説明

電子装置のための耐久性ガラスハウジング/エンクロージャ

本発明は、ガラス材料を含み、電子装置ハウジング/エンクロージャまたは保護カバーとしての使用に適切なガラス物品に関する。特に、以下の特性を示すイオン交換されたガラスを含むハウジング/エンクロージャ/カバー:(1)15MHzから3.0GHzまでの周波数範囲において0.03未満の損失正接により定められるラジオおよびマイクロ波周波数透明性;(2)赤外線透明性;(3)0.6MPa・m1/2より大きい破壊靭性;(4)350MPaより大きい4点曲げ強度;(5)少なくとも450kgf/mmのビッカース硬度および少なくとも5kgfのビッカース中央/放射亀裂開始限界;(6)約50から100GPaの間のヤング率;(7)2.0W/m℃未満の熱伝導率;および(8)以下の特性の少なくとも1つ:(i)20μmより大きい層の深さ(DOL)および400MPaより大きい圧縮応力を有する圧縮表面層、または(ii)20MPa以上の中央張力。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2008年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/090719号に35U.S.C.§119(e)の下で優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、電子装置のための耐久性ハウジングまたはエンクロージャとして使用できるガラス材料に関する。詳細には、本発明は、電子装置のための耐久性ハウジングまたはエンクロージャとしての使用に適切な、高強度、低熱伝導率、および近赤外線、ラジオおよびマイクロ波周波数−透明性を有するイオン交換されたガラス物品に関する。
【背景技術】
【0003】
過去10年において、ラップトップ、PDA、メディアプレイヤー、携帯電話等のようなポータブル電子装置(しばしば「ポータブルコンピュータ装置」と称される)は、小さく、軽く、強力になってきた。これらの小さい装置の開発および有用性に寄与する1つの要因は、装置の電子部品をできるだけ小さいサイズに縮小しながら同時にそのような部品の出力および/または作業速度を増加する製造メーカの能力である。しかしながら、より小さく、より軽く、より強力な装置への傾向は、ポータブルコンピュータ装置のいくつかの部品のデザインに関して継続的課題を提示する。
【0004】
ポータブルコンピュータ装置のデザインに関する1つの特有の課題は、装置の様々の内部部品を収納するために使用されるエンクロージャである。このデザインの課題は通常、2つの相反するデザインの目的−エンクロージャをより軽くより薄くする好ましさ、およびエンクロージャをより強くより硬くする好ましさ−から生じる。より厚くより重いより厚いプラスチック構造およびより多くの留め具を通常使用するより強くより硬いエンクロージャと対照的に、通常は薄いプラスチック構造を使用し留め具をほとんど使用しない、より軽いエンクロージャは、より柔軟である傾向があり、引っかき傷がつきやすく、曲がるおよびたわむ傾向がより大きい。残念ながら、より強くより硬い構造の重量の増加により、ユーザの不満が生じるかもしれず、より軽い構造の曲がり/たわみによりポータブルコンピュータ装置の内部パーツに損傷が生じるかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のエンクロージャまたはハウジングに伴う上記の問題に鑑みて、ポータブルコンピュータ装置のための改良されたエンクロージャまたはハウジングが必要とされる。特に、既存のエンクロージャデザインよりも、より費用効率が良く、より小さく、より軽く、より強く、より美的に魅力的なエンクロージャが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施の形態において、本発明は、無線通信が可能なポータブル電子装置に関する。このポータブル電子装置は、電子装置の内部の演算部品を囲むおよび/または保護するエンクロージャ/ハウジングまたは保護カバーを含む。このエンクロージャ/ハウジング/カバーは、それを通して無線通信を可能にするガラス材料から成る。無線通信は、例えば赤外線(IR)、RFおよびマイクロ波通信に対応してもよく、さらにガラス材料は、IR、マイクロ波およびラジオ−透明性でもよく、それによってそれを通して無線通信を可能にする。
【0007】
本発明はさらに、ポータブル電子装置の部品を収納する、囲むまたは覆うのに適切な物品に関し、この物品は、20μm以上の層の深さ(DOL)を有する圧縮層を示すイオン交換されたガラスを含む。ガラス材料はさらに、電子装置ハウジング/エンクロージャ/カバーとしての使用に特に適切にならしめるある特性を示す。詳細には、ガラスをハウジング/エンクロージャ/カバーとしての使用に適切にする特性は、以下を含む:(1)15MHzから3.0GHzまでの周波数範囲において0.03未満の損失正接により定められるラジオおよびマイクロ波周波数透明性;(2)赤外線透明性;(3)0.6MPa・m1/2より大きい破壊靭性;(4)350MPaより大きい4点曲げ強度;(5)少なくとも450kgf/mmのビッカース硬度および少なくとも5kgfのビッカース中央/放射亀裂開始限界(Vicker’s median/radial crack initiation threshold);(6)約50から100GPaの間のヤング率;(7)2.0W/m℃未満の熱伝導率;および(8)以下の特性の少なくとも1つ:(i)20μmより大きい層の深さ(DOL)および400MPaより大きい圧縮応力を有する圧縮表面層または(ii)20MPa以上の中央張力。
【0008】
ある実施の形態において、ガラス物品ハウジング/エンクロージャまたはカバーの厚さは2mm未満であり、25対1より大きいアスペクト比を示す(すなわち、厚さよりも25倍より大きい長さ、幅、または直径の最大寸法)。
【0009】
本発明のイオン交換されたガラス物品は、例えば携帯電話および他の無線通信可能な電子装置、音楽プレイヤー、ノートブックコンピュータ、PDA、ゲームコントローラ、コンピュータ「マウス」、電子ブックリーダおよび他の装置のような様々の家庭用電子物品に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に記載されるように、より費用効率が良く、より小さく、より軽く、より強く、美的により魅力的なハウジング、エンクロージャまたは保護カバーの生産の必要性は、例えば携帯電話、音楽プレイヤー、ノートブックコンピュータ、ゲームコントローラ、コンピュータ「マウス」、電子ブックリーダおよび他の装置のような家庭用電子物品のための外殻またはエンクロージャ/ハウジング/カバーとしての耐久性ガラス物品の使用により満たされる。これらのガラス材料は、プラスチックおよび金属のような既存の材料に対して、重量および/または衝撃損傷(例えばへこみ)および引っかきへの抵抗性のような特定の利点を有する。さらに、ここに記載されるガラス材料は、耐久性であるだけでなく、ハウジング/エンクロージャ/カバー、特に金属性のハウジング/エンクロージャに現在使用される材料の多くと異なり、ガラス材料の使用は、無線通信を妨害しない。
【0011】
ここで用いたように、「エンクロージャ」および「ハウジング」および「カバーまたは保護カバー」なる用語は、交換可能に使用される。また、ここで用いたように、「本発明による組成物は、バッチベースで酸化物としてのモルパーセントで、以下から実質的に成る」という言葉遣いは、ガラスを調製するために使用される材料中に、鉄、ニッケル、コバルト、および他の成分のような不純物が存在してもよいが、色について所望でない限り、ガラス組成物を形成するために含まれるまたは故意に加えられると理解されるものではないことを意味する。
【0012】
ポータブル電子装置の部品を収納する/囲むまたは保護する/覆うための使用に適切なガラス材料は、プラスチックおよび他の非アルカリガラスベースのハウジング/エンクロージャ/カバーと比較すると特に、このハウジング/エンクロージャ/カバー用途のために、これらの種類のガラスが通常十分な化学的および機械的耐久性を有するという事実によって、好ましくはアルカリアルミノシリケートガラスから成る;以下、エンクロージャという用語は、ハウジング、エンクロージャまたは保護カバーを覆うことを意図する。
【0013】
選択される材料は通常、ラジオおよびマイクロ波周波数透明性、4点曲げ強度、硬度/ヤング率、硬さ、亀裂開始限界、熱伝導率、圧縮層の深さ(DOL)、表面圧縮応力および中央張力を含むがこれに限定されない多くの要因に依存する。ガラス材料に関する成形性、最終加工性、デザイン柔軟性、および製造コストはまた、特定のガラス材料が電子装置エンクロージャとしての使用に適切であるか否かの要因である。さらに、選択される材料は、色を含む美しさ、表面仕上げ、重量等に依存してもよい。
【0014】
ある特定の実施の形態において、本発明は、15MHzから3.0GHzまでの周波数範囲において0.03未満の損失正接により定められるラジオおよびマイクロ波周波数透明性、赤外線透明性、0.6MPa・m1/2より大きい破壊靭性、350MPaより大きい4点曲げ強度、少なくとも600kgf/mmのビッカース硬度および少なくとも5kgfのビッカース中央/放射亀裂開始限界、約50から100GPaの間のヤング率、2.0W/m℃未満の熱伝導率を示すイオン交換されたガラス材料を含む電子装置エンクロージャとしての使用に適切な物品を含む。
【0015】
さらに、本発明のガラス物品エンクロージャは、以下の特性の少なくとも1つを示す::(i)20μmより大きい層の深さ(DOL)および400MPaより大きい圧縮応力を有する圧縮表面層、または(ii)20MPa以上の中央張力。
【0016】
本発明のガラス材料/エンクロージャは、上記のDOLおよび圧縮応力が達成される限り、当業者に適切であると知られる任意のイオン交換処理を使用して形成される少なくとも1つのイオン交換された表面を示すガラス材料から成る。
【0017】
別の例示的な実施の形態において、本発明のハウジングまたはエンクロージャは、2mmの全体厚さおよび40μmのDOLを示す圧縮層を示し、圧縮層は少なくとも525MPaの圧縮応力を示す。ここでも、これらの特徴を達成する任意のイオン交換処理が適切である。
【0018】
詳細には、ガラス物品内の中央張力CTが、圧縮応力CSから計算できる。圧縮応力CSは、表面近く(すなわち100μm以内)で測定され、最大CS値および圧縮応力層の測定深さ(ここで「層の深さ」または「DOL」とも称される)を与える。CSとCTとの間の関係は、以下の式により与えられる:
CT=(CS・DOL)/(t−2DOL) (1)、
ここで、tはガラス物品の厚さである。他に明示されない限り、中央張力CTおよび圧縮応力CSは、ここでメガパスカル(MPa)により表され、厚さtおよび層の深さDOLはミリメートルで表される。
【0019】
20μm/400MPaを超える表面圧縮応力(または20MPaを超えるCT)の組合せ、ビッカース硬度/圧子限界要件、および350MPaより大きい4点曲げ強度と組み合わせた、0.6MPa・m1/2を超えるこの必要な破壊靭性は、全てが作用して、標準的な消費者の使用/用途に耐えるように十分に強く耐久性であるエンクロージャを生じる。上記のイオン交換されたガラス物品が満たすことのできるこの耐久性特徴の1つの指標は、イオン交換されたガラス物品が、1メートルの高さからコンクリートまたは花崗岩のような硬い表面上への多数の(例えば5回)衝突/落下に関する標準的な落下試験要件に耐えられることである。
【0020】
別の例示的な実施の形態において、物品、特に電子装置エンクロージャは、500MHzから3.0GHzまでの間の周波数範囲において0.015未満の損失正接により定められるラジオおよびマイクロ波周波数透明性を示す。このラジオおよびマイクロ波周波数透明性の特徴は、エンクロージャの内部にアンテナを含む無線手持ち式装置に特に重要である。このラジオおよびマイクロ波透明性により、無線信号がエンクロージャ/ハウジングエンクロージャを通過することが可能になり、ある場合にはこれらの通信が向上される。さらに、電子装置間の無線光通信を可能にするために赤外線において透明であることが所望かもしれない;特に、750から2000nmまでの範囲の波長において80%より大きい赤外線透明性。例えば、赤外線通信を使用して、携帯用音楽プレイヤーに音楽ファイルをダウンロードしてもよく、または運動データをGPSまたは心拍数モニタから分析のためにコンピュータにアップロードしてもよい。
【0021】
ここに記載されるガラスエンクロージャは、剪断不良ではなくて主に焼きしまりによる圧子によって変形する強化ガラスを含む。このガラスは、変形による表面不良および放射亀裂がなく、したがって通常のイオン交換可能なガラスよりも損傷に耐久性であり、イオン交換により強化されると、剪断不良による亀裂開始に対してより耐久性である。ある実施の形態において、ガラスエンクロージャは、イオン交換されたガラスを含み、少なくとも5キログラム力(kgf)のビッカース中央/放射亀裂開始限界を有する。第2の実施の形態において、ガラスエンクロージャは、少なくとも約10kgfのビッカース中央/放射亀裂開始限界を有し、第3の実施の形態において、ガラスエンクロージャは、少なくとも約30kgfのビッカース中央/放射亀裂開始限界を有する。
【0022】
さらなる実施の形態において、電子装置ハウジングまたはエンクロージャは、0.70MPa・m1/2より大きい破壊靭性、および475MPaより大きい、好ましくは525MPaより大きい4点曲げ強度、および50から75GPaの範囲のヤング率/弾性を示すガラスを含む。
【0023】
特に2W/m℃未満の上記のレベルにおける熱伝導率は、100℃まで達する高温でも触ってみると冷たいままのハウジング/熱エンクロージャを生じ得る。好ましくは、ガラスハウジングは、1.5W/m℃未満の熱伝導率を示す。比較のために、アルミナのようなセラミックは29W/m℃程度の熱伝導率を示し得ることに留意すべきである。
【0024】
ある実施の形態において、ガラス物品は、50nm未満、好ましくは15nm未満のRa粗さを示す少なくとも1つの表面を有するものとして定義される透明表面を示す。このレベルの表面粗さを達成するために、1つの選択肢は、50nm未満、好ましくは15nm未満の必要な表面粗さを達成するように、標準的な研磨技術を使用して表面を研磨することである。あるいは、ガラス物品を、50nm未満、好ましくは15nm未満の必要な表面粗さを達成するように、研磨されたまたはざらつきのない表面を有する型を使用して形成してもよい。
【0025】
特定の他の実施の形態において、ガラス物品は、不透明に見えてもよく、これは、物品が50nmから15μmの間のRa粗さを示す少なくとも1つの表面を有することを意味する。この不透明の物品の特徴の利点は、ガラスハウジング/エンクロージャ物品が所望の抗−汚れまたは指紋耐性特性を示すということである。物品を不透明に見えるようにするこのレベルの表面粗さを達成するために、ガラス物品を機械的に研磨し(標準的な研磨技術を使用して)、その後、エッチング工程にかけて研磨工程により生じたかもしれない任意の表面損傷を除去してもよい。この研磨/エッチング工程の組合せは、実際の物品形成の間または後のいずれかで行ってもよい。あるいは、ガラス物品を、50nmから15μmの間の必要な表面粗さを達成するようにざらつきのある表面を有する型を使用して形成してもよい。
【0026】
上記のように、電子装置ハウジングまたはエンクロージャとしての使用に適切なガラス材料は、プラスチックおよび他の非アルカリガラスベースのハウジング/エンクロージャと比較すると特に、このハウジング/エンクロージャ用途のために、それらの十分な化学的耐久性および機械的特性によって、アルカリアルミノシリケートガラスを含む。
【0027】
電子ハウジング/エンクロージャとしての使用に適切な、代表的な広いアルカリアルミノシリケートガラス組成のファミリは、最も広い実施の形態において、バッチベースにおける酸化物としてのモルパーセントで、以下を含む:40-80% SiO2、0-28% Al2O3、0-12% B2O3、0-18% Li2O、0-10% Na2O、0-18% K2O、0-16% MgO、0-10% MgF2、0-8% CaO、0-15% CaF2、0-20% SrO、0-12% BaO、0-8% ZnO、0-4% P2O5、0-2% TiO2、0-5% ZrO2、0-1% SnO2、0-1% Sb2O3、0-1% As2O3
【0028】
より狭い実施の形態において、適切なエンクロージャ/ハウジングガラスは、薄いガラス物品にダウンドロー(より詳細にはフュージョンドロー)可能なアルカリアルミノシリケートであり、これは後に電子装置ハウジング/エンクロージャに形成できる。このアルカリアルミノシリケートガラスは、濃度がモルパーセント(mol%)で表される以下の酸化物を含む:64≦SiO2≦68;12≦Na2O≦16;8≦Al2O3≦12;0≦B2O3≦3;2≦K2O≦5;4≦MgO≦6;および0≦CaO≦5。さらに、66mol%≦SiO2 + B2O3 + CaO≦69mol%; Na2O + K2O + B2O3 + MgO + CaO + SrO >10mol%;5mol%≦MgO + CaO + SrO≦8mol%;(Na2O + B2O3)−Al2O3≦2mol%;2mol%≦Na2O−Al2O3≦6mol%;および4mol%≦(Na2O + K2O)−Al2O3≦10mol%。ガラスは、少なくとも130キロポアズ(13キロPa・秒)の液体粘性を有し、これによりガラスはダウンドロー可能となる。
【0029】
ここで用いたように、「液体粘性」とは、液化温度における溶融ガラスの粘性を称し、液化温度とは、溶融ガラスを溶融温度から冷却する際に結晶が最初に現れる温度、または温度が室温から上昇する際に一番最後の結晶が溶けてなくなる温度を称する。
【0030】
後に電子装置ハウジング/エンクロージャに形成できる薄いガラス物品にダウンドロー(より詳細にはフュージョンドロー)可能な適切なアルカリアルミノシリケートの別のさらなる具体的な実施の形態が、以下に示される。このアルカリアルミノシリケートガラスは具体的に以下を含む:60-70 mol% SiO2;6-14mol% Al2O3;0-15mol% B2O3;0-15mol% Li2O;0-20mol% Na2O;0-10mol% K2O;0-8mol% MgO;0-10mol% CaO;0-5mol% ZrO2;0-1mol% SnO2;0-1mol% CeO2;50ppm未満のAs2O3;および50ppm未満のSb2O3;ここで、12mol%≦Li2O + Na2O + K2O≦20mol%および0mo%≦MgO + CaO≦10mol%。
【0031】
後に電子装置ハウジング/エンクロージャに形成できる薄いガラス物品にダウンドロー(より詳細にはフュージョンドロー)可能な適切なアルカリアルミノシリケートのさらに別の具体的な実施の形態が、以下に示される。このアルカリアルミノシリケートガラスは具体的に以下を含む:61mol%≦SiO2≦75mol%;7mol%≦Al2O3≦15mol%;0mol%≦B2O3≦12mol%;9mol%≦Na2O≦21mol%;0mol%≦K2O≦4mol%;0mol%≦MgO≦7mol%;および0mol%≦CaO≦3mol%。
【0032】
後に電子装置ハウジング/エンクロージャに形成できる薄いガラス物品にダウンドロー(より詳細にはフュージョンドロー)可能な適切なアルカリアルミノシリケートの最後の具体的な実施の形態が、以下に示される。このアルカリアルミノシリケートガラスは具体的に60-72mol% SiO2;9-16mol% Al2O3;5-12mol% B2O3;8-16mol% Na2O;および0-4mol% K2Oを含み、
【数1】

【0033】
である。
【0034】
アルカリアルミノシリケートガラス組成物が初期シート構造にダウンドロー可能であるか否かに拘らず、ハウジングまたはエンクロージャとしての使用のために選択されたガラスは最終的に良好な成形性をさらに示さなければならない。したがって、所望のハウジングまたはエンクロージャに容易に成形できることが必要である。特に、使用されるガラス材料は、圧縮、垂下(sagging)、真空垂下、シートコイン(sheet coin)およびこれらの組合せのような技術を含むがこれに限定されない標準処理を使用して、所望のハウジングまたはエンクロージャ形状に容易に成形できる。明らかに、生成されるガラス物品が2次元に平らな保護カバー(または基材)である場合、物品は必ずしも再成形を必要としないが、一度ガラス物品が平らなシートにドローされると何らかのラップ仕上げまたは研磨加工が必要となるかもしれないと考えられる。
【0035】
別の態様において、ガラス物品、特にエンクロージャは、イオン交換処理を受けてもよい。ガラス−セラミック物品の少なくとも1つの表面は、イオン交換処理を受け、1つのイオン交換された(「IX」)表面は、20μn以上の層の深さ(DOL)を有し少なくとも400MPaの圧縮強度を示す圧縮層を示す。上記のDOLおよび亜縮強度が達成される限りは、当業者に知られる任意のイオン交換処理が適切である。そのような処理は、ガラス物品を、リチウム、ナトリウム、カリウムおよび/またはセシウムの溶融した硝酸塩、硫酸塩、および/または塩化物、あるいはそれらの任意の混合物;例えばKNO、KSO、KCl、NaNO、の槽中に浸漬することを含むがこれに限定されない。槽およびサンプルは、塩の溶融温度より高く分解温度よりも低い一定温度、通常は350から600℃の間に維持される。標準的なガラスのイオン交換に必要な時間は、ガラスに亘るイオンの拡散率に依存して、15分間から48時間の間でもよい。ある場合において、1つ以上のイオン交換処理を使用して、所定のガラス材料について特定の応力特性または表面圧縮応力を生じてもよい。代表的なイオン交換は、ステンレス鋼容器中に含まれる100%KNOの410℃溶融槽中での6−8時間の浸漬を含む。イオン交換後、ガラス物品を槽から取り除き、冷却し、水中で洗浄し、検査する。
【0036】
これらの3つの上記のアルカリアルミノシリケートガラス組成範囲のそれぞれからの1つの代表例が、表1に提供される:
・実施例1は、最も広い組成ファミリの代表例である;
・実施例2および3は、それぞれ第1および第2のダウンドロー可能な組成の代表例である;
・実施例4および5は、第3に記載されるダウンドロー可能な組成の代表例である;および
・実施例6および7は、第4に記載されるダウンドロー可能な組成の代表例である。
【0037】
さらに、表1には、代表的な組成のそれぞれの以下の特性が開示される;歪み点、焼きなまし点、軟化点、密度および熱膨張率(CTE)。
【表1】

【0038】
実施例3の組成を含むガラスのサンプルを形成し、特定の電気的および機械的特性(記載されるような)について試験し、これらの特性を表2および3にそれぞれ記録する。詳細には、上記のガラスを、バッチ処理し、溶融し、ボウルに成形し、その後穿孔機にかけて、機械的および電気的試験のために2つの異なる寸法のロッドを形成した:(1)3.5mm直径×12mm長ロッド;および(2)5.5直径×30mm長ロッド。表2に記録されるように、このガラスサンプルは、54MHzから2986MHzまでの範囲の周波数について0.021を超えない損失正接から明らかなように、良好なラジオおよびマイクロ波透明性を示す。さらに、このガラスは、0.7MPa・m1/2の測定された破壊靭性、73.3GPaのヤング率/弾性から明らかなように、電子装置ハウジング/エンクロージャとしての使用に適切となる十分な機械的特性を示した。
【表2】

【表3】

【0039】
実施例3および実施例7の組成を含むガラスのサンプルである実施例BおよびCを、それぞれ形成して特定の電気的および機械的特性について試験し、それらの特性をそれぞれ表4および5に記録する;CSは圧縮応力を表し、DOLは圧縮応力の層の深さを表し、CTは中央張力を表し、ビッカースHおよびビッカースITはビッカース硬度およびビッカース圧子限界をそれぞれ表す。実施例Aと同様の方法で、ガラスをバッチ処理し、溶融し、ボウルに成形し、その後穿孔機にかけて、電気的試験のために2つの異なる寸法のロッドを形成した:(1)3.5mm直径×12mm長ロッド;および(2)5.5直径×30mm長ロッド。前記のように、機械的試験、特に4点曲げ強度試験のために、60mm×44mm×0.7mm厚さのサンプルを生じた;標準ASTM4点曲げ試験プロトコルを使用した。表4に記録されるように、これらのガラスサンプルは、54MHzから2986MHzまでの範囲の周波数について、それぞれ0.016および0.018を超えない損失正接により明らかなように、良好なラジオおよびマイクロ波透明性を示した。さらに、このガラスは、60以上のDOL、650MPaおよび約50を超える圧縮応力および中央張力、0.66および0.68MPa・m1/2の測定された破壊靭性、71.07および61.62GPaのヤング率/硬さから明らかなように、電子装置ハウジング/エンクロージャとしての使用に適切となる十分な機械的特性を示した。達成されたビッカース硬度およびビッカース圧子限界値もまた、装置エンクロージャ材料としてのこの適切性に寄与したことに留意すべきである。
【表4】

【表5】

【0040】
ここに記載される材料、方法、および物品に様々の変更および変化が可能である。ここに記載される材料、方法、および物品の他の態様が、明細書の検討およびここに開示される材料、方法、および物品の実施から明らかであろう。本明細書および実施例は、例示的なものとして考慮されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブル電子装置の部品を収納するまたは囲むのに適切な物品であって、全物品厚さの2%以上の層の深さ(DOL)を有する圧縮表面層を示し、15MHzから3.0GHzまでの周波数範囲において0.03未満の損失正接により定められるラジオおよびマイクロ波周波数透明性、赤外線透明性、0.75MPa・m1/2より大きい破壊靭性、350MPaより大きいMOR、少なくとも600kg/mmのビッカース硬さ、70GPaより大きいヤング率、633nmにおいて1.5031より大きい屈折率、2.0W/m℃未満の熱伝導率および500MPaより大きい表面圧縮応力を示す、イオン交換されたガラスを含むことを特徴とする物品。
【請求項2】
前記ガラスが、カーバイドおよび/またはダイアモンド工具で機械加工できることを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記ガラスが、500MHzから3.0GHzまでの周波数範囲において0.015未満の損失正接により定められるラジオおよびマイクロ波周波数透明性を示すことを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項4】
前記ガラスが、0.75MPa・m1/2より大きい破壊靭性を示すことを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項5】
前記ガラスが、525MPaより大きいMORを示すことを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項6】
前記ガラスが、1.5W/m℃未満の熱伝導率を示すことを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項7】
前記ガラス物品が、不透明に見え、50nmから15μmまでの間のRa粗さを有する少なくとも1つの表面を示すことを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項8】
前記ガラスが、750nmより大きい波長において80%より大きい赤外線透明性を示すことを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項9】
前記物品が、1.2mmの全体厚さおよび40μmのDOLを示す圧縮層を示し、該圧縮層が、525MPaの圧縮応力を示すことを特徴とする請求項1記載の物品。
【請求項10】
前記ガラスが、バッチベースにおける酸化物としてのモルパーセントで、以下を含む:40-80% SiO2、0-28% Al2O3、0-8% B2O3、0-18% Li2O、0-10% Na2O、0-11% K2O、0-16% MgO、0-18% CaO、0-15% CaF2、0-20% SrO、0-12% BaO、0-8% ZnO、0-4% P2O5、0-8% TiO2、0-5% ZrO2、0-1% SnO2、0-1% Sb2O3、0-1% As2O3を含むことを特徴とする請求項7記載の物品。

【公表番号】特表2012−500177(P2012−500177A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523823(P2011−523823)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/004785
【国際公開番号】WO2010/021746
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】