説明

電子部品の製造装置及び製造方法

【課題】コネクタをプリント基板に正確に実装する。
【解決手段】コネクタのハウジングに接触し、コンタクトピンをプリント基板のスルーホールに押圧するための複数の押圧部材41〜47が、押圧方向と交差する1方向に延びる一対の腕部分を有している。また、各腕部分に設けられた応力センサが、コンタクトピンをスルーホールに押圧する際に生じる応力をそれぞれ測定する。これにより、コネクタを実装するときに、コンタクトピンの曲がりの有無を高精度に判定することができるので、曲がりが生じたときであっても、実装不良改善に関する作業時間、工数を削減し、コネクタをプリント基板に正確に実装することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、電子部品の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタをプリント基板に実装するための方法の1つとして、プリント基板上に配置されたコネクタを専用の治具やプレス装置を用いてプリント基板に対して加圧することで実装する方法が存在する。この方法は、プレスフィット法などと呼ばれ、プレスフィット法で用いるコネクタはプレスフィットコネクタや圧入コネクタなどと呼ばれている。
【0003】
図15(a)には、プレスフィットコネクタ50が斜視図にて示されている。この図15(a)に示すように、プレスフィットコネクタ50は、断面コ字状(U字状)のハウジング52と、ハウジング52により、所定間隔で保持された複数のコンタクトピン54と、を備える。プレスフィットコネクタ50が実装されるプリント基板には、コンタクトピン54の配置に対応したスルーホールが設けられている。プレスフィット法では、プリント基板のスルーホールにコンタクトピン54のハウジング52よりも下側の部分を圧入してカシメることにより、コネクタの固定を行う。
【0004】
この圧入においては、従来、図15(b)のような圧入治具60が用いられていた。圧入治具60は、断面略Π字状の本体部62と、本体部62により保持された複数枚の押圧部材64と、を有する。各押圧部材64の略下半分の部分には、隙間64aが形成されており、この隙間64aにより、圧入治具60と、コンタクトピン54との機械的な干渉が防止されている。
【0005】
ところで、プレスフィットコネクタは、製造もしくは取り扱いの際に、コンタクトピンが曲がることがある。曲がった状態のコンタクトピンは、スルーホールに挿入されない可能性が高く、このようなコンタクトピンを更に押圧すると座屈してしまい、実装不良となるおそれがある。実装不良となると、プレスフィットコネクタをプリント基板から取り外す作業、及び再実装する作業(いわゆるリペア作業)が必要となる。このうち、取り外す作業には、(1)ハウジングを除去又は破壊する作業、(2)プリント基板に残ったコンタクトピンを1本1本抜き取る作業、が含まれており、特に(2)の作業は細かい作業であるため、多大な時間と工数を要する。
【0006】
これに対し、最近では、上記ピン曲がりによる実装不良を解決するための技術が出現してきている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1、2に記載の技術は、コネクタ圧入前に外観検査を行うことでピン曲がり状態を選別するものであり、特許文献3に記載の技術は、コネクタ圧入後に実装背面のスルーホールからピン有無の検査を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−287632号公報
【特許文献2】特開平8−293531号公報
【特許文献3】特開2001−76836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2の方法は、外観検査からプレスフィットまでの間の取り扱いにより発生するピン曲がりを検出することはできない。また、特許文献3の方法は、不良判別が圧入終了後となるため、依然として上記リペア作業が必要となる。更に、近年では、高密度実装化のため、プリント基板の両面にコネクタを実装する場合もあるが、両面実装を採用した場合、実装背面を別のコネクタが塞いでしまうため、上記特許文献3のような技術を採用することはできない。
【0009】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、実装不良改善に関する作業時間、作業工数を削減することが可能な電子部品の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載の電子部品の製造装置は、コネクタのハウジングに接触し、前記ハウジングに保持された複数のピンを基板の複数の穴へ押圧するために設けられ、かつ、前記押圧の方向に交差する1方向に延びる一対の腕部分を有する複数の押圧部材と、前記押圧部材を押圧し、前記複数のピンを前記基板の穴に圧入させる駆動部と、前記各腕部分に設けられ、前記ピンを前記基板の穴に対して押圧する際に生じる応力を測定する応力測定部と、前記応力測定部の測定結果に応じて、前記駆動部の押圧力を制御する駆動制御部と、を備えている。
【0011】
本明細書に記載の電子部品の製造方法は、複数のピンと当該複数のピンを保持するハウジングとを有するコネクタと、該コネクタの複数のピンが圧入される穴を有する基板と、を有する電子部品の製造方法であって、前記ピンと前記穴の位置が一致した状態で、前記ハウジングに対して前記基板に向かう方向の押圧力を押圧部材を介して作用させる工程と、前記押圧方向に交差する1方向に延びる一対の前記押圧部材の腕部分に生じる応力を測定する工程と、前記応力の測定結果に基づいて、前記押圧力を制御する工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に記載の電子部品の製造装置及び製造方法は、実装不良改善に関する作業時間、作業工数を削減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、電子部品の一部を示す斜視図であり、図1(b)は、コネクタの構成を示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る製造装置のブロック図である。
【図3】圧入機構の具体的な構成を示す斜視図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【図5】圧入治具の分解斜視図である。
【図6】図6(a)は、本体部を+X方向から見た状態を示す図であり、図6(b)は、スペーサ部材を+X方向から見た状態を示す図である。
【図7】図7(a)は、押圧部材41(45)を+X方向から見た状態を示す図であり、図7(b)は、押圧部材42(46)を+X方向から見た状態を示す図である。
【図8】図8(a)は、押圧部材43(47)を+X方向から見た状態を示す図であり、図8(b)は、押圧部材44を+X方向から見た状態を示す図である。
【図9】圧入機構によりコネクタを押圧するときの状態を示す斜視図である。
【図10】コネクタを+Z方向から見た状態を示す図である。
【図11】押圧部材43(47)の変形の様子を模式的に示す図である。
【図12】図12(a)は、駆動指示部の処理を示すフローチャートであり、図12(b)は、ピン曲がり判定部の処理を示すフローチャートである。
【図13】閾値上限と閾値下限を規定するマップの一例を示す図である。
【図14】コンタクトピンに曲がりが発生した状態を模式的に示す図である。
【図15】図15(a)は、従来から用いられているコネクタを示す斜視図であり、図15(b)は、従来において用いられていた圧入部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、電子部品の製造装置及び製造方法の一実施形態について、図1〜図14に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1(a)には、本実施形態において製造される電子部品の一例が示されている。図1(a)の電子部品10は、プリント基板12と、当該プリント基板12上に設けられたコネクタ14と、を有する。なお、図1では、プリント基板12上に1つのコネクタ14のみが設けられた状態を図示しているが、コネクタ14以外にも別のコネクタやその他の部品(LSI等)が設けられる。
【0016】
図1(b)は、コネクタ14を取り出して拡大して示す図である。コネクタ14は、いわゆるプレスフィットコネクタであり、図1(b)に示すように、ハウジング16と、ハウジング16を貫通した状態の多数のコンタクトピン18と、を有する。なお、図1(b)では、コンタクトピン18の長手方向をZ軸方向とし、コンタクトピン18が配列されている方向を、X軸方向及びY軸方向としている。
【0017】
ハウジング16は樹脂等を材料とし、断面コ字状(U字状)の形状を有している。このハウジング16には、コンタクトピン18を保持するための多数の貫通孔が形成されている。コンタクトピン18は、リン青銅やベリリウム銅を材料とするピンであり、ハウジング16よりも+Z側に位置する部分(ケーブルが接続される部分)には、金メッキが施されている。
【0018】
コンタクトピン18は、当該コンタクトピン18と同一の配置でプリント基板12に形成されたスルーホール12a(図9参照)に圧入されてカシメられる。これにより、コネクタ14がプリント基板12に固定される(プレスフィット)。
【0019】
図2は、図1のコネクタ14をプリント基板12に固定するのに用いられる、電子部品の製造装置100のブロック図である。図2に示すように、製造装置100は、圧入機構30と、駆動部32と、高さ位置検出部36と、駆動制御部35と、表示部39と、を備える。駆動制御部35は、ピン曲がり判定部34と、駆動指示部38とを含んでいる。
【0020】
圧入機構30は、圧入治具20と、応力測定部としての14個の応力センサSa(1)〜Sa(7)、Sb(1)〜Sb(7)(以下、n=1〜7として、「応力センサSa(n)、Sb(n)」と記述する)と、を有する。
【0021】
図3には、圧入機構30の具体的な構成が斜視図にて示されている。また、図4には、図3の分解斜視図が示されている。更に、図5には、圧入治具20の分解斜視図が示されている。図3、図4に示すように、応力センサSa(n)、Sb(n)は、圧入治具20に固定されている。また、圧入治具20は、図5に示すように、本体部22と、2枚のスペーサ部材24a、24bと、7枚の押圧部材41〜47と、これらスペーサ部材24a、24b及び押圧部材41〜47を本体部22に保持させる2本の保持棒26a,26bと、を有する。
【0022】
本体部22は、図5に示すように、XY方向に広がる面を有するブロック状の部分22cと、部分22cから−Z方向に突出する一対の凸部22a、22bとを有し、全体として断面略Π字状の形状を有している。本体部22の凸部22a(22b)には、本体部22を+X方向から見た状態を示す図6(a)から分かるように、2つの貫通孔122a,124a(122b、124b)が形成されている。
【0023】
スペーサ部材24a、24bは、図5に示すように、矩形板状部材から成り、略下半部の厚さがその他の部分よりも薄く設定されている。スペーサ部材24a(24b)の上端部(+Z側の端部)近傍には、スペーサ部材24a(24b)を+X方向から見た状態を示す図6(b)から分かるように、2つの貫通孔126a,128a(126b,128b)が形成されている。これら貫通孔126a,128a(126b,128b)のY軸方向に関する間隔は、本体部22に形成された貫通孔122a,124a(122b、124b)のY軸方向に関する間隔と一致している。
【0024】
押圧部材41〜47は、図5に示すように、押圧部材41と45、42と46、43と47が、同一形状を有している。押圧部材41(45)は、図7(a)に示すように、全体として、略T字状の板状部材から成る。より詳細には、押圧部材41(45)は、Y軸方向中央に位置する略矩形板状の押圧部材本体としての押圧部分72aと、押圧部分72aから、押圧部分72aの長手方向に交差する1方向(±Y方向)に延びる一対の腕部分73a,74aとを有する。すなわち、押圧部分72aは、一対の腕部分73a,74aに挟まれた位置に設けられている。なお、図7(a)では、押圧部分72aと腕部分73a,74aとの境目部分を破線で示している。
【0025】
押圧部分72aは、腕部分73a,74aが接続されている第1部分70aと、第1部分70aの−Z側に位置し、第1部分70aよりも板厚が薄く設定された第2部分71aと、を有する。第1部分70aには、X軸方向に貫通する一対の貫通孔79a、80aが形成されている。これら貫通孔79a,80aのY軸方向に関する間隔は、前述した貫通孔126a,128a等のY軸方向に関する間隔と一致している。
【0026】
腕部分73aの+Z側の面には、凸部77aが設けられ、腕部分74aの+Z側の面には、凸部78aが設けられている。これら凸部77a,78aには、図3、図4から分かるように、応力センサSa(1)、Sb(1)(Sa(5)、Sb(5))が固定される。
【0027】
更に、押圧部材41(45)は、腕部分73aから押圧部分72aの第1部分70aにかけて、X軸方向に貫通するL字状のスリット75aを有する。スリット75aの−Y側端部のY軸位置と、凸部77aの+Y側端部のY軸位置とは、ほぼ一致している。同様に、押圧部材41(45)は、腕部分74aから押圧部分72aの第1部分70aにかけて、X軸方向に貫通するL字状のスリット76aを有する。スリット76aとスリット75aとは、Z軸を基準として左右対称な形状を有している。スリット76aの+Y側端部のY軸位置と、凸部78aの−Y側端部のY軸位置とは、ほぼ一致している。
【0028】
図7(b)には、押圧部材42(46)を+X側から見た状態が示されている。この図7(b)に示すように、押圧部材42(46)は、前述した押圧部材41(45)と同様の構成を有する。なお、図7(b)では、押圧部材41(45)と同一又は同等の構成部分には、図7(a)の符合「○○a」を「○○b」に代えて付している。押圧部材42(46)では、凸部77bが凸部77aより−Y側に位置し、凸部78bが凸部78aより+Y側に位置している点が、押圧部材41(45)と異なっている。また、これに伴って、スリット75bの−Y側端部がスリット75aよりも−Y側に位置し、スリット76bの+Y側端部がスリット76aよりも+Y側に位置している点が、押圧部材41(45)と異なっている。
【0029】
図8(a)には、押圧部材43(47)を+X側から見た状態が示されている。この図8(a)に示すように、押圧部材43(47)も、前述した押圧部材41、42、45、46と同様の構成を有する。なお、図8(a)では、押圧部材41(45)と同一又は同等の構成部分には、図7(a)の符合「○○a」を「○○c」に代えて付している。この押圧部材43(47)では、凸部77cが腕部分73aの−Y側端部に位置している点、及び凸部78cが腕部分74aの+Y側端部に位置している点が、押圧部材41,42,45,46と異なっている。また、これに伴って、スリット75cの−Y側端部がスリット75a,75bよりも−Y側に位置し、スリット76cの+Y側端部がスリット76a、76bよりも+Y側に位置している点が、押圧部材41,42,45,46と異なっている。
【0030】
図8(b)には、押圧部材44を+X側から見た状態が示されている。この図8(b)に示すように、押圧部材44も、前述した押圧部材41〜43、45〜47と同様の構成を有する。なお、図8(b)では、押圧部材41(45)と同一又は同等の構成部分には、図7(a)の符合「○○a」を「○○d」に代えて付している。この押圧部材44では、凸部77dが腕部分73aの+Y側端部近傍に位置している点、及び凸部78dが腕部分74aの−Y側端部に位置している点が、その他の押圧部材と異なっている。また、これに伴って、スリット75dの−Y側端部が他のスリット75a〜75cよりも+Y側に位置し、スリット76dの+Y側端部が他のスリット76a〜76cよりも−Y側に位置している点が、その他の押圧部材と異なっている。
【0031】
図5に戻り、2本の保持棒26a,26bは、その長さが、本体部22の凸部22aの+X側の面と、凸部22bの−X側の面との間の長さ(距離)とほぼ一致している。なお、保持棒26a,26bは、本体部22とともに、押圧部材41〜47を保持する保持部材を構成する。
【0032】
圧入治具20は、押圧部材41〜47及びスペーサ部材24a,24bを図5のように整列させ、それらを本体部22の凸部22a,22bの間に位置させた状態で、保持棒26a,26bを各部材の貫通孔に挿通させることで、組み立てることができる。この組み立て後の状態では、圧入治具20の凸部77a〜77d、78a〜78dのY軸方向に関する位置が、図4に示すように異なっている。これにより、応力センサSa(n)、Sb(n)それぞれは、隣接する他の応力センサとの接触が回避されている。また、前述したように、押圧部分72a〜72dは、第2部分71a〜71dが第1部分70a〜70dよりも薄く設定され、スペーサ部材24a,24bでは、略下半部の厚さがその他の部分よりも薄く設定されている。したがって、押圧部材72a〜72d、スペーサ部材24a,24bの各部材間には、隙間49、49、…が形成されることになる。
【0033】
図2に戻り、応力センサSa(n),Sb(n)は、圧入治具20の押圧部材41〜47において発生する応力、すなわち、コンタクトピン18をスルーホール12aに対して押圧する際に生じる応力、を測定するためのセンサである。応力センサSa(n),Sb(n)による測定値は、ピン曲がり判定部34に送信される。
【0034】
駆動部32は、圧入治具20をZ軸方向に移動させるためのものである。ピン曲がり判定部34は、応力センサSa(n),Sb(n)から送信される測定値に基づいて、コネクタ14のコンタクトピン18に曲がりが発生しているか否かを判定する。ピン曲がり判定部34は、曲がりが発生していると判定した場合には、駆動指示部38に対して停止信号を出力する。なお、コンタクトピン18に曲がりが発生しているか否かの判定方法の詳細については、後述する。
【0035】
高さ位置検出部36は、圧入治具20の高さ位置(Z軸方向の位置)を検出し、その検出結果を駆動指示部38に送信する。駆動指示部38は、ピン曲がり判定部34からの停止信号の有無や、高さ位置検出部36からの測定値に基づいて、駆動部32に対して、駆動信号や停止信号を出力する。表示部39は、駆動指示部38に接続されており、ピン曲がり判定部34から停止信号が出力されたタイミングで、駆動指示部38の指示の下、エラー表示を行う。
【0036】
上記のように構成される製造装置100では、図9に示すように、プリント基板12のスルーホール12aの位置と、コネクタ14のコンタクトピン18の位置とが一致した状態で、駆動指示部38の指示の下、駆動部32が圧入機構30を下降駆動する。この下降駆動により、圧入機構30の圧入治具20(より詳細には、押圧部材41〜47の押圧部分72a〜72d)が、コネクタ14のハウジング16を上方(+Z方向)から押圧することになる。図10には、コネクタ14を+Z方向から見た状態が示されている。この図10に示すように、押圧部材41〜47は、二点鎖線で示す部分に接触した状態で、ハウジング16を上方から押圧する。ここで、圧入治具20には、前述のように、隙間49、49、…が設けられているので、圧入治具20でコネクタ14を上側から押圧する際に、押圧部材41〜47と、コンタクトピン18とが機械的に干渉しないようになっている。このようにハウジング16のみを押圧して、コンタクトピン18を押圧しないのは、スルーホール12aへの圧入よりも先にハウジング16からコンタクトピン18が抜けてしまうのを防止するためである。なお、図1(b)等に示すように、コンタクトピン18には、他のコンタクトピンと比較して、長さの異なる(長い)ものも含まれており、そのコンタクトピンと圧入治具20とが上記圧入の際に接触する場合もある。しかるに、この接触は、圧入治具20がコンタクトピンを直接的に加圧するためのものではなく、コンタクトピンがハウジング16から抜けないように押さえるためのものである。
【0037】
上記のようにして押圧がなされることにより、コンタクトピン18がスルーホール12aに圧入されてカシメられ、コネクタ14がプリント基板12に固定されることになる。
【0038】
ここで、上記押圧の際には、圧入治具20の押圧部材41〜47には、ハウジング16に対して作用する押圧力に起因して、すなわち押圧力の反力を受けて、各押圧部材41〜47の内部に応力が発生することになる。図11は、押圧部材43(47)を例に採り、押圧時の押圧部材の変形状態を模式的に示した図である。なお、図11では、変形前の押圧部材43(47)の状態が破線にて示され、変形後の押圧部材43(47)の状態が実線にて示されている。この図11に示すように、押圧力の反力が押圧部材43(47)の下側に作用すると応力が発生するが、その応力はスリット75c,76cの変形により増幅されて、凸部77c,78cに作用する。応力センサSa(n)、Sb(n)では、この凸部77c,78cにおける応力を測定することになる。なお、その他の押圧部材41,42,44〜46においても、同様の応力が測定される。ピン曲がり判定部34は、この測定値(Pa(n)、Pb(n))に基づいて、コンタクトピン18の曲がりを判定することになる。
【0039】
次に、製造装置100がコネクタ14を固定する際の、駆動指示部38の処理、及びピン曲がり判定部34の処理について、図12(a)、図12(b)のフローチャートに沿って、説明する。図12(a)、図12(b)の処理は、同時並行的に行われる。
【0040】
まず、図12(a)のフローチャートについて説明する。図12(a)のフローチャートは、駆動指示部38の処理を示している。このフローチャートは、コネクタ14がプリント基板12上に配置された状態で、ユーザから駆動指示部38に対して押圧開始の指示が出された時点から開始される。まず、ステップS10では、駆動指示部38が、駆動部32に対して駆動信号を出力する。駆動部32は、当該駆動信号に基づいて、圧入治具20をコネクタ14に向けて下降させる。次いで、ステップS12では、駆動指示部38が、センサ異常値が発生したか否かを判断する。なお、センサ異常値の発生は、コンタクトピン18の曲がりが発生したことを意味するものであるが、この詳細については後述する。ここでの判断が肯定された場合には、ステップS16において、駆動指示部38が表示部39上にエラー表示を行い、その後、ステップS18において駆動部32に対して停止信号を出す。これにより、駆動部32による圧入治具20の下降駆動が停止する。この場合、ユーザは、エラー表示にしたがって、コネクタ14をプリント基板12上から取り去り、別のコネクタをプリント基板12上に配置して、再度圧入を行うことができる。
【0041】
一方、センサ異常値が発生しておらず、ステップS12の判断が否定された場合には、ステップS14に移行する。ステップS14では、駆動指示部38が、高さ位置検出部36の測定値に基づいて、圧入治具20が規定高さに到達したか否かを判断する。なお、この場合の「規定高さ」とは、圧入治具20がコネクタ14を押圧して圧入が完了したときに、圧入治具20が位置する高さを意味する。ここでの判断が否定された場合には、ステップS10に戻り、駆動指示部38は、駆動部32に対する駆動信号の出力を継続する。一方、ステップS14の判断が肯定された場合には、コネクタ14の圧入が完了したことを意味するので、駆動指示部38は、ステップS18において駆動部32に対して停止信号を出力し、図12(a)のフローチャートの全処理を終了する。
【0042】
次に、図12(b)のフローチャートについて説明する。図12(b)のフローチャートは、ピン曲がり判定部34の処理を示している。このフローチャートも、ユーザから駆動指示部38に対して押圧開始の指示が出された時点から開始される。まず、ステップS20では、ピン曲がり判定部34は、応力センサSa(n)、Sb(n)による測定値Pa(n)、Pb(n)を取得する。次いで、ステップS22では、ピン曲がり判定部34が、測定値Pa(n)、Pb(n)の各値が、閾値上限と閾値下限の範囲から外れたか否かを判断する。ここでピン曲がり判定部34は、閾値上限と閾値下限を規定するマップを用いてステップS22の判断を行う。図13には、圧入治具20の移動量に対する応力センサの測定値の閾値上限と閾値下限が規定されたマップが示されている。この図13では、ハッチングを付して示す範囲内に、測定値が入っていれば、コンタクトピン18に曲がりが発生しておらず、正常に圧入がされていることを意味する。したがって、図12(b)のステップS22では、高さ位置検出部36の値をモニタしつつ、測定値Pa(n)、Pb(n)の各値が、閾値上限と閾値下限の範囲から外れたか否かを判断する。これにより、コンタクトピン18に図14に示すような曲がりが発生しているか否かを判断する。
【0043】
なお、応力センサSa(n)、Sb(n)は、前述のように押圧部材41〜47の腕部分の様々な位置に配置されている。したがって、閾値上限と閾値下限は、各応力センサにより異なる。このため、ピン曲がり判定部34では、応力センサごとに、異なる閾値上限と閾値下限のマップを記憶しておく必要がある。
【0044】
ところで、本実施形態では、応力センサが各押圧部材に設けられているため、コンタクトピン18の曲がりの有無を高精度に判定することができる。具体的には、例えば、コンタクトピン18が98本あったとして、コンタクトピン18を圧入するのに1本あたり2kgf必要であるとする。また、1本のコンタクトピン18を座屈させるのに必要な力が1kgfであるとする。すなわち、正常にコンタクトピン18の全てを圧入できているときには196kgfの力がコンタクトピン18に与えられ、1本に曲がりが生じていたときには、195kgfの力がコンタクトピン18に与えられることになる。この場合に、例えば、圧入治具20に応力センサを1対のみ設けたとすると、1対の応力センサで圧入が正常に行われている場合(196kgf)と、コンタクトピン1本に曲がりが生じた場合(195kgf)とを検出しなければならない。しかるに、この1kgfの差((196−195)kgf)は誤差に埋もれてしまい、検出できない可能性がある。これに対し、本実施形態では、押圧部材41〜47のそれぞれに応力センサSa(n),Sb(n)を設けているので、各対のセンサは、196kgfの1/7である28kgf分を担当すれば良いことになる。この場合、各対のセンサでは、圧入が正常に行われている場合(28kgf)と、コンタクトピン1本に曲がりが生じた場合(27kgf)とを検出すれば良いことになるので、コンタクトピンの曲がりの有無を精度良く判断することが可能となる。
【0045】
以上の判断を経て、ステップS22の判断が肯定された場合には、ステップS26に移行し、ピン曲がり判定部34は、センサ異常値が発生したと判断し、ステップS28に移行する。一方、ステップS22の判断が否定された場合には、ステップS24に移行し、測定値Pa(n)とPb(n)とを比較し、Pa(n)とPb(n)の差が、Pa(n)の値の20%以上となったか否かを判断する。ここでの判断が否定された場合には、ステップS28に移行するが、ここでの判断が肯定された場合には、ステップS26を経てステップS28に移行する。なお、ステップS24では、測定値Pa(n)とPb(n)のバランスが一定以上崩れたか否かを判断している。このように測定値Pa(n)とPb(n)のバランスが一定以上崩れた場合にも、コンタクトピン20の曲がりが発生している可能性が高いことを意味する。したがって、ステップS24の判断が肯定されたときにも、ステップS22と同様、ステップS26に移行することとしている。
【0046】
ステップS28では、駆動部32の駆動が継続されているか否かを判断する。ここでの判断が否定される場合とは、図12(a)のフローチャートのステップS18が既に行われている場合である。ここでの判断が肯定された場合には、ステップS20に戻る。一方、ここでの判断が否定された場合には、ステップS30において、応力センサSa(n)、Sb(n)からの測定値Pa(n)、Pb(n)の取得を終了して、図12(b)の全ての処理を終了する。
【0047】
なお、図12(b)の処理においてステップS26を経た場合には、センサ異常値が発生しているので、その後に図12(a)のフローチャートのステップS12の判断が行われたときには、その判断が肯定されることになる。
【0048】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、コネクタ14のハウジング16に接触する複数の押圧部材41〜47が駆動部32により押圧されることで、ハウジング16に保持された複数のコンタクトピン18をプリント基板12のスルーホール12aへ押圧する。そして、押圧部材41〜47のうち、押圧の方向に交差する1方向に延びる一対の腕部分に設けられた応力センサSa(n)、Sb(n)が、コンタクトピン18をプリント基板12に対して押圧する際に生じる応力を測定する。したがって、コンタクトピン18のいずれかに曲がりが発生した場合でも、各腕部分に設けられた応力センサSa(n)、Sb(n)による測定結果を用いることで、高精度に曲がりの有無を判定することができる。これにより、コンタクトピン18をスルーホール12aに圧入するとき、すなわち、コネクタ14を実装するときに、コンタクトピン18の曲がりの有無を高精度に判定することができるので、曲がりが生じたときであっても、コンタクトピン18の圧入官僚前に実装不良を検知することができる。したがって、駆動指示部38は、応力センサの検知結果に基づいて押圧力を制御することで、圧入を途中で中止することができる。このため、実装不良のコネクタ除去作業(特に、コンタクトピン18を1本1本抜く作業)に要する時間、工数を大幅に削減することができるとともに、コネクタ14をプリント基板12に正確に実装することができる。また、本実施形態では、プリント基板12にコネクタを両面実装する場合でも、実装中にコンタクトピン18の曲がりを検出することができる。更に、本実施形態では、応力センサSa(n)、Sb(n)が、圧入治具20に直接設けられているので、別途カメラ等を用いて、コンタクトピンの曲がりを検出するような場合と比較して、スペース効率が良い。
【0049】
また、特開平6−283898号公報に開示されているように、圧入ヘッド(本実施形態の圧入治具20に相当)の高さを検出し、その高さが所定高さとならない場合にピン曲がりを判定する方法もある。しかしながら、この方法では、スルーホール径やピン寸法のバラつき、ハウジングの寸法バラつきの影響を受けるため、正確にピン曲がりを判定できないおそれがある。また、本実施形態のコネクタでは、曲がりが発生したピンは、押圧力により座屈するため、上記公報の方法では、ピン曲がりの有無を判定ができない可能性が高い。これに対し、本実施形態の圧入機構30を用いることにより、ピン曲がりを精度良く判定することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、押圧部材41〜47には、押圧部分72a〜72dの一部と、腕部分73a〜73d、74a〜74dの応力センサSa(n)、Sb(n)が設けられる部分との間に、スリット75a〜75d、76a〜76dが貫通形成されている。したがって、押圧部分72a〜72dに対して作用した力をスリット75a〜75d、76a〜76dで増幅することができ、当該増幅した力(応力)を応力センサSa(n)、Sb(n)により測定することができる。これにより、高精度にコンタクトピン18の曲がりを検出することができる。
【0051】
また、本実施形態では、ピン曲がり判定部34が、応力センサSa(n)、Sb(n)による測定結果と、予め定められている閾値(図13)とを比較して、コンタクトピン18がスルーホール12aに正常に圧入されているか否かを判断するので、簡易に、コンタクトピン18の曲がりを検出することができる。
【0052】
また、本実施形態では、更に、ピン曲がり判定部34がそれぞれの測定結果の差に基づいて、コンタクトピン18がスルーホール12aに正常に圧入されているか否かを判断するので、より精度良くコンタクトピン18の曲がりを検出することができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、押圧部材41〜47にスリットを貫通形成する場合について説明したが、これに限らず、スリットは必ずしも形成しなくても良い。また、スリットを設ける場合にも、応力が増幅される形状であればその形状は問わない。
【0054】
なお、上記実施形態では、ピン曲がり判定部34は、ステップS22とステップS24のいずれかの判断が肯定された場合に、センサ異常値が発生したと判定する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ステップS22、S24のいずれか一方を行わないこととしても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、図12(a)のステップS16において、ユーザがコネクタ14をプリント基板12上から取り去るとともに、別のコネクタを配置する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、コンタクトピンの曲がりが発生したコネクタの除去や別のコネクタの再配置を、ロボット等を用いて全自動にて行うこととしても良い。
【0056】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 電子部品
12 プリント基板(基板)
14 コネクタ
16 ハウジング
18 コンタクトピン(ピン)
22 本体部(保持部材の一部)
26a,26b 保持棒(保持部材の一部)
32 駆動部
34 ピン曲がり判定部(駆動制御部の一部)
35 駆動制御部
38 駆動指示部(駆動制御部の一部)
41〜47 押圧部材
72a、72b、72c、72d 押圧部分(押圧部材本体)
73a、73b、73c、73d 腕部分
74a,74b、74c、74d 腕部分
75a、75b、75c、75d スリット(貫通孔)
76a、76b、76c、76d スリット(貫通孔)
100 製造装置
Sa(n)、Sb(n) 応力センサ(応力測定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタのハウジングに接触し、前記ハウジングに保持された複数のピンを基板の複数の穴へ押圧するために設けられ、かつ、前記押圧の方向に交差する1方向に延びる一対の腕部分を有する複数の押圧部材と、
前記押圧部材を押圧し、前記複数のピンを前記基板の穴に圧入させる駆動部と、
前記各腕部分に設けられ、前記ピンを前記基板の穴に対して押圧する際に生じる応力を測定する応力測定部と、
前記応力測定部の測定結果に応じて、前記駆動部の押圧力を制御する駆動制御部と、を備える電子部品の製造装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記一対の腕部分に挟まれた位置に設けられた押圧部材本体を有し、
前記押圧部材本体の一部から、前記腕部分の前記応力測定部が設けられる部分にかけて、スリット状の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記応力測定部による測定結果に基づいて、前記ピンが前記穴に正常に圧入されているか否かを判断する請求項1又は2に記載の電子部品の製造装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記応力測定部による測定結果と、予め定められている閾値とを比較して、前記ピンが前記穴に正常に圧入されているか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載の電子部品の製造装置。
【請求項5】
前記駆動制御部は、前記各押圧部材の前記一対の腕部分に設けられている応力測定部それぞれの測定結果の差に基づいて、前記ピンが前記穴に正常に圧入されているか否かを判断することを特徴とする請求項3又は4に記載の電子部品の製造装置。
【請求項6】
複数のピンと当該複数のピンを保持するハウジングとを有するコネクタと、該コネクタの複数のピンが圧入される穴を有する基板と、を有する電子部品の製造方法であって、
前記ピンと前記穴の位置が一致した状態で、前記ハウジングに対して前記基板に向かう方向の押圧力を押圧部材を介して作用させる工程と、
前記押圧方向に交差する1方向に延びる一対の前記押圧部材の腕部分に生じる応力を測定する工程と、
前記応力の測定結果に基づいて、前記押圧力を制御する工程と、を含む電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記押圧力を作用させる工程では、前記押圧部材を複数用いて、前記ハウジングに対して押圧力を作用させ、
前記応力を測定する工程では、前記複数の押圧部材それぞれに生じる応力を別個に測定することを特徴とする請求項6に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−65845(P2011−65845A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214995(P2009−214995)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】