説明

電子部品実装用フィルムキャリアテープ、その製造方法、および、半導体装置

【課題】接続信頼性の高い電子部品実装用フィルムキャリアテープ、そのフィルムキャリアテープの製造方法、及び、そのフィルムキャリアテープを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】電子部品実装用フィルムキャリアテープ10は、電子部品50に形成されたバンプ電極52により電子部品50に接続して電子部品からの入出力信号を処理するためのインナーリード20、及び、インナーリード20からの信号を配線パターンを介して入出力処理するためのアウターリードを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープ10において、電子部品50に形成されているバンプ電極52と接合するインナーリード20に、バンプ電極52が嵌合して接続する嵌合凹部54が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は実装される電子部品との間の電気的接続信頼性を高くすることができる電子部品実装用フィルムキャリアテープ、その製造方法およびこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電子機器を駆動させるために、電子機器には種々の電子部品が搭載されている。この電子部品は、フィルムキャリアに実装されて、電子機器に組み込まれている。
【0003】
ここで使用されるフィルムキャリアには、ポリイミドフィルムなどの絶縁基材に接着剤を用いて銅箔などの導電性金属箔を貼着した三層積層構造の積層基材を用いて製造されるフィルムキャリア、絶縁基材表面に直接導電性金属層を形成した二層積層構造の積層基材(CCL:Copper Clad Laminates)を用いて製造されるフィルムキャリアなどがある。
三層積層構造の積層基材を用いて製造されるフィルムキャリアの代表的な例としてはTAB(Tape Automated Bonding)テープなどであり、二層積層構造の積層基材を用いて製造されるフィルムキャリアの代表的な例としては、COF(Chip On Film)テープなどがある。
【0004】
このようなフィルムキャリアに電子部品を実装するに際しては、フィルムキャリアに形成された多数のインナーリードと、電子部品に形成された多数のバンプ電極とがそれぞれ当接するようにフィルムキャリアと電子部品との位置決めを行い、加圧下に加熱することにより、多数のインナーリードと、多数のバンプ電極を一挙に接合する方法(ギャングボンディング)が採用されるのが一般的である。従来は、上記のようにギャングボンディングにより、インナーリードとバンプ電極とを一挙に接合することにより、短時間で信頼性の高い接合を形成することが可能であった。
【0005】
しかしながら、近年、電子部品が非常に小型になり、電子部品に形成されているバンプ電極のファインピッチ化が進むにつれて、これと接続するインナーリードもファインピッチになり、たとえば高精密化の著しい液晶素子を駆動させるための電子部品を実装するフィルムキャリアにおけるインナーリードのピッチ幅は20μm程度にまでファインピッチ化されるに至っている。このようにファインピッチ化されたインナーリードを形成する場合においてもアウターリードのACF接続信頼性確保の点で、使用する導電性金属層の厚さ
を薄くすることはできず、上記のような導電性金属層をエッチングして形成されたインナーリードのアスペクト比は大きくなる傾向がある。
【0006】
このようにアスペクト比が高く形成されたインナーリードにバンプ電極を当接して加熱下に加圧して、インナーリードとバンプ電極とを接合しようとすると、図12に示すように、ピール強度の低いリードが変形することによりIC50がフィルムキャリア10に対して横方向にずれることがある。このような現象を電子部品の実装現場では「ICがこける」と言われている。
【0007】
このように「ICがこける」とインナーリード20とバンプ電極52との接続が充分に確保されず、ショート・断線などの導通不良を引き起こす原因となることが考えられる。なお、図12において付番30はソルダーレジストである。
【0008】
一方、三層積層構造の積層体を用いる場合にも、インナーリードの強度維持あるいはアウターリードのACF接続信頼性の確保の理由で、上記のように薄い導電性金属層を形成す
ることは困難で、通常は絶縁基板の表面に塗設された接着剤により、12〜35μm厚さ
の導電性金属層を貼着した三層積層基材を用いてフィルムキャリアテープが形成される。このような三層積層構造の積層体の形成に使用される導電性金属箔は、上述のCOFなどの導電性金属層と比較すると比較的厚く、電子機器の小型軽量化に伴って次第に使用量は少なくなってきているが、電子部品(IC)が小型化するに従って、電子部品(IC)からの単位面積当たりの発熱は多くなりこれを放熱するために、あえて、電子品の背面に空隙を設け、かつ厚い導電性金属箔を用いて太い配線パターンを形成して、この太い配線パターンを利用して電子部品(IC)で発生した熱を放熱させることが可能となり、こうした面で三層積層構造の積層体を用いたフィルムキャリアに新たな可能性が見出されている。
【0009】
このような三層積層構造の積層体で使用される導電性金属箔は、上記二層積層構造の積層体よりも厚いが、ピッチがCOFよりも粗く、かつ接着剤により絶縁基板に強固に接着し
ているので、上記のような「ICがこける」といった現象は生じにくいように思われがちである。しかしながら、近年多ピン化と熱放散の目的で、上記のような三層積層構造の積層体を用いてフィルムキャリアを製造する場合にも導体が厚くファインピッチである回路が求められつつある。三層積層構造のTABテープの場合、デバイスホールの縁部からイン
ナーリードが片持ち状態で形成され(このようなインナーリードはフライングリードと呼ばれている。)、リードの一方の端部は絶縁基材(デバイスホールの縁)に固定されているが、デバイスホール内に延設されたフライングリードの底部には絶縁基板がない構造となっている。このフライングリードはCOFより厚く、且つファインピッチであるためアス
ペクト比(導体厚/線幅)が大きくなってきている。このためフライングリードに電子部品を実装する際にやはり「ICがこける」現象が発生することがある。
【0010】
このようにボンディングの際にバンプ電極が変形して電子部品(IC)の位置がずれる「ICがこける」現象を防止する技術が必要になっている。
ところで、特許文献1(特開平11-345842号公報)の請求項1には、「表面に複数のトランジスタ及びハンダや導電性接着剤からなるバンプが形成された半導体チップとこれらのバンプを介して電気的、機械的に接続を確保する半導体装置用リードフレームにおいて、インナーリードのバンプが接続される部分に、深さがバンプの高さ以下の窪みが形成されている事を特徴とする半導体装置用リードフレーム。」の発明が開示されている。即ち、この特許文献1には、半導体装置に形成されたバンプ電極にリードを敷設するためのリー
ドフレームが開示されているのであり、このリードフレームは、金属の枠体に金属リードが接合しており、この金属リードの先端に半導体装置のバンプ電極が嵌り込む窪みが形成されているのであり、この半導体装置用リードフレームには、金属リードを保持するための絶縁基板は存在しない。
【0011】
また、特許文献2(特開平6-163640号公報)の請求項1には、「TAB用フィルムキャリアのインナーリードにおいて、そのインナーリード先端のバンプ接合部の幅を広くし、その広くなった部分をバンプ接合面側に傾斜させて誘い込み傾斜とすることにより、バンプ接合部を凹状に形成したことを特徴とするTAB用フィルムキャリアのインナーリード。」の発明が開示されている。この特許文献2に記載されているインナーリードは、先端部分を幅広く形成し、この幅広の部分を内側に傾斜させることにより、バンプの誘い込み傾斜部とすることが開示されているのであり、この特許文献2に記載されているインナーリードの厚さは均一である。また、この特許文献2に記載されているようにインナーリードの先端部を幅広に形成するためには、隣接するインナーリード間に充分なスペースが必要であり、例えばインナーリードの形成ピッチが20μmを下回るような非常にファインピッチのフィルムキャリアにおいては、先端部を幅広に形成するために必要なスペースを確
保することが極めて困難になりつつある。
【0012】
特許文献3(特開平5-102251号公報)の請求項1には、「幅方向の両縁部には送り用スプロケット(4)が形成され、幅方向の概略中央部にはインナーリードボンディング用の第1の開口部(6)が形成され、該第1の開口部の周囲には、アウターリードボンディング用の第1の開口部(8)が形成された帯状のテープ部材(2)と、一端がインナーリード部(12)として上記第2の開口(6)に臨み他端がアウターリード部(18)として、上記第2の開口(8)
に臨むように上記部材(2)に固定され、上記インナーリード部(12)及びアウターリー
ド部(18)には、それぞれくぼみ(14,20)が形成された薄板状のリード(10)と、該リードの表面から突出するように上記くぼみ(14,20)に埋められたボンディング用金属からなるバンプ(16,22)とを備えたことを特徴とするTABテープ。」の発明が開示されている。
【0013】
そして、上記くぼみ(14,20)に埋められたボンディング用金属が、くぼみに金属片を着座させてこの金属片を溶融するなどして固定された金属バンプであることが記載されている。従って、この特許文献3には、TABテープのインナーリードおよびアウターリードにバンプを形成したTABテープが開示されているのであり、電子部品(IC)に形成されたバンプ電極を、フィルムキャリアのインナーリードに安定的に接合することに関する技術的思想は開示されていない。
【特許文献1】特開平11-345842号公報
【特許文献2】特開平6-163640号公報
【特許文献3】特開平5-102251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、電子部品を実装する際にかかる圧力によって配線基板側の導体が傾くためICチップがずれる現象、所謂「ICがこける」ことを防止した電子部品実装用フィルムキャリアテープおよび半導体装置を提供することを目的としている。
【0015】
さらに、本発明は上記のように所謂「ICがこける」のを防止することができる電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造する方法を提供することを目的としている。
また、本発明は、上記のように電子部品を実装する際に「ICがこける」という現象を防止するとともに、アウターリードがリジッドな配線基板(PCB)あるいは液晶素子の透明電極と異方導電フィルムにより接着する際に確実に電気的接続を確立することができる電子部品実装用フィルムキャリアテープを提供することを目的としている
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、絶縁基板の少なくとも一方の表面に、外部からの電気信号を入力する入力側アウターリード、配線パターンを介して電子部品に形成されたバンプ電極を介して電子部品に接続して該入力側アウターリードからの電気信号を電子部品に入力するための入力側インナーリード、該電子部品に形成されたバンプ電極により電子部品に接続して電子部品からの出力信号を取り出すための出力側インナーリード、および、該出力側インナーリードからの信号を配線パターンを介して出力するための出力側アウターリードを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいて、
該電子部品に形成されているバンプ電極と接合する部分の入力側インナーリードおよび/または出力側インナーリードに、該バンプ電極が嵌合して接続する嵌合凹部が形成されていることを特徴としている。
【0017】
本発明において、上記バンプ電極が嵌合して接続する嵌合凹部の深さ(D)は、通常は2.5〜10μmの範囲内、好ましくは2.5〜6μmの範囲内にあり、かつこのインナー
リードの厚さ(T)に対する嵌合凹部の深さ(D)の比率〔(D)/(T)〕は、通常は0.
1〜0.9の範囲内、好ましくは0.25〜0.75の範囲内にある。
【0018】
このような本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープには、電子部品に形成されたバンプ電極が嵌合して接続する嵌合凹部が形成されている入力側インナーリードおよび出力側インナーリードの下面に絶縁基板が存在するCOFタイプと、電子部品実装用フィルムキャリアテープに電子部品を実装するためのデバイスホールが形成されており、バンプ電極が嵌合して接続する嵌合凹部が形成されている入力側インナーリードおよび出力側インナーリードが、該デバイスホールの縁からデバイスホール内に片持ち状態で形成されたフライングリードであるTABタイプとがある。COFタイプのフィルムキャリアは、絶縁基板の表面に導電性金属層が直接配置された二層積層基板(CCL)から形成され、TABテープタイプのフィルムキャリアは、絶縁基板の表面に接着剤層により銅箔が貼着された三層積層基板から形成される。
【0019】
このように本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープのインナーリードに形成される嵌合凹部の幅(C)とバンプ電極の幅(B)との関係は、電子部品に形成されたバンプ電極の幅(B)と嵌合凹部の幅(C)との比率(B)/(C)が、通常は1.6〜0.4の範囲内、好ましくは1.4〜0.6の範囲内にある。
【0020】
なお、この嵌合凹部先端は、通常は、インナーリードの先端から10〜320μm、好
ましくは20〜220μmの範囲内の幅でアウターリードによった位置に形成されている。
【0021】
さらに、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、上述のようにインナーリードの先端部に、電子部品のバンプ電極が嵌合する嵌合凹部が形成されているものであるが、アウターリードの先端部の表面もハーフエッチングにより平坦化されていることが好ましい。殊に上述のCOFタイプのフィルムキャリアテープにおいては、インナーリードおよびアウターリードを含めて配線パターンを絶縁基板表面に形成された非常に薄い導電性金属からなる層をシード層として、このシード層の表面に導電性金属を選択的に析出して配線パターンを形成する、所謂Semi Additive法による製造工程を採用することが多く
、このように析出により形成された銅配線パターンは、その断面がかまぼこ型、即ち形成された配線パターンの上面部が平坦にならずに円弧状になる傾向がある。アウターリードは、導電性粒子を含有する異方導電性接着剤を用いて、液晶素子、リジットな配線基板(PCB)と電気的に接続するが、このとき、より多くの導電性粒子によって電気的接続を確立するためには、アウターリードの表面がより平坦であることが好ましい。
【0022】
このために、本発明でインナーリードをハーフエッチングして電子部品に形成されたバンプ電極の幅(B)と嵌合凹部の幅(C)を形成する際に、出力側アウターリードの先端部も同様にハーフエッチングすることによりアウターリードの先端部の半円弧状の部分を除去して、平坦化することにより、より多くの導電性粒子により電気的接続を確立することができる。
【0023】
また、本発明の半導体装置は、上記電子部品実装用フィルムキャリアテープから切り出されたフィルムキャリアのインナーリードの先端部分に形成された嵌合凹部に、電子部品のバンプ電極が嵌合されて電気的に接続されてなることを特徴としている。
【0024】
上記のような電子部品実装用フィルムキャリアテープは、絶縁基板の表面に配置された導電性金属箔層を選択的にエッチングして配線パターンを形成した後、該配線パターンを含む絶縁基板全面に感光性樹脂層を形成し、該導電性基板の嵌合凹部形成予定位置にある感光性樹脂を露光現像して除去して導電性金属層の表面を感光性樹脂層から露出させ、該
露出した導電性金属箔層をハーフエッチングして嵌合凹部を形成することにより製造することができる。
【0025】
上記の電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造するに際しては、上記嵌合凹部形成予定位置にある感光性樹脂を露光現像して除去する際に、アウターリードの表面にある感光性樹脂も露光現像して除去して導電性金属層金属の表面を感光性樹脂層から露出させ、該露出した導電性金属箔層をハーフエッチングしてインナーリード部に嵌合凹部を形成するとともに、アウターリードの表面をハーフエッチングすることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、絶縁基板の表面に配置された導電性金属箔層の表面に感光性樹脂層を形成して、該導電性基板の嵌合凹部形成予定位置にある感光性樹脂を露光現像して除去して導電性金属箔層の表面を感光性樹脂層から露出させ、該露出した導電性金属箔層をハーフエッチングして嵌合凹部を形成した後、新たに感光性樹脂層を形成して該感光性樹脂層に所望の配線パターンを形成し、該感光性樹脂からなる配線パターンをマスキング材として導電性金属箔層を選択的にエッチングして導電性金属からなる配線パターンを形成することにより製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープには、電子部品を実装する際に、電子部品に形成されたバンプ電極が嵌合する嵌合凹部がインナーリードのバンプ電極当接位置に形成されている。このようにインナーリードに嵌合凹部を形成することによって、電子部品に形成されているバンプ電極が嵌合凹部に嵌り込んだ状態で、加熱下に加圧することにより電子部品をインナーリードに確実にボンディングすることができ、このボンディングの際の加圧によっても、インナーリードが変形することで電子部品の位置がずれたり、傾斜する所謂「ICがこける」という現象の発生を防止することができる。従って、電子部品をインナーリードに確実に実装することができる。
【0028】
このよう所謂「ICがこける」現象は、COFのように、導電性金属層厚はそのままでファインピッチ化が進行し、導体高さ/線幅で表わされるリードのアスペクト比が1付近を境にして線幅が狭くなることにより発生の確率は急激に増加するが、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアで採用しているようにインナーリードに嵌合凹部が形成されたインナーリードを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいては、アスペクト比に拘わらず、「ICがこける」現象による実装不良が見られなくなる。
【0029】
また、TABタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいては、導電性金属箔として使用される電解銅箔などがCOFタイプで使用されるものよりも格段に厚いことから、ファインピッチ化した場合、こうしたボンディングの際に「ICがこける」現象が生じやすくなっている。TABタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープに形成されているインナーリードは、下面部が絶縁基板によって支持されておらず、デバイスホールの縁部から片持ち状態でデバイスホール内に延設されてフライングリードとされている。
【0030】
このときファインピッチでアスペクト比が高い場合にTABテープではICボンディングの際の圧力によって「ICがこける」という現象が生ずる。そこで、本発明では、デバイスホール内に延設されたインナーリードに嵌合凹部を形成し、嵌合部でのアスペクト比を下げておき、この嵌合凹部に電子部品のバンプ電極を嵌合して、ボンディングすることにより、「ICがこける」という現象は生じない。
【0031】
そして、本発明の半導体装置は、上記のようにインナーリードに形成された嵌合凹部に電子部品のバンプ電極が入り込んで電気的接続が形成されるために、「ICがこける」現
象は生じていない。
【0032】
さらに、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、感光性樹脂をマスクを用いて、嵌合凹部に相当する部分の感光性樹脂層(第2の感光性樹脂層)を露光現像して除去し、この部分の導電性金属をハーフエッチングすることにより容易に製造することができる。また、COFタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープの場合に、このようにインナーリードをハーフエッチングする際に、アウターリードの表面を同様にハーフエッチングすることにより、たとえば液晶素子に形成されている透明電極との電気的接合を異方導電性接着剤を用いて確立することにより、アウターリードの表面が平坦化されるために、より多くの導電性粒子によってアウターリードと透明電極との間の電気的接合を確立することができ、より信頼性の高い電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に本発明の電子部品実装用フィルムキャリア、半導体装置、および、電子部品実装用フィルムキャリアの製造方法について具体的に説明する。
図1は、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープのうちで、所謂CCLを用いたCOFタイプのフィルムキャリアテープに電子部品が実装された状態を示す断面図の例である。
【0034】
図1に示すようなCOFタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープ10は、ポリイミドフィルムのような絶縁基板12の表面に導電性金属層から形成された配線基板31のインナーリード20の先端に嵌合凹部54が形成され、この嵌合凹部に電子部品(IC)50に形成されているバンプ電極52が嵌合されるように形成されている。ここで付番30は、ソルダーレジスト層であり、本発明においては形成しなくともよいが、このソルダーレジスト層30よりも先端にあるインナーリード20の表面、あるいは、ソルダーレジスト層を設けない場合には配線パターン全体には、通常は、錫メッキ層、半田めっき層、金メッキ層、ニッケル-金メッキ層等の種々のメッキ層が形成されている(図示なし)
。特に電子部品50に形成されているバンプ電極が金バンプ電極である場合には、錫メッキ層を形成することが好ましい。この錫メッキ層から供給される錫とバンプを形成する金とが金-スズ共晶物を形成して、強固な電気的接続を形成することができる。
【0035】
ここで使用される絶縁基板を形成するポリマーフィルムの例としては、前掲のポリイミドフィルムのほかに、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、BTレジンフィルムおよびガラス繊維含有エポキシ樹脂フィルムなどを挙げることができる。特に本発明ではポリイミドフィルムを用いることが好ましい。
【0036】
絶縁基板12を構成するポリイミドフィルムの例としては、ピロメリット酸2無水物と芳香族ジアミンとから合成される全芳香族ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物と芳香族ジアミンとから合成されるビフェニル骨格を有する全芳香族ポリイミドを挙げることができる。特に本発明ではビフェニル骨格を有する全芳香族ポリイミド(例;商品名:ユーピレックス、宇部興産(株)製)が好ましく使用される。このような絶縁フィルム11の厚さは、通常は125μm以下、好ましくは75μm以下、特に好ましくは5
0μm以下、さらに好ましくは5〜50μmの範囲内にある。
【0037】
上記図1に示す本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープについて、図4に示す工程に沿って説明する。
図4-1(a-1)において、付番12は、前掲の絶縁基板であるポリイミドフィルムである。
【0038】
図4-1(a-1)に示すように、絶縁基板12の一方の面には、シード層27が形成されており、さらにこのシード層27の表面には導電性金属層が形成されている。
ここで、シード層27は、通常は、ニッケル、クロム、銅などのスパッタリング層であり、その厚さは通常は20〜300Åの範囲内、好ましくは30〜250Åの範囲内にある。
【0039】
また、このシード層27の表面には導電性金属からなる導電性金属層28が形成されており、この導電性金属層28の厚さは通常は0.1〜2μmの範囲内にある。ここで導電性金属層28を形成する金属としては、銅あるいは銅合金を挙げることができる。この導電性金属層28は、スパッタリング法、蒸着法、昇華-堆積法、電解メッキ法、無電解メ
ッキ法など種々の方法で形成することができる。
【0040】
こうしてスパッタリングによりシード層27および導電性金属層28が形成され、所定のテープ幅にスリットするとともに、テープの幅方向の両端部にスプリケットホール13を形成した基材テープを用いて、直接配線パターンを形成することができる。
【0041】
図4-1(a-2)は、所定の幅にスリットすると共にスプロケットホール13を形成した基材テープの表面にある導電性金属層28の一部を酸洗により除去した状態を示す断面図である。この酸洗には、硫酸水溶液、塩酸水溶液、塩化鉄水溶液、硫酸鉄水溶液、硫酸+過
硫酸カリウム水溶液などを使用することができる。
【0042】
図4-1(a-3)に示すように、このようにして導電性金属層28の少なくとも一部を除去した後、この表面に感光性樹脂を塗布して感光性樹脂層(第1の感光性樹脂層)29を形成する。ここで使用する感光性樹脂には、光の照射により樹脂が硬化するタイプと、光の照射された部分が現像液で溶解するタイプがあるが、本発明ではいずれのタイプの感光性樹脂を使用することができる。また。この感光性樹脂層29は、感光性樹脂とこの感光性樹脂の溶媒からなる樹脂組成物を塗布して形成することもできるし、感光性樹脂からなるシートを打ち抜いてこれを貼着して感光性樹脂層29を形成することもできる。シートタイプのネガ型Dry Filmフォトレジストをラミネートして感光性樹脂層を形成した場合には、溶剤の除去時間等を必要とせず、効率よく感光性樹脂層29を形成することができる。このような感光性樹脂層29の厚さは、形成しようとする配線パターンの厚さに合わせて適宜設定することができるが、乾燥厚さで通常は10〜50μm、好ましくは12〜25
μmの範囲内にある。
【0043】
次いで、図4-1(a-4)に示すように、上記のようにして形成された感光性樹脂層29の表面に所定の回路を描画したフォトマスク32を配置して光源33から光を照射して、感光性樹脂を露光する。ここで露光に用いる光に特に制限はなく、感光性樹脂の特性に合わせて選択することができるが、ここで露光に用いる紫外線の波長は感光性樹脂の特性に合わせて選択することができるが、365nm、405nmおよび436nmなどの波長の紫外線などを組み合わせて用いることにより、よりシャープに感光することができる。また、一般に紫外線によって感光する感光性樹脂は、可視光によって感光し易いので露光室は紫外線を遮断した環境に維持する必要があるのは言うまでもない。紫外線を使用して露光する場合、照射する紫外線量は、用いる感光性樹脂によって異なるが、通常は、50〜3000mJ/cm2、好ましくは80〜2500mJ/cm2の範囲内にある。このような照射線量の紫外線を照射することにより、予定している部分の感光性樹脂を確実に露光させることができる。
【0044】
このように露光した後、現像することにより、図4-1(a-5)に示すように、導電性金属層28の表面に所望の配線パターンが形成されるように感光性樹脂の硬化体25(マスキ
ング材)が残存する。ここで使用する現像液としては、通常はアルカリ金属の炭酸塩の水溶液などを使用することができる。
【0045】
このようにして現像することにより、感光性樹脂層の硬化体をマスキング材25として選択的に導電性金属層の表面に残すことができる。そして感光性樹脂の硬化体によって保護されていない面には導電性金属層28が露出し、この導電性金属層28は、電気導電性を示すので、この露出した導電性金属層を一方の電極とし、上記感光性樹脂の硬化体をマスキング材として電解メッキを行うことにより、露出した導電性金属層の上に電解メッキ層を形成することができ、この電気メッキ層が配線パターン31を形成する(図4-1(a-6)参照)。
【0046】
ここで電解メッキにより電解メッキ層からなる配線パターン31を形成する際に使用するメッキ液としては、導電性金属が銅である硫酸銅メッキ液を使用することができる。硫酸銅メッキ液を用いる場合、電流密度(Dk)は、通常は0.5〜5A/dm2、好ましくは1.5〜3A/dm2の範囲内に設定し、この条件で10〜30分間、好ましくは18〜25分
間銅を析出させることにより、所望の形状の配線パターン31を形成することができる。上記のようにして形成される配線パターン31の厚さは通常は6〜13μm、好ましくは
8〜11μmの範囲内にあり、感光性樹脂の硬化体により形成されているマスキング材の
厚さ(100%)に対して40〜90%の厚さに導電性金属を析出させて配線パターンを形成することが好ましい。このように感光性樹脂硬化体からなるマスキング材の厚さに対して上述のように僅かに薄く導電性金属を析出させることにより、形成される配線パターンの上面部がレジストを越えて横方向に広がることがなく、立ち上がりのシャープな配線パターンを形成することができる。
【0047】
このようにして導電性金属を電解析出させて配線パターン31を形成した後、マスキング材25として使用した感光性樹脂の硬化体は、例えば40〜60℃程度に加熱したアミン系アルカリ溶液、アルカリ金属の炭酸塩を含む水溶液などの剥離剤に1〜30秒間程度浸漬することにより除去することができる。
【0048】
このようにしてマスキング材として使用した感光性樹脂の硬化体が除去された部分には、スパッタリングにより形成された導電性金属層28、さらにはシード層27が露出する。
【0049】
この導電性金属層28およびシード層27は導電性を有するので上記のようにして形成された配線パターン31は、電気的に独立した存在にはなっておらず、配線パターンとしして機能させるためには除去された感光性樹脂の硬化体(マスキング材)の下部にある導電性金属層28およびシード層27を除去する必要がある。
【0050】
まず、この導電性金属層28をエッチング処理をすることにより、スパッタリングにより形成された導電性金属層(スパッタリング銅層)28を除去することができ(図4-1(a-7)参照、絶縁基板12の表面にはスパッタリング法によって形成されたシード層27が残存する(図4-2(a-8)参照)。
【0051】
したがって本発明で、これらを配線パターンとして使用するためには、このシード層2を、塩酸系エッチング剤、硫酸塩酸混合溶液を使用することにより、シード層27を溶解・除去することが必要である。
【0052】
上記のように処理することにより、図4-2(a-9)に示されるように、ポリイミドフィルムのような絶縁基板の表面に電気的に独立した配線パターン31が形成される。
こうして配線パターン31を形成した後、図4-2(a-10)に示すように、配線パターン
31が形成された絶縁基板12の面に新たに感光性樹脂層(第2の感光性樹脂層)35を形成する。この感光性樹脂層35は、上述の第1の感光性樹脂層29を形成した感光性樹脂と同一の感光性樹脂から形成することもできるし、また異なる感光性樹脂から形成することもできる。特に本発明ではネガタイプフォトレジスト(Dry Filmレジスト)を用いることが好ましい。
【0053】
上記のように再び形成されたドライフィルム感光性樹脂層の上方に長方形帯枠24を例えば黒く描画したフォトマスクを用いて上記と同様にして露光し、続いて現像する。この長方形帯枠24の描画位置は、電子部品が実装される配線パターン31のインナーリードの電子部品に形成されたバンプ電極の当接位置に配置される。このように長方形帯枠24を描画したフォトマスクで、上述した露光条件に準じて感光性樹脂層を露光し、現像することにより、図4-2(a-11)に示すように、長方形型枠24に位置していた部分の感光性
樹脂35が除去されて、感光性樹脂孔26が形成され、この感光性樹脂孔26の底部には、インナーリード20を形成する導電性金属が露出する(図4-2(a-12)参照)。この感
光性樹脂孔26から露出するインナーリードの幅は、電子部品に形成されたバンプ電極が嵌入できる幅であればよく、バンプ電極の幅に対して、通常は0.625〜2.5倍の範囲内、好ましくは0.71〜1.66倍の範囲内の幅の凹部が形成されるようにする。
【0054】
上記のように感光性樹脂孔26を形成した後、この感光性樹脂孔26の底部に露出しているインナーリード20をハーフエッチングする。ここで使用するエッチング液としては、導電性金属として例えば銅を用いてインナーリード20を形成している場合、塩化銅系エッチング剤、または、塩化鉄系エッチング剤を用いることができる。このようなエッチング剤を30〜50℃に加温して、10〜60秒間エッチングすることにより、インナーリード20のバンプ電極当接部分がハーフエッチングされて嵌合凹部54を形成することができる。
【0055】
上記のようにしてインナー-リード20の導電性金属(銅)をハーフエッチングして嵌
合凹部54を形成した後、アミン系アルカリ水溶液、炭酸ナトリウム水溶液などの剥離剤を用いて感光性樹脂層(第2の感光性樹脂層)35を剥離する(図4-2(a-12)参照)。
【0056】
こうして第2の感光性樹脂を除去することにより、インナーリード20およびアウターリード60を含む配線パターン31が露出する。本発明では、このように露出した配線パターン31の表面をマイクロエッチング液を用いてフラッシュエッチングする。このようにフラッシュエッチングをすることにより、導電性金属、特に銅から形成されている配線パターンの表面に存在する金属酸化膜を除去することができる。ここで使用することができるマイクロエッチング液としては、過硫酸塩を主成分として含有するマイクロエッチング液を用いることができる。このようなマイクロエッチング液を用いてフィルムキャリアテープ10を処理することにより、配線パターン31の表面にある極薄い酸化膜あるいは感光性樹脂層の剥離液と導電性金属との反応物、剥離液と導電性金属との反応物などの不純物を除去し、清純な導電性金属の表面を露出させることができる。
【0057】
このようにマイクロエッチングを行った後、インナーリード20およびアウターリード60が露出するようにソルダーレジスト層30を形成することもできるが、ソルダーレジスト層30を形成することなくメッキ処理することが好ましい。
【0058】
ここで行われるメッキ処理としては、錫メッキ処理、ニッケルメッキ処理、金メッキ処理、ニッケル-金メッキ処理、半田めっき処理、鉛フリーはんだめっき処理、銀メッキ処
理など種々のメッキ処理を挙げることができる。特に本発明では電子部品に形成されているバンプ電極が金バンプ電極である場合には、金と共晶物を形成してバンプ電極52とインナーリード20との間で確実な電気的接続を形成するために、錫メッキ層を形成するこ
とが好ましい。
【0059】
なお、図4-1、図4-2においては、メッキ層は省略されている。
また、メッキ層は、単層である必要はなく、同一の金属からなる多層メッキ層であってもよいし、異なる金属が積層された異種金属多層メッキ層であってもよい。
【0060】
なお、上記のソルダーレジスト層30を形成せずにメッキ処理を施す態様を示したが、メッキ処理を行う前にソルダーレジスト層30を形成することもでき、この場合、マイクロエッチングを行った後、あるいは、マイクロエッチングを行う前にソルダーレジスト層を形成することができる。
【0061】
また、ソルダーレジスト層30を形成する場合、ソルダーレジスト層を形成する前に薄くメッキ処理を行った後ソルダーレジスト層を形成し、その後、ソルダーレジスト層から露出したインナーリード20およびアウターリード60の表面に再度メッキ層を形成してもよい。
【0062】
こうして形成された本発明のCOFタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープ10に、電子部品50を実装する。
電子部品50の実装に際しては、インナーリード20に形成された嵌合凹部54に電子部品50に形成されているバンプ電極52が嵌合するように、電子部品50と電子部品実装用フィルムキャリアテープ10との位置合わせを行い、電子部品の上下方向に加圧するとともに、絶縁基板12の下面から加熱手段をバンプ電極接合部分に当接して加熱することにより、インナーリード20の表面の錫メッキ層58から供給される錫と、バンプ電極52から供給される金とを用いて金錫共晶物を形成させて、インナーリード20と電子部品との間にバンプ電極を介して電気的接続を確立する。
【0063】
図5に、上記図4に示す電子部品実装用フィルムキャリアテープのインナーリードの先端部分の断面を拡大して示す。
上記のようにして製造される本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープにおけるインナーリード20は、導電性金属、好ましくは銅で形成されており、その表面は錫メッキ層58で覆われている。このインナーリード20の先端部55から長さAだけアウターリードよりに幅Cで表わされる嵌合凹部54が形成されている。この嵌合凹部54の表面にもメッキ層58が形成されてる。嵌合凹部54の形成位置は、電子部品50に形成されたバンプ電極52の位置により決定されるが、インナーリード20の先端部55からの距離Aは、通常は10〜320μm、好ましくは20〜220μmの範囲内にある。また、嵌合凹部54の幅は、バンプ電極52によって決定されるが、バンプ電極の幅Bに対して嵌合凹部の幅Cが通常は0.625〜2.5倍の範囲内、好ましくは0.71〜1.66倍の範囲内に設定される。
【0064】
また、この嵌合凹部54の深さDは、インナーリード20の厚さT(100%)に対して10〜90%の範囲内、好ましくは25〜75%の範囲内にある。。
上記のような関係を満たすことにより、ボンディングの際にインナーリードが変形することにより発生する所謂「ICがこける」現象が発生しない。さらにバンプ電極52とインナーリード20との間で良好な電気的接続が確立される。
【0065】
さらに、電子部品実装用フィルムキャリアテープ10と電子部品50とがバンプ電極52以外の部分で接触することもなく、また、ボンディングの際にインナーリード20の先端部55が破損することもない。
【0066】
上述のようにインナーリード20の先端部にバンプ電極52が嵌合する嵌合凹部54を
形成することにより、電子部品50をインナーリード20に安定に実装することができる。
【0067】
ところで、上記のように配線パターンをセミアディティブ(Semi Additive)法で形成
すると、図7(a)に示すように、配線パターン31の上面はかまぼこ形になり、平坦に形成することは極めて難しい。
【0068】
本発明の電子部品実装フィルムキャリアテープは、電子部品を実装した後、たとえば液晶素子に縁部に形成されたITO透明電極あるいはリジットタイプのプリント配線基板(PCB)と異方導電性接着により電気的接続を確立する必要があり、上述のようにセミアディティブ(Semi Additive)法で製造した配線パターンの断面は図7(a)に示すように平坦にはなりにくく、かまぼこ形になるために、異方導電性接着剤を用いて電気的接続を確立しようとしても異方導電性接着に必要な導電性粒子がリード間に保持されにくいという問題が生じている。極端な場合には、100μm2に導電性粒子が1〜2個程度しか存在しない場合もありうる。従ってわずかな外的環境の変化によって、確立されていた導電状態が損なわれる危険性を常に内包しているのである。
【0069】
そこで本発明では、図6に示すように、インナーリード20に感光性樹脂孔36を形成する際に、アウターリード60の端部にある感光性樹脂層を露光現像して感光性除去部26aを形成してこの感光性除去部26aにアウターリード60の導電性金属層(銅層)を
露出させ、インナーリード20をハーフエッチングを行って嵌合凹部54を形成すると同時に、図7(a)にe−e線で示すアウターリード60の端部からかまぼこ形に形成された
部分をハーフエッチングすることにより、図7(b)に示すように表面が平坦なアウターリード60を形成することができる。
【0070】
このようにアウターリード60の表面をハーフエッチングして平坦化することにより、この平坦面31aに留まる導電性粒子の数は格段に増加することから、使用環境等の周囲
の状況が変化したとしても、異方導電性接着剤によって電気的に接続された状態の安定性は極めて高くなり、本発明の電子実装用フィルムキャリアテープを用いることにより、導電性の安定性が格段に向上するとの効果が得られる。なお、図7においてもメッキ層は省略されている。
【0071】
即ち、このように図6(a-11-1)〜図6(a-11-3)に示すように、セミアディティブ(Semi
Additive)法により形成された配線パターン31のアウターリード60の表面を、イン
ナーリードに嵌合凹部54を形成する同時にハーフエッチングすることにより、表面平滑化を図ることにより、アウターリード60と外部電子部品との間に非常に安定した電気的接続を確立することができる。なお、図6(a-11-3)では、ソルダーレジスト層30を形成した態様が示されているが、本発明においては、配線パターン31表面全体にメッキ層を形成し、ソルダーレジスト層30を形成することを必ずしも必要とするものではない。
【0072】
上記のように本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいては、インナーリード20の先端部に電子部品50に形成されたバンプ電極が嵌り込むように嵌合凹部54がインナーリード20をハーフエッチングすることにより、COFのような絶縁基板およ
び配線パターン31を形成する導電性金属が非常に薄い電子部品実装用フィルムキャリアテープから切り出されたフィルムキャリアに電子部品を実装する際の圧力および加熱によってもインナーリードが変形して実装される所謂「ICがこける」現象が極めて生じにくいとの特性を有する。
【0073】
次に図2および図3に示すように、デバイスホールが形成されたTABタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープについて説明する。
図2に示す電子部品実装用フィルムキャリアテープは、接着剤15付き絶縁基板12の表面に導電性金属箔18から形成された配線パターン31が形成されており、この配線パターン31の電子部品を実装するインナーリード20の端部近傍に、電子部品50に形成されたバンプ電極を嵌め込む嵌合凹部54が形成されている。図2に示す態様においては、電子部品50は、インナーリード20のデバイスホール14が形成されてる側と反対側、すなわち、上面方向から電子部品50がインナーリード20に当接されて電気的接続が形成されているので、バンプ電極52が嵌り込む嵌合凹部54は、開口部54が上向きに開口して形成されている。
【0074】
このような形態の電子部品実装用フィルムキャリアテープの平面図の例を図8に示す。ただし、図8において、斜線エリアはハーフエッチングにより形成された窪み部であり、点線はデバイスホール輪郭である。さらに、図8におけるX−X断面図を図9(d−3)に示して、図2に示す態様の電子部品実装用フィルムキャリアテープをその製造工程に沿って説明する。
【0075】
図9に示すように本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいては、接着剤層付き絶縁基板にスプロケットホール13、デバイスホール14等の貫通孔が形成されている。特にこの電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいては、デバイスホール14が穿設されている点が、前述のCOFタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープと異なっている。
【0076】
このようにデバイスホールを有するTABタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいて、絶縁基板としては、前掲の樹脂フィルムを使用することができるが、同一の樹脂を用いるのであれば、上記COFタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープで使用する絶縁基板よりも厚い樹脂フィルムを用いるのが一般的である。例えば、絶縁基板として、ポリイミドフィルムを使用する場合には、このTABタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープでは、通常は18〜150μm、好ましくは18〜125μm、特に好ましくは25〜75μmの平均厚さを有するポリイミドフィルムを使用する。このような厚さのポリイミドフィルムは、充分な強度を有しているとともに、フィルムキャリアとして必要な程度の可撓性をも併せ持つことができる。
【0077】
このような絶縁基板12の一方の面には接着剤層15が形成されている。ここで使用される接着剤の例は、ポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤を挙げることができ、これらの接着剤は、変性されていてもよい。例えば上記接着剤をエラストマー成分で変性することにより、導電性金属と絶縁基板との物理的特性の差による内部応力をこの変性された接着剤層15で吸収することができる。
【0078】
このような接着剤の平均厚さは、乾燥厚さで、通常は2〜25μm、好ましくは4〜20μmの範囲内にある。上記のような接着剤は、塗布可能な粘度になるように有機溶剤を加えて粘度調整を行い、ドクターブレード法、スピンコート法、ロールコーター法、転写法等、通常接着剤層を形成するのに通常採用されている方法を利用して塗布することができる。こうして接着剤を塗布した後、溶剤を除去することにより接着剤層15付き絶縁基板12を得ることができる。
【0079】
上記のようにして形成された接着剤層15付き絶縁基板12に、デバイスホール14、スプロケットホール13、接着剤層15付き絶縁基板12、さらに折り曲げ用スリット(図示なし)等の貫通孔を穿設する。貫通孔の穿設には、レーザー光照射等を利用することもできるが、作業効率、コストの面などからパンチング法を採用するのが有利である。
【0080】
上記のようにして調製された接着剤層15付き絶縁基板12に導電性金属箔18を貼着
する。ここで使用することができる導電性金属箔18の例としては、アルミニウム箔、銅箔、銅合金箔、銀箔、金箔等を挙げることができるが、本発明では、電気的特性とコストとのバランスおよび加工性を考慮して銅箔を使用することが好ましい。本発明で使用することができる導電性金属箔の厚さは、形成しようとするフィルムキャリアテープの種類によって異なるが、通常は3〜70μm、好ましくは5〜35μmの範囲内にある。本発明で使用することができる銅箔には圧延銅箔と電解銅箔とがあり、本発明ではいずれの銅箔を使用することも可能である。しかしながら、本発明では電解銅箔を使用することにより、より精密な配線パターンを形成することができるとともに、絶縁基板との接着強度を高くすることができる。
【0081】
本発明において導電性金属箔として電解銅箔を使用する場合、電解銅箔には、銅箔の製造工程で銅の析出が始まる面と銅の析出が終了する面とがあり、前者は表面粗度が低く通常はシャイニー面(S面)と称されており、これと比較して後者は表面粗度が高く、通常はマット面(M面)と称されている。本発明において導電性金属箔として電解銅箔を使用する場合、電解銅箔のM面が接着剤層と対峙するように配置することが好ましい。なお、電解銅箔のM面はS面に比べて、表面が粗く形成されているのが一般的であるが、接着剤層との接着強度をさらに高くするために電解銅箔のM面にさらにこぶ付け処理等の粗化処理を施すこともできる。
【0082】
接着剤層15付き絶縁基板12と、導電性金属箔18、特に電解銅箔とは、電解銅箔のM面と接着剤層15とが対峙するように配置して加熱下に加圧することにより接着することができる。
【0083】
次に加熱し、接着剤層を完全に硬化させ導電性金属箔の接着強度を増加させる。
このようにして形成された積層体を用いて選択的にエッチングすることにより本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造することができるが、エッチングを行う前に、積層された導電性金属箔、特に電解銅箔の表面およびデバイスホールの裏面側から露出している電解銅箔の裏面をフラッシュエッチングして電解銅箔の表裏面を平坦化することが望ましい。
【0084】
このフラッシュエッチングには、過硫酸塩を主成分とするフラッシュエッチング液を使用することが好ましい。
【0085】
このようなフラッシュエッチングにより、貼着された電解銅箔の表面および露出している裏面は、エッチングされる。特にこのようにフラッシュエッチングすることにより、デバイスホール内に露出している電解銅箔の裏面(M面)が平坦化され、電解銅箔の状態で粗化処理された電解銅箔裏面平滑化され、電解銅箔のS面の表面状態と近い状態になる。
【0086】
こうしてフラッシュエッチングを行った後、図9(d-1)に示すように、デバイスホール14内に露出している電解銅箔の露出面(通常はフラッシュエッチングされたM面)の表面の裏レジスト層17を塗設するとともに、電解銅箔の表面(通常はフラッシュエッチングされたS面)に感光性樹脂層22を形成する。
【0087】
この裏レジスト層17を形成する樹脂および感光性樹脂層22(この場合、ポジ型液状フォトレジスト)を形成する樹脂を塗布した後、例えば50〜120℃程度の温度に加熱してキュアーさせる。この態様において、導電性金属箔18表面に塗設される樹脂は、感光性を有していることが必要である。特に裏レジスト層17は、電解銅箔22の表面をハーフエッチングすることにより嵌合凹部54を形成した後、剥離し、再度感光性樹脂を塗布して配線パターンを形成することから、電解銅箔22との密着性がよく、欠落しにくい樹脂を用いることが望ましく、この裏レジスト17はアクリル系の樹脂、フェノール系樹
脂等を用いて形成することができる。
【0088】
このようにして形成される感光性樹脂層22の平均厚さは、乾燥厚さで、通常は2〜30μm、好ましくは3〜25μmの範囲内にあり、裏レジスト層17の厚さは通常は3〜50μm、好ましくは6〜40μmの範囲内にある。
【0089】
図9(d-1)には、上記のような層構成を有する積層体の断面が示されている。そして、
図9(d-1)には、感光性樹脂層(第1の感光性樹脂層)22の上面には付番24で示され
る長方形帯条に描画したフォトマスクが露光装置内に載置されている。本発明において、長方形帯枠24は、図8に示すように、デバイスホール内の銅箔14の上に積層された導電性金属層上方に窪み部を形成するためのもので、電子部品50のバンプ電極52に対応した位置に輪郭状部(例えば100μm幅帯状長方形部)以外を黒色で描画したフォトマスクであり、この長方形型枠24を描画したフォトマスクを感光性樹脂層22の上方の露光装置に載置して、感光性樹脂層22を、通常の方法で露光して、型枠状描画パターン24部分の下部にある感光性樹脂層22を現像して除去して、図9(d-2)に示すように第1
の感光性樹脂の硬化体25からなるマスキング材を形成する。この第1の感光性樹脂層の
硬化体25には長方形型枠パターン24に対応する部分に感光性樹脂孔26が形成されている(図9(d-2)参照)。
【0090】
このようにして感光性樹脂孔26が形成された第1の感光性樹脂層の硬化体25をマスキング材として導電性金属箔18、特に電解銅箔をハーフエッチングすることにより、図9(d-3)に示すように、導電性金属箔18、特には電解銅箔18のデバイスホール14内
の電子部品50に形成されたバンプ電極52が当接する位置に、長方形枠体24の形態に対応した対応した形態の凹部からなる嵌合凹部54を形成することができる。
【0091】
なお、こうして導電性金属層18に嵌合凹部54を形成した後、第1の感光性樹脂層の硬化体25は、たとえば水酸化ナトリウム水溶液などの感光性樹脂剥離剤を用いることにより除去することができる。このときデバイスホール14の内側から導電性金属箔18を保護する裏レジスト層17も感光性樹脂剥離剤によって剥離される。
【0092】
こうして第1の感光性樹脂層の硬化体25を除去することにより、この積層体の表面に長方形型枠パターン24に沿ったハーフエッチング部を有する導電性金属箔の表面が得られる。
【0093】
本発明では、上記のようにして長方形型枠パターン24に沿ったハーフエッチング部を形成した導電性金属箔18の表面に、再び感光性樹脂層(第2の感光性樹脂層)を形成して、この第2の感光性樹脂層の上方に、所望の配線パターンが形成されたフォトマスクを載置して、通常の方法に従ってこの第2の感光性樹脂層を露光〜現像した後、第2の感光性樹脂の硬化体をマスキング材として導電性金属層18を選択的にエッチングして配線パターン31を形成する(図9(d-4)参照)。ここで形成される感光性樹脂層(第2の感光
性感光性樹脂層(図示なし))の例としては、ポジ型の液体フォトレジスト、貼着型のフォトレジストフィルムなどを挙げることができる。
【0094】
このような第2の感光性樹脂層の厚さは、乾燥厚さで、通常は2〜25μm、好ましく
は3〜15μmの範囲内にある。
また、ここで使用するエッチング剤としては、種々のエッチング剤を使用することができるが、このようなエッチング剤の例としては、塩化銅系エッチング剤系エッチング剤、あるいは、塩化鉄系エッチング剤などを挙げることができる。こうして形成された配線パターン31は、インナーリード20がデバイスホール14の縁部に片持ち状態で形成されたフライングリードになっており、このインナーリード20の先端部の上面には、前の工
程で形成した嵌合凹部54が上部に開口して形成されている。
【0095】
上記のようにして配線パターン31を形成した後、アルカリ金属水酸化物等のアルカリ成分を含有する剥離剤を用いることにより、第2の感光性樹脂層の硬化体(マスキング材)およびデバイスホール14内に形成された裏レジスト層17を同時に除去することができる。
【0096】
このようにして第2の感光性樹脂層の硬化体からなるマスキング材および裏レジスト層17を除去した後、形成された配線パターン31の表面にメッキ処理をするか、インナーリード20およびアウターリード60が露出するようにソルダーレジスト層30を形成する。
【0097】
ここで行われるメッキ処理としては、錫メッキ処理、ニッケルメッキ処理、金メッキ処理、ニッケル-金メッキ処理、半田メッキ処理、鉛フリー半田メッキ処理、銀メッキ処理
など種々のメッキ処理を挙げることができる。特に本発明では電子部品に形成されているバンプ電極が金バンプ電極である場合には、金と共晶物を形成してバンプ電極52とインナーリード20との間で確実な電気的接続を形成するために、錫メッキ層を形成することが好ましい。
【0098】
なお、図9においては、メッキ層は省略されている。
また、メッキ層は、単層である必要はなく、同一の金属からなる多層メッキ層であってもよいし、異なる金属が積層された異種金属多層メッキ層であってもよい。
【0099】
なお、上記の工程ではソルダーレジスト層30を形成せずにメッキ処理を施す態様を示したが、メッキ処理を行う前にソルダーレジスト層30を形成することもでき、この場合、マイクロエッチングを行った後、あるいは、マイクロエッチングを行う前にソルダーレジスト層を形成することができる。
【0100】
また、ソルダーレジスト層30を形成する場合、ソルダーレジスト層を形成する前に薄くメッキ処理を行った後ソルダーレジスト層を形成し、その後、ソルダーレジスト層から露出したインナーリード20およびアウターリード60の表面に再度メッキ層を形成してもよい。
【0101】
図9(d-5)に示すように、こうして形成された本発明のTABタイプの電子部品実装用
フィルムキャリアテープに、電子部品50を実装する。
電子部品50の実装に際しては、インナーリード20に形成された嵌合凹部54に電子部品50に形成されているバンプ電極52が嵌合するように、電子部品50と電子部品実装用フィルムキャリアテープ10との位置合わせを行い、電子部品の上下方向に加圧するとともに、デバイスホール14内に延設されたインナーリード20の下面から加熱手段をバンプ電極接合部分に当接して加熱することにより、インナーリード20の表面の錫メッキ層から供給される錫と、バンプ電極52から供給される金とを用いて金錫共晶物を形成させて、インナーリード20と電子部品との間にバンプ電極を介して電気的接続を確立する。
【0102】
このように電子部品50を実装した状態を拡大して図5に示すが、TABタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープの場合、図5に示すインナーリード20の下面にもメッキ層58が形成されている。
【0103】
上記のようにして製造される本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープにおけるインナーリード20は、導電性金属、好ましくは電解銅箔を選択的にエッチングすること
により形成されており、その表面はスズメッキ層58で覆われている。このインナーリード20の先端部55から長さAだけアウターリードよりに幅Cで表わされる嵌合凹部54が形成されている。この嵌合凹部54の表面にもメッキ層58が形成されている。嵌合凹部54の形成位置は、電子部品50に形成されたバンプ電極52の位置により決定されるが、インナーリード20の先端部55からの距離Aは、通常は10〜320μm、好ましくは20〜220μmの範囲内にある。また、嵌合凹部54の幅は、バンプ電極52によって決定されるが、バンプ電極の幅Bに対して嵌合凹部の幅Cが通常は0.625〜2.5倍の範囲内、好ましくは0.71〜1.66倍の範囲内に設定される。
【0104】
また、この嵌合凹部55の深さDは、インナーリード20の厚さT(100%)に対して10〜90%の範囲内、好ましくは25〜75%の範囲内にある。
上記のような関係を満たすことにより、ボンディングの際にインナーリードが変形して所謂「ICがこける」現象が発生しない。さらにバンプ電極52とインナーリード20との間で良好な電気的接続が確立される。
【0105】
また、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、図2に示すようなデバイスホール14の上方から電子部品50を実装する方法ではなく、図3に示すようにデバイスホール14内から、電子部品50を実装することもできる。
【0106】
図3に示す電子部品実装用フィルムキャリアテープでは、接着剤15付き絶縁基板12の表面に導電性金属箔18から形成された配線パターン31が形成されており、この配線パターン31の電子部品を実装するインナーリード20の端部近傍に、電子部品50に形成されたバンプ電極を嵌め込む嵌合凹部54が形成されている。図3に示す態様においては、電子部品50は、インナーリード20のデバイスホール14内に延設されたインナーリード20の下方からインナーリード20に当接されて電気的に接合されている。従って、インナーリード20に形成されている嵌合凹部54は、デバイスホール14方向に向かって開口して形成されている。
【0107】
このような形態の電子部品実装用フィルムキャリアテープの窪み形成後の裏側から見た平面図の例を図10に示す。ただし、図10において、斜線のエリアはハーフエッチングで形成された窪み部を示している。さらに、図10におけるY−Y断面図を図11(f−3)に示して、図3に示す態様の電子部品実装用フィルムキャリアテープをその製造工程に沿って説明する。
【0108】
図11に示すように本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいては、接着剤層15付き絶縁基板12にスプロケットホール13、デバイスホール14等の貫通孔が形成されている。特にこの電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいては、デバイスホール14が穿設されている点が、前述のCOFタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープと異なっているとともに、電子部品50の実装方向が上述のTABタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープとは異なる。
【0109】
このようにデバイスホールを有するTABタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいて、絶縁基板としては、前掲の樹脂フィルムを使用することができるが、同一の樹脂を用いるのであれば、上記COFタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープで使用する絶縁基板よりも厚い樹脂フィルムを用いるのが一般的である。例えば、絶縁基板として、ポリイミドフィルムを使用する場合には、このTABタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープでは、通常は12.5〜150μm、好ましくは25〜100μm、特に好ましくは50〜75μmの平均厚さを有するポリイミドフィルムを使用する。このような厚さのポリイミドフィルムは、充分な強度を有しているとともに、フィルムキャリアとして必要な程度の可撓性をも併せ持つことができる。
【0110】
このような絶縁基板12の一方の面には接着剤層15が形成されている。ここで使用される接着剤の例は、前掲の接着剤と同様に、ポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤を挙げることができ、これらの接着剤は、変性されていてもよい。例えば上記接着剤をエラストマー成分で変性することにより、導電性金属と絶縁基板との物理的特性の差による内部応力等をこの変性された接着剤層で吸収することができる。
【0111】
このような接着剤の平均厚さは、乾燥厚さで、通常は2〜25μm、好ましくは4〜20μmの範囲内にある。上記のような接着剤は、塗布可能な粘度になるように有機溶剤を加えて粘度調整を行い、ドクターブレード法、スピンコート法、ロールコーター法、転写法等、通常接着剤層を形成するのに採用されている方法を利用して塗布することができる。こうして接着剤を塗布した後、溶剤を除去することにより接着剤層15付き絶縁基板12を得ることができる。
【0112】
上記のようにして形成された接着剤層15付き絶縁基板12に、デバイスホール14、スプロケットホール13、さらに必要により折り曲げ用スリット(図示なし)等の貫通孔を穿設する。貫通孔の穿設には、レーザー光照射等を利用することもできるが、作業効率、コストの面などからパンチング法を採用するのが有利である。
【0113】
上記のようにして調製された接着剤層15付き絶縁基板12に導電性金属箔を貼着する。ここで使用することができる導電性金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔、銅合金箔、銀箔、金箔等を挙げることができるが、本発明では、電気的特性とコストとのバランスおよび加工性を考慮して銅箔を使用することが好ましい。本発明で使用することができる導電性金属箔の厚さは、形成しようとするフィルムキャリアテープの種類によって異なるが、通常は3〜70μm、好ましくは5〜35μmの範囲内にある。本発明で使用することができる銅箔には圧延銅箔と電解銅箔とがあり、本発明ではいずれの銅箔を使用することも可能である。しかしながら、本発明では電解銅箔を使用することにより、より精密な配線パターンを形成することができるとともに、絶縁基板との接着強度を高くすることができる。
【0114】
本発明において導電性金属箔として電解銅箔を使用する場合、電解銅箔には、前記と同様に、電解銅箔のM面が接着剤層と対面するように配置することが好ましい。なお、電解銅箔のM面はS面に比べて、表面が粗く形成されているが、接着剤層との接着強度をさらに高くするために電解銅箔のM面にさらにこぶ付け処理等の粗化処理を施すこともできる。
【0115】
接着剤層15付き絶縁基板12と、導電性金属箔18、特に電解銅箔とは、電解銅箔のM面と接着剤層15とが対峙するように配置して加熱下に加圧することにより接着することができる。
【0116】
このようにして形成された積層体を用いて選択的にエッチングすることにより本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造することができるが、エッチングを行う前に、積層された導電性金属箔、特に電解銅箔の表面およびデバイスホールの裏面側から露出している電解銅箔の裏面をフラッシュエッチングして電解銅箔の表裏面を平坦化することが望ましい。
【0117】
このフラッシュエッチングには、過硫酸塩を主成分とするフラッシュエッチング液を使用することが好ましい。
【0118】
このようなフラッシュエッチングにより、貼着された電解銅箔の表面および露出している裏面は、それぞれ、エッチングされる。特にこのようにフラッシュエッチングすることにより、デバイスホール内に露出している電解銅箔の裏面(M面)が平坦化され、電解銅箔の状態で粗化処理された電解銅箔裏面平滑化され、電解銅箔のS面の表面状態と近い状態になる。
【0119】
こうしてフラッシュエッチングを行った後、図11(f-1)に示すように、デバイスホール14内に感光性樹脂層(ここでは液体ポジ型レジスト)22を形成し、バンプ電極当接位置上方に長方形型枠以外を黒で描画したフォトマスク配置して、露光後、現像してデバイス内に形成された感光性樹脂層22のバンプ電極当接位置に感光性樹脂孔26を形成する。
【0120】
他方、フラッシュエッチングされた導電性金属箔の表面には保護レジスト層17-aが形成されており、このようにデバイスホール14内に形成された感光性樹脂孔26部分をハーフエッチングする際には、導電性金属箔18の表面は、エッチング液によって侵されることはない。このような保護レジスト層17-aは耐薬品性のよいアクリル系の樹脂、ドライフィルムレジスト、液体フォトレジスト等を用いて形成することができる。
【0121】
このようにして形成されるデバイスホール内に形成される感光性樹脂層22の平均厚さは、乾燥厚さで、通常は3〜50μm、好ましくは6〜40μmの範囲内にあり、導電性金属箔18の表面に形成される保護レジスト層17−aの厚さは通常は2〜30μm、好ましくは3〜25μmの範囲内にある。
【0122】
図11(f-2)に示すように、上記のようにして導電性金属箔表面18の表面に保護レジ
スト層17-aを形成するとともにデバイスホール14内に感光性樹脂層22を形成し、さらにこの感光性樹脂層22を露光・現像して感光性樹脂孔26を形成するとともに、感光性樹脂層20を感光性樹脂硬化体とした後、エッチングにより導電性金属箔18を、デバイスホール14側からハーフエッチングする。
【0123】
このようにしてデバイスホール14内の感光性樹脂孔26が形成された感光性樹脂層の硬化体25をマスキング材として導電性金属箔18、特に電解銅箔をデバイスホール側からハーフエッチングすることにより、導電性金属箔18、特には電解銅箔18の電子部品50に形成されたバンプ電極52が当接する位置に、長方形枠体24の形態に対応した形態の凹部からなる嵌合凹部54を下方向に開口して形成することができる。
【0124】
なお、こうして導電性金属層18に嵌合凹部54を形成した後、デバイスホール内に形成された感光性樹脂層の硬化体25は、たとえばアルカリ金属水酸化物の水溶液などの剥離剤を用いることにより除去することができる。そして、上記のような剥離剤を用いることにより導電性金属箔18表面に形成された保護レジスト層17-aも同時に剥離することができる(図11f-3参照)。
【0125】
こうして保護レジスト層17-aおよびデバイスホール内の感光性樹脂層の硬化体25を除去した後、新たにデバイスホール内に裏レジスト層を形成して配線パターンを形成するためのエッチング液からデバイスホール内の導電性金属箔裏面を保護するとともに、導電性金属層、特には電解銅箔の表面に感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層を所望のパターンに露光現像することにより、所望の形状に現像された導電性金属箔18表面に感光性樹脂の硬化体を形成することができる。本発明では、この感光性樹脂の硬化体をマスキング材として導電性金属箔を選択的にエッチングすることにより、図11(f-4)に示すよ
うな配線パターン31を形成することができる。
【0126】
ここで形成される感光性樹脂層の厚さは、乾燥厚さで、通常は2〜30μm、好ましく
は3〜25μmの範囲内にあり、デバイスホール14内に形成される保護レジスト層の厚
さは、乾燥厚さで、通常は3〜50μm、好ましくは6〜40μmの範囲内にある。
【0127】
また、ここで使用するエッチング剤としては、種々のエッチング剤を使用することができるが、このようなエッチング剤の例としては、塩化銅と塩酸とを含む塩化銅系エッチング剤、塩化鉄系エッチング剤などを挙げることができる。こうして形成された配線パターン31は、インナーリード20がデバイスホール14の縁部に片持ち状態で形成されたフライングリードになっており、このインナーリード20の先端部には、前の工程で形成した下方向に開口した嵌合凹部54が形成されている。
【0128】
上記のようにして配線パターン31を形成した後、導電性金属箔18表面に形成された感光性樹脂の硬化体からなるマスキング材およびデバイスホール14内に形成された保護レジスト層は、アルカリ金属水酸化物等のアルカリ成分を含有する剥離剤を用いることにより同時に除去することができる。
【0129】
このようにして感光性樹脂層の硬化体からなるマスキング材および保護レジスト層17を除去した後、形成された配線パターン31の表面にメッキ処理をするか、インナーリード20およびアウターリード60が露出するようにソルダーレジスト層30を形成する。
【0130】
ここで行われるメッキ処理としては、錫メッキ処理、ニッケルメッキ処理、金メッキ処理、ニッケル-金メッキ処理、半田処理、鉛フリー半田メッキ処理、銀メッキ処理など種
々のメッキ処理を挙げることができる。特に本発明では電子部品に形成されているバンプ電極が金バンプ電極である場合には、金と共晶物を形成してバンプ電極52とインナーリード20との間で確実な電気的接続を形成するために、錫メッキ層を形成することが好ましい。
【0131】
なお、図11においては、メッキ層は省略されている。
また、メッキ層は、単層である必要はなく、同一の金属からなる多層メッキ層であってもよいし、異なる金属が積層された異種金属多層メッキ層であってもよい。
【0132】
なお、上記はソルダーレジスト層30を形成せずにメッキ処理を施す態様を示したが、メッキ処理を行う前にソルダーレジスト層30を形成することもでき、この場合、マイクロエッチングを行った後、あるいは、マイクロエッチングを行う前にソルダーレジスト層を形成することができる。
【0133】
また、ソルダーレジスト層30を形成する場合、ソルダーレジスト層を形成する前に薄くメッキ処理を行った後ソルダーレジスト層を形成し、その後、ソルダーレジスト層から露出したインナーリード20およびアウターリード60の表面に再度メッキ層を形成してもよい。
【0134】
図11(f-5)に示すように、こうして形成された本発明のTABタイプの電子部品実装
用フィルムキャリアテープに、電子部品50を実装する。
電子部品50の実装に際しては、インナーリード20に形成された嵌合凹部54に電子部品50に形成されているバンプ電極52が嵌合するように、電子部品50をデバイスホール14下方向から配置して、電子部品50と電子部品実装用フィルムキャリアテープ10との位置合わせを行い、電子部品を上下方向に加圧するとともに、デバイスホール14内に延設されたインナーリード20の上面から加熱手段をバンプ電極接合部分に当接して加熱することにより、インナーリード20の表面の錫メッキ層から供給される錫と、バンプ電極52から供給される金とを用いて金錫共晶物を形成させて、インナーリード20と
電子部品との間にバンプ電極を介して電気的接続を確立する。
【0135】
上記のようにして電子部品を実装した際の状態は、図5に示す断面図において配線パターンのインナーリード20と電子部品50との位置関係を逆さまにしたのと同様である。
上記のように本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープは、実装する電子部品に形成されたバンプが嵌り込む嵌合凹部がインナーリードの先端近傍に形成されているので、実装される電子部品のバンプ電極がこの嵌合凹部に挿入された状態で電気的接続が形成される。このために本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープに電子部品を実装する際にインナーリードの倒れ込み、横滑りなどが発生しにくく、即ち、電子部品の実装時に「ICがこける」現象が極めて生じにくい。さらに、バンプ電極の実装位置を、嵌合凹部を形成することにより明確に特定することができるので、バンプ電極とインナーリードとの間に極めて高い電気的接合状態を確立することができる。
【0136】
さらに、上記のようにCOFタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいては、インナーリードに嵌合凹部を形成する際にアウターリードの上面を平坦化することができ、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープと液晶素子(LCD)の透明電極などとの異方導電接着に寄与する導電性粒子の数が大幅に増加するので、外部素子などとの間の電気的接続信頼性も大幅に向上する。
【0137】
従って、このようなフィルムキャリアに半導体を実装した本発明の半導体装置は、たいへん優れた電気的接続安定性を有している。
なお、上記の説明は、便宜上、COFタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープおよびTABタイプの電子部品実装用フィルムキャリアテープに分けて説明したが、これらの説明がCOF(Chip On Film)テープ,TAB(Tape Automated Bonding)テープに限
定されるものではなく、μ−BGA,CSP,PCB、FPC等に適用することができることは勿論である。
【実施例】
【0138】
次に本発明の実施例および比較例を示して本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープ、その製造方法、半導体装置について具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0139】
〔実施例1〕
<二層Semi Additive法によるCOFの製造>
厚さ35μm厚さのポリイミドフィルムと0.2μm厚の銅層とからなるNi−Crシード層を有するメタライジング法二層CCL基板を用意した。
【0140】
この二層CCLを48mmにスリットした後、このテープを硫酸で酸洗し、続いて酸洗されたCu面に15μmの厚さのネガタイプDry Filmらなる感光性樹脂フィルムをラミネートした。
【0141】
インナーリードピッチ20μm(リード長さ800μmが4方向に配置)を有する所定の回路を描画したフォトマスク(図13参照)を用い、露光装置により、上記回路パターンを感光性樹脂フィルムに露光してイメージングした後、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像して、15μm高さのフォトレジスト硬化体回路を形成した。
【0142】
次いでメッキ液添加剤を添加した硫酸銅メッキ液を用いて25℃においてDk=2.5A/dm2の条件で20分間メッキを行い厚さ11μmのCuメッキ回路を形成した。
【0143】
その後、50℃のアミン系アルカリ溶液で10秒間処理してフォトレジスト硬化体回路
パターンを剥離した後、過硫酸塩を主成分とするソフトエッチング液を用いて処理して銅スパッタリング層を除去しNi-Cr層を露出させた。
【0144】
次いで塩酸溶液で処理し、引き続いて硫酸と塩酸との混合溶液で処理してNi-Cr層
を溶解して、ポリイミド層を露出させ、ポリイミドからなる絶縁基板表面に所定のパターンを有するフィルムキャリアテープを得た。
【0145】
こうして得られたフィルムキャリアテープのインナーリードの線幅はボトム部で11.5μm、トップ部で12.5μm、導体の高さは9.5μmであった。
こうして得られたフィルムキャリアテープを、Cu回路形成面全面に、厚さ25μmのドライフィルム(Dry Film)レジストを再びラミネートし、次いで幅100μmの長方形帯
枠を黒で描画したフォトマスクを用いて紫外線により露光しイメージングした。
【0146】
次に1%炭酸ナトリウム溶液を用いて30℃で50秒間かけて現像しインナーリードの上に長方形で幅120μmの銅露出予定部(感光性樹脂孔)を形成した。
次いでこの基板を塩化銅系エッチング液を用いてハーフエッチングして、インナーリードのバンプ当接予定部を上面から4μmの深さまでエッチングして嵌合凹部を形成した。
【0147】
上記のようにしてハーフエッチングを終了した後、50℃のアミン系アルカリ溶液で10秒間処理してフォトレジスト硬化体からなるマスキング材を剥離し、ソルダーレジストインキは印刷せずに、過硫酸塩を主成分とするマイクロエッチング液を用いて処理して銅面をフラッシュエッチングした後、配線パターン面に、無電解スズメッキ液を用いて無電解錫メッキを行って、形成された配線パターンの表面に厚さ0.5μmの錫メッキ層を形
成した。
【0148】
その後加熱した。
こうして得られたインナーリードには深さ3μmの嵌合凹部が形成されており、この嵌
合凹部の底面の長さは105μm、嵌合凹部の幅は、インナーリードの線幅と同様の9μmであった。なお、嵌合凹部形成中にインナーリードの側面がエッチングされるので、線幅は処理前に比べて3μm減少していた。
【0149】
一方、嵌合凹部形成しなかったインナーリード部分の導体幅は9.5μm、ボトム線幅
は9.5μm、トップ線幅は12μmであった。
これとは別に、13μm×65μm×15μm高さであるバンプ電極678個を有する電
子部品(12mm×1mm×0.65mm厚さ)を用意して、このバンプ電極を、上記COFのインナーリード(678本)の嵌合凹部に挿入してACFボンダーで450℃の温度で5秒間加熱した。このとき3kg/cm2の圧力を加えたが、リードの変形はなく、所謂「ICがこける」現象は認められなかった。
【0150】
このときのボンディングエリアの導体厚さ/ボトム線幅の値は6.5/9=0.72で
あった。
なお、上記のようにして形成された配線パターンのアウターリードの断面はかまぼこ型であったので、嵌合凹部を形成する際に、アウターリードの先端部分のフォトレジストを除去して、アウターリードの先端部を同時にハーフエッチングしたところ、アウターリードの先端部が平坦になり、LCDの透明電極とACF接続をする際にアウターリードと透明電極との間に介在して電気的接続を形成する導電性粒子の個数が3倍に増加した。
【0151】
〔比較例1〕
<従来法二層Semi Additive法COF>
実施例1と同様に35μm厚さのポリイミドフィルムと0.2μm厚の銅層からなる二
層CCL基板を48mm幅にスリットした後、このテープを硫酸で酸洗し、続いてCu面に15μm厚のネガタイプDry Filmレジストをラミネートし、インナーリードピッチ20μm(リード長さ800μmを4方向に配置)を有する所定の回路を描画したフォトマスクを用
いて紫外線で露光してイメージングした後、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像し、15μm高さのフォトレジスト回路を形成した。
【0152】
次いで、硫酸銅メッキ液を用いて11μm高さのCuメッキ回路を形成した。
【0153】
その後、アミン系アルカリ溶液で処理して、レジストを剥離した後、過硫酸塩を主成分とするソフトエッチング液を用いて常温で1分間処理して銅スパッタ層をエッチング除去してNi-Cr層を露出させた。
【0154】
次いで、塩酸溶液で処理し、水洗せずに硫酸と塩酸と混合水溶液で処理して、ポリイミド層を露出させ、所定の配線パターンを形成した。
【0155】
レジストインキは印刷せずに過硫酸塩を主成分とするマイクロエッチング液を用いて30℃で30秒間処理し、銅面をフラッシュエッチングした後、配線パターン全面に、無電解錫メッキ液を用いて無電解錫メッキを行って厚さ0.5μmの錫メッキ層を形成した。
【0156】
その後、加熱した。
こうして得られたインナーリードは、ボトム部線幅が9.5μm、トップ部線幅が11
.5μmであり、厚さが9.5μmであり、当然のことながらインナーリードには嵌合凹部は形成されていない。
【0157】
これとは別に、13μm×65μm×15μm高さであるバンプ電極678個を有する電
子部品(12mm×1mm×0.65mm厚さ)を用意して、このバンプ電極を、上記COFのインナーリードの上に置きACFボンダーで450℃の温度で5秒間加熱した。このとき3kg/cm2の圧力を加えたところ、リード10数本にリードの傾きあるいは浮きが発生し、所謂「ICがこける」現象が認められた。
このときのボンディングエリアの導体厚さ/ボトム線幅の値は9.5/9.5=1であ
った。
【0158】
〔実施例2〕
<三層TABタイプの表面に内嵌合凹部を有するフィルムキャリアの製造>
4×8mmのデバイスホールをパンチングで形成した35mm幅接着剤付きポリイミドフィルム(接着剤;12μm厚、ポリイミドフィルム厚;50μm)に、厚さ12μmの電解銅箔)をラミネート後、キュアーして三層積層基板を得た。
【0159】
この三層積層基板をマイクロエッチング液を用いて片側0.5μmずつフラッシュエッ
チングをし、デバイスホール内に露出している裏面側銅箔面(M面)を平滑にした。
【0160】
次に三層積層基板の表面にある電解銅箔の表面にポジ型液体フォトレジストを4μm厚
さに塗布し、トンネル炉で連続乾燥した。
【0161】
その後電子部品に形成されているバンプ電極形成位置に対応した寸法形状部(100μm幅帯状長方形)以外を黒で描画したフォトマスクを用いて360mJ/cm2のエネルギーの
紫外線を用いて紫外線露光した。
【0162】
露光後、KOH水溶液で現像して、露光部分を溶解して100μm幅の帯状長方形に露光した銅面を得た。
なお、現像後、デバイスホール内に露出している銅箔裏面をエッチング液から保護するために、デバイスホール内銅面にアクリル樹脂をロールコーターでアクリル樹脂を塗布して加熱して硬化させて保護層を形成した。
【0163】
次いで、塩化銅系エッチング液を用いてエッチングしてデバイスホール側から電解銅箔表面を6μmの深さにハーフエッチングした。
【0164】
その後、NaOH水溶液を用いて、フォトレジストおよびアクリル樹脂を剥離した。
次にポジ型液型フォトレジストを9μmの厚さにロールコーターを用いて電解銅箔の表
面に塗布し、トンネル炉で連続乾燥した。
【0165】
次に、インナーリードピッチ30μm(1000μm長さで四方向に配置)を有するパターンを描画したフォトマスク(図13参照)を用いて露光した。
【0166】
露光後、現像液を用いて露光・現像して露光部分を溶解してレジスト回路を形成した。
現像後、裏面のデバイスホール内に露出している銅箔をエッチング剤から保護する目的でデバイスホール内にアクリル樹脂をロールコーターで20〜30μmの厚さに塗布して
加熱して硬化させた。
【0167】
次いで、塩化銅系エッチング液を用いて60秒間スプレーエッチングして所定の銅回路を形成した。
【0168】
エッチング後、レジスト剥離液により常温でフォトレジスト及びアクリル樹脂を剥離した。
次いで、レジストインキは印刷せず、過硫酸塩を主成分とするマクロエッチングを用いて処理して銅面をフラッシュエッチングした後、回路全面に無電解錫メッキ液を、用いて無電解錫メッキを行って、平均膜厚0.5μmの錫メッキ層を形成した。
【0169】
そのあと加熱処理した。
得られたインナーリードの嵌合凹部の深さは6μmであり、嵌合凹部の底面部長さは9
5μm、嵌合凹部の幅はインナーリードのTOP線幅と同じ12μmであった。
【0170】
〔実施例3〕
<三層TABタイプデバイスホールに内嵌合凹部を有するフィルムキャリアの製造>
4×8mmのデバイスホールをパンチングにより形成した幅35μmの接着剤付きポリイ
ミドフィルム(ポリイミド厚さ:50μm、接着剤厚さ:12μm)に、厚さ12μmの電解銅箔をラミネートした後、キュアーして三層積層基板を得た。
【0171】
この三層積層基板をマイクロエッチング液を用いて電解銅箔表面およびデバイスホールから露出した電解銅箔面をそれぞれ0.5μmづつフラッシュエッチングを行って電解銅
箔、特にデバイスホール内に露出している電解銅箔のM面を平滑化した。
【0172】
次いで、デバイスホール内にポジ型液体フォトレジストを9μmの厚さにロールコータ
ーを用いて塗布し、トンネル炉で連続乾燥した。
【0173】
その後、電子部品のバンプ電極形成位置に対応した寸法形状(100μm幅帯い長方形
)以外を黒で描画したフォトマスクを用いて、デバイスホール内の感光性樹脂層を、波長4436nmのg線単色紫外線を用いて、紫外線露光した。
【0174】
露光後、現像液を用いて現像し、露光部分を溶解し、100μm幅の帯状長方形に銅面
を露出させた。
他方、三層積層基板の表面に露出している電解銅箔の表面には、この電解銅箔をエッチング液から保護するために、アクリル系樹脂をロールコーターで20〜30μmの厚さに
塗布して、加熱して硬化させた。
【0175】
次いで、塩化銅系エッチング液を用いてエッチングしてデバイスホール側から電解銅箔裏面を6μmの深さにハーフエッチングした。
【0176】
上記のようにしてハーフエッチングを行った後、デバイスホール内のフォトレジスト硬化体およびアクリル系樹脂をレジスト剥離液を用いて常温で60秒間処理して剥離した。
【0177】
続いて、銅面を10%硫酸溶液で酸洗した後、三層積層基板の表面にある電解銅箔の表面にポジ型液体フォトレジストを4μmの厚さに塗布しトンネル炉で乾燥させた。
【0178】
次にインナーリードピッチ30μm(1000μm長さで4方向に配置)で参照引き回し
ピッチ25μmを有するパターンを描画したフォトマスクを用いて露光装置により、紫外
線露光した。
【0179】
こうして露光した後、KOH溶液で現像してレジストパターンを形成した。次いで、デバ
イスホールの部分の銅箔を、裏面側からアクリル樹脂をロールコーターで25〜30μm
の厚さに塗布して80℃で1時間加熱して硬化させ保護した。
【0180】
次に40℃の塩化銅系エッチング液を用いてエッチングして所定の銅配線パターンを形成した。
【0181】
その後、NaOH水溶液により、アクリル樹脂とフォトレジスト硬化体とを剥離した後、レジストインキは印刷せずに過硫酸塩を主成分とするマイクロエッチング液を用いて30℃で30分間処理して、銅面を片側0.5μmづつフラッシュエッチングした後、回路全体
に無電解錫メッキ液を用いて無電解錫メッキを行い、平均厚さ0.5μmの錫メッキ層を
形成した。
【0182】
その後加熱した。
得られた嵌合凹部の深さは6μmであり、嵌合凹部の長さは105μmであり、インナーリード裏面側嵌合凹部の幅は線幅と同じ13μmであった。なお、インナーリード厚さは
9μmであった。
【0183】
これとは別に、13μm×65μm×15μm高さであるバンプ電極678個を有する電
子部品を用意して、このバンプ電極を、上記COFのインナーリード(678本)の嵌合凹部に挿入してACFボンダーで450℃の温度で5秒間加熱した。このとき3kg/cm2の圧力を加えたが、リードの変形はなく、所謂「ICがこける」現象は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープのインナーリードには、実装しようとする電子部品に形成されたバンプ電極を挿入可能な嵌合凹部が形成されているので、電子部品を実装する際の圧力などによって、キャリアテープのインナーリードが傾斜したり、変形することに起因する所謂「ICがこける」現象が生じにくい。従って、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープを使用することにより、非常に高い電気的接続性を有する半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】図1は、インナーリードに勘合凹部を設けたCOFに、電子部品のバンプ電極を実装した状態の例を示す断面図である。
【図2】図2は、デバイスホールに形成されたTABテープのフライングリードに嵌合凹部をTABテープの上面方向から電子部品を実装した状態の例を示す断面図である。
【図3】図3は、デバイスホールに形成されたTABテープのフライングリードに嵌合凹部をTABテープの上面方向から電子部品を実装した状態の例を示す断面図である。
【図4−1】図4-1は、図1に示した電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造する工程の例を示す断面図である。
【図4−2】図4-2は、図1に示した電子部品実装用フィルムキャリアテープを製造する工程の例を示す断面図である。
【図5】図5は、図4に示す電子部品実装用フィルムキャリアテープのインナーリードの先端部分を拡大して示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の電子部品実装用フィルムキャリアテープにおけるアウターリード表面を平滑にする方法の例を示す断面図である。
【図7】図7は、セミアディティブ法で製造した配線パターンの断面図の例である。
【図8】図8は、本発明のデバイスホールを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープの平面を模式的に示す平面図である。
【図9】図9は、図8におけるX−X断面図を用いてこの電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造工程の例を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明のデバイスホールを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープの裏面からみた平面を模式的に示す平面図である。
【図11】図11は、図8におけるY−Y断面図を用いてこの電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造工程の例を示す断面図である。なお、図11(f−1)において、便宜上露光におけるフォトマスクと基材位置は上下逆方向に示している。
【図12】図12は、従来のフィルムキャリアに電子部品を実装したときに生ずる「ICがこける」状態の例を示す図である。
【図13】図13は、液状ポジ型フォトレジストを使用する場合の露光用フォトマスクの例を示す図である
【符号の説明】
【0186】
10・・・電子部品実装用フィルムキャリアテープ
12・・・絶縁基板(ポリイミドフィルム)
13・・・スプロケットホール
14・・・デバイスホール
15・・・接着剤層
17・・・裏レジスト層
17-a・・・保護レジスト層
18・・・導電性金属箔
20・・・インナーリード
22・・・感光性樹脂層
24・・・長方形帯枠
25・・・感光性樹脂の硬化体(マスキング材)
26・・・感光性樹脂孔
26a・・・感光性除去部
27・・・シード層
28・・・導電性金属層
29・・・感光性樹脂層(感光性樹脂層)
30・・・ソルダーレジスト層
31・・・配線パターン
31a・・・平坦面
32・・・フォトマスク
33・・・光源
35・・・感光性樹脂層
50・・・電子部品(IC)
52・・・バンプ電極
54・・・嵌合凹部
55・・・インナーリードの先端部
60・・・アウターリード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の少なくとも一方の表面に、外部からの電気信号を入力する入力側アウターリード、配線パターンを介して電子部品に形成されたバンプ電極を介して電子部品に接続して該入力側アウターリードからの電気信号を電子部品に入力するための入力側インナーリード、該電子部品に形成されたバンプ電極により電子部品に接続して電子部品からの出力信号を取り出すための出力側インナーリード、および、該出力側インナーリードからの信号を配線パターンを介して出力するための出力側アウターリードを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいて、
該電子部品に形成されているバンプ電極と接合する部分の入力側インナーリードおよび/または出力側インナーリードに、該バンプ電極が嵌合して接続する嵌合凹部が形成されていることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項2】
上記バンプ電極が嵌合して接続する嵌合凹部の深さ(D)が、2.5〜10μmの範囲内
にあり、かつ該インナーリードの厚さ(T)に対する嵌合凹部の深さ(D)の比率〔(D)/(T)〕が、0.1〜0.9の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項に記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項3】
少なくとも入力側インナーリードおよび出力側インナーリードの表面に、スズメッキ層が形成されていることを特徴とする請求項第1項記載の電子部品実装用フィルムキャリア
テープ。
【請求項4】
上記バンプ電極が嵌合して接続する嵌合凹部が形成されている入力側インナーリードおよび出力側インナーリードの下面に絶縁基板が存在することを特徴とする請求項第1項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項5】
上記電子部品実装用フィルムキャリアテープに電子部品を実装するためのデバイスホールが形成されており、バンプ電極が嵌合して接続する嵌合凹部が形成されている入力側インナーリードおよび出力側インナーリードが、該デバイスホールの縁からデバイスホール内に片持ち状態で形成されたフライングリードであることを特徴とする請求項第1項記載
の電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項6】
上記入力側インナーリードおよび出力側インナーリードが、デバイスホールが形成された接着剤付き絶縁基板に、平均厚さが5〜35μmの電解銅箔をラミネートした三層積層
基材の電解銅箔を選択的にエッチングすることにより形成されてなることを特徴とする請求項第5項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項7】
上記電子部品に形成されたバンプ電極の幅(B)と嵌合凹部の幅(C)との比率(B)/
(C)が、1.6〜0.4の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項記載の電子部品
実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項8】
上記嵌合凹部先端が、インナーリードの先端から10〜320μmアウターリード寄り
に形成されていることを特徴とする請求項第1項記載の電子部品実装用フィルムキャリア
テープ。
【請求項9】
上記フィルムキャリアのアウターリードの表面がハーフエッチングにより平坦化されていることを特徴とする請求項第1項または第4項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項10】
上記電子部品実装用フィルムキャリアテープから切り出されたフィルムキャリアのイン
ナーリードの先端部分に形成された嵌合凹部に、電子部品のバンプ電極が嵌合されて電気的に接続されてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
絶縁基板の表面に配置された導電性金属箔層を選択的にエッチングして配線パターンを形成した後、該配線パターンを含む絶縁基板全面に感光性樹脂層を形成し、該導電性基板の嵌合凹部形成予定位置にある感光性樹脂を露光〜現像して除去して導電性金属層の表面を感光性樹脂層から露出させ、該露出した導電性金属箔層をハーフエッチングして嵌合凹部を形成することを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項12】
上記嵌合凹部形成予定位置にある感光性樹脂を露光〜現像して除去する際に、アウターリードの表面にある感光性樹脂も露光〜現像して除去して導電性金属層金属の表面を感光性樹脂層から露出させ、該露出した導電性金属箔層をハーフエッチングして嵌合凹部を形成するとともに、出力側アウターリードの表面をハーフエッチングすることを特徴とする請求項第11項記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項13】
絶縁基板の表面に配置された導電性金属箔層の表面に感光性樹脂層を形成して、該導電性基板の嵌合凹部形成予定位置にある感光性樹脂を露光〜現像して除去して導電性金属箔層の表面を感光性樹脂層から露出させ、該露出した導電性金属箔層をハーフエッチングして嵌合凹部を形成した後、新たに感光性樹脂を塗布して該感光性樹脂層を露光〜現像し所望の配線パターンを形成し、該感光性樹脂からなる配線パターンをマスキング材として導電性金属箔層を選択的にエッチングして導電性金属からなる配線パターンを形成することを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−277987(P2009−277987A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129596(P2008−129596)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】