説明

電極及びこれを用いた非水電解質電池並びに非水電解質電池の製造方法

【課題】集電体の電極取出し部に歪が少ない非水電解質電池用の電極を提供する。
【解決手段】リチウム二次電池用の電極Eは、活物質の圧粉成形体20を集電体1の両面に配置した後、両圧粉成形体20の間に集電体1を挟んだ状態で加熱し、圧粉成形体20を集電体1と一体に焼結して活物質層(焼結体)2を形成することで作製されている。集電体1は、複数の金属線110を間隔をあけて並列することで形成されており、活物質層2から露出する電極取出し部11が金属線110の各端部(線状片)で構成されている。他方、活物質層2に表面が覆われる活物質層形成部12は、複数の金属線110と交差するように配された連結部材120により金属線110同士が連結されており、格子状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質を含む一対の活物質層と、その間に挟持された集電体とを備える非水電解質電池用の電極、及びこれを用いた非水電解質電池並びに非水電解質電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質電池は、長寿命・高効率・高容量であり、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの電源に利用されている。非水電解質電池の代表例として、リチウム二次電池が挙げられる。
【0003】
リチウム二次電池は、正極と負極の間を電解質層を介してリチウムイオンが移動することによって、放電や充電を行う電池である。このリチウム二次電池に使用される電極として、集電体を活物質の焼結体で挟んだものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、集電体に貫通部を設け、その貫通部に形成された連結部を介して焼結体同士を結合することで、集電体の両面に焼結体を固定した電極が提案されている。また、特許文献1に記載のリチウム二次電池では、焼結体から露出する集電体の端部(電極取出し部)が、電池の外装ケースに設けられた端子に溶接され、端子と電気的に接続されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000‐251876号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、リチウム二次電池用の電極の集電体として、アルミニウムや銅の金属箔が一般的に使用されている。また、特許文献1には、集電体として、貫通孔を形成した金属箔、或いは金属メッシュを用いてもよい旨の記載がある。しかし、本発明者らが鋭意検討を行った結果、このような集電体では、電極作製時に集電体の電極取出し部に歪(例えば、しわ)が生じるという問題があった。さらには、電極取出し部に歪が生じた電極を使用して非水電解質電池を製造した場合、電極取出し部と端子とを接続する作業性が低くなるという問題があった。
【0007】
電極取出し部に歪が生じるメカニズムは、次のように考えられる。
【0008】
図4は、従来のリチウム二次電池用の電極を説明するための図である。通常、一対の活物質の焼結体2とその間に挟持された集電体1xとからなる積層構造の電極Eは、次のようにして作製されている。まず、活物質の粉末を型に入れ圧縮した圧粉成形体20を一対用意し、金属箔からなる集電体1xの電極取出し部が圧粉成形体20の端面から一方向に突出するように、集電体1xの両面に圧粉成形体20を配置する(図4(A)参照)。そして、一対の圧粉成形体20の間に集電体1xを挟んだ状態で加熱し、圧粉成形体20と集電体1xとを一体に焼結することで作製されている。
【0009】
圧粉成形体20を焼結して得られた焼結体2は、焼結前後で体積が収縮する。そのため、集電体1xの焼結体2で覆われた部分(活物質層形成部12)に収縮しようとする応力が作用し、この部分に歪が生じるだけでなく、それに伴い、焼結体2から露出した集電体1xの電極取出し部11が波打つなど、電極取出し部11にも歪が生じる(図4(B)参照)。
【0010】
ここでは、集電体に何ら加工されていない金属箔を用いた場合を説明したが、圧粉成形体と集電体とを一体に焼結する時点において、電極取出し部が突出方向と直交する方向に連続的に繋がった二次元構造のものであれば、電極取出し部に歪が生じることになる。そのため、集電体として、貫通孔を形成した金属箔、或いは金属メッシュを用いた場合であっても、金属箔を用いた場合と同様に、集電体の電極取出し部に歪が生じる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、活物質層から露出する集電体の電極取出し部に歪が小さい電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の非水電解質電池用の電極は、活物質を含む一対の活物質層と、その間に挟持された集電体とを備える。活物質層は、集電体と一体に焼結することで形成されている。集電体は、活物質層に表面が覆われる活物質層形成部と、活物質層から露出する電極取出し部とを有している。そして、電極取出し部は、活物質層の一方向に突出すると共に、互いに間隔をあけて配列された複数の線状片からなり、各線状片が互いに連結されていないことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、集電体の電極取出し部が活物質層の一方向に突出すると共に間隔をあけて配列され且つ互いに連結されていない複数の線状片からなる構造であり、電極取出し部が突出方向と直交する方向に連続的に繋がっていない。
【0014】
そのため、活物質層を集電体と一体に焼結したとき、集電体の活物質層形成部に歪が生じたとしても、互いに連結されていない複数の線状片からなる電極取出し部には歪が生じ難く、電極取出し部の歪が小さくなる。また、焼結終了時点において、複数の線状片の自由端側が電極の厚み方向(一方の活物質層側から他方の活物質層側への方向)にばらばらに位置していても、形状が線状の線状片は屈曲自在性に富み、各線状片を同一平面上に位置させることが容易であり、結果として電極取出し部の歪が小さくなる。ここで、本発明でいう「互いに連結されていない」とは、活物質層と集電体とを一体に焼結する際に電極取出し部の構成部材同士が互いに連結されていないことを意味し、この電極を使用して非水電解質電池を製造した場合に各線状片が集電体以外の部材、例えば端子に接続されることにより連結されていることを含まない。また、この電極を焼結終了後に非水電解質電池に使用する前に、各線状片同士を束ねたり、別途用意した導電箔などにより各線状片同士を一体にしてもよく、このようにすれば、電極取出し部の接続作業を効率よく行うことができる。
【0015】
なお、本発明において、一方向に突出するとは、少なくとも一方向に突出することを意味し、活物質層の複数方向に突出する場合も含まれる。この場合、集電体が複数の電極取出し部を有することになる。
【0016】
ここで、活物質層形成部は、その形状が特に限定されるものではなく、箔状とする他、後述するように、パンチングメタル状、或いは格子状としてもよい。また、線状片の断面形状は、特に限定されるものではなく、円形状、楕円形状、或いは矩形状などの多角形状としてもよい。集電体は、活物質層形成部と線状片(電極取出し部)とを一枚物から形成する他、両者を別部材とし、両者を溶接などにより接合して一体化した構成としてもよい。
【0017】
(2)本発明において、活物質層形成部は、一方の活物質層と他方の活物質層とを連通する開口部が設けられていることが好ましい。
【0018】
活物質層形成部に開口部が設けられていることで、一方の活物質層と他方の活物質層とを開口部を介して連結することができる。つまり、活物質層を集電体と一体に焼結したときに、活物質層形成部を挟んで位置する焼結体(活物質層)同士を直接連結して一体物とすることができる。そのため、活物質層を集電体に強固に固定することができ、また、この連結部分も活物質を含むので、発電要素として寄与するため、電極の容量密度を高めることができる。
【0019】
活物質層形成部の形状の具体例としては、例えばパンチングメタル状、格子状などが挙げられる。そして、このような形状の活物質層形成部は、箔状の場合と比較して、歪を吸収し易い形状であり、導入された歪による活物質層の剥離が起こり難く、活物質層との密着性を高めることができる。
【0020】
(3)本発明において、集電体は、複数の金属線を並列することで形成されていることが好ましい。
【0021】
複数の金属線を間隔をあけて並列したもので集電体を構成しても、本発明の目的を達成することができ、この場合、活物質層の一方向に突出する金属線の各端部が上記した線状片に相当する。また、複数の金属線を配列した構造の活物質層形成部は、歪が入り難く、活物質層の密着性をより高めることができる。
【0022】
(4)上記した集電体の活物質層形成部は、複数の金属線と交差するように配された連結部材により、格子状に形成されていることが好ましい。
【0023】
金属線同士を連結部材により連結して、活物質層形成部を格子状に形成することで、一体物として取り扱うことが可能であり、電極の作製作業の効率化を図ることができる。金属線と連結部材とは、編み合わせることで一体にする他、交差箇所を溶接などにより接合して一体化してもよい。また、金属線と連結部材とは同じ材料で構成してもよいし、異なる材料で構成してもよく、連結部材に同じ金属線を用いてよい。
【0024】
(5)上記した金属線の間隔が、活物質層のうち厚い方の厚みの2倍以下であることが好ましい。
【0025】
複数の金属線を配列した構造の活物質層形成部を平面視した場合、金属線から最も遠い距離は金属線の間隔の1/2に等しく、電極を集電体表面と平行に切断した平面において、金属線間の中央に位置する活物質における電子伝導距離が最も長くなる(図2(A)参照)。一方、電極を集電体表面に対して垂直方向に切断した縦断面では、金属線から最も遠い距離は活物質層の厚みと等しいと考えた場合、電極表面(活物質層の集電体と当接する面とは反対側の面)に位置する活物質における電子伝導距離が最も長くなる(図2(B)参照)。そこで、金属線の間隔を活物質層の厚みの2倍以下とすれば、最も長い電子伝導距離が活物質層の厚みに制限されることになるので、電極の内部抵抗の増大を抑えることができる。
【0026】
(6)本発明の非水電解質電池は、正極と負極、及びこれら正負極間に介在される電解質層を備え、正極又は負極が本発明の電極であることを特徴とする。
【0027】
本発明の非水電解質電池は、集電体の電極取出し部に生じる歪が低減されているため、従来存在した歪による無駄なスペースを削減することができる。その結果、非水電解質電池の体積当たりのエネルギー密度を改善することができる。特に、本発明の電極を積層して非水電解質電池を構成した場合、その効果が大きい。なお、ここでいう非水電解質電池には、一次電池であっても二次電池であっても本発明の効果を奏することから、これら双方を含む。
【0028】
(7)本発明の非水電解質電池の製造方法は、本発明の電極を使用し、複数の線状片を非水電解質電池の端子に接続する工程を含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の電極は、電極取出し部に生じる歪が小さい。そのため、本発明の電極を使用し、その電極取出し部を端子に接続することによって、電極取出し部と端子とを接続する作業が行い易くなる。したがって、非水電解質電池を作製する作業効率が向上する。また、各線状片同士を束ねたり、別途用意した導電箔などにより各線状片同士を一体にしてもよく、このようにすれば、電極取出し部の接続作業を効率よく行うことができる。
【0030】
集電体における電極取出し部の各線状片と非水電解質電池の端子との接続方法の具体例としては、例えば、各線状片を導電性ペーストにより端子にそれぞれ接続する方法や、各線状片を導電箔により一体に接続し、この導電箔を端子に接続する方法が挙げられる。
【0031】
ここで、導電箔には、集電体と同じ材料を用いることができる。また、導電箔は、電極を作製した後、非水電解質電池に使用する前に、圧着などの方法により各線状片と一体化すればよい。これにより、導電箔には、電極作製時に作用する応力が加わることがなく、歪が生じることがない。
【0032】
なお、本発明の非水電解質電池の製造方法を実施するにあたって、電極取出し部の各線状片の全てを端子に接続せず、例えば線状片のうちの一本のみを端子に接続しない場合であっても、本発明の効果を奏する。したがって、複数の線状片のうち一本のみが端子に接続されていない非水電解質電池も、本発明の製造方法により生産した物となり得る。
【発明の効果】
【0033】
本発明の非水電解質電池用の電極は、集電体の電極取出し部が活物質層の一方向に突出すると共に間隔をあけて配列され且つ互いに連結されていない複数の線状片からなる構造であるので、電極取出し部に生じる歪が小さい。そのため、本発明の電極を非水電解質電池の端子に接続するとき、電極取出し部と端子との接続作業が容易であり、作業効率が向上する。
【0034】
また、本発明の電極を非水電解質電池に使用した場合、集電体の電極取出し部に生じる歪が低減されているため、非水電解質電池の体積エネルギー密度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の非水電解質電池用の電極及び非水電解質電池について、より詳しく説明する。
【0036】
本発明の電極を非水電解質電池の正極とする場合、活物質の材料としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4、LiMnO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、及びオリビン型鉄リン酸リチウム(LiFePO4)から選択される1種のリチウム金属酸化物や、酸化マンガン(MnO2)、或いはこれらの混合物を用いることができる。その他、イオウ(S)や、硫化鉄(FeS)、二硫化鉄(FeS2)、硫化リチウム(Li2S)及び硫化チタニウム(TiS2)から選ばれる1種の硫化物や、或いはこれらの混合物を用いてもよい。中でも、リチウム金属酸化物、特にLiCoO2は、電子伝導性に優れており、好適である。また、集電体の材料としては、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、これらの合金、及びステンレスが好適である。
【0037】
上記した正極活物質の粉末を焼結して、焼結体からなる活物質層を形成する場合、活物質の粉末の粒径は、電極の出力特性を考慮して、1〜10μmとすることが好ましい。また、活物質層の厚みは、電池の高容量化や薄型化を考慮して、50〜100μmとすることが好ましい。また、集電体の厚みは、10〜20μmとすることが好ましい。
【0038】
本発明の電極を非水電解質電池の負極とする場合、活物質の材料としては、金属リチウム(Li金属単体)又はリチウム合金(Liと添加元素からなる合金)の他、グラファイトなどの炭素(C)や、シリコン(Si)、インジウム(In)を用いることができる。中でも、リチウムを含む材料、特に金属リチウムは、電池の高容量化、高電圧化の点で優位であり、好適である。リチウム合金の添加元素としては、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)及びインジウム(In)などを用いることができる。また、集電体の材料としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)が好適である。
【0039】
本発明の非水電解質電池において、電解質層は、例えば固体電解質や有機電解液で構成することができる。電解質層を固体電解質で構成する場合、リチウムイオン伝導性の高い硫化物系固体電解質を用いることが好ましい。このような硫化物系固体電解質としては、Li-P-S系やLi-P-S-O系のものが挙げられる。その他、Li-P-O系やLi-P-O-N系の酸化物系固体電解質を用いてもよい。また、電解質層を有機電解液で構成する場合、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた有機電解液を含浸させたセパレータを用いるとよい。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びこれら混合溶媒などを用いることができる。リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)などを用いることができる。
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。また、図中において同一部材には同一符号を付している。
【0041】
(実施例1)
図1は、本発明に係るリチウム二次電池用の電極の一例を説明するための図であり、(A)はその作製手順を示す概略説明図、(B)はその概略斜視図を、それぞれ示す。また、図2(A)は図1の電極を集電体表面と平行に切断した概略平面図であり、図2(B)は(A)のA‐A線矢視による概略縦断面図である。
【0042】
リチウム二次電池用の電極Eの基本構造は、一対の活物質層2の間に集電体1が挟持された構造である(図1(B)参照)。活物質層2は、活物質の粉末を焼結した焼結体からなり、集電体1と一体に焼結することで形成されている。また、集電体1は、活物質層2に表面が覆われる活物質層形成部12と、活物質層2から露出する電極取出し部11とを有している。ここで、本発明の特徴の一つは、電極取出し部11が、活物質層2の一方向に突出すると共に、互いに間隔をあけて配列された複数の線状片からなり、各線状片が互いに連結されていないところにある。
【0043】
集電体1は、複数の金属線110を間隔をあけて一方向と平行に並列することで形成されており、電極取出し部11が活物質層2の端面から一方向に突出する金属線110の各端部(線状片)で構成されている。他方、活物質層形成部12は、複数の金属線110と交差するように配された連結部材120により金属線110同士が連結されており、開口部130を有する格子状に形成されている(図2(A)参照)。
【0044】
本例では、金属線110及び連結部材120に同じ線径20μmのアルミニウムの丸線を用いており、金属線110と連結部材120とを編み合わせることで一体化している。また、金属線110及び連結部材120をそれぞれ等間隔に配置し、金属線の間隔pを100μmとした。
【0045】
電極Eは、次のようにして作製した。まず、粒径3μmのLiCoO2の粉末を型に入れ圧縮した圧粉成形体20を一対用意し、これら一対の圧粉成形体20を、集電体1の電極取出し部が圧粉成形体20の端面から一方向に突出するように、集電体1の両面に配置する(図1(A)参照)。その後、一対の圧粉成形体20の間に集電体1を挟んだ状態で加熱し、圧粉成形体20を集電体1と一体に焼結して活物質層(焼結体)2を形成することで、電極Eを作製した。作製した電極Eを厚み方向に切断し、断面を観察したところ、一方の活物質層2と他方の活物質層2とが開口部130を介して直接連結されていた。
【0046】
本例では、一対の圧粉成形体20の間に集電体1を挟んだ状態で加熱するときは、挟み治具(図示せず)で挟むことにより、図1(A)中矢印方向に5×10-4Paの力を加えながら大気中970℃で6時間加熱した。また、各活物質層2の厚みtをそれぞれ60μmとした(図2(B)参照)。なお、図2(B)では、金属線110と連結部材120とをまとめて図示し、簡略化している。
【0047】
以上説明したリチウム二次電池用の電極Eは、集電体1が複数の金属線110を間隔をあけて並列することで形成されており、電極取出し部11が活物質層2の一方向に突出する金属線110の各端部(線状片)で構成されている。そのため、活物質の粉末を集電体1と一体に焼結して活物質層2を形成したとき、電極取出し部に歪が生じ難く、リチウム二次電池に使用する際、電極取出し部11の接続作業性に優れる。また、活物質層形成部12に開口部130が設けられていることにより、開口部130を介して活物質層2同士を直接連結することができる。そのため、活物質層2を集電体1に強固に固定することができ、また、この連結部分も活物質を含むので、電極の容量密度を高めることができる。更に、活物質層形成部12において、複数の金属線110が連結部材120により互いに連結され一体化されているため、各金属線110がばらけることがなく、金属線110のみからなる集電体と比較して、焼結前において集電体1の取り扱いが容易である。その他、金属線110の間隔pが活物質層2の厚みtの2倍以下に設定され、電子伝導距離が活物質層2の厚みに制限されているため、電極の内部抵抗の増大を抑えることができる。
【0048】
(変形例)
図3の(A)〜(D)は、集電体の別の例を示す平面図である。以下、図2に示す集電体1との相違点を中心に説明する。
【0049】
図3(A)、(B)に示す集電体1a、1bは、いずれも金属線のみで形成されており、集電体1とは異なり、連結部材を省略することができる。ここでは、集電体1aでは直線状の金属線110aを用いており、集電体1bでは波状の金属線110bを用いている。また、集電体1bは、各金属線110bの波状の波長、振幅を同一とし、且つ同位相となるよう複数の金属線110bを並列することで形成されているが、この波長、振幅、位相がいずれかの金属線で異なってもよい。
【0050】
図3(C)に示す集電体1cは、集電体1とは異なり、活物質層形成部12が箔状であり、電極取出し部11がこの活物質層形成部12から一方向に突出する複数の線状片111で構成されている。この集電体1cは、一枚の金属箔を打ち抜き加工することにより作製されている。また、図3(D)に示す集電体1dは、集電体1cとは異なり、活物質層形成部12がパンチングメタル状であり、活物質層形成部12が箔状の集電体1cと比較して、活物質層との密着性に優れる。この集電体1dは、集電体1cの活物質層形成部12を打ち抜くことにより多数の連通孔を形成することで、活物質層形成部12に開口部130が設けられている。開口部130の形状は、円形以外であってもよい。
【0051】
いずれの集電体も、電極取出し部11が、間隔をあけて配列され且つ互いに連結されていない複数の金属線110a,110bの各端部、或いは複数の線状片111からなる構造である。そのため、活物質層を集電体と一体に焼結したとき、電極取出し部11に歪が生じ難く、リチウム二次電池に使用する際、電極取出し部11の接続作業性に優れる。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、活物質の粉末を集電体と一体に焼結して活物質層を形成した後、非水電解質電池に使用する前に、電極取出し部を構成する複数の金属線の各端部(複数の線状片)同士を束ねたり、導電箔により複数の金属線の各端部(複数の線状片)同士を一体にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の非水電解質電池用の電極は、電極取出し部の接続作業性が求められる非水電解質電池の分野に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るリチウム二次電池用の電極の一例を説明するための図であり、(A)はその作製手順を示す概略説明図、(B)はその概略斜視図を、それぞれ示す。
【図2】(A)は図1に示す電極を集電体表面と平行に切断した概略平面図であり、(B)は(A)のA‐A線矢視による概略縦断面図である。
【図3】(A)〜(D)は集電体の別の例を示す概略平面図である。
【図4】従来のリチウム二次電池用の電極を説明するための図であり、(A)はその作製手順を示す概略説明図、(B)はその概略斜視図を、それぞれ示す。
【符号の説明】
【0055】
E 電極
1,1a,1b,1c,1d,1x 集電体
11 電極取出し部 12 活物質層形成部
110,110a,110b 金属線 111 線状片 120 連結部材 130 開口部
2 活物質層(焼結体) 20 圧粉成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質を含む一対の活物質層と、その間に挟持された集電体とを備える非水電解質電池用の電極であって、
前記活物質層は、前記集電体と一体に焼結することで形成され、
前記集電体は、前記活物質層に表面が覆われる活物質層形成部と、前記活物質層から露出する電極取出し部とを有しており、
前記電極取出し部は、前記活物質層の一方向に突出すると共に、互いに間隔をあけて配列された複数の線状片からなり、各線状片が互いに連結されていないことを特徴とする電極。
【請求項2】
前記活物質層形成部は、一方の活物質層と他方の活物質層とを連通する開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記集電体は、複数の金属線を並列することで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
前記集電体の活物質層形成部は、前記複数の金属線と交差するように配された連結部材により、格子状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電極。
【請求項5】
金属線の間隔が、前記活物質層のうち厚い方の厚みの2倍以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の電極。
【請求項6】
正極と負極、及びこれら正負極間に介在される電解質層を備える非水電解質電池であって、
前記正極又は負極は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極であることを特徴とする非水電解質電池。
【請求項7】
集電体における電極取出し部の各線状片が、導電性ペーストにより電池の端子にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項6に記載の非水電解質電池。
【請求項8】
集電体における電極取出し部の各線状片が、導電箔により一体に接続され、この導電箔が電池の端子に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の非水電解質電池。
【請求項9】
活物質を含む一対の活物質層と、その間に挟持された集電体とを備える電極を用いた非水電解質電池の製造方法であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極を使用し、
複数の線状片を非水電解質電池の端子に接続する工程を含むことを特徴とする非水電解質電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−61861(P2010−61861A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223830(P2008−223830)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】