説明

電子部品冷却装置

【課題】圧送ポンプ及び空冷ファンの駆動効率を向上させ、冷却装置の小型化を図ると共に駆動音を小さくする。
【解決手段】空冷ファン15付きのラジエータ25と、電子部品用ヒートシンクと強制循環用圧送ポンプ18付きの冷却液タンク14とは、冷却液循環用流路13上に配置する。冷却液タンク14とラジエータ25の間にはポンプ・ファン駆動ユニット27を設け、空冷ファン15及び圧送ポンプ18は単一の駆動モータ20に駆動可能に連結する。又、圧送ポンプ18は、冷却液タンク14内に回転自在に収容されたマグネットロータ部19と、駆動モータ20の出力軸21の端部に固設したロータ駆動部22とを有し、ロータ駆動部22でマグネットロータ部19を磁気的に回転駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品冷却装置に関するものであり、特に、コンピュータ等の電子部品の水冷方式に適用して好適な電子部品冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の部品、例えばパソコンのCPUに用いられる水冷方式を採用した冷却装置においては、冷却液タンクの冷却液をラジエータ側に圧送するため、冷却液タンクの内部又は外部に圧送ポンプが設けたものがある。図4は、此種の電子部品冷却装置1の一例を示す全体構成図である。
【0003】
図4において、2は空冷ファン3を備えたラジエータであり、4は圧送ポンプ5を備えた冷却液タンクである。該冷却液タンク4とラジエータ2とは流体流路6により接続されている。又、7は熱源たるCPU(電子部品)を冷却するための電子部品用ヒートシンクである。ヒートシンク7とラジエータ2は流体流路8により接続され、且つ、ヒートシンク7と冷却液タンク4は流体流路9により接続されている。
【0004】
前記の構成において、冷却液タンク4内の冷却液Cは、圧送ポンプ5によりラジエータ2を経てヒートシンク7に供給された後に、冷却液タンク4に戻されて、再び前記同様に冷却液Cが循環供給される。この電子部品冷却装置1では、空冷ファン3と圧送ポンプ5は、それぞれ別々の駆動モータにより駆動されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−304076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の上記冷却装置1は、冷却液用圧送ポンプ5を駆動する駆動モータと、空冷ファン3を駆動する駆動モータとが互いに独立別個に設けられているので、電子部品冷却装置全体として、圧送ポンプ5及び空冷ファン3に対する駆動効率が悪いという問題がある。また、駆動モータはポンプ用とファン用の2台を必要とするため、2台の駆動モータを設置するための場所(スペース)が広くなって、小型化が図れないと共にコスト高を招き、加えて、各々の駆動モータから発生する騒音も大きくなる。
【0006】
そこで、駆動モータによる圧送ポンプ及び空冷ファンの駆動効率を向上させると共に騒音を抑制し、且つ、電子部品冷却装置の小型化を図るために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は該課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、圧送ポンプと、空冷ファン付きラジエータと、電子部品用ヒートシンクとを、冷却液循環経路上に配置して成る電子部品冷却装置において、前記圧送ポンプの駆動源と、前記ラジエータの空冷ファンの駆動源とを単一の駆動モータにより形成した電子部品冷却装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、前記空冷ファン及び圧送ポンプの駆動源が単一の駆動モータで構成されているので、1台の駆動モータにより前記空冷ファンと圧送ポンプが駆動される。即ち、空冷ファンによるラジエータに対する空冷作用と、圧送ポンプによる冷却液に対する強制循環作用とが1台の駆動モータの運転により行われる。
【0009】
請求項2記載の発明は、上記空冷ファンは、上記駆動モータの出力軸の一端部に直結され、且つ、該出力軸の他端部に上記圧送ポンプが直結されている請求項1記載の電子部品冷却装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、前記駆動モータの出力軸に空冷ファン及び圧送ポンプが直結されているので、出力軸の回転により空冷ファンと圧送ポンプの双方が同時に直接駆動され、空冷ファン及び圧送ポンプと出力軸との間にギアを設ける必要がない。
【0011】
請求項3記載の発明は、上記圧送ポンプは、冷却液タンク内に回転自在に収容されたマグネットロータ部と、上記駆動モータの出力軸の端部に固設したロータ駆動部とを有し、該ロータ駆動部の回転によって前記マグネットロータ部が磁気的に回転駆動される請求項1又は2記載の電子部品冷却装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、前記ロータ駆動部が前記出力軸と一体に回転することにより、冷却液タンク内のマグネットロータ部が磁気的に回転駆動され、冷却液タンク内の冷却液がラジエータ側に圧送される。
【0013】
請求項4記載の発明は、上記圧送ポンプは、冷却液タンク内に回転自在に収容された羽根部材を有し、該羽根部材の軸部が上記駆動モータの出力軸の端部に直結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品冷却装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、前記圧送ポンプの羽根部材を駆動モータの出力軸に直結したので、羽根部材が出力軸と一体に回転することにより、冷却液タンク内の冷却液がラジエータ側に圧送される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、前記空冷ファン及び圧送ポンプを駆動するために、従来2台の駆動モータが必要であったのが、1台の駆動モータで済むので、従来に較べて該モータ動力の駆動伝達効率が大幅に向上すると共に、駆動モータの設置スペースを半減でき、空冷ファンと圧送ポンプの駆動部の小型化を実現することができる。さらに、本発明は、駆動モータ1台分のコストダウンが図れるばかりでなく、駆動モータから発生する騒音を半分に抑制することができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、上記出力軸により空冷ファン及び圧送ポンプが直接駆動され、中間ギアを省略できるので、請求項1記載の効果に加えて、空冷ファン及び圧送ポンプの円滑な同期運転が確保されるだけでなく、構造がシンプルであり、部品点数を低減化させることができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、冷却液タンク内に圧送ポンプのマグネットロータ部が収容され、且つ、該マグネットロータ部は回転軸受け部を有しないので、請求項1又は2記載の効果に加えて、一層の小型化が図られるだけでなく、軸受け用シール部材が不要になり、且つ、液漏れの心配がないという優れた効果を奏する。又、マグネットロータ部は回転時に軸摺動抵抗を受けないので、より円滑な回転を確保できるのみならず、回転駆動時に生じる騒音を一層効果的に抑制することができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、冷却液タンク内に圧送ポンプの羽根部材が収容され、且つ、該羽根部材が駆動モータの出力軸により直接駆動されるので、請求項1又は2記載の効果に加えて、一層の小型化が図られるだけでなく、構造が簡単で製作が容易であるうえに、駆動モータから圧送ポンプへの回転駆動力の伝達効率を更に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、圧送ポンプと、空冷ファン付きラジエータと、電子部品用ヒートシンクとを、冷却液循環経路上に配置して成る電子部品冷却装置において、前記圧送ポンプの駆動源と、前記ラジエータの空冷ファンの駆動源とを単一の駆動モータにより形成したことにより、モータ駆動効率の向上、駆動装置部の小型化、並びにモータ駆動に伴う騒音の抑制という目的を達成した。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を図1乃至図3に従って説明する。本実施例は、空冷ファン15を備えたラジエータ25と、電子部品用ヒートシンク12と、冷却液強制循環用圧送ポンプ18を備えた冷却液タンク14とを循環経路13,24により冷却液再循環可能に接続した強制水冷方式のCPUクーラー装置において、空冷ファン15の駆動モータ20の動力を使って、圧送ポンプ18をも同時に回転駆動させるようにしたものである。なお、本実施例では、圧送ポンプ18と冷却液タンク14は、装置の更なる小型化を実現するために、一体構造に形成しているが、別体構造に形成することも勿論可能である。
【0021】
図1は、一実施の形態に係る電子部品冷却装置11の全体構成図である。電子部品冷却装置11は、電子部品用金属製ヒートシンク12として機能するCPU用水冷ヘッドを具備している。該ヒートシンク12は、発熱源となるCPUに接触して、CPUの発生熱を冷却液(冷却水又はグリコール系の不凍液)Cに移して放出させる。又、ヒートシンク12の流入口には、流体流路13を介して冷却液(リザーブ)タンク14が接続され、冷却液タンク14には冷却液Cが蓄えられている。
【0022】
図2に示すように、冷却液タンク14の一側壁、他側壁にはそれぞれ流入口16、流出口17が形成されている。更に、冷却液タンク14には、冷却液Cをヒートシンク12側に強制循環させるための回転式圧送ポンプ18が具備されている。この圧送ポンプ18は、円板型のマグネットロータ部19と円板型のロータ駆動部22とにより構成され、該ロータ駆動部22は、駆動モータ20の出力軸21の一端部に固設されている。又、前記マグネットロータ部19は、冷却液タンク14内に回転自在に収容されている。
【0023】
また、マグネットロータ部19の表面には、複数枚の羽根23が一体に形成され、該羽根23は流入口16側に突出している。更に、マグネットロータ部19及びロータ駆動部22は、冷却液タンク14の壁面を介して、互いに同芯上にて対向して近接配置され、これら各対向面の周縁部には、複数のN極とS極が円周方向に交互に着磁されている。
【0024】
従って、ロータ駆動部22の回転によって、マグネットロータ部19が磁気的に回転駆動され、流入口16から冷却液タンク14内に冷却液Cが流入すると同時に、流出口17から冷却液Cが流出する。流出した冷却液Cは、流体流路13を通ってヒートシンク12側に供給される。
【0025】
前記ヒートシンク12の流出口は、流体流路24を介して、ラジエータ25の流入口26に接続されている。これにより、CPUを冷却した後の冷却液Cは、流体流路24を通ってラジエータ25に供給される。このラジエータ25は、冷却液Cから熱を奪って空気中に排出する。
【0026】
ラジエータ25と冷却液タンク14との間には、ポンプ・ファン駆動ユニット27が配設されている。該ポンプ・ファン駆動ユニット27は、1台の駆動モータ20と、該駆動モータ20の一側(図2における左側)に近接配置された空冷ファン15と、前記駆動モータ20の他側(図2における右側)に近接配置されたロータ駆動部22とから成る。
【0027】
駆動モータ20の出力軸21の一端部には、前述の如くロータ駆動部22が固設直結されていると共に、出力軸21の他端部には、空冷ファン15が固設直結されている。
【0028】
上記構成からなる電子部品冷却装置11は、駆動モータ20の出力軸21を回転させると、空冷ファン15及びロータ駆動部22の双方が同期して回転駆動される。そして、空冷ファン15の回転によりラジエータ25が空冷され、冷却液Cから熱を奪って空気中に排出する。
【0029】
又、ロータ駆動部22の回転により、圧送ポンプ18のマグネットロータ部19も磁気的に一体回転する。そして、マグネットロータ部19と共に回転する羽根23の水流作用により、ラジエータ25側の冷却液Cが流入口16から冷却液タンク14内に流入し、同時に、該冷却液タンク14の流出口17から冷却液Cが流出する。この流出した冷却液Cは、流体流路13を経て、ヒートシンク12側に強制的に供給される。
【0030】
而して、該ヒートシンク12は、CPUの発生熱を冷却液Cに移動させて、CPUの冷却を行う。該冷却後の冷却液Cは、流体流路24及びラジエータ25を経て、冷却液タンク14に戻されたあと、前記同様に、圧送ポンプ18によりヒートシンク12側に強制循環される。
【0031】
ここで、圧送ポンプ18のマグネットロータ部19は、ベアリングレスで磁気的に回転するので、ロータ回転時に軸受け摺動抵抗が生ぜず、液漏れの恐れがなくシール部材を必要としない。
【0032】
又、空冷ファン15及び圧送ポンプ18は、単一の駆動モータ20により直動されるので、1台の駆動モータ20で空冷ファン15及び圧送ポンプ18が駆動され、ラジエータ25に対する空冷と、冷却液Cに対する強制循環とが同時に実施される。
【0033】
従って、モータ動力の駆動伝達効率が向上すると共に、ポンプ・ファン駆動ユニット27の設置空間が縮小して、その分だけ装置の小型化が可能になる。さらに、従来2台必要であったモータの数が1台で済むので、駆動モータ20から生ずる騒音が小さくなる。又、空冷ファン15及び圧送ポンプ18と出力軸21との間にギアを設ける必要がないので、構造がシンプルであり部品点数を低減できる。
【0034】
本実施例に係るポンプは、マグネット回転駆動式のものに限らず、他のタイプのポンプも採用できる。例えば、図3に示すように、冷却液タンク14内に回転自在に収容された羽根部材29を有し、この羽根部材29の軸部が、駆動モータ20の出力軸21の一端部に直結されてなる圧送ポンプ28も採用できる。
【0035】
このように構成しても、圧送ポンプ28と空冷ファン15の駆動効率が向上し、電子部品冷却装置の小型化が可能になる。更に、構造がシンプルであるのみならず、モータ駆動の静音性が増大する。なお、図3中の符号30は、出力軸21のタンク貫通箇所に装着したシール部材30である。
【0036】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、電子部品冷却装置の全体構成図。
【図2】一実施の形態に係るファン・ポンプ駆動ユニットの構成例を説明する部分断面図。
【図3】一実施の形態に係るファン・ポンプ駆動ユニットの他の構成例を説明する部分断面図。
【図4】従来例を示し、電子部品冷却装置の全体構成図。
【符号の説明】
【0038】
1 冷却装置
2 ラジエータ
3 空冷ファン
4 冷却液タンク
5 圧送ポンプ
6 流体流路
7 ヒートシンク
8 流体流路
11 電子部品冷却装置
12 電子部品冷却用ヒートシンク
13 流体流路(冷却液循環経路)
14 冷却液タンク
15 空冷ファン
16 流入口
17 流出口
18 圧送ポンプ
19 マグネットロータ部
20 駆動モータ
21 出力軸
22 ロータ駆動部
23 羽根
24 流体流路(冷却液循環経路)
25 ラジエータ
26 流入口
27 ポンプ・ファン駆動ユニット
28 圧送ポンプ
29 羽根部材
30 シール部材
C 冷却液




【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧送ポンプと、空冷ファン付きラジエータと、電子部品用ヒートシンクとを、冷却液循環経路上に配置して成る電子部品冷却装置において、前記圧送ポンプの駆動源と、前記ラジエータの空冷ファンの駆動源とを単一の駆動モータにより形成したことを特徴とする電子部品冷却装置。
【請求項2】
上記空冷ファンは、上記駆動モータの出力軸の一端部に直結され、且つ、該出力軸の他端部に上記圧送ポンプが直結されていることを特徴とする請求項1記載の電子部品冷却装置。
【請求項3】
上記圧送ポンプは、冷却液タンク内に回転自在に収容されたマグネットロータ部と、上記駆動モータの出力軸の端部に固設したロータ駆動部とを有し、該ロータ駆動部の回転によって前記マグネットロータ部が磁気的に回転駆動されることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品冷却装置。
【請求項4】
上記圧送ポンプは、冷却液タンク内に回転自在に収容された羽根部材を有し、該羽根部材の軸部が上記駆動モータの出力軸の端部に直結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品冷却装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−196714(P2006−196714A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6938(P2005−6938)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】