説明

電子部品、電子デバイス、及び電子部品の製造方法

【課題】耐湿性を高めることが可能な電子部品、電子デバイス、及び電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、圧電基板10と、圧電基板10上に設けられた直列共振子12及び並列共振子14と、圧電基板10上に設けられ、直列共振子12及び並列共振子14と電気的に接続された信号配線20と、圧電基板10上に設けられ、直列共振子12、並列共振子14、及び信号配線20を囲む金属壁32と、金属壁32に接触し、直列共振子12及び並列共振子14上に空隙34が形成されるように直列共振子12及び並列共振子14と信号配線20とを覆い、液晶ポリマーからなる封止部38と、を具備する電子部品、電子部品を備える電子デバイス、及び電子部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品、電子デバイス、及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波デバイスは、移動体通信端末が備えるフィルタ、デュープレクサ等として用いられる。弾性波共振子には、弾性表面波を用いた弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)共振子、境界波を用いた弾性境界波共振子、圧電薄膜を用いた圧電薄膜共振子(Film Bulk Acoustic Resonator:FBAR)等がある。弾性波を励振する機能領域は、例えば弾性表面波デバイスではIDT(Inter Digital Transducer)等の電極であり、FBARでは圧電薄膜を挟みこむ電極の重なる領域である。弾性波デバイスの小型化を図り、かつ弾性波素子を保護するため、弾性波素子が形成された基板を例えば樹脂等により封止することがある。
【0003】
例えば特許文献1には、エポキシ樹脂を用いて封止する発明が記載されている。また、封止部材として例えばポリイミドを用いることがある。しかしポリイミドは吸湿性が高く、弾性波素子の保護が不十分となる可能性がある。特許文献2、特許文献3、及び特許文献4には、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)を用いて封止する発明が記載されている。液晶ポリマーは、例えばポリイミド樹脂等と比較して吸湿性が低い。従って、封止部材として適している。また特許文献3の0002段落に記載されているように、液晶ポリマーをシート化した場合、シートの押し出し方向(MD:Machine Direction、シート製造時のローラーの押し出す方向)に液晶ポリマーが配向する。液晶ポリマーシートは、配向方向によって物性値が著しく違う。一般的には、液晶ポリマーシートの吸湿性、接着性等の性能は、MD方向に配向している場合の性能を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−227748号公報
【特許文献2】特許番号第2798375号
【特許文献3】特開平9−174786号公報
【特許文献4】特開2008−103559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液晶ポリマーと、液晶ポリマーが接着する基材との組み合わせ、又は接着時の条件等によっては、所望の接着性が得られないことがある。接着性が不十分である場合、液晶ポリマーと基材との界面から水分等が浸入し、電子部品の保護が不十分となる可能性がある(特許文献4の0002段落参照)。本発明は上記課題に鑑み、耐湿性を高めることが可能な電子部品、電子デバイス、及び電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられた機能部と、前記基板上に設けられ、前記機能部と電気的に接続された配線と、前記基板上に設けられ、前記機能部、及び前記配線を囲む金属壁と、前記金属壁に接触し、前記機能部上に空隙が形成されるように前記機能部と前記配線とを覆い、液晶ポリマーからなる封止部と、を具備する電子部品である。本発明によれば、耐湿性を高めることが可能な電子部品を提供することができる。
【0007】
上記構成において、前記金属壁は銅からなる構成とすることができる。この構成によれば、封止部と金属壁の接着性は高くなる。
【0008】
上記構成において、前記金属壁の表面粗さは0.1〜10μmである構成とすることができる。この構成によれば、封止部と金属壁の接着性はより高くなる。
【0009】
上記構成において、前記金属壁は前記機能部及び前記配線を完全に囲んでいる構成とすることができる。この構成によれば、耐湿性を効果的に高めることができる。
【0010】
上記構成において、前記機能部は弾性波素子である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記機能部の上に前記空隙が形成されるように、前記機能部を覆う金属板を具備し、前記封止部は、前記金属板を覆う構成とすることができる。この構成によれば、電子部品の特性が良好に維持される。
【0012】
上記構成において、前記封止部は配向性を有し、かつ前記金属壁の上面と接触し、前記封止部の配向方向と、前記金属壁の上面方向とは平行である構成とすることができる。この構成によれば、より効果的に接着性を高めることができる。
【0013】
上記構成において、前記配線と電気的に接続され、前記封止部を上下方向に貫通する端子を具備する構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、複数の前記端子のうちの接地端子と、前記金属壁とは電気的に接続されている構成とすることができる。この構成によれば、電子部品の特性が安定する。
【0015】
上記構成において、上記記載の電子部品が実装されたプリント配線基板を備える構成とすることができる。この構成によれば、耐湿性を高めることが可能な電子デバイスを提供することができる。
【0016】
上記構成において、前記電子部品は、前記プリント配線基板に埋め込まれ、前記封止部は、前記電子部品全体を覆うように設けられている構成とすることができる。
【0017】
本発明は、基板上に、機能部と、前記機能部と電気的に接続された配線とを設ける工程と、メッキ法により、前記基板上に、前記機能部と前記配線とを囲むような金属壁を設ける工程と、液晶ポリマーからなり前記金属壁と接触する封止部により、前記機能部上に空隙が形成されるように、前記機能部及び前記配線を封止する工程と、を有する電子部品の製造方法である。本発明によれば、耐湿性を高めることが可能な電子部品の製造方法を提供することができる。
【0018】
上記構成において、前記機能部と前記配線とを設ける工程の後に、前記機能部と前記配線とを覆い、かつ前記基板の前記金属壁が設けられるべき領域が露出するように、第1レジストを設ける工程と、前記第1レジスト上及び前記領域上にシードメタルを設ける工程と、前記給電線の上であって、前記第1レジストの機能部上の領域、及び前記金属壁が設けられるべき領域が露出するように第2レジストを設ける工程と、メッキ法により前記第2レジスト上に、前記機能部の上に前記空隙が形成されるような金属板を設ける工程と、を有し、前記金属壁を設ける工程と前記金属板を設ける工程とは、前記シードメタルに給電するメッキ法により、同時に実施される構成とすることができる。この構成によれば、工程を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐湿性を高めることが可能な電子部品、電子デバイス、及び電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、実施例1に係るラダー型フィルタを例示する平面図である。
【図2】図2は、実施例1に係るラダー型フィルタを例示する平面図である。
【図3】図3(a)から図3(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタを例示する断面図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する平面図である。
【図5】図5(a)から図5(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する断面図である。
【図6】図6(a)から図6(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する断面図である。
【図7】図7(a)及び図7(b)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する平面図である。
【図8】図8(a)から図8(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する断面図である。
【図9】図9(a)から図9(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する断面図である。
【図10】図10(a)及び図10(b)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する平面図である。
【図11】図11(a)から図11(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する断面図である。
【図12】図12(a)から図12(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する断面図である。
【図13】図13(a)及び図13(b)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する平面図である。
【図14】図14(a)から図14(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する断面図である。
【図15】図15は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する断面図である。
【図16】図16は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する平面図である。
【図17】図17(a)から図17(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する断面図である。
【図18】図18(a)は、実施例2に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。図18(b)は、実施例3に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1(a)から図2は、実施例1に係るラダー型フィルタを例示する平面図である。図1(a)は、図2における封止部及び金属板を透視した平面図である。図1(b)は、図2における封止部を透視した平面図である。
【0023】
図1(a)から図2に示すように、実施例1に係るラダー型フィルタ100は、圧電基板10、直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、接地配線23、送信端子22、アンテナ端子24、接地端子26、金属板28、支持柱30、金属壁32、半田ボール36、及び封止部38を備える。
【0024】
図1(a)に示すように、圧電基板10の上面には、反射電極16、IDT18、信号配線20、接地配線23、支持柱30及び金属壁32が設けられている。IDT18は対向する櫛形電極からなり、弾性波を励振する。反射電極16は、IDT18の両側に設けられている。反射電極16及びIDT18は、直列共振子12及び並列共振子14を形成する。このように、ラダー型フィルタの機能部は弾性表面波素子である。例えば4つの直列共振子12と2つの並列共振子14とは、ラダー型に配置されている。直列共振子12同士は直列配線19により電気的に接続されている。直列共振子12と並列共振子14とは並列配線21により電気的に接続されている。また、4つの直列共振子12のうち直列共振子12aは、直列配線19を介して送信端子22と電気的に接続されている。直列共振子12bは、直列配線19を介してアンテナ端子24と電気的に接続されている。並列共振子14は、接地配線23を介して接地端子26と電気的に接続されている。送信端子22には例えば高周波信号が入力される。信号配線20は高周波信号を伝送する。アンテナ端子24は、ラダー型フィルタ100とアンテナとを接続し、高周波信号を出力する。
【0025】
支持柱30は、直列共振子12の両側、直列共振子12a及び並列共振子14の両側、並びに直列共振子12b及び並列共振子14の両側に配置されている。また、直列配線19の一部、並列配線21の一部に沿った位置、及び直列配線19の上に配置されている。支持柱30は、直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、接地配線23と離間している。金属壁32は、直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、接地配線23、送信端子22、アンテナ端子24、接地端子26、及び支持柱30を囲むように、圧電基板10の外周縁部に設けられている。また、接地端子26と金属壁32とは電気的に接続されている。
【0026】
図1(b)に示すように、金属板28は直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、接地配線23、及び支持柱30の上に設けられる。金属板28は支持柱30に支持され、送信端子22、アンテナ端子24、接地端子26、及び金属壁32とは離間している。
【0027】
図2に示すように、封止部38は、圧電基板10全体の上に設けられる。このように封止部38は、機能部である直列共振子12及び並列共振子14、信号配線20、並びに接地配線23を封止する。封止部38上には半田ボール36が設けられている。後述するように、複数の半田ボール36の各々は、送信端子22、アンテナ端子24、及び接地端子26に含まれる。
【0028】
断面図を参照して、ラダー型フィルタ100の説明を更に続ける。図3(a)から図3(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタを例示する断面図である。図3(a)は図1(a)から図2のA−A、図3(b)は図1(a)から図2のB−B、図3(c)は図1(a)から図2のC−Cに沿った断面図である。
【0029】
図3(a)に示すように、直列共振子12及び並列共振子14は空隙33に露出している。金属板28が設けられている。直列共振子12及び並列共振子14の上には、金属板28が、両側には支持柱30が設けられている。支持柱30は、空隙33が形成される程度の高さにおいて、金属板28を支持する。金属板28は、直列共振子12及び並列共振子14の上に空隙33が形成されるように、直列共振子12及び並列共振子14を覆う。空隙33の高さは、弾性波の励振が妨げられない程度以上の高さである。支持柱30の高さは例えば1〜30μmである。また、封止部38は、金属板28の側面及び上面、支持柱30の側面、並びに金属壁32の側面及び上面32aに接触、接着し、かつ覆う。圧電基板10の上面を基準として、金属板28と金属壁32とは同じ高さを有する。
【0030】
図3(b)に示すように、信号配線20上に絶縁層17が設けられ、絶縁層17上に支持柱30が設けられている。信号配線20と金属板28との間には空隙34が形成される。このように、信号配線20は、金属板28及び支持柱30と離間し、絶縁する。
【0031】
図3(c)に示すように、送信端子22は、下地層40a、柱状端子42a及び半田ボール36を含む。下地層40aは圧電基板10上に設けられ、柱状端子42aは下地層40aの上に設けられる。柱状端子42a上には、封止部38上に露出する半田ボール36が設けられている。圧電基板10を基準として、柱状端子42aの高さは、金属壁32及び金属板28の高さと同じである。接地端子26は、下地層40b、柱状端子42b及び半田ボール36を含む。また断面図は省略するが、アンテナ端子24は、下地層40c、柱状端子42c及び半田ボール36を含む。このように、送信端子22、アンテナ端子24、及び接地端子26は封止部38を貫通する端子である。
【0032】
圧電基板10は、例えばLiTaO、及びLiNbO等の圧電体からなる。直列共振子12、並列共振子14、信号配線20、接地配線23、送信端子22、アンテナ端子24、接地端子26、下地層40a及び下地層40bは例えばアルミニウム(Al)等の金属からなる。金属板28、支持柱30、柱状端子42a及び柱状端子42b、並びに金属壁32は、例えば銅(Cu)等の金属からなる。半田ボール36は、例えば錫銀(SnAg)等の半田からなる。封止部38は、液晶ポリマーからなる。絶縁層17は、例えば窒化シリコン(SiN)等の絶縁体からなる。
【0033】
次に、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法について説明する。図4(a)及び図4(b)、図7(a)及び図7(b)、図10(a)及び図10(b)、図13(a)及び図13(b)、並びに図16は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する平面図である。図5(a)から図6(c)、図8(a)から図9(c)、図11(a)から図12(c)、図14(a)から図15、並びに図17(a)から図17(c)は、実施例1に係るラダー型フィルタの製造方法を例示する断面図である。
【0034】
図5(a)は図4(a)のA−A、図5(b)は図4(a)のB−B、図5(c)は図4(a)のC−Cに沿った断面図である。図4(a)、及び図5(a)から図5(c)に示すように、ウェハ状の圧電基板10の上面に、例えば蒸着法、又はスパッタリング法等により、アルミニウム等の金属からなる金属層を設ける。例えばエッチング法、又はリフトオフ法等により、金属層をパターニングし、金属層から反射電極16、IDT18、信号配線20、接地配線23、下地層40a、下地層40b及び下地層40cを設ける。下地層40cはアンテナ端子24に含まれることになる層である。これにより、直列共振子12及び並列共振子14が形成される。さらに、信号配線20の上面の一部に、絶縁層17を設ける。なお、後の工程において、圧電基板10は、図中に点線で示したダイシングライン11に沿ってダイシングされ、個片化される。
【0035】
図6(a)は図4(b)のA−A、図6(b)は図4(b)のB−B、図6(c)は図4(b)のC−Cに沿った断面図である。図4(b)、及び図6(a)から図6(c)に示すように、圧電基板10の上にフォトフォトレジスト50(第1レジスト)を設ける。なお図4(b)中において、フォトレジスト50が設けられた領域は斜線で示した。フォトレジスト50は、直列共振子12、並列共振子14、信号配線20及び接地配線23を覆う。またフォトレジスト50は、開口部56、開口部58、開口部60、開口部62、開口部64、及び開口部66を有する。開口部56及び開口部66は支持柱30が設けられるべき領域に形成されている。開口部58は金属壁32が設けられるべき領域に形成されている。開口部60は、柱状端子42aが設けられるべき領域に形成されている。開口部62は、後述する柱状端子42cが設けられるべき領域に形成されている。開口部64は、柱状端子42bが設けられるべき領域に形成されている。圧電基板10を上から見て、開口部58と開口部64とは連続している。開口部56及び開口部58からは圧電基板10が露出する。開口部60からは下地層40aが、開口部62からは下地層40cが、開口部64からは下地層40bが、それぞれ露出する。開口部66からは絶縁層17が露出する。フォトレジスト50の厚さは、例えば1〜30μmである。
【0036】
図8(a)は図7(a)のA−A、図8(b)は図7(a)のB−B、図8(c)は図7(a)のC−Cに沿った断面図である。図7(a)、及び図8(a)から図8(c)に示すように、例えばスパッタリング法、又は蒸着法等により、圧電基板10上の全体にシードメタル52を設ける。なお図7(a)中において、シードメタル52が設けられた領域は格子斜線で示した。シードメタル52は圧電基板10のフォトレジスト50が設けられていない領域、下地層40a及び下地層40b、フォトレジスト50の上面及び側面に接触する。シードメタル52は、例えばアルミニウム等の金属からなる。
【0037】
図9(a)は図7(b)のA−A、図9(b)は図7(b)のB−B、図9(c)は図7(b)のC−Cに沿った断面図である。図7(b)、及び図9(a)から図9(c)に示すように、シードメタル52上にフォトレジスト54(第2レジスト)を設ける。なお図7(b)中において、フォトレジスト54が設けられた領域は斜線で、シードメタル52が設けられた領域は格子斜線で示した。フォトレジスト54は、開口部56、開口部58、開口部60、開口部62、開口部64、及び開口部66上には形成されない。また、フォトレジスト54は、金属板28が設けられるべき領域に開口部68を有する。各開口部からはシードメタル52が露出する。フォトレジスト54が設けられた領域では、シードメタル52がフォトレジスト50とフォトレジスト54とに上下から挟まれる。
【0038】
図11(a)は図10(a)のA−A、図11(b)は図10(a)のB−B、図11(c)は図10(a)のC−Cに沿った断面図である。図10(a)、及び図11(a)から図11(c)に示すように、電解メッキ法により、各々銅(Cu)からなる金属板28、支持柱30、金属壁32、柱状端子42a及び柱状端子42bを形成する。シードメタル52は、電解メッキ法における給電線として機能する。このように、金属板28を設ける工程、支持柱30を設ける工程、金属壁32を設ける工程、並びに柱状端子42a及び柱状端子42bを設ける工程は、シードメタル52に給電する1回のメッキ法により同時に実施される。
【0039】
図12(a)は図10(b)のA−A、図12(b)は図10(b)のB−B、図12(c)は図10(b)のC−Cに沿った断面図である。図10(b)、及び図12(a)から図12(c)に示すように、例えばレジスト剥離液による超音波洗浄、又は更に酸素プラズマアッシングを併用する方法により、フォトレジスト50及びフォトレジスト54を除去する。このとき、シードメタル52の一部も除去される。これにより、直列共振子12及び並列共振子14と金属板28との間には空隙33が形成される。信号配線20と金属板28との間には空隙34が形成される。
【0040】
図14(a)は図13(a)のA−A、図14(b)は図13(a)のB−B、図14(c)は図13(a)のC−Cに沿った断面図である。なお、シードメタル52は、金属板28、支持柱30、金属壁32、柱状端子42a及び柱状端子42bと一体となるため、図示を省略する。図13(a)、及び図14(a)から図14(c)に示すように、圧電基板10の上面を覆うように、封止部38を設ける。封止部38を設ける工程は、例えば液晶ポリマーシートを圧電基板10上に配置し、加熱及び加圧することで行われる。液晶ポリマーシートは熱可塑性を有している。従って、加熱及び加圧された液晶ポリマーシートは、支持柱30と金属壁32との間、柱状端子42a及び柱状端子42bと金属壁32との間、柱状端子42aと柱状端子42bとの間に充填される。このように、液晶ポリマーシートが金属板28、金属壁32、柱状端子42a及び柱状端子42bに熱圧着されて、封止部38を形成する。液晶ポリマーは粘性が高いため、金属板28及び支持柱30の内側への流入は抑制され、空隙33は確保される。液晶ポリマーシートとして、例えばクラレ株式会社の製品「ベクスター」、又はジャパンゴアテックス株式会社の製品「BIAC」等を使用することができる。
【0041】
図15は図13(b)のC−Cに沿った断面図である。図13(b)、及び図15に示すように、例えばレーザードリリング及びデスミア処理等により、封止部38に開口部39a、開口部39b及び開口部39cを形成する。図13(b)に示すように、開口部39aは、送信端子22が設けられるべき領域に形成される。開口部39bは、接地端子26が設けられるべき領域に形成される。開口部39cは、アンテナ端子24が設けられるべき領域に形成される。開口部39aからは柱状端子42aが露出する。開口部39bからは柱状端子42bが露出する。断面図は省略するが、開口部39cからは柱状端子42cが露出する。
【0042】
図17(a)は図16のA−A、図17(b)は図16のB−B、図17(c)は図16のC−Cに沿った断面図である。図16、及び図17(c)に示すように、開口部39a、開口部39b及び開口部39cに、例えば半田ペーストの印刷、及び半田リフロー処理等を行うことにより、半田ボール36を形成する。図17(a)から図17(c)に矢印で示すように、ダイシングライン11に沿って圧電基板10を切断するダイシング処理を行う。以上の工程により、複数の弾性波デバイスが形成される。
【0043】
実施例1に係るラダー型フィルタ100は、金属壁32が、直列共振子12及び並列共振子14と、信号配線20及び接地配線23と、送信端子22、アンテナ端子24及び接地端子26と、を囲み、液晶ポリマーからなる封止部38が金属壁32と接触する。これにより、金属壁32と封止部38との間において高い接着性を得ることができる。この結果、金属壁32と封止部38との界面からの水分の浸入が抑制され、ラダー型フィルタの耐湿性が高まる。
【0044】
特に、金属壁32が銅(Cu)、又は銅を主成分とする合金からなる場合、封止部38と金属壁32との接着性はより高くなる。また金属壁32は、アルミニウム(Al)等、封止部38との高い接着性を得ることができる他の金属からなるとしてもよい。
【0045】
液晶ポリマーと金属との接着性は、例えば温度120℃、湿度95%等の高温高湿の環境下では低下することがある。しかし、金属の表面粗さが大きい場合、アンカー効果により液晶ポリマーと金属の接着性が高まる。従って、金属壁32の表面粗さが大きい方が、封止部38との接着性は高まる。しかし、表面粗さが大きすぎると、電気容量が変動し、ラダー型フィルタの高周波特性が悪化することがある。従って、金属壁32の表面粗さ(例えばRMS:二乗平均粗さ)が0.1〜10μm程度であることが好ましい。金属壁32をメッキ法により形成することで、0.1〜10μm程度の表面粗さの金属壁32を得ることができる。これにより、封止部38と金属壁32との接着性はより高まり、高温高湿環境下においても封止部38の剥離を抑制することができる。
【0046】
例えば図3(a)から図3(c)に示すように、封止部38は、金属板28、金属壁32、柱状端子42a及び柱状端子42b、各々の上面に接触している。また封止部38は、金属板28、支持柱30、金属壁32、柱状端子42a及び柱状端子42b、各々の側面に接触している。封止部38を形成する液晶ポリマーシートは、特許文献3に記載されているように、一般的に配向性を有する。そのため、液晶ポリマーシートを凹凸のある構造体に熱圧着する際に、構造体の側面では配向性にズレが生じることがある。液晶ポリマーシートのうち、上記の各上面と平行に接触する領域では配向性が保たれる。その一方で、各側面と接触する領域では配向性が壊れることがある。液晶ポリマーシートの吸湿性等の各種性能は、液晶ポリマーシートがMD方向に配向した場合の性能である。このため、封止部38と各上面との接着性は、封止部38と各側面との接着性より高くなる。従って、封止部38が金属壁32の上面32aと接着することで、より剥がれにくくなり、高い耐湿性を得ることができる。上面32aの方向と、液晶ポリマーシートのMD方向、言い換えれば封止部38の配向方向とは平行である。また、配向方向と上面32aの方向との間の角度が例えば5°以下等のように、配向方向と上面32aの方向とは平行にごく近くてもよく、より好ましくは平行がよい。
【0047】
金属壁32は、直列共振子12及び並列共振子14と、信号配線20及び接地配線23と、送信端子22、アンテナ端子24及び接地端子26と、を完全に囲んでいなくてもよい。つまり、圧電基板10の外周縁部に、金属壁32が設けられていない領域があってもよい。しかしこの場合、圧電基板10の外周縁部に、封止部38が金属壁32の上面32aとは接着せず、金属壁32の側面と接着する箇所が生じる。上記のように、液晶ポリマーシートには配向性があるため、封止部38と金属壁32の側面との接着性は、封止部38と金属壁32の上面32aとの接着性より低い。このため、封止部38と金属壁32の側面間の界面から、水分が浸入する可能性がある。水分の浸入を抑制するためには、金属壁32が、直列共振子12及び並列共振子14と、信号配線20及び接地配線23と、送信端子22、アンテナ端子24及び接地端子26と、を完全に囲むことが好ましい。これにより、金属壁32の上面32aと接着した封止部38により封止することができ、ラダー型フィルタ100の耐湿性を効果的に高めることができる。
【0048】
金属壁32が圧電基板10の外周縁部を囲んでいるため、圧電基板10の上面が広がる方向から端子を引き出すことは困難である。送信端子22、アンテナ端子24及び接地端子26は、封止部38を貫通することにより、ラダー型フィルタ100と外部との電気的な接続を可能にする。
【0049】
封止部38は、支持柱30に支持された金属板28を覆う。言い換えれば、金属板28及び支持柱30が封止部38を支持する。このため、封止部38が直列共振子12及び並列共振子14に接触することが抑制され、空隙33が確保される。このため、ラダー型フィルタ100の特性は良好に維持される。なお、金属板28及び支持柱30がない場合でも、空隙33が確保されればよい。しかし、例えば後述する実施例2及び実施例3のように、ラダー型フィルタ100をプリント配線基板等に実装し、樹脂封止する場合等に、封止部38に圧力が加わることがある。封止部38が圧力により潰れると、空隙33の確保は困難となる。金属板28及び支持柱30により、封止部38の潰れは抑制され、空隙33の確保が可能となる。封止部38との接着性を高めるため、金属板28、柱状端子42a及び柱状端子42bも、金属壁32と同様に、例えばメッキ法により形成された銅(Cu)からなることが好ましい。
【0050】
図10(a)、及び図11(a)から図11(c)に示すように、金属壁32を設ける工程と、金属板28を設ける工程と、支持柱30を設ける工程と、柱状端子42a及び柱状端子42bを設ける工程とは、シードメタル52に給電するメッキ法により、同時に実施される。このため、工程が簡略化される。
【0051】
接地端子26と金属壁32とは電気的に接続され、金属壁32がラダー型フィルタを外部のノイズから遮蔽するシールドとして機能する。このため、ラダー型フィルタの特性が安定する。ラダー型フィルタ100は送信フィルタとしたが、例えば受信フィルタでもよい。ラダー型フィルタ100が受信フィルタである場合、ラダー型フィルタ100は送信端子22に代えて受信端子を備える。また、ラダー型フィルタに接続するコイル、コンデンサ又は伝送線路等の受動素子を集積化してもよい。受動素子は、例えば支持柱30及び金属板28の形成と同時に、支持柱30及び金属壁28と同じ金属により形成してもよい。
【0052】
ラダー型フィルタ以外に、多重モード型フィルタ、デュアルフィルタ、デュープレクサ等でもよい。また弾性表面波素子以外に、弾性境界波素子、圧電薄膜共振子素子等を用いてもよい。圧電薄膜共振子素子を用いる場合、圧電基板10の代わりに、例えばシリコン(Si)からなる基板を用いる。またIDT18の代わりに、圧電体からなる圧電薄膜を挟む上部電極及び下部電極とが重なる領域が弾性波を励振する機能部となる。さらに、弾性波を利用せず、基板上に形成された機能部上に空隙を設ける電子部品でもよい。
【実施例2】
【0053】
実施例2は、ラダー型フィルタを備える弾性波デバイス(電子デバイス)の例である。図18(a)は、実施例2に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。図18(a)において、ラダー型フィルタ100の図1(a)から図2のC−Cに沿った断面を図示している。
【0054】
図18(a)に示すように、実施例2に係る弾性波デバイス200は、ラダー型フィルタ100、プリント配線基板70及びモールド樹脂76を備える。プリント配線基板70は例えば樹脂からなり、配線72を備える。複数のプリント配線基板70は積層され、配線72同士はビア配線74により電気的に接続されている。ラダー型フィルタ100は、半田ボール36により配線72と電気的に接続されている。このように、ラダー型フィルタ100はプリント配線基板70にフリップチップ実装されている。最上層に位置するプリント配線基板70の上には、ラダー型フィルタ100を封止するモールド樹脂76が設けられている。
【0055】
実施例2によれば、弾性波デバイス200が備えるラダー型フィルタ100の封止部38は剥がれにくい。従って、弾性波デバイス200の耐湿性は向上する。また、ラダー型フィルタ100が備える直列共振子12及び並列共振子14は、封止部38に加えてモールド樹脂76により封止されるため、より効果的に保護される。
【実施例3】
【0056】
実施例3は、プリント配線基板に埋め込まれたラダー型フィルタを備える弾性波デバイスの例である。図18(b)は、実施例3に係る弾性波デバイスを例示する断面図である。図18(a)において、ラダー型フィルタ100の図1(a)から図2のB−Bに沿った断面を図示している。
【0057】
図18(b)に示すように、実施例3に係る弾性波デバイス300において、ラダー型フィルタ100は、積層されたプリント配線基板70内に埋め込まれる。ラダー型フィルタ100は、例えば樹脂等の絶縁体からなる絶縁部78に覆われる。絶縁部78により、ラダー型フィルタ100は封止され固定される。
【0058】
実施例3によれば、弾性波デバイス200が備えるラダー型フィルタ100の封止部38は剥がれにくい。従って、弾性波デバイス300の耐湿性は向上する。また、ラダー型フィルタ100が備える直列共振子12及び並列共振子14は、封止部38に加えて絶縁部78により封止されるため、より効果的に保護される。
【0059】
実施例2及び実施例3では、送信フィルタであるラダー型フィルタを備える弾性波デバイスを例としたが、弾性波デバイスは例えば、受信フィルタ、デュアルフィルタ又はデュープレクサ等を備えるものでもよい。また弾性波デバイスは、フィルタと共に、例えばキャパシタ、インダクタ又は伝送線路等の受動素子を集積化したものでもよい。
【0060】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
圧電基板 10
直列共振子 12
並列共振子 14
反射電極 16
IDT 18
信号配線 20
接地配線 23
送信端子 22
アンテナ端子 24
接地端子 26
金属板 28
支持柱 30
金属壁 32
上面 32a
空隙 33、34
半田ボール 36
封止部 38
下地層 40a、40b、40c
柱状端子 42a、42b、42c
ラダー型フィルタ 100
弾性波デバイス 200、300

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた機能部と、
前記基板上に設けられ、前記機能部と電気的に接続された配線と、
前記基板上に設けられ、前記機能部、及び前記配線を囲む金属壁と、
前記金属壁に接触し、前記機能部上に空隙が形成されるように前記機能部と前記配線とを覆い、液晶ポリマーからなる封止部と、を具備することを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記金属壁は銅からなることを特徴とする請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
前記金属壁の表面粗さは0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品。
【請求項4】
前記金属壁は前記機能部及び前記配線を完全に囲んでいることを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の電子部品。
【請求項5】
前記機能部は弾性波素子であることを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載の電子部品。
【請求項6】
前記機能部の上に前記空隙が形成されるように、前記機能部を覆う金属板を具備し、
前記封止部は、前記金属板を覆うことを特徴とする請求項1から5いずれか一項記載の電子部品。
【請求項7】
前記封止部は配向性を有し、かつ前記金属壁の上面と接触し、
前記封止部の配向方向と、前記金属壁の上面方向とは平行であることを特徴とする請求項1から6いずれか一項記載の電子部品。
【請求項8】
前記配線と電気的に接続され、前記封止部を上下方向に貫通する端子を具備することを特徴とする請求項1から7いずれか一項記載の電子部品。
【請求項9】
複数の前記端子のうちの接地端子と、前記金属壁とは電気的に接続されていることを特徴とする請求項8記載の電子部品。
【請求項10】
請求項1から9いずれか一項記載の電子部品が実装されたプリント配線基板を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項11】
前記電子部品は、前記プリント配線基板に埋め込まれ、
前記封止部は、前記電子部品全体を覆うように設けられていることを特徴とする請求項10記載の電子デバイス。
【請求項12】
基板上に、機能部と、前記機能部と電気的に接続された配線とを設ける工程と、
メッキ法により、前記基板上に、前記機能部と前記配線とを囲むような金属壁を設ける工程と、
液晶ポリマーからなり前記金属壁と接触する封止部により、前記機能部上に空隙が形成されるように、前記機能部及び前記配線を封止する工程と、を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記機能部と前記配線とを設ける工程の後に、前記機能部と前記配線とを覆い、かつ前記基板の前記金属壁が設けられるべき領域が露出するように、第1レジストを設ける工程と、
前記第1レジスト上及び前記領域上にシードメタルを設ける工程と、
前記給電線の上であって、前記第1レジストの機能部上の領域、及び前記金属壁が設けられるべき領域が露出するように第2レジストを設ける工程と、
メッキ法により前記第2レジスト上に、前記機能部の上に前記空隙が形成されるような金属板を設ける工程と、を有し、
前記金属壁を設ける工程と前記金属板を設ける工程とは、前記シードメタルに給電するメッキ法により、同時に実施されることを特徴とする請求項12記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−199833(P2012−199833A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63365(P2011−63365)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】