電子筆記具
【課題】電子筆記具の組み付け性、収容性を良くする技術を提供する。
【解決手段】媒体からの反射光を集光する集光部を収容する円筒状の筐体621を、筐体621の軸心(A−A)方向に伸びる面を開口面として分割し、反射光を透過させる光透過部としての開口部621bを有する第1の筐体601と、第1の筐体601に対向する第2の筐体602に分ける。これにより、筐体621の開口面積を大きくすることが可能となり、例えば収容部品の筐体内部への組み付けが容易となる。また、開口面は、筐体621の軸心(A−A)を通る面であることで、筐体621の開口面積をさらに大きくすることができ、組み付け性をさらに向上させることができる。
【解決手段】媒体からの反射光を集光する集光部を収容する円筒状の筐体621を、筐体621の軸心(A−A)方向に伸びる面を開口面として分割し、反射光を透過させる光透過部としての開口部621bを有する第1の筐体601と、第1の筐体601に対向する第2の筐体602に分ける。これにより、筐体621の開口面積を大きくすることが可能となり、例えば収容部品の筐体内部への組み付けが容易となる。また、開口面は、筐体621の軸心(A−A)を通る面であることで、筐体621の開口面積をさらに大きくすることができ、組み付け性をさらに向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、用紙等の媒体上に筆記された文字や図形等が電子データに変換され、それがパーソナルコンピュータや携帯電話等に転送されて、筆記内容が保存等される技術が注目されている。
例えば特許文献1では、次のような技術が記載されている。すなわち、表面にそれぞれ異なるパターンで形成された微細なドットが印刷された媒体と、例えば撮像素子が内蔵されたペンデバイスとを用い、ペンデバイスによりこの媒体上に筆記が行われると、筆記された文字や図形等の位置のドットパターンが撮像素子に読み込まれ、文字や図形等の位置(描画トレース)の位置座標が特定される。それにより、筆記された文字や図形等からなる電子文書の生成や、所定の電子文書への文字や図形等の付加等を行う。
例えば特許文献2では、次のような技術が記載されている。すなわち、電子ペン用のモジュラユニットは、保持体と、プリント回路基板と、プリント回路基板に取り付けられた二次元放射線センサと、画像平面を画定する撮像ユニットとを備える。保持体、プリント回路基板および撮像ユニットは放射線センサと対向する撮像ユニットと一体に結合され、放射線センサの位置に撮像面を置く。モジュラユニットは、画像に基づく位置決定のような、専用の分析システムを備える。LEDまたはレーザダイオードなどの放射源がプリント回路基板上に配置、または撮像ユニット上のホルダー内に取り付けられる。撮像ユニットは、放射線センサの方向に伝播される放射線の空間起点を制御するセンサ照準ユニットとして実現できるとしている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−94907号公報
【特許文献2】特表2007−524155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ペンデバイスなどの電子筆記具には、微細ドットを読み込む撮像素子が取り付けられた回路基板と、照射部材などの電子部品を制御する制御回路が実装された制御基板などが内蔵される。これらの基板の面積はできる限り大きい方が望ましいが、電子筆記具自体はあまり大きくない方がよい。また、電子筆記具の先端部には、筆記用のペン軸、照射部材、結像レンズなどの様々な部品が内蔵される。そのため、これらの部品を筐体内部に適確に保持することが重要となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、媒体に対して光を照射する照射部と、前記媒体からの反射光を集光する集光部と、前記集光部を収容する円筒状の筐体と、を含み、前記筐体は、当該筐体の軸心方向に伸びる面を開口面として分割された前記反射光を透過させる光透過部を有する第1の筐体と、当該第1の筐体に対向する第2の筐体と、を有することを特徴とする電子筆記具である。
請求項2に記載の発明は、前記筐体を二つに分割する面は、前記筐体の軸心を通る面であることを特徴とする請求項1記載の電子筆記具である。
請求項3に記載の発明は、前記集光部にて集光された光を屈折させるプリズムと、前記プリズムにて屈折された光を受光する撮像素子が取り付けられた回路基板と、をさらに有し、前記筐体を二つに分割する面は、前記回路基板に平行な面であることを特徴とする請求項1または2記載の電子筆記具である。
請求項4に記載の発明は、前記第1の筐体は、前記媒体への筆記が可能な筆記部先端側に当該筆記部を往復動可能に支持する支持軸と、前記光透過部と対向する位置に設けられた当該支持軸の後端部から後端側に延びる傘部と、を有し、前記第2の筐体の先端側の端部は、前記傘部の後端側開口部と前記筐体の軸心と直交する方向に重なり合うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子筆記具である。
請求項5に記載の発明は、前記媒体への筆記が可能な筆記部を往復動可能に支持するとともに前記照射部を支持する支持部材をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子筆記具である。
【0006】
請求項6に記載の発明は、前記第1の筐体と前記第2の筐体は、スナップフィットで固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電子筆記具である。
請求項7に記載の発明は、前記第1の筐体と前記第2の筐体の軸心と直交する方向への変位を規制する円環部材をさらに有し、前記円環部材は、媒体への筆記が可能な筆記部の先端を覆うキャップの前記筐体の軸心方向への移動を規制することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電子筆記具である。
請求項8に記載の発明は、前記第1の筐体または前記第2の筐体の前記開口面における開口部に前記筐体の軸心と平行に配置された制御回路が実装された制御基板をさらに有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電子筆記具である。
請求項9に記載の発明は、前記第1の筐体または前記第2の筐体の前記開口面における開口部の縁部に、当該開口部に沿うように他方の筐体側に突出する突出部を有すること特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電子筆記具である。
請求項10に記載の発明は、少なくとも前記第1の筐体および前記第2の筐体のいずれかの筐体の内側は黒色であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電子筆記具である。
【0007】
請求項11に記載の発明は、軸方向に伸びる面を開口面とする第1の筐体と、当該開口面にて当該第1の筐体に連結される第2の筐体とに分割される筐体と、前記第1の筐体に設けられ媒体からの反射光を集光する集光部と、前記第1の筐体に設けられ前記集光部にて集光された光を屈折させるプリズムと、前記第1の筐体に取り付けられ、前記プリズムにて屈折された光を受光する撮像素子が取り付けられた回路基板と、を有することを特徴とする電子筆記具である。
請求項12に記載の発明は、前記開口面は、前記筐体の軸心を通る面であることを特徴とする請求項11記載の電子筆記具である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1によれば、筐体の開口面積を大きくすることが可能となり、例えば収容部品の筐体内部への組み付けが容易となる。
本発明の請求項2によれば、筐体の開口面積を更に大きくすることが可能となる。
本発明の請求項3によれば、回路基板を筐体内部に組み付け易くすることができるため回路基板の面積を大きくすることができる。
本発明の請求項4によれば、先端部の剛性を高くできるため筆記部などを適確に保持することができる。
本発明の請求項5によれば、筆記部および照射部を適確に保持することができるとともにこれらの部品を組み付け易くできる。
本発明の請求項6によれば、筐体の組み立て性を向上させることができる。
【0009】
本発明の請求項7によれば、組み立てられた筐体を分離し難くすることができるとともに、キャップが過度に深く挿入されることを防止することができる。
本発明の請求項8によれば、制御基板の面積を大きくすることができる。
本発明の請求項9によれば、媒体からの反射光以外の光が筐体内部に侵入し悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
本発明の請求項10によれば、反射光が筐体の内面で乱反射することを抑制することができる。
本発明の請求項11によれば、本発明を採用しない場合に比べて構成部品の組み付けが良好となり、構成部品の収容性を向上させることができる。
本発明の請求項12によれば、筐体の開口面積をより大きくすることができ、収容性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」という)について詳細に説明する。
まず、本実施の形態における筆跡情報管理システムの全体構成について説明する。
図1は、本実施の形態の筆跡情報管理システムの構成の一例を示した図である。図1に示したように、この筆跡情報管理システムは、端末装置10と、文書サーバ20と、識別情報サーバ30と、画像形成装置40と、端末装置50とがネットワーク80に接続されることにより構成されている。また、端末装置50には、デジタルペン60が通信装置70を介して接続されている。
【0011】
本実施の形態の筆跡情報管理システムでは、端末装置10から電子文書の印刷要求が行われると、文書サーバ20は端末装置10からの印刷要求を受け取り、画像形成装置40に対して印刷要求の対象となった電子文書の印刷指示を行う。それにより、画像形成装置40は、この電子文書の文書画像を紙等の媒体に印刷するが、その際に、画像形成装置40は文書画像に加えて符号画像を媒体上に印刷する。
ここでの符号画像とは、識別情報および位置情報を符号化して得られる識別符号および位置符号を画像化したものである。識別情報とは、媒体を一意に特定するための情報であり、本実施の形態では識別情報サーバ30が発行する。また、位置情報は、媒体上の座標位置を特定するための情報であり、本実施の形態では文書サーバ20が生成する。
そして、文書画像と符号画像とが印刷された媒体に対し、ユーザがデジタルペン60を用いて筆記すると、デジタルペン60は符号画像に含まれる位置情報に基づいて手書き情報(筆跡情報)を生成する。またそれと同時に、デジタルペン60は符号画像に含まれる識別情報を認識する。そして、認識された識別情報と筆跡情報とは、端末装置50を介して文書サーバ20に送られる。識別情報と筆跡情報とを受け取った文書サーバ20は、識別情報に基づいて媒体に印刷された電子文書を特定し、この特定された電子文書と筆跡情報とを関連付けて記憶する。
また、文書画像と符号画像とが印刷された媒体に対し、ユーザがデジタルペン60を用いて文書画像に対応付けられた所定の情報の表示を指示すると、デジタルペン60はその指示があったことを示す信号と、符号画像に含まれる識別情報および位置情報を認識する。そして、認識された信号、識別情報および位置情報は、端末装置50へ送られる。これらを受け取った端末装置50は、識別情報および位置情報を文書サーバ20に送り、その識別情報および位置情報に対応する媒体に印刷された電子文書に対応付けられた所定の情報源へのリンク先(URL)を要求する。そして、所定の情報へのリンク先(URL)を受け取った端末装置50は、そのリンク先にアクセスし、例えば自身のディスプレイに所定の情報を表示する。
【0012】
なお、本明細書では、媒体に記録する画像の元となる電子データを「電子文書」と表記するが、これは、テキストを含む「文書」を電子化したデータのみを意味するものではない。例えば、絵、写真、図形等の画像データ(ラスタデータかベクターデータかによらない)、データベース管理ソフトウェアや表計算ソフトウェアで記録されるデータ、その他の印刷可能な電子データも含めて「電子文書」としている。
また、本明細書において、「媒体」は、画像を印刷可能な媒体であれば、その材質は問わない。代表例は紙であるが、OHPシート等といったプラスチックシートや金属板等であっても構わない。
さらに、本明細書では、電子文書、媒体、さらにはデジタルペン60やユーザについて、それぞれを一意に識別するための識別情報を用いて処理を行うが、単に「識別情報」という場合には、媒体に関する識別情報を意味するものとする。
【0013】
続いて、本実施の形態の筆跡情報管理システムを構成する各構成要素について詳細に説明する。
端末装置10は、文書サーバ20に対して電子文書の印刷を要求するコンピュータ装置である。ここで、端末装置10としては、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、その他のコンピュータが用いられる。
文書サーバ20は、電子文書を記憶し管理するコンピュータ装置である。また、端末装置10から電子文書の印刷要求があると、電子文書の画像と、識別情報および位置情報を表す符号画像とを生成し、これらを合成した合成画像を媒体に印刷する印刷命令を画像形成装置40に対して出力する。ここで、文書サーバ20としては、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、その他のコンピュータが用いられる。
【0014】
識別情報サーバ30は、媒体に付与する識別情報を発行するコンピュータ装置である。そして、発行した識別情報を、その識別情報が付与される媒体に印刷される電子文書と関連付けて記憶する。ここで、識別情報サーバ30としては、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、その他のコンピュータが用いられる。
画像形成装置40は、媒体に画像を印刷し、印刷文書として出力する装置である。この画像形成装置40は、単体のプリンタや印刷機であってもよいし、他にスキャナや通信の機能を備えた所謂「複合機」であってもよい。ここで、画像形成装置40における画像形成方式としては、例えば、電子写真方式を用いるとよいが、その他の方式を用いてもよい。
【0015】
端末装置50は、印刷文書に対する筆記を電子化した情報(以下、「筆跡情報」という)を、印刷文書に記録された画像の元となる電子文書に反映させるために識別情報サーバ30に送信するコンピュータ装置である。また、筆跡情報を反映する対象の電子文書をディスプレイ(不図示)に表示し、その上に筆跡情報を重ねて表示するようにしてもよい。ここで、端末装置50としては、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、その他のコンピュータが用いられる。また、筆跡情報を主に手書き情報として説明するが、これに限らず、例えば、建築や機械等の図面データを出力する装置であるプロッタ等によって機械的に描画された情報等を含むものである。
【0016】
デジタルペン60は、印刷文書上に文字または図形を筆記するために用いられるペンデバイスである。また、媒体に印刷された符号画像を読み取る撮像素子を備える。そして、撮像素子で読み取った符号画像から位置情報を検出し、筆記した文字または図形をイメージデータ化した筆跡情報をこの位置情報に基づいて生成し記憶する。
通信装置70は、デジタルペン60から筆跡情報を取得して端末装置50に送信する装置である。通信装置70とデジタルペン60との間の通信の方式および通信装置70と端末装置50との間の通信の方式としては、USB(Universal Serial Bus)、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信機能等、種々の方式が用いられる。なお、図1では、通信装置70をデジタルペン60と別体のものとして示しているが、必ずしも別体である必要はなく、一体に構成してもよい。
【0017】
引き続いて、筆跡情報管理システムを構成する各構成要素の詳細を説明する。
まず、文書サーバ20の構成について説明する。
図2は、文書サーバ20の機能構成の一例を示したブロック図である。図2に示したように、文書サーバ20は、受信部21と、識別情報取得部22と、電子文書管理部23と、筆跡情報管理部24と、文書/筆跡情報記憶部25とを備える。また、識別符号生成部27aと、位置符号生成部27bと、符号配置部27cと、パターン画像記憶部27dと、符号画像生成部27eとを備える。さらに、文書画像生成部26と、画像合成部28と、送信部29とを備える。
【0018】
受信部21は、端末装置10から印刷要求を受信する。ここで、印刷要求には、電子文書に加えて、印刷対象となる電子文書の識別情報(以下、「文書ID」という)と、印刷される媒体上での電子文書のレイアウトを定めるための各種設定(以下、「印刷設定」という)とが含まれる。文書IDは、端末装置10にて電子文書毎に付与されるが、文書サーバ20にて付与してもよい。また、受信部21は、印刷文書が印刷される媒体に固有に付与される識別情報を識別情報サーバ30から受信する。さらに、印刷文書に対する筆記が行われた際には、識別情報サーバ30から、印刷文書に埋め込まれた識別情報と、印刷文書に対する筆記の内容(筆記画像)を電子化した筆跡情報とを受信する。
識別情報取得部22は、受信部21から文書IDおよび印刷設定を取得し、これを送信部29に渡して識別情報の発行要求の送信を指示し、これを文書画像生成部26に渡して文書画像の生成を指示する。また、受信部21から媒体の識別情報を取得し、これを識別符号生成部27aに渡して識別符号の生成を指示する。
【0019】
電子文書管理部23は、受信部21が受信した識別情報と電子文書とを取得し、文書IDに基づき両者を対応付けて文書/筆跡情報記憶部25に登録する。また、文書/筆跡情報記憶部25に記憶された電子文書についての、印刷設定に従って媒体上に印刷された状態を反映した新たな電子文書(第2の電子文書)を生成し、生成された第2の電子文書を文書/筆跡情報記憶部25に記憶する。さらに、電子文書の表示や印刷が指示された際には、対応する識別情報と電子文書とを、文書/筆跡情報記憶部25から取り出す。また、電子文書に対応付けられた所定の情報へのリンク先(URL)の要求がなされた際には、そのリンク先(URL)を文書/筆跡情報記憶部25から取り出す。
【0020】
筆跡情報管理部24は、受信部21が受信した識別情報と筆跡情報とを取得し、識別情報に基づき筆跡情報を電子文書に対応付けて文書/筆跡情報記憶部25に登録する。また、筆跡情報の表示が指示された際には、対応する識別情報と筆跡情報とを、文書/筆跡情報記憶部25から取り出す。
文書/筆跡情報記憶部25は、電子文書管理部23によって管理される電子文書と、筆跡情報管理部24によって管理される筆跡情報とを記憶する。また、電子文書に対応付けられた所定の情報へのリンク先(URL)を記憶する。
【0021】
識別符号生成部27aは、媒体を特定する識別情報を符号化して識別符号を生成する。
位置符号生成部27bは、媒体上の座標位置を示す位置情報を符号化して位置符号を生成する。
符号配置部27cは、識別符号生成部27aにて生成された識別符号や、位置符号生成部27bにて生成された位置符号等を所定のレイアウト(後段の図3参照)に従って2次元平面に配置し2次元の符号配列を生成する。
パターン画像記憶部27dは、符号配列に格納される各符号の符号値に対応するパターン画像を記憶する。
符号画像生成部27eは、符号配置部27cが生成した2次元の符号配列を参照し、各符号値に対応したパターン画像を選択して符号画像を生成する。
【0022】
文書画像生成部26は、識別情報取得部22から文書IDおよび印刷設定を取得し、この文書IDで特定される電子文書を文書/筆跡情報記憶部25から読み出す。そして、印刷設定に従ってその電子文書の文書画像を生成する。
画像合成部28は、符号画像生成部27eが生成した符号画像と、文書画像生成部26が生成した文書画像とを合成し、合成画像を生成する。
送信部29は、識別情報サーバ30に対して識別情報の発行要求を送信する。また、画像形成装置40に対して媒体に対する画像の印刷命令を送信する。さらに、筆跡情報の表示が指示された際には、識別情報サーバ30に対して識別情報と筆跡情報とを送信する。
【0023】
ここで、本実施の形態の文書サーバ20で生成される符号画像について説明する。
図3は、符号画像を構成する画像等の一例を示した図である。まず、符号画像を構成する単位パターンについて説明する。図3(a)は、単位パターンの一例を示したものである。
単位パターンとは、情報埋め込みの最小単位である。図3(a)では、黒塗りの領域と斜線の領域をドット配置可能な領域とし、その間にある白色の領域をドット配置不可能な領域としている。そして、ドット配置可能な領域のうち、黒塗りの領域にドットが配置され、斜線の領域にはドットが配置されていないことを示している。すなわち、図3(a)は、ドットを配置可能な9箇所の中から選択した2箇所(黒塗りの領域)にドットを配置することで単位パターンを構成した例を示したものである。ここで、9箇所の中から2箇所を選択する組み合わせは36(=9C2)通りなので、単位パターンは、36種類存在する。このうち、4種類の単位パターンは、同期パターンとして使用される。同期パターンとは、画像の回転を検出したり、識別符号および位置符号の相対的な位置を特定したりするためのパターンである。特に、画像の回転を検出する必要があることから、4種類の同期パターンとしては、そのうちの1つの同期パターンを90度回転するとそのうちの別の同期パターンになるようなものが選ばれる。また、この4種類の単位パターンを除く32種類の単位パターンは、識別符号および位置符号を表現する情報パターンとして使用され、5ビットの情報が表現される。
【0024】
ところで、図3(a)に示したドットは、あくまで情報表現のためのドットであり、画像を構成する最小の点を意味するドットとは必ずしも一致しない。本実施の形態において、情報表現のためのドット(図3(a)の最小の四角)は、600dpiにおける2ドット×2ドットの大きさを有している。600dpiにおける1ドットの大きさは0.0423mmなので、情報表現のためのドット(図3(a)の最小の四角)の一辺は、84.6μm(=0.0423mm×2)である。情報表現のためのドットは、大きくなればなるほど目に付きやすくなるため、できるだけ小さいほうが好ましい。ところが、あまり小さくすると、プリンタで印刷できなくなってしまう。そこで、情報表現のためのドットの大きさとして、50μmより大きく100μmより小さい上記の値を採用している。ただし、上記の値84.6μmは、あくまで計算上の数値であり、実際に印刷されたトナー像では100μm程度になる。なお、本明細書で「ドット」というときは、特に明示しない限り、画像を構成する最小の点を意味するドットではなく、情報表現のためのドットを指すものとする。
【0025】
次に、このような単位パターンから構成される符号ブロックについて説明する。図3(b)に、符号ブロックのレイアウトの一例を示す。なお、ここでは、画像ではなく、パターン画像によって置き換えられる直前の符号配列で示している。すなわち、図3(b)の最小の四角(以下、「単位ブロック」という)に、図3(a)のような単位パターン(36通りの単位パターンのいずれか)が配置され、その画像が媒体に形成されることになる。
図3(b)のレイアウトでは、符号ブロックの左上の1つの単位ブロックに、同期符号が配置されている。また、同期符号が配置された単位ブロックの右側の4つの単位ブロックにX位置符号が配置され、同期符号が配置された単位ブロックの下側の4つの単位ブロックにY位置符号が配置されている。さらに、これらの位置符号が配置された単位ブロックに囲まれた16(=4×4)個の単位ブロックに識別符号が配置されている。
【0026】
ここで、識別情報の符号化について述べる。
識別情報を符号化する場合、識別情報を構成するビット列は、RS符号化を行うために複数のブロックに分割される。符号化には、いくつかの方法があるが、本実施の形態では、RS符号化が適している。RS符号は多値の符号法であり、この場合、単位ブロックで表現される値がRS符号の多値に対応するからである。例えば、1つの単位ブロックで5ビットの情報を表現する場合、60ビットの識別情報は、ブロック長が5ビットの12個のブロックに分割される。そして、2ブロックの誤りを訂正可能なRS符号を採用したとすると、符号長は16ブロックとなり、図3(b)の符号ブロックにおける識別符号が配置される単位ブロックに収まることになる。なお、符号化方式はRS符号に限定するものでなく、その他の符号化方式、例えば、BCH符号等を使用してもよい。
【0027】
引き続いて、位置情報の符号化について述べる。
位置情報の符号化には、擬似乱数系列の一種であるM系列符号が使用される。ここで、M系列とは、ある長さのシフトレジスタとフィードバックによって生成される符号系列とのうち、その周期が最長になる系列をいう。Kをシフトレジスタの段数とすると、M系列の系列長は2K−1となる。このM系列から取り出した任意の連続したKビットは、同じM系列中の他の位置に現れない性質を持つ。そこで、この性質を利用して位置情報を符号化する。
ところで、本実施の形態では、符号化すべき位置情報の長さから、必要なM系列の次数を求め、M系列を生成している。しかしながら、符号化する位置情報の長さが予め分かっている場合は、M系列を毎回生成する必要はない。すなわち、固定のM系列を予め生成しておき、それをメモリ等に格納しておけばよい。
例えば、系列長8191のM系列(K=13)を使用したとする。この場合、位置符号も5ビット単位で埋め込むため、系列長8191のM系列から5ビットずつ取り出してブロック化する。
【0028】
なお、本明細書では、説明を簡単にするために、識別情報と位置情報とは明確に区別して用いている。しかしながら、広範な位置情報を用意しておき、媒体ごとに異なる範囲から位置情報を切り出して埋め込み、位置情報の違いによって媒体を識別するという手法もある。そこで、このような手法においては、媒体を識別する機能が位置情報に備わっているものと見て、位置情報を識別情報としても考えるものとする。
【0029】
次に、識別情報サーバ30の構成について説明する。
図4は、識別情報サーバ30の機能構成の一例を示したブロック図である。図4に示したように、識別情報サーバ30は、受信部31と、識別情報管理部32と、識別情報記憶部33と、表示情報生成部34と、送信部39とを備える。
受信部31は、文書サーバ20から識別情報の発行要求を受信する。また、受信部31は、印刷文書に対する筆記が行われた際には、媒体の識別情報と筆跡情報とを端末装置50から受信する。
【0030】
識別情報管理部32は、識別情報の発行要求があると、識別情報を重複することなく発行し、その際に指定された文書IDおよび印刷設定を識別情報に関連付けて記憶する。また、識別情報の指定を受けて、その識別情報に対応する文書IDおよび印刷設定を取り出す。
識別情報記憶部33は、識別情報を、その使用/未使用の状態、それが付与された媒体に印刷された電子文書の文書ID、それが付与された媒体に電子文書が印刷された際の印刷設定を関連付けて記憶するデータベースである。
表示情報生成部34は、筆跡情報の表示が指示された際に、文書サーバ20から取得した情報に基づいて、筆跡情報を表示するための表示情報を生成する。この表示情報としては、例えば、端末装置50で表示するイメージを生成する元となるデータを生成する。
【0031】
送信部39は、文書サーバ20からの要求に応じて発行した識別情報を文書サーバ20に送信する。また、印刷文書に対する筆記が行われた際には、媒体の識別情報と筆跡情報とを文書サーバ20に送信する。さらに、筆跡情報の表示が指示された際には、端末装置50に対して表示情報を送信する。
【0032】
次に、デジタルペン60について説明する。なお、ここではデジタルペン60の機能構成の概略を説明することとし、デジタルペン60の構成の詳細は後段で説明する。
図5は、デジタルペン60の機能構成の概略を説明する図である。図5に示したように、デジタルペン60は、ペン全体の動作を制御する制御回路61を備える。また、制御回路61は、読み取った符号画像を処理する画像処理部61aと、画像処理部61aでの処理結果から識別情報および位置情報を抽出するデータ処理部61bとを含む。
また、制御回路61には、デジタルペン60による筆記動作をペンチップ69に加わる圧力(筆圧)によって検知し、デジタルペン60を動作状態に設定する筆圧検知スイッチ62が接続されている。さらに、媒体上に赤外光を照射する照射部としての赤外LED63と、反射光を受光することによって符号画像を読み取る受光部としての赤外CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)64も接続されている。さらにまた、識別情報および位置情報を記憶するための情報メモリ65と、外部装置と通信するための通信回路66と、ペンを駆動するためのバッテリ67と、ペンの識別情報(ペンID)を記憶するペンIDメモリ68とが接続されている。
【0033】
制御回路61において実現される機能構成について詳細に説明する。図6は、制御回路61の機能構成の一例を示したブロック図である。なお、図6では、制御回路61内の画像処理部61aとデータ処理部61bとに分けて、機能構成例を示している。
図6に示したように、画像処理部61aは、画像取得部631と、ドット配列生成部632とを備える。また、データ処理部61bは、符号配列生成部633と、識別情報取得部634と、位置情報取得部635と、筆跡情報生成部636と、送信部639とを備える。
【0034】
画像取得部631は、赤外CMOS64が印刷文書から読み取った符号画像を取得する。また、必要に応じて、符号画像に含まれるノイズを除去する。
ドット配列生成部632は、符号画像におけるドットの位置を参照して、ドット配列を生成する。すなわち、2次元の配列上で、例えば、ドットがある位置に「1」を、ドットがない位置に「0」を記憶することにより、画像として検出したドットをデジタルデータに置き換える。そして、この2次元の配列をドット配列として出力する。
【0035】
符号配列生成部633は、ドット配列上で、符号ブロック内の単位パターンに対応するブロックを検出する。具体的には、単位パターンが配置されるブロックと同じ形状および大きさの枠をドット配列上で動かし、枠内のドット数が均等になる位置で枠を固定する。例えば、図3(a)の単位パターンを用いる場合であれば、3ドット×3ドットに対応する大きさの枠を動かし、枠内に含まれるドット数が2となる位置で枠を固定する。そして、その枠で区切られた各ブロック内のドット位置から定まる符号値を格納した符号配列を生成する。また、この符号配列が生成されると、予め定められた同期符号の符号値を検索することによって、同期符号の位置が特定される。
【0036】
識別情報取得部634は、符号配列から同期符号の位置を基準にして識別符号を検出する。そして、画像生成時にRS符号化処理で用いたパラメータを用いて識別符号を復号し、識別情報を取得する。
位置情報取得部635は、符号配列から同期符号の位置を基準にして位置符号を検出する。そして、位置符号からM系列の部分系列を取り出し、画像生成時に使用したM系列におけるこの部分系列の位置を参照し、この位置を同期符号によるオフセットで補正した値を位置情報として取得する。なお、オフセットで補正するのは、位置符号の間に同期符号が配置されているためである。
【0037】
筆跡情報生成部636は、位置情報取得部635が取得した位置情報を連結して筆跡情報を生成する。ここで、筆跡情報には、少なくともデジタルペン60のペン先の軌跡を電子化したデータが含まれるが、これ以外の情報を含んでもよい。ペン先の軌跡以外の情報としては、例えば、筆記した時にペンに設定されていた色の情報や、筆圧の情報等がある。
送信部639は、識別情報取得部634が取得した識別情報と、位置情報取得部635が取得した位置情報と、筆跡情報生成部636が生成した筆跡情報とを通信回路66に渡すことで、通信装置70への情報送信を実現する。
【0038】
デジタルペン60では、筆圧検知スイッチ62がオンになると動作状態となり、まず、赤外LED63が媒体に対して赤外光を照射し、赤外CMOS64がその反射光を受光することにより、符号画像を読み取る。そして、画像取得部631がこの読み取った符号画像を取得する。その際に、符号画像にノイズが含まれていれば、これを除去する。次に、ドット配列生成部632が、符号画像に含まれるドット位置をデジタルデータ化し、ドット配列を生成する。そして、符号配列生成部633が、ドット配列からブロックを検出し、ブロックごとの符号値を格納した符号配列を生成する。そして、符号配列において、同期符号の位置を特定する。その後、識別情報取得部634が、同期符号の位置に基づいて識別符号を検出し、これを復号して識別情報を取得する。また、位置情報取得部635が、同期符号の位置に基づいて位置符号を検出し、これを復号して位置情報を取得する。そして、筆跡情報生成部636が、位置情報を連結して筆跡情報を生成する。そして、送信部639が、これらの情報を通信装置70および端末装置50を介して識別情報サーバ30へ送信する。
【0039】
続いて、本実施の形態の筆跡情報管理システムにて電子文書に関して行われる各種処理について説明する。
[印刷文書の生成処理]
図7は、筆跡情報管理システムにて印刷文書が生成される際の動作の一例を示したシーケンス図である。
まず、ユーザは端末装置10から電子文書の印刷指示を文書サーバ20に送信する(ステップ101)。その際には、端末装置10は、印刷対象となる電子文書と、電子文書の識別情報(文書ID)と、ユーザが指定した印刷設定とを送信する。ここで、印刷設定は、印刷の対象とするページ、印刷部数、媒体である用紙のサイズ、拡大縮小率、Nアップ(電子文書のNページを媒体の1ページに割り付ける印刷)、余白領域の大きさ等の設定を含む。
【0040】
文書サーバ20は、端末装置10から電子文書の印刷指示を受信する(ステップ201)。印刷指示に含まれる印刷対象となる電子文書は、電子文書管理部23に送られ、電子文書管理部23が、電子文書を文書IDと関連付けて文書/筆跡情報記憶部25に登録する(ステップ202)。
また、文書サーバ20は、印刷を指示された電子文書の文書IDと印刷設定とを識別情報サーバ30に送信する(ステップ203)。ここで、文書IDとしては、例えば、URL(Uniform Resource Locator)を用いるとよいが、電子文書を一意に特定することができるものであれば他の情報を用いてもよい。
それにより、識別情報サーバ30は、文書IDと印刷設定とを受信する(ステップ301)。そして、識別情報を管理する識別情報管理部32が識別情報記憶部33から未使用の識別情報を取得する(ステップ302)。ここで、取り出す識別情報の数は、印刷設定に応じて決められる。つまり、基本的には、印刷するページ数に印刷部数を乗じて得られる数の識別情報が取り出される。ただし、印刷設定情報の中に、Nアップ印刷の指定等がある場合は、それも考慮される。例えば、10ページの電子文書を2アップ印刷で5部印刷する場合は、25(=10÷2×5)個の識別情報が取り出される。
次に、識別情報サーバ30は、識別情報と文書IDと印刷設定とを関連付けて識別情報記憶部33に登録する(ステップ303)。そして、識別情報サーバ30は、文書サーバ20に対し、識別情報を送信する(ステップ304)。
【0041】
それにより、文書サーバ20は、識別情報を受信する(ステップ204)。そして、識別情報および位置情報を表す符号画像を生成する(ステップ205)。
すなわち、文書サーバ20では、受信部21が識別情報を受信する。そして、受信部21は、受信した識別情報を識別情報取得部22に受け渡す。すると、まず識別情報取得部22が、取得した識別情報を識別符号生成部27aに渡し、識別符号生成部27aが、上記した方法を用いて媒体の識別情報を符号化し、識別符号を生成する。
また、位置符号生成部27bは、受信部21から印刷設定を受け取り、印刷設定に応じた範囲の位置情報を上記した方法を用いて符号化し、位置符号を生成する。
そして、符号配置部27cが、識別符号と位置符号とを所定のレイアウトに従って配置し、これを符号画像生成部27eが、パターン画像記憶部27dに記憶されたパターン画像を用いて画像化することで符号画像を生成する。
【0042】
その後、文書サーバ20では、文書画像生成部26が、電子文書の文書画像を生成する(ステップ206)。その際に、文書画像生成部26は、ステップ201で識別情報取得部22が取得した文書IDを受け取り、文書IDに基づいて印刷対象となる電子文書を文書/筆跡情報記憶部25から読み出す。また、ステップ201で識別情報取得部22が取得した印刷設定を受け取り、これに基づいて文書画像を生成する。
そして、画像合成部28は、ステップ205で生成された符号画像と、ステップ206で生成された文書画像とを合成し、合成画像を生成する(ステップ207)。
その後、合成画像は送信部29に渡され、送信部29が、合成画像の印刷命令を画像形成装置40に送信する(ステップ208)。ここで、合成画像の印刷命令は、例えば、文書画像の印刷命令の列からなるPDL(Page Description Language)ファイルに対し、符号画像として印刷する内容をPDLコマンドとして設定したPDLの形式で送信される。
【0043】
画像形成装置40は、文書サーバ20から合成画像(電子文書の文書画像および符号画像)を受信する(ステップ401)。そして、画像形成装置40は、文書画像をY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)により画像に展開する(ステップ402)。次に、文書画像はC、M、Yのトナーを用いて、符号画像はK(カーボンを含む黒)のトナーを用いて、それぞれ画像形成を行う(ステップ403)。
【0044】
ところで、上述した例では、識別情報サーバ30は識別情報を発行するだけで、文書サーバ20が、識別情報を含む符号画像を生成し、画像形成装置40に画像形成を指示する構成とした。しかしながら、識別情報サーバ30が、符号画像を生成し、画像形成装置40に画像形成を指示する構成としてもよい。
また、符号画像を画像形成装置40で生成する構成を採用してもよい。その場合には、文書サーバ20または識別情報サーバ30が、電子文書から生成したPDLに識別情報を付加して画像形成装置40へ送信し、画像形成装置40が識別情報を含む符号画像を生成することになる。
【0045】
また、上記の例では、識別情報と文書IDと印刷設定とが関連付けられて構成されたデータベース(識別情報記憶部33)を識別情報サーバ30に置く構成について説明した。これは、かかるデータベースを共有可能な装置(識別情報サーバ30)に置くことで、複数ユーザへの対応や、サーバのアクセス制御技術を利用した電子文書のセキュリティ確保が可能となるからである。しかしながら、必ずしもこのような構成を採用する必要はなく、端末装置10や文書サーバ20に上記のデータベースを置く構成を採用してもよい。
【0046】
また、上記した画像形成装置40では、符号画像をK(カーボンを含む黒)のトナーを用いて形成するようにした。これは、Kのトナーが、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のトナーよりも赤外光の吸収量が多く、デジタルペン60での符号画像の読み取りが容易となるからである。しかしながら、符号画像は、特殊トナーを用いて形成することも可能である。
ここで、特殊トナーとしては、可視光領域(400nm〜700nm)における最大吸収率が7%以下であり、近赤外領域(800nm〜1000nm)における吸収率が30%以上の不可視トナーが例示される。ここで、「可視」および「不可視」は、目視により認識できるかどうかとは関係しない。印刷文書における画像が可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性の有無により認識できるかどうかで「可視」と「不可視」とを区別している。また、可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性が若干あるが人間の目で認識し難いものも、「不可視」に含める。
【0047】
なお、ここでは、電子文書の画像に符号画像を合成して印刷することとしたが、白紙(ノートや付箋等)に符号画像を印刷する構成としてもよい。その場合は、ステップ201で受信する印刷要求に文書IDを含めないようにし、ステップ303で識別情報と文書IDおよび印刷設定との関連付けを行わないようにし、ステップ206における文書画像の生成は実行しないようにすればよい。
【0048】
[筆跡情報の登録処理]
次に、デジタルペン60が筆跡情報を生成して文書サーバ20に登録する際の動作について説明する。
上記したように、デジタルペン60では、識別情報取得部634が識別情報を取得する。また、位置情報取得部635が位置情報を取得する。さらに、筆跡情報生成部636が位置情報を相互に連結して筆跡情報を生成する。そして、送信部639が、識別情報および筆跡情報を通信装置70および端末装置50を介して識別情報サーバ30へ送信する。そして、識別情報サーバ30が筆跡情報を文書サーバ20に登録する。
【0049】
図8は、筆跡情報を登録する際の識別情報サーバ30および文書サーバ20の動作の一例を示したシーケンス図である。
識別情報サーバ30では、まず、受信部31が、デジタルペン60からの識別情報および筆跡情報を受信する(ステップ311)。次に、識別情報および筆跡情報は識別情報管理部32に渡され、識別情報管理部32は、渡された識別情報に関連付けられた文書IDを識別情報記憶部33から取り出す。そして、ステップ311で受信した識別情報および筆跡情報の送信先となる文書サーバ20(文書IDで特定される電子文書が存在する文書サーバ20)を決定する(ステップ312)。なお、識別情報記憶部33において識別情報に文書IDが関連付けられていなければ、その識別情報は白紙(ノートや付箋)に割り当てられたものであると考えられる。その場合は、白紙に対する筆跡情報を管理する文書サーバ20を送信先として決定すればよい。
その後、識別情報および筆跡情報は送信部39に渡され、送信部39が、ステップ312で送信先として決定した文書サーバ20に対し、識別情報および筆跡情報を送信する(ステップ313)。
【0050】
これにより、文書サーバ20では、受信部21が、識別情報および筆跡情報を受信する(ステップ211)。そして、受信部21は、受信した識別情報を筆跡情報管理部24に渡す。すると、筆跡情報管理部24は、識別情報と筆跡情報とを対応付けて文書/筆跡情報記憶部25に記憶する(ステップ212)。
【0051】
ところで、本実施の形態の筆跡情報管理システムでは、文書サーバ20が電子文書や筆跡情報を管理し、識別情報サーバ30が媒体を一意に識別するための識別情報を生成/管理するように構成した。しかしながら、これらの処理を如何なる装置で行うかについては種々のバリエーションが考えられる。例えば、識別情報を生成/管理する処理は、文書サーバ20で行ってもよいし、端末装置50や画像形成装置40で行ってもよい。また、符号画像を画像形成装置40で生成してもよい。
そのため、これらの処理を汎用的な装置としてのコンピュータ90で行うものとして一般化できる。そこで、筆跡情報管理システムを構成する端末装置10、文書サーバ20、識別情報サーバ30、画像形成装置40の制御部、端末装置50がコンピュータ90で構成されるものとして、コンピュータ90のハードウェア構成について説明しておく。
【0052】
図9は、コンピュータ90のハードウェア構成を示した図である。
図9に示したように、コンピュータ90は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)91と、記憶手段であるメインメモリ92および磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)93とを備える。ここで、CPU91は、OS(Operating System)やアプリケーション等の各種ソフトウェアを実行し、上述した各機能を実現する。また、メインメモリ92は、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、磁気ディスク装置93は、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
さらに、コンピュータ90は、外部との通信を行うための通信I/F94と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構95と、キーボードやマウス等の入力デバイス96とを備える。
なお、本実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0053】
次に、デジタルペン60の構成を詳細に説明する。
図10は、デジタルペン60の全体構成を説明する図であって、(a)はデジタルペン60の外観斜視図、(b)はデジタルペン60のキャップ610の外観斜視図、(c)はデジタルペン60のペン本体部620の外観斜視図である。図10に示したように、本実施の形態の電子筆記具の一例であるデジタルペン60は、筆記具本体としてのペン本体部620と、ペン本体部620に対して着脱自在なキャップ610とで構成されている。
【0054】
続いて、図11はペン本体部620の構成を示す縦断面図である。なお、縦断面図とは、図10のように、後述するキャップ610の対向片612aを下にしてデジタルペン60を置いたときに、上下方向に切断した断面図のことである。同図に示すように、ペン本体部620は、筐体621、筆記検知機能部622、符号画像検出部623、操作表示部624、キャップ位置検出機能部625、制御回路部626により構成される。
【0055】
筐体621は、ペン本体部620の外壁を構成するとともに、ペン本体部620に配置される各種機能部を支持する。ここで、筐体621は、図11に示したA−A線を軸心とする略円筒状であり、筆記部としてのペンチップ69が配置された先端側が先細りとなる形状となっている。なお、以下、本明細書において、ペンチップ69が配置された側を先端側と称し、ペンチップ69が配置された側とは反対側を後端側と称する場合がある。
筆記検知機能部622は、媒体に対する筆記が行われた際に、媒体に加えられた筆圧を検出して、筆記が行われていることを検知する機能部である。筆記検知機能部622には、図5に示したペンチップ69と、筆圧検知スイッチ62とが含まれる。
符号画像検出部623は、媒体上の画像を読み取る読み取り手段の一例であり、媒体に所定の波長の光(例えば、赤外光)を照射し、媒体からの反射光に基づいて、媒体に印刷された符号画像を検出する機能部である。符号画像検出部623には、図5に示した赤外LED63と、赤外CMOS64とが含まれる。
【0056】
操作表示部624は、媒体から読み取られた符号画像に基づく特定処理の実行を指示する機能部である。また、操作表示部624は、デジタルペン60の動作態様を特定色の表示で行う機能部でもある。
キャップ位置検出機能部625は、ペン本体部620に対するキャップ610の装着位置を検知する位置検知手段の一例であり、ペン本体部620の規定の位置にキャップ610が取り付けられたか否かを検出する機能部である。
制御回路部626は、デジタルペン60を動作させる際の各種処理を実行する機能部である。また、通信装置70(図1参照)を介して端末装置50に識別情報、位置情報および筆跡情報を送信する機能部である。そして、制御回路部626は、図5に示した画像処理部61aやデータ処理部61bを備える制御回路61、情報メモリ65、通信回路66、バッテリ67、およびペンIDメモリ68を有しており、制御回路61などが実装された制御基板626aが筐体621の軸心(A−A線)に平行に配置されている。また、制御基板626aよりも後端側には、通信装置70あるいは端末装置50と物理的に接続するためのUSBジャック626bが設けられている。
【0057】
次に、筆記検知機能部622および符号画像検出部623について詳細に説明する。
図12は、筆記検知機能部622および符号画像検出部623の構成を示す図である。
図12に示すように、筆記検知機能部622は、ペンチップ69、ペンチップ支持部材622a、ペンチップ留め部材622b、付勢バネ622c、継ぎ手部材622d、筆圧検知スイッチ62を備える。
【0058】
ペンチップ69は、例えばボールペンで構成され、媒体上にインク等の色材により文字や図形等を描画する。ここで、筆記部としてのペンチップ69の先端部は、ほぼペン本体部620(筐体621)の軸心(A−A線)上に配置されている。このような配置とすることで、通常のペンと同様の筆記動作を行うことが可能となり、ユーザは違和感を感じることなくデジタルペン60の操作ができる。また、ペンチップ69は、ペン本体部620の軸心に対し所定の角度傾いて配置され、ペン本体部620の軸心を境界として一方側に配置されている。なお、ペン本体部620の軸心に対してペンチップ69と反対側には、赤外LED63などが収納される。このようにペンチップ69をペン本体部620の軸心に対して傾けた場合には、ペンチップ69の先端部の後方(ペンチップ69の側方)に、赤外LED63等を収納するスペースが形成される。この結果、赤外LED63等をペン本体部620の軸心側に寄せることができ、ペンチップ69をペン本体部620の軸心に平行に配置した場合よりもペン本体部620の小径化を図ることができる。
【0059】
ペンチップ支持部材622aは、ペンチップ69をその軸心pに沿って移動自在に支持する。ペンチップ支持部材622aは、先端側支持部材622a1と、後端側支持部材622a2とから構成されている。そして、先端側支持部材622a1と後端側支持部材622a2との間に形成される間隙に、ペンチップ留め部材622bが収納される。ここで、先端側支持部材622a1は、ペンチップ留め部材622bの先端側への移動を規制し、後端側支持部材622a2は、ペンチップ留め部材622bの後端側への移動を規制している。
【0060】
ペンチップ留め部材622bは、ゴム等の弾性体によりリング状に形成されている。そして、ペンチップ69を自らの弾性力で挟持することでペンチップ69を保持し、ペンチップ69が自身の自重によりペンチップ支持部材622aから脱落することを抑制している。
【0061】
また、ペンチップ留め部材622bは、ペンチップ69に対し、ペンチップ留め部材622bによる摩擦力以上の引っ張り力がペン軸pに沿って加わった場合には、ペンチップ69がペンチップ支持部材622aから引き抜かれることを許容する。さらに、ペンチップ留め部材622bによる摩擦力以上の押付け力がペン軸pに沿って加わった場合には、ペンチップ69がペンチップ支持部材622aに装着されることを許容する。これにより、ペンチップ69に対し所定の引っ張り力および押付け力を加えることで、ペンチップ69の交換が可能となる。
【0062】
継ぎ手部材622dは、ペンチップ69に作用する媒体からの圧力(筆圧)を筆圧検知スイッチ62に伝達する。筆記動作等によりペンチップ69が媒体に押し付けられた際、ペンチップ69に加わる圧力によってペンチップ69はペン軸pに沿ってデジタルペン60の内部側に移動する。これにより、継ぎ手部材622dは、付勢バネ622c等の付勢力に抗して移動し、筆圧検知スイッチ62を押す。ここで、継ぎ手部材622dのペンチップ69側の端部には外径が他の部分よりも大径に構成された大径部622eが形成され、そして、この大径部622eは、筐体621に形成された所定幅の溝部621aの内部に配置される。それにより、継ぎ手部材622dの移動範囲(スライド範囲)は、筐体621に形成された溝部621aの幅に制限される。なお、継ぎ手部材622dは、ペン本体部620の軸心に対する傾きがペンチップ69の傾きよりも小さい状態で配置されている。詳細には、ペン本体部620の軸心に沿うように略平行に配置されている。
【0063】
筆圧検知スイッチ62は、筆記動作等によってペンチップ69に圧力が加わった際に、継ぎ手部材622dからの押圧力を受ける。これにより、筆圧検知スイッチ62はオンに切り替えられ、デジタルペン60を動作状態に設定する。なお、本実施の形態における筆圧検知スイッチ62は、作動片62aを有するリミットスイッチにより構成されている。
【0064】
ここで、ペンチップ69の長さをより長くし、ペンチップ69が筆圧検知スイッチ62を直接押圧する構成を採用すると、ペンチップ69が筐体621の軸心に対して傾斜しているために、同図に示す位置よりも外方側に筆圧検知スイッチ62を設ける必要が生じるため、ペン本体部620が外方に膨らんでしまう。そこで、本実施の形態では、ペンチップ69よりも傾きの小さい継ぎ手部材622dをペンチップ69と筆圧検知スイッチ62との間に配置し、ペンチップ69から筆圧検知スイッチ62に至る部分の形状を「く」の字状としている。これにより、筆圧検知スイッチ62をペン本体部620の軸心に近い側に配置することができ、ペン本体部620の小径化を図ることができる。
【0065】
付勢バネ622cは、継ぎ手部材622dをペンチップ69側に付勢する。それにより、筆記動作等が行われていない場合には、継ぎ手部材622dの大径部622eは、筐体621の溝部621aにより制限された移動範囲の中の最もペンチップ69側に位置する。それによって、筆圧検知スイッチ62はオフに切り替えられ、デジタルペン60を動作停止状態に設定する。
【0066】
符号画像検出部623は、媒体上に赤外光を照射する照射部としての赤外LED63(図5も参照)、赤外LED63から出射された赤外光を拡散する拡散板623a、媒体からの反射光を検知することによって媒体上の符号画像を読み取る赤外CMOS64(図5も参照)が取り付けられた回路基板64aを備えている。ここで、赤外CMOS64は、ペン本体部620の軸方向に沿って配置されている。このため、赤外CMOS64がペン本体部620の軸方向と直交する関係で配置された場合に比べ、ペン本体部620(筐体621)の小径化を図ることができる。
【0067】
さらに、媒体からの反射光を赤外CMOS64に結像させる結像光学系として、赤外光を主に通過させるIR(Infrared)フィルタ623b、集光部としての結像レンズ623c、結像レンズ623cを支持する鏡筒623d、結像レンズ623cを通過した赤外光の光路を90°屈折させて赤外CMOS64に導くプリズム623e、鏡筒623dおよびプリズム623eを支持するホルダ623f、プリズム623eと赤外CMOS64との間のギャップを所定値に保つスペーサ623gを備えている。
【0068】
符号画像検出部623では、赤外LED63から出射された赤外光は、拡散板623aによって拡散された後、媒体表面を照射する。そして、媒体上から反射された赤外光は、IRフィルタ623bにより赤外光以外の光が除外された後、結像レンズ623cにより集光され、プリズム623eにより光路を赤外CMOS64に向けて屈折されて赤外CMOS64に結像される。そして、赤外CMOS64により媒体上の符号画像が読み取られる。赤外CMOS64により読み取られた符号画像は、制御回路部626の制御回路61(図5参照)に送られる。なお、ペン本体部620の筐体621の赤外LED63および結像レンズ623cに対向する箇所には、赤外LED63から出射された赤外光を透過させるとともに、媒体から結像レンズ623cへ向かう反射光を透過させるための光透過部である開口部621bが設けられている。
【0069】
上述したように、本実施の形態におけるデジタルペン60においては、ペンチップ69をペン本体部620の軸心に対して傾け、その後方に継ぎ手部材622dを設け、ペンチップ69から筆圧検知スイッチ62に至る部分の形状を「く」の字状としている。そして、ペン本体部620の軸心に対して、ペンチップ69および継ぎ手部材622dとは反対側に、赤外LED63、結像レンズ623c、プリズム623e、赤外CMOS64などを配置している。また、赤外LED63を、出射される赤外光の光軸(図中矢印B参照)がペン本体部620の軸心に対して傾くように、配置している。付言すれば、赤外LED63を、ペン本体部620の軸心に対して所定の角度を有するように配置している。さらに付言すれば、赤外LED63を、ペンチップ69にほぼ沿うように、ペンチップ69が傾く方向とほぼ同じ方向に傾けて配置している。そして、IRフィルタ623b、結像レンズ623c、プリズム623eおよび赤外CMOS64を、ペン本体部620の軸心に近くなるように配置している。これらにより、筆記検知機能部622および符号画像検出部623を構成する部品が存在する部位の筐体621の外面を略円錐形状、つまり、筐体621をペン本体部620の軸心に直交する面で切断すると略円形状にするとともに、小径化を実現している。
【0070】
次に、操作表示部624について説明する。
図13は、操作表示部624の概略構成を示す図であり、(a)は、断面図を、(b)は、筐体621の内側を(a)のD方向に見た図である。なお、(b)においては、筐体621の形状のみを示している。
図13に示すように、操作表示部624は、基板624a、基板624a上に設けられた切替スイッチ624b、筐体621の外部からのユーザにより操作される操作部としての操作ボタン624c、デジタルペン60の動作態様などの情報を表示する表示部としての第1の表示部624f、第2の表示部624gを備えている。また、第1の表示部624fの外側(筐体の外面側)には、この第1の表示部624fが表示した色を筐体621の外部に表すための第1の導波部材624hが配置され、第2の表示部624gの外側には、この第2の表示部624gが表示した色を筐体621の外部に表すための第2の導波部材624jが配置されている。そして、基板624aは、固定ビス624kにより筐体621に固定されている。
【0071】
操作ボタン624cは、ユーザにより押される円形の操作部位624c1が筐体621に設けられた孔621cを介して筐体外部に露出し、その他の部位は筐体621の内部に位置するように配置されている。そして、筐体621の内部に、この操作ボタン624cがユーザにより所定量押圧された場合に基板624aに接触する接触部624dを備えている。また、操作ボタン624cは、筐体621の軸心方向には、筐体621の略中間位置に配置されており、この周辺の筐体621の一般的形状は略円筒形状である(図11参照)。そして、操作ボタン624cの操作部位624c1は、この筐体621の一般的形状である略円筒形状の外表面(この外表面を操作ボタン624c周辺の筐体621における「外面」という。)から出っ張らないように配置されている。そして、操作部位624c1周囲の筐体621をこの周辺の一般的形状である略円筒形状から凹ませ、操作部位624c1を筐体621の外部に露出させている。これにより、不意に操作ボタン624cが押されることを防止している。
【0072】
切替スイッチ624bは、1回のスイッチングが行われることでオフ状態からオン状態に切り替え設定を行うスイッチング部材である。そして、オン状態に設定されることで、媒体から読み取られた符号画像に基づく特定処理の実行を指示する信号を出力する。本実施の形態では、切替スイッチ624bがオン状態に設定されることにより、符号画像に基づく識別情報および位置情報に対応付けられた所定の情報源へのリンクを指示する信号が制御回路部626の制御回路61(図5参照)に送られる。
つまり、ユーザによって操作ボタン624cが押されると、操作ボタン624cは切替スイッチ624b自身が有する反発力に抗して押し下げられるとともに、切替スイッチ624bはオフ状態からオン状態に切り替えられる。これにより、制御回路部626の制御回路61に対して、符号画像に基づく識別情報および位置情報に対応付けられた所定の情報源へのリンクを指示する信号が送られる。そして、この信号と、読み取られた符号画像に基づく識別情報および位置情報が、通信回路66、通信装置70を介して、端末装置50に送られる。これにより、例えば、端末装置50におけるディスプレイに、識別情報および位置情報に対応付けられている所定の情報の表示が可能となる。なお、ユーザによって操作ボタン624cが押された際、操作ボタン624cは、切替スイッチ624bにより支持されるとともに、基板624aに接触する接触部624dによって支持される。
その後、ユーザによる操作ボタン624cの押圧が解除されると、操作ボタン624cは切替スイッチ624bからの反発力によって元の位置に戻されるとともに、切替スイッチ624bはオン状態からオフ状態に切り替えられる。これにより、所定の情報源へのリンクは解除される。
【0073】
第1の表示部624fおよび第2の表示部624gは、デジタルペン60の動作態様を色で表示することで表現するものであり、例えば、発光ダイオードである。そして、以下のようにデジタルペン60の動作態様に応じて表示させることを例示することができる。(1)例えば、第1の表示部624fを、緑色を発光する発光ダイオードとし、第2の表示部624gを、赤色を発光する発光ダイオードとする。そして、デジタルペン60が動作状態である場合に第1の表示部624fに緑色を発光させ、操作ボタン624cが押されて所定の情報源へのリンクを指示する状態になった場合に第2の表示部624gに赤色を発光させるようにする。(2)例えば、第1の表示部624fを、緑色を発光する発光ダイオードとし、第2の表示部624gを、緑色を発光する発光ダイオードと赤色を発光する発光ダイオードからなるユニットとする。そして、デジタルペン60が動作状態である場合に第1の表示部624fおよび第2の表示部624gに緑色を発光させ、操作ボタン624cが押されて所定の情報源へのリンクを指示する状態になった場合に第2の表示部624gに赤色を発光させるようにする。(3)第1の表示部624fおよび第2の表示部624gを、赤色、橙色、黄色、緑色、白色、青色および紫色の7色の発光ダイオードからなるユニットとする。そして、デジタルペン60が動作状態である場合に第1の表示部624fに7色が切り替わるように発光させ、操作ボタン624cが押されて所定の情報源へのリンクを指示する状態になった場合に第2の表示部624gに7色が切り替わるように発光させるようにする。
【0074】
第1の導波部材624hおよび第2の導波部材624jは、例えば透明のプラスチックである。そして、筐体621の内側から組み込まれている。より具体的には、図13に示すように、筐体621には、第1の導波部材624hが挿入される挿入孔621dと、第2の導波部材624jが挿入される挿入孔621eが設けられている。そして、筐体621の内側の挿入孔621dの周囲には円筒状のガイド621fが設けられており、挿入孔621eの周囲には円筒状のガイド621gが設けられている。そして、ガイド621fには、円筒状から切り欠かれて形成された溝621hが1箇所設けられており、ガイド621gには、円筒状から切り欠かれて形成された溝621iが2箇所設けられている。一方、第1の導波部材624hは、基本的には、径が異なる円柱が2段重ねられた立体であり、円柱状の第1の表示部624fを挿入するための円柱状の凹部と、溝621hに嵌めるための略直方体の凸部を1つ有している。また、第2の導波部材624jは、基本的には、径が異なる円柱が2段重ねられた立体であり、円柱状の第2の表示部624gを挿入するための円柱状の凹部と、溝621iに嵌めるための略直方体の凸部を2つ有している。そして、第1の導波部材624hが挿入孔621dに挿入されるとともに溝621hに嵌められて組み込まれ、第2の導波部材624jが挿入孔621eに挿入されるとともに溝621iに嵌められて組み込まれる(図13(a)参照)。
【0075】
なお、溝621h,621iは、それぞれ導波部材624h,624jが筐体621に対して回転することを防止するために設けられている。また、導波部材624h,624jが異なる仕様(例えば、光透過性を異ならせるために材質が違うなど)の場合には、本実施の形態のように溝621h,621iの数を異ならせ、それに対応する凸部を導波部材624h,624jに設けることにより、導波部材624h,624jが、入れ替わって組み込まれることを防止することができる。なお、導波部材624h,624jが同じ仕様のものである場合には、溝621h,621iの数は同じでもよいし、導波部材624h,624jが筐体621に対して回転しない場合には溝621h,621iを必ずしも設ける必要はない。
【0076】
次に、キャップ位置検出機能部625およびキャップ610について説明する。
図14は、キャップ位置検出機能部625およびキャップ610の概略構成を示す図である。
上述したとおり、キャップ位置検出機能部625は、ペン本体部620の規定の位置にキャップ610が取り付けられたか否かを検出する機能部である。
キャップ位置検出機能部625は、基板625aを備えており、基板625a上には、切替スイッチ625bが設けられている。また、キャップ位置検出機能部625は、筐体621の軸心方向の一端部に突出部625c1を有する操作ボタン625cを、突出部625c1が筐体621の外面から突出可能になるように備えている。
基板625aは、筐体621に固定されており、操作ボタン625cの筐体621軸心方向の突出部625c1側とは反対側の端部は、筐体621に固定されている。そして、操作ボタン625cは、突出部625c1が筐体621の外側から押されることにより撓み、筐体621の外面から突出するのを妨げられ、切替スイッチ625bを押す。
【0077】
そして、ペン本体部620にキャップ610が装着されていない場合、操作ボタン625cの切替スイッチ625b側の端部は、筐体621の外面から突出するように位置する。また、キャップ610の内周面の円周方向における所定の位置に設けられた溝部616(詳細は後述)の位置が操作ボタン625cの突出部625c1の位置と一致するように(突出部625c1が溝部616に嵌るように)キャップ610がペン本体部620に装着された場合、即ちキャップ610がペン本体部620の規定の位置に取り付けられた場合、操作ボタン625cの突出部625c1は、筐体621の外面から突出するように位置する。これらの場合においては、操作ボタン625cは切替スイッチ625bを押さないため、切替スイッチ625bはオフ状態に設定される。そして、切替スイッチ625bがオフ状態に設定されることにより、符号画像検出部623は媒体上の符号画像を読み取ることができる状態に設定される。つまり、符号画像検出部623の作動が許容される。
【0078】
一方、キャップ610の内周面に設けられた溝部616の位置が操作ボタン625cの突出部625c1の位置と一致しないように(突出部625c1が溝部616に嵌らないように)キャップ610がペン本体部620に装着された場合、即ちキャップ610がペン本体部620に取り付けられてはいるが規定の位置に取り付けられていない場合、操作ボタン625cの突出部625c1は、キャップ610の内周面により筐体621の外面から突出するのを妨げられ、突出しないように位置する。その状態においては、操作ボタン625cが切替スイッチ625bを押し、切替スイッチ625bはオン状態に設定される。そして、切替スイッチ625bがオン状態に設定されると、制御回路部626により、符号画像検出部623は媒体上の符号画像を読み取ることができない状態に設定される。つまり、符号画像検出部623の作動が許容されない。
【0079】
このように、本実施の形態におけるデジタルペン60においては、符号画像検出部623の作動を制御する制御手段としての制御回路61は、キャップ610の装着位置を検知する位置検知手段としてのキャップ位置検出機能部625から、装着位置が規定の位置以外の位置であるという検知結果を得た場合には符号画像検出部623の作動を許容しないようにし、当該検知結果を得ないときにはキャップ610が装着されているか否かにかかわらず符号画像検出部623の作動を許容する。
【0080】
次に、キャップ610について説明する。
キャップ610は、キャップ本体部611と、クリップ612と、クリップ612をキャップ本体部611に固定する固定ビス613と、フィルタ614と、包囲部材615と、溝部616とを備えている。
キャップ本体部611は、略円筒状に形成され、軸方向の両端部は開口している。そして、ペン本体部620が挿入されるキャップ本体部611の一方の端部側から他方の端部側に向かって径が小さくなるように形成されている。
【0081】
クリップ612は、同図に示すように、キャップ本体部611の軸方向に沿って配置されキャップ本体部611の外周面に対向配置されたクリップ片としての対向片612aと、対向片612aの一端部側に接続して設けられ対向片612aの配置方向と交差する関係で配置される斜辺部612bとを備える。ここで、斜辺部612bは、キャップ本体部611の軸心に対して所定の傾きを有して配置されている。さらにクリップ612は、斜辺部612bの配置方向と交差する関係で配置されるとともにキャップ本体部611の軸心と略直交する関係で配置された平坦部612cを備えている。さらに、クリップ612は、斜辺部612bおよび平坦部612cに、赤外LED63からの赤外光を媒体に対して照射可能とし、媒体からの反射光を赤外CMOS64にて受光可能とする光透過部としての開口部612eを備えている。
【0082】
図15は、キャップ610の外面を、ペン本体部620の軸心方向に見た図である。但し、クリップ612の形状を分かり易く示すために、フィルタ614と包囲部材615を省略して示している。
上述のとおり、上記開口部612eは、斜辺部612bから平坦部612cにかけて形成されている。そして、開口部612eは、フィルタ614が取り付けられる第1の開口部612nと、包囲部材615が取り付けられる第2の開口部612pとから構成される。これらの開口部は各々独立して設けられているわけではなく、連続して形成され単一の開口部を形成している。
【0083】
そして、第1の開口部612nは、赤外LED63から出射される赤外光を遮らない大きさを有している。なお、第1の開口部612nにおける赤外光の透過領域を図中破線で示している。また、第1の開口部612nは、斜辺部612bの幅方向における中央部に配置される。このため、本実施の形態における斜辺部612bは、第1の開口部612nの両側に、側片部612tを備えている。一方、第2の開口部612pは、後で詳述する包囲部材615の断面形状に沿った形状をしており、第1の開口部612n側を底部とした略ドーム状の形状となっている。また、第1の開口部612nと第2の開口部612pとの間に、開口部612e内に延出する延出部612uが設けられている。
なお、クリップ612の上記対向片612aは、キャップ本体部611の外周面に対向するように軸心方向に所定の幅を持って形成されており、キャップ本体部611との間に形成された間隙に配置された被配置物をキャップ本体部611とともに挟み込み、この被配置物に対してデジタルペン60を固定するものである。
【0084】
フィルタ614は、クリップ612に設けられた上記開口部612eの第1の開口部612nを塞ぐ形で取り付けられ、キャップ610の内部への埃や水分等の進入を抑制している。なお、フィルタ614は、上記赤外光および反射光を透過可能な材質で構成される。
包囲部材615は、クリップ612に取り付けられるとともに、開口部612eの第2の開口部612pを塞ぐ形で取り付けられている。また、ペンチップ69のペン軸pに沿うようにクリップ612に対して進退可能に取り付けられている。
【0085】
次に、包囲部材615について説明する。
図16は、包囲部材615の形状を詳細に示した図であり、図16(a)は包囲部材615を先端側から示した斜視図であり、図16(b)は包囲部材615を後端側から示した斜視図である。また、図16(c)は同図(b)における矢印E方向から見た図である。
【0086】
図16に示すように、包囲部材615は、略円筒状に形成されるとともに側面の一部が面削ぎされた形状となっている。即ち、包囲部材615は、略円筒状に形成されるとともに側面の一部に軸方向に沿った平坦部を備えている。詳細に説明すると、図16(a)、(b)に示すように、包囲部材615は、ペンチップ69の先端が収納される空洞を内部に有し略筒状に形成される本体部615aと、本体部615aの一端部側に設けられペンチップ69の先端部が突き当てられる突き当て部615bと、突き当て部615bの周囲に配置され本体部615aよりも外方に突出する第1の突出部615cとを備えている。
【0087】
また、包囲部材615は、対向して配置された移動片615f,615gを備える。そして、移動片615fと移動片615gとの間には、本体部615aの軸方向に沿って形成された第1の切り欠き部615dおよび第2の切り欠き部615eが設けられている。さらに、包囲部材615は、移動片615f,615gの各々の端部に、外方に突出した第2の突出部615h、第3の突出部615jを備える。さらに、包囲部材615は、図16(c)に示すように、先端側から後端側にかけて、その外周面に、面削ぎ状の形状をなす第1の平坦部615kを備える。また、包囲部材615は、上記移動片615f,615gに、後端部から先端部方向に向かって、面削ぎ状の形状をなす第2の平坦部615mを備える。
【0088】
ペン本体部620の小径化を図るためには、赤外LED63を極力、ペン本体部620の軸心に寄せて配置することが好ましいが、赤外LED63を軸心に寄せて配置した場合には、赤外光の光路と包囲部材615とが干渉してしまうおそれがある。そこで、本実施の形態では、包囲部材615の一部を面削ぎ状となす第1の平坦部615kを設け、赤外LED63を軸心に寄せつつ赤外光の光路と包囲部材615との干渉を防止している。なお、包囲部材615は、例えば断面が矩形状となるように形成することもできる。但し、この場合は、上述した包囲部材615の進退がうまく行われないおそれもある。そこで、本実施の形態における包囲部材615は、基本形状を円筒状としその一部に平坦部を形成することで、進退の円滑化とペン本体部620の小径化を図っている。
【0089】
上述のように構成された包囲部材615は、その後端側から第2の開口部612pに挿入される。そして、挿入後においては、第1の突出部615cと第2の突出部615hとの間、第1の突出部615cと第3の突出部615jとの間に、第2の開口部612pにおける縁部が位置するようになる。これにより包囲部材615は、クリップ612(キャップ610)に対し進退可能に支持される。なお、クリップ612の延出部612uにより、包囲部材615は、第1の開口部612n方向への移動が規制される。
【0090】
なお、包囲部材615は、クリップ612に対して進退可能ではなく、一定位置に取り付けることもできる。但しこの場合、筆記動作等を行っていないにも関わらずペンチップ69が包囲部材615により押圧され、筆圧検知スイッチ62がオン状態となるおそれがある。そして、筆圧検知スイッチ62が誤動作するおそれもある。即ち、ペンチップ69などの各種部材は製造公差等を有するため、ペンチップ69の筐体621からの突出量がデジタルペン60毎に各々異なることが想定される。そして、ペンチップ69の突出量が大きい場合には、ペンチップ69が包囲部材615により押圧されてしまい、筆記動作等を行っていないにも関わらず筆圧検知スイッチ62がオン状態となってしまう。そこで、本実施の形態では、上記のとおり包囲部材615を進退可能に取り付けている。
また、この包囲部材615は、弾性変形可能な部材(例えばゴム部材)により構成されており、ペンチップ69の先端部を保護する。また、包囲部材615は、弾性変形可能な部材により構成されているために容易に変形し、クリップ612に対して簡易に取り付けることが可能となっている。
【0091】
次に、溝部616について説明する。
図17が、溝部616の形状を詳細に示した図であり、図17(a)は、溝部616周辺の一部断面図を示し、図17(b)は、図17(a)におけるC−C線における断面を示している。
図17に示すように、溝部616は、キャップ本体部611の後端部側の内面の円周方向における所定の範囲に、キャップ本体部611の軸方向に沿って形成されている。より具体的には、本実施の形態では、上述したように、ペン本体部620のその軸心に直交する面での断面形状は、その軸心を中心とする略円形状であるので、キャップ610の内面を、ペン本体部620の外面に沿うように軸心に直交する面での断面形状がその軸心を中心とする略円形状となるように形成している。そして、その内面の円周方向における所定の範囲に凹部を設けて溝部616を形成している。
【0092】
一方、溝部616が設けられているキャップ610の内面の円周方向における所定の範囲以外の内面は、軸心に直交する面での断面形状がその軸心を中心とする略円形状である。ゆえに、キャップ610は、ペン本体部620に対して回転可能であり、円周方向のいずれの位置においても装着され得る。これにより、キャップ610とペン本体部620との位置合わせを特に行うことなく、キャップ610をペン本体部620に固定することができる。
【0093】
そして、図17に示すように、溝部616の円周方向における位置が操作ボタン625cの突出部625c1の位置と一致するように(突出部625c1が溝部616に嵌るように)キャップ610がペン本体部620に装着された場合、操作ボタン625cの突出部625c1は、筐体621の外面から突出する。かかる場合には、操作ボタン625cと切替スイッチ625bの間に隙間が生じるため、切替スイッチ625bはオフ状態に設定され、符号画像検出部623は媒体上の符号画像を読み取ることができる状態、すなわち、符号画像検出部623の作動が許容される状態に設定される。
【0094】
溝部616の円周方向における位置が操作ボタン625cの突出部625c1の位置と一致しないように(突出部625c1が溝部616に嵌らないように)キャップ610がペン本体部620に装着された場合、操作ボタン625cの突出部625c1は、キャップ620の内面により筐体621の外面から突出するのを妨げられる。かかる場合においては、操作ボタン625cが撓んで切替スイッチ625bを押し、切替スイッチ625bはオン状態に設定される。そして、切替スイッチ625bがオン状態に設定されることにより、符号画像検出部623は媒体上の符号画像を読み取ることができない状態、つまり、符号画像検出部623の作動が許容されない状態に設定される。
【0095】
言い換えれば、キャップ610がペン本体部620に装着されたときに、操作ボタン625cの突出部625c1が溝部616に嵌り筐体621の外面から突出する場合には、キャップ610はペン本体部620の規定の位置に装着されていることになり、切替スイッチ625bはオフ状態に設定される。一方、キャップ610がペン本体部620に装着されたときに、操作ボタン625cの突出部625c1が溝部616に嵌らずにキャップ本体部611の内面に押圧され筐体621の外面から突出しない場合には、キャップ610はペン本体部620の規定の位置以外の位置に装着されていることになり、切替スイッチ625bはオン状態に設定される。
【0096】
なお、溝部616が形成されている円周方向における所定の位置とは、キャップ610がペン本体部620の規定の位置に装着されているときに、キャップ610の第1の開口部612nが赤外LED63から出射される赤外光および媒体からの反射光を通す位置である。すなわち、キャップ610がペン本体部620の規定の位置に装着されているときには、赤外LED63から照射された赤外光は第1の開口部612nを通り媒体に至るとともに媒体からの反射光は第1の開口部612nを通り結像レンズ623c,プリズム623eを介して赤外CMOS64にて受光される。一方、キャップ610がペン本体部620の規定の位置以外の位置に装着されているときには、たとえ赤外LED63から赤外光が照射されたとしても(実際には切替スイッチ625bがオン状態に設定されるため赤外光は照射されない)、第1の開口部612nが赤外光の経路上にないため、キャップ610は赤外光を通さない。
【0097】
次に、筐体621について説明する。
図18は、筐体621の外観図である。
上述したように、筐体621は、図示したA−A線を軸心とする略円筒状であり、先端側が先細りした形状となっている。そして、筐体621は、筐体の軸心A−Aを通る面を開口面として二つに分割されており、図18に示した状態で、下側の筐体である第1の筐体601と上側の筐体である第2の筐体602を有する。図18は、筐体621をこれら二つの筐体を分離させた状態で示している。
【0098】
第1の筐体601は、先端側にペンチップ69を往復動可能に支持する支持軸601aと、光透過部である開口部621bと対向する位置に設けられた支持軸601aの後端部から後端側に延びる傘部601bを有している。つまり、第1の筐体601の先端部は、基本的には先端側に向かって径が小さくなる薄肉円錐であり、その先端側はペンチップ69を通すために開口しているとともに、後端側は円周方向の半分が開口している。また、その薄肉円錐の内部には、ペンチップ69を支持するための支持軸601aが付加されており、その支持軸601aの後端側端部と連続する薄肉円錐の部分が傘部601bである。また、薄肉円錐の下側の部分に開口部621bが形成されている。また、第1の筐体601の第2の筐体602との分割面(開口面)側の開口部601cには、第2の筐体602とスナップフィットで固定するための締結部601dが分割面から第2の筐体602の方へ突出するように複数(本実施の形態では4つ)設けられている。さらに、この開口部601cの縁部には、開口部601cに沿うように、分割面から第2の筐体602の方へ突出する複数の突出部601eが、筐体内部に光が入り込み撮像処理に悪影響を及ぼすことを抑制するために設けられている。
また、第1の筐体601には、回路基板64aを固定するための固定ビス用のボス(不図示)、制御基板626aを固定するための固定ビス用のボス(不図示)、ホルダ623fを固定するためのリブ(不図示)が設けられている。さらに、USBジャック626bを、筐体の軸心方向に直交する方向に固定するためのリブ601f(図19参照)および筐体の軸心方向の最後端から抜けないようにするためのストッパー601g(図19参照)が設けられている。
また、筐体内に光が入り込むことを抑制するために第1の筐体601の内側を黒くすることが好適である。黒くする手段としては、筐体自体を黒色の材料で成形する、あるいは黒色の塗装を施すなどを例示することができる。
【0099】
一方、第2の筐体602は、その先端側の端部に、第1の筐体601の傘部601bの後端側開口部と筐体の軸心と直交する方向に重なり合う薄肉部602a(図12も参照)を有している。そして、この薄肉部602aが、傘部601bの後端側開口部に設けられた薄肉部601h(図12も参照)の内側に入り込むようになっている。また、第2の筐体602には、上述したように、操作ボタン624cを通すための孔621c(図13参照)と、第1の導波部材624hが挿入される挿入孔621d(図13参照)および第2の導波部材624jが挿入される挿入孔621e(図13参照)が設けられている。また、第2の筐体602には、基板624aを固定するための固定ビス624k用のボス(不図示)と、USBジャック626bを筐体の軸心方向に直交する方向に固定するためのリブ(不図示)および筐体の軸心方向の最後端から抜けないようにするためのストッパー(不図示)が設けられている。
また、第1の筐体601と同様に、筐体内に光が入り込むことを抑制するために第2の筐体602の内側を黒くすることが好適である。
【0100】
そして、第1の筐体601と第2の筐体602を組み立てる際には、第2の筐体602の薄肉部602aを傘部601bの薄肉部601hの内側に入り込ませて位置合わせを行うとともに、第2の筐体602全体を第1の筐体601に対して押し付ける。すると、第1の筐体601の締結部601dがばねとして作用し、第2の筐体602を固定する。そして、その後、薄肉円筒の円環部材603(図14参照)を、筐体621の外部から、第1の筐体601の外面に形成された溝601iと第2の筐体602の外面に形成された溝602bから構成される溝621jに嵌め込む。この円環部材603を溝621jに嵌め込むことにより、第1の筐体601と第2の筐体602の軸心と直交する方向への変位をさらに規制することができる。なお、この円環部材603の内周面に、この内周面から突出する突起603a(図14参照)を、複数、例えば第1の筐体601側の面に2つ、第2の筐体602側の面に1つ設け、筐体601,602に、これら突起603aを受ける孔あるいは凹部を突起603aに対応する数だけ設けることが好適である。そうすることで、突起603aが第2の筐体602の孔あるいは凹部に嵌ることで円環部材603と第2の筐体602との位置を固定し、突起603aが第1の筐体601の孔あるいは凹部に嵌ることで、第1の筐体601と第2の筐体602を固定することができる。
【0101】
また、円環部材603にキャップ610のストッパーとしての機能を持たせることが好適である。つまり、円環部材603の筐体の軸心方向の位置を、キャップ610の筐体の軸心方向への移動を規制する位置とし、キャップ610が深く装着されすぎないようにする。これにより、ペンチップ69が不意に押されて誤作動してしまうことを抑制することができる。
【0102】
図19は、第2の筐体602を組み付ける前の、デジタルペン60の内部を示した図である。
上述したようにデジタルペン60は、筐体621が筐体の軸心A−Aを通る面で二つに分割されているため、デジタルペン60を組み立てる際には、以下に述べるようにして組み立てることができる。つまり、第1の筐体601を、例えば作業台に、第2の筐体602との分割面側の開口部601cが上になるように置き、先ず、ホルダ623fを取り付け、ペンチップ支持部材622aを挿入する。そして、回路基板64a、基板625a、制御基板626aなどを固定ビスで固定するとともに、USBジャック626bを取り付ける。そして、その後、第2の筐体602を上述したようにして第1の筐体601に固定し、円環部材603を嵌め込む。
このように、デジタルペン60は、筐体621が筐体の軸心A−Aを通る面で二つに分割されているため、内蔵部品を組み込むための開口部である開口部601cの開口面積が大きくなっており、容易に内蔵部品を組み込むことができる。また、開口部601cの開口面積が大きいため、回路基板64a、制御基板626aなどの面積を大きくすることができるとともに、これらに接続された配線も筐体に収納しやすい。
また、第1の筐体601の先端部には、傘部601bを設け、その内側に第2の筐体602の先端側の端部が入り込んでいるので、筐体の軸心方向に直交する方向の剛性が高まっている。それゆえ、デジタルペン60の先端部にペンチップ69、赤外LED63、拡散板623a、IRフィルタ623b、結像レンズ623cなどの部品が集まっていたとしても、これらの反発力で二つの筐体601,602が分離することを防止することができる。これは、ペンチップ支持部材622aが、ペンチップ69、赤外LED63、拡散板623a、IRフィルタ623bを支持していることも寄与している。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本実施の形態の筆跡情報管理システムの構成例を示した図である。
【図2】文書サーバの機能構成の一例を示したブロック図である。
【図3】符号画像を構成する画像等の一例を示した図である。
【図4】識別情報サーバの機能構成の一例を示したブロック図である。
【図5】デジタルペンの機能構成の概略を説明する図である。
【図6】制御回路の機能構成例を示したブロック図である。
【図7】筆跡情報管理システムにて印刷文書が生成される際の動作の一例を示したシーケンス図である。
【図8】筆跡情報を登録する際の識別情報サーバおよび文書サーバの動作の一例を示したシーケンス図である。
【図9】コンピュータのハードウェア構成を示した図である。
【図10】デジタルペンの全体構成を説明する図であって、(a)はデジタルペンの外観斜視図、(b)はデジタルペンのキャップの外観斜視図、(c)はデジタルペンのペン本体部の外観斜視図である。
【図11】ペン本体部の構成を示す断面図である。
【図12】筆記検知機能部および符号画像検出部の構成を示す図である。
【図13】操作表示部の概略構成を示す図であり、(a)は断面図を、(b)は筐体の内側を(a)のD方向に見た図である。
【図14】キャップ位置検出機能部およびキャップの概略構成を示す図である。
【図15】キャップの外面を、ペン本体部の軸心方向に見た図である。
【図16】包囲部材の形状を詳細に示した図であり、(a)は包囲部材を先端側から示した斜視図であり、(b)は包囲部材を後端側から示した斜視図であり、(c)は(b)における矢印E方向から見た図である。
【図17】溝部の形状を詳細に示した図であり、(a)は溝部周辺の一部断面図を示し、(b)は(a)におけるC−C線における断面を示している。
【図18】筐体の外観図である。
【図19】第2の筐体を組み付ける前の、デジタルペンの内部を示した図である。
【符号の説明】
【0104】
10…端末装置、20…文書サーバ、30識別情報サーバ、40…画像形成装置、50…端末装置、60…デジタルペン、61…制御回路、62…筆圧検知スイッチ、63…赤外LED、64…赤外CMOS、64a…回路基板、66…通信回路、69…ペンチップ、70…通信装置、601…第1の筐体、602…第2の筐体、603…円環部材、610…キャップ、611…キャップ本体部、612…クリップ、612a…対向片、620…ペン本体部、621…筐体、622…筆記検知機能部、622a…ペンチップ支持部材、623…符号画像検出部、623a…拡散板、623b…IRフィルタ、623c…結像レンズ、623d…鏡筒、623e…プリズム、623f…ホルダ、623g…スペーサ、624…操作表示部、626a…制御基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、用紙等の媒体上に筆記された文字や図形等が電子データに変換され、それがパーソナルコンピュータや携帯電話等に転送されて、筆記内容が保存等される技術が注目されている。
例えば特許文献1では、次のような技術が記載されている。すなわち、表面にそれぞれ異なるパターンで形成された微細なドットが印刷された媒体と、例えば撮像素子が内蔵されたペンデバイスとを用い、ペンデバイスによりこの媒体上に筆記が行われると、筆記された文字や図形等の位置のドットパターンが撮像素子に読み込まれ、文字や図形等の位置(描画トレース)の位置座標が特定される。それにより、筆記された文字や図形等からなる電子文書の生成や、所定の電子文書への文字や図形等の付加等を行う。
例えば特許文献2では、次のような技術が記載されている。すなわち、電子ペン用のモジュラユニットは、保持体と、プリント回路基板と、プリント回路基板に取り付けられた二次元放射線センサと、画像平面を画定する撮像ユニットとを備える。保持体、プリント回路基板および撮像ユニットは放射線センサと対向する撮像ユニットと一体に結合され、放射線センサの位置に撮像面を置く。モジュラユニットは、画像に基づく位置決定のような、専用の分析システムを備える。LEDまたはレーザダイオードなどの放射源がプリント回路基板上に配置、または撮像ユニット上のホルダー内に取り付けられる。撮像ユニットは、放射線センサの方向に伝播される放射線の空間起点を制御するセンサ照準ユニットとして実現できるとしている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−94907号公報
【特許文献2】特表2007−524155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ペンデバイスなどの電子筆記具には、微細ドットを読み込む撮像素子が取り付けられた回路基板と、照射部材などの電子部品を制御する制御回路が実装された制御基板などが内蔵される。これらの基板の面積はできる限り大きい方が望ましいが、電子筆記具自体はあまり大きくない方がよい。また、電子筆記具の先端部には、筆記用のペン軸、照射部材、結像レンズなどの様々な部品が内蔵される。そのため、これらの部品を筐体内部に適確に保持することが重要となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、媒体に対して光を照射する照射部と、前記媒体からの反射光を集光する集光部と、前記集光部を収容する円筒状の筐体と、を含み、前記筐体は、当該筐体の軸心方向に伸びる面を開口面として分割された前記反射光を透過させる光透過部を有する第1の筐体と、当該第1の筐体に対向する第2の筐体と、を有することを特徴とする電子筆記具である。
請求項2に記載の発明は、前記筐体を二つに分割する面は、前記筐体の軸心を通る面であることを特徴とする請求項1記載の電子筆記具である。
請求項3に記載の発明は、前記集光部にて集光された光を屈折させるプリズムと、前記プリズムにて屈折された光を受光する撮像素子が取り付けられた回路基板と、をさらに有し、前記筐体を二つに分割する面は、前記回路基板に平行な面であることを特徴とする請求項1または2記載の電子筆記具である。
請求項4に記載の発明は、前記第1の筐体は、前記媒体への筆記が可能な筆記部先端側に当該筆記部を往復動可能に支持する支持軸と、前記光透過部と対向する位置に設けられた当該支持軸の後端部から後端側に延びる傘部と、を有し、前記第2の筐体の先端側の端部は、前記傘部の後端側開口部と前記筐体の軸心と直交する方向に重なり合うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子筆記具である。
請求項5に記載の発明は、前記媒体への筆記が可能な筆記部を往復動可能に支持するとともに前記照射部を支持する支持部材をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子筆記具である。
【0006】
請求項6に記載の発明は、前記第1の筐体と前記第2の筐体は、スナップフィットで固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電子筆記具である。
請求項7に記載の発明は、前記第1の筐体と前記第2の筐体の軸心と直交する方向への変位を規制する円環部材をさらに有し、前記円環部材は、媒体への筆記が可能な筆記部の先端を覆うキャップの前記筐体の軸心方向への移動を規制することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電子筆記具である。
請求項8に記載の発明は、前記第1の筐体または前記第2の筐体の前記開口面における開口部に前記筐体の軸心と平行に配置された制御回路が実装された制御基板をさらに有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電子筆記具である。
請求項9に記載の発明は、前記第1の筐体または前記第2の筐体の前記開口面における開口部の縁部に、当該開口部に沿うように他方の筐体側に突出する突出部を有すること特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電子筆記具である。
請求項10に記載の発明は、少なくとも前記第1の筐体および前記第2の筐体のいずれかの筐体の内側は黒色であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電子筆記具である。
【0007】
請求項11に記載の発明は、軸方向に伸びる面を開口面とする第1の筐体と、当該開口面にて当該第1の筐体に連結される第2の筐体とに分割される筐体と、前記第1の筐体に設けられ媒体からの反射光を集光する集光部と、前記第1の筐体に設けられ前記集光部にて集光された光を屈折させるプリズムと、前記第1の筐体に取り付けられ、前記プリズムにて屈折された光を受光する撮像素子が取り付けられた回路基板と、を有することを特徴とする電子筆記具である。
請求項12に記載の発明は、前記開口面は、前記筐体の軸心を通る面であることを特徴とする請求項11記載の電子筆記具である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1によれば、筐体の開口面積を大きくすることが可能となり、例えば収容部品の筐体内部への組み付けが容易となる。
本発明の請求項2によれば、筐体の開口面積を更に大きくすることが可能となる。
本発明の請求項3によれば、回路基板を筐体内部に組み付け易くすることができるため回路基板の面積を大きくすることができる。
本発明の請求項4によれば、先端部の剛性を高くできるため筆記部などを適確に保持することができる。
本発明の請求項5によれば、筆記部および照射部を適確に保持することができるとともにこれらの部品を組み付け易くできる。
本発明の請求項6によれば、筐体の組み立て性を向上させることができる。
【0009】
本発明の請求項7によれば、組み立てられた筐体を分離し難くすることができるとともに、キャップが過度に深く挿入されることを防止することができる。
本発明の請求項8によれば、制御基板の面積を大きくすることができる。
本発明の請求項9によれば、媒体からの反射光以外の光が筐体内部に侵入し悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
本発明の請求項10によれば、反射光が筐体の内面で乱反射することを抑制することができる。
本発明の請求項11によれば、本発明を採用しない場合に比べて構成部品の組み付けが良好となり、構成部品の収容性を向上させることができる。
本発明の請求項12によれば、筐体の開口面積をより大きくすることができ、収容性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」という)について詳細に説明する。
まず、本実施の形態における筆跡情報管理システムの全体構成について説明する。
図1は、本実施の形態の筆跡情報管理システムの構成の一例を示した図である。図1に示したように、この筆跡情報管理システムは、端末装置10と、文書サーバ20と、識別情報サーバ30と、画像形成装置40と、端末装置50とがネットワーク80に接続されることにより構成されている。また、端末装置50には、デジタルペン60が通信装置70を介して接続されている。
【0011】
本実施の形態の筆跡情報管理システムでは、端末装置10から電子文書の印刷要求が行われると、文書サーバ20は端末装置10からの印刷要求を受け取り、画像形成装置40に対して印刷要求の対象となった電子文書の印刷指示を行う。それにより、画像形成装置40は、この電子文書の文書画像を紙等の媒体に印刷するが、その際に、画像形成装置40は文書画像に加えて符号画像を媒体上に印刷する。
ここでの符号画像とは、識別情報および位置情報を符号化して得られる識別符号および位置符号を画像化したものである。識別情報とは、媒体を一意に特定するための情報であり、本実施の形態では識別情報サーバ30が発行する。また、位置情報は、媒体上の座標位置を特定するための情報であり、本実施の形態では文書サーバ20が生成する。
そして、文書画像と符号画像とが印刷された媒体に対し、ユーザがデジタルペン60を用いて筆記すると、デジタルペン60は符号画像に含まれる位置情報に基づいて手書き情報(筆跡情報)を生成する。またそれと同時に、デジタルペン60は符号画像に含まれる識別情報を認識する。そして、認識された識別情報と筆跡情報とは、端末装置50を介して文書サーバ20に送られる。識別情報と筆跡情報とを受け取った文書サーバ20は、識別情報に基づいて媒体に印刷された電子文書を特定し、この特定された電子文書と筆跡情報とを関連付けて記憶する。
また、文書画像と符号画像とが印刷された媒体に対し、ユーザがデジタルペン60を用いて文書画像に対応付けられた所定の情報の表示を指示すると、デジタルペン60はその指示があったことを示す信号と、符号画像に含まれる識別情報および位置情報を認識する。そして、認識された信号、識別情報および位置情報は、端末装置50へ送られる。これらを受け取った端末装置50は、識別情報および位置情報を文書サーバ20に送り、その識別情報および位置情報に対応する媒体に印刷された電子文書に対応付けられた所定の情報源へのリンク先(URL)を要求する。そして、所定の情報へのリンク先(URL)を受け取った端末装置50は、そのリンク先にアクセスし、例えば自身のディスプレイに所定の情報を表示する。
【0012】
なお、本明細書では、媒体に記録する画像の元となる電子データを「電子文書」と表記するが、これは、テキストを含む「文書」を電子化したデータのみを意味するものではない。例えば、絵、写真、図形等の画像データ(ラスタデータかベクターデータかによらない)、データベース管理ソフトウェアや表計算ソフトウェアで記録されるデータ、その他の印刷可能な電子データも含めて「電子文書」としている。
また、本明細書において、「媒体」は、画像を印刷可能な媒体であれば、その材質は問わない。代表例は紙であるが、OHPシート等といったプラスチックシートや金属板等であっても構わない。
さらに、本明細書では、電子文書、媒体、さらにはデジタルペン60やユーザについて、それぞれを一意に識別するための識別情報を用いて処理を行うが、単に「識別情報」という場合には、媒体に関する識別情報を意味するものとする。
【0013】
続いて、本実施の形態の筆跡情報管理システムを構成する各構成要素について詳細に説明する。
端末装置10は、文書サーバ20に対して電子文書の印刷を要求するコンピュータ装置である。ここで、端末装置10としては、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、その他のコンピュータが用いられる。
文書サーバ20は、電子文書を記憶し管理するコンピュータ装置である。また、端末装置10から電子文書の印刷要求があると、電子文書の画像と、識別情報および位置情報を表す符号画像とを生成し、これらを合成した合成画像を媒体に印刷する印刷命令を画像形成装置40に対して出力する。ここで、文書サーバ20としては、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、その他のコンピュータが用いられる。
【0014】
識別情報サーバ30は、媒体に付与する識別情報を発行するコンピュータ装置である。そして、発行した識別情報を、その識別情報が付与される媒体に印刷される電子文書と関連付けて記憶する。ここで、識別情報サーバ30としては、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、その他のコンピュータが用いられる。
画像形成装置40は、媒体に画像を印刷し、印刷文書として出力する装置である。この画像形成装置40は、単体のプリンタや印刷機であってもよいし、他にスキャナや通信の機能を備えた所謂「複合機」であってもよい。ここで、画像形成装置40における画像形成方式としては、例えば、電子写真方式を用いるとよいが、その他の方式を用いてもよい。
【0015】
端末装置50は、印刷文書に対する筆記を電子化した情報(以下、「筆跡情報」という)を、印刷文書に記録された画像の元となる電子文書に反映させるために識別情報サーバ30に送信するコンピュータ装置である。また、筆跡情報を反映する対象の電子文書をディスプレイ(不図示)に表示し、その上に筆跡情報を重ねて表示するようにしてもよい。ここで、端末装置50としては、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、その他のコンピュータが用いられる。また、筆跡情報を主に手書き情報として説明するが、これに限らず、例えば、建築や機械等の図面データを出力する装置であるプロッタ等によって機械的に描画された情報等を含むものである。
【0016】
デジタルペン60は、印刷文書上に文字または図形を筆記するために用いられるペンデバイスである。また、媒体に印刷された符号画像を読み取る撮像素子を備える。そして、撮像素子で読み取った符号画像から位置情報を検出し、筆記した文字または図形をイメージデータ化した筆跡情報をこの位置情報に基づいて生成し記憶する。
通信装置70は、デジタルペン60から筆跡情報を取得して端末装置50に送信する装置である。通信装置70とデジタルペン60との間の通信の方式および通信装置70と端末装置50との間の通信の方式としては、USB(Universal Serial Bus)、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信機能等、種々の方式が用いられる。なお、図1では、通信装置70をデジタルペン60と別体のものとして示しているが、必ずしも別体である必要はなく、一体に構成してもよい。
【0017】
引き続いて、筆跡情報管理システムを構成する各構成要素の詳細を説明する。
まず、文書サーバ20の構成について説明する。
図2は、文書サーバ20の機能構成の一例を示したブロック図である。図2に示したように、文書サーバ20は、受信部21と、識別情報取得部22と、電子文書管理部23と、筆跡情報管理部24と、文書/筆跡情報記憶部25とを備える。また、識別符号生成部27aと、位置符号生成部27bと、符号配置部27cと、パターン画像記憶部27dと、符号画像生成部27eとを備える。さらに、文書画像生成部26と、画像合成部28と、送信部29とを備える。
【0018】
受信部21は、端末装置10から印刷要求を受信する。ここで、印刷要求には、電子文書に加えて、印刷対象となる電子文書の識別情報(以下、「文書ID」という)と、印刷される媒体上での電子文書のレイアウトを定めるための各種設定(以下、「印刷設定」という)とが含まれる。文書IDは、端末装置10にて電子文書毎に付与されるが、文書サーバ20にて付与してもよい。また、受信部21は、印刷文書が印刷される媒体に固有に付与される識別情報を識別情報サーバ30から受信する。さらに、印刷文書に対する筆記が行われた際には、識別情報サーバ30から、印刷文書に埋め込まれた識別情報と、印刷文書に対する筆記の内容(筆記画像)を電子化した筆跡情報とを受信する。
識別情報取得部22は、受信部21から文書IDおよび印刷設定を取得し、これを送信部29に渡して識別情報の発行要求の送信を指示し、これを文書画像生成部26に渡して文書画像の生成を指示する。また、受信部21から媒体の識別情報を取得し、これを識別符号生成部27aに渡して識別符号の生成を指示する。
【0019】
電子文書管理部23は、受信部21が受信した識別情報と電子文書とを取得し、文書IDに基づき両者を対応付けて文書/筆跡情報記憶部25に登録する。また、文書/筆跡情報記憶部25に記憶された電子文書についての、印刷設定に従って媒体上に印刷された状態を反映した新たな電子文書(第2の電子文書)を生成し、生成された第2の電子文書を文書/筆跡情報記憶部25に記憶する。さらに、電子文書の表示や印刷が指示された際には、対応する識別情報と電子文書とを、文書/筆跡情報記憶部25から取り出す。また、電子文書に対応付けられた所定の情報へのリンク先(URL)の要求がなされた際には、そのリンク先(URL)を文書/筆跡情報記憶部25から取り出す。
【0020】
筆跡情報管理部24は、受信部21が受信した識別情報と筆跡情報とを取得し、識別情報に基づき筆跡情報を電子文書に対応付けて文書/筆跡情報記憶部25に登録する。また、筆跡情報の表示が指示された際には、対応する識別情報と筆跡情報とを、文書/筆跡情報記憶部25から取り出す。
文書/筆跡情報記憶部25は、電子文書管理部23によって管理される電子文書と、筆跡情報管理部24によって管理される筆跡情報とを記憶する。また、電子文書に対応付けられた所定の情報へのリンク先(URL)を記憶する。
【0021】
識別符号生成部27aは、媒体を特定する識別情報を符号化して識別符号を生成する。
位置符号生成部27bは、媒体上の座標位置を示す位置情報を符号化して位置符号を生成する。
符号配置部27cは、識別符号生成部27aにて生成された識別符号や、位置符号生成部27bにて生成された位置符号等を所定のレイアウト(後段の図3参照)に従って2次元平面に配置し2次元の符号配列を生成する。
パターン画像記憶部27dは、符号配列に格納される各符号の符号値に対応するパターン画像を記憶する。
符号画像生成部27eは、符号配置部27cが生成した2次元の符号配列を参照し、各符号値に対応したパターン画像を選択して符号画像を生成する。
【0022】
文書画像生成部26は、識別情報取得部22から文書IDおよび印刷設定を取得し、この文書IDで特定される電子文書を文書/筆跡情報記憶部25から読み出す。そして、印刷設定に従ってその電子文書の文書画像を生成する。
画像合成部28は、符号画像生成部27eが生成した符号画像と、文書画像生成部26が生成した文書画像とを合成し、合成画像を生成する。
送信部29は、識別情報サーバ30に対して識別情報の発行要求を送信する。また、画像形成装置40に対して媒体に対する画像の印刷命令を送信する。さらに、筆跡情報の表示が指示された際には、識別情報サーバ30に対して識別情報と筆跡情報とを送信する。
【0023】
ここで、本実施の形態の文書サーバ20で生成される符号画像について説明する。
図3は、符号画像を構成する画像等の一例を示した図である。まず、符号画像を構成する単位パターンについて説明する。図3(a)は、単位パターンの一例を示したものである。
単位パターンとは、情報埋め込みの最小単位である。図3(a)では、黒塗りの領域と斜線の領域をドット配置可能な領域とし、その間にある白色の領域をドット配置不可能な領域としている。そして、ドット配置可能な領域のうち、黒塗りの領域にドットが配置され、斜線の領域にはドットが配置されていないことを示している。すなわち、図3(a)は、ドットを配置可能な9箇所の中から選択した2箇所(黒塗りの領域)にドットを配置することで単位パターンを構成した例を示したものである。ここで、9箇所の中から2箇所を選択する組み合わせは36(=9C2)通りなので、単位パターンは、36種類存在する。このうち、4種類の単位パターンは、同期パターンとして使用される。同期パターンとは、画像の回転を検出したり、識別符号および位置符号の相対的な位置を特定したりするためのパターンである。特に、画像の回転を検出する必要があることから、4種類の同期パターンとしては、そのうちの1つの同期パターンを90度回転するとそのうちの別の同期パターンになるようなものが選ばれる。また、この4種類の単位パターンを除く32種類の単位パターンは、識別符号および位置符号を表現する情報パターンとして使用され、5ビットの情報が表現される。
【0024】
ところで、図3(a)に示したドットは、あくまで情報表現のためのドットであり、画像を構成する最小の点を意味するドットとは必ずしも一致しない。本実施の形態において、情報表現のためのドット(図3(a)の最小の四角)は、600dpiにおける2ドット×2ドットの大きさを有している。600dpiにおける1ドットの大きさは0.0423mmなので、情報表現のためのドット(図3(a)の最小の四角)の一辺は、84.6μm(=0.0423mm×2)である。情報表現のためのドットは、大きくなればなるほど目に付きやすくなるため、できるだけ小さいほうが好ましい。ところが、あまり小さくすると、プリンタで印刷できなくなってしまう。そこで、情報表現のためのドットの大きさとして、50μmより大きく100μmより小さい上記の値を採用している。ただし、上記の値84.6μmは、あくまで計算上の数値であり、実際に印刷されたトナー像では100μm程度になる。なお、本明細書で「ドット」というときは、特に明示しない限り、画像を構成する最小の点を意味するドットではなく、情報表現のためのドットを指すものとする。
【0025】
次に、このような単位パターンから構成される符号ブロックについて説明する。図3(b)に、符号ブロックのレイアウトの一例を示す。なお、ここでは、画像ではなく、パターン画像によって置き換えられる直前の符号配列で示している。すなわち、図3(b)の最小の四角(以下、「単位ブロック」という)に、図3(a)のような単位パターン(36通りの単位パターンのいずれか)が配置され、その画像が媒体に形成されることになる。
図3(b)のレイアウトでは、符号ブロックの左上の1つの単位ブロックに、同期符号が配置されている。また、同期符号が配置された単位ブロックの右側の4つの単位ブロックにX位置符号が配置され、同期符号が配置された単位ブロックの下側の4つの単位ブロックにY位置符号が配置されている。さらに、これらの位置符号が配置された単位ブロックに囲まれた16(=4×4)個の単位ブロックに識別符号が配置されている。
【0026】
ここで、識別情報の符号化について述べる。
識別情報を符号化する場合、識別情報を構成するビット列は、RS符号化を行うために複数のブロックに分割される。符号化には、いくつかの方法があるが、本実施の形態では、RS符号化が適している。RS符号は多値の符号法であり、この場合、単位ブロックで表現される値がRS符号の多値に対応するからである。例えば、1つの単位ブロックで5ビットの情報を表現する場合、60ビットの識別情報は、ブロック長が5ビットの12個のブロックに分割される。そして、2ブロックの誤りを訂正可能なRS符号を採用したとすると、符号長は16ブロックとなり、図3(b)の符号ブロックにおける識別符号が配置される単位ブロックに収まることになる。なお、符号化方式はRS符号に限定するものでなく、その他の符号化方式、例えば、BCH符号等を使用してもよい。
【0027】
引き続いて、位置情報の符号化について述べる。
位置情報の符号化には、擬似乱数系列の一種であるM系列符号が使用される。ここで、M系列とは、ある長さのシフトレジスタとフィードバックによって生成される符号系列とのうち、その周期が最長になる系列をいう。Kをシフトレジスタの段数とすると、M系列の系列長は2K−1となる。このM系列から取り出した任意の連続したKビットは、同じM系列中の他の位置に現れない性質を持つ。そこで、この性質を利用して位置情報を符号化する。
ところで、本実施の形態では、符号化すべき位置情報の長さから、必要なM系列の次数を求め、M系列を生成している。しかしながら、符号化する位置情報の長さが予め分かっている場合は、M系列を毎回生成する必要はない。すなわち、固定のM系列を予め生成しておき、それをメモリ等に格納しておけばよい。
例えば、系列長8191のM系列(K=13)を使用したとする。この場合、位置符号も5ビット単位で埋め込むため、系列長8191のM系列から5ビットずつ取り出してブロック化する。
【0028】
なお、本明細書では、説明を簡単にするために、識別情報と位置情報とは明確に区別して用いている。しかしながら、広範な位置情報を用意しておき、媒体ごとに異なる範囲から位置情報を切り出して埋め込み、位置情報の違いによって媒体を識別するという手法もある。そこで、このような手法においては、媒体を識別する機能が位置情報に備わっているものと見て、位置情報を識別情報としても考えるものとする。
【0029】
次に、識別情報サーバ30の構成について説明する。
図4は、識別情報サーバ30の機能構成の一例を示したブロック図である。図4に示したように、識別情報サーバ30は、受信部31と、識別情報管理部32と、識別情報記憶部33と、表示情報生成部34と、送信部39とを備える。
受信部31は、文書サーバ20から識別情報の発行要求を受信する。また、受信部31は、印刷文書に対する筆記が行われた際には、媒体の識別情報と筆跡情報とを端末装置50から受信する。
【0030】
識別情報管理部32は、識別情報の発行要求があると、識別情報を重複することなく発行し、その際に指定された文書IDおよび印刷設定を識別情報に関連付けて記憶する。また、識別情報の指定を受けて、その識別情報に対応する文書IDおよび印刷設定を取り出す。
識別情報記憶部33は、識別情報を、その使用/未使用の状態、それが付与された媒体に印刷された電子文書の文書ID、それが付与された媒体に電子文書が印刷された際の印刷設定を関連付けて記憶するデータベースである。
表示情報生成部34は、筆跡情報の表示が指示された際に、文書サーバ20から取得した情報に基づいて、筆跡情報を表示するための表示情報を生成する。この表示情報としては、例えば、端末装置50で表示するイメージを生成する元となるデータを生成する。
【0031】
送信部39は、文書サーバ20からの要求に応じて発行した識別情報を文書サーバ20に送信する。また、印刷文書に対する筆記が行われた際には、媒体の識別情報と筆跡情報とを文書サーバ20に送信する。さらに、筆跡情報の表示が指示された際には、端末装置50に対して表示情報を送信する。
【0032】
次に、デジタルペン60について説明する。なお、ここではデジタルペン60の機能構成の概略を説明することとし、デジタルペン60の構成の詳細は後段で説明する。
図5は、デジタルペン60の機能構成の概略を説明する図である。図5に示したように、デジタルペン60は、ペン全体の動作を制御する制御回路61を備える。また、制御回路61は、読み取った符号画像を処理する画像処理部61aと、画像処理部61aでの処理結果から識別情報および位置情報を抽出するデータ処理部61bとを含む。
また、制御回路61には、デジタルペン60による筆記動作をペンチップ69に加わる圧力(筆圧)によって検知し、デジタルペン60を動作状態に設定する筆圧検知スイッチ62が接続されている。さらに、媒体上に赤外光を照射する照射部としての赤外LED63と、反射光を受光することによって符号画像を読み取る受光部としての赤外CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)64も接続されている。さらにまた、識別情報および位置情報を記憶するための情報メモリ65と、外部装置と通信するための通信回路66と、ペンを駆動するためのバッテリ67と、ペンの識別情報(ペンID)を記憶するペンIDメモリ68とが接続されている。
【0033】
制御回路61において実現される機能構成について詳細に説明する。図6は、制御回路61の機能構成の一例を示したブロック図である。なお、図6では、制御回路61内の画像処理部61aとデータ処理部61bとに分けて、機能構成例を示している。
図6に示したように、画像処理部61aは、画像取得部631と、ドット配列生成部632とを備える。また、データ処理部61bは、符号配列生成部633と、識別情報取得部634と、位置情報取得部635と、筆跡情報生成部636と、送信部639とを備える。
【0034】
画像取得部631は、赤外CMOS64が印刷文書から読み取った符号画像を取得する。また、必要に応じて、符号画像に含まれるノイズを除去する。
ドット配列生成部632は、符号画像におけるドットの位置を参照して、ドット配列を生成する。すなわち、2次元の配列上で、例えば、ドットがある位置に「1」を、ドットがない位置に「0」を記憶することにより、画像として検出したドットをデジタルデータに置き換える。そして、この2次元の配列をドット配列として出力する。
【0035】
符号配列生成部633は、ドット配列上で、符号ブロック内の単位パターンに対応するブロックを検出する。具体的には、単位パターンが配置されるブロックと同じ形状および大きさの枠をドット配列上で動かし、枠内のドット数が均等になる位置で枠を固定する。例えば、図3(a)の単位パターンを用いる場合であれば、3ドット×3ドットに対応する大きさの枠を動かし、枠内に含まれるドット数が2となる位置で枠を固定する。そして、その枠で区切られた各ブロック内のドット位置から定まる符号値を格納した符号配列を生成する。また、この符号配列が生成されると、予め定められた同期符号の符号値を検索することによって、同期符号の位置が特定される。
【0036】
識別情報取得部634は、符号配列から同期符号の位置を基準にして識別符号を検出する。そして、画像生成時にRS符号化処理で用いたパラメータを用いて識別符号を復号し、識別情報を取得する。
位置情報取得部635は、符号配列から同期符号の位置を基準にして位置符号を検出する。そして、位置符号からM系列の部分系列を取り出し、画像生成時に使用したM系列におけるこの部分系列の位置を参照し、この位置を同期符号によるオフセットで補正した値を位置情報として取得する。なお、オフセットで補正するのは、位置符号の間に同期符号が配置されているためである。
【0037】
筆跡情報生成部636は、位置情報取得部635が取得した位置情報を連結して筆跡情報を生成する。ここで、筆跡情報には、少なくともデジタルペン60のペン先の軌跡を電子化したデータが含まれるが、これ以外の情報を含んでもよい。ペン先の軌跡以外の情報としては、例えば、筆記した時にペンに設定されていた色の情報や、筆圧の情報等がある。
送信部639は、識別情報取得部634が取得した識別情報と、位置情報取得部635が取得した位置情報と、筆跡情報生成部636が生成した筆跡情報とを通信回路66に渡すことで、通信装置70への情報送信を実現する。
【0038】
デジタルペン60では、筆圧検知スイッチ62がオンになると動作状態となり、まず、赤外LED63が媒体に対して赤外光を照射し、赤外CMOS64がその反射光を受光することにより、符号画像を読み取る。そして、画像取得部631がこの読み取った符号画像を取得する。その際に、符号画像にノイズが含まれていれば、これを除去する。次に、ドット配列生成部632が、符号画像に含まれるドット位置をデジタルデータ化し、ドット配列を生成する。そして、符号配列生成部633が、ドット配列からブロックを検出し、ブロックごとの符号値を格納した符号配列を生成する。そして、符号配列において、同期符号の位置を特定する。その後、識別情報取得部634が、同期符号の位置に基づいて識別符号を検出し、これを復号して識別情報を取得する。また、位置情報取得部635が、同期符号の位置に基づいて位置符号を検出し、これを復号して位置情報を取得する。そして、筆跡情報生成部636が、位置情報を連結して筆跡情報を生成する。そして、送信部639が、これらの情報を通信装置70および端末装置50を介して識別情報サーバ30へ送信する。
【0039】
続いて、本実施の形態の筆跡情報管理システムにて電子文書に関して行われる各種処理について説明する。
[印刷文書の生成処理]
図7は、筆跡情報管理システムにて印刷文書が生成される際の動作の一例を示したシーケンス図である。
まず、ユーザは端末装置10から電子文書の印刷指示を文書サーバ20に送信する(ステップ101)。その際には、端末装置10は、印刷対象となる電子文書と、電子文書の識別情報(文書ID)と、ユーザが指定した印刷設定とを送信する。ここで、印刷設定は、印刷の対象とするページ、印刷部数、媒体である用紙のサイズ、拡大縮小率、Nアップ(電子文書のNページを媒体の1ページに割り付ける印刷)、余白領域の大きさ等の設定を含む。
【0040】
文書サーバ20は、端末装置10から電子文書の印刷指示を受信する(ステップ201)。印刷指示に含まれる印刷対象となる電子文書は、電子文書管理部23に送られ、電子文書管理部23が、電子文書を文書IDと関連付けて文書/筆跡情報記憶部25に登録する(ステップ202)。
また、文書サーバ20は、印刷を指示された電子文書の文書IDと印刷設定とを識別情報サーバ30に送信する(ステップ203)。ここで、文書IDとしては、例えば、URL(Uniform Resource Locator)を用いるとよいが、電子文書を一意に特定することができるものであれば他の情報を用いてもよい。
それにより、識別情報サーバ30は、文書IDと印刷設定とを受信する(ステップ301)。そして、識別情報を管理する識別情報管理部32が識別情報記憶部33から未使用の識別情報を取得する(ステップ302)。ここで、取り出す識別情報の数は、印刷設定に応じて決められる。つまり、基本的には、印刷するページ数に印刷部数を乗じて得られる数の識別情報が取り出される。ただし、印刷設定情報の中に、Nアップ印刷の指定等がある場合は、それも考慮される。例えば、10ページの電子文書を2アップ印刷で5部印刷する場合は、25(=10÷2×5)個の識別情報が取り出される。
次に、識別情報サーバ30は、識別情報と文書IDと印刷設定とを関連付けて識別情報記憶部33に登録する(ステップ303)。そして、識別情報サーバ30は、文書サーバ20に対し、識別情報を送信する(ステップ304)。
【0041】
それにより、文書サーバ20は、識別情報を受信する(ステップ204)。そして、識別情報および位置情報を表す符号画像を生成する(ステップ205)。
すなわち、文書サーバ20では、受信部21が識別情報を受信する。そして、受信部21は、受信した識別情報を識別情報取得部22に受け渡す。すると、まず識別情報取得部22が、取得した識別情報を識別符号生成部27aに渡し、識別符号生成部27aが、上記した方法を用いて媒体の識別情報を符号化し、識別符号を生成する。
また、位置符号生成部27bは、受信部21から印刷設定を受け取り、印刷設定に応じた範囲の位置情報を上記した方法を用いて符号化し、位置符号を生成する。
そして、符号配置部27cが、識別符号と位置符号とを所定のレイアウトに従って配置し、これを符号画像生成部27eが、パターン画像記憶部27dに記憶されたパターン画像を用いて画像化することで符号画像を生成する。
【0042】
その後、文書サーバ20では、文書画像生成部26が、電子文書の文書画像を生成する(ステップ206)。その際に、文書画像生成部26は、ステップ201で識別情報取得部22が取得した文書IDを受け取り、文書IDに基づいて印刷対象となる電子文書を文書/筆跡情報記憶部25から読み出す。また、ステップ201で識別情報取得部22が取得した印刷設定を受け取り、これに基づいて文書画像を生成する。
そして、画像合成部28は、ステップ205で生成された符号画像と、ステップ206で生成された文書画像とを合成し、合成画像を生成する(ステップ207)。
その後、合成画像は送信部29に渡され、送信部29が、合成画像の印刷命令を画像形成装置40に送信する(ステップ208)。ここで、合成画像の印刷命令は、例えば、文書画像の印刷命令の列からなるPDL(Page Description Language)ファイルに対し、符号画像として印刷する内容をPDLコマンドとして設定したPDLの形式で送信される。
【0043】
画像形成装置40は、文書サーバ20から合成画像(電子文書の文書画像および符号画像)を受信する(ステップ401)。そして、画像形成装置40は、文書画像をY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)により画像に展開する(ステップ402)。次に、文書画像はC、M、Yのトナーを用いて、符号画像はK(カーボンを含む黒)のトナーを用いて、それぞれ画像形成を行う(ステップ403)。
【0044】
ところで、上述した例では、識別情報サーバ30は識別情報を発行するだけで、文書サーバ20が、識別情報を含む符号画像を生成し、画像形成装置40に画像形成を指示する構成とした。しかしながら、識別情報サーバ30が、符号画像を生成し、画像形成装置40に画像形成を指示する構成としてもよい。
また、符号画像を画像形成装置40で生成する構成を採用してもよい。その場合には、文書サーバ20または識別情報サーバ30が、電子文書から生成したPDLに識別情報を付加して画像形成装置40へ送信し、画像形成装置40が識別情報を含む符号画像を生成することになる。
【0045】
また、上記の例では、識別情報と文書IDと印刷設定とが関連付けられて構成されたデータベース(識別情報記憶部33)を識別情報サーバ30に置く構成について説明した。これは、かかるデータベースを共有可能な装置(識別情報サーバ30)に置くことで、複数ユーザへの対応や、サーバのアクセス制御技術を利用した電子文書のセキュリティ確保が可能となるからである。しかしながら、必ずしもこのような構成を採用する必要はなく、端末装置10や文書サーバ20に上記のデータベースを置く構成を採用してもよい。
【0046】
また、上記した画像形成装置40では、符号画像をK(カーボンを含む黒)のトナーを用いて形成するようにした。これは、Kのトナーが、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のトナーよりも赤外光の吸収量が多く、デジタルペン60での符号画像の読み取りが容易となるからである。しかしながら、符号画像は、特殊トナーを用いて形成することも可能である。
ここで、特殊トナーとしては、可視光領域(400nm〜700nm)における最大吸収率が7%以下であり、近赤外領域(800nm〜1000nm)における吸収率が30%以上の不可視トナーが例示される。ここで、「可視」および「不可視」は、目視により認識できるかどうかとは関係しない。印刷文書における画像が可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性の有無により認識できるかどうかで「可視」と「不可視」とを区別している。また、可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性が若干あるが人間の目で認識し難いものも、「不可視」に含める。
【0047】
なお、ここでは、電子文書の画像に符号画像を合成して印刷することとしたが、白紙(ノートや付箋等)に符号画像を印刷する構成としてもよい。その場合は、ステップ201で受信する印刷要求に文書IDを含めないようにし、ステップ303で識別情報と文書IDおよび印刷設定との関連付けを行わないようにし、ステップ206における文書画像の生成は実行しないようにすればよい。
【0048】
[筆跡情報の登録処理]
次に、デジタルペン60が筆跡情報を生成して文書サーバ20に登録する際の動作について説明する。
上記したように、デジタルペン60では、識別情報取得部634が識別情報を取得する。また、位置情報取得部635が位置情報を取得する。さらに、筆跡情報生成部636が位置情報を相互に連結して筆跡情報を生成する。そして、送信部639が、識別情報および筆跡情報を通信装置70および端末装置50を介して識別情報サーバ30へ送信する。そして、識別情報サーバ30が筆跡情報を文書サーバ20に登録する。
【0049】
図8は、筆跡情報を登録する際の識別情報サーバ30および文書サーバ20の動作の一例を示したシーケンス図である。
識別情報サーバ30では、まず、受信部31が、デジタルペン60からの識別情報および筆跡情報を受信する(ステップ311)。次に、識別情報および筆跡情報は識別情報管理部32に渡され、識別情報管理部32は、渡された識別情報に関連付けられた文書IDを識別情報記憶部33から取り出す。そして、ステップ311で受信した識別情報および筆跡情報の送信先となる文書サーバ20(文書IDで特定される電子文書が存在する文書サーバ20)を決定する(ステップ312)。なお、識別情報記憶部33において識別情報に文書IDが関連付けられていなければ、その識別情報は白紙(ノートや付箋)に割り当てられたものであると考えられる。その場合は、白紙に対する筆跡情報を管理する文書サーバ20を送信先として決定すればよい。
その後、識別情報および筆跡情報は送信部39に渡され、送信部39が、ステップ312で送信先として決定した文書サーバ20に対し、識別情報および筆跡情報を送信する(ステップ313)。
【0050】
これにより、文書サーバ20では、受信部21が、識別情報および筆跡情報を受信する(ステップ211)。そして、受信部21は、受信した識別情報を筆跡情報管理部24に渡す。すると、筆跡情報管理部24は、識別情報と筆跡情報とを対応付けて文書/筆跡情報記憶部25に記憶する(ステップ212)。
【0051】
ところで、本実施の形態の筆跡情報管理システムでは、文書サーバ20が電子文書や筆跡情報を管理し、識別情報サーバ30が媒体を一意に識別するための識別情報を生成/管理するように構成した。しかしながら、これらの処理を如何なる装置で行うかについては種々のバリエーションが考えられる。例えば、識別情報を生成/管理する処理は、文書サーバ20で行ってもよいし、端末装置50や画像形成装置40で行ってもよい。また、符号画像を画像形成装置40で生成してもよい。
そのため、これらの処理を汎用的な装置としてのコンピュータ90で行うものとして一般化できる。そこで、筆跡情報管理システムを構成する端末装置10、文書サーバ20、識別情報サーバ30、画像形成装置40の制御部、端末装置50がコンピュータ90で構成されるものとして、コンピュータ90のハードウェア構成について説明しておく。
【0052】
図9は、コンピュータ90のハードウェア構成を示した図である。
図9に示したように、コンピュータ90は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)91と、記憶手段であるメインメモリ92および磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)93とを備える。ここで、CPU91は、OS(Operating System)やアプリケーション等の各種ソフトウェアを実行し、上述した各機能を実現する。また、メインメモリ92は、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、磁気ディスク装置93は、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
さらに、コンピュータ90は、外部との通信を行うための通信I/F94と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構95と、キーボードやマウス等の入力デバイス96とを備える。
なお、本実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0053】
次に、デジタルペン60の構成を詳細に説明する。
図10は、デジタルペン60の全体構成を説明する図であって、(a)はデジタルペン60の外観斜視図、(b)はデジタルペン60のキャップ610の外観斜視図、(c)はデジタルペン60のペン本体部620の外観斜視図である。図10に示したように、本実施の形態の電子筆記具の一例であるデジタルペン60は、筆記具本体としてのペン本体部620と、ペン本体部620に対して着脱自在なキャップ610とで構成されている。
【0054】
続いて、図11はペン本体部620の構成を示す縦断面図である。なお、縦断面図とは、図10のように、後述するキャップ610の対向片612aを下にしてデジタルペン60を置いたときに、上下方向に切断した断面図のことである。同図に示すように、ペン本体部620は、筐体621、筆記検知機能部622、符号画像検出部623、操作表示部624、キャップ位置検出機能部625、制御回路部626により構成される。
【0055】
筐体621は、ペン本体部620の外壁を構成するとともに、ペン本体部620に配置される各種機能部を支持する。ここで、筐体621は、図11に示したA−A線を軸心とする略円筒状であり、筆記部としてのペンチップ69が配置された先端側が先細りとなる形状となっている。なお、以下、本明細書において、ペンチップ69が配置された側を先端側と称し、ペンチップ69が配置された側とは反対側を後端側と称する場合がある。
筆記検知機能部622は、媒体に対する筆記が行われた際に、媒体に加えられた筆圧を検出して、筆記が行われていることを検知する機能部である。筆記検知機能部622には、図5に示したペンチップ69と、筆圧検知スイッチ62とが含まれる。
符号画像検出部623は、媒体上の画像を読み取る読み取り手段の一例であり、媒体に所定の波長の光(例えば、赤外光)を照射し、媒体からの反射光に基づいて、媒体に印刷された符号画像を検出する機能部である。符号画像検出部623には、図5に示した赤外LED63と、赤外CMOS64とが含まれる。
【0056】
操作表示部624は、媒体から読み取られた符号画像に基づく特定処理の実行を指示する機能部である。また、操作表示部624は、デジタルペン60の動作態様を特定色の表示で行う機能部でもある。
キャップ位置検出機能部625は、ペン本体部620に対するキャップ610の装着位置を検知する位置検知手段の一例であり、ペン本体部620の規定の位置にキャップ610が取り付けられたか否かを検出する機能部である。
制御回路部626は、デジタルペン60を動作させる際の各種処理を実行する機能部である。また、通信装置70(図1参照)を介して端末装置50に識別情報、位置情報および筆跡情報を送信する機能部である。そして、制御回路部626は、図5に示した画像処理部61aやデータ処理部61bを備える制御回路61、情報メモリ65、通信回路66、バッテリ67、およびペンIDメモリ68を有しており、制御回路61などが実装された制御基板626aが筐体621の軸心(A−A線)に平行に配置されている。また、制御基板626aよりも後端側には、通信装置70あるいは端末装置50と物理的に接続するためのUSBジャック626bが設けられている。
【0057】
次に、筆記検知機能部622および符号画像検出部623について詳細に説明する。
図12は、筆記検知機能部622および符号画像検出部623の構成を示す図である。
図12に示すように、筆記検知機能部622は、ペンチップ69、ペンチップ支持部材622a、ペンチップ留め部材622b、付勢バネ622c、継ぎ手部材622d、筆圧検知スイッチ62を備える。
【0058】
ペンチップ69は、例えばボールペンで構成され、媒体上にインク等の色材により文字や図形等を描画する。ここで、筆記部としてのペンチップ69の先端部は、ほぼペン本体部620(筐体621)の軸心(A−A線)上に配置されている。このような配置とすることで、通常のペンと同様の筆記動作を行うことが可能となり、ユーザは違和感を感じることなくデジタルペン60の操作ができる。また、ペンチップ69は、ペン本体部620の軸心に対し所定の角度傾いて配置され、ペン本体部620の軸心を境界として一方側に配置されている。なお、ペン本体部620の軸心に対してペンチップ69と反対側には、赤外LED63などが収納される。このようにペンチップ69をペン本体部620の軸心に対して傾けた場合には、ペンチップ69の先端部の後方(ペンチップ69の側方)に、赤外LED63等を収納するスペースが形成される。この結果、赤外LED63等をペン本体部620の軸心側に寄せることができ、ペンチップ69をペン本体部620の軸心に平行に配置した場合よりもペン本体部620の小径化を図ることができる。
【0059】
ペンチップ支持部材622aは、ペンチップ69をその軸心pに沿って移動自在に支持する。ペンチップ支持部材622aは、先端側支持部材622a1と、後端側支持部材622a2とから構成されている。そして、先端側支持部材622a1と後端側支持部材622a2との間に形成される間隙に、ペンチップ留め部材622bが収納される。ここで、先端側支持部材622a1は、ペンチップ留め部材622bの先端側への移動を規制し、後端側支持部材622a2は、ペンチップ留め部材622bの後端側への移動を規制している。
【0060】
ペンチップ留め部材622bは、ゴム等の弾性体によりリング状に形成されている。そして、ペンチップ69を自らの弾性力で挟持することでペンチップ69を保持し、ペンチップ69が自身の自重によりペンチップ支持部材622aから脱落することを抑制している。
【0061】
また、ペンチップ留め部材622bは、ペンチップ69に対し、ペンチップ留め部材622bによる摩擦力以上の引っ張り力がペン軸pに沿って加わった場合には、ペンチップ69がペンチップ支持部材622aから引き抜かれることを許容する。さらに、ペンチップ留め部材622bによる摩擦力以上の押付け力がペン軸pに沿って加わった場合には、ペンチップ69がペンチップ支持部材622aに装着されることを許容する。これにより、ペンチップ69に対し所定の引っ張り力および押付け力を加えることで、ペンチップ69の交換が可能となる。
【0062】
継ぎ手部材622dは、ペンチップ69に作用する媒体からの圧力(筆圧)を筆圧検知スイッチ62に伝達する。筆記動作等によりペンチップ69が媒体に押し付けられた際、ペンチップ69に加わる圧力によってペンチップ69はペン軸pに沿ってデジタルペン60の内部側に移動する。これにより、継ぎ手部材622dは、付勢バネ622c等の付勢力に抗して移動し、筆圧検知スイッチ62を押す。ここで、継ぎ手部材622dのペンチップ69側の端部には外径が他の部分よりも大径に構成された大径部622eが形成され、そして、この大径部622eは、筐体621に形成された所定幅の溝部621aの内部に配置される。それにより、継ぎ手部材622dの移動範囲(スライド範囲)は、筐体621に形成された溝部621aの幅に制限される。なお、継ぎ手部材622dは、ペン本体部620の軸心に対する傾きがペンチップ69の傾きよりも小さい状態で配置されている。詳細には、ペン本体部620の軸心に沿うように略平行に配置されている。
【0063】
筆圧検知スイッチ62は、筆記動作等によってペンチップ69に圧力が加わった際に、継ぎ手部材622dからの押圧力を受ける。これにより、筆圧検知スイッチ62はオンに切り替えられ、デジタルペン60を動作状態に設定する。なお、本実施の形態における筆圧検知スイッチ62は、作動片62aを有するリミットスイッチにより構成されている。
【0064】
ここで、ペンチップ69の長さをより長くし、ペンチップ69が筆圧検知スイッチ62を直接押圧する構成を採用すると、ペンチップ69が筐体621の軸心に対して傾斜しているために、同図に示す位置よりも外方側に筆圧検知スイッチ62を設ける必要が生じるため、ペン本体部620が外方に膨らんでしまう。そこで、本実施の形態では、ペンチップ69よりも傾きの小さい継ぎ手部材622dをペンチップ69と筆圧検知スイッチ62との間に配置し、ペンチップ69から筆圧検知スイッチ62に至る部分の形状を「く」の字状としている。これにより、筆圧検知スイッチ62をペン本体部620の軸心に近い側に配置することができ、ペン本体部620の小径化を図ることができる。
【0065】
付勢バネ622cは、継ぎ手部材622dをペンチップ69側に付勢する。それにより、筆記動作等が行われていない場合には、継ぎ手部材622dの大径部622eは、筐体621の溝部621aにより制限された移動範囲の中の最もペンチップ69側に位置する。それによって、筆圧検知スイッチ62はオフに切り替えられ、デジタルペン60を動作停止状態に設定する。
【0066】
符号画像検出部623は、媒体上に赤外光を照射する照射部としての赤外LED63(図5も参照)、赤外LED63から出射された赤外光を拡散する拡散板623a、媒体からの反射光を検知することによって媒体上の符号画像を読み取る赤外CMOS64(図5も参照)が取り付けられた回路基板64aを備えている。ここで、赤外CMOS64は、ペン本体部620の軸方向に沿って配置されている。このため、赤外CMOS64がペン本体部620の軸方向と直交する関係で配置された場合に比べ、ペン本体部620(筐体621)の小径化を図ることができる。
【0067】
さらに、媒体からの反射光を赤外CMOS64に結像させる結像光学系として、赤外光を主に通過させるIR(Infrared)フィルタ623b、集光部としての結像レンズ623c、結像レンズ623cを支持する鏡筒623d、結像レンズ623cを通過した赤外光の光路を90°屈折させて赤外CMOS64に導くプリズム623e、鏡筒623dおよびプリズム623eを支持するホルダ623f、プリズム623eと赤外CMOS64との間のギャップを所定値に保つスペーサ623gを備えている。
【0068】
符号画像検出部623では、赤外LED63から出射された赤外光は、拡散板623aによって拡散された後、媒体表面を照射する。そして、媒体上から反射された赤外光は、IRフィルタ623bにより赤外光以外の光が除外された後、結像レンズ623cにより集光され、プリズム623eにより光路を赤外CMOS64に向けて屈折されて赤外CMOS64に結像される。そして、赤外CMOS64により媒体上の符号画像が読み取られる。赤外CMOS64により読み取られた符号画像は、制御回路部626の制御回路61(図5参照)に送られる。なお、ペン本体部620の筐体621の赤外LED63および結像レンズ623cに対向する箇所には、赤外LED63から出射された赤外光を透過させるとともに、媒体から結像レンズ623cへ向かう反射光を透過させるための光透過部である開口部621bが設けられている。
【0069】
上述したように、本実施の形態におけるデジタルペン60においては、ペンチップ69をペン本体部620の軸心に対して傾け、その後方に継ぎ手部材622dを設け、ペンチップ69から筆圧検知スイッチ62に至る部分の形状を「く」の字状としている。そして、ペン本体部620の軸心に対して、ペンチップ69および継ぎ手部材622dとは反対側に、赤外LED63、結像レンズ623c、プリズム623e、赤外CMOS64などを配置している。また、赤外LED63を、出射される赤外光の光軸(図中矢印B参照)がペン本体部620の軸心に対して傾くように、配置している。付言すれば、赤外LED63を、ペン本体部620の軸心に対して所定の角度を有するように配置している。さらに付言すれば、赤外LED63を、ペンチップ69にほぼ沿うように、ペンチップ69が傾く方向とほぼ同じ方向に傾けて配置している。そして、IRフィルタ623b、結像レンズ623c、プリズム623eおよび赤外CMOS64を、ペン本体部620の軸心に近くなるように配置している。これらにより、筆記検知機能部622および符号画像検出部623を構成する部品が存在する部位の筐体621の外面を略円錐形状、つまり、筐体621をペン本体部620の軸心に直交する面で切断すると略円形状にするとともに、小径化を実現している。
【0070】
次に、操作表示部624について説明する。
図13は、操作表示部624の概略構成を示す図であり、(a)は、断面図を、(b)は、筐体621の内側を(a)のD方向に見た図である。なお、(b)においては、筐体621の形状のみを示している。
図13に示すように、操作表示部624は、基板624a、基板624a上に設けられた切替スイッチ624b、筐体621の外部からのユーザにより操作される操作部としての操作ボタン624c、デジタルペン60の動作態様などの情報を表示する表示部としての第1の表示部624f、第2の表示部624gを備えている。また、第1の表示部624fの外側(筐体の外面側)には、この第1の表示部624fが表示した色を筐体621の外部に表すための第1の導波部材624hが配置され、第2の表示部624gの外側には、この第2の表示部624gが表示した色を筐体621の外部に表すための第2の導波部材624jが配置されている。そして、基板624aは、固定ビス624kにより筐体621に固定されている。
【0071】
操作ボタン624cは、ユーザにより押される円形の操作部位624c1が筐体621に設けられた孔621cを介して筐体外部に露出し、その他の部位は筐体621の内部に位置するように配置されている。そして、筐体621の内部に、この操作ボタン624cがユーザにより所定量押圧された場合に基板624aに接触する接触部624dを備えている。また、操作ボタン624cは、筐体621の軸心方向には、筐体621の略中間位置に配置されており、この周辺の筐体621の一般的形状は略円筒形状である(図11参照)。そして、操作ボタン624cの操作部位624c1は、この筐体621の一般的形状である略円筒形状の外表面(この外表面を操作ボタン624c周辺の筐体621における「外面」という。)から出っ張らないように配置されている。そして、操作部位624c1周囲の筐体621をこの周辺の一般的形状である略円筒形状から凹ませ、操作部位624c1を筐体621の外部に露出させている。これにより、不意に操作ボタン624cが押されることを防止している。
【0072】
切替スイッチ624bは、1回のスイッチングが行われることでオフ状態からオン状態に切り替え設定を行うスイッチング部材である。そして、オン状態に設定されることで、媒体から読み取られた符号画像に基づく特定処理の実行を指示する信号を出力する。本実施の形態では、切替スイッチ624bがオン状態に設定されることにより、符号画像に基づく識別情報および位置情報に対応付けられた所定の情報源へのリンクを指示する信号が制御回路部626の制御回路61(図5参照)に送られる。
つまり、ユーザによって操作ボタン624cが押されると、操作ボタン624cは切替スイッチ624b自身が有する反発力に抗して押し下げられるとともに、切替スイッチ624bはオフ状態からオン状態に切り替えられる。これにより、制御回路部626の制御回路61に対して、符号画像に基づく識別情報および位置情報に対応付けられた所定の情報源へのリンクを指示する信号が送られる。そして、この信号と、読み取られた符号画像に基づく識別情報および位置情報が、通信回路66、通信装置70を介して、端末装置50に送られる。これにより、例えば、端末装置50におけるディスプレイに、識別情報および位置情報に対応付けられている所定の情報の表示が可能となる。なお、ユーザによって操作ボタン624cが押された際、操作ボタン624cは、切替スイッチ624bにより支持されるとともに、基板624aに接触する接触部624dによって支持される。
その後、ユーザによる操作ボタン624cの押圧が解除されると、操作ボタン624cは切替スイッチ624bからの反発力によって元の位置に戻されるとともに、切替スイッチ624bはオン状態からオフ状態に切り替えられる。これにより、所定の情報源へのリンクは解除される。
【0073】
第1の表示部624fおよび第2の表示部624gは、デジタルペン60の動作態様を色で表示することで表現するものであり、例えば、発光ダイオードである。そして、以下のようにデジタルペン60の動作態様に応じて表示させることを例示することができる。(1)例えば、第1の表示部624fを、緑色を発光する発光ダイオードとし、第2の表示部624gを、赤色を発光する発光ダイオードとする。そして、デジタルペン60が動作状態である場合に第1の表示部624fに緑色を発光させ、操作ボタン624cが押されて所定の情報源へのリンクを指示する状態になった場合に第2の表示部624gに赤色を発光させるようにする。(2)例えば、第1の表示部624fを、緑色を発光する発光ダイオードとし、第2の表示部624gを、緑色を発光する発光ダイオードと赤色を発光する発光ダイオードからなるユニットとする。そして、デジタルペン60が動作状態である場合に第1の表示部624fおよび第2の表示部624gに緑色を発光させ、操作ボタン624cが押されて所定の情報源へのリンクを指示する状態になった場合に第2の表示部624gに赤色を発光させるようにする。(3)第1の表示部624fおよび第2の表示部624gを、赤色、橙色、黄色、緑色、白色、青色および紫色の7色の発光ダイオードからなるユニットとする。そして、デジタルペン60が動作状態である場合に第1の表示部624fに7色が切り替わるように発光させ、操作ボタン624cが押されて所定の情報源へのリンクを指示する状態になった場合に第2の表示部624gに7色が切り替わるように発光させるようにする。
【0074】
第1の導波部材624hおよび第2の導波部材624jは、例えば透明のプラスチックである。そして、筐体621の内側から組み込まれている。より具体的には、図13に示すように、筐体621には、第1の導波部材624hが挿入される挿入孔621dと、第2の導波部材624jが挿入される挿入孔621eが設けられている。そして、筐体621の内側の挿入孔621dの周囲には円筒状のガイド621fが設けられており、挿入孔621eの周囲には円筒状のガイド621gが設けられている。そして、ガイド621fには、円筒状から切り欠かれて形成された溝621hが1箇所設けられており、ガイド621gには、円筒状から切り欠かれて形成された溝621iが2箇所設けられている。一方、第1の導波部材624hは、基本的には、径が異なる円柱が2段重ねられた立体であり、円柱状の第1の表示部624fを挿入するための円柱状の凹部と、溝621hに嵌めるための略直方体の凸部を1つ有している。また、第2の導波部材624jは、基本的には、径が異なる円柱が2段重ねられた立体であり、円柱状の第2の表示部624gを挿入するための円柱状の凹部と、溝621iに嵌めるための略直方体の凸部を2つ有している。そして、第1の導波部材624hが挿入孔621dに挿入されるとともに溝621hに嵌められて組み込まれ、第2の導波部材624jが挿入孔621eに挿入されるとともに溝621iに嵌められて組み込まれる(図13(a)参照)。
【0075】
なお、溝621h,621iは、それぞれ導波部材624h,624jが筐体621に対して回転することを防止するために設けられている。また、導波部材624h,624jが異なる仕様(例えば、光透過性を異ならせるために材質が違うなど)の場合には、本実施の形態のように溝621h,621iの数を異ならせ、それに対応する凸部を導波部材624h,624jに設けることにより、導波部材624h,624jが、入れ替わって組み込まれることを防止することができる。なお、導波部材624h,624jが同じ仕様のものである場合には、溝621h,621iの数は同じでもよいし、導波部材624h,624jが筐体621に対して回転しない場合には溝621h,621iを必ずしも設ける必要はない。
【0076】
次に、キャップ位置検出機能部625およびキャップ610について説明する。
図14は、キャップ位置検出機能部625およびキャップ610の概略構成を示す図である。
上述したとおり、キャップ位置検出機能部625は、ペン本体部620の規定の位置にキャップ610が取り付けられたか否かを検出する機能部である。
キャップ位置検出機能部625は、基板625aを備えており、基板625a上には、切替スイッチ625bが設けられている。また、キャップ位置検出機能部625は、筐体621の軸心方向の一端部に突出部625c1を有する操作ボタン625cを、突出部625c1が筐体621の外面から突出可能になるように備えている。
基板625aは、筐体621に固定されており、操作ボタン625cの筐体621軸心方向の突出部625c1側とは反対側の端部は、筐体621に固定されている。そして、操作ボタン625cは、突出部625c1が筐体621の外側から押されることにより撓み、筐体621の外面から突出するのを妨げられ、切替スイッチ625bを押す。
【0077】
そして、ペン本体部620にキャップ610が装着されていない場合、操作ボタン625cの切替スイッチ625b側の端部は、筐体621の外面から突出するように位置する。また、キャップ610の内周面の円周方向における所定の位置に設けられた溝部616(詳細は後述)の位置が操作ボタン625cの突出部625c1の位置と一致するように(突出部625c1が溝部616に嵌るように)キャップ610がペン本体部620に装着された場合、即ちキャップ610がペン本体部620の規定の位置に取り付けられた場合、操作ボタン625cの突出部625c1は、筐体621の外面から突出するように位置する。これらの場合においては、操作ボタン625cは切替スイッチ625bを押さないため、切替スイッチ625bはオフ状態に設定される。そして、切替スイッチ625bがオフ状態に設定されることにより、符号画像検出部623は媒体上の符号画像を読み取ることができる状態に設定される。つまり、符号画像検出部623の作動が許容される。
【0078】
一方、キャップ610の内周面に設けられた溝部616の位置が操作ボタン625cの突出部625c1の位置と一致しないように(突出部625c1が溝部616に嵌らないように)キャップ610がペン本体部620に装着された場合、即ちキャップ610がペン本体部620に取り付けられてはいるが規定の位置に取り付けられていない場合、操作ボタン625cの突出部625c1は、キャップ610の内周面により筐体621の外面から突出するのを妨げられ、突出しないように位置する。その状態においては、操作ボタン625cが切替スイッチ625bを押し、切替スイッチ625bはオン状態に設定される。そして、切替スイッチ625bがオン状態に設定されると、制御回路部626により、符号画像検出部623は媒体上の符号画像を読み取ることができない状態に設定される。つまり、符号画像検出部623の作動が許容されない。
【0079】
このように、本実施の形態におけるデジタルペン60においては、符号画像検出部623の作動を制御する制御手段としての制御回路61は、キャップ610の装着位置を検知する位置検知手段としてのキャップ位置検出機能部625から、装着位置が規定の位置以外の位置であるという検知結果を得た場合には符号画像検出部623の作動を許容しないようにし、当該検知結果を得ないときにはキャップ610が装着されているか否かにかかわらず符号画像検出部623の作動を許容する。
【0080】
次に、キャップ610について説明する。
キャップ610は、キャップ本体部611と、クリップ612と、クリップ612をキャップ本体部611に固定する固定ビス613と、フィルタ614と、包囲部材615と、溝部616とを備えている。
キャップ本体部611は、略円筒状に形成され、軸方向の両端部は開口している。そして、ペン本体部620が挿入されるキャップ本体部611の一方の端部側から他方の端部側に向かって径が小さくなるように形成されている。
【0081】
クリップ612は、同図に示すように、キャップ本体部611の軸方向に沿って配置されキャップ本体部611の外周面に対向配置されたクリップ片としての対向片612aと、対向片612aの一端部側に接続して設けられ対向片612aの配置方向と交差する関係で配置される斜辺部612bとを備える。ここで、斜辺部612bは、キャップ本体部611の軸心に対して所定の傾きを有して配置されている。さらにクリップ612は、斜辺部612bの配置方向と交差する関係で配置されるとともにキャップ本体部611の軸心と略直交する関係で配置された平坦部612cを備えている。さらに、クリップ612は、斜辺部612bおよび平坦部612cに、赤外LED63からの赤外光を媒体に対して照射可能とし、媒体からの反射光を赤外CMOS64にて受光可能とする光透過部としての開口部612eを備えている。
【0082】
図15は、キャップ610の外面を、ペン本体部620の軸心方向に見た図である。但し、クリップ612の形状を分かり易く示すために、フィルタ614と包囲部材615を省略して示している。
上述のとおり、上記開口部612eは、斜辺部612bから平坦部612cにかけて形成されている。そして、開口部612eは、フィルタ614が取り付けられる第1の開口部612nと、包囲部材615が取り付けられる第2の開口部612pとから構成される。これらの開口部は各々独立して設けられているわけではなく、連続して形成され単一の開口部を形成している。
【0083】
そして、第1の開口部612nは、赤外LED63から出射される赤外光を遮らない大きさを有している。なお、第1の開口部612nにおける赤外光の透過領域を図中破線で示している。また、第1の開口部612nは、斜辺部612bの幅方向における中央部に配置される。このため、本実施の形態における斜辺部612bは、第1の開口部612nの両側に、側片部612tを備えている。一方、第2の開口部612pは、後で詳述する包囲部材615の断面形状に沿った形状をしており、第1の開口部612n側を底部とした略ドーム状の形状となっている。また、第1の開口部612nと第2の開口部612pとの間に、開口部612e内に延出する延出部612uが設けられている。
なお、クリップ612の上記対向片612aは、キャップ本体部611の外周面に対向するように軸心方向に所定の幅を持って形成されており、キャップ本体部611との間に形成された間隙に配置された被配置物をキャップ本体部611とともに挟み込み、この被配置物に対してデジタルペン60を固定するものである。
【0084】
フィルタ614は、クリップ612に設けられた上記開口部612eの第1の開口部612nを塞ぐ形で取り付けられ、キャップ610の内部への埃や水分等の進入を抑制している。なお、フィルタ614は、上記赤外光および反射光を透過可能な材質で構成される。
包囲部材615は、クリップ612に取り付けられるとともに、開口部612eの第2の開口部612pを塞ぐ形で取り付けられている。また、ペンチップ69のペン軸pに沿うようにクリップ612に対して進退可能に取り付けられている。
【0085】
次に、包囲部材615について説明する。
図16は、包囲部材615の形状を詳細に示した図であり、図16(a)は包囲部材615を先端側から示した斜視図であり、図16(b)は包囲部材615を後端側から示した斜視図である。また、図16(c)は同図(b)における矢印E方向から見た図である。
【0086】
図16に示すように、包囲部材615は、略円筒状に形成されるとともに側面の一部が面削ぎされた形状となっている。即ち、包囲部材615は、略円筒状に形成されるとともに側面の一部に軸方向に沿った平坦部を備えている。詳細に説明すると、図16(a)、(b)に示すように、包囲部材615は、ペンチップ69の先端が収納される空洞を内部に有し略筒状に形成される本体部615aと、本体部615aの一端部側に設けられペンチップ69の先端部が突き当てられる突き当て部615bと、突き当て部615bの周囲に配置され本体部615aよりも外方に突出する第1の突出部615cとを備えている。
【0087】
また、包囲部材615は、対向して配置された移動片615f,615gを備える。そして、移動片615fと移動片615gとの間には、本体部615aの軸方向に沿って形成された第1の切り欠き部615dおよび第2の切り欠き部615eが設けられている。さらに、包囲部材615は、移動片615f,615gの各々の端部に、外方に突出した第2の突出部615h、第3の突出部615jを備える。さらに、包囲部材615は、図16(c)に示すように、先端側から後端側にかけて、その外周面に、面削ぎ状の形状をなす第1の平坦部615kを備える。また、包囲部材615は、上記移動片615f,615gに、後端部から先端部方向に向かって、面削ぎ状の形状をなす第2の平坦部615mを備える。
【0088】
ペン本体部620の小径化を図るためには、赤外LED63を極力、ペン本体部620の軸心に寄せて配置することが好ましいが、赤外LED63を軸心に寄せて配置した場合には、赤外光の光路と包囲部材615とが干渉してしまうおそれがある。そこで、本実施の形態では、包囲部材615の一部を面削ぎ状となす第1の平坦部615kを設け、赤外LED63を軸心に寄せつつ赤外光の光路と包囲部材615との干渉を防止している。なお、包囲部材615は、例えば断面が矩形状となるように形成することもできる。但し、この場合は、上述した包囲部材615の進退がうまく行われないおそれもある。そこで、本実施の形態における包囲部材615は、基本形状を円筒状としその一部に平坦部を形成することで、進退の円滑化とペン本体部620の小径化を図っている。
【0089】
上述のように構成された包囲部材615は、その後端側から第2の開口部612pに挿入される。そして、挿入後においては、第1の突出部615cと第2の突出部615hとの間、第1の突出部615cと第3の突出部615jとの間に、第2の開口部612pにおける縁部が位置するようになる。これにより包囲部材615は、クリップ612(キャップ610)に対し進退可能に支持される。なお、クリップ612の延出部612uにより、包囲部材615は、第1の開口部612n方向への移動が規制される。
【0090】
なお、包囲部材615は、クリップ612に対して進退可能ではなく、一定位置に取り付けることもできる。但しこの場合、筆記動作等を行っていないにも関わらずペンチップ69が包囲部材615により押圧され、筆圧検知スイッチ62がオン状態となるおそれがある。そして、筆圧検知スイッチ62が誤動作するおそれもある。即ち、ペンチップ69などの各種部材は製造公差等を有するため、ペンチップ69の筐体621からの突出量がデジタルペン60毎に各々異なることが想定される。そして、ペンチップ69の突出量が大きい場合には、ペンチップ69が包囲部材615により押圧されてしまい、筆記動作等を行っていないにも関わらず筆圧検知スイッチ62がオン状態となってしまう。そこで、本実施の形態では、上記のとおり包囲部材615を進退可能に取り付けている。
また、この包囲部材615は、弾性変形可能な部材(例えばゴム部材)により構成されており、ペンチップ69の先端部を保護する。また、包囲部材615は、弾性変形可能な部材により構成されているために容易に変形し、クリップ612に対して簡易に取り付けることが可能となっている。
【0091】
次に、溝部616について説明する。
図17が、溝部616の形状を詳細に示した図であり、図17(a)は、溝部616周辺の一部断面図を示し、図17(b)は、図17(a)におけるC−C線における断面を示している。
図17に示すように、溝部616は、キャップ本体部611の後端部側の内面の円周方向における所定の範囲に、キャップ本体部611の軸方向に沿って形成されている。より具体的には、本実施の形態では、上述したように、ペン本体部620のその軸心に直交する面での断面形状は、その軸心を中心とする略円形状であるので、キャップ610の内面を、ペン本体部620の外面に沿うように軸心に直交する面での断面形状がその軸心を中心とする略円形状となるように形成している。そして、その内面の円周方向における所定の範囲に凹部を設けて溝部616を形成している。
【0092】
一方、溝部616が設けられているキャップ610の内面の円周方向における所定の範囲以外の内面は、軸心に直交する面での断面形状がその軸心を中心とする略円形状である。ゆえに、キャップ610は、ペン本体部620に対して回転可能であり、円周方向のいずれの位置においても装着され得る。これにより、キャップ610とペン本体部620との位置合わせを特に行うことなく、キャップ610をペン本体部620に固定することができる。
【0093】
そして、図17に示すように、溝部616の円周方向における位置が操作ボタン625cの突出部625c1の位置と一致するように(突出部625c1が溝部616に嵌るように)キャップ610がペン本体部620に装着された場合、操作ボタン625cの突出部625c1は、筐体621の外面から突出する。かかる場合には、操作ボタン625cと切替スイッチ625bの間に隙間が生じるため、切替スイッチ625bはオフ状態に設定され、符号画像検出部623は媒体上の符号画像を読み取ることができる状態、すなわち、符号画像検出部623の作動が許容される状態に設定される。
【0094】
溝部616の円周方向における位置が操作ボタン625cの突出部625c1の位置と一致しないように(突出部625c1が溝部616に嵌らないように)キャップ610がペン本体部620に装着された場合、操作ボタン625cの突出部625c1は、キャップ620の内面により筐体621の外面から突出するのを妨げられる。かかる場合においては、操作ボタン625cが撓んで切替スイッチ625bを押し、切替スイッチ625bはオン状態に設定される。そして、切替スイッチ625bがオン状態に設定されることにより、符号画像検出部623は媒体上の符号画像を読み取ることができない状態、つまり、符号画像検出部623の作動が許容されない状態に設定される。
【0095】
言い換えれば、キャップ610がペン本体部620に装着されたときに、操作ボタン625cの突出部625c1が溝部616に嵌り筐体621の外面から突出する場合には、キャップ610はペン本体部620の規定の位置に装着されていることになり、切替スイッチ625bはオフ状態に設定される。一方、キャップ610がペン本体部620に装着されたときに、操作ボタン625cの突出部625c1が溝部616に嵌らずにキャップ本体部611の内面に押圧され筐体621の外面から突出しない場合には、キャップ610はペン本体部620の規定の位置以外の位置に装着されていることになり、切替スイッチ625bはオン状態に設定される。
【0096】
なお、溝部616が形成されている円周方向における所定の位置とは、キャップ610がペン本体部620の規定の位置に装着されているときに、キャップ610の第1の開口部612nが赤外LED63から出射される赤外光および媒体からの反射光を通す位置である。すなわち、キャップ610がペン本体部620の規定の位置に装着されているときには、赤外LED63から照射された赤外光は第1の開口部612nを通り媒体に至るとともに媒体からの反射光は第1の開口部612nを通り結像レンズ623c,プリズム623eを介して赤外CMOS64にて受光される。一方、キャップ610がペン本体部620の規定の位置以外の位置に装着されているときには、たとえ赤外LED63から赤外光が照射されたとしても(実際には切替スイッチ625bがオン状態に設定されるため赤外光は照射されない)、第1の開口部612nが赤外光の経路上にないため、キャップ610は赤外光を通さない。
【0097】
次に、筐体621について説明する。
図18は、筐体621の外観図である。
上述したように、筐体621は、図示したA−A線を軸心とする略円筒状であり、先端側が先細りした形状となっている。そして、筐体621は、筐体の軸心A−Aを通る面を開口面として二つに分割されており、図18に示した状態で、下側の筐体である第1の筐体601と上側の筐体である第2の筐体602を有する。図18は、筐体621をこれら二つの筐体を分離させた状態で示している。
【0098】
第1の筐体601は、先端側にペンチップ69を往復動可能に支持する支持軸601aと、光透過部である開口部621bと対向する位置に設けられた支持軸601aの後端部から後端側に延びる傘部601bを有している。つまり、第1の筐体601の先端部は、基本的には先端側に向かって径が小さくなる薄肉円錐であり、その先端側はペンチップ69を通すために開口しているとともに、後端側は円周方向の半分が開口している。また、その薄肉円錐の内部には、ペンチップ69を支持するための支持軸601aが付加されており、その支持軸601aの後端側端部と連続する薄肉円錐の部分が傘部601bである。また、薄肉円錐の下側の部分に開口部621bが形成されている。また、第1の筐体601の第2の筐体602との分割面(開口面)側の開口部601cには、第2の筐体602とスナップフィットで固定するための締結部601dが分割面から第2の筐体602の方へ突出するように複数(本実施の形態では4つ)設けられている。さらに、この開口部601cの縁部には、開口部601cに沿うように、分割面から第2の筐体602の方へ突出する複数の突出部601eが、筐体内部に光が入り込み撮像処理に悪影響を及ぼすことを抑制するために設けられている。
また、第1の筐体601には、回路基板64aを固定するための固定ビス用のボス(不図示)、制御基板626aを固定するための固定ビス用のボス(不図示)、ホルダ623fを固定するためのリブ(不図示)が設けられている。さらに、USBジャック626bを、筐体の軸心方向に直交する方向に固定するためのリブ601f(図19参照)および筐体の軸心方向の最後端から抜けないようにするためのストッパー601g(図19参照)が設けられている。
また、筐体内に光が入り込むことを抑制するために第1の筐体601の内側を黒くすることが好適である。黒くする手段としては、筐体自体を黒色の材料で成形する、あるいは黒色の塗装を施すなどを例示することができる。
【0099】
一方、第2の筐体602は、その先端側の端部に、第1の筐体601の傘部601bの後端側開口部と筐体の軸心と直交する方向に重なり合う薄肉部602a(図12も参照)を有している。そして、この薄肉部602aが、傘部601bの後端側開口部に設けられた薄肉部601h(図12も参照)の内側に入り込むようになっている。また、第2の筐体602には、上述したように、操作ボタン624cを通すための孔621c(図13参照)と、第1の導波部材624hが挿入される挿入孔621d(図13参照)および第2の導波部材624jが挿入される挿入孔621e(図13参照)が設けられている。また、第2の筐体602には、基板624aを固定するための固定ビス624k用のボス(不図示)と、USBジャック626bを筐体の軸心方向に直交する方向に固定するためのリブ(不図示)および筐体の軸心方向の最後端から抜けないようにするためのストッパー(不図示)が設けられている。
また、第1の筐体601と同様に、筐体内に光が入り込むことを抑制するために第2の筐体602の内側を黒くすることが好適である。
【0100】
そして、第1の筐体601と第2の筐体602を組み立てる際には、第2の筐体602の薄肉部602aを傘部601bの薄肉部601hの内側に入り込ませて位置合わせを行うとともに、第2の筐体602全体を第1の筐体601に対して押し付ける。すると、第1の筐体601の締結部601dがばねとして作用し、第2の筐体602を固定する。そして、その後、薄肉円筒の円環部材603(図14参照)を、筐体621の外部から、第1の筐体601の外面に形成された溝601iと第2の筐体602の外面に形成された溝602bから構成される溝621jに嵌め込む。この円環部材603を溝621jに嵌め込むことにより、第1の筐体601と第2の筐体602の軸心と直交する方向への変位をさらに規制することができる。なお、この円環部材603の内周面に、この内周面から突出する突起603a(図14参照)を、複数、例えば第1の筐体601側の面に2つ、第2の筐体602側の面に1つ設け、筐体601,602に、これら突起603aを受ける孔あるいは凹部を突起603aに対応する数だけ設けることが好適である。そうすることで、突起603aが第2の筐体602の孔あるいは凹部に嵌ることで円環部材603と第2の筐体602との位置を固定し、突起603aが第1の筐体601の孔あるいは凹部に嵌ることで、第1の筐体601と第2の筐体602を固定することができる。
【0101】
また、円環部材603にキャップ610のストッパーとしての機能を持たせることが好適である。つまり、円環部材603の筐体の軸心方向の位置を、キャップ610の筐体の軸心方向への移動を規制する位置とし、キャップ610が深く装着されすぎないようにする。これにより、ペンチップ69が不意に押されて誤作動してしまうことを抑制することができる。
【0102】
図19は、第2の筐体602を組み付ける前の、デジタルペン60の内部を示した図である。
上述したようにデジタルペン60は、筐体621が筐体の軸心A−Aを通る面で二つに分割されているため、デジタルペン60を組み立てる際には、以下に述べるようにして組み立てることができる。つまり、第1の筐体601を、例えば作業台に、第2の筐体602との分割面側の開口部601cが上になるように置き、先ず、ホルダ623fを取り付け、ペンチップ支持部材622aを挿入する。そして、回路基板64a、基板625a、制御基板626aなどを固定ビスで固定するとともに、USBジャック626bを取り付ける。そして、その後、第2の筐体602を上述したようにして第1の筐体601に固定し、円環部材603を嵌め込む。
このように、デジタルペン60は、筐体621が筐体の軸心A−Aを通る面で二つに分割されているため、内蔵部品を組み込むための開口部である開口部601cの開口面積が大きくなっており、容易に内蔵部品を組み込むことができる。また、開口部601cの開口面積が大きいため、回路基板64a、制御基板626aなどの面積を大きくすることができるとともに、これらに接続された配線も筐体に収納しやすい。
また、第1の筐体601の先端部には、傘部601bを設け、その内側に第2の筐体602の先端側の端部が入り込んでいるので、筐体の軸心方向に直交する方向の剛性が高まっている。それゆえ、デジタルペン60の先端部にペンチップ69、赤外LED63、拡散板623a、IRフィルタ623b、結像レンズ623cなどの部品が集まっていたとしても、これらの反発力で二つの筐体601,602が分離することを防止することができる。これは、ペンチップ支持部材622aが、ペンチップ69、赤外LED63、拡散板623a、IRフィルタ623bを支持していることも寄与している。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本実施の形態の筆跡情報管理システムの構成例を示した図である。
【図2】文書サーバの機能構成の一例を示したブロック図である。
【図3】符号画像を構成する画像等の一例を示した図である。
【図4】識別情報サーバの機能構成の一例を示したブロック図である。
【図5】デジタルペンの機能構成の概略を説明する図である。
【図6】制御回路の機能構成例を示したブロック図である。
【図7】筆跡情報管理システムにて印刷文書が生成される際の動作の一例を示したシーケンス図である。
【図8】筆跡情報を登録する際の識別情報サーバおよび文書サーバの動作の一例を示したシーケンス図である。
【図9】コンピュータのハードウェア構成を示した図である。
【図10】デジタルペンの全体構成を説明する図であって、(a)はデジタルペンの外観斜視図、(b)はデジタルペンのキャップの外観斜視図、(c)はデジタルペンのペン本体部の外観斜視図である。
【図11】ペン本体部の構成を示す断面図である。
【図12】筆記検知機能部および符号画像検出部の構成を示す図である。
【図13】操作表示部の概略構成を示す図であり、(a)は断面図を、(b)は筐体の内側を(a)のD方向に見た図である。
【図14】キャップ位置検出機能部およびキャップの概略構成を示す図である。
【図15】キャップの外面を、ペン本体部の軸心方向に見た図である。
【図16】包囲部材の形状を詳細に示した図であり、(a)は包囲部材を先端側から示した斜視図であり、(b)は包囲部材を後端側から示した斜視図であり、(c)は(b)における矢印E方向から見た図である。
【図17】溝部の形状を詳細に示した図であり、(a)は溝部周辺の一部断面図を示し、(b)は(a)におけるC−C線における断面を示している。
【図18】筐体の外観図である。
【図19】第2の筐体を組み付ける前の、デジタルペンの内部を示した図である。
【符号の説明】
【0104】
10…端末装置、20…文書サーバ、30識別情報サーバ、40…画像形成装置、50…端末装置、60…デジタルペン、61…制御回路、62…筆圧検知スイッチ、63…赤外LED、64…赤外CMOS、64a…回路基板、66…通信回路、69…ペンチップ、70…通信装置、601…第1の筐体、602…第2の筐体、603…円環部材、610…キャップ、611…キャップ本体部、612…クリップ、612a…対向片、620…ペン本体部、621…筐体、622…筆記検知機能部、622a…ペンチップ支持部材、623…符号画像検出部、623a…拡散板、623b…IRフィルタ、623c…結像レンズ、623d…鏡筒、623e…プリズム、623f…ホルダ、623g…スペーサ、624…操作表示部、626a…制御基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して光を照射する照射部と、
前記媒体からの反射光を集光する集光部と、
前記集光部を収容する円筒状の筐体と、
を含み、
前記筐体は、当該筐体の軸心方向に伸びる面を開口面として分割された前記反射光を透過させる光透過部を有する第1の筐体と、当該第1の筐体に対向する第2の筐体と、を有することを特徴とする電子筆記具。
【請求項2】
前記筐体を二つに分割する面は、前記筐体の軸心を通る面であることを特徴とする請求項1記載の電子筆記具。
【請求項3】
前記集光部にて集光された光を屈折させるプリズムと、
前記プリズムにて屈折された光を受光する撮像素子が取り付けられた回路基板と、
をさらに有し、
前記筐体を二つに分割する面は、前記回路基板に平行な面であることを特徴とする請求項1または2記載の電子筆記具。
【請求項4】
前記第1の筐体は、前記媒体への筆記が可能な筆記部先端側に当該筆記部を往復動可能に支持する支持軸と、前記光透過部と対向する位置に設けられた当該支持軸の後端部から後端側に延びる傘部と、を有し、
前記第2の筐体の先端側の端部は、前記傘部の後端側開口部と前記筐体の軸心と直交する方向に重なり合うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項5】
前記媒体への筆記が可能な筆記部を往復動可能に支持するとともに前記照射部を支持する支持部材をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項6】
前記第1の筐体と前記第2の筐体は、スナップフィットで固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項7】
前記第1の筐体と前記第2の筐体の前記筐体の軸心と直交する方向への変位を規制する円環部材をさらに有し、
前記円環部材は、媒体への筆記が可能な筆記部の先端を覆うキャップの前記筐体の軸心方向への移動を規制することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項8】
前記第1の筐体または前記第2の筐体の前記開口面における開口部に前記筐体の軸心と平行に配置された制御回路が実装された制御基板をさらに有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項9】
前記第1の筐体または前記第2の筐体の前記開口面における開口部の縁部に、当該開口部に沿うように他方の筐体側に突出する突出部を有すること特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項10】
少なくとも前記第1の筐体および前記第2の筐体のいずれかの筐体の内側は黒色であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項11】
軸方向に伸びる面を開口面とする第1の筐体と、当該開口面にて当該第1の筐体に連結される第2の筐体とに分割される筐体と、
前記第1の筐体に設けられ媒体からの反射光を集光する集光部と、
前記第1の筐体に設けられ前記集光部にて集光された光を屈折させるプリズムと、
前記第1の筐体に取り付けられ、前記プリズムにて屈折された光を受光する撮像素子が取り付けられた回路基板と、
を有することを特徴とする電子筆記具。
【請求項12】
前記開口面は、前記筐体の軸心を通る面であることを特徴とする請求項11記載の電子筆記具。
【請求項1】
媒体に対して光を照射する照射部と、
前記媒体からの反射光を集光する集光部と、
前記集光部を収容する円筒状の筐体と、
を含み、
前記筐体は、当該筐体の軸心方向に伸びる面を開口面として分割された前記反射光を透過させる光透過部を有する第1の筐体と、当該第1の筐体に対向する第2の筐体と、を有することを特徴とする電子筆記具。
【請求項2】
前記筐体を二つに分割する面は、前記筐体の軸心を通る面であることを特徴とする請求項1記載の電子筆記具。
【請求項3】
前記集光部にて集光された光を屈折させるプリズムと、
前記プリズムにて屈折された光を受光する撮像素子が取り付けられた回路基板と、
をさらに有し、
前記筐体を二つに分割する面は、前記回路基板に平行な面であることを特徴とする請求項1または2記載の電子筆記具。
【請求項4】
前記第1の筐体は、前記媒体への筆記が可能な筆記部先端側に当該筆記部を往復動可能に支持する支持軸と、前記光透過部と対向する位置に設けられた当該支持軸の後端部から後端側に延びる傘部と、を有し、
前記第2の筐体の先端側の端部は、前記傘部の後端側開口部と前記筐体の軸心と直交する方向に重なり合うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項5】
前記媒体への筆記が可能な筆記部を往復動可能に支持するとともに前記照射部を支持する支持部材をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項6】
前記第1の筐体と前記第2の筐体は、スナップフィットで固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項7】
前記第1の筐体と前記第2の筐体の前記筐体の軸心と直交する方向への変位を規制する円環部材をさらに有し、
前記円環部材は、媒体への筆記が可能な筆記部の先端を覆うキャップの前記筐体の軸心方向への移動を規制することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項8】
前記第1の筐体または前記第2の筐体の前記開口面における開口部に前記筐体の軸心と平行に配置された制御回路が実装された制御基板をさらに有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項9】
前記第1の筐体または前記第2の筐体の前記開口面における開口部の縁部に、当該開口部に沿うように他方の筐体側に突出する突出部を有すること特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項10】
少なくとも前記第1の筐体および前記第2の筐体のいずれかの筐体の内側は黒色であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電子筆記具。
【請求項11】
軸方向に伸びる面を開口面とする第1の筐体と、当該開口面にて当該第1の筐体に連結される第2の筐体とに分割される筐体と、
前記第1の筐体に設けられ媒体からの反射光を集光する集光部と、
前記第1の筐体に設けられ前記集光部にて集光された光を屈折させるプリズムと、
前記第1の筐体に取り付けられ、前記プリズムにて屈折された光を受光する撮像素子が取り付けられた回路基板と、
を有することを特徴とする電子筆記具。
【請求項12】
前記開口面は、前記筐体の軸心を通る面であることを特徴とする請求項11記載の電子筆記具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−181520(P2009−181520A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22133(P2008−22133)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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