説明

電子部品実装部およびリードフレームならびにリードフレームを備えた電子デバイス、またこれらの製造方法

【課題】ダイボンド工程やワイヤーボンディング工程において、リードフレームのダイパッドへ薄膜チップを装着する時の圧力やワイヤーのボンディン圧によって、ダイパッド部が変形してしまうことがなく、モールド工程において、リードフレームとモールド樹脂との間でズレを生ずることのない電子部品実装部およびリードフレームならびにリードフレームを備えた電子デバイス、またこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品を実装するための電子部品実装部に、前記電子部品実装部を支持するための支持突設部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば流体識別を行うためのセンサー、半導体装置などの電子デバイスを実装するための電子部品実装部およびリードフレームならびにリードフレームを備えた電子デバイスと、これらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などの炭化水素系液体、エタノール、メタノールなどのアルコール系液体、尿素水溶液液体、気体、粉粒体などの流体について、流体の熱的性質を利用して、被識別流体について、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体レベル識別などを行う流体識別装置に用いられる熱式センサーが、特許文献1〜3などに開示されている。
【0003】
これらの熱式センサー100は、図21または図22に示したように、モールド樹脂102により構成されるセンサー本体104を備え、このセンサー本体104は、略楕円形状のフランジ部106と、このフランジ部106の裏面に突設する裏面突設部108と、フランジ部106の表面に突設する検知部110とを備えている。
【0004】
そして、この検知部110は、一定間隔離間して配置された矩形平板形状の一対の流体識別検知部112と、流体温度検知部114とから構成されている。これらの流体識別検知部112と流体温度検知部114とは、基本的には同様な構造となっており、発熱体と感温体を備え、流体温度検知部114では、発熱体を作用させずに感温体のみを作用させるようになっている。
【0005】
また、これらの検知部112,114では、モールド樹脂102が欠落した開口部116に、その一部が露出するようにセンサー本体104内に配置された熱伝達部材として機能する金属製のダイパッド部118を備えている。そして、このダイパッド部118の開口部116と反対側の実装面には、薄膜チップ122が実装されている。
【0006】
またセンサー本体104内には、これらのダイパッド部118と対峙するように、ダイパッド部118と一定間隔離間して配置され、相互に一定間隔離間するように、複数のインナーリード124が配置されている。これらのインナーリード124から、裏面突設部108方向に外部接続端子部126が延設されており、外部接続端子部126の先端部分にアウターリード128が形成されている。
【0007】
そして、薄膜チップ122の電極とインナーリード124の電極124aとの間は、Auからなるボンディングワイヤー130によって電気的に接続されている。
このような熱式センサー100は、通電によって発熱体を発熱させ、この発熱により感温体を加熱し、発熱体から感温体への熱伝達に対して被識別流体により熱的影響を与え、感温体の電気抵抗に対応する電気的出力に基づいて、被識別流体について上記のような流体識別を行うように構成されている。
【0008】
ところで、このような熱式センサー100は、図23に示したような製造工程を経て製造されている。
すなわち、上記のダイパッド部118と、インナーリード124、外部接続端子部126、アウターリード128は、製造工程においてリードフレーム(図示せず)として、銅、炭素鋼、アルミニウム合金、アルミニウムなどを用いて一体的に形成されている。
【0009】
そして、このように一体的に形成されたリードフレームに、まずステップS101のフレームメッキ工程において、リードフレーム全面に、例えば、貴金属系のPdメッキ、Auメッキ、ハンダ系のNiメッキ、Snメッキ、Sn−Pbメッキ、Sn−Biメッキ、Agメッキ、Ag−Cuメッキ、Inメッキなどを施している。なお、この場合、メッキの種類は、特に限定されるものではなく、貴金属とはんだ付けの際に使用するメッキ金属であれば良い。
【0010】
ステップS101のフレームメッキ工程において、リードフレーム全面にメッキ処理を施した後、ステップS102のダイボンド工程において、接着剤などの接合材101を介して、ダイパッド部118に薄膜チップ122を装着(ボンディング)している。
【0011】
次に、ステップS103のワイヤーボンディング工程において、薄膜チップ122の電極とインナーリード124の電極124aとの間を、Auからなるボンディングワイヤー130によって電気的に接続する。
【0012】
そして、この状態でリードフレームを金型内に配置し、ステップS104のモールド工程において、例えばエポキシ樹脂を射出することによって、リードフレームの所定部分がモールド樹脂102で被覆されたセンサー本体104を形成する。
【0013】
その後、ステップS105のダイバーカット工程において、リードフレームを所定の大きさに分離した後、ステップS106のモールドバリ取り工程において、酸またはアルカリ溶液に浸漬することによって、センサー本体104のモールド樹脂102の余分な樹脂部分を除去する。
【0014】
次に、ステップS107の外装メッキ(端子部メッキ)工程において、外部接続端子部126の先端部分のアウターリード128に、外部のリード線などをはんだ付けする際のはんだ性を向上するために、例えば、貴金属系のPdメッキ、Auメッキ、ハンダ系のNiメッキ、Snメッキ、Sn−Pbメッキ、Sn−Biメッキ、Agメッキ、Ag−Cuメッキ、Inメッキなどを施す。なお、この場合、メッキの種類は、特に限定されるものではなく、貴金属とはんだ付けの際に使用するメッキ金属であれば良い。
【0015】
そして、ステップS108のマーキング工程において、製品運用管理のために識別可能箇所にマーキングを施した後、ステップS109のモールド切り離し工程において、リードフレームの不要部分を熱式センサー100から切断して除去し、アウターリード128の形状を整えた後、完成品である熱式センサー100を得るようになっている。
【特許文献1】特開平11−153561号公報
【特許文献2】特開2006−29956号公報
【特許文献3】特開2005−337969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、このような従来の熱式センサーでは、ダイボンド工程においてリードフレームのダイパッド部へ薄膜チップを装着する際、ダイパッド部の形状によっては、この装着時の圧力でダイパッド部が変形してしまう場合があった。
【0017】
さらに、ワイヤーボンディング工程においても、ボンディング圧でダイパッド部が変形してしまう場合があった。
また、モールド工程においては、モールド樹脂の熱収縮によって、リードフレームとモールド樹脂との間でズレを生じ、位置決めが確実になされない場合があった。このように、リードフレームとモールド樹脂との間でズレを生ずると、センサーとしての品質が低下し、正確な流体識別を行えないことになる。
【0018】
本発明は、このような現状に鑑み、ダイボンド工程やワイヤーボンディング工程において、リードフレームのダイパッドへ薄膜チップを装着する時の圧力やワイヤーのボンディン圧によって、ダイパッド部が変形してしまうことのない電子部品実装部およびリードフレームならびにリードフレームを備えた電子デバイス、またこれらの製造方法を提供することを目的としている。
【0019】
また、モールド工程において、リードフレームとモールド樹脂との間でズレを生ずることのない電子部品実装部およびリードフレームならびにリードフレームを備えた電子デバイス、またこれらの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、前述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の電子部品実装部は、
電子部品を実装するための電子部品実装部であって、
前記電子部品実装部には、前記電子部品実装部を支持するための支持突設部を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明のリードフレームは、
アウターリード部と、インナーリード部と、電子部品を実装するための電子部品実装部とを備えたリードフレームであって、
前記電子部品実装部には、前記電子部品実装部を支持するための支持突設部を有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の電子部品実装部の製造方法は、
電子部品を実装するための電子部品実装部の製造方法であって、
前記電子部品実装部に、前記電子部品実装部を支持するための支持突設部を形成することを特徴とする。
【0023】
また、本発明のリードフレームの製造方法は、
アウターリード部と、インナーリード部と、電子部品を実装するための電子部品実装部とを備えたリードフレームの製造方法であって、
前記電子部品実装部に、前記電子部品実装部を支持するための支持突設部を形成する工程を備えることを特徴とする。
【0024】
このように支持突設部を設ければ、ダイボンド工程において、支持突設部を保持することでダイパッド部を支持することができるため、ダイパッド部上の所望の位置に、確実に薄膜チップを装着(ボンディング)することができる。
【0025】
さらに、ワイヤーボンディング工程においても、支持突設部を保持することによってダイパッド部が支持されるため、リードフレームとモールド樹脂との間でズレを生ずることなく、確実に薄膜チップの電極とインナーリード先端部の電極部との間をボンディングワイヤーで接続することができる。
【0026】
そして、モールド工程においては、この支持突設部がモールド樹脂を射出成形する際のアンカーとしての役目をなし、熱収縮によるリードフレームとモールド樹脂とのズレを抑止することができる。
【0027】
また、本発明は、
前記支持突設部が、前記電子部品実装部の位置固定用であることを特徴とする。
このように支持突設部を設ければ、ダイボンド工程およびワイヤーボンディング工程の際に、ダイパッド部を支持して、位置固定ができる。このため、所望の位置に薄膜チップを装着可能であるとともに、ボンディングワイヤーを所望の位置に確実に接続することができる。
【0028】
また、本発明は、
前記支持突設部の長さが、0.5mm〜10mmの範囲内であることを特徴とする。
このように支持突設部の長さを設定すれば、ダイボンド工程およびワイヤーボンディング工程の際に、ダイパッドを確実に固定することができる。
【0029】
また、本発明は、
前記支持突設部には、孔が設けられていることを特徴とする。
このように支持突設部に孔を設ければ、モールド工程の際に支持突設部の孔内に樹脂が流入することになるため、樹脂硬化後に孔内の樹脂がアンカーとしての役目をなし、熱収縮によるリードフレームとモールド樹脂とのズレをさらに抑止することができる。
【0030】
また、本発明は、
前記リードフレームが、電子部品を実装するための電子部品実装部を備えていることを特徴とする。
【0031】
このように構成することによって、電子部品実装部に、薄膜チップ、ICなどの電子部品を実装することができ、センサー、半導体装置などとして用いることができる。
また、本発明は、
前記インナーリード部と、前記電子部品実装部に実装された電子部品とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0032】
このように構成することによって、電子部品実装部に、薄膜チップ、ICなどの電子部品を実装して、インナーリード部と電子部品実装部に実装された電子部品とを、ワイヤーボンディングなどで電気的に接続することができ、センサー、半導体装置などとして用いることができる。
【0033】
また、本発明は、
前記インナーリード部と、前記電子部品実装部に実装された電子部品とが気密封止または樹脂封止されていることを特徴とする。
【0034】
このように構成することによって、インナーリード部と、電子部品実装部に実装された電子部品とが、例えばセラミック、金属で蓋をして内部を不活性ガスによって気密封止、または樹脂成形によって樹脂封止(樹脂モールド)されているので、被検知流体が浸入して薄膜チップなどの電子部品が機能しなくなったり、インナーリード、ボンディングワイヤーなどが腐食してセンサーとしての品質が低下することがないため、正確な流体識別を行うことができる。
【0035】
また、本発明の電子デバイスは、
上記のいずれかに記載のリードフレームを備えたことを特徴とする。
また、本発明の電子デバイスは、
流体識別を行うためのセンサーであることを特徴とする。
【0036】
また、本発明の電子デバイスは、
前記流体識別が、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体の漏れ識別、流体レベル識別のうち、少なくとも一つの識別であることを特徴とする。
【0037】
このように構成することによって、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などの炭化水素系液体、エタノール、メタノールなどのアルコール系液体、尿素水溶液液体、気体、粉粒体などの流体について、流体の物理的性質、例えば流体の熱的性質を利用して、被識別流体について、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体レベル識別などを行うことができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、ダイボンド工程やワイヤーボンディング工程において、リードフレームのダイパッドへ薄膜チップを装着する時の圧力やワイヤーのボンディン圧によって、ダイパッド部が変形してしまうことのない電子部品実装部およびリードフレームならびにリードフレームを備えた電子デバイス、またこれらの製造方法を提供することができる。
【0039】
また、モールド工程において、リードフレームとモールド樹脂との間でズレを生ずることのない電子部品実装部およびリードフレームならびにリードフレームを備えた電子デバイス、またこれらの製造方法を提供することができる。このため、例えば正確な流体識別を行うことができる。
また、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などの炭化水素系液体、エタノール、メタノールなどのアルコール系液体、尿素水溶液液体、気体、粉粒体などの流体について、流体の熱的性質を利用して、被識別流体について、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体レベル識別などを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明の多数個取りのリードフレームにおける上面図、図2は、図1のリードフレームの部分拡大上面図、図3は、図1のリードフレームを用いた熱式センサーの製造工程を説明する工程概略図、図4は、図1のリードフレームを用いた熱式センサーの製造工程を説明する図1のリードフレームの部分拡大上面図、図5は、図1のリードフレームを用いた熱式センサーの斜視図、図6は、図5の熱式センサーの縦断面図、図7は、図6の熱式センサーのA−A線による縦断面図、図8は、モールド工程を説明する概略図、図9は、図8の結果を示すグラフである。
【0041】
図1〜図3において、符号1は、全体でリードフレームを有するリードフレーム体を示している。
図1のリードフレーム体1は、いわゆる多数個取り形式であって、熱式センサーを製造するために適用した実施例を示している。
【0042】
すなわちリードフレーム体1は、複数個のリードフレーム2が並列して配置されており、リードフレーム2は略矩形平板状の外枠体4を備え、外枠体4には、金型内に配置した際に位置決めを行うための合計4箇所の位置決め孔3が形成されている。
【0043】
また、外枠体4の下側枠体6から、4本の一定間隔離間したアウターリード8が、左右に2組延設されている。これらのアウターリード8の上方には、外部接続端子部10が形成され、外部接続端子部10において、外枠体4の左側枠体12、右側枠体14に左右に延びる水平方向支持部16で支持されている。なお、下側枠体6の中央部分には、2本の左側中央支持部18、右側中央支持部20が延設されており、それぞれ水平方向支持部16と連結されている。
【0044】
さらに、外部接続端子部10の上方には、それぞれ一定間隔離間するように、中央に向かって傾斜するように延設されたインナーリード22が形成されており、これらのインナーリード22の先端部にインナーリード先端部24が配置されている。
【0045】
また、外枠体4の左側枠体12、右側枠体14から、それぞれインナーリード22の形状に対応するように、インナーリード22と一定間隔離間して、左側吊りリード26、右側吊りリード28が延設されている。一方、左側中央支持部18、右側中央支持部20から、それぞれ左側中央吊りリード30、右側中央吊りリード32が延設されている。
【0046】
そして、左側吊りリード26と左側中央吊りリード30は、インナーリード22のインナーリード先端部24より上方に延びており、その先端部にインナーリード先端部24と対峙するように、一定間隔離間して配置された電子部品実装部を構成する略矩形状のダイパッド部34が形成されている。
【0047】
同様に、右側吊りリード28と右側中央吊りリード32は、インナーリード22のインナーリード先端部24より上方に延びており、その先端部にインナーリード先端部24と対峙するように、一定間隔離間して配置された電子部品実装部を構成する略矩形状のダイパッド部34が形成されている。
【0048】
これらのダイパッド部34の上方先端部には、後述するようにステップS5のダイボンド工程、ステップS6のワイヤーボンディング工程において、ダイパッド部34を支持するための支持突設部36が突設されている。なお、この支持突設部36は、ステップS7のモールド工程において、モールド樹脂を射出成形する際のアンカー効果、金型内での支持効果も有している。
【0049】
また、支持突設部36には、貫通された孔37が設けられていても良く、このような孔37が設けられている場合には、ステップS7のモールド工程において、モールド樹脂が孔37内に流入して固化することによって、孔37内の樹脂がアンカーとしての役目をなし、熱収縮によるリードフレーム2とモールド樹脂とのズレをさらに抑止することができる。
【0050】
このように構成されるリードフレーム2を用いて、熱式センサーを製造する方法について以下に説明する。
まず、図3の工程概略図に示したように、ステップS1のレジスト印刷・露光工程において、所定のパターンになるようにレジストを印刷して、露光した後、図2において黒く塗りつぶされた部分で示したインナーリード22のインナーリード先端部24、アウターリード8、外部接続端子部10を露出させる。
【0051】
次に、ステップS2のNiメッキ(部分)工程において、露出した部分であるインナーリード22のインナーリード先端部24、アウターリード8、外部接続端子部10に、下地メッキであるNiメッキを施す。そして、ステップS3の剥離工程において、アルカリ溶液でレジストを除去する。
【0052】
その後、ステップS4のAuメッキ(部分)工程において、インナーリード22のインナーリード先端部24、アウターリード8、外部接続端子部10に、下地メッキであるNiメッキの上面にAuメッキを施してフレームを製造する。
【0053】
次に、ステップS5のダイボンド工程において、図4に示したように、接着剤などの接合材38を介して、ダイパッド部34に薄膜チップ40を装着(ボンディング)する。この時、リードフレーム2のダイパッド部34の上方先端部に延設された支持突設部36を支持した状態で、薄膜チップ40の装着がなされ、これによりダイパッド部34が装着の際の圧力で変形しないようになっている。
【0054】
なお、ダイパッド部34を確実に支持するため、支持突設部36の長さとしては、0.5mm〜10mmの範囲内であることが好ましい。
そして、ステップS6のワイヤーボンディング工程において、薄膜チップ40の電極(図示せず)と、インナーリード先端部24の電極部24aとの間を、Auからなるボンディングワイヤー42で電気的に接続する。この場合においても、ダイパッド部34の支持突設部36を支持した状態でワイヤーボンディングがなされるため、ボンディング圧によってダイパッド部34が変形してしまうことがない。
【0055】
そして、この状態でリードフレーム2を金型内に配置して、ステップS7のモールド工程において、例えばエポキシ樹脂を射出することによって、リードフレーム2の所定の部分に、図4に示したように、モールド樹脂44により構成されるセンサー本体54を形成する。
【0056】
なお、ダイパッド部34の上方先端部には支持突設部36が設けられているため、この支持突設部36がモールド樹脂を射出成形する際のアンカーとしての役目をなし、熱収縮によるリードフレーム2とモールド樹脂とのズレを抑止するようになっている。
【0057】
また、支持突設部36に形成された孔37内にも樹脂が流入するため、この孔37内の樹脂が固化することによって、孔37内の樹脂がアンカーとしての役目をなし、熱収縮によるリードフレーム2とモールド樹脂とのズレをさらに抑止するようになっている。
【0058】
その後、ステップS8のダイバーカット工程において、リードフレーム2を所定の大きさに分離する。
そして、ステップS9のマーキング工程において、製品運用管理のために識別可能箇所、例えばフランジ部56の側面部分にマーキングを施した後、ステップS10のモールド切り離し工程において、リードフレーム2の不要部分を熱式センサー50から切断して除去し、アウターリード8の形状を整えた後、図5〜図7に示した完成品である熱式センサー50を得るようになっている。
【0059】
このようにして得られた熱式センサー50は、図5〜図8に示したように、モールド樹脂44により構成されるセンサー本体54を備えており、このセンサー本体54は、略楕円形状のフランジ部56と、このフランジ部56の裏面に突設する裏面突設部58と、フランジ部56の表面に突設する検知部60とを備えている。
【0060】
そして検知部60は、一定間隔離間して配置された矩形平板形状の一対の流体識別検知部62と、流体温度検知部64とから構成されている。これらの流体識別検知部62と、流体温度検知部64とは、基本的には同様な構造となっており、発熱体と感温体を備えており、流体温度検知部64では、発熱体を作用させずに感温体のみを作用させるようになっている。
【0061】
また、これらの検知部62、64では、モールド樹脂44で封止されたセンサー本体54内に配置された熱伝達部材として機能する金属製のダイパッド部34を備えている。そして、このダイパッド部34の実装面に、接合材38を介して薄膜チップ40が実装されている。
【0062】
また、センサー本体54内には、これらのダイパッド部34と対峙するように、ダイパッド部34と一定間隔離間して配置され、相互に一定間隔離間するように、複数のインナーリード22が配置されている。これらのインナーリード22から、裏面突設部58の方向に外部接続端子部10が延設されており、外部接続端子部10の先端部分にアウターリード8が形成されている。
【0063】
そして、薄膜チップ40の電極40aと、インナーリード先端部24の電極部24aとの間は、Auからなるボンディングワイヤー42で電気的に接続されている。
このようにして構成される熱式センサー50は、特許文献3に開示されているような方法に基づいて、流体識別を行うように構成されている。
【0064】
すなわち図9は、本発明による熱式センサー50を流体識別装置に適用した実施例を示す分解斜視図、図10は、図9の一部省略断面図、図11は、本発明による流体識別装置のタンクへの取り付け状態を示す図である。
【0065】
図9〜図11に示されているように、タンク66の上部にはタンク開口部68が設けられており、このタンク開口部68に、本発明による流体識別装置70が取り付けられている。
【0066】
タンク66には、流体が注入される入口配管72と、流体が取り出される出口配管74が設けられている。出口配管74は、タンク66の底部に近い高さ位置にてタンク66に接続されており、ポンプ76を介して、流体使用機器(図示せず)に接続されている。
【0067】
流体識別装置70は、流体識別センサー部78と支持部80とを備えている。支持部80の一方の端部(下端部)には、流体識別センサー部78が取り付けられており、支持部80の他方の端部(上端部)には、タンク開口部68へ取り付けるための取り付け部82が設けられている。
【0068】
流体識別センサー部78は、発熱体と感温体を備えた流体識別検知部62と、流体の温度を測定する流体温度検知部64とを有する。
このように構成される流体識別装置70では、特許文献3に開示されるような方法に基づいて、通電により発熱体を発熱させ、この発熱により感温体を加熱し、発熱体から感温体への熱伝達に対して、被識別流体により熱的影響を与え、感温体の電気抵抗に対応する電気的出力に基づいて、被識別流体について、上記のような流体識別を行うように構成されている。
【0069】
以下に、流体識別の一実施例として液種識別について説明する。本実施例においては、図12にて一点鎖線で囲まれる部分がカスタムIC84に作り込まれている。
図12には、スイッチ86が単なる開閉を行うものとして記載されているが、カスタムIC84に作り込む際に、互いに異なる電圧の印加が可能な複数の電圧印加経路を形成しておき、ヒーター制御に際していずれかの電圧印加経路を選択できるようにしてもよい。
【0070】
このようにすると、流体識別検知部62の発熱体62a4の特性における選択幅が大幅に広がる。すなわち、発熱体62a4の特性に応じて識別に最適な電圧を印加することが可能となる。また、ヒーター制御に際して、互いに異なる複数の電圧の印加を行うことができるので、被識別流体の種類を広げることが可能となる。
【0071】
また、図12には、抵抗体88,90が抵抗値一定のものとして記載されているが、カスタムIC84に作り込む際に、これら抵抗体88,90のそれぞれを抵抗値可変なものに形成しておき、識別に際して抵抗体88,90の抵抗値を適宜変更できるようにしてもよい。
【0072】
同様に、カスタムIC84に作り込む際に、差動増幅器92および液温検知増幅器94について特性調節が可能なようにしておき、識別に際して増幅器特性を適宜変更できるようにしてもよい。
【0073】
このようにすると、液種検知回路の特性を最適なものに設定することが容易になり、流体識別検知部62および流体温度検知部64の製造上の個体ばらつきと、カスタムIC84の製造上の個体ばらつきとに基づき発生する識別特性のばらつきを低減することができ、製造歩留まりが向上する。
【0074】
以下、本実施例における液種識別動作につき説明する。
タンク66内に被識別液体として尿素水溶液USが収容されると、流体識別センサー部78を覆うカバー部材98により形成される被測定液体導入路96内にも尿素水溶液USが満たされる。被測定液体導入路96内を含めてタンク66内の尿素水溶液USは実質上流動しない。
【0075】
マイコン91からスイッチ86に対して出力されるヒーター制御信号により、スイッチ86を所定時間(例えば、8秒間)閉じることで、発熱体62a4に対して所定高さ(例えば、10V)の単一パルス電圧Pを印加して発熱体を発熱させる。この時の差動増幅器92の出力電圧(センサー出力)Qは、図13に示されるように、発熱体62a4への電圧印加中は次第に増加し、発熱体62a4への電圧印加終了後は次第に減少する。
【0076】
マイコン91では、図13に示されているように、発熱体62a4への電圧印加の開始前の所定時間(例えば、0.1秒間)センサー出力を所定回数(例えば、256回)サンプリングし、その平均値を得る演算を行って平均初期電圧値V1を得る。この平均初期電圧値V1は、感温体62a2の初期温度に対応する。
【0077】
また、発熱体への電圧印加の開始から比較的短い時間である第1の時間(例えば単一パルスの印加時間の1/2以下であって0.5〜3秒間;図13では2秒間)経過時(具体的には第1の時間の経過の直前)にセンサー出力を所定回数(例えば、256回)サンプリングし、その平均値をとる演算を行って平均第1電圧値V2を得る。
【0078】
この平均第1電圧値V2は、感温体62a2の単一パルス印加開始から第1の時間経過時の第1温度に対応する。そして、平均初期電圧値V1と平均第1電圧値V2との差V01(=V2−V1)を液種対応第1電圧値として得る。
【0079】
また、発熱体への電圧印加の開始から比較的長い時間である第2の時間(例えば単一パルスの印加時間;図13では8秒間)経過時(具体的には第2の時間の経過の直前)にセンサー出力を所定回数(例えば、256回)サンプリングし、その平均値をとる演算を行って平均第2電圧値V3を得る。
【0080】
この平均第2電圧値V3は、感温体62a2の単一パルス印加開始から第2の時間経過時の第2温度に対応する。そして、平均初期電圧値V1と平均第2電圧値V3との差V02(=V3−V1)を液種対応第2電圧値として得る。
【0081】
以上のような単一パルスの電圧印加に基づき発熱体62a4で発生した熱の一部は、被測定液体を介して感温体62a2へと伝達される。この熱伝達には、パルス印加開始からの時間に依存して異なる主として2つの形態がある。すなわち、パルス印加開始から比較的短い時間(例えば3秒とくに2秒)内の第1段階では、熱伝達は主として伝導が支配的である(このため、液種対応第1電圧値V01は主として液体の熱伝導率による影響を受ける)。
【0082】
これに対して、第1段階後の第2段階では、熱伝達は主として自然対流が支配的である(このため、液種対応第2電圧値V02は主として液体の動粘度による影響を受ける)。これは、第2段階では、第1段階で加熱された被測定液体による自然対流が発生し、これによる熱伝達の比率が高くなるからである。
【0083】
上記のように、排ガス浄化システムにおいて使用される尿素水溶液USの濃度(重量パーセント:以下同様)は32.5%が最適とされている。したがって、タンク66に収容されるべき尿素水溶液USの尿素濃度の許容範囲を、例えば32.5%±5%と定めることができる。この許容範囲の幅±5%は、所望により適宜変更可能である。すなわち、本実施例では、所定の液体として、尿素濃度が32.5%±5%の範囲内の尿素水溶液USを定めている。
【0084】
上記液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02は、尿素水溶液USの尿素濃度が変化するにつれて変化する。したがって、尿素濃度32.5%±5%の範囲内の尿素水溶液USに対応する液種対応第1電圧値V01の範囲(所定範囲)および液種対応第2電圧値V02の範囲(所定範囲)が存在する。
【0085】
ところで、尿素水溶液US以外の液体であっても、その濃度によっては、上記の液種対応第1電圧値V01の所定範囲内および液種対応第2電圧値V02の所定範囲内の出力が得られる場合がある。すなわち、液種対応第1電圧値V01または液種対応第2電圧値V02がそれぞれ所定範囲内であったとしても、その液体が所定の尿素水溶液USであるとは限らない。
【0086】
例えば、図14に示されているように、尿素濃度が所定範囲内32.5%±5%の尿素水溶液USで得られる液種対応第1電圧値V01の範囲内(すなわち、センサー表示濃度値に換算して32.5%±5%の範囲内)には、砂糖濃度が25%±3%程度の範囲内の砂糖水溶液の液種対応第1電圧値が存在する。
【0087】
しかしながら、この砂糖濃度範囲内の砂糖水溶液から得られる液種対応第2電圧値V02の値は、所定の尿素濃度範囲内の尿素水溶液USで得られる液種対応第2電圧値V02の範囲とはかけ離れたものとなる。
【0088】
すなわち、図15に示されているように、25%±3%程度の砂糖濃度範囲を包含する15%〜35%の砂糖濃度範囲内の砂糖水溶液では、液種対応第1電圧値V01が所定の尿素濃度範囲内の尿素水溶液USと重複するものがあるが、液種対応第2電圧値V02は所定の尿素濃度範囲内の尿素水溶液USとは大きく異なる。
【0089】
なお図15では、液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02の双方が、尿素濃度30%の尿素水溶液のものを1.000とした相対値で示されている。このように、液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02の双方についてそれぞれの所定範囲内にあることを所定の液体であるか否かの判定基準とすることで、上記砂糖水溶液が所定の液体ではないと確実に識別することができる。
【0090】
また、液種対応第2電圧値V02が所定の液体のものと重複する場合もあり得る。しかし、この場合には、液種対応第1電圧値V01が所定の液体のものと異なるので、上記判定基準により当該液体が所定のものではないと確実に識別することができる。
【0091】
本発明は、以上のように液種対応第1電圧値V01と液種対応第2電圧値V02との関係が溶液の種類により異なることを利用して、液種の識別を行うものである。
すなわち、液種対応第1電圧値V01と液種対応第2電圧値V02とは、液体の互いに異なる物性である熱伝導率と動粘度との影響を受け、これらの関係は溶液の種類により互いに異なるので、以上のような液種識別が可能となる。尿素濃度の所定範囲を狭くすることで、さらに、識別の精度を高めることができる。
【0092】
本発明の実施例では、尿素濃度既知の幾つかの尿素水溶液(参照尿素水溶液)について、温度と液種対応第1電圧値V01との関係を示す第1検量線および温度と液種対応第2電圧値V02との関係を示す第2検量線を予め得ておき、これらの検量線をマイコン91の記憶手段に記憶しておく。
【0093】
第1および第2の検量線の例を、それぞれ図16および図17に示す。
これらの例では、尿素濃度c1(例えば27.5%)およびc2(例えば37.5%)の参照尿素水溶液について、検量線が作成されている。
【0094】
図16および図17に示されているように、液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02は温度に依存するので、これらの検量線を用いて被測定液体を識別する際には、流体温度検知部64の感温体64a2から液温検知増幅器94を介して入力される液温対応出力値Tを用いる。液温対応出力値Tの一例を図18に示す。このような検量線をもマイコン91の記憶手段に記憶しておく。
【0095】
液種対応第1電圧値V01の測定に際しては、まず測定対象の被測定液体について得た液温対応出力値Tから図18の検量線を用いて温度値を得る。得られた温度値をtとし、次に、図16の第1の検量線において、温度値tに対応する各検量線の液種対応第1電圧値V01(c1;t),V01(c2;t)を得る。
【0096】
そして、測定対象の被測定液体について得た液種対応第1電圧値V01(cx;t)のcxを、各検量線の液種対応第1電圧値V01(c1;t),V01(c2;t)を用いた比例演算を行って、決定する。すなわち、cxは、V01(cx;t),V01(c1;t),V01(c2;t)に基づき、以下の式(1)
cx=c1+
(c2−c1)[V01(cx;t)−V01(c1;t)]
/[V01(c2;t)−V01(c1;t)]・・・・(1)
から求める。
【0097】
同様にして、液種対応第2電圧値V02の測定に際しては、図17の第2の検量線において、以上のようにして被測定液体について得た温度値tに対応する各検量線の液種対応第2電圧値V02(c1;t),V02(c2;t)を得る。そして、被測定液体について得た液種対応第2電圧値V02(cy;t)のcyを、各検量線の液種対応第2電圧値V02(c1;t),V02(c2;t)を用いた比例演算を行って、決定する。
【0098】
すなわち、cyは、V01(cy;t),V01(c1;t),V01(c2;t)に基づき、以下の式(2)
cy=c1+
(c2−c1)[V02(cy;t)−V02(c1;t)]
/[V02(c2;t)−V02(c1;t)]・・・・(2)
から求める。
【0099】
なお、図16および図17の第1および第2の検量線として温度の代わりに液温対応出力値Tを用いたものを採用することで、図18の検量線の記憶およびこれを用いた換算を省略することもできる。
【0100】
以上のように、液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02のそれぞれについて、温度に応じて変化する所定範囲を設定することができる。上記のようにc1を27.5%とし、c2を37.5%とすることで、図16および図17のそれぞれにおける2つの検量線で囲まれた領域が、所定の液体(すなわち尿素濃度32.5%±5%の尿素水溶液)に対応するものとなる。
【0101】
図19は、液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02の組み合わせによる所定液体識別の判定基準が温度に応じて変化することを模式的に示すグラフである。温度がt1,t2,t3と上昇するにつれて、所定の液体と判別される領域AR(t1),AR(t2),AR(t3)が移動する。
【0102】
図20は、マイコン91での液種識別プロセスを示すフロー図である。
まず、ヒーター制御による発熱体62a4へのパルス電圧印加の前に、マイコン内にN=1を格納し(S1)、次いでセンサー出力をサンプリングし平均初期電圧値V1を得る(S2)。
【0103】
次に、ヒーター制御を実行し、発熱体62a4への電圧印加の開始から第1の時間経過時にセンサー出力をサンプリングし、平均第1電圧値V2を得る(S3)。
さらに、V2−V1の演算を行って、液種対応第1電圧値V01を得る(S4)。
【0104】
次に、発熱体62a4への電圧印加の開始から第2の時間経過時にセンサー出力をサンプリングし、平均第2電圧値V3を得る(S5)。次に、V3−V1の演算を行って、液種対応第2電圧値V02を得る(S6)。
【0105】
さらに、被測定液体について得た温度値tを参照して、液種対応第1電圧値V01が当該温度での所定範囲内にあり、かつ液種対応第2電圧値V02が当該温度での所定範囲内にあるという条件が満たされるか否かを判断する(S7)。
【0106】
S7において液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02のうちの少なくとも一方がそれぞれの所定範囲内にない(NO)と判断された場合には、上記格納値Nが3であるか否かを判断する(S8)。
【0107】
S8においてNが3ではない[すなわち現測定ルーチンが3回目ではない(具体的には1回目または2回目である)](NO)と判断された場合には、続いて格納値Nを1だけ増加させ(S9)、S2へと戻る。
【0108】
一方、S8においてNが3である[すなわち現測定ルーチンが3回目である](YES)と判断された場合には、被測定流体が所定のものではないと判定する(S10)。
また、S7において液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02の双方がそれぞれの所定範囲内にある(YES)と判断された場合には、被測定流体が所定のものであると判定する(S11)。
【0109】
本実施例においては、S11に続いて、尿素水溶液の尿素濃度を算出する(S12)。この濃度算出は、流体温度検知部64の出力すなわち被測定液体について得た温度値tと、液種対応第1電圧値V01と、図16の第1の検量線とに基づき、上記式(1)を用いて行うことができる。
【0110】
また濃度算出は、流体温度検知部64の出力すなわち被測定液体について得た温度値tと、液種対応第2電圧値V02と、図17の第2の検量線とに基づき、上記式(2)を用いて行うこともできる。
【0111】
以上のようにして液種の識別を正確、かつ迅速に行うことができる。この液種識別のルーチンは、自動車のエンジン始動時、または定期的、運転者または自動車(後述のECU)側からの要求時、自動車のキーOFF時等に、適宜実行することができ、所望の様式にて尿素タンク内の液体が所定の尿素濃度の尿素水溶液であるか否かを監視することができる。
【0112】
このようにして得られた液種を示す信号(所定のものであるか否か、さらに、は所定のもの[所定の尿素濃度の尿素水溶液]である場合の尿素濃度を示す信号)が不図示のD/A変換器を介して、図12に示される出力バッファ回路93へと出力され、ここから端子ピン、電源回路基板および防水配線を介して、アナログ出力として不図示の自動車のエンジンの燃焼制御などを行うメインコンピュータ(ECU)へと出力される。
【0113】
液温対応のアナログ出力電圧値も同様な経路でメインコンピュータ(ECU)へと出力される。一方、液種を示す信号は、必要に応じてデジタル出力として取り出して、同様な経路で表示、警報その他の動作を行う機器へと入力することができる。
【0114】
さらに、流体温度検知部64から入力される液温対応出力値Tに基づき、尿素水溶液が凍結する温度(−13℃程度)の近くまで温度低下したことが検知された場合に警告を発するようにすることができる。
【0115】
なお、以上の液種識別は、自然対流を利用しており、尿素水溶液等の被測定液体の動粘度とセンサー出力とが相関関係を有するという原理を利用している。このような液種識別の精度を高めるためには、流体識別検知部62および流体温度検知部64と被測定液体との間の熱伝達がなされる容器本体部の周囲の被測定液体にできるだけ外的要因に基づく強制流動が生じにくくするのが好ましく、この点からカバー部材98とくに上下方向の被測定液体導入路を形成するようにしたものの使用は好ましい。なお、カバー部材98は、異物の接触を防止する保護部材としても機能する。
【0116】
以上の実施例では、所定の流体として、所定の尿素濃度の尿素水溶液が用いられているが、本発明では、所定の液体は溶質として尿素以外を用いた水溶液その他の液体であってもよい。
【0117】
また、上記の実施例では、被識別流体として被測定液体を用いたが、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などの炭化水素系液体、エタノール、メタノールなどのアルコール系液体、尿素水溶液液体、気体、粉粒体などの流体について、流体の物理的性質、例えば流体の熱的性質を利用して、被識別流体について、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体の漏れ識別、流体レベル識別、アンモニア発生量などの識別を行うことができる。
【0118】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、上記実施例では、図6に示したように、モールド樹脂により構成されるセンサー本体を形成したが、例えば、セラミック、金属で蓋をして内部を不活性ガスによって気密封止するようにしても良い。
【0119】
また上記実施例では、熱式センサーを製造するために適用した実施例を示しているが、流体識別を行うためのセンサー以外にも、各種センサー、半導体装置などの電子デバイスに用いることも可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、本発明の多数個取りのリードフレームにおける上面図である。
【図2】図2は、図1のリードフレームの部分拡大上面図である。
【図3】図3は、図1のリードフレームを用いた熱式センサーの製造工程を説明する工程概略図である。
【図4】図4は、図1のリードフレームを用いた熱式センサーの製造工程を説明する図1のリードフレームの部分拡大上面図である。
【図5】図5は、図1のリードフレームを用いた熱式センサーの斜視図である。
【図6】図6は、図5の熱式センサーの縦断面図である。
【図7】図7は、図6の熱式センサーのA−A線による縦断面図である。
【図8】図8は、モールド工程を説明する概略図である。
【図9】図9は、本発明によるセンサーを流体識別装置に適用した実施例を示す分解斜視図である。
【図10】図10は、図9の一部省略断面図図である。
【図11】図11は、本発明による流体識別装置のタンクへの取り付け状態を示す図である。
【図12】図12は、液種識別ための回路の構成図である。
【図13】図13は、発熱体に印加される単一パルス電圧Pとセンサー出力Qとの関係を示す図である。
【図14】図14は、尿素濃度が所定範囲内の尿素水溶液で得られる液種対応第1電圧値V01の範囲内には、ある砂糖濃度範囲内の砂糖水溶液の液種対応第1電圧値が存在することを示す図である。
【図15】図15は、尿素水溶液および砂糖水溶液および水についての液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02を、尿素濃度30%の尿素水溶液を1.000とした相対値で示す図である。
【図16】図16は、第1の検量線の例を示す図である。
【図17】図17は、第2の検量線の例を示す図である。
【図18】図18は、液温対応出力値Tの一例を示す図である。
【図19】図19は、液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02の組み合わせによる所定液体識別の判定基準が温度に応じて変化することを模式的に示すグラフである。
【図20】図20は、液種識別プロセスを示すフロー図である。
【図21】図21は、従来の熱式センサーの縦断面図である。
【図22】図22は、従来の熱式センサーのA−A線での縦断面図である。
【図23】図23は、従来のリードフレームを用いた熱式センサーの製造工程を説明する工程概略図である。
【符号の説明】
【0121】
1・・・リードフレーム体
2・・・リードフレーム
3・・・位置決め孔
4・・・外枠体
6・・・下側枠体
8・・・アウターリード
10・・・外部接続端子部
12・・・左側枠体
14・・・右側枠体
16・・・水平方向支持部
18・・・左側中央支持部
20・・・右側中央支持部
22・・・インナーリード
24・・・インナーリード先端部
24a・・電極部
26・・・左側吊りリード
28・・・右側吊りリード
30・・・左側中央吊りリード
32・・・右側中央吊りリード
34・・・ダイパッド部
36・・・支持突設部
37・・・孔
38・・・接合材
40・・・薄膜チップ
40a・・電極
42・・・ボンディングワイヤー
44・・・モールド樹脂
50・・・熱式センサー
54・・・センサー本体
56・・・フランジ部
58・・・裏面突設部
60・・・検知部
62・・・流体識別検知部
62a2・感温体
62a4・発熱体
64・・・流体温度検知部
64a2・感温体
66・・・タンク
68・・・タンク開口部
70・・・流体識別装置
72・・・入口配管
74・・・出口配管
76・・・ポンプ
78・・・流体識別センサー部
80・・・支持部
82・・・取り付け部
86・・・スイッチ
88・・・抵抗体
90・・・抵抗体
91・・・マイコン
92・・・差動増幅器
93・・・出力バッファ回路
94・・・液温検知増幅器
96・・・被測定液体導入路
98・・・カバー部材
100・・・熱式センサー
101・・・接合材
102・・・モールド樹脂
104・・・センサー本体
106・・・フランジ部
108・・・裏面突設部
110・・・検知部
112・・・流体識別検知部
114・・・流体温度検知部
116・・・開口部
118・・・ダイパッド部
122・・・薄膜チップ
124・・・インナーリード
124a・・電極
126・・・外部接続端子部
128・・・アウターリード
130・・・ボンディングワイヤー
US・・・尿素水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装するための電子部品実装部であって、
前記電子部品実装部には、前記電子部品実装部を支持するための支持突設部を有することを特徴とする電子部品実装部。
【請求項2】
前記支持突設部が、前記電子部品実装部の位置固定用であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装部。
【請求項3】
前記支持突設部の長さが、0.5mm〜10mmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品実装部。
【請求項4】
前記支持突設部には、孔が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子部品実装部。
【請求項5】
アウターリード部と、インナーリード部と、電子部品を実装するための電子部品実装部とを備えたリードフレームであって、
前記電子部品実装部には、前記電子部品実装部を支持するための支持突設部を有することを特徴とするリードフレーム。
【請求項6】
前記支持突設部が、前記電子部品実装部の位置固定用であることを特徴とする請求項5に記載のリードフレーム。
【請求項7】
前記支持突設部の長さが、0.5mm〜10mmの範囲内であることを特徴とする請求項5または6に記載のリードフレーム。
【請求項8】
前記支持突設部には、孔が設けられていることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載のリードフレーム。
【請求項9】
前記インナーリード部と、前記電子部品実装部に実装された電子部品とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載のリードフレーム。
【請求項10】
前記インナーリード部と、前記電子部品実装部に実装された電子部品と、前記支持突設部とが、気密封止または樹脂封止されていることを特徴とする請求項9に記載のリードフレーム。
【請求項11】
請求項5から10のいずれかに記載のリードフレームを具備することを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
前記電子デバイスが、流体識別を行うためのセンサーであることを特徴とする請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記流体識別が、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体の漏れ識別、流体レベル識別のうち、少なくとも一つの識別であることを特徴とする請求項12に記載の電子デバイス。
【請求項14】
電子部品を実装するための電子部品実装部の製造方法であって、
前記電子部品実装部に、前記電子部品実装部を支持するための支持突設部を形成することを特徴とする電子部品実装部の製造方法。
【請求項15】
前記支持突設部が、前記電子部品実装部の位置固定用であることを特徴とする請求項14に記載の電子部品実装部の製造方法。
【請求項16】
前記支持突設部の長さが、0.5mm〜10mmの範囲内であることを特徴とする請求項14から15のいずれかに記載の電子部品実装部の製造方法。
【請求項17】
前記支持突設部には、孔が設けられていることを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載の電子部品実装部の製造方法。
【請求項18】
アウターリード部と、インナーリード部と、電子部品を実装するための電子部品実装部とを備えたリードフレームの製造方法であって、
前記電子部品実装部に、前記電子部品実装部を支持するための支持突設部を形成する工程を備えることを特徴とするリードフレームの製造方法。
【請求項19】
前記支持突設部が、前記電子部品実装部の位置固定用であることを特徴とする請求項18に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項20】
前記支持突設部の長さが、0.5mm〜10mmの範囲内であることを特徴とする請求項18から19のいずれかに記載のリードフレームの製造方法。
【請求項21】
前記支持突設部には、孔が設けられていることを特徴とする請求項18から20のいずれかに記載のリードフレームの製造方法。
【請求項22】
前記インナーリード部と、前記電子部品実装部に実装された電子部品とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項18から21のいずれかに記載のリードフレームの製造方法。
【請求項23】
前記インナーリード部と、前記電子部品実装部に実装された電子部品と、前記支持突設部とが気密封止または樹脂封止されていることを特徴とする請求項22に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項24】
請求項18から23のいずれかに記載のリードフレームの製造方法によって製造されたリードフレームを具備することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項25】
前記電子デバイスが、流体識別を行うためのセンサーであることを特徴とする請求項24に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項26】
前記流体識別が、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体の漏れ識別、流体レベル識別のうち、少なくとも一つの識別であることを特徴とする請求項25に記載の電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−71075(P2009−71075A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238569(P2007−238569)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【出願人】(392023681)株式会社サンエー (14)
【Fターム(参考)】