説明

電子装置

【課題】従来、電子装置をプリント基板にリフローしたときに、電子装置内部において導電性接着材が熱膨張し電子部品のパッケージを下方向に押圧するので、電子部品の実装パッドに存在する溶融状態の半田が側面方向に押し出され、隣接する電子部品との間で半田ブリッジが生じてしまう問題を解決し、高密度な実装状態でリフロー可能な電子装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電子部品を表面実装したプリント配線基板と、該プリント配線基板を覆うケースとを備えた電子装置において、前記ケースはプリント配線基板に固定されると共に少なくとも一つの前記電子部品の上面に接着剤を介して固定されたものであり、前記ケースに固定された電子部品を実装する為にプリント配線基板上に配置された電極パッドは当該電子部品と近接する他の電子部品側には拡設せず他の電子部品が近接しない側に拡設されていることを特徴とする電子装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板に実装する電子部品と電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板に発振器やトランジスタ、或いはコンデンサといった電子部品を実装し電子装置(高周波モジュール)を製造する場合、電子部品を実装するプリント配線基板の一方の面をEMI(電磁干渉)対策として導電性を有する(一般的には金属製の)シールドケースで覆い、これをプリント配線基板に固定する構造が一般的に用いられている。
このとき、電子装置を他の部品と共にマザーボード等に搭載するときに、電子装置内部の電子部品の接地状態を良好に維持することを目的として、電子部品のパッケージをシールドケース内壁に接続する技術が実公平7−45992号公報に開示されている。
図4は、実公平7−45992号公報に開示された従来の電子装置の構造を示したものである。図4において、従来の電子装置はプリント基板1と、前記プリント基板1に実装された電子部品2a、2b、2c、2d、2eと、前記電子部品2a、2b、2c、2d、2eを覆い前記プリント基板1に半田にて固定されたシールドケース3と、前記電子部品2aのパッケージを前記シールドケース3に接地するための導電性接着剤4とを備えている。
【0003】
図4に示した電子装置をマザーボード等に搭載し全体をリフローによって加熱すると電子装置内部の半田が溶融する。このとき、シールドケース3とプリント基板1との接続部分の半田も溶融するが、シールドケース3は電子部品2aのパッケージに導電性接着剤にて接続された状態であるため、リフロー時にシールドケース3がずれるのを防止すると共に、電子部品2aのパッケージを良好な接地状態に維持することができる。
なお、複数の電子装置をマザーボードの両面に実装する必要があるときには、マザーボード下面に実装する電子装置を接着剤等にて仮固定してリフローを施すことで電子装置の脱落を防止している。しかし、このとき加熱によって半田が溶融し自重の大きいシールドケース3がプリント配線基板1から脱落する虞があるので、これを防止するためにシールドケース3を高融点の半田で固定したり、或いはシールドケース3とプリント基板1と機械的に固定していた。
【特許文献1】実公平7−45992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の電子装置には次のような問題点がある。
図5は、従来の電子装置をマザーボードに実装しリフローによって加熱した状態を示したものである。上述したように、シールドケース3はプリント配線基板1に高融点の半田等で固定されており、リフロー時にプリント配線基板1から脱落しないようになっている。
ここで、電子装置がリフローによって加熱されると導電性接着材4が膨張し電子部品2aのパッケージを図中下方向に押圧する。すると、電子部品2aの実装パッド5に存在する溶融状態の半田がパッケージの側面へ押し出され、隣接する電子部品2c、2dとの間で半田ブリッジが生じてしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、高密度な実装状態でのリフローで半田ブリッジの発生を防止する電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明においては、電子部品を表面実装したプリント配線基板と、該プリント配線基板を覆うケースとを備えた電子装置において、前記ケースはプリント配線基板に固定されると共に少なくとも一つの前記電子部品の上面に接着剤を介して固定されたものであり、前記ケースに固定された電子部品を実装する為にプリント配線基板上に配置された電極パッドは当該電子部品と近接する他の電子部品側には拡設せず他の電子部品が近接しない側に拡設されたものである。
【0006】
また、請求項2記載の発明においては、電子部品を実装したプリント配線基盤と、該プリント配線基板を覆うケースとを備えた電子装置において、前記ケースはプリント配線基板に固定されると共に少なくとも一つの前記電子部品の上面に接着剤を介して固定されたものであり、前記接着剤は前記前記電子部品の中央位置から外れた位置に塗布されたものである。
【0007】
また、請求項3記載の発明においては、請求項2において、前記ケースは金属製のシールドケースであり、前記プリント配線基盤の接地に導通固定されているものである。
【0008】
また、請求項4記載の発明においては、請求項2、または請求項3において、前記ケースに接着固定された電子部品は、上面がシールド部材で覆われたものであり、前記ケースとの間が導電性を有する部材で接着されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、電子部品を実装したプリント配線基盤と、該プリント配線基板を覆うケースとを備えた電子装置において、前記ケースはプリント配線基板に固定されると共に少なくとも一つの前記電子部品の上面に接着剤を介して固定されたものであり、前記接着剤は前記前記電子部品の中央位置から外れた位置に塗布されたものである。また、前記ケースに固定された電子部品を実装する為にプリント配線基板上に配置された電極パッドは当該電子部品と近接する他の電子部品側には拡設せず他の電子部品が近接しない側に拡設されたものである。
よって、前記導電性接着剤が熱膨張によって電子部品を押圧する中心位置がパッケージの中心位置からずれるので、電子部品の電極パッドから溶融した半田が隣接する部品の方向へ押しされることが制限され、電子部品と隣接する部品との間で半田ブリッジが発生することを防止した。
従って、本発明は高密度な部品実装状態にてリフロー可能な電子装置を提供する上で効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を図面に示した実施の形態に基づいて説明する。
図1は本発明に係わる電子装置の外観図を示したものである。
図1において、電子装置はプリント配線基板1と、前記プリント配線基板1に実装された電子部品2a、2b、2c、2d、2f、2g、2h、2i、2j、2kと、前記電子部品2a、…2kを覆い前記プリント配線基板1に高融点の半田にて固定されたシールドケース3と、前記電子部品2aのパッケージを前記シールドケース3に接地するための導電性接着剤4と、前記電子部品2aを実装するための電極パッド5a、5b、5c、5dとを備えている。
【0011】
ここで、図1に示した電子装置をマザーボード(図示せず)に搭載しリフローによる加熱を行なった状態を考える。電子装置が加熱されると電極パッド5a、5b、5c、5dにある半田が溶融すると共に導電性接着剤4が熱膨張して電子部品2aのパッケージを図中下向きに押圧する。すると、電極パッド5a、5b、5c、5dの溶融状態の半田がA方向、或いはB方向へ押し出される。ところが、電子部品2aの電極パッド5a、5b(5c、5d)はいずれもパッケージの一つの辺縁からA方向(B方向)の一方向にのみ拡設しており、電極パッドの拡設方向には他の電子部品が配置されていないので、溶融した半田が押し出されても他の電子部品との間で半田ブリッジを生ずることがない。
【0012】
なお、電極パッド5c、或いは電極パッド5dに近接して他の配線パターンが通っているときには本実施例は適用できない。そこで、導電性接着材4の塗布する領域を図2のようにし、導電性接着材4の塗布領域の中心位置を電子部品2aのパッケージの中心位置よりも上側にずらすことで、熱膨張した導電性接着材4が電子部品2aのパッケージの図中上側部分を主に押圧するようになり、電極パッド5c、5dの溶融した半田がB方向に押し出されるのを抑えるので、電極パッド5c、5dの近辺で半田ブリッジが発生するのを防止することができる。
【0013】
また、部品の実装密度が増えた場合には、例えば図3のように電子部品2aのパッケージを横方向に配置し、電極パッドを図中上方向、あるいは図中下方向に拡設するようにしてもよい。
この場合、隣接する他の電子部品2lの電極パッド6a、6bと電極パッド5c、5dとの間で半田ブリッジが生じる虞があるので、前述した実施例と同様に導電性接着材4の塗布領域を図中上側へずらし、電極パッド5c、5dの溶融した半田がB方向へ押し出されるのを抑えるようにすれば良い。
【0014】
なお、本実施例では電子部品2aのパッケージの側面と底面に電極が形成されたものであり、溶融した半田を導くことは勿論、電子部品2aの側面に良好な半田フィレットを形成することを目的とし、電極パッドの一部を突出している。
従って、電極が電子部品2aのパッケージの底面のみに形成されている場合は、パッドの一部を突出させなくともよい。この場合、導電性接着剤4の塗布位置を適宜選択することで特定のパッドから溶融した半田が側面へ押し出されるのを抑えることが可能である。
つまり、半田の押し出される量と電子部品2aの電極位置と他の電子部品の配置とを考慮して、パッドの突出の有無と突出方向を適宜決めればよい。
【0015】
以上説明した実施例においては、電子部品2aとシールドケース3とを接続する部材を導電性接着材4としたが、本発明にあってはこれに限らず。例えば、接続する部材を所定の厚みを有するシート状の導電性部材とし、これを電子部品2aの表面に導電性接着剤等で張り付け導電性部材の上面を対向するシールドケースの内壁に当接するようにしても良い。このようにすれば、電子部品2aの接地を良好に維持できると共に、故障解析時にシールドケース3をプリント基板から容易に外すことが可能となり、電子部品2aを簡単に露出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電子装置の外観図
【図2】本発明に係る電子装置の第2の実施例
【図3】本発明に係る電子装置の第3の実施例
【図4】従来の電子装置の外観図
【図5】従来の電子装置を実装した状態を示す図
【符号の説明】
【0017】
1・・プリント基板
2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k・・電子部品
2l・・電子部品
3・・シールドケース
4・・導電性接着剤
5、5a、5b、5c、5d・・電極パッド
6a、6b・・電極パッド




【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を表面実装したプリント配線基板と、該プリント配線基板を覆うケースとを備えた電子装置において、
前記ケースはプリント配線基板に固定されると共に少なくとも一つの前記電子部品の上面に接着剤を介して固定されたものであり、前記ケースに固定された電子部品を実装する為にプリント配線基板上に配置された電極パッドは当該電子部品と近接する他の電子部品側には拡設せず他の電子部品が近接しない側に拡設されていることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
電子部品を実装したプリント配線基盤と、該プリント配線基板を覆うケースとを備えた電子装置において、
前記ケースはプリント配線基板に固定されると共に少なくとも一つの前記電子部品の上面に接着剤を介して固定されたものであり、前記接着剤は前記前記電子部品の中央位置から外れた位置に塗布されていることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
前記ケースは金属製のシールドケースであり、前記プリント配線基盤の接地に導通固定されていることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記ケースに接着固定された電子部品は、上面がシールド部材で覆われたものであり、前記ケースとの間が導電性を有する部材で接着されていることを特徴とする請求項2、または請求項3のいずれかに記載の電子装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−165470(P2006−165470A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358610(P2004−358610)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】