説明

電極被覆用ガラス、プラズマディスプレイパネル前面基板およびプラズマディスプレイパネル背面基板

【課題】カラーフィルタ層の形成を不要とすることが可能になり得る電極被覆用ガラス。
【解決手段】CuおよびCoを含有し、CuのCuO換算含有量が0.05〜2モル%かつCoのCoO換算含有量が0.05〜2モル%である電極被覆用ガラス。下記酸化物基準のモル百分率表示で、B 20〜60%、SiO 5〜50%、PbO+ZnO 10〜40%、Al 0〜15%、SrO+BaO 0〜20%、TiO 0〜10%、Bi 0〜9%、LiO+NaO+KO 0〜16%、CuO 0.05〜2%、CoO 0.05〜2%、CeO 0〜2%、MnO 0〜2%、から本質的になる電極被覆用ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという。)の前面基板および背面基板、およびそれら基板の電極被覆に好適な電極被覆用ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型の平板型カラー表示装置が注目を集めている。このような表示装置では画像を形成する画素における表示状態を制御するために各画素に電極が形成される。このような電極としては、画像の質の低下を防ぐために、ガラス基板上に形成されたITOまたは酸化スズの薄膜等の透明電極が用いられている。
【0003】
前記表示装置の表示面として使用されるガラス基板の表面に形成される透明電極は、精細な画像を実現するために細い線状に加工される。そして各画素を独自に制御するためには、このような微細に加工された透明電極相互の絶縁性を確保する必要がある。ところが、ガラス基板の表面に水分が存在する場合やガラス基板中にアルカリ成分が存在する場合、このガラス基板の表面を介して若干の電流が流れることがある。このような電流を防止するには、透明電極間に絶縁層を形成することが有効である。また、透明電極間に形成される絶縁層による画像の質の低下を防ぐべくこの絶縁層は透明であることが好ましい。
このような絶縁層を形成する絶縁材料としては種々のものが知られているが、なかでも、透明であり信頼性の高い絶縁材料であるガラス材料が広く用いられている。
【0004】
最近大型平面カラーディスプレイ装置として期待されているPDPにおいては、表示面として使用される前面基板と、隔壁が形成されている背面基板とが貼り合わされており、その内部には隔壁によりセルが区画形成されている。そして、そのセル中でプラズマ放電を発生させることにより画像が形成される。
前面基板のガラス基板の表面には透明電極が形成されており、この透明電極をプラズマから保護するために、プラズマ耐久性に優れたガラスにより前記透明電極を被覆することが必須である。
また、背面基板のガラス基板の表面にはアドレス電極が形成されており、このアドレス電極もガラスにより被覆される。
【0005】
このような電極被覆に用いられるガラスは、通常はガラス粉末にして使用される。たとえば、前記ガラス粉末に必要に応じてフィラー等を添加した上で樹脂、溶剤等と混合してガラスペーストとしこれを透明電極等の電極が形成されているガラス基板に塗布後焼成する、前記ガラス粉末に樹脂、さらに必要に応じてフィラー等を混合して得られたスラリーをグリーンシートに成形しこれを電極が形成されているガラス基板上にラミネート後焼成する、等の方法によって電極をガラスにより被覆する。
【0006】
PDP前面基板の透明電極被覆に用いられるガラスには、先に述べたような電気絶縁性の他に、たとえば、軟化点(Ts)が450〜650℃であること、50〜350℃における平均線膨張係数(α)が60×10−7〜90×10−7/℃であること、焼成して得られる電極被覆ガラス層の透明性が高いこと、等が求められており、種々のガラスが従来提案されている。
【0007】
PDP前面基板では通常、電極被覆ガラス層の上にコントラスト向上等を目的としてカラーフィルタ層が形成されるが、最近はこのカラーフィルタ層の形成を不要とするべく電極被覆ガラス層として着色ガラスを用いこれにより画面のコントラストを向上させることが提案されている(特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開2000−226229号公報(表1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先に述べたようにカラーフィルタ層の形成を不要とするべく電極被覆ガラス層として着色ガラスを用いることが従来提案されているが、未だ広く用いられるに至っていない。
その原因は必ずしも明らかではないが、特許文献1で開示されている電極被覆用ガラスは着色成分としてCoOおよびNiOのみを含有するものであり、そのことが前記原因である可能性がある。
本発明はこのような可能性の排除を可能にする電極被覆用ガラス、ならびにそのようなガラスを電極被覆に用いたPDP前面基板およびPDP背面基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、CuおよびCoを含有し、CuのCuO換算含有量が0.05〜2モル%かつCoのCoO換算含有量が0.05〜2モル%である電極被覆用ガラス(本発明の第1のガラス)を提供する。
また、下記酸化物基準のモル百分率表示で、B 20〜60%、SiO 5〜50%、PbO+ZnO 10〜40%、Al 0〜15%、SrO+BaO 0〜20%、TiO 0〜10%、Bi 0〜9%、LiO+NaO+KO 0〜16%、CuO 0.05〜2%、CoO 0.05〜2%、CeO 0〜2%、MnO 0〜2%、から本質的になる電極被覆用ガラス(本発明の第2のガラス)を提供する。
【0011】
また、透明電極が形成されているガラス基板がガラス層によって被覆されているPDP前面基板であって、ガラス層のガラスが本発明の第1または第2のガラスであるPDP前面基板を提供する。
また、電極が形成されているガラス基板がガラス層によって被覆され、そのガラス層の上に隔壁が形成されているPDP背面基板であって、ガラス層のガラスが本発明の第1または第2のガラスであるPDP背面基板を提供する。
【発明の効果】
【0012】
カラーフィルタ層が形成されていないPDP前面基板であってその電極被覆ガラス層が着色成分としてCoOおよびNiOのみを含有するものではないものが得られる。
また、バス電極等として銀電極が用いられているPDP前面基板であってその電極被覆ガラス層の銀電極周辺部分の黄変現象を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の電極被覆用ガラス(以下、単に本発明のガラスという。)をPDP前面基板の電極被覆ガラス層として用いる場合を中心に以下では説明する。なお、本発明はこの場合に限定されない。
【0014】
本発明のガラスは通常はガラス粉末にして使用される。たとえば、本発明のガラスの粉末は印刷性を付与するための有機ビヒクル等を用いてガラスペーストとされ、ガラス基板上に形成された電極上に前記ガラスペーストを塗布、焼成して電極を被覆する。ここでいう有機ビヒクルは、エチルセルロース等のバインダをα−テルピネオール等の有機溶剤に溶解したものである。あるいは、本発明のガラスの粉末に樹脂、さらに必要に応じてフィラー等を混合して得られたスラリーをグリーンシートに成形しこれを電極が形成されているガラス基板上にラミネート後焼成して電極を被覆する。
【0015】
本発明のガラスのTsは450〜650℃であることが好ましい。650℃超では、通常使用されているガラス基板(ガラス転移点:550〜620℃)が焼成時に変形するおそれがある。
ガラス転移点が610〜630℃であるようなガラス基板を用いる等の場合には前記Tsは、好ましく630℃以下、より好ましくは550〜600℃である。
また、単層構造の電極被覆ガラス層に用いる場合等には前記Tsは好ましくは520℃以上、より好ましくは550℃以上であり、ガラス転移点が610〜630℃であるようなガラス基板を用いる等の場合には前記Tsは580℃以上であることが特に好ましい。
【0016】
前記ガラス基板としては通常、αが80×10−7〜90×10−7/℃のものが用いられる。したがってこのようなガラス基板と膨張特性をマッチングさせ、ガラス基板のそりや強度の低下を防止するためには、本発明のガラスのαは好ましくは60×10−7〜90×10−7/℃、より好ましくは70×10−7〜85×10−7/℃である。
本発明のガラスは、Tsが450〜650℃、αが60×10−7〜90×10−7/℃であるものであることが好ましい。
【0017】
本発明のガラスの1MHzにおける比誘電率は典型的には8〜13である。
【0018】
本発明のガラスは、PDPのガラス基板として用いられるガラス基板の上に厚みが30〜35μmであるガラス層として形成されたとき、そのガラス層が形成されたガラス基板に対する波長450nm、550nm、630nmの各光の透過率(単位:%)をそれぞれT450、T550、T630として、T450>T550>T630または−2%<(T450−T550)<0%であることが好ましい。
また、T450、T550、T630はいずれも65%以上であることが好ましい。
なお、前記ガラス基板としては厚みが2.8mmである旭硝子社製PD200ガラス基板(T450=89%、T550=90%、T630=88%。)が例示される。
【0019】
本発明のガラスは、それを銀電極を被覆するガラス層に用いた場合に銀電極周辺部分の黄変現象が起こりにくいまたは起こらないものであることが好ましい。なお、この黄変現象はガラスが茶色または黄色に着色しPDPの画質が低下する現象であり、銀電極を被覆するガラス層に当該電極の銀が拡散して起こる現象と考えられている。
【0020】
次に、本発明のガラスの成分について説明する。なお、たとえばCuはガラス中においてCuOの形で存在するものとしてCuOを成分として扱い、CuO換算含有量はCuOと略記し、各成分の含有量はNiに対するものを除きモル百分率表示で表す。
【0021】
CuOは、T450、T550およびT630について先に示した好ましい関係を実現するための成分であり、また、前記黄変現象を起こりにくくするまたは起こらないようにする成分であり、必須である。0.05%未満では前記好ましい関係を実現しにくくなる、または前記黄変現象が起こりやすくなる。好ましくは0.1%以上である。2%超ではガラスの透過率が低下し、特にT550が低下する。好ましくは0.9%以下であり、PbOを24%以上含有する場合には典型的には0.4%以下である。
【0022】
CoOは前記好ましい関係を実現するための成分であり、必須である。0.05%未満では前記好ましい関係を実現しにくくなる。好ましくは0.1%以上である。2%超ではガラスの透過率が低下し、特にT630が低下する。好ましくは1%未満である。
【0023】
CeOは必須ではないが、ガラスの色調を黄色方向に調整したい等の場合には2%まで含有してもよい。2%超ではガラスの透過率が低下し、特にT450が低下する。好ましくは1%以下である。CeOを含有する場合その含有量は0.1%以上であることが好ましい。
【0024】
MnOは必須ではないが、ガラスの色調を赤色方向に調整したい等の場合には2%まで含有してもよい。2%超ではガラスの透過率が低下し、特にT550が低下する。好ましくは1%以下である。MnOを含有する場合その含有量は0.1%以上であることが好ましく、典型的には0.2%以上である。
【0025】
本発明のガラスは典型的には、NiOを含有しない、またはNiOを含有する場合その含有量は質量百分率表示で0.005%未満である。
【0026】
本発明の第1のガラスは、典型的にはB−SiO系ガラスである。
【0027】
次に、本発明の第2のガラスの成分について説明する。なお、CuO、CoO、CeOおよびMnOについては上記説明と重複するので説明を省略する。
はガラス網目構造形成成分であり、必須である。20%未満ではガラスが不安定になる。好ましくは26%以上である。60%超ではTsが高くなりすぎる。好ましくは55%以下、典型的には50%以下である。
SiOはガラス網目構造形成成分であり、必須である。5%未満ではガラスが不安定になる。典型的には7%以上である。50%超ではTsが高くなりすぎる。好ましくは35%以下、典型的には26%以下である。
【0028】
PbOおよびZnOはTsを低下させる効果を有する成分であり、少なくともいずれか一方を含有しなければならない。PbOおよびZnOの含有量の合計が10%未満では前記効果が小さい。典型的には18%以上である。40%超ではαが大きくなりすぎるおそれがある、またはガラスが結晶化しやすくなる。好ましくは35%以下、典型的には30%以下である。
PbOを含有する場合、その含有量は好ましくは10〜35%、典型的には21〜29%である。PbOが35%超ではαが大きくなりすぎるおそれがある。
ZnOを含有する場合、その含有量は好ましくは10〜30%、典型的には15〜25%である。ZnOが30%超ではガラスが結晶化しやすくなる。
【0029】
Alは必須ではないが、ガラスをより安定化させたい等の場合には15%まで含有してもよい。15%超ではガラスが結晶化しやすくなる。好ましくは10%以下、典型的には8%以下である。Alを含有する場合その含有量は好ましくは1%以上、典型的には3%以上である。
【0030】
SrOおよびBaOはいずれも必須ではないが、αを大きくしたい等の場合には合計で20%までの範囲で含有してもよい。20%超ではαが大きくなりすぎるおそれがある。好ましくは16%以下である。SrOおよびBaOの少なくともいずれか一方を含有する場合、SrOおよびBaOの含有量の合計は5%以上であることが好ましい。典型的には8%以上である。また、その場合にはBaOを含有することが好ましい。
BaOを含有する場合、その含有量は典型的には8〜16%である。
SrOを含有する場合、その含有量は典型的には10%以下である。
【0031】
TiOは必須ではないが、比誘電率を大きくしたい等の場合には10%まで含有してもよい。10%超ではガラスが結晶化しやすくなる。典型的には7%以下である。TiOを含有する場合その含有量は好ましくは1%以上、典型的には3%以上である。
Biは必須ではないが、Tsを低下させたい、比誘電率を大きくしたい等の場合には9%まで含有してもよい。9%超ではαが大きくなりすぎるおそれがある。典型的には4%以下である。Biを含有する場合その含有量は好ましくは1%以上である。
【0032】
LiO、NaOおよびKOはいずれも必須ではないが、Tsを低下させたい等の場合には合計で16%までの範囲で含有してもよい。16%超ではαが大きくなりすぎるおそれがある。好ましくは9%以下である。LiO、NaOおよびKOのいずれか一種以上を含有する場合、これら3成分の含有量の合計は好ましくは2%以上、典型的には3%以上である。また、その場合にはLiOを含有することが典型的である。
LiOを含有する場合その含有量は典型的には2〜9%である。
NaOおよびKOの少なくともいずれか一方を含有する場合それらの含有量の合計は典型的には10%以下である。
【0033】
本発明の第2のガラスは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。その場合そのような成分の含有量の合計は10%以下であることが好ましい。
【0034】
本発明の第2のガラスの好ましい態様として、Bが20〜55%、PbOが10〜35%、ZnOが0〜10%、SrOが0〜15%であるものが挙げられる。
また、別の好ましい態様として、Bが20〜50%、SiOが5〜35%、ZnOが10〜30%、Alが0〜10%、SrOが0〜10%、BaOが0〜16%、NaO+KOが0〜10%であり、PbOを含有しないものが挙げられる。
【0035】
次に、本発明のPDP前面基板の製造方法について説明する。
ガラス基板上に形成された透明電極とバス電極を被覆するように本発明のガラスの粉末を含有する層を形成する。
前記透明電極は、たとえば幅0.5mmの帯状であり、それぞれの帯状電極が互いに平行となるように形成される。各帯状電極中心線間の距離は、たとえば0.83〜1.0mmであり、この場合、透明電極がガラス基板表面を占める割合は50〜60%である。
また、バス電極は透明電極に対応するように形成され、銀またはCr−Cu−Crからなることが一般的である。
【0036】
前記本発明のガラスの粉末を含有する層の形成は、印刷法を用いる場合には本発明のガラスの粉末に必要であればフィラー等を添加した上で樹脂、溶剤等と混合してガラスペーストとしこれを透明電極が形成されているガラス基板に塗布して行い、グリーンシート法を用いる場合には前記ガラスの粉末に樹脂、さらに必要に応じてフィラー等を混合して得られたスラリーをグリーンシートに成形しこれを電極が形成されているガラス基板上にラミネートして行う。
【0037】
前記本発明のガラスの粉末を含有する層が形成されたガラス基板は加熱され、当該層は焼成されて電極被覆ガラス層となり、その後この電極被覆ガラス層の上に保護膜として酸化マグネシウムの層が形成され、PDP前面基板とされる。
なお、以上の説明において示した構成等は例であり、本発明のPDP前面基板はこれに限定されない。
【0038】
本発明のPDP背面基板は、本発明のPDP前面基板の製造方法に準じて製造される。すなわち、ガラス基板上のアドレス電極を被覆する本発明のガラスの粉末を含有する層は、本発明のPDP前面基板の製造方法におけると同様にして形成される。
アドレス電極は銀またはCr−Alからなることが一般的である。
【0039】
本発明のPDP背面基板の電極被覆ガラス層に光反射性、遮光性等を付与したい場合には、前記本発明のガラスの粉末を含有する層にフィラー(顔料を含む。)を含有することが好ましい場合がある。なお、顔料としては、Al、Si、Ti、Cr、Mn、CoおよびCuからなる群から選ばれる1以上の元素を含有するものであることが一般的である。
前記好ましい場合において本発明のガラスの粉末を含有する層がフィラーとして顔料を含む場合、本発明のガラスの粉末を100質量部として顔料を0.5〜40質量部の割合で含むものであることが好ましい。
【実施例】
【0040】
表のBからMnOまでの欄にモル百分率表示で示す組成となるように、原料を調合して混合し、1100〜1350℃の電気炉中で白金ルツボを用いて1時間溶融し、薄板状ガラスに成形した後、ボールミルで粉砕し、ガラス粉末を得た。例1〜17は実施例、例18は比較例である。
【0041】
これらガラス粉末について、軟化点Ts(単位:℃)、50〜350℃における平均線膨張係数α(単位:10−7/℃)、1MHzでの比誘電率εを以下に述べるようにして測定した。結果を表に示す。
Ts:800℃までの範囲で示差熱分析計を用いて測定した。
α:ガラス粉末を加圧成形後、Tsより30℃高い温度で10分間焼成して得た焼成体を直径5mm、長さ2cmの円柱状に加工し、熱膨張計で50〜350℃における平均線膨張係数を測定した。
ε:ガラス粉末を再溶融し板状に成形後、加工して50mm×50mm×厚み3mmの測定試料とした。測定試料の両面にアルミニウム電極を蒸着により作製し、LCRメータを用いて周波数1MHzでの比誘電率を測定した。
【0042】
また、前記ガラス粉末100gを有機ビヒクル25gと混練してガラスペーストを作製した。なお、有機ビヒクルは、α−テルピネオールにエチルセルロースを質量百分率表示で12%溶解して作製した。
次に、大きさ50mm×75mm、厚み2.8mmのガラス基板(旭硝子社製PD200)を用意し、このガラス基板の表面48mm×73mmの部分にスクリーン印刷用銀ペーストを印刷し焼成して銀層を形成した。なお、前記ガラス基板は、質量百分率表示組成が、SiO 58%、Al 7%、NaO 4%、KO 6.5%、MgO 2%、CaO 5%、SrO 7%、BaO 7.5%、ZrO 3%、であり、またガラス転移点が626℃、αが83×10−7/℃、であるガラスからなる。
【0043】
このように銀層が形成されたガラス基板と、銀層が形成されていないガラス基板とを用意し、それぞれの50mm×50mmの部分に前記ガラスペーストを均一にスクリーン印刷後、120℃で10分間乾燥した。これらガラス基板を昇温速度10℃/分で温度がTsに達するまで加熱し、さらにその温度をTsに30分間保持して焼成した。このようにしてガラス基板上に形成されたガラス層の厚みは30〜35μmであった。
【0044】
銀層が形成されていないガラス基板上に前記ガラス層が形成された試料について、波長450nm、550nm、630nmの光の透過率T450(単位:%)、T550(単位:%)、T630(単位:%)を以下に述べるようにして測定した。
450、T550、T630:日立製作所社製の積分球型自記分光光度計U−3500を用いて波長450nm、550nm、630nmの光の透過率を測定した(試料のない状態を100%とした。)。
【0045】
また、銀層が形成されたガラス基板上に前記ガラス層が形成された試料について黄変現象の有無を調べた。その結果、例1〜18のいずれのガラス層の色も無色、青色または青緑色であり、ガラス層の色が茶色または黄色となる黄変現象は認められなかった。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のガラスはPDPの前面または背面基板の電極被覆に利用できる。
また、本発明のPDP前面基板およびPDP背面基板はPDPの製造に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuおよびCoを含有し、CuのCuO換算含有量が0.05〜2モル%かつCoのCoO換算含有量が0.05〜2モル%である電極被覆用ガラス。
【請求項2】
Ceを含有し、そのCeO換算含有量が2モル%以下である請求項1に記載の電極被覆用ガラス。
【請求項3】
Mnを含有し、そのMnO換算含有量が2モル%以下である請求項1または2に記載の電極被覆用ガラス。
【請求項4】
−SiO系ガラスである請求項1、2または3に記載の電極被覆用ガラス。
【請求項5】
下記酸化物基準のモル百分率表示で、B 20〜60%、SiO 5〜50%、PbO+ZnO 10〜40%、Al 0〜15%、SrO+BaO 0〜20%、TiO 0〜10%、Bi 0〜9%、LiO+NaO+KO 0〜16%、CuO 0.05〜2%、CoO 0.05〜2%、CeO 0〜2%、MnO 0〜2%、から本質的になる電極被覆用ガラス。
【請求項6】
が20〜55%、PbOが10〜35%、ZnOが0〜10%、SrOが0〜15%である請求項5に記載の電極被覆用ガラス。
【請求項7】
が20〜50%、SiOが5〜35%、ZnOが10〜30%、Alが0〜10%、SrOが0〜10%、BaOが0〜16%、NaO+KOが0〜10%であり、PbOを含有しない請求項5に記載の電極被覆用ガラス。
【請求項8】
Niを含有しない、またはNiを含有しそのNiO換算含有量が質量百分率表示で0.005%未満である請求項1〜7のいずれかに記載の電極被覆用ガラス。
【請求項9】
透明電極が形成されているガラス基板がガラス層によって被覆されているプラズマディスプレイパネル前面基板であって、ガラス層のガラスが請求項1〜8のいずれかに記載の電極被覆用ガラスであるプラズマディスプレイパネル前面基板。
【請求項10】
電極が形成されているガラス基板がガラス層によって被覆され、そのガラス層の上に隔壁が形成されているプラズマディスプレイパネル背面基板であって、ガラス層のガラスが請求項1〜8のいずれかに記載の電極被覆用ガラスであるプラズマディスプレイパネル背面基板。

【公開番号】特開2006−193385(P2006−193385A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7898(P2005−7898)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】