説明

電極構造

【課題】高温に曝される環境において、被覆材で覆われた通電用のリード線を接続したときに、当該リード線の被覆材が劣化することを防止することができるとともに、周辺に配置された樹脂製の部材の劣化を防止することができる電極構造を提供する。
【解決手段】被通電体が収容される缶体11に接続される側の端部である接続端部2及び通電用のリード線12aの端部が差し込まれる側の端部である先端部3を有する筒状の電極収容体1と、電極収容体1に接触しない状態で電極収容体1の内部に配設された電極本体4と、電極収容体1と電極本体4との隙間に配設された絶縁部材5と、電極収容体1の外周1aから外側に向かって突き出すように形成された放熱部6とを備えた電極構造100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極構造に関し、さらに詳しくは、高温に曝される環境において、被覆材で覆われた通電用のリード線を接続したときに、当該リード線の被覆材が劣化することを防止することができるとともに、周辺に配置された樹脂製の部材の劣化を防止することができる電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
産業分野及び日常生活において、電極構造を高温の被通電体に設置して用いる場合が少なくない。例えば、自動車等の排ガスを浄化するために用いられる触媒コンバーターにおいて、触媒を早期にその作用温度まで昇温させるために、排ガスを排出する配管に通電発熱式ヒーターを配設する技術が知られている。また、高温の排ガスが流れる配管内に、各種のセンサーを取り付けて使用することが知られている。
【0003】
これらの中で、例えば、通電発熱式ヒーターは、通常、被通電体である金属質等のハニカム構造体、当該ハニカム構造体が収容された「缶体等の金属質のハウジング」、及び当該ハニカム構造体に電気的に接続された「通電のための電極」を備えるものである(例えば、特許文献1〜3を参照)。そして、電極は、通常、ハウジングの外壁に配設され、ハウジングの外壁に配設された電極と、ハウジングの内部に収容されたハニカム構造体とが、導電性の結合部材により接続されることにより、当該電極を通じてハニカム構造体に通電することが可能な構造になっている。
【0004】
また、ハウジングの外壁に配設された電極には、通常、外部の電源に繋がれた、被覆材で覆われたリード線が、接続されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3078736号公報
【特許文献2】特許第3488849号公報
【特許文献3】特開平9−92442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記、電極に接続されたリード線を覆う被覆材は、耐熱温度の低い(200℃程度)樹脂によって形成されているため、当該リード線を、高温に曝される電極やセンサーに長時間接続すると、被覆材が劣化するという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、高温に曝される環境において、被覆材で覆われた通電用のリード線(被覆線)を接続したときに、当該リード線の被覆材や周辺部材が劣化することを防止することができるとともに、周辺に配置された樹脂製の部材の劣化を防止することができる電極構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の電極構造を提供する。
【0009】
[1] 被通電体が収容される缶体に接続される側の端部である接続端部及び通電用のリード線の端部が差し込まれる側の端部である先端部を有する筒状の電極収容体と、前記電極収容体に接触しない状態で前記電極収容体の内部に配設された電極本体と、前記電極収容体と前記電極本体との隙間に配設された絶縁部材と、前記電極収容体の外周から外側に向かって突き出すように形成された放熱部とを備えた電極構造。
【0010】
[2] 前記放熱部が、前記電極収容体の外周から外側に向かって突き出した鍔状である[1]に記載の電極構造。
【0011】
[3] 前記放熱部にスリットが形成された[1]又は[2]に記載の電極構造。
【0012】
[4] 前記放熱部の、前記電極収容体の外周から外側に向かう方向における高さが5〜30mmである[1]〜[3]のいずれかに記載の電極構造。
【0013】
[5] 前記缶体が、内燃機関から排出された排ガスを排出するための配管に装着された金属製の筒状構造体であり、前記被通電体が、前記排ガスの処理に使用されるハニカム構造体である[1]〜[4]のいずれかに記載の電極構造。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電極構造は、筒状の電極収容体と、電極収容体に接触しない状態で電極収容体の内部に配設された電極本体と、電極収容体と電極本体との隙間に配設された絶縁部材と、電極収容体の外周から外側に向かって突き出すように形成された放熱部とを備えたものであるため、放熱部によって電極収容体内部の熱を外部に放出することができ、リード線が接続された電極本体の温度を低下させることができ、これによって、リード線を覆う被覆材の劣化を防止することができるとともに、周辺に配置された樹脂製の部材の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電極構造の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図2A】本発明の電極構造の一の実施形態の断面を示す模式図である。
【図2B】図2AのA−A’面を示す模式図である。
【図3】本発明の電極構造の他の実施形態の断面を示す模式図である。
【図4】本発明の電極構造の一の実施形態を備えた排ガス処理装置の断面を示す模式図である。
【図5】本発明の電極構造の一の実施形態を用いて通電するハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明の電極構造の一の実施形態を用いて通電するセラミックハニカム構造体の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0017】
(1)電極構造:
本発明の電極構造の一の実施形態は、図1、図2A及び図2Bに示されるように、被通電体が収容される缶体11に接続される側の端部である接続端部2及び通電用のリード線の端部(先端)が差し込まれる側の端部である先端部3を有する筒状の電極収容体1と、電極収容体1に接触しない状態で電極収容体1の内部に配設された電極本体4と、電極収容体1と電極本体4との隙間に配設された絶縁部材5と、電極収容体1の外周(外周面)1aから外側に向かって突き出すように形成された放熱部6とを備えたものである。図1は、本発明の電極構造の一の実施形態を模式的に示す側面図である。図2Aは、本発明の電極構造の一の実施形態の断面(電極本体4の中心軸を含む断面)を示す模式図である。図2Bは、図2AのA−A’面(断面)を示す模式図である。
【0018】
このように、本実施形態の電極構造100は、筒状の電極収容体1と、電極収容体1に接触しない状態で電極収容体1の内部に配設された電極本体4と、電極収容体1と電極本体4との隙間に配設された絶縁部材5と、電極収容体1の外周(外周面)1aから外側に向かって突き出すように形成された放熱部6とを備えたものであるため、放熱部6によって電極収容体1内部の熱を外部に放出することができ、被覆線(被覆材12bで覆われた通電用のリード線12a)12が接続された電極本体4の温度を低下させることができ、これによって、リード線12aを覆う被覆材12bの劣化を防止することができるとともに、周辺に配置された樹脂製の部材の劣化を防止することができる。尚、「周辺に配置された樹脂製の部材」とは、本実施形態の電極構造を、自動車等に搭載したときに、当該自動車等を構成する樹脂製の部材のなかで、本実施形態の電極構造の周辺(近く)に配置され、本実施形態の電極構造の温度(熱)の影響を受ける部材を意味する。
【0019】
本実施形態の電極構造100において、電極収容体1は、筒状の部材であり、「被通電体が収容される缶体11に接続される側の端部(開口端部)」である接続端部2、及び「通電用のリード線12aの端部が差し込まれる側の端部(開口端部)」である先端部3、を有するものである。
【0020】
電極収容体1には、接続端部2側に電極本体4及び絶縁部材5が収容されるため、図1、図2Aに示すように、接続端部2側が太く、先端部3側が細く形成されることが好ましい。電極収容体1において、太く形成される範囲は、接続端部2側の電極本体4が配設される範囲(中心軸方向における長さ)の、1〜2倍であることが好ましい。
【0021】
電極収容体1の接続端部2の太さ(内径)は、10〜25mmが好ましく、15〜20mmが更に好ましい。10mmより細いと、電極本体4を収容し難くなることがある。25mmより太いと、電極本体4の熱が電極収容体4に伝わり難くなることがある。電極収容体1の先端部3の太さ(内径)は、2〜20mmが好ましく、5〜15mmが更に好ましく、5〜10mmが特に好ましい。2mmより細いと、被覆線12の一方の端部(リード線12aの一方の端部)を電極収容体1内に差し込み難くなることがあり、また、劣化時の絶縁性能を確保し難くなることがある。20mmより太いと、均質な封止が困難になることがあり、また、熱応力や物理的な外力により接続不良になることがある。
【0022】
電極収容体1の中心軸方向における長さは、15〜70mmが好ましく、25〜60mmが更に好ましい。70mmより長いと、狭い空間(例えば、自動車に搭載する場合の搭載空間)において使用し難くなることがある。15mmより短いと、電極本体4の高温になる側の端部(缶体内に挿入される側の(缶体側を向く)端部)から、被覆材12bまでの距離が短くなり、被覆材12bの温度が上がり易くなることがある。
【0023】
電極収容体1の壁の厚さは、0.3〜1.5mmが好ましく、0.5〜1.0mmが更に好ましい。0.3mmより薄いと、電極収容体1の強度が低下することがある。1.5mmより厚いと、電極収容体1の質量が大きくなることがあり、また、材料を無駄に多く使用することになることがある。
【0024】
電極収容体1は、缶体11に接続される場合には、溶接、ビスを用いたネジ留め、「接続端部2に直接雄螺子を形成し、雌螺子を形成した缶体11に直接ねじ込む」等により接続されることが好ましい。この場合、接続端部2の先端にフランジ部1bを形成し、フランジ部1bと缶体11とを接続するようにすることが好ましい。また、電極収容体1の接続端部2の外周に雄ねじを形成し、缶体11に貫通孔を形成して当該貫通孔の壁面に雌ねじを形成して、電極収容体1を缶体11に直接ネジ留めしてもよい。
【0025】
電極収容体1の形状は、図1、図2A及び図2Bに示されるように、一方の端部(先端部3)が細く形成された円筒形であることが好ましい。尚、電極収容体1の中心軸に直交する断面の形状は、円形であることが好ましいが、これには限定されず、六角形、八角形等の多角形であってもよい。また、太く形成された接続端部2側の部分(胴部1c)と、細く形成された先端部3側の部分(細胴部1d)とを、テーパー状の部分(テーパー部1e)で繋ぐように形成されていることが好ましい。電極収容体1の材質としては、ステンレス鋼等を挙げることができる。
【0026】
本実施形態の電極構造100において、放熱部6は、電極収容体1の外周(外周面)1aから外側に向かって突き出すように形成されている。更に具体的には、放熱部6は、円板の中央部分に「電極収容体1の胴部1cが嵌まる」貫通孔が形成された形状(放熱部6についてのこの形状を、「円板状」と称することがある。)に形成されている。このように、放熱部6は、電極収容体1の外周(外周面)1aから外側に向かって突き出した鍔状であることが好ましい。
【0027】
放熱部6は、このように形成されているため、電極収容体1から熱を伝えることができ、電極収容体1から伝達された熱を表面から放出することができる。これにより、電極収容体1及び電極収容体1の内部の温度を低下させることができ、リード線12aが接続された電極本体の温度を低下させることができるため、リード線12aを覆う被覆材12bの劣化を防止することができる。
【0028】
放熱部6は、上記のように「円板状」であることが好ましいが、「円板状」の一部が切り取られた円弧状(扇形における、「円の中央部分に相当する」部分が取り除かれた形状)、幾何学的模様の突起物、櫛比状の突起であってもよい。また、「円板」にスリットが形成された形状であってもよい。スリットの本数は、一の円板あたりに1〜40本が好ましい。
【0029】
放熱部6の、「電極収容体1の外周1aから外側に向かう方向における」高さは、1〜30mmであることが好ましく、2〜30mmであることが更に好ましく、5〜30mmであることが特に好ましい。1mmより低いと、放熱効果が低下することがある。30mmより高いと、放熱部6が大きいため、電極構造100を缶体11に取り付けたときに、振動等の影響を受け易くなることがあり、また、不必要に多くの材料を必要とすることがある。
【0030】
放熱部6の枚数(個数)は、缶体11の内部の温度に合わせて、適宜決定することができる。そして、電極本体4の「リード線12aと接続される側」の端部の温度が、270℃以下になるように、放熱部6の枚数を決定することが好ましい。更に、缶体11の内部の温度と、電極本体4の「リード線12aと接続される側」の端部の温度との差(「缶体11の内部の温度」−「電極本体4の上記端部の温度」)が、「缶体11の内部の温度」に対して66%以上になるように、放熱部6の枚数を決定することが好ましい。放熱部6の枚数は、缶体11の内部の温度が高いほど、増やすことが好ましい。具体的には、円板状の場合、1〜10枚が好ましい。つまり、この枚数の範囲で、缶体11の内部の温度に合わせて、放熱部6の枚数を決定することが好ましい。電極本体4の「リード線12aと接続される側」の端部の温度が低いほど、リード線12aを覆う被覆材12bの耐熱温度を低下させることができるため、被覆材12bの選択の余地が広がり、安価な材料を用いることができるようになる。
【0031】
放熱部6の厚さは、0.5〜5mmが好ましく、0.5〜4mmが更に好ましい。0.5mmより薄いと、放熱部6の強度が低下することがある。5mmより厚いと、体積当りの表面積が小さくなり、また、電極構造100を缶体11に取り付けたときに、振動等の影響を受け易くなることがあり、更に、不必要に多くの材料を必要とすることがある。
【0032】
放熱部6の材質は、ステンレス鋼が好ましい。
【0033】
電極収容体1における放熱部6を配設する位置は、電極収容体1の中心軸方向において、絶縁部材5が充填される範囲における外周面側であることが好ましい。電極本体4から電極収容体1に伝達される熱の多くが、絶縁部材5を伝って伝達されるため、このように、電極収容体1の「絶縁部材5が充填される範囲」における外周面に、放熱部6が配設されることが好ましい。これにより、電極本体4の「リード線12aと接続される側」の端部の温度を、より低下させることができる。
【0034】
電極収容体1の構造としては、図1、図2Aに示されるように、一体的に形成された(1つの部材によって形成された)ものであってもよいが、図3に示されるように、接続端部2側の第1収容体21と、先端部3側の第2収容体22とが接合されて形成されたものであることが好ましい。このように、電極収容体1の構造を、第1収容体21と第2収容体22とが接合された構造とすることにより、電極本体4及び絶縁部材5を配設した第1収容体21を缶体11に取り付け、その後、第1収容体21を第2収容体22に取り付けることにより、電極構造100を缶体11に取り付けることができるため、電極本体4及び絶縁部材5を容易に電極収容体1内に収納することが可能になり、電極構造100を容易に缶体11に取り付けることが可能になる。図3は、本発明の電極構造の他の実施形態の断面(電極本体4の中心軸を含む断面)を示す模式図である。
【0035】
図3に示される電極構造200においては、第1収容体21と第2収容体22とをレーザー溶接の方法で接続することが好ましい。また、図3に示される電極構造200は、電極収容体1が、第1収容体21と第2収容体22とから構成されている以外は、上記、図1、図2A及び図2Bに示される電極構造100と同様の条件であることが好ましい。
【0036】
本実施形態の電極構造100において、電極本体4は、棒状の電極であり、電極収容体1に接触しない状態で電極収容体1の内部に配設されている。電極本体4の中心軸方向における中央部には、電極本体を絶縁部材5の中で安定して固定されるように、リング状の固定部4aが配設されている。電極本体4は、固定部4aを有さなくてもよい。電極本体4の固定部4aを除く部分の形状は、円柱状であることが好ましい。
【0037】
図1、図2Aに示すように、電極本体4は、一方の端部が電極収容体1の内部に入り、他方の端部が電極収容体1の接続端部2の開口部から外に出た状態であることが好ましい。電極本体4の他方の端部が、電極収容体1の接続端部2の開口部から外に出た状態であることにより、導電性の結合部材を用いて被通電体と接続することが容易になる。
【0038】
電極本体4の長さ(中心軸方向における長さ)は、電極収容体1の長さ(中心軸方向における長さ)の50〜100%であることが好ましい。50%より短いと、缶体11側の熱が、被覆線12に伝わり易くなることがある。100%より長いと、缶体11も大きくする必要が生じ、電極構造100を小さなスペースに収容することができなくなることがある。電極本体4の中心軸に直交する断面の直径(固定部4aを有する場合は、固定部4aを除いた部分における直径)は、電極収容体1の胴部1cの中心軸に直交する断面の直径の10〜90%であることが好ましい。10%より細いと、電極本体4の強度が低下することがある。90%より太いと、振動等により電極本体4が電極収容体1に接触し易くなることがある。
【0039】
電極本体4と電極収容体1との間の隙間が最も狭い部分における、電極本体4と電極収容体1との間の距離は、1〜6mmであることが好ましい。1mmより短いと、振動等により電極本体4が電極収容体1に接触し易くなることがある。6mmより長いと、電極本体4の熱が電極収容体1に伝わり難くなり、放熱部6による放熱効果が小さくなることがある。また、電極本体4と電極収容体1とは、中心軸が同じ方向を向いていることが好ましい。また、電極本体4から、電極収容体1の先端部3側の先端部分までの距離(最短距離)は、10〜35mmであることが好ましい。10mmより短いと、電極収容体1内で、電極本体4とリード線12aとを接続し難くなることがある。35mmより長いと、電極収容体1が長くなるため、電極構造100を狭い空間に収容し難くなることがある。
【0040】
電極本体4の材質としては、熱拡散性が良好な素材を用いることが好ましく、ステンレス鋼を用いることが好ましく、フェライト系ステンレス鋼を用いることが更に好ましい。
【0041】
本実施形態の電極構造100において、絶縁部材5は、電極収容体1と電極本体4との隙間に配設されたものである。図2Aに示すように、絶縁部材5は、電極本体4の両端部を覆わないように配設されていることが好ましい。これにより、電極本体4の一方の端部(電極収容体1の先端部3側を向く端部)にリード線12aを接続し、電極本体4の他方の端部(電極収容体1の接続端部2側を向く端部)に「被通電体と接続するための」結合部材を接続し易くなる。
【0042】
電極本体4は、電極収容体1内において絶縁部材5から1〜10mm突き出ている(露出している)ことが好ましい。1mmより短いと、リード線12aを接続し難くなることがある。10mmより長いと、電極本体4の固定状態が不安定になることがあり、更に、全長が長くなるため小さなスペースに収容することができなくなることがある。る。また、電極本体4は、電極収容体1の外部において絶縁部材5から1〜10mm突き出ている(露出している)ことが好ましい。1mmより短いと、「被通電体と接続するための」結合部材を接続し難くなることがある。10mmより長いと、電極本体4が、被通電体等に接触し易くなることがある。
【0043】
また、図1、図2Aに示すように、絶縁部材5は、電極収容体1の接続端部2側の開口部から外に突き出し、先端が、缶体11の内部に挿入された状態であることが好ましい。これにより、絶縁部材5によって、電極本体4と電極収容体1との間の絶縁を保持するとともに、電極本体4と缶体11との間の絶縁をも保持することが可能になる。絶縁部材5の先端は、缶体11の壁から内部に向かって0〜5mm突き出ていることが好ましい。5mmより長いと、電極本体4を、缶体11の壁から内側に向かって更に長く突き出すようにする必要があるため、電極本体4が被通電体等に接触し易くなることがある。
【0044】
絶縁部材5の材質としては、アルミナ、タルク等をあげることができ、これらの中でも、電極本体4がアルミナブロックで固定され、電極本体4と缶体11との隙間にタルクが充填される構造が好ましい。
【0045】
本実施形態の電極構造100においては、図2Aに示すように、電極収容体1の先端部3側の開口部に、当該開口部を塞ぐための栓部7が配設されていることが好ましい。栓部7には、被覆線12を挿入するための貫通孔が形成されていることが好ましい。栓部7によって、電極収容体1の先端部3側の開口部から水分等が浸入することを防止することができる。
【0046】
栓部7の材質としては、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
【0047】
本実施形態の電極構造100を使用する際には、図1、図2Aに示すように、電極収容体1の先端部3側の開口部から被覆線12を挿入し、リード線12aを電極本体4の一方の端部に接続することが好ましい。電極収容体1の先端部3側の開口部に栓部7が配設されている場合には、栓部7の貫通孔を通して被覆線12を挿入することが好ましい。被覆線12は、リード線12aとリード線12a覆う被覆材12bとを有するものである。
【0048】
電極本体4にリード線12aを接続する際には、電極本体4及びリード線12aの双方を把持して固定することができる接続具13を用いて、接続することが好ましい。接続具13としては、電極本体4の先端部分に「かしめて固定する」と共に、リード線12aの先端部分にも「かしめて固定する」ものであることが好ましい。接続具13としては、上記構造のものに限定されず、公知の構造のものを用いることができる。
【0049】
接続具13の材質としては、ステンレス鋼等を挙げることができる。
【0050】
(2)排ガス処理装置:
本実施形態の電極構造100は、図4に示すように、内燃機関から排出された排ガスGを排出するための配管に装着された金属製の」筒状構造体71と、「筒状構造体71に収容されて排ガスGの処理に使用される」ハニカム構造体54とを備えた排ガス処理装置31における、筒状構造体71に配設されることが好ましい。この場合、「缶体11」が、内燃機関から排出された排ガスGを排出するための配管に装着された金属製の筒状構造体71であり、「被通電体」が、排ガスGの処理に使用されるハニカム構造体54である。排ガス処理装置31は、ハニカム構造体54によって排ガスを加熱するものである。また、排ガス処理装置31は、ハニカム構造体54に触媒を担持して、排ガスを加熱すると共に排ガス中の有害物質を除去する等の機能を有するものであってもよい。図4は、本発明の電極構造の一の実施形態を備えた排ガス処理装置31の断面(排ガスの流れる方向に平行な断面)を示す模式図である。
【0051】
排ガス処理装置31においては、筒状構造体71に貫通孔が形成され、当該貫通孔に電極構造100が装着されている。そして、電極構造100とハニカム構造体54とが、導電性の結合部材74により接続されている。これにより、電極構造100を通じてハニカム構造体54に通電することが可能である。
【0052】
ハニカム構造体54は、外周に充填材72を配設した状態で、筒状構造体71内に収納されている。また、ハニカム構造体54は、留め具73によって、筒状構造体71内で動かないように固定されている。筒状構造体71は、ガスGが流入する入口71a及びガスGが流出する出口71bとを有する円筒状の構造体である。筒状構造体71の材質としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、鉄等を挙げることができる。また、充填材72としては、特に限定されないが、耐熱無機絶縁マット等を挙げることができる。
【0053】
ハニカム構造体54は、図5、図6に示すように、流体の流路となる一方の端面61から他方の端面62まで延びる複数のセル52を区画形成する多孔質の隔壁51と、最外周に位置する(隔壁51全体の外周を取り囲むように配設された)外周壁53とを備える筒状の構造体である。図5は、本発明の電極構造の一の実施形態を用いて通電するハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。図6は、本発明の電極構造の一の実施形態を用いて通電するセラミックハニカム構造体の断面を示す模式図である。
【0054】
ハニカム構造体54は、隔壁51及び外周壁53が、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであることが好ましい。ハニカム構造体54においては、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、ハニカム構造体54の材質が金属であってもよい。この場合、ハニカム構造体54の材質としては、ステンレス鋼等の合金系をあげることができる。またセラミックスに導電材を含浸させる方法等をあげることができる。
【0055】
ハニカム構造体54は、一対の電極構造100,100間に電圧を印加することにより、発熱する(図4参照)。印加する電圧は50〜300Vが好ましく、100〜200Vが更に好ましい。
【0056】
ハニカム構造体54の隔壁厚さは、特に限定されないが、35〜430μmであることが好ましい。また、ハニカム構造体54のセル密度は、特に限定されないが、15〜190セル/cmであることが好ましい。
【0057】
ハニカム構造体54は、セル52の延びる方向に直交する断面におけるセル52の形状が、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形であることが好ましい。
【0058】
本実施形態のハニカム構造体54の形状は特に限定されず、例えば、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の筒状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、底面の面積が500〜165000mmであることが好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、特に限定されないが、100〜460mmであることが好ましい。
【0059】
ハニカム構造体54の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造することができる。例えば、ハニカム構造体54が、炭化珪素及び金属珪素を主成分とするものである場合、以下の方法で製造することができる。
【0060】
まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜30質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素の合計質量は、成形原料全体の質量に対して30〜78質量%であることが好ましい。
【0061】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0062】
水の含有量は、成形原料全体に対して20〜60質量%であることが好ましい。
【0063】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0064】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0065】
また、成形原料は、焼結助剤として炭酸ストロンチウムを含有することが好ましい。焼結助剤の含有量は、成形原料全体に対して0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0066】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0067】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。
【0068】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0069】
得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0070】
ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0071】
そして、ハニカム成形体を焼成して、ハニカム構造体54とすることが好ましい。
【0072】
焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0073】
(3)電極構造の製造方法:
本実施形態の電極構造100を製造する方法は、特に限定されるものではない。例えば、図1、図2A及び図2Bに示される電極構造100を製造する場合、以下の方法を用いることができる。
【0074】
図1、図2A及び図2Bに示されるような形状の電極収容体1を、所定の材料から作製する。そして、リング状の放熱部6を所定の材料から作製し、電極収容体1に接続する。放熱部6を電極収容体1に接続する際には、溶接により接続することが好ましい。
【0075】
固定部4aを有する円柱状の電極本体4を作製し、電極収容体1に挿入する。そして、電極本体4と電極収容体1との間に絶縁部材5を充填し、電極本体4と電極収容体1とが接触しないようにする。
【0076】
絶縁部材5としては、タルク、アルミナ等を、専用の治具と充填機を用いて所望の形状に成形したものを用いることが好ましい。
【0077】
接続具13及び栓部7についても、所定の材料を所定の構造に加工して形成することができる。
【0078】
尚、各構成要素の材料、構造(形状)については、上記本発明の電極構造の一の実施形態における、各材料、構造(形状)と同じであることが好ましい。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
図1、図2A及び図2Bに示されるような電極構造100を作製した。電極収容体1及び放熱部6の材質は、ステンレス鋼とした。電極収容体1の長さ(中心軸方向における全長)は、53mmとし、胴部の内径(直径)を17mmとした。電極収容体1の壁の厚さを0.8mmとした。放熱部6の厚さを1mmとし、「電極収容体1の外周1aから外側に向かう方向における」高さ(以下、放熱部6の「高さ」と称する。)を10mmとした。また、放熱部6は、電極収容体1の接続端部2側の先端部分から先端部3側に向かって5mmの位置に配設した。
【0081】
電極本体4は、中心軸方向の長さを50mmとし、中心軸に直交する断面(固定部を除く)の直径を7mmとした。固定部4aとしては、中心軸方向の長さが10mm、厚さが4.5mmのリング状とした。固定部4aは、電極本体4の中央部に配設した。
【0082】
電極本体4は、電極収容体1の内部に30mmだけ挿入されるように、電極収容体1に配設した。電極本体4は、中心軸に直交する断面において、電極収容体1の中央に位置するように配置した。
【0083】
絶縁部材5としては、アルミナとタルクを用いた。絶縁部材5は、専用の治具と充填機を用いて所望の形状に成形し、電極収容体1と電極本体4との間(隙間)に充填した。絶縁部材5は、電極収容体1の接続端部2側の先端部分から外側に向かって、5mm突き出すように配設した。
【0084】
得られた、電極構造100について、以下に示す方法で、加熱試験を行った。加熱試験は、缶体内(缶体内部)の温度を600℃とした場合、及び缶体内の温度を800℃にした場合について行った。結果を表1、表2に示す。表1、表2において、「電極本体上端部」は、電極本体の、電極収容体に挿入されている側の端部を示す。「胴部外周」は、電極収容体の胴部の外周面を示す。「先端部」は、電極収容体の先端部3を示す。「温度低下率」は、「缶体内部」の温度から「先端部」の温度を差し引いた値を、「缶体内部」の温度で除して、100倍した値である。
【0085】
(加熱試験)
日本ガイシ社製、「バーナー加熱試験機」の配管に「製作した電極構造を取り付けた缶体」を装着し加熱を開始する。バーナー加熱試験機で缶体内部温度が各々指示温度になり各測温位置の温度が安定するまで加熱し、各部の温度を測定した。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
(実施例2〜7、比較例1)
放熱部の高さ、及び放熱部の枚数を表1、2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして電極構造を作製した。尚、放熱部を2枚有する電極構造(実施例2)の構造は、実施例1の電極構造に、1枚目の放熱部(実施例1の電極構造が有する放熱部)から5mmだけ先端部側に寄った位置に2枚目の放熱部を配設した構造とした。実施例1の場合と同様にして、上記方法で、加熱試験を行った。結果を表1、表2に示す。
【0089】
表1、表2より、電極収容体が放熱部を有することにより、先端部の温度が低下することがわかる。また、放熱部の高さが5mm以上であると、先端部の温度がより低下することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の電極構造は、産業分野及び日常生活において、高温の被通電体に通電するために利用することができ、例えば、自動車等の排ガス浄化用いられる触媒コンバーターの温度を、触媒の作用温度まで早期に昇温するために配設された通電発熱式ヒーターに、通電するために利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1:電極収容体、1a:外周(外周面)、1b:フランジ部、1c:胴部、1d:細胴部、1e:テーパ部、2:接続端部、3:先端部、4:電極本体、4a:固定部、5:絶縁部材、6:放熱部、7:栓部、11:缶体、12:被覆線、12a:リード線、12b:被覆材、13:接続具、21:第1収容体、22:第2収容体、31:排ガス処理装置、51:隔壁、52:セル、53:外周壁、54:ハニカム構造体、61:一方の端面、62:他方の端面、71:筒状構造体、71a:入口、71b:出口、72:充填材、73:留め具、74:結合部材、100,200:電極構造、G:排ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被通電体が収容される缶体に接続される側の端部である接続端部及び通電用のリード線の端部が差し込まれる側の端部である先端部を有する筒状の電極収容体と、
前記電極収容体に接触しない状態で前記電極収容体の内部に配設された電極本体と、
前記電極収容体と前記電極本体との隙間に配設された絶縁部材と、
前記電極収容体の外周から外側に向かって突き出すように形成された放熱部とを備えた電極構造。
【請求項2】
前記放熱部が、前記電極収容体の外周から外側に向かって突き出した鍔状である請求項1に記載の電極構造。
【請求項3】
前記放熱部にスリットが形成された請求項1又は2に記載の電極構造。
【請求項4】
前記放熱部の、前記電極収容体の外周から外側に向かう方向における高さが5〜30mmである請求項1〜3のいずれかに記載の電極構造。
【請求項5】
前記缶体が、内燃機関から排出された排ガスを排出するための配管に装着された金属製の筒状構造体であり、前記被通電体が、前記排ガスの処理に使用されるハニカム構造体である請求項1〜4のいずれかに記載の電極構造。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−171139(P2011−171139A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34526(P2010−34526)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】