説明

電子部品冷却ユニット及び電力変換装置

【課題】冷媒の供給口及び排出口の配置をニーズに応じて容易に変更できるようにする。
【解決手段】冷媒を循環させる流路111が内部に形成された筐体110と、筐体110に備えられ、電子部品が搭載される2つの上面112a及び下面112bと、筐体110に備えられ、上面112a及び下面112bを取り囲む側面114〜117と、側面114〜117に設けられ、流路111に連通する複数の開口部118と、複数の開口部118のうち、冷媒の供給口及び排出口に対応する開口部118以外を塞ぐ閉塞部材120とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電子部品冷却ユニット及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子部品が収容される収容室と、電子部品を冷却するため構造体に形成される冷却通路とを、それぞれシールするための構造が記載されている。この電子部品冷却ユニット(電子部品収容構造体)においては、電子部品を収容する収容室がそれぞれ形成された第1及び第2ハウジングが合わせ面で結合され、合わせ面には、冷却液が流れる冷却通路が通る流路領域と、第1及び第2ハウジングの収容室を連通させる連通路が通る連通路領域とが形成され、流路領域と連通路領域とをそれぞれ独立して囲い、それぞれの領域をシールする、一体成形のシール部材が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−261368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には明記されていないが、一般に電子部品冷却ユニットには、冷却通路に冷媒を循環させるための供給口及び排出口が設けられる。供給口及び排出口には、冷媒の供給管及び排出管が接続される。このため、供給口及び排出口の配置は、電子部品冷却ユニットの使用環境や設置状況等により個々にニーズが異なる。
【0005】
しかしながら、上記従来技術の構造では、溶融金属を金型に圧入するダイカスト工法で第1及び第2ハウジングを製造するのが一般的であるため、個々のニーズに応じて供給口及び排出口の配置を変更するには、金型を変更する必要がある。したがって、多額のコスト及び製作期間を要することになり、冷媒の供給口及び排出口の配置を容易に変更することができないという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、冷媒の供給口及び排出口の配置をニーズに応じて容易に変更することができる電子部品冷却ユニット及び電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、冷媒を循環させる流路が内部に形成された筐体と、前記筐体に備えられ、電子部品が搭載される少なくとも1つの第1の面と、前記筐体に備えられ、前記第1の面の周囲を取り囲む第2の面と、前記第2の面に設けられ、前記流路に連通する複数の開口部と、前記複数の開口部のうち、前記冷媒の供給口及び排出口に対応する開口部以外を塞ぐ閉塞部材と、を有する電子部品冷却ユニットが適用される。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、交流電力から直流電力又は直流電力から交流電力への変換を行う電力変換装置であって、冷媒を循環させる流路が内部に形成された筐体と、前記筐体に備えられた少なくとも1つの第1の面に搭載された電子部品と、前記筐体に備えられ、前記第1の面の周囲を取り囲む第2の面と、前記第2の面に設けられ、前記流路に連通する複数の開口部と、前記複数の開口部のうち、前記冷媒の供給口及び排出口に対応する開口部以外を塞ぐ閉塞部材と、を有する電力変換装置が適用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子部品冷却ユニット及び電力変換装置によれば、冷媒の供給口及び排出口の配置をニーズに応じて容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】冷媒の供給口及び排出口を前側に配置した第1の電力変換装置の全体構成を表す斜視図である。
【図2】第1の電力変換装置の全体構成を表す上面図である。
【図3】第1の電力変換装置が備える筐体を製造する際に用いられる主型及び中子の構成を表す斜視図である。
【図4】冷媒の供給口及び排出口を前後に配置した第2の電力変換装置の全体構成を表す斜視図である。
【図5】第2の電力変換装置の全体構成を表す上面図である。
【図6】第2の電力変換装置が備える筐体を製造する際に用いられる主型及び中子の構成を表す斜視図である。
【図7】冷媒の供給口及び排出口を左右に配置した第3の電力変換装置の全体構成を表す斜視図である。
【図8】第3の電力変換装置の全体構成を表す上面図である。
【図9】第3の電力変換装置が備える筐体を製造する際に用いられる主型及び中子の構成を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、電子部品冷却ユニットを、交流電力から直流電力又は直流電力から交流電力への変換を行う電力変換装置に適用した場合を一例として説明する。
【0012】
<第1の電力変換装置(供給口及び排出口の両方を前側に配置する場合)>
図1及び図2を用いて、第1の電力変換装置100の全体構成について説明する。なお、説明の便宜上、方向を次のように定める。すなわち、図1中左下方向(図2中下方向)を「前」、図1中右上方向(図2中上方向)を「後」、図1中左上方向(図2中左方向)を「左」、図1中右下方向(図2中右方向)を「右」、図1中上方向(図2中紙面手前方向)を「上」、図1中下方向(図2中紙面奥方向)を「下」とする。
【0013】
第1の電力変換装置100は、冷媒の供給口及び排出口の両方を装置の前側に配置したものである。図1及び図2に示すように、第1の電力変換装置100は、電子部品が収容される2つの収容室S1,S2を有する略直方体形状の筐体110を有している。筐体110は、ダイカスト工法などの鋳造法により一体成形されており、収容室S1と収容室S2を隔壁112によって隔てた構造となっている。隔壁112の内部には、後述する中子10によって、冷媒を循環させる流路111が形成されている。隔壁112の上面112a及び下面112bには、電子部品が搭載される。この例では、上面112aにIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジタ)等の半導体素子で構成された複数のスイッチング素子を有するパワーモジュール101が2つ搭載されている。パワーモジュール101は、複数のスイッチング素子の導通と遮断とをそれぞれ適宜の順序で繰り返すことにより、直流電力を所定の周波数の交流電力に変換して出力する。また、下面112bには、図示しないその他の電子部品(例えば電源基板や制御基板等)が搭載されている。
【0014】
なお、この例では筐体110が2つの収容室を有するようにしたが、収容室は1つでもよい。また、パワーモジュール101を2つ搭載するようにしたが、個数を限定するものではなく、1つでもよいし、3つ以上搭載してもよい。なお、隔壁112の上面112a及び下面112bが、特許請求の範囲に記載の第1の面の一例に相当する。
【0015】
筐体110は、隔壁112の上面112a及び下面112bの周囲を取り囲む側面114〜117を備えている。側面114〜117はそれぞれ、筐体110の前側、右側、後側、左側の側面を構成する。なお、側面114〜117が、特許請求の範囲に記載の第2の面の一例に相当する。これら側面114〜117には、流路111に連通する複数の開口部118が設けられている。この例では、開口部118は、各側面114〜117に対し3つずつ設けられており、それぞれ各側面114〜117の中央部及びその両側に配置されている。各開口部118は、各側面114〜117より突出して設けられている。
【0016】
第1の電力変換装置100では、複数の開口部118のうち、前側の側面114の左側に設けた開口部118が冷媒の供給口に対応しており、この開口部118に供給管102が接続されている。また、前側の側面114の右側に設けた開口部118が冷媒の排出口に対応しており、この開口部118に排出管103が接続されている。この例では、供給管102の圧入部102a及び排出管103の圧入部103aが開口部118に圧入されることで、供給管102及び排出管103が開口部118にそれぞれ固定されている。また、複数の開口部118のうち、上記供給口及び排出口に対応する開口部以外には、開口部118を塞ぐ閉塞部材120が設けられている。この例では、閉塞部材120は各開口部118に圧入されて固定されている。
【0017】
なお、供給管102及び排出管103、閉塞部材120の開口部118に対する固定方法は、圧入に限らない。例えば、各開口部118にめねじを形成すると共に、供給管102及び排出管103の圧入部102a,103a及び閉塞部材120におねじを形成し、ねじ作用により締結してもよい。
【0018】
複数の開口部118のうち、前側の側面114の中央部に設けた開口部118の上側には突起119が設けられている。突起119は、供給口及び排出口に対応する開口部118を識別するための識別部として機能する。この例では、突起119が設けられた側の側面114が前側となり、突起119の突出方向が上側となるように定められている。この突起119によって筐体110の前後左右上下の方向が決まることから、突起119に係る開口部118を基準位置として、当該開口部118からの相対位置関係から供給口及び排出口に対応する開口部118が特定される。
【0019】
なお、識別部の態様は上記突起に限らず、例えば凹みを設けてもよいし、開口部118の突出形状を変更する(例えば角柱状に突出させる)等でもよい。また、識別部の配置や数は上記に限定されず、例えば2種類の識別部を供給口及び排出口に対応する開口部118にそれぞれ設けてもよい。
【0020】
流路111は、隔壁112の内部に形成されており、図2に示すように、供給口及び排出口に対応する開口部118を端部とする略U字状(図2では逆U字状)の流路となっている。すなわち、前方左側の供給管102より供給された冷媒は、隔壁112内の左側を後方に向かって流れ、後方を左側より右側に向かって流れ、右側で前方に向かって流れ、前方右側の排出管103より排出される。このようにして冷媒が隔壁112の全体に亘って循環し、上面112a及び下面112bに搭載されたパワーモジュール101を含む電子部品が冷却される。
【0021】
流路111の内部には、冷媒の流れを整流する複数(この例では4つ)の整流板113が、流れ方向に沿って互いに略平行となるように設けられている。これらの整流板113により冷媒を整流できると共に、流路111内の放熱面を増大させることができるので、冷却効率を向上できる。なお、整流板113は、流路111の上側の内壁と下側の内壁との間を隙間無く接続する部材であってもよいし、上側の内壁に設けた上板部と下側の内壁に設けた下板部とが分離され、上側の内壁と下側の内壁との間に隙間のある部材であってもよい。また、整流板113を、冷媒の流れ方向の所定位置(例えば隔壁112内の後方中央部)で分断した形状としてもよい。
【0022】
なお、第1の電力変換装置100では、流路111の構造上、冷却効率や圧力損失等を考慮すると、冷媒の供給口及び排出口の配置を図2に示す配置とするのが最も好ましいが、これに限定される訳ではない。例えば、供給口を左側の側面117の前側に設けた開口部118に変更したり、排出口を右側の側面115の前側に設けた開口部118に変更する等、冷却効率の低下や圧力損失の増加等を許容できる範囲内において、供給口及び排出口の配置を変更することが可能である。
【0023】
上記構成である第1の電力変換装置100のうち、筐体110と、上面112a及び下面112bと、側面114〜117と、開口部118と、閉塞部材120とが、特許請求の範囲に記載の電子部品冷却ユニットの一例に相当する。
【0024】
次に、図3を用いて、第1の電力変換装置100が備える筐体110を製造する際に用いられる主型50及び中子10の構成について説明する。なお、図3において、図3中左下方向を「前」、図3中右上方向を「後」、図3中左上方向を「左」、図3中右下方向を「右」、図3中上方向を「上」、図3中下方向を「下」とする。これらの方向は、前述の図1及び図2に示す電力変換装置100の各方向に対応している。
【0025】
主型50は、ダイカスト工法などの鋳造法で筐体110を一体成形する際に用いる金型であり、2つの主型50A,50Bで構成されている。各主型50A,50Bには、溶融金属が圧入される空間(キャビティ)となる凹部51,52がそれぞれ設けられている。凹部51には、収容室S1を形成するためのテーブル状の突出部53が設けられており、凹部52には、収容室S2を形成するためのテーブル状の突出部54が設けられている。また、凹部51,52には、筐体110の開口部118に対応する位置に開口部用凹部55がそれぞれ設けられている。各開口部用凹部55には、中子10を支持するために、開口部用凹部55より小径の支持用凹部56がそれぞれ設けられている。
【0026】
上側の主型50Aには、溶融金属を注入するための複数(この例では4つ)の湯口57が設けられており、各湯口57は湯道58を介して凹部51にそれぞれ連通している。また、主型50Aの前側中央部の開口部用凹部55には、突起119を形成するための突起用凹部59が上側に設けられている。
【0027】
中子10は、流路111に対応するように略U字状に形成されている。中子10の前後左右の各側には、円柱状の保持部11が3本ずつ突出して設けられている。これらの保持部11が、主型50A,50Bに設けられた支持用凹部56にそれぞれ嵌合されることで中子10が保持され、溶融金属の圧入時の中子10の位置ずれを防止できる。また、中子10には、整流板113を形成するための溝12が形成されている。この溝12の形状は、形成しようとする整流板113の形状に応じて適宜変更される。例えば、前述したように整流板113が流路111の上側の内壁と下側の内壁との間を隙間無く接続する部材である場合には、溝12は中子10を上下方向に貫通して設けられ、整流板113が上側の内壁に設けた上板部と下側の内壁に設けた下板部とが分離された部材である場合には、溝12は中子10の上面及び下面に設けた凹部となる。
【0028】
なお、中子10は、所定の接合剤を用いて砂を接合して形成された、自己崩壊性の部材である。接合剤は、溶融金属の圧入により高温になると徐々に溶解するようになっており、その結果、中子10は溶融金属が固まった後に自己崩壊する。こうして砂状となった中子10は、形成された筐体110の開口部118より排出することが可能である。なお、砂を接合させて中子10を形成する結果、筐体110の流路111の全ての内壁には微細な凹凸が形成される。これにより、流路111内の放熱面をさらに増大させることができるので、冷却効率をさらに向上できる。
【0029】
<第2の電力変換装置(供給口及び排出口を前後に配置する場合)>
次に、図4及び図5を用いて、第2の電力変換装置200の全体構成について説明する。なお、図4及び図5における方向は、前述の図1及び図2と同様である。
【0030】
第2の電力変換装置200は、冷媒の供給口及び排出口を装置の前後に配置したものである。図4及び図5に示すように、第2の電力変換装置200は、筐体210を有している。筐体210が前述の筐体110と異なる点は、排出口に対応する開口部218の位置と、流路211の形状である。すなわち、第2の電力変換装置200では、第1の電力変換装置100と同様に、複数の開口部218のうち、前側の側面214の左側に設けた開口部218が冷媒の供給口に対応しており、この開口部218に供給管202が接続されている。一方、後側の側面216の右側に設けた開口部218が冷媒の排出口に対応しており、この開口部218に排出管203が接続されている。
【0031】
なお、前側の側面214の中央部に設けた開口部218の突起219によって筐体210の前後左右上下の方向が決まり、突起219に係る開口部218を基準位置として、当該開口部218からの相対位置関係から供給口及び排出口に対応する開口部218が特定される点は、前述と同様である。
【0032】
流路211は、図5に示すように、供給口及び排出口に対応する開口部218を端部とする略S字状(図5では逆S字状)の流路となっている。すなわち、前方左側の供給管202より供給された冷媒は、隔壁212内の左側を後方に向かって流れ、折り返して左右方向中央部を前方に向かって流れ、再度折り返して右側を後方に向かって流れ、後方右側の排出管203より排出される。このようにして冷媒が隔壁212の全体に亘って循環し、上面212a及び下面212bに搭載されたパワーモジュール201を含む電子部品が冷却される。
【0033】
流路211の内部には、複数(この例では4つ)の整流板213が、流れ方向に沿って互いに略平行となるように設けられている。この例では、整流板213は、冷媒の流れ方向の略中央位置(隔壁212の略中央部)で分断された形状となっている。なお、分断箇所を複数にしてもよいし、前述の整流板113と同様に、途中で分断しない形状としてもよい。上記以外の構成は、前述の第1の電力変換装置100と同様であるので説明を省略する。
【0034】
なお、第2の電力変換装置100では、流路211の構造上、冷却効率や圧力損失等を考慮すると、冷媒の供給口及び排出口の配置を図5に示す配置とするのが最も好ましいが、これに限定される訳ではない。例えば、供給口を左側の側面217の前側に設けた開口部218に変更したり、排出口を右側の側面215の後側に設けた開口部218に変更する等、冷却効率の低下や圧力損失の増加等を許容できる範囲内において、供給口及び排出口の配置を変更することが可能である。
【0035】
以上において、隔壁212の上面212a及び下面212bが、特許請求の範囲に記載の第1の面の一例に相当し、側面214〜217が、第2の面の一例に相当する。また、第2の電力変換装置200のうち、筐体210と、上面212a及び下面212bと、側面214〜217と、開口部218と、閉塞部材220とが、特許請求の範囲に記載の電子部品冷却ユニットの一例に相当する。
【0036】
次に、図6を用いて、第2の電力変換装置200が備える筐体210を製造する際に用いられる主型50及び中子20の構成について説明する。なお、図6において、図6中左下方向を「前」、図6中右上方向を「後」、図6中左上方向を「左」、図6中右下方向を「右」、図6中上方向を「上」、図6中下方向を「下」とする。これらの方向は、前述の図4及び図5に示す電力変換装置200の各方向に対応している。
【0037】
主型50は、第1の電力変換装置100の筐体110の製造に用いたものと同じであるので説明を省略する。中子20は、流路211に対応するように略S字状に形成されている。中子20の前後左右の各側には、円柱状の保持部21が3本ずつ突出して設けられている。これらの保持部21が、主型50A,50Bに設けられた支持用凹部56にそれぞれ嵌合されることで中子20が保持され、溶融金属の圧入時の中子20の位置ずれを防止できる。また、中子20には、整流板213を形成するための溝22が形成されている。この溝22の形状は、形成しようとする整流板213の形状に応じて適宜変更される。
【0038】
<第3の電力変換装置(供給口及び排出口を左右に配置する場合)>
次に、図7及び図8を用いて、第3の電力変換装置300の全体構成について説明する。なお、図7及び図8における方向は、前述の図1及び図2等と同様である。
【0039】
第3の電力変換装置300は、冷媒の供給口及び排出口を装置の左右に配置したものである。図7及び図8に示すように、第3の電力変換装置300は、筐体310を有している。筐体310が前述の筐体110,210と異なる点は、供給口及び排出口に対応する開口部318の位置と、流路311の形状である。すなわち、第3の電力変換装置300では、複数の開口部318のうち、右側の側面315の前側に設けた開口部318が冷媒の供給口に対応しており、この開口部318に供給管302が接続されている。一方、左側の側面317の後側に設けた開口部318が冷媒の排出口に対応しており、この開口部318に排出管303が接続されている。
【0040】
なお、前側の側面314の中央部に設けた開口部318の突起319によって筐体310の前後左右上下の方向が決まり、突起319に係る開口部318を基準位置として、当該開口部318からの相対位置関係から供給口及び排出口に対応する開口部318が特定される点は、前述と同様である。
【0041】
流路311は、図8に示すように、供給口及び排出口に対応する開口部318を端部とする略S字状(図8では逆S字状)の流路となっている。すなわち、右側前方の供給管302より供給された冷媒は、隔壁312内の前方を左側に向かって流れ、折り返して前後方向中央部を右側に向かって流れ、再度折り返して後方を左側に向かって流れ、左側後方の排出管303より排出される。このようにして冷媒が隔壁312の全体に亘って循環し、上面312a及び下面312bに搭載されたパワーモジュール301を含む電子部品が冷却される。
【0042】
流路311の内部には、複数(この例では3つ)の整流板313が、流れ方向に沿って互いに略平行となるように設けられている。この例では、整流板313は、冷媒の流れ方向の複数位置(この例では4箇所)で分断された形状となっている。なお、分断位置や数を変更してもよいし、途中で分断しない形状としてもよい。上記以外の構成は、前述の第1及び第2の電力変換装置100,200と同様であるので説明を省略する。
【0043】
なお、第3の電力変換装置300では、流路311の構造上、冷却効率や圧力損失等を考慮すると、冷媒の供給口及び排出口の配置を図8に示す配置とするのが最も好ましいが、これに限定される訳ではない。例えば、供給口を前側の側面314の右側に設けた開口部318に変更したり、排出口を後側の側面316の左側に設けた開口部318に変更する等、冷却効率の低下や圧力損失の増加等を許容できる範囲内において、供給口及び排出口の配置を変更することが可能である。
【0044】
以上において、隔壁312の上面312a及び下面312bが、特許請求の範囲に記載の第1の面の一例に相当し、側面314〜317が、第2の面の一例に相当する。また、第3の電力変換装置300のうち、筐体310と、上面312a及び下面312bと、側面314〜317と、開口部318と、閉塞部材320とが、特許請求の範囲に記載の電子部品冷却ユニットの一例に相当する。
【0045】
次に、図9を用いて、第3の電力変換装置300が備える筐体310を製造する際に用いられる主型50及び中子30の構成について説明する。なお、図9において、図9中左下方向を「前」、図9中右上方向を「後」、図9中左上方向を「左」、図9中右下方向を「右」、図9中上方向を「上」、図9中下方向を「下」とする。これらの方向は、前述の図7及び図8に示す電力変換装置300の各方向に対応している。
【0046】
主型50は、第1及び第2の電力変換装置100,200の筐体110,210の製造に用いたものと同じであるので説明を省略する。中子30は、流路311に対応するように略S字状に形成されている。中子30の前後左右の各側には、円柱状の保持部31が3本ずつ突出して設けられている。これらの保持部31が、主型50A,50Bに設けられた支持用凹部56にそれぞれ嵌合されることで中子30が保持され、溶融金属の圧入時の中子30の位置ずれを防止できる。また、中子30には、整流板313を形成するための溝32が形成されている。この溝32の形状は、形成しようとする整流板313の形状に応じて適宜変更される。
【0047】
<実施形態による効果>
以上説明した電力変換装置100によれば、側面114〜117に複数の開口部118を有するので、供給口及び排出口に対応する開口部118を選択して供給管102及び排出管103を接続し、それ以外の開口部118に閉塞部材120を設けることで、冷媒の供給口及び排出口の配置を容易に変更することができる。したがって、電力変換装置100の使用環境や設置状況等により個々に異なる供給口及び排出口の配置のニーズに、柔軟に対応することができる。電力変換装置200,300についても同様の効果を得る。
【0048】
また、本実施形態では特に、主型50を変更することなく、中子(上記の例では中子10,20,30)のみを変更することで、要求される供給口及び排出口の配置に最適な冷媒流路(上記の例では流路111,211,311)を有する電力変換装置(上記の例では電力変換装置100,200,300)を製造することができる。したがって、供給口及び排出口の配置のニーズに応じて主型を変更する必要がある場合に比べ、多額のコスト及び製作期間を要することなくニーズに対応することができる。
【0049】
また、本実施形態では特に、電力変換装置100の筐体110が一体成形されている。このような構成とすることで、例えば複数の筐体部材を接合してその接合面に流路を形成するような構成に比べ、次のような優位な効果を奏する。すなわち、上記複数の筐体部材を接合する構成では、接合面からの漏水を防止するために、接合面の面積を広くしたり、固定ボルトの数を増やして筐体部材を強固に接合する等が必要となり、装置の小型化及び軽量化を図ることが困難である。また、複数の固定ボルトやシール部材等が必要となるため、部品点数が増え、コストが高くなると共に工数も増大する。これに対し、本実施形態によれば、筐体110が1つの部材であるため、漏水を防止することが容易となり、装置の小型化及び軽量化を図ることができる。また、固定ボルトやシール部材等も不要となるため、部品点数が減り、コストを低くできると共に工数も削減できる。電力変換装置200,300についても同様の効果を得る。
【0050】
また、本実施形態では特に、電力変換装置100の開口部118を各側面114〜117より突出して設けることにより、開口部118への供給管102及び排出管103の接続作業性を向上できる。また、本実施形態では供給管102及び排出管103を開口部118に圧入して接続するので、開口部118を突出形状とすることでその圧入代を確保することが可能となり、強固に固定できる効果もある。電力変換装置200,300についても同様の効果を得る。
【0051】
また、本実施形態では特に、電力変換装置100の複数の開口部118の1つに、供給口及び排出口に対応する開口部118を識別するための突起119を設ける。この突起部119を設けることにより、供給管102及び排出管103を対応する開口部118に正しく接続することができる。その結果、誤接続による冷却効率の低下や圧力損失の増加等を防止できる。電力変換装置200,300についても同様の効果を得る。
【0052】
また、本実施形態では特に、電力変換装置100の側面114〜117の各面に対し、開口部118を3つずつ設ける。これにより、各面において中央部、その一方側及び他方側の3箇所に開口部118を配置することが可能となるので、供給口及び排出口の配置のニーズに細かく対応することができる。電力変換装置200,300についても同様の効果を得る。
【0053】
<変形例>
なお、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0054】
例えば電力変換装置100では、開口部118を側面114〜117の各面に対し3つずつ(計12箇所)設けるようにしたが、開口部118の数はこれに限定されない。開口部118の数をさらに増やすことで、供給口及び排出口の配置の自由度が増大し、ニーズにさらに細かく対応することが可能となる。一方、開口部118の数はさらに少なくてもよい。開口部118の全数が少なくとも3以上であれば、供給口及び排出口のいずれかを別の開口部118に変更することが可能となるので、供給口及び排出口の配置を容易に変更できるという主要な効果については得ることができる。なお、開口部118の数を側面114〜117の各面で異ならせてもよい。電力変換装置200,300についても同様である。
【0055】
また、例えば電力変換装置100では、開口部118を各側面114〜117より突出して設けるようにしたが、必ずしも突出させる必要はない。例えば筐体110の各側面114〜117に供給管102及び排出管103の圧入代を確保できるだけの厚みがある場合には、開口部118を突出形状としなくても強固に固定できる。電力変換装置200,300についても同様である。
【0056】
また、例えば電力変換装置100では、筐体110をダイカスト工法などの鋳造法により一体成形するようにしたが、必ずしも一体成形とする必要はない。例えば筐体110を、複数の筐体部材を接合してその接合面に流路111を形成する構成とした場合でも、側面114〜117に複数の開口部118を有することにより、供給口及び排出口の配置を容易に変更できるという主要な効果については得ることができる。電力変換装置200,300についても同様である。
【0057】
また以上では、電子部品冷却ユニットを電力変換装置に適用した場合を一例として説明したが、発熱する電子部品を有する装置であれば多種多様な装置に適用することができる。
【0058】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0059】
100 第1の電力変換装置
101 パワーモジュール(電子部品)
110 筐体
111 流路
112a 上面(第1の面)
112b 下面(第1の面)
114〜117 側面(第2の面)
118 開口部
119 突起(識別部)
120 閉塞部材
200 第2の電力変換装置
201 パワーモジュール(電子部品)
210 筐体
211 流路
212a 上面(第1の面)
212b 下面(第1の面)
214〜217 側面(第2の面)
218 開口部
219 突起(識別部)
220 閉塞部材
300 第3の電力変換装置
301 パワーモジュール(電子部品)
310 筐体
311 流路
312a 上面(第1の面)
312b 下面(第1の面)
314〜317 側面(第2の面)
318 開口部
319 突起(識別部)
320 閉塞部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させる流路が内部に形成された筐体と、
前記筐体に備えられ、電子部品が搭載される少なくとも1つの第1の面と、
前記筐体に備えられ、前記第1の面の周囲を取り囲む第2の面と、
前記第2の面に設けられ、前記流路に連通する複数の開口部と、
前記複数の開口部のうち、前記冷媒の供給口及び排出口に対応する開口部以外を塞ぐ閉塞部材と、を有する
ことを特徴とする電子部品冷却ユニット。
【請求項2】
前記筐体は、一体成形されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品冷却ユニット。
【請求項3】
前記開口部は、
前記第2の面より突出して設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の電子部品冷却ユニット。
【請求項4】
前記複数の開口部の少なくとも1つは、
前記供給口及び前記排出口に対応する前記開口部を識別するための識別部を有している
ことを特徴とする請求項3に記載の電子部品冷却ユニット。
【請求項5】
前記第2の面は、複数の面で構成され、
前記開口部は、前記第2の面の各面に対し少なくとも3つずつ設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子部品冷却ユニット。
【請求項6】
交流電力から直流電力又は直流電力から交流電力への変換を行う電力変換装置であって、
冷媒を循環させる流路が内部に形成された筐体と、
前記筐体に備えられた少なくとも1つの第1の面に搭載された電子部品と、
前記筐体に備えられ、前記第1の面の周囲を取り囲む第2の面と、
前記第2の面に設けられ、前記流路に連通する複数の開口部と、
前記複数の開口部のうち、前記冷媒の供給口及び排出口に対応する開口部以外を塞ぐ閉塞部材と、を有する
ことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51311(P2013−51311A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188524(P2011−188524)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】