説明

電極材料用炭素質物

【課題】 リチウム二次電池用負極活物質および電気二重層キャパシタ用活性炭などの蓄電装置用電極材料として好適に用いることができる電極材料用炭素質物および低温焼成炭素粉末(炭化品)を提供すること。
【解決手段】 石油系および/または石炭系重質油を熱処理して得られるコークス
を、粒径2mm以上の粒子が0.1重量%以下、かつ粒径0.05mm以下の粒子が0.1重量%以下に粗
粉砕および分級して得られる炭素質物を用い、さらに、平均粒径1μm以上30μm以下に微
粉砕した後600℃以上1,400℃以下の温度で焼成するか、または600℃以上1,400℃以下の温度で焼成した後平均粒径1μm以上30μm以下に微粉砕することにより得られる電極材料用
低温焼成炭素粉末(炭化品)を蓄電装置用電極材料として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ用活性炭およびリチウム二次電池用負極活物質などの高性能な電極材料を製造するための原料として用いるのに好適な炭素質物および低温焼成炭素粉末ならびに蓄電装置用電極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気二重層キャパシタやリチウムイオン二次電池などの新しい蓄電装置が相次いで開発されている。該蓄電装置は、従来の蓄電池やコンデンサに比べて高容量および/ま
たは高出力であり、携帯電話やノートパソコンなどの携帯電子機器から、ハイブリッド電気自動車などの比較的大型な装置まで幅広く使われている。
【0003】
上記の蓄電装置には、その電極材料として、活性炭、黒鉛、低温焼成炭素などの炭素材料が使用されており、該炭素材料は、導電性、層間化合物形成能、耐薬品性などの物理特性および供給安定性や価格などの経済性において、他元素を主体とする電極材料に比べて優れている。しかしながら、それと同時に炭素材料の特性が蓄電装置の性能に大きく影響するので、炭素材料の製造方法には、特段の注意を払う必要がある。
【0004】
電気二重層キャパシタにおいて、その静電容量は、電気二重層キャパシタの電極を構成する活性炭粒子の比表面積、細孔分布、結晶度、純度などに依存する。したがって、電気二重層キャパシタ用として適切な活性炭を得るためには、原料である炭素質物に粉砕、炭化、賦活など種々の処理を施す必要がある。
【0005】
上記の炭素質物を原料とする活性炭の製造工程は、使用する炭素質物の種類などによって若干異なるものの、概ね以下の通りである。
すなわち、まず乾燥した炭素質物を粒径数mm以下の粒子状に粉砕する。次いで、粉砕した炭素質物を不活性雰囲気下で、600〜900℃の温度範囲で炭化する。次いで、炭化物を水蒸気流入下あるいは水酸化カリウムなどを添加混合した状態で賦活処理する。さらに、賦活物を希塩酸水などで酸洗あるいは水洗する。最終的に、篩分けにより夾雑物を取り除いて、活性炭とする。
【0006】
リチウム二次電池においては、その容量は、正極および負極を構成する活物質の物性に依存する。すなわち、負極活物質には、主に黒鉛系および/または低温焼成炭素系炭素が
使用されているが、両者ともに負極活物質粒子の比表面積、細孔分布、結晶度、純度などが電池の容量に大きく影響する。したがって、リチウム二次電池用として適切な負極活物質を得るためには、原料である炭素質物に粉砕、炭化、黒鉛化など種々の処理を施す必要がある。
【0007】
上記の炭素質物を原料とする低温焼成炭素系負極活物質の製造工程は、使用する炭素質物の種類などによって若干異なるが、概ね以下の通りである。
すなわち、まず乾燥した炭素質物を粒径数mm以下の粒子状に粉砕する。次いで、粉砕した炭素質物を不活性雰囲気下で、800〜1,400℃の温度範囲で炭化する。さらに、得られた炭化物を所定の平均粒径に粉砕する。このようにして低温焼成炭素系負極活物質が得られる。
【0008】
また、黒鉛系負極活物質は、通常、上記炭化物に以下の処理を施して得られる。
すなわち、上記で得られる所定の平均粒径に粉砕した炭化物に、必要に応じて酸化ホウ素などの黒鉛化触媒を添加混合する。該混合物に、コールタールピッチなどの粘結材を適
量加えて混合する。次いで、該混合物をアルゴン雰囲気下、2,800〜3,000℃で黒鉛化する。さらに、得られた黒鉛化物を解砕して、所定の平均粒径に調整する。このようにして黒鉛系負極活物質が得られる。
【0009】
上記で説明したように、電気二重層キャパシタ用活性炭およびリチウム二次電池用負極活物質のいずれの製造工程においても、所定の平均粒径を有する低温焼成炭素粉末(以下
、炭化品という)の製造工程が存在する。すなわち、通常、炭素質物は、電極材料に必要
な炭素六角網面および/または炭素結晶以外に、揮発成分や他元素からなる官能基などを
含有する。しかしながら、該揮発成分や他元素からなる官能基などは、活性炭を製造するための賦活工程あるいは黒鉛結晶を得るための黒鉛化工程において、不具合の原因になることがある。したがって、炭化品の製造工程において、該揮発成分や他元素からなる官能基などを除去あるいは炭素六角網面および/または炭素結晶へ変換させることにより、電
極材料を不具合なく製造することが可能となる。また、炭化品の製造工程の前後で、炭素質物を電極材料用としての所定の平均粒径に粉砕することで、後工程での歩留まりを高めることが可能となる。このような理由から、蓄電装置用電極材料の製造工程には、炭化品の製造工程が必要となる。
【0010】
しかしながら、従来の炭化品の製造工程においては、例えば、乾燥した炭素質物を粒径数mm以下の粒子状に粉砕する工程において炭化品中に粉砕機由来の鉄が混入する、あるいは炭化前後の炭素質物を電極材料用として所定の平均粒径に粉砕する工程において大量の微粉が発生するなどの製造上のトラブルが起き得る。
【0011】
炭化品中に鉄が混入すると、電極間の短絡や電解液の分解などの不具合が発生するので好ましくなく、鉄含有量によっては、その炭化品は不良品となる。
また、電極材料中の微粉、特に粒径1μm未満の微粉は、嵩高く、均一な電極シートの作製の障害となるため、炭化品から除去しなければならない。その結果、電極材料の歩留まりが減少するので、したがって微粉の発生は、好ましくない。
【0012】
上記従来技術の課題である炭化品中への鉄の混入と微粉の発生とに関し、有効な解決策は未だ知られていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、電極材料の純度と歩留まりを向上させることができる電極材料用炭素質物および低温焼成炭素粉末(炭化品)ならびにそれを用いる蓄電装置用電極材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、所定の平均粒径を得るための粉砕(以下、微粉砕という)工程と、微粉砕工程前に行う炭素質物の粒径を数mm以下にするための粉砕(以下、粗粉砕という)工程を種々検討した。その結果、驚くべきことに、粗粉砕後の炭素質物において、その粒径0.05mm以下の粉末中の鉄含有量が0.05mmを超える粉末に比べて高いこと、また粗粉砕後の炭素質物から粒径0.05mm以下の粉末を除去した後に微粉砕を行うと、粒径1μm以下の微粉の発生が抑制されることを見出した。加えて、粉砕機のハンマーの材質を炭素鋼から、オーステナイト鋼に変えることによって、粗粉砕後の炭素質物中の鉄含有量が減少することを見出した。
【0015】
また、粗粉砕後に炭素質物の粒度分布を粒径2mm以上の粒子が0.1重量%以下、かつ粒径0.05mm以下の粒子が0.1重量%以下となるように篩による分級処理を施すこと、さらに好ま
しくは粉砕機のハンマーの材質をオーステナイト鋼とすることによって、炭化品中の鉄含
有量を大幅に低減させ、かつ微粉砕工程で発生する微粉を抑制することが可能であることを見出した。
【0016】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、石油系および/または石炭系重質油を熱処理
して得られるコークスからなる炭素質物において、該コークス中の粒径2mm以上の粒子が0.1重量%以下、かつ粒径0.05mm以下の粒子が0.1重量%以下となるように粗粉砕および分級
してなる電極材料用炭素質物が提供される。
【0017】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明におけるコークスからなる炭素質物の粗粉砕において、コークスの粉砕部分がオーステナイト鋼製である粉砕機を用いてなる電極材料用炭素質物が提供される。
【0018】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明における粗粉砕および分級後の炭素質物を、さらに平均粒径1μm以上30μm以下に微粉砕した後600℃以上1,400℃以下の温度で
焼成するか、または600℃以上1,400℃以下の温度で焼成した後平均粒径1μm以上30μm以
下に微粉砕してなる電極材料用低温焼成炭素粉末(炭化品)が提供される。
【0019】
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明における低温焼成炭素粉末(炭化品)からなる蓄電装置用電極材料が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第3の発明における低温焼成炭素粉末(炭化品)を、さらに賦活または黒鉛化して得られる炭素粉末からなる蓄電装置用電極材料が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粗粉砕された炭素質物を用いることによって、蓄電装置用電極材料の原料となる炭化品中の鉄含有量を粗粉砕前の炭素質物とほぼ同じ値に保ち、かつ、炭化品の製造工程である微粉砕工程で発生する微粉量を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の炭素質物は、石油系重質油および/または石炭系重質油を熱処理して得られる
コークスである。通常、コークスは、石油系重質油および/または石炭系重質油を400℃から600℃で熱処理することによって得られる。工業的には、該熱処理にディレードコーカ
ーを用い、1バッチ数千トン程度の量を製造する。ディレードコーカーから取り出したコ
ークスは大きさが不定であるので、ロールクラッシャーなどで破砕し、数十cmの塊にする。また、必要に応じてコークス塊を乾燥する。
【0022】
上記のようにして得られた炭素質物(コークス塊破砕物)を、以降の工程通過性などを良好にするために、粒径2mm以上の粒子が0.1重量%以下となるように粗粉砕する。該粗粉砕に使用する粉砕機は、衝撃またはせん断型で中程度の粒度が得られる粉砕機が好ましく、ハンマーミル、アトリションミル、カッターミル、ピンミルなどを例示し得る。また、炭素質物を粗粉砕する際の粉砕部分の材料としては、オーステナイト鋼であることが好ましい。該オーステナイト鋼としては、SUS304、SUS310Sなどを例示し得る。炭素質物を粗
粉砕する際の粉砕部分の材料としての炭素鋼あるいは鋳鉄は、錆びやすく、かつコークス塊の粗粉砕中に磨耗あるいは破損し易いので、炭素鋼あるいは鋳鉄が炭素質物中に混入するなどの不具合が発生し易く、したがって好ましくない。
【0023】
粗粉砕された炭素質物中に含まれる粒径2mm以上の粒子の割合が0.1重量%以下となるよ
うに、粗粉砕条件を調整する。例えば、粗粉砕する炭素質物に応じて、粉砕機への仕込み量、粉砕時間などの条件を適宜調整することにより行い得る。必要であれば、予め予備試験を行って粗粉砕条件を調整してもよい。
【0024】
2mm以上の粒子の割合が0.1重量%を超える場合は、微粉砕機のフィーダーから微粉砕機
のノズルまでの連結管に詰まりが発生し、微粉砕工程上好ましくない。
粗粉砕された炭素質物の粒径分布として、粗粉砕された炭素質物を60mesh(目開き250μm)の篩により分級したとき、篩上が50重量%以上となるように、粗粉砕条件が調整されて
いることが特に好ましい。該篩上が50重量%未満となるような粉砕条件では、粒径0.05mm
未満の粒子が相対的に増加するため、以下に示す微粉の分級操作において分離される微粉の量が増加し、結果として粗粉砕における歩留まりが低下するので好ましくない。
【0025】
上記のように粗粉砕された炭素質物を、粒径0.05mm以下の粒子の割合が0.1重量%以下
となるように分級を行う。粗粉砕された炭素質物中の粒径0.05mm以下の粒子が0.1重量%
以下となるように分級する方法としては、篩による乾式あるいは湿式分級、気流分級などを例示し得る。処理速度、二次汚染などを考慮すると、篩による乾式分級が好ましい。
【0026】
より具体的には、粗粉砕された炭素質物を270mesh(目開き53μm)の篩で分級し、篩下を除去することが望ましい。上記の60mesh(目開き250μm)の篩による分級では、篩上の炭素質物中の鉄含有量を減少させることはできるが、粗粉砕された炭素質物の回収率が減少するので好ましくない。一方、400mesh(目開き38μm)の篩による分級では、鉄含有量を比較的多く含む微粉を十分に分離することができないので、好ましくない。
【0027】
上記のように粗粉砕、分級することにより、粒径2mm以上の粒子が0.1重量%以下、かつ
粒径0.05mm以下の粒子が0.1重量%以下の炭素質物を得る。理由は明らかでないが、粒径0.05mm以下の炭素質物粉末中の鉄含有量は、粒径0.05mmを超える炭素質物粉末中に比べて
高いため、かくして鉄含有量が低減された炭素質物を得ることができる。
【0028】
上記のように粗粉砕、分級された炭素質物を、さらに、微粉砕した後に焼成を行うか、または焼成した後に微粉砕することにより、電極材料用低温焼成炭素粉末を製造する。焼成および微粉砕の条件は、低温焼成炭素粉末の使用目的に応じて、適宜その処理条件ならびに処理方法を選定することができる。
【0029】
微粉砕の方法としては、炭素粉末の平均粒径が1μm以上30μm以下となるように微粉砕
できる方法であれば特に限定されないが、ジェットミル、クロスフローミル、ターボミルなどの使用が例示し得る。
【0030】
微粉砕前の、または微粉砕後の炭素質物を、雰囲気炉、シャトル炉、ロータリーキルンなどの焼成炉により、600℃以上1,400℃以下の温度で、好ましくは650℃以上1,300℃以下の温度で、数十分から数時間焼成(炭化)する。また、焼成は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気で行うことが望ましい。
【0031】
上記のようにして、微粉砕された低温焼成炭素粉末が得られる。該炭素粉末は、粒径0.05mm以下の粒子が0.1重量%以下に粗粉砕、分級された炭素質物を用いているので、粒径1
μm未満の微粉の発生が抑制されており、電極材料として好ましく使用できる。
【0032】
このようにして得られた低温焼成炭素粉末を、使用目的などにより、さらに賦活または黒鉛化して、電気二重層キャパシタあるいは非水電解液二次電池などの蓄電池用の電極材料とすることができる。賦活または黒鉛化は、公知の方法を適宜用いることができる。
【0033】
なお、炭素質物あるいは炭化品中の鉄含有量の測定は、以下の通りに行った。
すなわち、試料約4gをメノー乳鉢で砕き、60meshの篩で分級し、篩下を採取した。採取物を濃硫酸で灰化し、灰化物中の金属酸化物をICPで定量分析した。
【実施例1】
【0034】
常圧蒸留残渣油と流動接触分解残渣油とを重量比50:50にて混合した混合油を内容積20m3のベンチリアクターに仕込み、圧力約0.5Mpa、温度約500℃にて40時間保持することに
よりコークス塊10tonを得た。得られたコークス塊をロールクラッシャーで直径10cm以下
に破砕した。破砕物中の鉄含有量は、44ppmであった。
【0035】
該炭素質物(コークス塊破砕物)10tonを、SUS304製、ハンマー直径500mmのハンマーミルにて粒径2mm以上の粒子が0.1重量%以下となるように粗粉砕した。このとき粗粉砕され
た炭素質物を、60meshの篩で分級したところ、篩上の重量比は66重量%であった。さらに
、粗粉砕された炭素質物約10tonを270meshの篩で分級した。篩上の重量比は92重量%であ
った。篩上を採取し、篩下は廃棄した。
【0036】
上記のようにして粗粉砕された炭素質物約9tonを、ロータリーキルン(加熱方式LPG炎、レトルト内径40cm、加熱帯240cm)を用いて、胴体出口温度720℃、窒素流量20L/min、搬送速度30kg/hrの条件下にて炭化を行った。得られた炭化物約8tonを、ジェットミル(ノズル径2mm)を使用して、処理速度200kg/hrの条件下にて、平均粒径が12μmとなるように微粉
砕を行った。さらに、粒径1μm未満を有する微粉が0.1重量%未満となるように、微粉砕物を気流分級機(缶体外径 1m、缶体高 2m)にて分級した。
【0037】
得られた炭化品は約7tonであり、炭化品中の鉄含有量は61ppmであった。また分級によ
り分離された粒径1μm未満の微粉は、微粉砕物全量に対して12重量%であった。
【実施例2】
【0038】
実施例1と同様の粗粉砕された炭素質物約9tonを用いて、炭化と微粉砕との順番を変え
たこと以外は、実施例1と同様にして微粉砕・分級および炭化を行った。
微粉砕・分級後の炭素質物の粒径1μm未満である微粉は、微粉砕物全量に対して9重量%であった。また、微粉砕・分級後の微粉砕物約8tonについて、実施例1と同じ条件下にて炭化を行った。
【0039】
得られた炭化品は約7tonであり、炭化品中の鉄含有量は66ppmであった。
【実施例3】
【0040】
実施例1において、ロータリーキルンの運転条件を、胴体出口温度600℃、搬送速度60kg/hrとしたこと以外は、実施例1と同様にして祖粉砕、炭化および微粉砕・分級処理を行って炭化品を得た。
【0041】
得られた炭化品は約8tonであり、炭化品中の鉄含有量は61ppmであり、粒径1μm未満の
微粉は、微粉砕物全量に対して11重量%であった。
【実施例4】
【0042】
実施例1と同様の粗粉砕された炭素質物約9tonを、アルミナ製の矩形るつぼ(縦20cm、
横30cm、深さ10cm)約4,600個(1個当たり2kg)に充填した。充填した矩形るつぼ500個を1ロットとして、バッチ式焼成炉(加熱方式LPG炎、内寸400cm、300cm、200cm)に収納した。炉内中心部に設置した熱電対の指示値が1,000℃、窒素流量10L/minの条件下にて、10ロットの炭化を行った。得られた炭化物約8tonを、ジェットミル(ノズル径2mm)を使用して
、処理速度100kg/hrの条件下にて、平均粒径が15μmとなるように微粉砕を行った。さら
に、粒径1μm未満を有する微粉が0.1重量%未満となるように、微粉砕物を気流分級機(缶体外径 1m、缶体高 2m)にて分級した。
【0043】
得られた炭化品は約7tonであり、炭化品中の鉄含有量は56ppmであり、粒径1μm未満の
微粉は、微粉砕物全量に対して15重量%であった。
【実施例5】
【0044】
実施例4と同様の粗粉砕された炭素質物約9tonを用いて、順番を変えたこと以外は、実施例4と同様にして微粉砕・分級および炭化を行った。
微粉砕・分級後の炭素質物の粒径1μm未満である微粉は、微粉砕物全量に対して9重量%であった。また、微粉砕・分級後の微粉砕物について、実施例4と同じ条件下にて炭化を行った。
【0045】
得られた炭化品は約7tonであり、炭化品中の鉄含有量は58ppmであった。
【実施例6】
【0046】
実施例4において、バッチ式焼成炉の熱電対の指示値が1,400℃となるようにしたこと
以外は、実施例4と同様にして炭化および微粉砕・分級処理して炭化品を得た。
得られた炭化品は約6tonであり、炭化品中の鉄含有量は56ppmであり、粒径1μm未満の
微粉は、微粉砕物全量に対し20重量%であった。
【実施例7】
【0047】
キノリン可溶分100重量%のコールタールピッチを、内容積20m3のベンチリアクターに仕込み、圧力約0.5Mpa、温度約500℃にて40時間保持することによりコークス塊10tonを得た。得られたコークス塊をロールクラッシャーで直径10cm以下に破砕した。破砕物中の鉄含有量は、547ppmであった。
【0048】
該炭素質物(コークス塊破砕物)10tonを、実施例1と同様にして祖粉砕、炭化および
微粉砕・分級処理することにより炭化品約7tonを得た。
炭化品中の鉄含有量は618ppmであり、粒径1μm未満の微粉は、微粉砕物全量に対して13重量%であった。
【実施例8】
【0049】
実施例7の炭素質物(コークス塊破砕物)10tonを、実施例2と同様にして祖粉砕、微
粉砕・分級および炭化処理して炭化品約7tonを得た。
炭化品中の鉄含有量は618ppmであり、粒径1μm未満の微粉は、微粉砕物全量に対して10重量%であった。
[比較例1]
【0050】
実施例1の粗粉砕された炭素質物を分級しなかったこと以外は、実施例1と同様の処理を行うことにより炭化品を得た。
得られた炭化品は約7tonであり、炭化品中の鉄含有量は484ppmであり、粒径1μm未満の微粉は、微粉砕物全量に対して22重量%であった。
[比較例2]
【0051】
実施例1の炭素質物を粗粉砕しなかったこと以外は、実施例1と同様の処理を行うことにより炭化品を得た。
その際、微粉砕工程においてノズルの閉塞が多発したため、粗大粒子の除去を行わざるを得なかった。この結果、微粉砕の歩留まりは、30重量%に留まった。得られた炭化品は
、約2tonであり、炭化品中の鉄含有量は50ppmであり、粒径1μm未満の微粉は、微粉砕物
全量に対して12重量%であった。
[比較例3]
【0052】
実施例1の粗粉砕された炭素質物を分級しなかったこと以外は、実施例2と同様の処理を行うことにより炭化品を得た。
得られた炭化品は約7tonであり、炭化品中の鉄含有量は568ppmであり、粒径1μm未満の微粉は、微粉砕物全量に対して20重量%であった。
[比較例4]
【0053】
実施例1の粗粉砕された炭素質物を分級しなかったこと以外は、実施例4と同様の処理を行うことにより炭化品を得た。
得られた炭化品は約6tonであり、炭化品中の鉄含有量は245ppmであり、粒径1μm未満の微粉は、微粉砕物全量に対して26重量%であった。
[比較例5]
【0054】
実施例1の粗粉砕された炭素質物を分級しなかったこと以外は、実施例5と同様の処理を行うことにより炭化品を得た。
得られた炭化品は約7tonであり、炭化品中の鉄含有量は225ppmであり、粒径1μm未満の微粉は、微粉砕物全量に対して22重量%であった。
[比較例6]
【0055】
実施例1の粗粉砕された炭素質物を分級しなかったこと以外は、実施例6と同様の処理を行うことにより炭化品を得た。
得られた炭化品は約5tonであり、炭化品中の鉄含有量は317ppmであり、粒径1μm未満の微粉は、微粉砕物全量に対して32重量%であった。
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のコークスからなる電極材料用炭素質物および低温焼成炭素粉末(炭化品)は、鉄含有量が少なく、かつ製造時の微粉発生量が少ないため、リチウム二次電池用負極活物質および電気二重層キャパシタ用活性炭などの蓄電装置用電極材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油系および/または石炭系重質油を熱処理して得られるコークスからなる炭素質物に
おいて、該コークス中の粒径2mm以上の粒子が0.1重量%以下、かつ粒径0.05mm以下の粒子
が0.1重量%以下となるように粗粉砕および分級したことを特徴とする電極材料用炭素質物。
【請求項2】
請求項1に記載のコークスからなる炭素質物の粗粉砕において、コークスの粉砕部分がオーステナイト鋼製である粉砕機を用いたことを特徴とする電極材料用炭素質物。
【請求項3】
請求項1に記載の粗粉砕および分級後の炭素質物を、さらに、平均粒径1μm以上30μm
以下に微粉砕した後600℃以上1,400℃以下の温度で焼成するか、または600℃以上1,400℃以下の温度で焼成した後平均粒径1μm以上30μm以下に微粉砕したことを特徴とする電極
材料用低温焼成炭素粉末。
【請求項4】
請求項3に記載の低温焼成炭素粉末からなることを特徴とする蓄電装置用電極材料。
【請求項5】
請求項3に記載の低温焼成炭素粉末を、さらに賦活または黒鉛化して得られた炭素粉末からなることを特徴とする蓄電装置用電極材料。

【公開番号】特開2006−269961(P2006−269961A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89241(P2005−89241)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】