繁に動作していないときには、比較的長周期をもって異常電流を監視し、当該電流監視に要する消費電流を抑制する。
【0041】
[デバイスの状態に対応する動作]
制御部2は、携帯電話機1に備えられている各デバイスの状態に応じて、異常検出処理に用いる閾値を切り替え/変更している。
前述のステップST102の工程などにおいて使用される閾値は、例えば記憶部6に予め複数記憶されている。このように記憶されている閾値は、各デバイス等の稼働状態、あるいは待機状態において要する消費電流に対応させて設定された値を各々有している。
【0042】
制御部2は、前述のように各デバイスの状態を認識していることから、適宜、これらの状態に適合する閾値を記憶部6から読み出し、前述のような判定に用いている。また、デバイス等の状態が変化した場合には、閾値も適当なものに変更している。
【0043】
図4は、電流検出に用いる閾値を変更する動作を示す説明図である。この図は、実際にバッテリ11から出力される、もしくは電流検出抵抗13によって検出される電流値と、制御部2が異常電流の検出に用いる閾値との経時変化を示すグラフである。横軸は経過時間、縦軸は実際の電流値もしくは閾値が示す電流値である。
【0044】
例えば、操作部3になされた操作により、制御部2がカメラを起動させる制御を開始すると、図4に示したように、携帯電話機1の消費電流を示す電流値が増大する。
制御部2は、カメラを起動させる制御を開始すると、異常電流の検出に用いる閾値を、これまでの検出処理に用いていた第1の閾値から、当該カメラの動作に対応させた第2の閾値に変更する処理を行う。
すると制御部2は、図4に示した時間t1において、例えば記憶部6に記憶されていた上記のカメラを動作させるときに対応させた第2の閾値を読み出し、異常電流の検出に用いていた閾値を切り替える。
【0045】
上記の閾値を切り替えて異常電流の検出処理が開始される前に、即ち、時間t1以前にカメラを起動する制御により消費電流が増大すると、カメラの起動時に対応していない閾値により異常電流の検出処理が行なわれる。すると、各部とも正常な動作を行っているにもかかわらず、このときの消費電流が異常電流として検出される。
【0046】
第1の実施形態による携帯電話機1は、上記のような誤検出を防ぐため、次のように動作する。
【0047】
図5は、第1の実施形態による携帯電話機の動作を示す説明図である。この図は、閾値を変更する際に行われる異常電流の検出動作を示すグラフであり、横軸は経過時間、縦軸は実際の電流値もしくは閾値が示す電流値である。
【0048】
制御部2は、図5に示したように、時間t1において前述の第1の閾値から第2の閾値に切り替えた後、次の電流検出周期から異常電流の検出処理を開始する。即ち、図5に示したポイントP1以降において、検出ポイントPs1,Ps2,Ps3…の各時点で検出した電流値と切り替え後の第2の閾値との比較処理を行い、また、ポイントP1の時点から、電流値が第2の閾値を超えた回数をカウントする。
【0049】
制御部2は、第2の閾値を超えた回数が所定の回数になり、異常電流が検出されたと判断した後、異常電流検出に対処する各処理を前述の説明と同様に行う。
なお、制御部2は、前述のように閾値が切り替ったとき、例えば自ら備える記憶手段に記憶している、この時点までの第1の閾値を超えた回数をリセットし、新たに第2の閾値を超えた回数のカウントを開始する。
【0050】
以上のように、第1の実施形態によれば、バッテリ11の端子に接続された低抵抗値の電流検出抵抗13を用いて、消費電流を検出する。制御部2は、前述の検出電流値を所定の閾値と比較し、検出電流値が閾値を超えた回数をカウントする。このカウントした回数が所定の回数になったとき異常電流が検出されたと判定するようにした。
このようにすることによって、精度よく電流変化を検出することができる。また、バッテリ11に直接接続されている電源ラインの電流を監視するだけで良く、部品コストを抑制するとともに、実装スペースを抑えることができる。
【0051】
また、複数回の閾値超えにより異常電流と判定することにより、電源ラインのノイズ、他の信号線に存在するノイズ、突入電流などの影響を抑えることができ、誤判定を防ぐことができる。また、制御部2を構成するデバイス等のリードエラーによる誤判定も防ぐことができる。
また、低抵抗値の電流検出抵抗13を用いて異常電流を検出することにより、閾値を超えた電流値が、正常な消費電流よりも大きくなった場合でも、小さくなった場合でも検出することができる。即ち、ハードウエアによる障害ならびにソフトウエアによる障害を検知することができる。
また、制御部2が異常判定を行ったときのデータログを記憶部6へ記憶するようにしたので、不具合箇所の解析を容易に行うことができる。
また、制御部2が異常判定を行ったとき、ユーザに異常を警告して当該携帯電話機1をシャットダウン状態に制御することにより、障害の拡大を抑制し、またユーザに不具合の存在を報知することができる。
【0052】
また、通信部4が間欠受信状態のとき、制御部2は電流検出処理を比較的長い周期で行うことにより、電流監視に要する消費電流を抑制することができる。
また、デバイス等の状態の変更にともなって、判定に用いる閾値を切り替えたとき、当該閾値を切り替えた後に検出した電流値を用いて異常判定を行うことによって、デバイスの状態が変更されるときの負荷変動などによる消費電流の変動の影響を抑えて、異常電流の検出精度を向上させることができる。
【0053】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態による電子機器は、例えば第1の実施形態で説明した携帯電話機と同様に構成される。ここでは、第1の実施形態で説明した装置と同様な構成の重複説明を省略する。
【0054】
次に動作について説明する。
第2の実施形態による携帯電話機は、第1の実施形態で説明した装置と概ね同様に動作する。ここでは、第1の実施形態で説明した装置と同様な動作の重複説明を省略し、第2の実施形態による携帯電話機の特徴となる動作について説明する。
第2の実施形態による携帯電話機1は、デバイスの状態に応じて閾値を切り替えたときの処理動作が、第1の実施形態で説明した装置と異なる。
【0055】
図6は、本発明の第2の実施形態による携帯電話機の動作を示す説明図である。この図は、閾値を変更する際に行われる異常電流の検出動作を示すグラフであり、横軸は経過時間、縦軸は実際の電流値もしくは閾値が示す電流値である。
【0056】
カメラを起動させた直後など、いずれかのデバイスの動作状態を変更した際には、負荷変動により携帯電話機1の消費電流が不安定に変動する。
このような電流変動を異常電流として検出することを防ぐため、第2の実施形態による携帯電話機1の制御部2は、次のような動作処理を行っている。デバイスの状態を変化させ、この変化に応じて異常電流検出に用いている閾値を切り替えたとき、一定の期間Tsにおいて、電流検出抵抗13の検出した電流値を入力する周期を長く伸ばして異常電流の検出処理を行う。
【0057】
具体的には、制御部2は、例えば図6に示した検出ポイントPs11,Ps12,Ps13の各時点における電流値を電流検出部、即ち電流検出抵抗13および電流アンプ15から入力し、前述のように閾値との比較を行う。なお、上記の検出ポイントPs11〜Ps13は、図5に示した検出ポイントPs1〜Ps3に比べて時間間隔が大きくとられている。
【0058】
このように電流検出抵抗13から電流値を検出する周期を長くすることにより、前述の負荷変動による消費電流の変動などのように比較的短時間内にて収束する、一時的な電流変動を検出しないようにすることができる。
なお、前述の期間Tsが経過した後、制御部2は、例えば、デバイスの動作状態を変更する以前と同様な周期で電流値を検出し、異常電流の検出処理を行う。
【0059】
以上のように第2の実施形態によれば、制御部2が、デバイス等の状態の変更にともなって判定に用いる閾値を切り替えたとき、当該閾値を切り替えた後、一定の期間Tsにおいて電流検出を行う周期を長く伸ばして行うようにした。
このことによって、デバイスの状態が変更されるときの負荷変動などによる消費電流の変動の影響を抑えて、異常電流の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態による電子機器の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態による携帯電話機の他の電源接続例を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態の携帯電話機の動作を示すフローチャートである。
【図4】電流検出に用いる閾値を変更する動作を示す説明図である。
【図5】第1の実施形態による携帯電話機の動作を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による携帯電話機の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…携帯電話機、2…制御部、3…通信部、3a…アンテナ、4…操作部、5a…音源IC、5b…スピーカ、6…記憶部、7…表示部、8…カメラ、9…周辺機器部、10…電源部、11…バッテリ、12a,12b…電源回路、13…電流検出抵抗、14…ヒューズ、15…電流アンプ、16…IrDA近距離制御部、20…表示側筺体、21…操作側筺体、22…ヒンジ部、31,32,35…LDO、33,34,36…DC/DCコンバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
前記電池の端子に接続する電流検出部と、
前記電流検出部を介して前記電池からの電源電流が供給される複数のデバイスと、
前記デバイスの状態に応じた消費電流に対応して予め設定された閾値を複数記憶する記憶部と、
前記デバイスの動作を制御するとともに前記電流検出部の検出電流値を所定の周期で入力し、前記検出電流値と前記記憶部に記憶されている前記デバイスの状態に対応する閾値とを比較し、
前記比較により前記検出電流値が前記閾値を超えた回数をカウントし、前記カウントした回数が所定の回数になったときに異常が発生したと判断する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記デバイスの状態に応じて前記比較に用いる閾値を第1の閾値から第2の閾値へ変更したとき、
前記第1の閾値により検出した前記閾値を超えた回数をリセットし、
前記第2の閾値へ変更した次の周期において前記電流検出部が検出した検出電流値から前記閾値を超えた回数のカウントを始めることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記制御部は、
前記デバイスの状態に応じて前記比較に用いる閾値を第1の閾値から第2の閾値へ変更したとき、
前記電流検出部から検出電流値を入力する周期を一定期間内において大きくすることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記デバイスをスリープ状態としたとき、
前記電流検出部から検出電流値を入力する周期を、外部との通信を行う通信部の間欠受信の動作タイミングに同期させることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−110133(P2010−110133A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280425(P2008−280425)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】