説明

電子部品供給装置

【課題】構成を増やすことなくキャリアテープの凹部R内での電子部品の暴れを防止する。
【解決手段】電子部品Dが封入されたキャリアテープAの搬送経路が形成されたメインフレーム20を備え、各凹部の間隔と等しい送り量でキャリアテープを間欠送りで搬送して電子部品実装装置100に各電子部品を供給する電子部品供給装置10において、搬送経路の途中に設けられたカバーテープの剥離部26と、その搬送方向下流側に設けられた電子部品実装装置に対する電子部品の供給部28と、キャリアテープの間欠送りを行う搬送機構30とを備え、キャリアテープの各凹部が間欠送りにおける最高速度で通過する位置を避けて剥離部を配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装装置に電子部品を供給する電子部品供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装装置に電子部品を供給する電子部品供給装置としては、電子部品をパッケージングしたキャリアテープを間欠送りしながらカバーテープのみ剥離し、キャリアテープに形成されたポケット内の電子部品を電子部品実装装置に対して受け渡し可能とするものがある。
このような電子部品供給装置にあっては、電子部品の小型化が進みカバーテープ剥離時に電子部品が小さい為、剥離時にカバーテープに発生する静電気の影響により、電子部品が暴れ表面実装装置に安定供給できない現象が発生する。
上記対策として、カバーテープの剥離位置から電子部品の受け渡しを行う供給位置に渡ってキャリアテープの下側にマグネットを設け、磁力により電子部品を吸引して暴れを防ぐ電子部品供給装置が挙げられる(例えば特許文献1参照)。
また、カバーテープの剥離位置の下流側にキャリアテープを覆う開閉可能なシャッターにより電子部品を保持する電子部品供給装置も案出されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−38286号公報
【特許文献2】特開2007−258552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電子部品供給装置にあっては、磁力に悪影響を受けるおそれがある電子部品には適用することができず、また、磁力に吸引可能な電子部品にしか適用できないという問題があった。
また、特許文献2に記載の電子部品供給装置にあっては、電子部品の暴れを抑制する機構としてシャッター機構を設けると、電子部品実装装置に安定供給は可能であるが、部品点数が多くなり可動部の磨耗による故障や交換の要因となるという欠点があった。
【0005】
本発明は、部品点数の増加構造の複雑かを生じることなく安定して電子部品を電子部品実装装置に供給可能とすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、一定の間隔で形成された凹部内に電子部品が収納されると共にカバーテープにより前記各電子部品が封入されたキャリアテープの搬送経路が形成されたメインフレームを備え、前記各凹部の間隔と等しい送り量で前記キャリアテープを間欠送りで搬送して電子部品実装装置に前記各電子部品を供給する電子部品供給装置において、前記搬送経路の途中に設けられた前記カバーテープの剥離部と、当該剥離部の搬送方向下流側に設けられた前記電子部品実装装置に対する電子部品の供給部と、前記キャリアテープの間欠送りを行う搬送機構とを備え、前記キャリアテープの各凹部が前記間欠送りにおける最高速度で通過する位置を避けて前記剥離部を配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記キャリアテープが前記間欠送りの立ち上がり速度区間、立ち下がり速度区間又は立ち下がり速度区間と次の間欠送りでの立ち上がり速度区間との合計区間のいずれかで、前記各凹部が前記剥離部を通過するように配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記剥離部は前記供給部に対して、前記間欠送りの一回の送り量の1以上の整数倍の距離だけ離れて配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明は、キャリアテープの各凹部が間欠送りの最速となる位置を避けて剥離部を配置するように構成されている。
即ち、間欠送りでは、速度0から加速して最高速度に到達し、最高速度となる状態を経て最高速度から速度0となるまで減速を行う速度パターンで搬送が行われる。
つまり、一定の速度パターンで各凹部が移動する場合、各凹部が最高速度状態で通過する位置は一定であり、剥離部をそれ以外の位置に配置することで、剥離部におけるカバーテープの剥離を最高速度よりも低速で行うことが可能である。
或いは、搬送機構が制御可能なものである場合には、定位置に設けられた剥離部に対して各凹部が最高速度以外の状態で剥離部を通過するように搬送の速度パターンを制御により調整することも可能である。
【0010】
これにより、キャリアテープの最高搬送速度よりも低速で凹部におけるカバーテープの剥離が行われるので、凹部で剥離時に発生する静電気を低減することができ、凹部内の電子部品の暴れを抑制することが可能となる。
また、本発明は、マグネットを使用しないので電子部品の制限がなく、また、剥離部の位置調整或いは搬送機構に対する制御により上記効果を実現するので、新たな構成や部材を追加する必要がなく、部材の摩耗や劣化による動作不良を低減することができ、長期間にわたって安定した電子部品供給を行うことが可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明は、間欠送りの速度パターンがより具体的に、立ち上がり区間と最高速度区間と立ち下がり区間とで構成され、最高速度区間以外の区間で凹部が剥離部を通過するよう構成されている。かかる構成は、請求項1と同様に、剥離部の配置で実現させても良いし、搬送機構の制御により実現させても良い。
そしてこれにより、新たな構成や部材を追加することなく、効果的に静電気による電子部品の暴れを低減することが可能となる。
【0012】
請求項3記載の発明は、剥離部が供給部に対して、間欠送りの一回の送り量の1以上の整数倍の距離だけ離れて配置されている。このため、先行する凹部が供給部で停止する際に、剥離部に達した凹部も停止することなり、当該凹部の剥離部の通過を最も低速とすることが可能となり、さらに効果的に静電気による電子部品の暴れを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電子部品フィーダを用いる電子部品実装装置の斜視図である。
【図2】電子部品フィーダの側面図である。
【図3】電子部品フィーダのアッパーカバー周辺の拡大側面図である。
【図4】図4(A)はキャリアテープの搬送速度パターンを示す線図、図4(B)は従来のアッパーカバーにおける供給部と剥離部の配置を示す説明図、図4(C)は剥離部の配置を変更したことによりポケットにおけるカバーテープの剥離速度の低減を図った本願発明の第1の実施形態を示す説明図である。
【図5】図5(A)はキャリアテープの搬送速度パターンの他の例を示す線図、図5(B)は第2の実施形態における供給部と剥離部の配置を示す説明図である。
【図6】図6(A)はキャリアテープの搬送速度パターンの線図、図6(B)は従来のアッパーカバーにおける供給部と剥離部の配置を示す説明図、図6(C)は供給部の配置を変更したことによりポケットにおけるカバーテープの剥離速度の低減を図った本願発明の第3の実施形態を示す説明図である。
【図7】電子部品フィーダの搬送機構の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の第1の実施形態)
本発明に係る電子部品供給装置の実施形態について説明する。
電子部品供給装置としての電子部品フィーダ10は、電子部品実装装置100に着脱自在に備えられ、電子部品が均一間隔でカバーテープHにより封入されたキャリアテープAを搬送し、搬送経路における所定の供給位置で電子部品実装装置100の搭載ヘッド106に吸着させることで電子部品実装装置100に電子部品を供給するものである。
ここで、電子部品実装装置100において、基板Pが前工程から後工程に搬送される水平な方向をX軸方向とし、これと直交する水平な方向であり、電子部品実装装置100に配置される後述するフィーダ10の長手方向の向きに沿った方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向とする。
【0015】
(電子部品実装装置の構成)
図1は、電子部品フィーダ10を用いる電子部品実装装置100の斜視図である。
図1に示すように、電子部品実装装置100は、各構成部材がその上面に載置される基台102と、基板PをX軸方向に沿って前工程から後工程に搬送する基板搬送装置103と、複数の電子部品フィーダ10が並んで設置されるフィーダ収納部104と、電子部品フィーダ10により供給される電子部品Dを基板Pに搭載する搭載ヘッド106と、搭載ヘッド106をX,Y軸の各方向に移動するヘッド移動装置107等、を備えている。
【0016】
基板搬送装置103は、図示しない搬送ベルトを備えており、その搬送ベルトにより基板PをX軸方向に沿って前工程側から後工程側へ搬送する。
また、基板搬送装置103は、搭載ヘッド106により電子部品Dを基板Pへ実装するため、所定の部品実装位置において基板Pの搬送を停止し、基板Pの保持も行っている。
【0017】
フィーダ収納部104は、基台102のY軸方向における一端部に設けられている。フィーダ収納部104において、個々の電子部品フィーダ10はその長手方向がY軸方向に向けられると共に、複数の電子部品フィーダ10がX軸方向に沿って並列するように着脱自在に取り付けられるようになっている。なお、図1では電子部品フィーダ10は一つのみ図示されているが、実際には複数の電子部品フィーダ10が並んで装備される。
【0018】
搭載ヘッド106は、梁部材112に備えられており、下方(Z軸方向)に突出する吸着ノズル106aを有している。この吸着ノズル106aは、吸着保持する電子部品の大きさや形状に応じて交換できるように、着脱可能に備えられている。
吸着ノズル106aは、例えば、図示しない空気吸引装置と接続されており、吸着ノズル106aの下端である先端部に電子部品を吸着保持することを可能としている。また、その空気吸引装置には図示しない電磁弁が備えられており、その電磁弁により空気吸引装置の空気吸引状態と大気開放状態とを切り替える。つまり、空気吸引状態としたときに吸着ノズル106は負圧となり電子部品を吸着可能とし、大気開放状態としたときに吸着ノズル106aは大気圧状態となって吸着した電子部品の吸着を解除する。
【0019】
また、搭載ヘッド106には、吸着ノズル106aをZ軸方向に移動させる図示しないZ軸移動装置と、吸着ノズル106aをZ軸を中心として回転させる図示しないノズル回転装置とを備えている。
Z軸移動装置(図示省略)は、搭載ヘッド106上に設けられており、吸着ノズル106aをZ軸方向に移動させる移動機構であり、吸着ノズル106aはこのZ軸移動装置を介してZ軸方向に移動自在に搭載ヘッド106に備えられている。Z軸移動装置としては、例えば、サーボモータとベルトの組み合わせ、サーボモータとボールネジの組み合わせ、等を適用することができる。
ノズル回転装置(図示省略)は、搭載ヘッド106上に設けられており、吸着ノズル106aを回転させる回転駆動機構であり、吸着ノズル106aはこのノズル回転装置を介してZ軸を軸中心に回転自在に搭載ヘッド106に備えられている。Z軸回転装置としては、例えば、角度調節モータと、この角度調節モータの回転角度量を検出するエンコーダ等により構成される。
なお、吸着ノズル106aは一つのヘッドに複数搭載しても良い。その場合、吸着ノズル106aと同数のZ軸移動機構及びノズル回転機構が搭載ヘッド106に搭載される。
【0020】
ヘッド移動装置107は、搭載ヘッド106をX軸方向に移動するX軸移動装置107aと、搭載ヘッド106をY軸方向に移動するY軸移動装置107bと、により構成されている。
【0021】
X軸移動装置107aは、基板搬送装置103の基板搬送路上に、基板Pの搬送方向と垂直な方向(Y軸方向)に跨る様に備えられているガイド部材111,111に支持され、X軸方向に延在する梁部材112の側面に設けられている図示しないレール状の支持部材と、その支持部材に支持されている搭載ヘッド106をX軸方向に移動させる図示しない駆動装置を備えている。この駆動装置としては、例えば、リニアモータ、サーボモータとベルトの組み合わせ、サーボモータとボールネジの組み合わせ、等を適用することができる。
【0022】
Y軸移動装置107bは、ガイド部材111,111の上面に設けられている図示しないレール状の支持部材と、その支持部材に支持されている梁部材112をY軸方向に移動させる図示しない駆動装置を備えている。この駆動装置としては、例えば、リニアモータ、サーボモータとベルトの組み合わせ、サーボモータとボールネジの組み合わせ、等を適用することができる。
梁部材112はこのY軸移動装置107bによってガイド部材111,111の上面をY軸方向に移動自在に備えられており、搭載ヘッド106は梁部材112を介してY軸方向に移動自在となる。
【0023】
そして、搭載ヘッド106はヘッド移動装置107によって、X軸方向、Y軸方向に移動するとともに、電子部品フィーダ10の供給位置51に供給されたキャリアテープAが保持する電子部品Dを、搭載ヘッド106の吸着ノズル106aにより吸着し、基板搬送装置103における部品実装位置の基板Pへ実装するようになっている。
【0024】
(電子部品フィーダの全体構成)
電子部品フィーダ10の後方には、図示しないキャリアテープAのテープリールが回転可能に支持されている。キャリアテープAは、その上面に均一間隔で凹部としてのポケットRが形成されており、各ポケットR内に電子部品Dが格納されている。そして、キャリアテープAの上面にはカバーテープHが貼着され、ポケットR内に電子部品Dを封入する構造となっている(図3参照)。
電子部品フィーダ10は、テープリールから繰り出されるキャリアテープAをポケットRの間隔で間欠的に搬送し、所定位置でカバーテープHを剥離すると共にその下流側に位置する電子部品フィーダ10の所定位置で電子部品実装装置100のヘッド106の吸着ノズル106aに電子部品Dの受け渡しを行う。
【0025】
図2は電子部品フィーダ10の側面図であり、図示のように、電子部品フィーダ10は、キャリアテープAの搬送経路が形成されたメインフレーム20と、キャリアテープAの搬送を行う搬送機構30と、キャリアテープAからカバーテープHを剥離させる剥離機構40と、搬送機構30及び剥離機構40を制御する制御回路50とを備えている。
【0026】
メインフレーム20は、概略形状が一方向に長い平板状に形成されており、その平板面をY−Z平面に向けた状態でその長手方向一端部を電子部品実装装置100側に向けて当該電子部品実装装置100に保持されるようになっている。以下の説明では、電子部品フィーダ10の電子部品実装装置側となる端部を「前」、逆側の端部を「後」として説明を行うものとする。また、電子部品フィーダ10の前側を「キャリアテープの搬送方向下流側」、後側を「キャリアテープの搬送方向上流側」として説明を行うものとする。なお、図2では、電子部品フィーダ10の前端部が左方を向いた状態で図示されている。
【0027】
メインフレーム20の後端には搬送経路の入り口が設けられ、テープリールから繰り出されるキャリアテープAが挿入される。
搬送経路は、メインフレーム20の後端部から斜め上方に向かって形成され、メインフレーム20のほぼ中間位置でフレーム上端部に達すると共に、それ以降は当該上端部に沿って形成されている。
【0028】
メインフレーム20の前端部近傍には、搬送経路上のキャリアテープAを上方から覆うアッパーカバー25が取り付けられている。図3はアッパーカバー25の断面図である。
アッパーカバー25は、スリット状に開口された剥離部26が形成されており、この剥離部26からカバーテープHが上方に折り返されて剥離機構40により後側に向かって引き寄せられることによりキャリアテープAからの剥離が促されるようになっている。
【0029】
また、アッパーカバー25の剥離部26の搬送方向下流側には、剥離部26より幾分広く開口した開口部27が形成されている。
そして、この開口部27における定位置がカバーテープHが剥離されたキャリアテープAから電子部品Dを吸着ノズル106aに受け渡す供給部28となっている。電子部品実装装置100は、電子部品フィーダ10の供給部28の位置データを記憶しており、搭載された電子部品フィーダ10の供給部28を目標位置としてヘッド106及び吸着ノズル106aを位置決めして電子部品Dの受け取りを行うようになっている。
なお、開口部27は、ポケットRのピッチPが異なるキャリアテープAやサイズの異なる電子部品DのキャリアテープAについても電子部品Dの受け渡しを行うことができるように、幾分広く開口形成されている。
【0030】
搬送機構30は、主に、供給部28の下方に設けられたチェーンスプロケット状のスプロケット31と、スプロケット31の回転駆動源となるフィードモータ32と、フィードモータ32からスプロケット31にトルク伝達を行う減速ギア列33とから構成されている。
スプロケット31は、キャリアテープAに均一間隔で形成されたスプロケット孔に下方から嵌合する突起がスプロケット孔と同じ間隔で放射状に設けられており、スプロケット31が回転を行うことで、キャリアテープAを前方に向かって搬送することを可能としている。
フィードモータ32は、その動作量を検出するエンコーダが装備されており、当該エンコーダの出力に応じて後述する制御回路50により、キャリアテープAに対して一定の間欠送りが行われるよう制御されるようになっている。
【0031】
剥離機構40は、メインフレーム20の後端内部に形成された剥離後のカバーテープHの回収ボックス41と、回収ボックス41の入り口で互いにかみ合って回転することでカバーテープHを回収ボックス内に送り込む一対の掻き込みギア42,42と、一方の掻き込みギア42の回転駆動源となるプルモータ43と、プルモータ43から減速して一方の掻き込みギア42にトルクを伝達する減速ギア列44とから主に構成されている。
また、剥離部26と一対の掻き込みギア42,42との間には、カバーテープHに弛みが生じないようテンションを付与するテンションローラ45が設けられている。
【0032】
剥離機構40は、一対の掻き込みギア42,42の間に剥離されたカバーテープHを挟み込んで後方に送ることで、剥離部26においてキャリアテープAから上方に剥離するよう張力を付与するようになっている。
従って、プルモータ43は、間欠送りを行うフィードモータ32に同期して、キャリアテープAと同じ送り量でカバーテープHを回収ボックス41側に送り込むように制御回路50によって制御される。
【0033】
制御回路50は、搬送機構30のフィードモータ32とプルモータ43とを制御する。
かかる制御回路50は、電子部品フィーダ10を電子部品実装装置100に搭載したときに接続される図示しない通信コネクタにより電子部品実装装置100との通信を行うことができ、電子部品実装装置100のヘッド106において吸着ノズル106aが電子部品フィーダ10の電子部品Dを吸着したことを検出する検出信号を通信コネクタから受信すると、次の間欠送りを行うようフィードモータ32を制御し、これにと同期してプルモータ43も制御する。
なお、各モータ32及び43はいずれも図示しないエンコーダを搭載しており、その出力に基づいて各々のテープ送り量が一致するよう出力軸の回転量を制御しているが、例えば、フィードモータ32とプルモータ43に対してエンコーダを設けずに、オープンループで規定の動作量及び動作速度で制御するよう構成しても良い。
【0034】
図4は搬送機構30のフィードモータ32によるキャリアテープAの間欠送りと前述した剥離部26及び供給部28との位置関係について示した説明図である。
図4(A)は間欠送りによりキャリアテープAの各位置における搬送速度の変化を示した線図である。図示のように、キャリアテープAは、毎回の間欠送りごとに、停止状態から最大速度まで加速する立ち上がり区間V1と、一定の最高速度を維持する最高速度区間V2と、最高速度から停止状態まで減速する立ち下がり区間V3とからなる速度パターンで搬送が行われる。即ち、フィードモータ32は、いわゆる台形駆動で駆動を行うようになっている。
【0035】
図4(B)及び図4(C)は間欠送りにおける搬送速度0となる時のキャリアテープA、剥離部26及び供給部28の位置関係を示しており、横軸の位置及び距離は図4(A)と一致させている。
なお、図4(B)は本願発明の特徴を施していない従来の電子部品フィーダを参考例として示しており、図4(C)は本願発明の特徴を施した電子部品フィーダ10を示している。
また、図4(B)及び図4(C)は図2及び図3とは逆に搬送方向が右方向となるよう図示している。
【0036】
図4(B)及び図4(C)いずれの場合も、間欠送りにおける停止状態でポケットRが供給部28の位置で停止されるようになっており、また、一回の間欠送り量がキャリアテープAのポケットRのピッチPと一致している。
そして、従来の電子部品フィーダの場合には、各ポケットRが剥離部26に到達した時には、図4(A)の点L1における搬送速度となり、最高速度区間V2に属することが分かる。
一方、電子部品フィーダ10の場合には、各ポケットRが剥離部26に到達した時には、図4(A)の点L2における搬送速度となり、各間欠送りの間の速度0の状態となることが分かる。
【0037】
即ち、従来の電子部品フィーダは、供給部28から剥離部26までの距離が一回の間欠送り量の整数倍となっておらず、おおむね1.5倍程度に設定されている。このため、各ポケットRが間欠送りの最高速度で剥離部26を通過することとなる。
一方、本願発明の実施形態である電子部品フィーダ10は、供給部28から剥離部26までの距離が一回の間欠送り量の整数倍(この例では2倍、ただし1倍以上であればよい)に設定されている。このため、先行する電子部品D及びポケットRが供給部28で停止すると、後方の電子部品D及びポケットRはちょうど剥離部26で停止するようになっている。
【0038】
このため、電子部品フィーダ10では、キャリアテープAの各ポケットRにおいて、カバーテープの剥離が常に停止直前と移動開始直後の低速状態で行われることとなり、従来の電子部品フィーダのように最高速度で剥離を行うことにより激しく静電気が生じる事態を回避することができ、剥離時に発生するポケットR内での電子部品Dの暴れを低減することが可能となっている。
【0039】
なお、電子部品フィーダ10では、間欠送りにおける停止状態で、剥離部26とポケットRの搬送方向における中心位置が一致するように設定されている。
これにより、ポケットRの前端位置から中心位置までが間欠送りの立ち下がり区間V3における停止直前の速度から停止までの間で剥離部26を通過し、ポケットRの中心位置から後端位置までが停止状態から次の間欠送りの立ち上がり区間V1における開始直後の速度で剥離部26を通過することとなるので、ポケットR全体を最も低速で剥離部を通過させることができ、剥離動作を最も低速を行うことが可能となる。従って、剥離による静電気の発生も最も効果的に抑制することが可能である。
【0040】
なお、図4(A)における着色区間、即ち、間欠送りの立ち下がり区間V3と次の間欠送りにおける立ち上がり区間V1とを連結した区間内でポケットRが剥離部26を通過するように、剥離部26の配置は変更可能である。この範囲内で変更しても、各ポケットRの位置における剥離が間欠送りにおける最高速度で行われることを回避することができ、静電気の抑制効果を得ることが可能である。
【0041】
また、図4はフィードモータ32の制御について説明したが、プルモータ43についても、カバーテープHの送り速度がキャリアテープAの搬送速度と一致するよう台形制御が行われる。
【0042】
以上の構成からなる電子部品フィーダ10は、電子部品実装装置100の搭載時において、通信コネクタを通じて、吸着ノズル106aによる電子部品Dの吸着の検出信号を受信すると、制御回路50は、フィードモータ32及びプルモータ43を予め定められた速度パターンで駆動して間欠送りを行う(図4(A)参照)。
これにより、剥離部26において停止していたポケットRにおいて前回の間欠送りで半分まで剥離されていたカバーテープHが残る半分についても剥離される。かかる前半の剥離は、速度パターンにおける立ち下がり区間V3の停止直前の速度で行われ、後半の剥離は速度パターンにおける立ち上がり区間V1の動作開始直後の速度で行われるため、ポケットR全体におけるカバーテープHの剥離が最大限に低速で行われる。
そして、当該間欠送りの速度パターンにおける最大速度区間V2を過ぎて立ち下がり区間V3に移行すると、次のポケットPが剥離部26に到達し、当該ポケットRの中心位置が剥離部26に到達すると間欠送りが停止される。
一方、このポケットRよりも二つ前を先行するポケットRは供給部28に到達する。このポケットR内の電子部品Dは、電子部品実装装置100に定められた搭載スケジュールによりヘッド106の吸着ノズル106aにより吸着されるまで、供給部28において待機する。
【0043】
以上のように、電子部品実装装置100における電子部品フィーダ10では、キャリアテープAの各ポケットRが間欠送りにおける最高速度で剥離部26を通過しないように当該剥離部26が位置設定されているため、ポケットRにおけるカバーテープHの剥離を低速で行うことができ、静電気の発生を抑制し、ポケットR内での電子部品Dの暴れを低減することが可能である。
また、マグネットを使用しないので搬送する電子部品について制限を受けることがない。
また、新たな構成部材を追加することなく、剥離部26の配置により電子部品Dの暴れを防止するため、装置の生産性を損なうことがない。また、シャッタ機構のような動作部品も不要とするので、動作を行う部材の摩耗や破損による動作不良も回避することができ、長期にわたって安定した動作を確保することが可能である。また、装置の保守性も向上することが可能である。
【0044】
(第2の実施形態)
上記電子部品フィーダ10では、供給部28に対する剥離部26の配置により、ポケットRにおけるカバーテープHの剥離速度の低減を図っているが、フィードモータ32の速度パターンを変更して、同じ効果を得ることも可能である。
図5(A)はフィードモータ32の速度パターンを変更した例を示し、図5(B)は速度パターンに対応するキャリアテープAの停止状態における位置関係を示している。
図示のように、供給部28に対して剥離部26の配置が一回の間欠送り量の整数倍となっていない場合であっても、例えば、速度パターンにおける立ち上がり区間V1の加速度と立ち下がり区間V3の減速度と最高速度区間V2の区間長とを調節することで、ポケットRが剥離部26を最高速度区間V2を避けて通過するように、フィードモータ32を制御することも可能である。即ち、この場合も、剥離部26が各ポケットPが最高速度で移動する位置を回避して配置されていることとなる。
この場合も、前述した図4(C)の例と同様に、ポケットRにおけるカバーテープHの剥離速度を低減し、静電気の発生を抑制してポケットR内での電子部品Dの暴れを抑止することが可能である。
【0045】
(第3の実施形態)
また、上記電子部品フィーダ10では、アッパーカバー25における剥離部26の形成位置の適正化によりポケットRにおけるカバーテープHの剥離速度の低減を図っているが、これに限らず、供給部28の設定位置を変更することで同様の効果を得るように構成しても良い。
図6(A)は前述と同じ速度パターンの線図、図6(B)は前述した従来のアッパーカバーにおける供給部28と剥離部26の配置を示す説明図、図6(C)は供給部28の配置を変更したことによりポケットRにおけるカバーテープHの剥離速度の低減を図った本願発明の第3の実施形態を示す。
前述したように、供給部28は、アッパーカバー25における開口部27の範囲内であれば、電子部品実装装置100のヘッド106の受け取り位置の位置データの設定を変えることで変更することができる。従って、図6(B)のように、ポケットRが剥離部26を最高速度で通過するように設定されている場合には、開口部27の範囲内で供給部28を搬送方向に沿って変更調節し、供給部28と剥離部26とが一回の間欠送り量の整数倍となるようにしても良い。なお、図6(C)は他の図との関係を明確化するためにアッパーカバー25の位置が移動しているように図示しているが、実際には、ヘッド106の受け取り位置である供給部28の位置がアッパーカバー25に対して相対的に変更された例を図示しているものである。
かかる構成の場合も、図4の例と同様の効果を得ることが可能である。
【0046】
(第4の実施形態)
また、第1の実施形態における電子部品フィーダ10では、キャリアテープAの搬送及びカバーテープHの剥離についてそれぞれ駆動源となるモータ32、43を搭載している場合を例示したが、電子部品フィーダとしては、それらの駆動源を電子部品実装装置側が備え、当該電子部品実装装置側から入力される作動力を受けて、キャリアテープAの搬送及びカバーテープHの剥離を行う電子部品フィーダも存在する。
図7は上記電子部品フィーダにおける搬送機構30Bの例を示す。
図示のように、搬送機構30Bは、電子部品実装装置から上方の押圧力を受けて図示反時計回りに回動を行うノックレバー31Bと、ノックレバー31Bの回動範囲を調節するストッパ37Bと、キャリアテープAに嵌合するスプロケット32Bと同軸で往復回動動作を行うリンク部材33Bと、ノックレバー31Bからリンク部材33Bに回動動作を伝達する伝達リンク部材34Bと、スプロケット32Bを一定の回転角度で停止させるラチェット爪35Bと、スプロケット32Bの逆回転を制止するストッパ爪36Bとを備え、リンク部材33Bとスプロケット32Bとの間には図示しない摩擦クラッチが設けられている。また、ノックレバー31Bは、その下端部を下方に回動復帰させる図示しない復帰バネが設けられている。
かかる構成により、ノックレバー31Bの下端部が電子部品実装装置により上方に押圧力Nが入力されると、伝達リンク部材34Bを介してリンク部材33Bが図示反時計方向に回動する。これにより摩擦クラッチを介してスプロケット32Bも同方向に回動し、キャリアテープAを搬送方向に搬送する。このとき、ノックレバー31Bの回動範囲がストッパ37Bにより予め適宜調節されることにより、キャリアテープAを目標とする間欠送り量で送ることが可能となる。
また、ノックレバー31Bは復帰バネにより下端部が下方に向かって回動し、これに伴い、リンク部材33Bも図示時計回りに回動するが、スプロケット32Bはストッパ爪36Bにより逆回転が規制され、摩擦クラッチによりリンク部材33Bのみが回動を行うようになっている。
また、メインフレームの後部には、搬送機構とほぼ同様の構造によりカバーテープHを回収ボックス内に送り込む剥離機構が設けられており、当該剥離機構が有する一対の掻き込みギアに対して回転駆動させるためのトルクを伝達するために、ノックレバー31Bの上端部には、伝達アーム38Bが設けられている。これにより、剥離機構は搬送機構30Bと同期して、キャリアテープAと同じ送り量でカバーテープHの剥離を行うことが可能となっている。
【0047】
上記搬送機構30B及び剥離機構を備える電子部品フィーダも、電子部品フィーダ10と同じアッパーカバー25を装備し、剥離部26と供給部28とを電子部品フィーダ10と同じ相対配置とすると共に、間欠送り量を電子部品フィーダ10と等しく設定することにより、電子部品フィーダ10と同様に、剥離部26をキャリアテープAが通過する際にカバーテープHの剥離速度を低減し、ポケットR内の電子部品Dの暴れを抑止する効果を具備することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 電子部品フィーダ(電子部品供給装置)
20 メインフレーム
26 剥離部
28 供給部
30 搬送機構
100 電子部品実装装置
A キャリアテープ
H カバーテープ
R ポケット(凹部)
V1 立ち上がり区間
V2 最高速度区間
V3 立ち下がり区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の間隔で形成された凹部内に電子部品が収納されると共にカバーテープにより前記各電子部品が封入されたキャリアテープの搬送経路が形成されたメインフレームを備え、前記各凹部の間隔と等しい送り量で前記キャリアテープを間欠送りで搬送して電子部品実装装置に前記各電子部品を供給する電子部品供給装置において、
前記搬送経路の途中に設けられた前記カバーテープの剥離部と、
当該剥離部の搬送方向下流側に設けられた前記電子部品実装装置に対する電子部品の供給部と、
前記キャリアテープの間欠送りを行う搬送機構とを備え、
前記キャリアテープの各凹部が前記間欠送りにおける最高速度で通過する位置を避けて前記剥離部を配置したことを特徴とする電子部品供給装置。
【請求項2】
前記キャリアテープが前記間欠送りの立ち上がり速度区間、立ち下がり速度区間又は立ち下がり速度区間と次の間欠送りでの立ち上がり速度区間との合計区間のいずれかで、前記各凹部が前記剥離部を通過するように配置したことを特徴とする請求項1記載の電子部品供給装置。
【請求項3】
前記剥離部は前記供給部に対して、前記間欠送りの一回の送り量の1以上の整数倍の距離だけ離れて配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−18999(P2012−18999A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154458(P2010−154458)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】