説明

電子銃およびマルチコラム電子ビーム装置。

【課題】
電流加熱する電子銃を数十個以上のマルチコラムに適用するには、発熱総エネルギーが大きく、電子銃チャンバーの高真空度が維持できない。また電子銃電源の寸法が大きい。さらに伝送ケーブルを伝わる振動が大きいため高精度の露光ができない。従来提案された光で加熱する方法では電子銃陰極の表面積が大きく、熱伝導が大きい保持機構のため、加熱の総エネルギーは大きく、光の軸合わせが容易でなかった。
【解決手段】
半導体レーザーなどの光を、サファイヤなどでできた光導波路の末端部から入射し、先端部に設置したレニウムなどの光で加熱される保持具を介してLaB6などの電子銃陰極を加熱して、熱電子または熱電界放射電子を真空に放射する電子銃を形成する。本電子銃をマルチコラム電子ビーム露光装置に用いると、低エネルギー化と高真空度化、高圧電源回路の小型化・低電力化ができ、露光パターンの高精度化ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体(LSI)製造工程の回路パターンを露光するリソグラフィ分野で活用される電子ビーム露光技術において、処理能力を飛躍的に高める複数の電子ビームを用いたマルチコラム電子ビーム装置の実現を可能にする、構造が簡便で、低消費電力で、多数個搭載が容易な、電子銃と、その電子銃を搭載するマルチコラム電子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体リソグラフィ技術は従来、元図となるマスクを電子ビーム露光装置で作成し、そのマスク画像を光によって半導体基板(ウェハ)に転写する写真製版技術(光リソグラフィ)が主に使われてきた。光リソグラフィ技術では、光の波長が短くなることで解像性が向上する原理から、光の波長は微細化の進展とともに短波長化が進み、g線(波長436nm)からi線(波長365nm)と変遷し、微細化、高集積化、コスト低減を果たしてきた。現在は波長が193nmのエキシマレーザー光が使われている。今後さらに短波長の13.4nmの極短紫外線を用いたリソグラフィ技術が精力的に開発されている。
【0003】
極短紫外線露光装置(EUV)が次々世代半導体リソグラフィ技術として、1時間にウェハ1枚程度の処理能力の実験装置が試作されているが、極短波長の光を効率的に発生させる困難さなど、さまざまな課題が報告されている。例えば、写真製版技術であることからマスクが必要になるが、極短波長であることから従来の透過マスク技術が使えないため、新たな反射マスク技術の確立を急がなくてはならない、発電所を併設しなくてはならないほどの大電力が必要など、周辺技術にも多くの課題を抱えている。
【0004】
一方、マスクは、半導体の微細化の進展に伴って開発コストが増大の一途をたどり、1品種のLSI当り数億円までになって来ている。電子ビーム露光装置はパターン発生機能を有する特徴からマスク開発に使われてきた。しかし、光の波長以下の転写性を実現する超解像技術の導入や、高集積化に伴うマスクデータの肥大など、光リソグラフィ技術の進展に伴って処理時間が増大し、マスク1層当り数十時間を要するようになってきている。
【0005】
電子ビーム露光方式は、細く絞った電子ビームによる一筆書きと呼ばれる方式にはじまり、可変矩形方式や、キャラクタプロジェクション(CP)と呼ばれる、微小マスクによる数平方ミクロンを一括露光する方式など、露光方式を発展させてきたが、マスク1層当り数十時間、300mmウェハへの直接露光では十数時間の露光処理時間が必要となっている。
【0006】
そこで、マスク露光処理時間の短縮を通じて、マスク価格の爆発を抑える目的や、高価なマスクを介さないで、電子ビーム露光装置によるウェハへの直接露光を実現する、マスクレスリソグラフィ技術が注目されるようになり、複数の電子ビームを用いて並列に露光処理するマルチビーム型の装置が提案され、処理能力を数十倍以上にすることが期待されている。
【0007】
マスクレスリソグラフィ技術では、産業上有益な処理能力は、300mm直径のウェハを1時間当たり10枚以上露光処理することが必要とされている。そのためには、電子ビーム1本当たりの処理能力から、略100本ほどの電子ビームによるマルチ電子ビーム露光装置の実現が求められる。したがって、300mmウェハ上に100(10×10)本の電子ビームを発生させるには、30mmピッチ以下で電子ビームを同時に複数発生させる技術が求められる。
30mmピッチ以下で電子ビームを同時に発生させると、隣接する電子銃の電界が電子銃間で互いに影響しあうので、電子銃のサイズは略10mm以下であることが望ましい。
【0008】
電子ビーム露光装置の処理能力は、電子ビーム強度に比例し、感光物質であるジストの感度に反比例する。電子ビーム露光装置では、電子間相互作用のために、大きな電流でビームがぼけてしまうので、電子ビーム1本あたり略数マイクロアンペア程度の電流値に制限しなければならない事情がある。
一方、極微細(略15nmから略10nm線幅)なLSI パターンは、感度が低いレジスト(100μC/cm2前後)によらないと、意図した露光精度が得られないと考えられる。これらの制約から、約600平方cmある300mmウェハは、60,000秒以上の露光時間がかかる計算になる。略100本のマルチコラムではこれを略600秒以下とすることができる。
【0009】
電子ビーム露光方式の一つ、数平方ミクロン単位の面積を一括露光するCP(キャラクタプロジェクション)では、平均塗りつぶし率が略20%以下のパターンで記述できるので、換算すると略120秒以下で露光ができる可能性がある。これは1時間当たり20枚の処理能力に相当する。
【0010】
電子ビームを複数発生させるには大きく二つの方法がある。一つの方法は、電子銃を1つのみ使用し、この電子銃から出る電子を多数の穴のあいたスプリッタと呼ばれる構造体を通して多数本の電子ビームにする分割整形タイプと、もう一つの方法は、露光処理する電子ビーム毎に電子銃を持つ多電子銃タイプである。
【0011】
分割整形タイプでは、スプリッタの間隔がマイクロメートル単位であることから、個々の穴に入る電子ビーム強度の均一性制御や、分割した電子ビーム毎の軸調整や偏向位置きめが難しい事から、複数の電子ビームに対し一つの電子レンズ光学鏡筒(コラム)を使い、ON/OFFだけを個別に制御し露光パターンを得る露光方式が使われている。しかし、分割した個々のビームの強度を露光に必要な精度で調整することが困難で、高精度に露光できない欠点がある。
【0012】
また、1本の電子ビームは、電子同士が同じ負電荷を持ち、電子の総量が大きいと電子同士がクーロン斥力で反発する現象から、ビームボケが顕著になり、使用できる電子量をたとえば数マイクロアンペアに制限することが必要になり、電子ビームの強度限界が存在する。この電子ビーム一本あたりの強度限界を乗り越える技術としても、マルチ電子ビーム技術は注目されている。
【0013】
一方、多電子銃タイプでは、一個の電子銃の大きさがセンチメートル単位であり、電子ビーム毎に独立したコラムを持つことから、マルチコラム方式と呼ばれ、単独の電子光学要素であるコラムエレメントを数十本束ねた構造のものである。
【0014】
この方式ではビームの強度や放射角や電流密度など、露光精度を左右するパラメーターを個別に制御できるので露光精度を得やすく、コラムが独立して複数個あるために、クーロン斥力によるビームボケに対する電子ビームの総量を制限する、電子ビーム強度限界は変わらないが、多電子銃タイプとすることで、全体で数十マイクロアンペア以上の電子ビームを使用して露光できるので、処理能力が飛躍的に向上でき、産業利用上有益な、1時間あたり数十枚のウェハを露光処理できるようになる。
【0015】
従来、電子ビーム露光装置では非特許文献1に示す、フォーゲルマウントタイプと呼ばれる電子銃陰極の保持方法と加熱方法が使用されてきた。この電子銃は電子発生源となる電子銃陰極を発熱体となるPG(パイロジェティック)グラファイトで両側から挟み、さらに両側から金属のバネで押さえつけて保持する構造をしている。PGグラファイトに流す電流でPGグラファイトの発熱状態を制御し、熱電子放出条件を得るものである。
【0016】
特許文献1と特許文献2には、電子銃陰極材料の先端部分の表面側または裏面側から非接触でレーザー光を照射し、効率的に加熱し、多くの電子ビームを取り出す技術を開示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】電子・イオンビームハンドブック第 3版 日本学術振興会第132委員会編編集委員長 裏克己 日刊工業新聞社平成10年10月28日 P119 図4.3化合物陰極の保持方法
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特許公開平8−212952号公報
【特許文献2】特許公開平6−181029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
300mmウェハ上に、多数個(略100本)の電子ビームを同時に発生させ、マルチ電子ビーム露光装置を実現するには、電子ビームを発生させる電子銃に以下の課題がある。
【0020】
非特許文献1に示すフォーゲルマウントタイプの電流による加熱方式の電子銃技術では、電子銃発熱部位の表面積が大きく、輻射熱によって失われる電力が大きいのみならず、PGグラファイトを伝わる熱伝導も大きく、多数個の電子銃全体の加熱エネルギーが大きくなるために、電子銃と電子銃の容器の冷却機構が複雑化し、電子銃の安定稼働に欠かせない高真空の維持が困難になる。
【0021】
また、加熱電源を含めた電子ビーム加速制御電源が巨大化し、多数個搭載が困難になり、その電源と電子銃を結ぶケーブルも巨大化するので、周辺機器の機械的振動がコラムへ伝達されて、電子ビームが揺らされ、パターン形成が高精度にできない課題がある。
【0022】
特許技術文献1と特許技術文献2に開示される、レーザー光による電子銃陰極の先端部分の、表面側または裏面側から非接触で照射する方式では、電子銃陰極自体の保持方法が伝導熱や輻射熱を小さくする提案がないために、略100本のマルチコラム電子ビーム露光装置に適用した場合、電子銃の発熱部位からの輻射熱と熱伝導とによる損失から加熱エネルギーの膨大化を招く課題がある。
また、光の照射が非接触であるために、光学軸合わせ精度を確保することが難しく、略100本並べられる、小さな直径の電子銃を構成することが困難という課題がある。
【0023】
したがって本発明の目的は、加熱式電界放射型または熱電子放出型の電子銃において、電子放出の制御部と放出部が小型で、コラムに周囲の振動が伝わり難く、電子銃陰極とその加熱源の表面積が極小となる電子銃を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そこで、局所加熱に適し、損失の少ない伝搬手段があるレーザー光を加熱手段とし、前記光源から当該電子銃までは光ファイバーで導き、真空中の電子銃陰極までは、電子供給機能を付加したサファイヤなど、耐熱性のある固体材料の光導波路で導き、前記光導波路と電子銃陰極との化学反応を防護し、前記光を吸収し発熱体とする保持具を介して電子銃陰極を支持する、熱電子発生機構を有する電子銃とする。
【0025】
上記光は、エネルギー密度が高いレーザー光を用いることで、電子銃のより微小領域のみを加熱し、電子銃の発熱部位の表面積を最小にできる。この事から、熱の輻射と伝導による損失を最小に抑え、小型・軽量な電子銃陰極が実現できる。また電子銃陰極の加熱手段を従来の電流から光に換える事は、電子銃の制御電源の高電圧信号が削減でき、ケーブル芯数の増大と、高電位で動作する回路の巨大化が抑えられる。
これによって、前記した課題は解決される。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の電子銃によれば、電子銃陰極と、電子銃陰極の加熱エネルギーと、電子銃の高温部位と、電子ビームを加速し制御する電源を極小化でき、電子銃とその制御電源との接続ケーブルの、芯数増大を抑え、コラムに周囲の機械振動をつたえ難い、位置合わせが容易な、マルチ電子ビーム露光装置に適した電子銃が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の電子銃の第一の実施例を説明する図である。
【図2】本発明の別の実施例を示す図で、光導波路と保持具と電子銃陰極を示す。
【図3】従来のフォーゲルマウントタイプの電子銃陰極の保持方法を示す図である。
【図4】従来のフォーゲルマウントタイプの電子銃と、その制御電源の構成図である。
【図5】本発明の光加熱の電子銃と、その制御電源の構成図である。
【図6】本発明を利用したマルチコラム方式の電子ビーム露光装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施する形態について、図を参照しながら説明する。
【0029】
図1において、光導波路102と、保持具103と、電子銃陰極104は、本発明の電子銃陰極部の第一の実施例で、サプレッサー電極105、引出し電極106、電子銃陽極107、絶縁ベース109らとともに電子銃を構成する。
【0030】
光100は、エネルギー密度の高い光であって、光導波路102の一端部(末端部)より入射し、光導波路102の相対する端部(先端部)に設置された保持具103と電子銃陰極104を高温に加熱し、光強度を調節することで、電子を真空中に射出する条件を得るものである。
ここで、光100は、たとえば半導体レーザーから射出される光である。光の波長は可視光が光軸あわせには適しているが、紫外線から赤外線を使うことも可能である。
【0031】
光導波路102は、光100の伝搬路であって、保持具103と電子銃陰極104を機械的に支持する支持体でもあり、電子銃陰極104が電子放射条件を得る高温(略1500℃)に耐える耐熱性と、電子銃陰極104への電子供給路の機能を持っている。
前記伝搬路の機能は、端部から入射された光を側面で全反射せしめて、前方に導くことにより、相対する端面に散逸することなく伝播することにある。
光導波路の電子供給路は、保持具103と電子銃陰極104を通して真空中に放出する電子を供給するために必要な機能である。
【0032】
このような光導波路102に適した材料は、光を透過せしめ、高い融点を持つサファイヤ、ルビー、ダイヤモンド、石英ガラスがある。これらの材料は高い絶縁性を有しているので、電子銃陰極からの放射電子を供給する電子供給路とするために導電性を付加する。例えば、レニウム薄膜を蒸着またはスパッター法により厚さは数百nm程度の金属薄膜101を付着する。あるいは前記光導波路表面層にイオン打ち込み技術を用いて、臭素、窒素、酸素、弗素、アルミニウム、燐、硫黄、塩素、ガリウム、砒素の中から選択された1種類の臭素、窒素、酸素、弗素、アルミニウム、燐、硫黄、塩素、ガリウム、砒素の中から選択されたイオンを照射せしめて導電性を付与してもよい。
また、光導波路102自体が絶縁物であっても、別の導線で電子銃陰極104へ電子を供給してもよい。そのために電子銃陰極には電子供給端子を設けて細い電線で前記電子銃陰極からの放射電子を電子銃電源から供給する。
以下の説明文中では光導波路としてサファイヤ、ルビー、ダイヤモンド、石英ガラスの材料の中から光の透明性と耐熱性、加工性により、前記光導波路の材料として、サファイヤを選び説明する。
【0033】
光導波路102の形状は、光100の光源から光導波路102まで伝搬する光ファイバーから入射が容易な径を有した円柱形状、あるいは先端に行くほど細くなるテーパのついた円錐状が好ましい。さらに材質と形状を変えて、金属の中空の筒の内面で光を反射させて、先端部へ光を伝播する構造体であってもよい。
【0034】
保持具103は、光100が入射・吸収される発熱体であり、電子銃陰極104を支持する構造体でもある。電子銃としての動作温度(略1500℃)で、電子銃陰極材料であるLaB6またはCeB6などと化学反応しない防護機能が得られる物質からなる。保持具は、レニウム、タンタル、炭素の中から1種類の材料を選択して使用する。以下の説明文中では主に加工性と耐熱性のよいレニウムを用いるものとする。
前記化学反応防護機能が必要な理由は、LaB6やCeB6などの電子銃陰極材料は、電子銃としての動作温度でレニウム、タンタル、グラファイト(炭素)など一部の物質を除く多くの物質と容易に化学反応して変質し、電子銃特性を失うことを防ぐ必要性による。
【0035】
保持具103の形状は、光導波路102と電子銃陰極104の径より大径の円筒で、光導波路102と電子銃陰極104を挿入し勘合する穴を両端に加工する。そのために断面はアルファベットの“H”の形になる。Hの字形状の縦方向の長さは数百μm以下とする。勘合後は溶解用のレーザーで局所的に溶解して、光導波路102に形成した溝111に流し込んで固定する。本溝111は、光導波路102の円柱の先端部に保持具103の円筒が固定できれば、必ずしもなくともよい。保持具103の上部はLaB6またはCeB6などの単結晶を閉じ込めるように溶解し固定する。
【0036】
電子銃陰極104は、高温で熱電子または熱電界放射電子を放出する材料であるLaB6またはCeB6などの6硼素化ランタノイド化合物の中から1種類の材料を選択して用いる。ランタノイドとは周期律表の第6周期第3(3A)族に属し、原子番号57のランタンLaを代表として化学的性質のよく似た71番ルテニウムLuまでの15元素の総称である。
電子銃特性としては単結晶であることが望ましい。電子銃陰極の動作温度が高温(略1500℃)であるとは、LaB6またはCeB6の仕事関数が2.6eVであり、熱電子放出ができる温度であるという意味である。
【0037】
先端を鋭利にして強電界を印加して、温度を高温にしない、低温もしくは常温電界放出電子銃というものも存在するが、電子銃陰極の水分子および炭素原子の吸着により、電子銃動作が不安定で電子ビームが安定しないので電子ビーム露光装置などの電子銃には高温加熱が必要である。
【0038】
電子銃陰極104の形状は、断面が凸形の円柱で、底面部は数百μm(略500μm)、先端部が略100μmの円筒形状をしている。
【0039】
サプレッサー電極105は、電子銃陰極104に対して0電位で、光導波路102の側面からの電子射出を抑える。
【0040】
引出し電極106は、電子銃陰極104に対して略+3kVから略+5kVの電位がかけられ、電子銃陰極104の100μm径の円筒の先端部上面付近に印加されて、熱電界放射電子が電子銃陽極107に向かって射出される。
【0041】
電子銃陽極107は、通常接地電位(0V)であり、電子銃陰極104にマイナス数十kV(たとえばマイナス50kV)の電子ビームを加速する電圧をかけ、数十keV(たとえば50keV)の運動エネルギーを熱電界放射電子に与え、電子ビーム108を得る。その結果、電子銃陰極104は略マイナス50kV、引出し電極106は略マイナス47kVから略マイナス45kVの電位となる。これにより図1の構造全体が電子銃として機能する。
【0042】
絶縁ベース109は、アルミナセラミックの円板であり、光導波路102を円板中心に固定している。絶縁ベース109は、サプレッサー電極105と光導波路102を絶縁することもできるが、通常、サプレッサー電極105は光導波路102と同電位にしてもよい。
絶縁ベース110は、引出し電極106と光導波路102を絶縁する。
【0043】
導電リング112は、光導波路102の末端部についており、ここに電子ビーム加速用電圧を接続し、光導波路102の金属膜101と保持具103と電子銃陰極104を通して放出される電子を供給する。
【0044】
図2(a)から(j)は、本発明の電子銃において、電子銃陰極部の構造と保持方法の別の実施例を示している。
【0045】
図2(a)では、光導波路102の先端に穴をあけた102aに、保持具103aが嵌合されている。保持具103aの上部には、LaB6またはCeB6の単結晶からなる、下部が500μm径で上部が100μm径の2段の円柱状の電子銃陰極104aが、その下部円柱に穴を開けて挿入されている。
図2(b)では、保持具103aにつばをつけて103bとし、レニウムとLaB6またはCeB6が直接接しないようにしてある。
【0046】
保持具103aや103bの溝113は、光導波路102aや電子銃陰極104aと保持具を固定するために、製造上の都合から形成するものである。保持具103が光導波路102や電子銃陰極104と勘合後に、光導波路102や電子銃陰極104の外部から、溝113が位置する所に溶接用レーザーを照射し、材料を溝113に溶かし込んで接合するものである。
【0047】
図2(c)では、保持具103cの上部が500μm径の円柱であって、先端部の中心に約100μm の直径の穴をあけ、この穴に100μm径のLaB6またはCeB6の単結晶の電子銃陰極104cの円柱を嵌合してある。
【0048】
図2(d)では、保持具103dの上部は300μm径の円柱であって、先端部の中心に約 100μm径の穴をあけてあり、この部分にバネ性をもたせるべく割りをいれてある。この穴に100μm径のLaB6の単結晶の円柱を嵌合してある。
本項での実施例では、電子銃陰極104cのLaB6単結晶の上部の100μm径に対し、長さは略500μmである。輻射面積としては保持具103dのレニウム材料の高温部の面積に比較して十分に小さいので発明の要旨から逸脱するものではない。
【0049】
図2(e)では、保持具103e は薄膜であり、保持機能は光導波路102aの先端部に形成された穴の内面に付着せしめたレニウム薄膜からなる保持具103eが担っている。光導波路102aに電子銃陰極104eを嵌合してある。レニウム薄膜は電子銃陰極104e側に形成されていてもよい。
【0050】
図2(f)では、保持具103f は薄膜であり、保持機能は光導波路102aの先端部に形成された穴の内面に付着せしめたレニウム薄膜からなる保持具103fが担っている。この光導波路102a電子銃陰極104fの下部に穴をあけて嵌合してある。レニウム薄膜は電子銃陰極104fの側に形成されていてもよい。
【0051】
図2(g)では、保持具103g は固体のレニウムであり、光導波路102aの先端面の穴に嵌合してある。さらに保持具103gの先端面にも穴があり、この穴に電子銃陰極104cを嵌合してある。
図2(h)では、電子銃陰極104hは先端部が円錐形状の実施例を示している。
【0052】
図2(i)では、LaB6またはCeB6の単結晶からなる、円柱と円錐を合わせた形状の電子銃陰極104iに、レニウム薄膜を付着せしめ、円錐部分の先端を切りLaB6またはCeB6の単結晶を一部露出させ、保持具103に勘合してある。
また、電子銃陰極104iに溶融固定用の溝114を形成した実施例を図2(j)に示す。
【0053】
従来技術のフォーゲルマウントタイプの電子銃陰極部を図3に示し、保持方法と加熱方法について以下に説明する。
【0054】
非特許文献1に紹介されている従来の一般的な電子銃陰極は、導電性があり、また電子を発生する仕事関数が2.6eV付近に存在するLaB6またはCeB6の単結晶を材料とする電子銃陰極201を、C軸方向に垂直な面で切断した2つのPGグラファイト202a、202bで挟んだ構造をしている。これを金属の支持体203a、203bで押さえ、バネ204a、204bを支持体205a、205bからの締め付け用のネジ206a、206b
を回転させて突き出し量を変えることで、調節する。ネジ支持台205a、205bの端部はアルミナセラミックの絶縁ベース207に固定されて、205aと205bは互いに電気的に絶縁されている。ネジ支持台205a、205b の脚部は電流導入端子208a、208bに電気的に接触しており、数アンペアの電流を流すことによって、PGグラファイト202a、202bを加熱し、LaB6またはCeB6の単結晶チップの電子銃陰極201を、略1500℃付近の高温に保ち熱電子銃陰極または熱電界放射陰極として動作させる。
【0055】
前記PGグラファイトは異方性を有し、C軸と呼ぶ方向には抵抗体として機能し、この方向に電流を流すと発熱し、かつ熱伝導率も小さい。一方C軸と垂直な方向には金属としての性質があり電流加熱ができずまた熱伝導率も大きい。そこで前記PGグラファイトをC軸方向の結晶として切断したものを2個使用して、LaB6またはCeB6(それぞれ金属的な性質を示す)などの電子銃陰極材料を両側から挟み、通電加熱するとともに、熱伝導率が小さいことを利用して前記電子銃陰極材料を保持し、電子銃としての動作温度(略1500℃)に加熱される部分がなるべく小さくなるようにしていた。
【0056】
加熱にグラファイトを使用する理由はLaB6またはCeB6などの電子銃陰極材料が電子銃としての動作温度でレニウム・タンタル・グラファイト(炭素)など一部の物質を除いて、ほぼすべての物質と容易に化学反応して変質し、電子銃特性を失うことによる。
【0057】
図4は、従来技術のフォーゲルマウントタイプの電子銃と、それを制御する電子ビーム加速用電源403と、引出し電界用電源402と、電流加熱用電源401からなる電子銃制御電源の構成図である。
【0058】
電子ビーム加速用電源403は、電子銃陰極部にマイナス数十kV(たとえば略−50kV)の高電圧を供給する高電圧発生用ユニットで、サプレッサー電極105と、2つの同じ値の抵抗器を介して、電流導入端子208a、208bに接続する。抵抗器を介して接続する理由は、電子銃陰極の電位を電子ビーム加速用電源403の出力と略一致せしめることにある。
【0059】
引出し電界用電源402は、電子銃陰極201から電子を引き出す電圧を発生するユニットで、電子銃陰極部の電位で、プラス数kV(たとえば略+3kVから略+5kV)の電圧を発生し、引出し電極106に印加する。
【0060】
電流加熱用電源401は、電子銃陰極201を加熱するPGグラファイト202aと202bに流す電流を発生するユニットで、電子ビーム加速用電源403が発生する高電圧の電位で動作する。加熱電流は高圧電源ケーブルを伝わってPGグラファイト202a、202bを加熱する。この熱によってLaB6またはCeB6単結晶チップが加熱されて電子銃陰極として機能する、1500℃の温度に昇温される。
【0061】
図5は、本発明の光加熱電子銃陰極を用いた電子銃と、電子銃の制御電源の構成図である。
【0062】
電子ビーム加速用電源403は、電子銃陰極部にマイナス数十kV(たとえば略−50kV)の高電圧を供給する、高電圧発生用ユニットで、電子銃陰極104を支持する光導波路102上の導電リング112を介して印加される。この電圧は最終的に、金属薄膜101を通してLaB6またはCeB6単結晶の電子銃陰極104に印加される。
【0063】
引出し電界用電源402は、電子ビーム加速用電源403に対してプラス数kV(略+3kVから+5kV)の電圧を発生し、引出し電極106に印加される。
【0064】
光源ユニット504は、半導体レーザーおよびその制御部で、光100を発生し、光の強度を調整するユニットである。
【0065】
光ファイバー505は、光100を光源ユニット504から光導波路102までの搬送路であり、1本当たりの太さは250ミクロン程度の太さであって、数十本以上の複数本束ねても2.5mm直径程度の太さである。光ファイバーはガラスなどの絶縁物であって、電線と異なり格別の電気的絶縁を施す必要がないためにマイナス数十kV(たとえば略-50kV)の高圧電子銃部へそのままの形で導入でき、コラムへの振動の伝播路となる高電圧ケーブルの巨大化を抑える。したがって、ますます微細化する露光パターンの要求精度を悪化させる要因を減少させることが顕著にできる。
【0066】
電子銃に投入する光100のエネルギーは、保持具103と電子銃陰極104を、1500℃付近の高温とし、それら部材の輻射熱と、光導波路104を通しての伝導熱として放熱する。そこで、電子銃陰極104の温度が1500℃で一定値になるように、光100の強度を調整する。実際には、通常数十本以上のマルチコラムで個々の電子銃温度を検知することは難しいので、引出し電極106によって熱電界放射電子流として引き出され、電子銃陽極107によって加速されて、ウェハ303に流入する電子ビーム強度を測定し、測定値を一定に保つ様に、光源ユニット504を制御する。2次的には、半導体レーザーの中に光量モニタが入っているので、これを一定にするように半導体レーザー出力を制御する。
【0067】
以上、熱電界電放射電子銃に関して述べたが、引出し電界を印加する電極に、電子銃陰極の電位から見て、マイナス数kVからマイナス数百Vを印加して、電流放出を制御するものが熱電子放出電子銃である。この場合には引出し電極106を引出し電極とは呼ばず、グリッドと呼ぶ。熱電子放出を用いる電子銃でも、熱電界放射電子銃と加熱方法はまったく同じであるので、説明を省く。
【0068】
上記、光導波路102と保持具103と電子銃陰極104が直列に接続された電子発生機構を持つ電子銃において、電子銃陰極104が高温(略1500℃)であるときの輻射熱と、光導波路102を通して伝導する伝導熱を以下に示す。
【0069】
高温部から放熱する輻射熱エネルギーは、温度の4乗と高温部の面積に比例する。したがって電子銃陰極104および保持具103の高温部の面積を小さくすれば、減少させることができる。本発明では支持の方法が簡便であるので、電子銃陰極104および保持具103の面積を数百平方μm程度にすることによって、従来の電子銃に比較して高温部位の面積を数分の1から数十分の1にでき、輻射熱を数分の1から数十分の1にできる。
【0070】
伝導熱は、熱伝導率と断面積に比例し、長さに反比例する。サファイヤの熱伝導率は石英ガラスの熱伝導率に比較して大きいが、耐熱性が2200℃と優れているので、本発明の光導波路102の材料にはサファイヤが望ましい。石英ガラスは熱伝導率としては光導波路に適しているが、軟化温度が1200度と低いので、電子銃陰極温度を下げて使用する用途に有用である。
光導波路102は、数百μm以下の断面径を有する円柱または円錐とし、長さを数mmとすることで、断面積を小さく、長さを長くできる。これによって本発明の電子銃は、従来の電子銃に比較して伝導熱を数分の1から数十分の1にできる。
【0071】
図1の第一の実施例において、光導波路102は、具体的には直径略500μmのサファイヤの円柱形状の物体であり、長さが略10mmである。保持具103の直径が略600μm以下で、長さが略500μm以下であるとき、電子銃陰極104が略1500℃で、絶縁ベース109で保持された部分が略500℃である場合には、熱伝導によって伝達する熱量は数百mW以下となり、熱輻射で放射する熱量は数百mW以下となる。
【0072】
電子銃が電子放出条件を得る加熱エネルギーは、上記の電子銃陰極104の輻射熱と伝導熱の合計となる。本発明で電子銃の加熱エネルギーは、1個で略1W以下となり、従来数Wであった数分の1以下となる。そのために数十個の電子銃を搭載するマルチコラム電子ビーム露光装置の電子銃チャンバーの温度は低く(略100℃以下)保つことができ、真空度は10のマイナス7乗パスカル以上の高真空度を維持することができる。
【0073】
図4に示すフォーゲルマウントタイプの電子銃制御電源を、数十本以上のマルチコラム露光装置に適用すると、電子ビーム加速用電源403はマルチコラムに共通で、1個あればよいが、引出し電界用電源402と電流加熱用電源401は電子銃の数だけ必要になる。
引出し電極106に流れる電流は最大でも1mA(ミリアンペア)を超えないために、引出し電界用電源が数十個あっても大きな負担とはならないが、電流加熱用電源401は1個の電子銃当り数アンペア、合計で数十アンペアから数百アンペアという大電流を、マイナス数十kVの電位で発生し、電子銃まで伝送する必要があり、以下の課題が発生する。
【0074】
第一に、電子銃の数に応じて電子銃加熱エネルギーが増大し、高電圧部位の回路構成が大規模化することから、放電を防護するための空間確保で電源の大きさが巨大化する。
【0075】
第二に、電子銃毎に数アンペアの加熱電流と高電圧制御信号を伝送するケーブルは、電子銃の数の4または5倍の芯数が必要で、高耐圧ケーブルが巨大な径になる。
特に数アンペアを流す電流路は、直流損失を抑える観点から、数mm径の電線が必要で、ケーブル径をより巨大化する。このケーブルを介して周囲環境の機械的振動が、コラム部に伝わり露光精度を悪化させる事は、単一電子ビーム露光装置の露光精度を悪化させる要因が、さまざまな振動である事実から、容易に想像される。
【0076】
第三に、図3に示し説明した構造から、電子銃陰極構造が複雑で、ネジ206a、206bの締め付け具合で電子銃陰極201の電子放射位置が変化し、電子ビーム108の軌道の中心軸合わせが難しいという構造であることから、20mm以下の径で製作することが難しい。また、できたとしても、微細な直径の電子銃陰極の軸あわせを高精度に保って、多数作成することは困難である。
さらに、電子銃の実装間隔が20mm以下になると、1つの電子銃の加熱電流が作り出す磁界が、電子銃自体や隣接する電子銃の陰極から放出される電子の軌道に影響を与え、ビーム位置の軸ずれを起こす要因となる。
【0077】
本発明の電子銃は、マルチコラム露光装置に適用すると、フォーゲルマウントタイプに比較しての課題を克服する、以下の特徴を持っている。
第一に、電子銃の高電圧電源に加熱電流源を多数個搭載する必要がなく、電子銃電源の規模と電源容量が、半分以下にできる。
第二に、高電圧信号伝送ケーブル径の巨大化が抑えられ、周囲振動の伝播経路の増大を抑え、露光精度の劣化要因の低減につながる。
第三に、電子銃陰極の支持構造を単純化できるために、製作が容易で、大幅な小型化が実現でき、かつ、電子銃先端からを意図する位置設定性に優れる。
以上のことから、電源と電子銃本体が従来の数分の1程度に小さくできるために、マルチコラムシステムの数十本以上の複数本化に最適な小型電子銃が構成できる。
【0078】
図6は、本発明の電子銃を利用したマルチコラム電子ビーム露光装置の概要を示す。
マルチコラム電子ビーム露光装置は、たとえば略15mmから略70mm 程度の太さの単一コラムエレメント301を、2次元的に数十本以上(たとえば30本から250本以上)という数で複数個並べ、1枚のウェハ303上に電子ビーム108を複数照射するマルチコラム群302を構成している。そのために高速な露光処理が可能となる。
【0079】
単一コラムエレメント301は以下の部品から構成される。
電子銃304から発射された電子ビームは、第1の矩形のアパーチャー305で矩形に整形され、前段のレンズ・偏向光学系306で、第2の矩形アパーチャーまたはCPマスク308上に結像される。第2矩形アパーチャーまたはCPマスク308上での電子ビームの位置は、ビーム偏向器によって、意図したサイズまたは形状のビームに再整形される。さらに後段のレンズ・偏向光学系309で、ウェハ303上の適切な位置に偏向し結像される。レンズ・偏向光学系306、309はさらに分解すると磁界レンズ307で構成される。
【0080】
以上のように、本発明の電子銃技術は、さまざまな問題点を克服し、マルチコラム電子ビーム露光装置の実現に不可欠であり、マルチコラム電子ビーム露光装置は、次世代微細リソグラフィ技術の中核を担う技術として電子産業に貢献するところが大きいと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の電子銃技術によるマルチコラムの電子ビーム露光装置は、次世代の半導体リソグラフィ技術に必要とされる、15nmから10nm線幅のLSI パターンを、300mmウェハで1時間当たり略10枚から略20枚以上の処理能力で露光することのできる技術として、可能性が高い露光装置である。
また、本発明の電子銃によって実現されるマルチコラム構造は、半導体基板の検査を行う電子ビーム検査装置にも適用できる。
さらに、本発明の電子銃技術は、電子ビームを使うすべての用途に適用できるもので、マルチコラム構造だけに限定されない。
【符号の説明】
【0082】
100 光:電子銃陰極を加熱する。
101 金属薄膜
102 光導波路
103 保持具
104 電子銃陰極
105 サプレッサー電極
106 引出し電極
107 電子銃陽極
108 電子ビーム
109 絶縁ベース
110 絶縁ベース
111 溝
112 導電リング
113 溝
114 溝
201 電子銃陰極
202a、202b PGグラファイト
203a、203b 支持体
204a、204b バネ
205a、205b ネジ支持台
206a、206b 調節用ネジ
207 絶縁ベース
208a、208b 電流導入端子
301 単一コラムエレメント
302 マルチコラム群
303 ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱式電界放射型電子銃または熱電子放出型電子銃の、真空中で電子銃陰極を加熱する手段に光を用いた電子銃において、前記光を一端部から入射し、散逸することなく一方向に伝播する、高融点の光導波路と、
前記光導波路と結合し、前記光導波路で他端部に保持され、前記光で加熱される保持具と、
前記保持具によって保持され、前記保持具を介して、加熱される電子銃陰極を備え、
前記光導波路、前記保持具および前記電子銃陰極の順序で線状に近接して配置したことを特徴とする電子銃。
【請求項2】
請求項1に記載する電子銃において、前記光導波路は、電気伝導性を付加したことを特徴とする電子銃。
【請求項3】
請求項1に記載する電子銃において、前記電子銃陰極に電子供給端子を設けたことを特徴とする電子銃。
【請求項4】
請求項2に記載する前記光導波路は、円柱形状の光媒体の表面に金属薄膜を付着せしめたものであることを特徴とする電子銃。
【請求項5】
請求項1に記載する電子銃において、前記光導波路は、前記光を前記保持具に向かって集光する目的で、前記保持具に向かって細くなるテーパをつけた円錐形状の光媒体の表面に、金属薄膜を付着せしめたものであることを特徴とする電子銃。
【請求項6】
請求項1に記載する電子銃において、前記光導波路は高い融点を持つ、サファイヤ、ルビー、ダイヤモンド、石英ガラスの中からから選択された1種類の材料で前記光導波路を成し、当該導波路の表面に金属薄膜を付着せしめたものであることを特徴とする電子銃。
【請求項7】
請求項2に記載する前記光導波路は、臭素、窒素、酸素、弗素、アルミニウム、燐、硫黄、塩素、ガリウム、砒素の中から選択された、電気伝導性を付加するイオンを材料の表面層に照射せしめたものであることを特徴とする電子銃。
【請求項8】
請求項2に記載する前記光導波路は、金属薄膜板からなる中空の円柱またはテーパをつけた円錐の一部をもってなることを特徴とする電子銃。
【請求項9】
請求項1に記載する電子銃において、前記電子銃陰極は、LaB6またはCeB6を含む6硼素化ランタノイド化合物の中から1種類を選択した材料からなることを特徴とする電子銃。
【請求項10】
請求項9に記載する電子銃陰極は、6硼素化ランタノイド化合物の単結晶であることを特徴とする電子銃。
【請求項11】
請求項1に記載する電子銃において、光で加熱される前記保持具が、LaB6またはCeB6を含む6硼素化ランタノイド化合物と、電子銃陰極としての動作温度である高温にて化学反応をしない物質であるレニウム、タンタル、炭素の中から、1種類を選択した材料からなることを特徴とする電子銃。
【請求項12】
請求項1に記載する電子銃において、光で加熱される前記保持具は、レニウム、タンタル、炭素の中から1種類を選択した材料からなる薄膜を、前記光導波路の先端面に付着したことを特徴とする電子銃。
【請求項13】
請求項1に記載する電子銃において、光で加熱される前記保持具は、レニウム、タンタル、炭素の中から1種類を選択した材料からなる薄膜を、前記光導波路の先端面の穴の内部に付着せしめたことを特徴とする電子銃。
【請求項14】
請求項12に記載する光で加熱される前記保持具がレニウム、タンタル、炭素の中から1種類を選択した材料からなる薄膜を、前記電子銃陰極の底面部に付着せしめたことを特徴とする電子銃。
【請求項15】
請求項1に記載する電子銃において、前記光導波路の一端部より照射される前記光は、半導体レーザーから射出される光であって、光ファイバーを用いて、前記光導波路に入射することを特徴とする電子銃。
【請求項16】
請求項1から15の何れか一項に記載する電子銃を複数搭載した、電子ビームを用いた半導体の回路パターンの露光または検査を行うマルチコラム電子ビーム装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−181339(P2011−181339A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44417(P2010−44417)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(710000424)
【Fターム(参考)】