説明

電子部品端子の短絡防止カバー

【課題】コストが掛からず、確実に電子部品のリード端子が絶縁され、追加工作業が不要で作業効率のよい電子部品端子の短絡防止カバーを提供する。
【解決手段】プリント基板18に取り付けられる電子部品24のリード端子26を覆う絶縁性のカバー部12を備える。カバー部12は、プリント基板18に係止される取付部14を有する。取付部14は、プリント基板18の透孔30に挿通可能な棒状部15と、棒状部15に一体に形成されプリント基板18に係止固定可能な突起部から成る。カバー部12は、矩形の箱体でプリント基板18に当接する面が開口し、またはプリント基板18に当接する面が開口し断面コの字形に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント基板に取り付けられる電子部品のリード端子間の短絡を防止する短絡防止カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の回路基板に実装される電子部品の中には、パワートランジスタや抵抗器等のように、リード端子が回路基板の取付穴に差し込まれてハンダ付けされているものがある。このような電子部品は、外部から電子機器内へ侵入した空気中の塵埃などが、基板やその表面に取り付けられた電子部品に付着し、リード端子間に堆積することがある。そして、その塵埃などが湿気を帯びたりすると、導電部であるリード間で短絡を起こし故障の原因となる恐れがあった。また、金属くずなどの導電性の埃が飛来して短絡を起こすこともあった。そのため、リード端子間の塵埃の付着を防止する対策として、いろいろな方法が知られている。例えば、プリント基板全体あるいは一部にシリコンゴム等を塗布して、ハンダや端子の露出をなくす方法がある。
【0003】
また、その他の方法としては、特許文献1では、高周波デバイス表面と各リードの接続部を、絶縁性樹脂で覆って、気密状態に封止する方法が開示されている。さらに、特許文献2では、基板全体を包み込むようにカバー部材を被着し、基板のベース部材との合わせ部分へ封止材を充填して、気密に封止する方法が提案されている。その他、特許文献3では、基板全体にコーティング処理を施す際に、基板の接続端子や接点をコーティング材から保護する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−41420号公報
【特許文献2】特開平11−243283号公報
【特許文献3】特開昭63−24574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術の場合、シリコンゴムを塗布する方法では、硬化時間が長いなど作業性が悪く、コストが高くなっていた。また、プリント基板全体をシリコンゴム等で覆うと、放熱ができなくなるという問題点もあった。
【0005】
また、上記特許文献1の高周波デバイスパッケージの場合、高周波デバイスの表面を、接続されたリード端子と共に樹脂を滴下して気密に封止するものであり、外気に露出した状態で電子部品を基板に取り付けた際の端子間の絶縁については開示されていない。また、特許文献2では、基板全体を覆うようにカバー部材をベース材に被着するため、コストが掛かるほか、基板を収納可能な大きさが必要であり、スペース効率が良くないものである。その他、特許文献3では、基板全体にコーティング処理を施した際に、基板の接続端子や接点をコーティング材から保護する方法について開示されているが、基板全体をコーティングすると、コストが掛かる上、追加工作業が増えるため、作業効率もよくないものであった。
【0006】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、コストが掛からず、確実に電子部品のリード端子が絶縁され、追加工作業が不要で作業効率のよい電子部品端子の短絡防止カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プリント基板に取り付けられる電子部品のリード端子を覆う絶縁性のカバー部と、前記カバー部に設けられ前記プリント基板に係止される取付部が設けられている電子部品端子の短絡防止カバーである。
【0008】
また、前記プリント基板には、前記短絡防止カバーを取り付ける位置に透孔が形成され、前記短絡防止カバーの前記取付部は、前記透孔に挿通可能な棒状部と、前記棒状部に一体に形成され前記プリント基板に係止固定可能な突起部が設けられている。例えば前記突起部は、前記棒状部の先端に形成され前記棒状部の突出方向に対して交差する方向に突出し、前記プリント基板の裏面に係止されるものである。また、前記突起部は、前記棒状部の側面に形成され前記透孔の内周面に当接し摩擦により係止されるものでもよい。
【0009】
また、前記カバー部は矩形の箱体であり、前記プリント基板に当接する面が開口している。または、前記カバー部は、前記プリント基板に当接する面が開口し断面コの字形に形成されたものでもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子部品端子の短絡防止カバーは、プリント基板に取り付けられた電子部品の、導電性異物や埃等による回路短絡を確実に防ぎ、故障を防止することができる。さらに、短絡防止カバーのプリント基板への取り付け作業が簡単であり、接着剤や連結用部品を使用することがなく、確実で安価に取り付けることができ、作業効率が良く、製造も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の短絡防止カバー10は、矩形の箱形に形成されたカバー部12が設けられ、一面が開口した5面で形成されている。開口部周縁の1乃至複数箇所(図面では1箇所のみ開示)には、取付部14が形成されている。取付部14は、カバー部12の側面の延長方向に突出する細長い板状の棒状部15が形成され、棒状部15の先端には、その側面の幅方向に沿って突出する突起部16が両側に形成され、矢印形になっている。突起部16の先端は面取りされていてもよい。
【0012】
この短絡防止カバー10は、ゴムや合成樹脂、紙等絶縁性材料で作られ、カバー部12と取付部14が一体に形成されている。
【0013】
次に、この実施形態の短絡防止カバー10の取付方法について説明する。短絡防止カバー10を取り付けるプリント基板18には、一方の第一面18aに、回路パターン20が所定形状に印刷されている。回路パターン20の一部には、プリント基板18を貫通したリード端子取付穴22が設けられ、プリント基板18の第一面18aと反対側の第二面18bには、抵抗器等の電子部品24が取り付けられている。各電子部品24には各々リード端子26が設けられ、リード端子26はリード端子取付穴22に第2面18bから挿通されて、リード端子26の先端部26aがプリント基板18の第一面18aに突出している。第一面18aに突出したリード端子26の先端部26aは、回路パターン20とリード端子取付穴22に、ハンダ28で接続され、固定されている。
【0014】
この実施形態の短絡防止カバー10は、プリント基板18の第一面18aで、ハンダ28で固定されたリード端子26の先端部26aを覆って取り付けられる。プリント基板18の、短絡防止カバー10の取付部14が位置する箇所には、透孔30がプリント基板18を貫通して設けられている。透孔30は、取付部14の幅よりも僅かに狭い径に形成され、短絡防止カバー10の取付部14を第一面18a側から僅かに弾性変形させて挿通し、第二面18bに突出させ、突起部16が第二面18bに係止され、抜け落ちを防ぎ確実に取り付けられる。
【0015】
この実施形態の電子部品端子の短絡防止カバー10によれば、回路パターン20にハンダ28で取り付けられたリード端子26の先端部26aを覆い、隣接する回路パターン20や電子部品24のリード26との間に、導電性異物による回路短絡を確実に防ぎ、故障を防止することができる。特に、短絡防止カバー10のカバー部12を箱形またはコの字形にすることにより、ハンダ28で接続されたリード端子26の先端部26aを立体的に保護することができる。短絡防止カバー10のプリント基板18への取り付けは、取付部14を透孔30に挿入し突起部16がプリント基板18の反対側の第二面18bに係止されるだけの簡単なものであり、接着剤や連結用部品が不要で、突起部16またはプリント基板18の弾性変形により簡単に確実に、安価で取り付けることができる。また作業効率も良く、製造が容易である。
【0016】
次にこの発明の第二実施形態について図3、図4に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の短絡防止カバー32は、断面がコの字形のカバー部34から成り、カバー部34の互いに平行な一対の面の、先端部の1箇所には、取付部36が形成されている。取付部36は、カバー部34の側面の延長方向に突出する細長い板状の棒状部37が形成され、棒状部37の先端には、棒状部37の面方向に沿って突出する突起部38が片側に形成され、L字形になっている。
【0017】
この実施形態の短絡防止カバー32の取付方法は、第一実施形態と同様であり、図4に示すようにプリント基板18に設けられた透孔30に、短絡防止カバー34の取付部36を弾性変形させながら第一面18a側から挿通し、第二面18bに突出し、突起部38が第二面18bに係止され、抜け落ちを防ぎ確実に取り付けられる。また、この実施形態の短絡防止カバー32によれば、上記実施形態と同様の効果を有するものである。また、カバー部34はコの字形であるため、軽量であり、最少量の材料で製造することができる。
【0018】
次にこの発明の第三実施形態について図5、図6に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の短絡防止カバー40は、コの字形のカバー部42が設けられ、カバー部42の互いに平行な一対の面の、先端部の1か所には、取付部44が形成されている。取付部44は、カバー部34の側面の延長方向に突出する円柱状の棒状部45が形成され、棒状部45の側周面には、棒状部45の突出方向に沿って細長く形成された凸部46が設けられている。凸部46は、取付部44の円周方向の等間隔に4本設けられている。棒状部45は、その外径が透孔30よりも僅かに小さく、凸部46を包含する輪郭の最大径が、等孔30よりも僅かに大きく、棒状部45を透孔30に挿入する際に、凸部46と透孔30の内面が各々変形して互いに緊密に固定される。
【0019】
この実施形態の短絡防止カバー40の取付方法は、図5、図6に示すように、プリント基板18に設けられた透孔30に、短絡防止カバー40の取付部44を第一面18a側から挿通し、第二面18bに突出し、凸部46が透孔30の内周面に当接し、摩擦により係止され、抜け落ちを防ぎ確実に取り付けられる。また、この実施形態の短絡防止カバー40によれば、上記実施形態と同様の効果を有するものである。また、取付部44は摩擦だけでプリント基板18の透孔30に係止されているため、一定の力を加えて容易に抜くこともできる。
【0020】
なお、この発明の電子部品端子の短絡防止カバーは上記各実施形態に限定されるものではなく、短絡防止カバーのカバー部や取付部の形状は、適宜変更可能である。また、短絡防止カバーの素材も、絶縁性を有するものであれば自由に選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第一実施形態の電子部品端子の短絡防止カバーの使用状態を示す縦断面図である。
【図2】この実施形態の短絡防止カバーの斜視図である。
【図3】この発明の第二実施形態の電子部品端子の短絡防止カバーの斜視図である。
【図4】この実施形態の短絡防止カバーの使用状態を示す斜視図である。
【図5】この発明の第三実施形態の電子部品端子の短絡防止カバーの斜視図である。
【図6】この実施形態の短絡防止カバーの使用状態を示す底面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 短絡防止カバー
12 カバー部
14 取付部
15 棒状部
16 突起部
18 プリント基板
20 回路パターン
22 リード端子取付穴
24 電子部品
26 リード端子
28 ハンダ
30 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板に取り付けられる電子部品のリード端子を覆う絶縁性のカバー部と、前記カバー部に設けられ前記プリント基板に係止される取付部が設けられていることを特徴とする電子部品端子の短絡防止カバー。
【請求項2】
前記プリント基板には、前記短絡防止カバーを取り付ける位置に透孔が形成され、前記短絡防止カバーの前記取付部は、前記透孔に挿通可能な棒状部と、前記棒状部に一体に形成され前記プリント基板に係止固定可能な突起部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子部品端子の短絡防止カバー。
【請求項3】
前記カバー部は、矩形の箱体であり、前記プリント基板に当接する面が開口していることを特徴とする請求項1または2記載の電子部品端子の短絡防止カバー。
【請求項4】
前記カバー部は、前記プリント基板に当接する面が開口し断面コの字形に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の電子部品端子の短絡防止カバー。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−220962(P2007−220962A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40916(P2006−40916)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】