説明

電子装置の製造方法

【課題】配線基板に接着剤を印刷法により塗布し、接着剤を介して配線基板をヒートシンクに搭載して接着する電子装置の製造方法において、未接着部分が無く、且つ、接着剤を潰さずに接着剤のはみ出しを抑制する。
【解決手段】一端側に開口部201を有し、開口部201に取り付けられる蓋300を有する容器200を用意するとともに、蓋300として容器200側とは反対側の面が平坦面301をなすものであって平坦面301に接着剤30の配置領域に対応する貫通穴302を有するものを用い、印刷工程では、配線基板10の一面11が開口部201側に位置するように配線基板10を容器200内に収容し、開口部201に蓋300を取り付けた後、貫通穴302を介して配線基板10の一面11上に接着剤30を塗布しつつ、スキージ100を平坦面301に沿って移動させることによって、接着剤30の表面が平坦面301と同一平面となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の基板に接着剤を印刷法により塗布し、接着剤を介して第1の基板を第2の基板に搭載して接着してなる電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の電子装置の製造方法としては、第1の基板の一面上にペーストよりなる接着剤を、スキージを用いて塗り拡げる印刷法により配置する印刷工程と、その後、第1の基板を、接着剤を介して第2の基板上に搭載する搭載工程と、続いて接着剤を硬化させることにより、第1の基板と第2の基板とを接着する硬化工程と、を備える方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−71422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記した従来技術に基づき、試作・検討を行った。図9は、本発明者の試作による製造方法を示す概略断面図であり、特に印刷工程を示している。ここでは、セラミック基板などの配線基板10を第1の基板とし、その一面11に接着剤を印刷するものとした。
【0005】
図9に示されるように、配線基板10を支持部材K1に支持し、その配線基板10の一面11上に印刷用のマスクMを搭載する。ここで、一般のものと同様、マスクMの周辺部は枠体K2により保持されている。また、図示しないが、マスクMには、接着剤の配置領域に対応する貫通穴が設けられている。
【0006】
そして、この状態で、配線基板10の一面11上にて、マスクMにスキージ100を圧接した状態で、マスクMの表面に沿ってスキージ100を移動させることにより、接着剤を配線基板10の一面12上に塗り拡げる。
【0007】
このとき、配線基板10上ではマスクMは配線基板10に支持されているため、図9に示されるように、配線基板10が反っていると、スキージ100の押し付け力によってマスクMも当該配線基板10の反りに応じて反った状態となる。
【0008】
このように、マスクMが反った状態で接着剤の印刷が行われると、当然ながら、印刷後の接着剤の表面もマスクMの反りに対応して反った形状となってしまう。そして、このように接着剤表面が平坦面ではなく、反った面となった場合には、配線基板10を第2の基板に搭載するとき、第2の基板と接着剤との間に未接着部分が発生しやすい。
【0009】
ここで、単純には、この未接着部分をなくすために、接着剤を潰すように第1および第2の両基板を加圧してやればよいが、このような接着剤を潰す方法では、接着剤が狙い領域よりもはみ出してしまうという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、第1の基板に接着剤を印刷法により塗布し、接着剤を介して第1の基板を第2の基板に搭載して接着する電子装置の製造方法において、未接着部分が無く、且つ、接着剤を潰さずに接着剤のはみ出しが抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1の基板(10)の一面(11)上にペーストよりなる接着剤(30)を、スキージ(100)を用いて塗り拡げる印刷法により配置する印刷工程と、その後、第1の基板(10)を、接着剤(30)を介して第2の基板(20)上に搭載する搭載工程と、続いて接着剤(30)を硬化させることにより、第1の基板(10)と第2の基板(20)とを接着する硬化工程と、を備える電子装置の製造方法において、
一端側に開口部(201)を有し、当該開口部(201)に取り付けられる蓋(300)を有する容器(200)を用意するとともに、蓋(300)として容器(200)側とは反対側の面が平坦面(301)をなすものであって当該平坦面(301)に接着剤(30)の配置領域に対応する貫通穴(302)を有するものを用い、印刷工程では、第1の基板(10)の一面(11)が開口部(201)側に位置するように第1の基板(10)を容器(200)内に収容し、開口部(201)に蓋(300)を取り付けた後、貫通穴(302)を介して第1の基板(10)の一面(11)上に接着剤(30)を塗布しつつ、スキージ(100)を平坦面(301)に沿って移動させることによって、接着剤(30)の表面が平坦面(301)と同一平面となるようにすることを特徴とする。
【0012】
それによれば、従来のように、基板基準でマスクを形成するものではなく、容器(200)に支持されている蓋(300)でマスクを構成するものとしているから、このマスクとしての蓋(300)は第1の基板(10)の反りに影響されずに平坦面(301)の平坦性が維持される。そして、その蓋(300)の平坦面(301)に合わせて接着剤(30)表面を形成するようにしているので、接着剤(30)表面は平坦面になる。
【0013】
従って、本発明によれば、平坦な接着剤(30)の表面を第2の基板(20)に接触させるから、未接着部分が無いものとでき、接着剤(30)を潰す必要が無いので、接着剤(30)のはみ出しも抑制できる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電子装置の製造方法において、蓋(300)として、第1の基板(10)側の面に、貫通穴(302)の外郭形状に対応した環状の弾性部材よりなる突起(303)が設けられたものを用い、印刷工程は、第1の基板(10)の一面(11)に突起(303)を当接させた状態で行うことを特徴とする。
【0015】
それによれば、接着剤(30)の配置の際に、突起(303)が第1の基板(10)の一面(11)に当接することで、第1の基板(10)の一面(11)にて貫通穴(302)からはみ出そうとする接着剤(30)がせき止められ、貫通穴302の範囲内にとどまるから、接着剤(30)のはみ出し抑制の点で好ましい。
【0016】
また、突起(303)を弾性部材より構成することで突起(303)の当接による第1の基板(10)の一面(11)へのダメージが軽減されるとともに、突起(303)と第1の基板(10)の一面(11)との密着性が確保され、印刷中における蓋(300)と第1の基板(10)との位置ずれが発生しにくくなる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の電子装置の製造方法において、搭載工程では、減圧雰囲気下にて接着剤(30)を介して第2の基板(20)への第1の基板(10)の搭載を行い、次いで、大気圧以上の雰囲気とした後、硬化工程を大気圧以上の雰囲気にて行うことを特徴とする。
【0018】
それによれば、第2の基板(20)と接着剤(30)との間に減圧空間としての隙間が生じたとしても、その隙間は大気圧以上に加圧されて、実質的に消滅することになるため、好ましい。
【0019】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法において、第1の基板(10)は、一面(11)とは反対側の他面(12)側に電子部品(50)が実装されたものであり、容器(200)として、内側面(202)に段差をもって張り出した張り出し部(203)を有するとともに、底部側に張り出し部(203)によって区画された空間部(204)を有するものを用い、印刷工程にて第1の基板(10)を容器(200)内に収容するときに、第1の基板(10)の周辺部を張り出し部(203)に支持するとともに、第1の基板(10)の他面(12)側の電子部品(50)を空間部(204)に収容するようにしたことを特徴とする。
【0020】
それによれば、第1の基板(10)が、一面(11)を接着面とし他面(12)を部品実装面としたものであって、その他面に(12)側に電子部品(50)が実装されたものとした場合、第1の基板(10)を容器(200)に収容するときに、当該他面(12)側の電子部品(50)が容器(200)と干渉することなく、適切な容器(200)への収容が可能となる。
【0021】
さらに、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の電子装置の製造方法において、容器(200)として、張り出し部(203)に、弾性部材よりなり第1の基板(10)の周辺部に当接する受け部(205)が設けられたものを用いることを特徴とする。
【0022】
それによれば、張り出し部(203)おいては、受け部(205)が第1の基板(10)に当接して第1の基板(10)を支持するが、この受け部(205)を弾性部材より構成することで受け部(205)の当接による第1の基板(10)へのダメージが軽減される。
【0023】
それとともに、容器(200)と第1の基板(10)との密着性が確保され、印刷中における容器(200)と第1の基板(10)との位置ずれ、ひいては、容器(200)に取り付けられた蓋(300)と第1の基板(10)との位置ずれが発生しにくくなる。
【0024】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図3】図2(b)の上視概略平面図である。
【図4】図2に続く電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図5】図4に続く電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る電子装置の製造方法の要部を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る電子装置の製造方法の要部を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る電子装置の製造方法の要部を示す概略断面図である。
【図9】本発明者の試作による電子装置の製造方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面構成を示す図である。この電子装置は、たとえば車両のECUなどに用いられるものである。本実施形態の電子装置は、大きくは、第1の基板としての配線基板10を、接着剤30を介して第2の基板としてのヒートシンク20に搭載し接着したものである。
【0028】
配線基板10は、セラミック基板やプリント基板などよりなる板状のもので、多層でもよいし単層でもよい。この配線基板10は、一面11を接着面、一面11とは反対側の他面12を部品実装面とするものであり、ここでは、一般的な矩形板状をなす。
【0029】
ヒートシンク20は、鉄や銅などの放熱性に優れた金属板よりなるものであり、たとえば略矩形板状をなす。このヒートシンク20は、一面を配線基板10の搭載面としており、この搭載面に配線基板10が接着されている。
【0030】
ここで、接着剤30は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などよりなる一般的なものであるが、放熱性を有するものであることが望ましい。たとえば接着剤30としては、東レ・ダウコーニング製のシリコーン接着剤TC−2711CV(商品名)などが挙げられる。また、ヒートシンク20の搭載面の周辺部には、外部との電気的接続を行うための銅や42アロイ等よりなるリードフレーム40が、かしめなどにより接続されている。
【0031】
一方、配線基板10の他面12には、電子部品50が搭載されている。この電子部品50は、半導体チップやミニモールドIC、あるいは抵抗やコンデンサなどの表面実装部品であり、図示しない導電性接着剤やワイヤボンディングなどにより配線基板10と電気的に接続されている。そして、配線基板10は、ワイヤボンディングなどによりリードフレーム40と電気的に接続されている。
【0032】
そして、これら配線基板10、ヒートシンク20、電子部品50およびリードフレーム40は、エポキシ樹脂などよりなるモールド樹脂60により、包み込まれるように封止されている。ここで、リードフレーム40のアウターリード、ヒートシンク20における配線基板10側とは反対の面は、モールド樹脂60より露出しており、それぞれ、外部との電気的接続、放熱が可能となっている。
【0033】
次に、この電子装置の製造方法について、図2、図3、図4、図5を参照して述べる。図2〜図5は本製造方法を示す工程図である。ここで、図2、図4、図5は概略断面図であって、これら図に示される順に工程を行うものであり、図3は、図2(b)の上視概略平面図である。
【0034】
また、ここでは、配線基板10は、反った状態のものとして当該反りをデフォルメして示してある。なお、このような反りあるいはうねりは、配線基板10の成形時に加わる応力などにより発生するものである。
【0035】
まず、配線基板10の他面12に上記電子部品50を実装する。そして、配線基板10の一面11上にペーストよりなる接着剤30を、スキージ100を用いて塗り拡げる印刷法により配置する印刷工程を行う。
【0036】
具体的には、図2、図3に示されるように、一端側に開口部201を有し、当該開口部201に取り付けられる蓋300を有する容器200を用意する。これら容器200および蓋300は、たとえば鉄、アルミニウム、ステンレスなどよりなる。図2、図3では、容器200は一端側が開口する矩形箱形状をなすものとしている。
【0037】
ここで、蓋300としては、容器200側とは反対側の面(つまり外面)が平坦面301をなすものであって当該平坦面301に接着剤30の配置領域に対応する貫通穴302を有するものを用いる。
【0038】
図2、図3では、蓋300は容器200の矩形の開口部201を塞ぐ板状をなすとともに、開口部201の中央部側に位置する部位に矩形状の貫通穴302を有している。なお、ここでは、貫通穴302は、配線基板10よりも一回り小さい平面サイズとされている。
【0039】
そして、印刷工程では、図2(a)に示されるように、配線基板10の接着面である一面11が開口部201側に位置するように、配線基板10を容器200内に収容し、容器に200に支持させる。
【0040】
ここでは、容器200としては、内部の側面すなわち内側面202に段差をもって張り出した張り出し部203を有するものを用いる。そして、配線基板10を容器200内に収容したときには、配線基板10の周辺部を張り出し部203の座面に支持させる。ここでは、図2、図3に示されるように、張り出し部203は、配線基板10の周辺部の全周を支持するべく、連続した環状に設けられている。
【0041】
また、配線基板10は、他面12側に電子部品50が実装されたものであるが、ここで、容器200としては、底部側に張り出し部203によって区画された空間部204を有するものを用いる。それにより、配線基板10を容器200内に収容するとき、配線基板10の他面12側の電子部品50が空間部204に収容される。
【0042】
こうして、容器200内に配線基板10を収容した後、図2(b)、図3に示されるように、開口部201に蓋300を取り付ける。この蓋300と容器200との固定は、たとえば嵌合や締結などの種々の方法により可能である。
【0043】
ここで、配線基板10を容器200内に収容しているため、配線基板10の一面11は開口部201より外方に突出せず、容器200内に位置しており、配線基板10の一面11と蓋300とは隙間を有している。なお、この隙間寸法に蓋300の厚さを足したものが印刷された接着剤30の厚さに実質相当する。
【0044】
こうして、蓋300の取り付けを行った後、図4(a)、(b)に示されるように、貫通穴302を介して配線基板10の一面11上に接着剤30を塗布しつつ、スキージ100を平坦面301に沿って移動させることによって、接着剤30の表面が平坦面301と同一平面となるようにする。
【0045】
具体的には、貫通穴302の外側における蓋300上に接着剤30を配置しておき、この接着剤30をスキージ100によって貫通穴302まで塗り拡げ、貫通穴302に現れる配線基板10の一面11上に接着剤30を塗り拡げるようにする。
【0046】
このとき、スキージ100は蓋300の平坦面301に圧接状態とされて移動するので、接着剤30の表面は、平坦面301と同一平面に位置する平坦面とされる。こうして、接着剤30の印刷すなわち印刷工程が完了する。
【0047】
次に、図4(c)、図5(a)に示される搭載工程を行う。この搭載工程では、配線基板10を、接着剤30を介してヒートシンク20上に搭載する。ここでは、減圧雰囲気下にて接着剤30を介してヒートシンク20への配線基板10の搭載を行う。
【0048】
具体的には、図4(c)に示されるように、容器200から配線基板10を取り出し、配線基板10の他面12側を吸着コレットなどのピックアップ治具410で保持し、配線基板10の一面11側すなわち接着剤30の平坦な表面とヒートシンク20とを対向させた状態とする。
【0049】
そして、この状態のまま両基板10、20を真空炉400中に設置する。この真空炉400は、一般的な真空チャンバと同様のものであり、排気を行う排気弁401、大気導入を行う導入弁402を備えている。
【0050】
そして、排気弁401を開状態、導入弁402を閉状態として、例えば1kPa以下で30秒以上の真空排気を実施することで、真空炉400内を減圧雰囲気とする。これによりヒートシンク20や接着剤30の表面に付着している揮発成分は揮発する。
【0051】
続いて、図5(a)に示されるように、ヒートシンク20と接着剤30の平坦な表面とを接触させ、そのまま所定の荷重および時間(例えば10kPa以下で1〜5秒間)、加圧する。ここで、この加圧は、接着剤30が潰れない程度の小さなレベルで行う。ここまでが搭載工程である。
【0052】
続いて、図5(b)に示されるように、排気弁401を閉状態、導入弁402を開状態として、真空炉400内に大気を導入し、真空炉400内を大気圧雰囲気とする。そして、真空炉400からワークを取り出す。
【0053】
こうして、大気圧雰囲気とした後、図示しないが、接着剤30を加熱等にて硬化させることにより、配線基板10とヒートシンク20とを接着する硬化工程を、やはり大気圧雰囲気にて行う。具体的には、たとえばベルト炉などに所定の加熱条件(例えば150℃×30分)で通炉し、接着剤30を加熱硬化する。
【0054】
その後、必要に応じて、電子部品50や配線基板10について、ワイヤボンディングするべき部分に、金やアルミニウムなどのワイヤボンディングを行い、電気的な接続を行う。そして、モールド樹脂60による封止を行えば、本実施形態の電子装置が完成する。以上が本製造方法である。
【0055】
ところで、本実施形態によれば、従来のように、基板基準でマスクを形成するものではなく、容器200に支持されている蓋300でマスクを構成するものとしているから、このマスクとしての蓋300は、配線基板10の反りに影響されずに、平坦面301の平坦性が維持される。
【0056】
そして、その蓋300の平坦面301に合わせて接着剤30表面を形成するようにしているので、接着剤30表面は平坦面になる。従って、本実施形態によれば、平坦な接着剤30の表面をヒートシンク20に接触させるから、未接着部分が無いものとでき、また接着剤30を潰す必要が無いので、接着剤30のはみ出しも抑制できる。
【0057】
また、本実施形態では、搭載工程では、減圧雰囲気下にて接着剤30を介してヒートシンク20への配線基板10の搭載を行い、次いで、大気圧雰囲気とした後、硬化工程を大気圧雰囲気にて行っている。それによれば、ヒートシンク20と接着剤30との間に減圧空間としての隙間が生じたとしても、その隙間は大気圧にて加圧されて、実質的に消滅する。
【0058】
なお、この大気圧雰囲気に代えて、大気圧よりも大きい圧力雰囲気としてもよい。つまり、接着剤30を介してヒートシンク20への配線基板10の搭載を行い、次いで、大気圧以上の雰囲気とした後、硬化工程を大気圧以上の雰囲気にて行ってもよい。この場合、真空炉や加熱炉の内部に大気等のガスを導入し、大気圧以上の雰囲気とすればよい。
【0059】
たとえば、使用する接着剤30が高粘度(例えば10rpmで200Pa・s以上相当)の場合には、真空中での搭載工程の完了後、高気圧(例えば6atm程度)を所定時間、実現することで、ヒートシンク20と接着剤30との間の上記隙間の消失を十分に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態では、印刷工程において、容器200の底部側に空間部204を設け、そこに配線基板10の電子部品50を収容するようにしているから、電子部品50が容器200と干渉することなく、適切な収容が可能となる。
【0061】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る電子装置の製造方法の要部を示す概略断面図であり、主としてマスクとしての蓋300の構成を示すものである。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、蓋300を一部変更したところが相違するものである。
【0062】
図6に示されるように、本実施形態では、蓋300として、配線基板10側の面に、貫通穴302の外郭形状に対応した環状の弾性部材よりなる突起303が設けられたものを用いる。この突起303は蓋300に対して、たとえば接着などにより固定される。
【0063】
ここでは、突起303は、蓋300における配線基板10側の面から当該配線基板10の一面11に向かって突出するものであり、貫通穴302の外郭全周を囲む矩形枠状を成すものである。また、当該弾性部材は、ゴムなどよりなるもので、蓋300本体よりも低弾性すなわち柔らかく、弾性変形するものである。
【0064】
そして、本実施形態の印刷工程は、図6に示されるように、配線基板10の一面11に突起303を当接させた状態で行う。つまり、上記第1実施形態では、蓋300の貫通穴302の縁部は、配線基板10の一面11と隙間を有していたが、本実施形態では、この隙間は突起303により封止された状態となる。
【0065】
それによれば、接着剤30の配置の際に、突起303が配線基板10の一面11に当接することで、配線基板10の一面11にて貫通穴302からはみ出そうとする接着剤30がせき止められ、貫通穴302の範囲内にとどまるから、接着剤30のはみ出し抑制の点で有利である。
【0066】
また、突起303を弾性部材より構成することで突起303の当接による配線基板10の一面11へのダメージが軽減されるとともに、突起303と配線基板10の一面11との密着性が確保され、印刷中における蓋300と配線基板10との位置ずれが発生しにくくなる。その結果、接着剤30が位置精度良く配置される。
【0067】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の製造方法の要部を示す概略断面図であり、主として容器200の張り出し部203の構成を示すものである。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、張り出し部203を一部変更したところが相違するものである。
【0068】
図7に示されるように、本実施形態では、容器200として、張り出し部203に、弾性部材よりなり配線基板10の周辺部に当接する受け部205が設けられたものを用いている。この受け部205は、張り出し部203の座面に対して、たとえば接着などにより固定される。
【0069】
ここでは、受け部205は、張り出し部203と同様、配線基板10の周辺部の全周に設けられていてもよいし、張り出し部203のうちの、たとえば配線基板10の四隅部のみに部分的に設けられているものであってもよい。
【0070】
そして、本実施形態の印刷工程によれば、図7に示されるように、張り出し部203おいて、受け部205が配線基板10に当接して配線基板10を支持する。そして、この受け部205が弾性部材より構成されていることにより、受け部205の当接による配線基板10へのダメージが軽減される。
【0071】
それとともに、本実施形態では、容器200と配線基板10との密着性が確保され、印刷中における容器200と配線基板10との位置ずれ、ひいては、容器200に取り付けられた蓋300と配線基板10との位置ずれが発生しにくくなる。その結果、接着剤30が位置精度良く配置される。
【0072】
また、本実施形態および上記各実施形態において、張り出し部203は環状のものであったが、環状に限定されるものではなく、たとえば配線基板10の四隅部のみを支持するように不連続に設けられたものであってもよい。
【0073】
また、本実施形態は上記第1実施形態だけでなく、上記第2実施形態とも組み合わせ可能である。特に、第2実施形態と組み合わせれば、ともに弾性部材である突起303および受け部205を介して、配線基板10と容器200および蓋300とが密着するため、蓋300の位置ずれ抑制効果のさらなる向上が期待される。なお、この受け部205は、可能ならば省略してもよいものである。
【0074】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の製造方法の要部を示す概略断面図である。本実施形態は、上記各実施形態に組み合わせて適用することが可能である。
【0075】
図8に示されるように、本実施形態では、真空炉400内にて、ヒートシンク20上に配線基板10を搭載した状態で、配線基板10の外郭端部を保持するガイド403を設ける。このガイド403は、たとえば、配線基板10の外郭形状に対応した枠形状をなす。本実施形態によれば、真空炉400に大気を導入する時にガイド403の保持によって、配線基板10が動くのを防止できる。
【0076】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態によれば、接着剤30表面は平坦面になり、未接着部分が無く、接着剤30を潰さずに接着剤30のはみ出しが抑制できるので、搭載工程および硬化工程をともに大気圧雰囲気下で行ってもよい。また、配線基板10の他面12に電子部品50を実装しない場合等には、容器200の空間部204は省略されたものであってもよい。
【0077】
また、上記各実施形態では、配線基板10を接着剤30が塗布される第1の基板とし、ヒートシンク20を第2の基板としたが、これとは逆に、ヒートシンク20を第1の基板、配線基板10を第2の基板としてもよい。
【0078】
この場合、上記各実施形態において、配線基板10をヒートシンク20に置き換えて、たとえば上記同様の印刷工程によりヒートシンク20に接着剤30を印刷してやればよい。さらには、第1の基板、第2の基板としては、配線基板、ヒートシンク、リードフレーム以外にも、たとえば半導体チップや筺体などを採用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 第1の基板としての配線基板
11 配線基板の一面
12 配線基板の他面
20 第2の基板としてのヒートシンク
30 接着剤
50 電子部品
100 スキージ
200 容器
201 容器の開口部
202 容器の内側面
203 容器の張り出し部
204 容器の空間部
205 受け部
300 容器の蓋
301 蓋の平坦面
302 蓋の貫通穴
303 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板(10)の一面(11)上にペーストよりなる接着剤(30)を、スキージ(100)を用いて塗り拡げる印刷法により配置する印刷工程と、
その後、前記第1の基板(10)を、前記接着剤(30)を介して第2の基板(20)上に搭載する搭載工程と、
続いて前記接着剤(30)を硬化させることにより、前記第1の基板(10)と前記第2の基板(20)とを接着する硬化工程と、を備える電子装置の製造方法において、
一端側に開口部(201)を有し、当該開口部(201)に取り付けられる蓋(300)を有する容器(200)を用意するとともに、
前記蓋(300)として前記容器(200)側とは反対側の面が平坦面(301)をなすものであって当該平坦面(301)に前記接着剤(30)の配置領域に対応する貫通穴(302)を有するものを用い、
前記印刷工程では、前記第1の基板(10)の一面(11)が前記開口部(201)側に位置するように前記第1の基板(10)を前記容器(200)内に収容し、前記開口部(201)に前記蓋(300)を取り付けた後、
前記貫通穴(302)を介して前記第1の基板(10)の一面(11)上に前記接着剤(30)を塗布しつつ、前記スキージ(100)を前記平坦面(301)に沿って移動させることによって、前記接着剤(30)の表面が前記平坦面(301)と同一平面となるようにすることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記蓋(300)として、前記第1の基板(10)側の面に、前記貫通穴(302)の外郭形状に対応した環状の弾性部材よりなる突起(303)が設けられたものを用い、
前記印刷工程は、前記第1の基板(10)の一面(11)に前記突起(303)を当接させた状態で行うことを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記搭載工程では、減圧雰囲気下にて前記接着剤(30)を介して前記第2の基板(20)への前記第1の基板(10)の搭載を行い、
次いで、大気圧以上の雰囲気とした後、前記硬化工程を大気圧以上の雰囲気にて行うことを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の基板(10)は、前記一面(11)とは反対側の他面(12)側に電子部品(50)が実装されたものであり、
前記容器(200)として、内側面(202)に段差をもって張り出した張り出し部(203)を有するとともに、底部側に前記張り出し部(203)によって区画された空間部(204)を有するものを用い、
前記印刷工程にて前記第1の基板(10)を前記容器(200)内に収容するときに、前記第1の基板(10)の周辺部を前記張り出し部(203)に支持するとともに、前記第1の基板(10)の他面(12)側の前記電子部品(50)を前記空間部(204)に収容するようにしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
前記容器(200)として、前記張り出し部(203)に、弾性部材よりなり前記第1の基板(10)の周辺部に当接する受け部(205)が設けられたものを用いることを特徴とする請求項4に記載の電子装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−164855(P2012−164855A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24786(P2011−24786)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】