説明

電子装置

【課題】オプション器機の接続状態に関わらず低い電圧の電源から順次先に立ち上げるという電源の立ち上がりシーケンスを確実に実現する。
【解決手段】異なる電圧の複数の電力によって動作する画像形成装置であって、上記電力を発生させる5V電源回路2a、12V電源回路2c及び24V電源回路2bと、別途接続されるオプション機器4〜6の容量性負荷を判定する容量性負荷判定部3bと、該容量性負荷判定部3bの判定結果に基づいて低い電圧の電源から順次先に立ち上がるように5V電源回路2a、12V電源回路2c及び24V電源回路2bをそれぞれ制御する電源制御部3cとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる電圧の複数の電力によって動作する電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記電子装置の1つとして、コピー機、プリンタあるいはファクシミリ装置等の画像形成装置がある。このような画像形成装置は、内部の電子部品が破壊されないように、低い電圧の電源から順次先に立ち上がるように電源回路を制御する。このような電源の立ち上がりシーケンスを考慮した電源制御に関する先行技術文献として、例えば下記特許文献1,2がある。
【特許文献1】特開2006−142779
【特許文献2】特開2003−080804
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、画像形成装置には1あるいは複数のオプション器機が接続されて使用されるものがある。このオプション器機は画像形成装置本体から電源の供給を受けて動作するが、各々に電源に対する負荷が異なっている。
したがって、画像形成装置においては、電圧が異なる複数の電源の立ち上がりタイミングがオプション器機の接続状態において本来の状態から変化し、最悪の場合には低い電圧の電源から順次先に立ち上げるという電源の立ち上がりシーケンスを満足し得ないことがある。特に、オプション器機が有する容量性負荷は電源の立ち上がりタイミングに大きな影響を与えるので、オプション器機の容量性負荷が原因で電源の立ち上がりシーケンスを満足し得ないことが発生し易い。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであり、オプション器機の接続状態に関わらず低い電圧の電源から順次先に立ち上げるという電源の立ち上がりシーケンスを確実に実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の解決手段として、異なる電圧の複数の電力によって動作する電子装置であって、上記電力を発生させる複数の電源回路と、別途接続されるオプション器機の負荷を判定する負荷判定部と、該負荷判定部の判定結果に基づいて低い電圧の電力から順次先に立ち上がるように電源回路をそれぞれ制御する電源制御部とを具備する、という手段を採用する。
【0006】
また、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、電源制御部は、負荷判定部の判定結果に基づいて電源回路の電源出力タイミングを調節することにより低い電圧の電力から順次先に立ち上がるように電源回路をそれぞれ制御する、という手段を採用する。
【0007】
第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、最も低い電圧の電力を出力する電源回路の立ち上がり状態を検出する電圧検出部をさらに備え、電源制御部は、前記電圧検出部の検出結果に基づいて最も低い電圧の電力以外の電力を出力する電源回路を前記負荷判定部の判定結果に基づいて制御する、という手段を採用する。
【0008】
第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、負荷判定部は、オプション器機の容量性負荷を判定する、という手段を採用する。
【0009】
第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、異なる電圧の複数の電力によって動作する画像形成装置である、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源制御部が負荷判定部の判定結果に基づいて低い電圧から順次先に立ち上がるように電源回路をそれぞれ制御するので、オプション器機の接続状態に関わらず低い電圧の電源から順次先に立ち上げるという電源の立ち上がりシーケンスを確実に実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置(電子装置)の電源系に関する機能構成を示すブロック図である。この図において、符号1は主電源スイッチ、2は低圧電源基板、3は印刷エンジン基板、4〜6はオプション器機である。これら各構成要素のうち、主電源スイッチ1、低圧電源基板2及び印刷エンジン基板3は、画像形成装置本体の構成要素であり、オプション器機4〜6は、画像形成装置本体に接続されると共に当該画像形成装置本体から電力の供給を受けて動作する。
【0012】
主電源スイッチ1は、上記画像形成装置本体に備えられ、商用電源(AC100V)の画像形成装置本体への給電、つまり低圧電源基板2への供給をON/OFFする。低圧電源基板2は、5V電源回路2a、24V電源回路2b、12V電源回路2c、24V出力スイッチ2d及び12V出力スイッチ2e等が実装されたプリント配線版である。5V電源回路2aは、周知の整流回路や平滑回路を備え、入力である商用電源を整流・平滑化することにより5V電圧の直流電力を生成して印刷エンジン基板3に出力する。この5V電源回路2aから出力される5V電圧の直流電力は、図示しないが印刷エンジン基板3上に実装された各種電子回路に供給されると共に、図示するように印刷エンジン基板3を介して各オプション器機4〜6に供給される。なお、このような5V電源回路2aは、本画像形成装置において最も低い電圧の電力を出力する電源回路である。
【0013】
24V電源回路2bは、周知の整流回路や平滑回路を備え、入力である商用電源を整流・平滑化することにより24V電圧の直流電力を生成して24V出力スイッチ2dに出力する。このような24V電源回路2bは、本画像形成装置において最も高い電圧の電力を出力する電源回路である。
12V電源回路2cは、上記24V電源回路2bの出力を入力とし、当該24V電源回路2bの出力に基づいて12V電圧の直流電力を生成して12V出力スイッチ2eに出力する。すなわち、この12V電源回路2cは、24V電源をより低圧な12V電源に変換する一種のDC−DCコンバータである。
【0014】
24V出力スイッチ2dは、24V電源回路2bの出力端に設けられた開閉スイッチであり、24V電源回路2bから出力される24V電圧の直流電力の印刷エンジン基板3への供給を当該印刷エンジン基板3から入力される制御信号に基づいてON/OFFする。12V出力スイッチ2eは、12V電源回路2cの出力端に設けられた開閉スイッチであり、12V電源回路2cから出力される12V電圧の直流電力の印刷エンジン基板3への供給を当該印刷エンジン基板3から入力される制御信号に基づいてON/OFFする。
【0015】
上記24V電源回路2bから出力される24V電圧の直流電力は、図示しないが印刷エンジン基板3上に実装された各種電子回路に供給されると共に、図示するように印刷エンジン基板3を介して各オプション器機4〜6に供給される。また、上記12V電源回路2cから出力される12V電圧の直流電力は、図示しないが印刷エンジン基板3上に実装された各種電子回路に供給されると共に、図示するように印刷エンジン基板3を介して各オプション器機4〜6に供給される。
【0016】
印刷エンジン基板3は、図示するように5V電圧検出部3a、容量性負荷判定部3b及び電源制御部3c等が実装されたプリント配線板である。5V電圧検出部3aは、上記5V電源回路2aの出力電圧が所定のしきい値を越えたか否かを検出し、その検出結果を容量性負荷判定部3bに出力する。主電源スイッチ1がON状態とされて5V電源回路2aに商用電力が供給されると、5V電源回路2aの出力電圧は時間の経過に伴って徐々に上昇して最終的に5Vに到達するが、5V電圧検出部3aは、このような本画像形成装置の電源投入時における5V電源回路2aの出力電圧が電源投入後に所定のしきい値を越えたタイミングで容量性負荷判定部3bに5V電圧立上完了信号を出力する。
【0017】
容量性負荷判定部3bは、画像形成装置本体への各オプション器機4〜6の接続状態を検知することにより画像形成装置本体に接続されたオプション器機4〜6の容量性負荷を判定し、その判定結果を電源制御部3cに出力する。すなわち、各オプション器機4〜6は各々に専用の接続コネクタによって画像形成装置本体に接続されるが、容量性負荷判定部3bは、接続コネクタの状態をモニタすることによって、どのような種類のオプション器機が画像形成装置本体に接続されたかを検知し、当該検知結果を用いて予め記憶された各種類のオプション器機の容量性負荷値を示すデータテーブル(オプション器機テーブル)を検索することにより、画像形成装置本体に接続されている全てのオプション器機4〜6の容量性負荷の総量を判定する。
【0018】
電源制御部3cは、このような容量性負荷判定部3bの判定結果に基づいて上記24V出力スイッチ2d及び12V出力スイッチ2eの開閉を制御する。この電源制御部3cには、容量性負荷判定部3bの判定結果に応じた24V出力スイッチ2d及び12V出力スイッチ2eの開閉タイミングを示すデータテーブル(給電制御テーブル)が予め記憶されている。電源制御部3cは、この給電制御テーブルを容量性負荷判定部3bの判定結果に基づいて検索することにより24V出力スイッチ2d及び12V出力スイッチ2eの開閉タイミングを設定し、当該開閉タイミングを示す制御信号を24V出力スイッチ2d及び12V出力スイッチ2eにそれぞれ出力する。なお、この電源制御部3cの制御動作については後に詳説する。
【0019】
オプション器機4〜6は、原稿自動送り装置、ペーパーフィーダ、フィニッシャ等であり、所定の接続コネクタを介して画像形成装置本体に接続されることにより上記低圧電源基板2の5V電源回路2a、24V電源回路2b及び12V電源回路2cから各種電圧の電力の供給を受けて動作する。
【0020】
次に、このように構成された本画像形成装置の動作について、図2に示すタイミングチャートをも参照して詳しく説明する。
【0021】
本画像形成装置では、電源が投入されると、つまりユーザが操作して主電源スイッチ1をOFF状態からON状態に切り替えると、商用電源が5V電源回路2aに供給されて当該5V電源回路2aの出力電圧が時間の経過と共に順次上昇する。そして、5V電圧検出部3aは、上記5V電源回路2aの出力電圧が所定のしきい値を越えたか否かを検出し、その検出結果を容量性負荷判定部3bに出力する。5V電源回路2aの出力電圧がしきい値を越えた時点で、この5V電源回路2aから出力される5V電圧の直流電力は、完全に立ち上がった状態、つまり負荷である印刷エンジン基板3や各オプション器機4〜6に十分な電力を供給可能な状態となる。5V電圧検出部3aは、このように5V電圧の直流電力が立ち上がったことを検出結果として容量性負荷判定部3bに出力する。
【0022】
この結果、容量性負荷判定部3bは、各オプション器機4〜6の接続コネクタの状態をモニタすることによって、どのような種類のオプション器機が画像形成装置本体に接続されたかを検知し、当該検知結果に基づいて上記オプション器機テーブルを検索することにより画像形成装置本体に接続されている全てのオプション器機4〜6の容量性負荷の総量を判定する。そして、容量性負荷判定部3bは、この判定結果を電源制御部3cに出力する。
【0023】
そして、電源制御部3cは、上記判定結果に基づいて給電制御テーブルを検索することにより、24V出力スイッチ2d及び12V出力スイッチ2eの閉タイミングを設定する。すなわち、電源制御部3cは、より低い電圧の電源から先に順次立ち上げるために、つまり既に立ち上がっている5V電圧の直流電力の次に電圧が低い12V電圧の直流電力を当該12V電圧の直流電力よりも高い電圧である24V電圧の直流電力よりも先に立ち上げるために、図2に示すように時刻t1において12V出力スイッチ2eをOFF状態からON状態に切り替える制御信号を12V出力スイッチ2eに出力する。
【0024】
ここで、電源制御部3cの制御処理は、5V電圧検出部3aが5V電圧の直流電力の立ち上がりを検出し、さらに容量性負荷判定部3bが当該検出結果を受けてオプション器機4〜6の容量性負荷の総量を判定した後に行われるので、電源制御部3cは、容量性負荷判定部3bから判定結果が入力されると、上記時刻t1を容量性負荷の総量に関わりなく極力速いタイミングに設定する。
【0025】
このようにして上記時刻t1において12V出力スイッチ2eがON状態となると、12V電圧の直流電力は、図2に示すようにオプション器機4〜6等の負荷容量(特に容量性負荷の容量)に応じた時定数で順次上昇する。すなわち、負荷容量が大きい程、上記時定数は大きくなるので、図2の一点鎖線で示すように、12V電圧の直流電力が定格の12Vに到達する時間(立ち上がり時間)が長くなる。
【0026】
電源制御部3cは、このようにして12V出力スイッチ2eをON状態とすると、容量性負荷判定部3bの判定結果に基づいて給電制御テーブルから得られた時刻t2において24V出力スイッチ2dをOFF状態からON状態に切り替える制御信号を24V出力スイッチ2dに出力する。この時刻t2は、24V電圧の直流電力が時刻t1で投入された12V電圧の直流電力よりも先に立ち上がることのないタイミングとして設定されたものである。
【0027】
例えば、各オプション器機4〜6の容量性負荷が大きいために、時刻t1で投入された12V電圧の直流電力が図2の一点差線で示す変化に沿って立ち上がった場合、時刻t2で24V出力スイッチ2dをON状態にすると、図示するように12V電圧の直流電力が完全に立ち上がる前に24V電圧の直流電力が12V電圧の直流電力の電圧値を超えてしまうため各オプション器機4〜6等の電子回路を破壊してしまう虞がある。このような状態を回避するためには、図示するように時刻t2よりも遅れたタイミングである時刻t2’で24V出力スイッチ2dをON状態にする必要がある。
【0028】
各オプション器機4〜6の容量性負荷の大小によって上記時定数は変化するので、給電制御テーブルには、容量性負荷に応じて12V電圧の直流電力が完全に立ち上がる前に24V電圧の直流電力が12V電圧の直流電力の電圧値を超えてしまうことがない時刻が予め求められて登録されている。電源制御部3cは、このような給電制御テーブルを容量性負荷判定部3bの判定結果に基づいて検索して24V出力スイッチ2dのONタイミングを設定することにより、12V電圧の直流電力が完全に立ち上がる前に24V電圧の直流電力が12V電圧の直流電力の電圧値を超えることを確実に防止する。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、画像形成装置について説明したが、本発明は、異なる電圧の複数の電力によって動作する各種の電子装置に適用可能である。
(2)上記実施形態では、5V電圧検出部3aを用いて5V電圧の直流電力が立ち上がったことを検出するので、12V電圧の直流電力については、容量性負荷判定部3bの判定結果に拠らず、極力速いタイミングで投入するようにした。しかし、本発明は、これに限定されない。5V電圧の直流電力が立ち上がったことを検出することなく、つまり5V電圧検出部3aを削除し、容量性負荷判定部3bの判定結果に基づいて12V電圧の直流電力及び24V電圧の直流電力の投入タイミングを設定するようにしても良い。
【0030】
(3)上記実施形態の容量性負荷判定部3bは、各オプション器機4〜6の画像形成装置本体への接続状態を検知することによりオプション器機4〜6の容量性負荷を判定するが、本発明はこれに限定されるものではない。容量性負荷判定部の構成としては、例えば各オプション器機4〜6の容量性負荷をそれぞれ計測し、その合計値を電源制御部に出力するものでも良い。
(4)上記実施形態では、各電圧の直流電力の立ち上がりのみを考慮したが、本発明は各電圧の直流電力の立下りにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係わる画像形成装置の電源系に関する機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる画像形成装置の電源制御動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1…主電源スイッチ、2…低圧電源基板、2a…5V電源回路、2b…24V電源回路、2c…12V電源回路、2d…24V出力スイッチ、2e…12V出力スイッチ、3…印刷エンジン基板、3a…5V電圧検出部、3b…容量性負荷判定部、3c…電源制御部、4…オプション器機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる電圧の複数の電力によって動作する電子装置であって、
前記電力を発生させる複数の電源回路と、
別途接続されるオプション器機の負荷を判定する負荷判定部と、
該負荷判定部の判定結果に基づいて低い電圧の電力から順次先に立ち上がるように前記電源回路をそれぞれ制御する電源制御部と
を具備することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記電源制御部は、前記負荷判定部の判定結果に基づいて前記電源回路の電源出力タイミングを調節することにより低い電圧の電力から順次先に立ち上がるように前記電源回路をそれぞれ制御することを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
最も低い電圧の電力を出力する電源回路の立ち上がり状態を検出する電圧検出部をさらに備え、電源制御部は、前記電圧検出部の検出結果に基づいて最も低い電圧の電力以外の電力を出力する電源回路を前記負荷判定部の判定結果に基づいて制御することを特徴とする請求項1または2記載の電子装置。
【請求項4】
負荷判定部は、オプション器機の容量性負荷を判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子装置。
【請求項5】
異なる電圧の複数の電力によって動作する画像形成装置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−219305(P2009−219305A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62490(P2008−62490)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】