説明

電子部品収納用パッケージ

【課題】圧電振動素子に対する気密封止の信頼性を高めることが可能な電子部品収納用パッケージおよび電子装置を提供する。
【解決手段】上下面に搭載部を有する平板状の第1絶縁層102と、第1絶縁層102の下面に積層された枠状の第2絶縁層103と、第1絶縁層102の上面の搭載部104に形成された第1の接続導体106と、下面の搭載部105に形成された第2の接続導体107と、第1絶縁層102を貫通している貫通導体108とを備えており、貫通導体108は、上端部が第1の接続導体106と接続され、下端部が、第1絶縁層102の下面に形成された配線導体109を介して第2の接続導体107と電気的に接続されており、第2絶縁層103の内周に、内側に突出した突出部114が形成され、突出部114と第1絶縁層102との層間に貫通導体108の下端部が位置している電子部品収納用パッケージである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子や半導体素子等の電子部品が絶縁基板の上面側および下面側にそれぞれ搭載されるとともに、上面側に搭載される電子部品が気密封止される電子部品収納用パッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温度変化に対する発振周波数の変動を抑制し、安定した出力を得ることが可能な温度補償型の圧電装置が知られている。このような圧電装置を構成する電子部品収納用パッケージには、水晶等の圧電振動素子と、その圧電振動素子の、たとえば温度に対する振動周波数の変動を補償するための半導体素子とが搭載される。搭載される電子部品同士は、電子部品収納用パッケージに形成された配線導体や貫通導体を介して互いに電気的に接続される。
【0003】
従来の電子部品収納用パッケージは、主に絶縁基板と、絶縁基板の上面に形成された圧電振動素子を収容するための凹部と、絶縁基板の下面に形成された半導体素子を収容するための凹部を有している。絶縁基板の上下面それぞれの凹部の底部が電子部品の搭載部であり、それぞれの搭載部には、電子部品と電気的に接続される接続導体が配置されている。また、上下の接続導体同士は、接続導体が配置された部分において、つまり上下の搭載部間において絶縁基板を厚み方向に貫通する貫通導体を介して互いに電気的に接続されている。
【0004】
例えば、絶縁基板の上面の凹部内に圧電振動素子が収納されるとともに、圧電振動素子の電極が上面の接続導体に電気的に接続され、しかる後、凹部を囲む絶縁基板の上面に蓋体が接合されることにより圧電振動素子の封止が行なわれる。
【0005】
一方、絶縁基体の下面の搭載部には、圧電振動素子の温度補償を行なう半導体素子が搭載される。この半導体素子の主面には複数の電極が形成されており、これらの電極が下面の接続導体にそれぞれ電気的に接続される。半導体素子が封止用の樹脂等で覆われることにより、温度補償型の圧電装置が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-28024号公報
【特許文献2】特開2000−77942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術の電子部品収納用パッケージおよび圧電装置においては、圧電振動素子の気密封止の信頼性を高く確保しながら、薄型化を図ることが難しいという問題点があった。
【0008】
すなわち、上面の接続導体と下面の接続導体とを接続している貫通導体の上下両端部が、それぞれ絶縁基板の上面の搭載部および下面の搭載部に位置している。また、絶縁基板と貫通導体との焼成収縮率の違いにより、貫通導体の周辺にクラック(貫通導体と絶縁基板との界面における剥離等を含む)が発生する可能性がある。そのため、絶縁基板と貫通導体との境界に沿って、下面の搭載部側から上面の搭載部側、つまり圧電振動素子が気密に封止される部分に外気が入り込んでしまい、上面の搭載部に搭載される圧電振動素子に
対する気密信頼性が低下する可能性があった。
【0009】
これに対しては、例えば引用文献2に記載されているように、貫通導体を含む導電経路を絶縁基板の厚み方向に折れ曲がった形状とすることが考えられる。しかし、この場合には、上下の搭載部に間に配置される絶縁層が2層構造になることから、特に近年の薄型化に要求に対応した絶縁基板の薄型化が難しくなる可能性がある。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、圧電振動素子が搭載される上面の搭載部における気密封止の信頼性を高くすることが容易であり、例えば安定した発振周波数特性を得ることが可能であるとともに、薄型化が容易な電子部品収納用パッケージ、および電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの態様の電子部品収納用パッケージは、前記貫通導体は、上端部が前記第1の接続導体と電気的に接続されているとともに、下端部が、前記第1絶縁層の下面に形成された配線導体を介して前記第2の接続導体と電気的に接続されており、前記第2絶縁層の内周に、内側に突出した突出部が形成され、該突出部と前記第1絶縁層との層間に前記貫通導体の前記下端部が位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様の電子部品収納用パッケージによれば、突出部と第1絶縁層との層間に貫通導体の前記下端部が位置していることから、下面の搭載部に位置する貫通導体の端部およびその周囲が突出部で覆われている。つまり、上面の搭載部に外気が入り込むときの経路(いわゆるリーク経路)となる可能性が高い、貫通導体と第1絶縁層との境界が突出部によって塞がれている。また、貫通導体は側面透視で直線状であり、上下の搭載部の間に配置される絶縁層が1層に抑えられる。そのため、圧電装置における薄型化および気密封止の信頼性の確保が容易な、電子部品収納用パッケージを提供することができる。
【0013】
本発明の一つの態様の電子装置によれば、上記構成の電子部品収納用パッケージの第1絶縁層の上面の搭載部に圧電振動素子が搭載されて気密に封止されていることから、圧電振動素子に対する気密封止の信頼性が高い電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の電子部品収納用パッケージおよび電子装置を示す下面図である。
【図2】図1に示す電子部品収納用パッケージおよび電子装置のX−X’線における断面図である。
【図3】図1に示す電子部品収納用パッケージおよび電子装置の上面図である。
【図4】図1〜図3に示す電子部品収納用パッケージおよび電子装置の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態の電子部品収納用パッケージおよび電子装置を添付の図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態の電子部品収納用パッケージおよび電子装置を示す平面図(下面図)である。また、図2は図1のX−X’線における断面図である。また、図3は図1に示す電子部品収納用パッケージおよび電子装置の上面図である。
【0016】
図1〜図3において、101は絶縁基板、102は第1絶縁層、103は第2絶縁層、104は上面の搭載部、105は下面の搭載部、106は第1の接続導体、107は第2の接続導体、108は貫通導体、109は配線導体、110は圧電振動素子、111は半導体素子、112は金属枠体、113は蓋
体、114は突出部、115は電子部品、116は半田電極である。そして、主として絶縁基板101(第1絶縁層102と第2絶縁層103との積層体)、上面の搭載部104、下面の搭載部105、貫通導体108、配線導体109、および突出部114で電子部品収納用パッケージが構成されてい
る。この電子部品収納用パッケージにおいて、上面の搭載部104に圧電振動素子110が、また下面の搭載部105に半導体素子111が搭載され、上面の搭載部104が蓋体113で塞がれて、圧電振動素子110が気密に封止されることにより電子装置としての圧電装置となる。なお
、図3においては蓋体113を省略している。
【0017】
絶縁基板101は、平板状の第1絶縁層102と、第1絶縁層102の下面に積層された第2絶
縁層103とによって形成されている。絶縁基板101は、例えば酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス)や窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、ガラスセラミックス等のセラミックスや樹脂からなり、例えば一辺の長さが2〜7mm程度で厚みが0.5〜3mm程度の直方体状である。
【0018】
また、絶縁基板101を形成している第1絶縁層102の上面に、圧電振動素子110が搭載さ
れる搭載部104が設けられている。さらに第1絶縁層102の下面に、半導体素子111が搭載
される搭載部105が設けられている。絶縁基板101の上面には、第1絶縁層102(上面)と
金属枠体112とにより凹部が形成され、下面には、第1絶縁層102(下面)と第2絶縁層103(下面)とにより凹部が形成されている。
【0019】
このような絶縁基板101は、例えば第1および第2絶縁層102,103がともに酸化アルミ
ニウム質焼結体からなる場合であれば、以下のようにして作製される。まず、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バンイダ、溶剤、可塑剤等を添加混合して泥漿状として、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等によりシート状に成形し、複数枚のセラミックグリーンシートを得る。しかる後、セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施して、四角板状のもの(第1絶縁層102となる部分)と四角枠状のもの(第2絶縁層103となる部分)とを形成し、四角板状のものが上層に位置するように、四角枠状のものが下層に位置するように上下に積層して、下面に凹部を有する積層体を形成する。その積層体を高温(約1600℃)で焼成することにより作製される。この段階では、第1絶縁層102の上面に金属枠体112が未だ接合されていない。
【0020】
金属枠体112が第1絶縁層102の上面に搭載部104を取り囲むように接合されている。金
属枠体112の上面に蓋体113が接合されることにより、搭載部104に搭載される圧電振動素
子110が気密封止される。
【0021】
なお、金属枠体112は、例えば、搭載部104を取り囲むようにして枠状のメタライズ層(図示せず)を形成しておき、この枠状のメタライズ層に鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金等の金属材料からなる金属枠体112を、銀−銅ろう等のろう材(図示せず
)を介してろう付けすることにより絶縁基板101に取着される。金属枠体112は、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金の金属板に打抜き加工やエッチング加工等の加工を施すことにより形成することができる。金属枠体112の表面にはニッケルや金等のめっきを被着さ
せておくとよい。これは、金属枠体112にめっきを被着させておくことにより、酸化腐食
を抑制することができ、また、蓋体113の接合をより容易かつ強固なものとすることがで
きるからである。
【0022】
第1絶縁層102の下面には枠状の第2絶縁層103が積層されている。第2絶縁層103は、
第1絶縁層102の下面の搭載部105を取り囲んでいる。これにより、絶縁基板101の下面に
、例えば半導体素子111を収容する凹部(符号なし)が形成されている。
【0023】
第1絶縁層102の上面の搭載部104には、圧電振動素子110が接続される第1の接続導体106が形成されている。また、第1絶縁層102の下面の搭載部105には、半導体素子111が接
続される第2の接続導体107が形成されている。第1の接続導体106および第2の接続導体107は、上面の搭載部104に搭載される圧電振動素子110、および下面の搭載部105に搭載される半導体素子111の電極を電気的に接続するためのパッドとして機能する。
【0024】
なお、この実施の形態においては、第1絶縁層102の下面に、第2の接続導体以外の他
の接続用導体(符号なし)も配置されている。他の接続用導体にも、半導体素子111が電
気的に接続される。
【0025】
第1絶縁層102を厚み方向に貫通する貫通導体108は、第1の接続導体106と第2の接続
導体107とを互いに電気的に接続するためのものである。貫通導体108の上端部が第1の接続導体106と電気的に接続されている。貫通導体108の下端部が、第1絶縁層102の下面に
形成された配線導体109を介して第2の接続導体107と電気的に接続されている。なお、貫通導体108および配線導体109は、第1および第2の接続導体106,107とともに、圧電振動素子110と半導体素子111を互いに電気的に接続するための導電路として機能する。
【0026】
そして、貫通導体108は、例えば平面視で円形状であり、その直径は80〜120μm程度である。また、配線導体109は、例えば直線状や折れ線状等のいわゆる回路パターン状であ
り、その幅(線幅)は50〜100μm程度である。
【0027】
第1および第2の接続導体106,107および配線導体109といった導体層は、例えばタン
グステンやモリブデン,マンガン,チタン,銅,銀,金,パラジウム,白金等の金属材料によって形成されている。これらの金属材料は、例えばメタライズ層として絶縁基板101
の所定部位に被着されて上記導体層を形成している。
【0028】
第1および第2の接続導体106,107および配線導体109は、例えばタングステンのメタ
ライズ層からなる場合であれば、タングステンの粉末を有機溶剤およびバインダとともに混練して作製した金属ペーストを、スクリーン印刷法等の方法で絶縁基板101となるセラ
ミックグリーンシートの表面に印刷しておくことによって形成することができる。
【0029】
また、貫通導体108は、上記と同様の金属材料が、第1絶縁層102を厚み方向に貫通する貫通孔(符号なし)内に充填されて形成されている。貫通孔は、例えば第1絶縁層102と
なるセラミックグリーンシートに機械的な孔あけ加工を施しておくことによって形成されている。また、貫通孔内への上記金属材料の充填は、例えば前述したのと同様のタングステン等の金属ペーストを、真空吸引を併用したスクリーン印刷法によって行なうことができる。
【0030】
この実施の形態の例において、絶縁基板101(第2絶縁層103)の下面の角部等の外周部には、外部接続用の半田電極116が形成されている。半田電極116は、例えば絶縁基板101
の内部に形成された接続導体(図示せず)を介して第1の接続導体106および第2の接続
導体107の少なくとも一方と電気的に接続されている。半田電極116が外部の電気回路に、例えば半田等の接続材を介して電気的に接続されて、圧電振動素子110や半導体素子111が外部の電気回路と電気的に接続される。
【0031】
圧電振動素子110は、例えば、水晶振動子等であり、通常、その外形が四角形状の平板
状であり、その端部には電極(図示せず)が形成されている。圧電振動素子110の電極を
支持台となる第1の接続導体106の上に位置決めして載せ、この部分にディスペンサー(
図示せず)から導電性接着剤を排出,供給することにより圧電振動素子110の端部に形成
された電極(図示せず)と第1の接続導体106とが導電性接着剤(符号なし)を介して電
気的,機械的に接続される。
【0032】
そして、この圧電振動素子110について、振動が妨げられず、正確に振動するために、
その主面(上面)が上面の搭載部104の底面に対して約70〜120μmの隙間を空けて対向するように上面の搭載部104内に搭載されているのがよい。
【0033】
また、半導体素子111は通常、その外形が四角形状の平板状であり、その上面または下
面には電極が形成されている。この場合、上面に電極が形成される場合は、例えば金ワイヤー等のボンディングワイヤ(図示せず)により、また、下面に電極が形成される場合は、例えば半田ボール等(図示せず)により下面の搭載部105の底面に露出した第2の接続
導体107に接続される。
【0034】
また、下面の搭載部105に搭載される半導体素子111は、例えばポッティング樹脂(図示せず)が絶縁基板101の下面の凹部内に充填されて覆われる。これは、半導体素子111を外気等の環境に対して保護するためである。ポッティング樹脂による被覆は、生産性に優れ、圧電装置としての外部電気回路への接続も容易にできるメリットがある。ただし、このポッティング樹脂で覆う構造は、高い気密封止性の信頼性が求められる場合には、特に適したものではない。
【0035】
第2絶縁層103の内周には、内側に突出した突出部114が形成されており、貫通導体108
は、その下端部が突出部114と第1絶縁層102との層間に位置するように形成されている。突出部114は、例えば図1に示すように下面の搭載部105の対向する隅部に2箇所一対として形成されている。そして、この一対の突出部114間の領域は、例えばチップコンデンサ
等の電子部品115が配置される領域となる。
【0036】
このように、突出部114と第1絶縁層102との層間に貫通導体108の下端部が位置してい
ることから、下面の搭載部105に位置する貫通導体108の端部およびその周囲が突出部114
で覆われることになる。
【0037】
つまり、上面の搭載部104への外気のリーク経路となる可能性が高い、貫通導体108と第1絶縁層102との境界が突出部114によって塞がれている。また、貫通導体108は単層の第
1絶縁層102のみに形成されており側面透視で直線状である。つまり、貫通導体を含む導
電経路(図示せず)が折れ曲がったものである必要がない。そのため、圧電装置における薄型化および気密封止の信頼性の確保が容易な、電子部品収納用パッケージを提供することができる。
【0038】
圧電装置の薄型化のために貫通導体108が単層の絶縁層(第1絶縁層102のみ)で形成された場合、この単層の絶縁層を厚み方向に貫通する貫通導体108の両端部は、それぞれ上
面の搭載部104および下面の搭載部105に位置する。このとき、絶縁基板101を形成してい
る第1および第2絶縁層102,103と貫通導体108との焼成収縮率の違いにより貫通孔の内壁と貫通導体108の外周面との境界の一部に界面剥離等の機械的な破壊が生じる可能性があ
る。しかし、貫通導体108の下端部が突出部114の上面と第1絶縁層102の下面との層間に
位置して、外部(絶縁基板101の下面の凹部内)に対して塞がれていることから、第1絶
縁層102の下面側から上面側への外気の入り口となる貫通導体108の下端部の外周から突出部114の縁までの外気のリーク経路が長い。そのため、圧電振動素子110が搭載される第1絶縁層102の上面の搭載部104(絶縁基板101の上面側の凹部)における気密封止の信頼性
を高くすることができる。
【0039】
平面透視における貫通導体108と貫通孔との境界から突出部114の縁までの距離は、100
μm程度以上とすることが好ましい。また、平面視における突出部114の寸法が大きくな
り過ぎると、下面の搭載部105に搭載される半導体素子111の寸法等が制約される。そのため、絶縁基板101の大きさを考慮して平面透視における貫通導体108と貫通孔との境界から突出部114の縁までの距離は、100μm〜300μm程度とすることがより好ましい。
【0040】
また、上記電子部品収納用パッケージにおいて、平面透視において、貫通導体108が楕
円形状であり、楕円形状の貫通導体108の長軸方向の端部から突出部114の縁までの距離が、短軸方向の端部から突出部114の縁までの距離よりも大きい場合には、上面の搭載部104における気密封止の信頼性がより高い電子部品収納用パッケージを提供することができる。
【0041】
これは、上記貫通導体108の下端部の外周から突出部114の縁までのリーク経路をより確実に長くすることができることによる。つまり、貫通導体108が平面視楕円形状である場
合には、その長軸方向の端部において、短軸方向の端部を含む他の部分よりも大きな応力が貫通導体108と第1絶縁層102との間に生じる傾向がある。この応力は、第1絶縁層102
よりも貫通導体108の方が、焼成収縮率が大きいことに起因して生じる。この場合、楕円
形状の貫通導体108の長軸方向の端部において短軸方向の端部よりも応力が大きい。その
ため、第1絶縁層102の貫通孔の内壁と貫通導体108の外周面との間で界面剥離が生じやすいのは、貫通導体108の長軸方向の端部である。
【0042】
このように、第1絶縁層102と貫通導体108との間に生じる界面剥離の位置をあえて特定の部位に限定させるようにするとともに、その界面剥離が発生しやすい部位を突出部114
の端部からより遠くしておくことによって、上面の搭載部104における気密封止の信頼性
をさらに高めることができる。そして、リーク経路を長くして効果的に上面の搭載部104
における気密封止の信頼性をさらに高くすることができる。
【0043】
楕円形状の貫通導体108を形成するためには、前述した貫通導体108となる金属ペーストを充填するための貫通孔を楕円形状とすればよい。この貫通孔に対応した位置に吸引孔を有する載置台の上にセラミックグリーンシートを載置するとともに、このセラミックグリーンシートの上面に貫通孔を露出させる開口部を有する印刷マスクを載置する。この印刷マスクの上から貫通孔内にスキージの摺動により金属ペーストを供給するとともに、その金属ペーストを吸引孔から吸引することによって楕円形状の貫通孔の内部に金属ペーストを充填する。
【0044】
楕円形状の貫通導体108の大きさは、例えば平面視における絶縁基板101の1辺の長さが3.2mmおよび2.5mmの長方形状の電子部品収納用パッケージであれば、長軸の長さを120〜140μm程度、短軸の長さを60〜80μmとすればよい。
【0045】
また、この場合、この平面視で楕円形状の貫通導体108に接続される配線導体109の幅を60〜70μmとして形成すればよい。そして、例えば、図1に示すように貫通導体108の長
軸方向の端部から突出部114の縁までの距離が、短軸方向の端部から突出部114の縁までの距離よりも大きくなるように形成すればよい。
【0046】
配線導体109と貫通導体108との接続を良好に行なうために、例えば配線導体109のうち
貫通導体108に接続される端部分に、貫通導体108の外周よりも30〜50μm程度径の大きな楕円形状または楕円弧状の導通用補助パターン(図示せず)を形成してもよい。この場合、配線導体109について、導通用補助パターンの外周と、それ以外の、突出部114の縁に近い途中部分との間の距離が大きい方が望ましい。これは、導通用補助パターンの一部と、導通用補助パターン以外の配線導体109(例えば突出部114の縁に近い部分)とが誤って互いに直接に接続された場合には、リーク経路のショートカット部が形成されてしまうためである。
【0047】
また、貫通導体108の形成位置は、図1で示すように貫通導体108の下端部の一部が第2絶縁層103にかかる位置であってもよい。これは、突出部114と第1絶縁層102との層間だ
けでなく、第1絶縁層102と第2絶縁層103との層間にも貫通導体108の下端部の一部や配
線導体109を形成できるためである。これにより例えば、貫通導体108の下端部の外周から突出部114の縁までのリーク経路を長くすることもできる。
【0048】
また、上記電子部品収納用パッケージを用いて作製した圧電装置等において、例えば図4に示すように、圧電振動素子110が接続される導電性接着剤で貫通導体108の上端部が覆われるとともに、平面視で貫通導体108の上端部が圧電振動素子110の電極の下方に位置するようにするようにしてもよい。つまり、平面透視において電極と貫通導体108とが重な
り合うような圧電装置でもよい。
【0049】
この場合には、圧電振動素子110の電極と貫通導体108の上端部との電気的な接続の長さをより小さくする上で有利である。そのため、導電性接着剤を介した上記電極と貫通導体108との電気接続性を良好に保ち、発振不良をより効果的に抑制する上で有効である。な
お、図4は、図1〜図3に示す電子部品収納用パッケージおよび電子装置(圧電装置)の変形例を示す上面図である。図4において図1〜図3と同様の部位には同様の符号を付している。図4においても蓋体113を省略している。
【0050】
また、上記電子部品収納用パッケージにおいて、配線導体109は、貫通導体108の短軸方向の端部のうち突出部114の縁からの距離が大きい方の端部において貫通導体108と接続されていてもよい。この場合には、配線導体109と貫通導体108との電気的な接続信頼性がより高く、かつ上面の搭載部104における気密封止の信頼性がより高い電子部品収納用パッ
ケージを提供することができる。これは、突出部114および第1絶縁層102と配線導体109
との境界に沿って貫通導体108の方向(配線導体109が貫通導体108と接続される部位にお
ける貫通導体108と第1絶縁層102との境界部分)に入り込もうとする外気の経路をより長くすることができるためである。
【0051】
つまり、楕円形状である貫通導体108の短軸方向の端部においては、貫通導体108と第1絶縁層102との間に生じる応力が小さくなる傾向があり、貫通導体108と第1絶縁層102と
の間に界面剥離が発生する可能性が低い。また、上面の搭載部104に対するリーク経路と
なる、貫通導体108と配線導体109との接続部分から突出部114の縁までの距離をより長く
することができる。
【0052】
言い換えれば、第1絶縁層102と突出部114との層間において、第1絶縁層102と貫通導
体108との境界に対する外気の入り込みの経路(リーク経路)となる可能性がある配線導
体109の距離をより長くすることが容易である。そのため、より効果的に上面の搭載部104に対して下面の搭載部105から外気が入り込む(リークする)可能性を低減することがで
きる。
【0053】
さらに、貫通導体108の短軸方向の端部においては貫通導体108と第1絶縁層102との境
界に界面剥離が発生する可能性が低いため、第1絶縁層102の下面に形成された配線導体109と貫通導体108との電気的な接続信頼性も高い。
【0054】
ここで、貫通導体108を構成する金属と第1絶縁層102および第2絶縁層103を構成する
セラミックスとの、互いに異種材料であるものからなる積層体を、両者の間における界面剥離を抑制して、またそれぞれの材料の物性を損なわずに同時焼成して一体化させるための条件として、異種材料同士の焼成における収縮挙動および収縮率を一致または近似させることが挙げられる。
【0055】
つまり、金属とセラミックスとの異種材料同士の焼成収縮挙動、特に焼成収縮率を一致または近似させて異種材料の界面剥離を抑制することが望ましい。このような焼成収縮率を一致させる手法としては、例えば、第1絶縁層102および第2絶縁層103を構成するセラミックスとなるセラミックス粉末を数〜十数体積%、貫通導体108となる金属ペースト中
に添加する手法が挙げられる。この場合には、貫通導体108となる金属ペーストの焼成収
縮挙動、および焼成収縮率が第1絶縁層102等となるセラミックグリーンシートの焼成収
縮挙動、および焼成収縮率に近似して、両者の界面剥離の抑制に対して有効である。
【0056】
しかしながら、このように金属とセラミックスとの焼成収縮率を一致または近似させようとしても、実際には、種々の酸化アルミニウム等の原料粉末や金属ペースト等の特性の影響等により完全な一致は難しい。そのため、微細な領域に異種材料界面の剥がれ、つまり貫通導体108と第1絶縁層102との界面剥離が発生する場合がある。このような場合においても、貫通導体108を楕円形状とすることにより長軸方向の端部と比較して短軸方向の
端部においては貫通導体108と第1絶縁層102との間に生じる応力が最も小さくなる傾向があり、貫通導体108と第1絶縁層102との間に界面剥離が発生する可能性を低減して、より効果的に上面の搭載部104に対して下面の搭載部105から外気が入り込む(リークする)可能性を低減することができる。
【0057】
なお、図1に示す例において、突出部114は四角枠状の第2絶縁層103のうち隣り合う2つのコーナー部分にそれぞれ平面視で四角形状のものとして形成されているが、これ以外の形状および寸法であっても構わない。すなわち、突出部114は、第1絶縁層102の下面側における貫通導体108の端部が、突出部114と第1絶縁層102との層間に位置し得るような
ものであれば、その形状および寸法を適宜設定することができる。この場合、半導体素子111を搭載するスペースの確保、電子部品収納用パッケージとしての小型化等の設計上の
条件や経済性等を考慮する必要がある。
【0058】
例えば、突出部114は、2つの貫通導体108の端部を併せて塞ぐような形状および寸法のものが一つ形成されていてもよい。また、平面視において四角形状以外の、円弧状、楕円弧状、三角形状またはこれらを組み合わせたような形状であってもよく、不定形状であってもよい。
【0059】
この場合、例えば平面視(下面視)で長方形状である第2の絶縁層103の内周の一つの
短辺の全長にわたるようなものであってもよい。つまり、平面視で長方形状の一つ突出部が、例えば2つの貫通導体108の端部を併せて塞ぐようにして形成されていてもよい。
【0060】
また、図1に示す例のように、例えば2つの突出部114が、間に間隔をあけて配置され
ている場合には、この突出部114の間を、半導体素子111以外の他の電子部品を配置するためのスペースとして利用することができる。すなわち、図1に示す例において、一対の突出部114間の領域はチップコンデンサ等の他の電子部品115が配置される領域となっている。例えばチップコンデンサであれば、温度補償回路を構成するときの電源回路等に使用される容量を形成するときに有利であり、また平面視における電子部品収納用パッケージの小型化を図る上で有効である。
【0061】
上記電子部品収納用パッケージにおいては、以下のような効果を得ることもできる。すなわち、上記電子部品収納用パッケージにおいては、第1絶縁層102の上面の搭載部104に搭載される圧電振動素子110と、第1絶縁層102の下面の搭載部105に搭載される半導体素
子111とが、第1の絶縁層102のみを、その厚み方向に直線状に貫通する貫通導体108を介
して互いに電気的に接続される。つまり、搭載される圧電振動素子110と半導体素子111との電気的な接続距離が短い。そのため、圧電振動素子110と半導体素子111との間の電気的
な接続抵抗が低く抑えられ、圧電装置としての電気的な特性の向上等の効果が得られる。
【0062】
また、この電気的な接続をする貫通導体108は伝熱の経路にもなり得る。そのため、下
面側の搭載部105の熱(例えば半導体素子111の作動に伴って発生する熱)が圧電振動素子110に伝わる時間が短く、半導体素子111と圧電振動素子110との間の温度差をより小さく
抑えることができる。そのため、温度補償の精度を高める上でも有効である。
【0063】
なお、本発明は、上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、種々の変形は可能である。例えば、本発明の実施例では1枚の金属枠体112と第1絶縁層102で上面の搭載部104を構成したが、金属枠体112の代わりに枠状の絶縁層(図示せず)を第1絶縁層102の
上面に、搭載部104を囲むように積層してもよい。また、封止構造として金属からなる蓋
体113を金属枠体112にシームウェルド方法により接合したものとしたが、枠状の絶縁層の上面に沿ってメタライズ層を形成しておき、金−スズや半田等の低融点金属で蓋体を封止する構造としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
101・・・絶縁基板
102・・・第1絶縁層
103・・・第2絶縁層
104・・・搭載部(上面)
105・・・搭載部(下面)
106・・・第1の接続導体
107・・・第2の接続導体
108・・・貫通導体
109・・・配線導体
110・・・圧電振動素子
111・・・半導体素子
112・・・金属枠体
113・・・蓋体
114・・・突出部
115・・・電子部品
116・・・半田電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面に電子部品の搭載部を有する平板状の第1絶縁層と、
該第1絶縁層の下面に前記搭載部を囲んで積層された枠状の第2絶縁層と、
前記第1絶縁層の前記上面の前記搭載部に形成された第1の接続導体と、
前記第2絶縁層の前記下面の前記搭載部に形成された第2の接続導体と、
前記第1絶縁層を厚み方向に貫通している貫通導体とを備えており、
前記貫通導体は、上端部が前記第1の接続導体と電気的に接続されているとともに、下端部が、前記第1絶縁層の下面に形成された配線導体を介して前記第2の接続導体と電気的に接続されており、
前記第2絶縁層の内周に、内側に突出した突出部が形成され、該突出部と前記第1絶縁層との層間に前記貫通導体の前記下端部が位置していることを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項2】
平面透視において、前記貫通導体が楕円形状であり、該楕円形状の貫通導体の長軸方向の端部から前記突出部の縁までの距離が、短軸方向の端部から前記突出部の縁までの距離よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項3】
前記配線導体は、前記貫通導体の前記短軸方向の端部のうち前記突出部の前記縁からの距離が大きい方の端部において前記貫通導体と接続されていることを特徴とする請求項2記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子部品収納用パッケージと、前記第1絶縁層の前記上面の前記搭載部に搭載された圧電振動素子と、
前記第1絶縁層の前記下面の前記搭載部に搭載された半導体素子とを備えており、
前記圧電振動素子が前記第1絶縁層の前記上面の前記搭載部において気密に封止されていることを特徴とする電子装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−110214(P2013−110214A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252804(P2011−252804)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】