説明

電子部品の製造装置、電子部品の製造方法、およびLED照明の製造方法

【課題】電子素子の損傷、ハンダの飛び散り、および基板の損傷を抑制して、従来よりも短時間で電子素子をプリント配線板に対してハンダ付けすることが可能な、電子部品の製造装置および電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】基板122Aおよび該基板上の配線パターン122Bを有するプリント配線板122に電子素子108を実装する本発明の電子部品112の製造装置100は、プリント配線板122の配線パターン122B上にハンダ104を供給する供給装置102と、ハンダ104上に電子素子108を載置する載置装置106と、電子素子108を載置したハンダ104に向けて、700nm〜1100nmの範囲内に発光中心波長を有する光をプリント配線板の裏面124側から照射するレーザ112と、を有し、光は基板122A中を透過して配線パターン122Bに到達し、配線パターン122Bを加熱してハンダ104を融解させ、電子素子108をプリント配線板122にハンダ付けすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子をプリント配線板に実装して電子部品を製造するための、電子部品の製造装置、電子部品の製造方法、および該製造方法の工程を含むLED照明の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板およびこの基板上の配線パターンを有するプリント配線板に電子素子を実装して電子部品を得る際、電子素子をプリント配線板にハンダ付けする主流な方法は、リフロー方式である。これは、プリント配線板の表面の配線パターン上にハンダを介して電子素子を搭載し、その後プリント配線板をリフロー炉内に搬送して、リフロー炉内でプリント配線板に所定温度の熱風を吹きつけることで、ハンダペーストを融解させ、電子素子をプリント配線板にハンダ付けするものである。リフロー炉内の温度は250℃〜260℃程度となる。
【0003】
リフロー方式は上記のような高温を要するうえに、ハンダのみを加熱するものではなく、基板および電子素子の全体をも加熱してしまう。そのため、基板がゆがんで品質に影響が出る、電子素子に熱による悪影響が及ぶ、あるいは長尺基板の場合は長大なリフロー炉が必要になる、などの問題があった。電子素子への悪影響として、電子素子がLEDであった場合には、長時間リフロー炉の熱に曝されると、LED部分の蛍光剤が劣化し、その結果十分な輝度が得られないという問題もあった。
【0004】
そこで近年、レーザによってハンダを局所的に加熱して、電子素子をプリント配線板にハンダ付けする手法が注目され始めている。
【0005】
まず図4に示すように、プリント配線板422上にハンダ404を介して電子素子408を載置したのち、プリント配線板422の表面側からハンダ404に対して直接レーザにより光を照射して、ハンダを融解させ、電子素子をプリント配線板にハンダ付けする方法が知られている。
【0006】
また特許文献1には、ハンダを介して電子部品を載置したプリント配線板の裏面側からレーザにより光を照射して、ハンダを融解させ、電子素子をプリント配線板にハンダ付けする方法が記載されている。この方法では、図5に示すように、ポリイミド樹脂を主成分としたフレキシブル基板522Aおよび配線パターン522Bからなるプリント配線板522の配線パターン522B上にハンダ504を介して電子素子508を載置し、プリント配線板の裏面524側からYAGレーザ等により光を照射する。この方法では、レーザ光は基板522Aを透過せず、基板522Aにレーザ光が吸収される結果、基板522Aが加熱され、その熱が基板522Aからハンダ504へと伝わることによって、ハンダが融解する。
【0007】
さらに特許文献2には、基板に開口部を設け、この開口部内に導電部材と該導電部材上のハンダを配置し、基板の裏面側から導電部材に対してレーザにより光を照射することで、導電部材を介して間接的にハンダを加熱する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−111207号公報
【特許文献2】特開2006−278385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、レーザによる従来のハンダ付け方法には、以下のような問題があった。まず、図4に示した方法では、プリント配線板の表面側からレーザ光を照射するため、光が電子素子408に当たり、電子素子を傷つけてしまうおそれがあった。また、ハンダにレーザ光が直接照射されるため、ハンダペーストに含まれる溶剤成分が突沸することによりハンダが飛び散り、基板上に多数のハンダボールが形成されるという問題があった。この場合、ハンダボールによる短絡が電子部品の性能に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0010】
また、特許文献1に記載の方法では、基板522Aからハンダ504への伝熱によってハンダ504を加熱するため、加熱効率が悪く、十分にハンダを加熱することができないか、ハンダ付けに非常に時間がかかるという問題があった。また、本発明者らがこの方法をさらに検討したところ、基板の光照射部位が溶けたり、焦げたりするなど損傷することが判明した。さらに、この方法ではポリイミド以外の可撓性基板を用いることはできなかった。
【0011】
さらに特許文献2に記載の方法は、基板に開口部を設けるものであり、実用的でない。
【0012】
よって、レーザによってハンダを局所的に加熱して、電子素子をプリント配線板にハンダ付けする、好適かつ実用的な手法が求められているものの、未だ存在しない状況であった。
【0013】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、電子素子の損傷、ハンダの飛び散り、および基板の損傷を抑制して、従来よりも短時間で電子素子をプリント配線板に対してハンダ付けすることが可能な、電子部品の製造装置および電子部品の製造方法を、該製造方法を含むLED照明の製造方法とともに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するべく本発明者が鋭意検討した結果、特定の波長のレーザ光をプリント配線板の裏面から照射することによって、プリント配線板裏面から入射した光が直接配線パターンを加熱するという新たなハンダ加熱メカニズムを実現することができ、その結果、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、上記の知見および検討に基づくものであり、その要旨構成は以下の通りである。
【0015】
(1)基板および該基板上の配線パターンを有するプリント配線板に電子素子を実装して電子部品とする電子部品の製造方法であって、
前記プリント配線板の配線パターン上にハンダを供給する工程と、
前記ハンダ上に電子素子を載置する工程と、
前記電子素子を載置した前記ハンダに向けて、近赤外領域に発光中心波長を有する光を前記プリント配線板の裏面側からレーザで照射する工程と、を有し、
前記光は前記基板中を透過して前記配線パターンに到達し、前記配線パターンを加熱して前記ハンダを融解させ、前記電子素子を前記プリント配線板にハンダ付けすることを特徴とする電子部品の製造方法。
(2)前記プリント配線板の裏面から照射した光の前記発光中心波長における前記基板の透過率が20%以上である、上記(1)に記載の電子部品の製造方法。
(3)前記基板が可撓性基板である、上記(1)または(2)に記載の電子部品の製造方法。
(4)前記基板がPETおよび/またはPENを含む基板である、上記(3)に記載の電子部品の製造方法。
(5)前記プリント配線板が一対のリール間に張り渡され、前記プリント配線板を両リール間で走行させながら、前記プリント配線板に複数の前記電子素子を連続的に実装する、上記(3)または(4)に記載の電子部品の製造方法。
(6)前記レーザの出力がレーザの基板表面における照射径1mmの照射スポットあたり15〜250Wの範囲内である、上記(1)〜(5)のいずれか1に記載の電子部品の製造方法。
(7)前記レーザの照射時間が1秒以下である、上記(1)〜(6)のいずれか1に記載の電子部品の製造方法。
(8)前記電子素子がLED素子である、上記(1)〜(7)のいずれか1に記載の電子部品の製造方法。
(9)前記基板が白色である、上記(8)に記載の電子部品の製造方法。
【0016】
(10)上記(8)または(9)に記載の電子部品の製造方法における工程に加えて、前記電子部品からLED照明を製造する工程をさらに有するLED照明の製造方法。
【0017】
(11)基板および該基板上の配線パターンを有するプリント配線板に電子素子を実装する、電子部品の製造装置であって、
前記プリント配線板の配線パターン上にハンダを供給する供給装置と、
前記ハンダ上に前記電子素子を載置する載置装置と、
前記電子素子を載置した前記ハンダに向けて、近赤外領域に発光中心波長を有する光を前記プリント配線板の裏面側から照射するレーザと、を有し、
前記光は前記基板中を透過して前記配線パターンに到達し、前記配線パターンを加熱して前記ハンダを融解させ、前記電子素子を前記プリント配線板にハンダ付けすることを特徴とする電子部品の製造装置。
(12)前記レーザの出力がレーザの基板表面における照射径1mmの照射スポットあたり15〜250Wの範囲内である、上記(11)に記載の電子部品の製造装置。
(13)前記レーザによる照射時間が1秒以下である、上記(11)または(12)に記載の電子部品の製造装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子素子の損傷、ハンダの飛び散り、および基板の損傷を抑制して、従来よりも短時間で電子素子をプリント配線板に対してハンダ付けすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に従う電子部品の製造装置を示す模式図である。
【図2】図1に示す装置内で、レーザ照射によるハンダ付けの部分を拡大して示す模式図である。
【図3】本発明に従うLED照明の製造方法により得たLED照明の模式斜視図である。
【図4】従来の電子部品の製造装置内で、レーザ照射によるハンダ付けの部分を拡大して示す模式図である。
【図5】従来の別の電子部品の製造装置内で、レーザ照射によるハンダ付けの部分を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0021】
(電子部品の製造装置)
図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による電子部品の製造装置100を説明する。この製造装置100は、基板122Aおよびこの基板上の配線パターン122Bを有するプリント配線板122に電子素子108を実装し、電子部品112を製造する。なお、本明細書では、JIS C 5603およびIEC60914に従い、「プリント配線板」は、基板と、基板上に形成される配線パターンとを含み、実装する電子素子は含まない。
【0022】
まず、製造装置100は、プリント配線板の配線パターン122B上にハンダ104を供給する供給装置102を有する。供給装置102は、特に限定されないが、非接触ディスペンサとすることが好ましい。非接触ディスペンサは、詳細は図示しないが、ハンダを収容するタンクと、ハンダをプリント配線板と離間した位置からプリント配線板に対して吐出する吐出ノズルと、タンクから吐出ノズルとを連結し、タンクから吐出ノズルへとハンダを供給するための連結部と、これらを制御する制御部と、を有する。この供給装置102によれば、所定量のハンダをプリント配線板に対して離間した位置から供給することができる。そのため、プリント配線板と吐出ノズルとが接触した状態でハンダを供給する装置に比べて、ハンダの持ち帰りを抑制し、また吐出ヘッドの上下動によるタイムロスも抑えることができる。また、ハンダの破棄量が少ないので環境面からも好ましい。
【0023】
次に、製造装置100は、ハンダ104上に電子素子108を載置する載置装置106を有する。載置装置106は、特に限定されず、例えばチップマウンターなどの従来公知の載置装置を用いることができる。
【0024】
次に、製造装置100はレーザ110を有する。本発明の特徴的構成として、このレーザ100は、図2に示すように、電子素子108を載置したハンダ104に向けて、近赤外領域に発光中心波長を有する光をプリント配線板の裏面124側から照射するものである。照射した光は、基板122A中を透過して配線パターン122Bに到達し、配線パターン122Bを加熱し、ハンダ104が融解する。こうして電子素子108はプリント配線板122にハンダ付けされる。ここで、照射する光は発光中心波長が800nm〜1100nmの範囲内であることが好ましい。
【0025】
本発明者らは、製造装置100として、特定の範囲に発光中心波長を有する光をプリント配線板の裏面側から照射するレーザを用いれば、該装置で電子素子を実装する基板を適切に選択することによって、基板からの伝熱によるハンダの融解ではなく、配線パターンからの伝熱でハンダをより直接的に加熱する新たなハンダ加熱のメカニズムを採用することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0026】
レーザ110は、発光中心波長を上記範囲に設定できるものであれば特に限定されないが、発光中心波長が920nmの半導体レーザ、1064nmのNd−YAGレーザなどを使用することができる。ここで本明細書において、「発光中心波長」とは、レーザが発する光のスペクトルにおいて、最も高い光量を示す波長を意味する。また、本明細書において「プリント配線板の裏面」とは、プリント配線板の一対の主面のうち、電子素子を実装する面を表面とした際の、その裏の面、すなわち電子素子を実装しない面を意味する。
【0027】
製造装置100中には検査装置114を有してもよい。例えば、LEDを電子素子108として用いる場合に実点燈検査用装置を用いることができる。
【0028】
製造装置へのプリント配線板の挿入方法は、特に限定しないが、図1に示すようにプリント配線板122が一対のリール118,120間に張り渡され、プリント配線板122を両リール間で走行させながら、プリント配線板122に複数の電子素子108を連続的に実装するリールトゥリール方式とすることができる。
【0029】
(電子部品の製造方法)
次に、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による電子部品の製造方法を説明する。この製造方法は、プリント配線板122の配線パターン122B上にハンダ104を供給する工程と、このハンダ104上に電子素子108を載置する工程と、この電子素子108を載置したハンダ104に向けて、近赤外領域に発光中心波長を有する光をプリント配線板122の裏面124側からレーザで照射する工程とを有し、その光は基板122A中を透過して配線パターン122Bに到達し、配線パターン122Bを加熱してハンダ104を融解させ、電子素子108をプリント配線板122にハンダ付けする。
【0030】
以下、本発明の上記特徴的工程を採用したことの技術的意義を、作用効果とともに具体例で説明する。詳細な工程は実施例で後述するが、本発明者らは、近赤外領域に発光中心波長を有するレーザ光を、所定の素材からなる基板を含むプリント配線板の裏面側から照射したところ、基板の損傷を抑制しつつ配線パターンを加熱することができることを見出した。これを利用すれば、基板122Aを透過した光により配線パターン122Bを加熱し、熱伝導効率のよい配線パターン122Bからハンダ104に伝熱させることにより、従来よりも短時間でハンダ付けすることが可能となる。
【0031】
さらに、レーザ光は非常にエネルギーが高いため、レーザ光をハンダ104に直接照射すればハンダ104が飛散してしまう確率が高いところ、本発明では、近赤外光をプリント配線板の裏面側から照射することによって、配線パターン122Bがハンダ104中の溶剤成分の突沸を防ぐ緩衝材の役割を果たすため、ハンダ104の飛び散りを抑制することができる。そして、プリント配線板の裏面側から照射することから電子素子を損傷することもない。本発明者は以上の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0032】
この製造方法では、レーザから出力し基板に到達した光は主に基板中を透過させて配線パターンを加熱させる。そして、その他の光は基板の裏面で反射するか、わずかに基板に吸収される。つまり、本発明は基板を透過する光を利用してハンダ付けするものであって、基板から伝わる熱を直接利用するものではない。このため、本発明における基板への負担は非常に軽い。また、基板から伝熱させる場合には基板加熱時における基板の損傷を低減させるため、低いエネルギー密度のレーザを使用する必要があったが、本発明ではエネルギー密度の高いレーザを用いてハンダ付けすることができる。よって、本発明は従来技術に比べて短時間でハンダ付けを行うことが可能である。また、これまで実装基板としての使用は考えられなかったような、熱にそれほど強くない材料を電子素子の実装基板として用いることもできる。
【0033】
本発明に用いるレーザ光は、近赤外領域に発光中心波長を有する。発光中心波長が近赤外領域よりも短い場合、基板を損傷させるおそれがある。また、発光中心波長が近赤外領域よりも長い場合、エネルギーが非常に低いためハンダを融解するのに時間がかかってしまい、短時間でのハンダ付けが可能という本発明の効果を十分に発揮できなくなるおそれがある。この観点から、発光中心波長が800nm〜1100nmの範囲内であることが好ましい。
【0034】
本製造方法において、プリント配線板の裏面から照射した光の発光中心波長における基板の透過率はエネルギー効率の観点から高い方が望ましい。具体的には、光の発光中心波長における透過率が、20%以上である基板を選択することが好ましい。基板の透過率が20%より小さいとハンダを融解させるために時間がかかってしまうおそれがある。
【0035】
基板122Aの素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ガラスなどが好ましい。生産量も非常に多く、安価であるPETおよび/またはPENを含む基板がさらに好ましい。PETおよび/またはPENを含む基板は、従来のリフロー方式では熱で加水分解を起こしてしまうが、本発明によれば、加水分解することもなく、溶かしたり焦がしたりすることなく用いることができる。
【0036】
本製造方法では、可撓性材料を所定以下の厚みとした可撓性基板を基板122Aとして選択できる。可撓性基板は、熱に対して脆弱性を有するため、リフロー方式や特許文献1に開示されるような基板を加熱する方法への使用が現実的ではなかったが、本発明は基板への熱による負荷が小さいため、可撓性基板を好適に用いることができる。可撓性基板を用いることで、既述のリールトゥリール方式の実装装置を用いることができる。これにより、電子部品の生産性を向上させることができる。
【0037】
本製造装置および製造方法では、基板からの伝熱でハンダ付けする従来方法よりもレーザの出力を高くすることができる。レーザの出力としては、ハンダが飛び散らない程度に低く、ハンダ付けに時間がかかり過ぎない程度に高ければよい。具体的には、レーザの基板表面における照射径1mmの照射スポットあたり15〜250Wの範囲内であることが好ましい。15Wよりも小さいと、ハンダを融解するために時間がかかり、短時間でのハンダ付けが可能という本発明の効果を十分に発揮できなくなるおそれがある。また、250Wを超えると、基板に損傷を与えると共に、ハンダの飛び散りが発生するおそれがある。
【0038】
また、レーザ光の照射径は基板表面において配線パターンのサイズと同等程度が望ましい。パターンサイズの20%以下の場合には、単位面積あたりの過剰なエネルギーにより基板に損傷を与え、100%以上の場合には上面の電子素子に損傷を与える可能性がある。
【0039】
本製造装置および製造方法では、基板からの伝熱でハンダ付けする従来方法よりも短時間でハンダ付けを行うことができ、具体的には、レーザの照射時間を1秒以下とすることができる。このため、生産性を非常に向上させることができる。
【0040】
本発明において、電子素子108をLED素子とすることが好ましい。この場合には、従来のリフロー方式でのハンダ付けでは既述の通りに十分な寿命が得られなくなるが、本発明によるハンダ付けによれば、従来よりも寿命の長いLED部品を製造することができる。ただし、実装する電子素子としてはLEDに限られず、チップコンデンサ、チップ抵抗器、CCD(電荷結合素子)等のセンサー部品、一般半導体部品のBGA(ball grid array)、QFP(Quad Flat Package)、CSP(Chip size package)などでもよい。
【0041】
(LED照明の製造方法)
次に、本発明の一実施形態によるLED照明の製造方法を説明する。このLED照明の製造方法は、上記のLED部品の製造方法における工程に加えて、このLED部品からLED照明を製造する工程をさらに有する。
【0042】
すなわち、既述の電子部品の製造方法は、蛍光灯型LEDを製造するのに非常に有益である。リフロー方式の場合、長いリフロー炉の内部では温度分布にムラがあるため、例えば1.2m程度の長いプリント配線板をリフロー炉内に導入すると、基板が歪み、品質に影響を及ぼす。そのため、例えば、30cm程度の短いプリント配線板に複数のLED素子を実装し、この長さのLED部品としたのち、4個のLED部品をコネクタ接続することで、現在普及している1.2m長の蛍光灯型LED照明を製造していた。これでは接続する手間もかかる上に、コネクタの半差しやピンずれなどの不良を引き起こしていた。しかしながら、本発明によれば、所望の長さのプリント配線板に連続的に複数のLED素子を実装して、所望の長さのLED部品を製造することができる。
【0043】
本発明に用いる電子素子がLEDである場合、基板が白色であることが好ましい。基板206が白色であればLED部品から発した光の反射膜として機能するため、明るさを向上できる。図3は、本発明に従うLED照明の製造方法により得たLED照明の模式斜視図である。図3に示すように、LED照明200は、拡散カバー202の中においてアルミ基台210の上に導熱性接着剤208でLED部品204を固定しており、LED部品204から発せられた熱は導熱性接着剤208を通じて、アルミ基台210へ導熱される事によりアルミ基台210から放熱している。
【実施例】
【0044】
本発明の効果をさらに明確にするため、以下に説明する実施例・比較例の実験を行った比較評価について説明する。
【0045】
<LED部品の製造>
実施例1にはPETからなる基板を用い、実施例2にはPENからなる基板を用いた。まず、各基板上に、公知の方法により銅箔をエッチングすることで配線パターンを形成し、プリント配線板を作製した。実施例1および2に用いる基板はいずれも50μmの厚みであり、可撓性を有する。
【0046】
次に図1に示すリールトゥリール方式の電子部品の製造装置により片方のリールから他方のリールに基板を巻き取りながら、LEDの実装を行った。プリント配線板上の配線パターンの上に非接触ジェットディスペンサ(武蔵野エンジニアリング社製:ジェットマスター)を用いて、クリームハンダを供給した。次に、マウンター(奥原電気社製:卓上マウンター)を用いてクリームハンダ上にLED素子を載置した。次に、発光中心波長が920nmの半導体レーザ(浜松ホトニクス社製:LD照射装置15Wタイプ)を用いて、レーザ出力を12.5Wに調節し、基板表面における照射径0.4mmで、プリント配線板の裏面側からLED素子の載置されたハンダに向けて光を照射し、ハンダ付けをした。各試験例での発光中心波長における基板の透過率は、事前に分光器(浜松ホトニクス社製:型番C10082MD)を用いて測定したところ、各々75%であった。
【0047】
この条件下において、実施例1,2では照射した光が基板中を透過して配線パターンに到達し、配線パターンを加熱してハンダを融解させ、LEDをプリント配線板にハンダ付けすることができていた。
【0048】
(基板の損傷評価)
実装後の基板の焼け跡や融解跡の傷の有無を目視により評価した。実施例1,2では基板の損傷は見られなかった。
【0049】
(ハンダ付けにかかる時間の評価)
ハンダフィレットが正しく形成されるまでの時間を測定した。実施例1,2では基板を透過した光によってハンダ付けができたため、0.4秒というごく短時間でハンダ付けができた。
【0050】
(ハンダ付けの評価)
ハンダの突沸によるハンダボールの発生の有無を目視により評価したところ、いずれもハンダの飛び散りは発生しなかった。
【0051】
なお、いずれの実施例もレーザをプリント配線板の表側から照射するものではないため、LEDの損傷は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、電子素子の損傷、ハンダの飛び散り、および基板の損傷を抑制して、従来よりも短時間で電子素子をプリント配線板に対してハンダ付けすることが可能な、電子部品の製造装置および電子部品の製造方法を、該製造方法を含むLED照明の製造方法とともに提供することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 電子部品の製造装置
102 供給装置
104 ハンダ
106 載置装置
108 電子素子
110 レーザ
112 電子部品
114 検査装置
116 ライン
118 リール
120 リール
122 プリント配線板
122A 基板
122B 配線パターン
124 プリント配線板の裏面
200 LED照明
202 拡散カバー
204 LED
206 基板
208 導電性接着剤
210 アルミ基台
212 端子
214 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板および該基板上の配線パターンを有するプリント配線板に電子素子を実装して電子部品とする電子部品の製造方法であって、
前記プリント配線板の配線パターン上にハンダを供給する工程と、
前記ハンダ上に電子素子を載置する工程と、
前記電子素子を載置した前記ハンダに向けて、近赤外光領域に発光中心波長を有する光を前記プリント配線板の裏面側からレーザで照射する工程と、を有し、
前記光は前記基板中を透過して前記配線パターンに到達し、前記配線パターンを加熱して前記ハンダを融解させ、前記電子素子を前記プリント配線板にハンダ付けすることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記プリント配線板の裏面から照射した光の前記発光中心波長における前記基板の透過率が20%以上である、請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記基板が可撓性基板である、請求項1または2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記基板がPETおよび/またはPENを含む基板である、請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記プリント配線板が一対のリール間に張り渡され、前記プリント配線板を両リール間で走行させながら、前記プリント配線板に複数の前記電子素子を連続的に実装する、請求項3または4に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記レーザの出力がレーザの基板表面における照射径1mmの照射スポットあたり15〜250Wの範囲内である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記レーザの照射時間が1秒以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記電子素子がLED素子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記基板が白色である、請求項8に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の電子部品の製造方法における工程に加えて、前記電子部品からLED照明を製造する工程をさらに有するLED照明の製造方法。
【請求項11】
基板および該基板上の配線パターンを有するプリント配線板に電子素子を実装する、電子部品の製造装置であって、
前記プリント配線板の配線パターン上にハンダを供給する供給装置と、
前記ハンダ上に前記電子素子を載置する載置装置と、
前記電子素子を載置した前記ハンダに向けて、近赤外光領域に発光中心波長を有する光を前記プリント配線板の裏面側から照射するレーザと、を有し、
前記光は前記基板中を透過して前記配線パターンに到達し、前記配線パターンを加熱して前記ハンダを融解させ、前記電子素子を前記プリント配線板にハンダ付けすることを特徴とする電子部品の製造装置。
【請求項12】
前記レーザの出力がレーザの基板表面における照射径1mmの照射スポットあたり15〜250Wの範囲内である、請求項11に記載の電子部品の製造装置。
【請求項13】
前記レーザによる照射時間が1秒以下である、請求項11または12に記載の電子部品の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98338(P2013−98338A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239654(P2011−239654)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(709002303)日清紡メカトロニクス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】