説明

電気めっき用治具

【課題】 材料強度が比較的弱い極薄な半導体ウエーハ等の被めっき物に対して伝導板を接触させた場合でも、被めっき物に破損、損傷等が生じる事態を解消できるようにする。
【解決手段】 半導体ウエーハWをボルト21を用いて第1の絶縁板10と第2の絶縁板20との間で挟持する。そして、弾性を有する環状の平板からなる導電ゴム(伝導板)60を、第1の絶縁板10と半導体ウエーハWとの間に介在させ、この導電ゴム60を半導体ウエーハWに弾性的に面接触させる。これにより、導電ゴム60は半導体ウエーハWに対するクッションとして機能し、半導体ウエーハWに加えられる導電ゴム60からの荷重(押付力)を和らげるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエーハ、ガラス基板およびセラミック基板等の表面にめっきおよび陽極酸化を施すための電気めっき用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、めっき技術は各方面の技術分野で応用されており、半導体の配線技術にも用いられている。半導体分野では、半導体の高集積化および高性能化を実現するために、半導体の配線ピッチを縮小することが求められており、最近採用されている配線技術の一つとして、層間絶縁膜を成膜後にドライエッチングプロセスを行うことによって配線溝を確保し、その配線溝にめっきにより配線材料を埋め込む方法がある。
【0003】
このようなめっき技術を実現するためには、被めっき物に形成された溝にめっきを均一に析出させる必要がある。そこで、本出願人により、被めっき物の被めっき面に均一なめっき膜を形成することができる電気めっき用治具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この電気めっき用治具は、図5に示すように、被めっき物である半導体ウエーハ100の被めっき面100Aに電気を伝導させる陰極伝導体101と、半導体ウエーハ100の表面側(被めっき面100A側)を覆い、陰極伝導体101を保持する第1の絶縁体102(以下、絶縁体102という)と、半導体ウエーハ100の裏面側(被めっき面100Aの反対側)を覆い、半導体ウエーハ100を保持する第2の絶縁体103(以下、裏蓋103という)とから概ね構成される。
【0005】
ここで、陰極伝導体101は、半導体ウエーハ100を周囲から取り囲むようにして設けられた環状板部101Aと、一端側が環状板部101Aに取り付けられて他端側が外部の電源(図示せず)に接続される略長方形状の電源接続板部101Bとを備えている。また、前記環状板部101Aは、半導体ウエーハ100の被めっき面100A側へと径方向内向きに突出した複数の突出板部101C,101C,…を有し、これら各突出板部101Cには、それぞれ半導体ウエーハ100の被めっき面100Aの周縁部に電気的に接触する凸部101D,101D,…が突設されている。
【特許文献1】特開2003−301299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の電気めっき用治具においては、裏蓋103を絶縁体102に対して複数のねじ(図示せず)を用いて締結することにより、金属材料からなる陰極伝導体101の各凸部101Dをそれぞれ半導体ウエーハ100に押し付けるようにして接触させている。このため、半導体ウエーハ100には、前記各凸部101Dからの荷重(押付力)が局所的に集中して作用し、半導体ウエーハ100のうち各凸部101Dが接触する接触部位が損傷したり、場合によっては、この接触部位を基点として半導体ウエーハ100に亀裂が入るおそれがあるという問題がある。特に、近年の極薄半導体ウエーハや大型半導体ウエーハにおいては、材料強度が弱くなるため、前記した亀裂等の問題が生じ易くなっているのが実状である。
【0007】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、材料強度が比較的弱い極薄な半導体ウエーハ等の被めっき物に対して伝導板を接触させた場合でも、被めっき物に過大な応力が加わるのを防止して、被めっき物に破損、損傷等が生じる事態を解消でき、性能、信頼性等を向上できるようにした電気めっき用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の電気めっき用治具は、開口部を有する第1の絶縁板と、被めっき物が前記開口部から外部に臨むように当該被めっき物を前記第1の絶縁板との間で挟持する第2の絶縁板と、前記第1の絶縁板と前記被めっき物との間に介在して設けられ、前記被めっき物に外部から供給される電気を伝導させる伝導板と、を備えた電気めっき用治具であって、前記伝導板は、前記被めっき物に弾性的に当接する導電ゴムを用いて形成したことを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、被めっき物を第1の絶縁板と第2の絶縁板との間で挟持させたときには、導電ゴムである伝導板が被めっき物に対するいわゆるクッションとしての機能を発揮し、被めっき物に加えられる伝導板からの荷重(押付力)を和らげることができ、前記従来技術で述べたような局所的な荷重が被めっき物に集中して付加される不具合を解消することができる。
【0010】
請求項2に記載の本発明の電気めっき用治具は、導電ゴムが、第1の絶縁板の開口部を周囲から取り囲むように配置されて被めっき物に面接触する環状または枠状の平板であることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、平板からなる導電ゴムを被めっき物の表面に弾性的に広く面接触させることができ、被めっき物に付加される導電ゴムからの押付力を確実に和らげることができる。また、導電ゴムを環状または枠状の平板に形成したことにより被めっき物の被めっき面が導電ゴムで覆われることがなくなり、この被めっき面を確実にめっきすることができる。
【0012】
請求項3に記載の本発明の電気めっき用治具は、第2の絶縁板と被めっき物との間に前記被めっき物に弾性的に当接する弾性シートを設けたことを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、被めっき物に加えられる伝導板からの荷重を弾性シートで弾性的に受け止めることができ、弾性シートがクッションとなって被めっき物に局所的な荷重が集中して作用するのをより一層抑えることができる。
【0014】
請求項4に記載の本発明の電気めっき用治具は、開口部を有する第1の絶縁板と、被めっき物が前記開口部から外部に臨むように当該被めっき物を前記第1の絶縁板との間で挟持する第2の絶縁板と、前記第2の絶縁板と前記被めっき物との間に介在して設けられ、前記被めっき物に外部から供給される電気を伝導させる伝導板と、を備えた電気めっき用治具であって、前記伝導板は、前記被めっき物に弾性的に当接する導電ゴムを用いて形成したことを特徴としている。
【0015】
このような構成によっても、請求項1の発明と同様に、被めっき物を第1の絶縁板と第2の絶縁板との間で挟持させたときに、導電ゴムである伝導板が被めっき物に対するいわゆるクッションとしての機能を発揮し、被めっき物に加えられる伝導板からの荷重(押付力)を和らげることができる。また、導電ゴムを被めっき物とほぼ対応した形状を有する平板として形成することにより、この導電ゴムを、被めっき物の被めっき面とは反対側となる裏面全体に広く面接触させることができる。このようにすると、被めっき物の裏面全体に電気が供給されることとなるので、被めっき物の電位差を小さく抑えることができ、被めっき物に形成されるめっきのむらを小さく抑えることができる。
【0016】
請求項5に記載の本発明の電気めっき用治具は、被めっき物が、半導体ウエーハ、ガラス基板、セラミック基板、プリント基板またはアルミ基板であることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、導電ゴムを、半導体ウエーハ、ガラス基板、セラミック基板、プリント基板またはアルミ基板(以下、まとめて半導体ウエーハ等という)の表面に弾性的に接触させることができ、半導体ウエーハ等に付加される導電ゴムからの押付力を和らげ、半導体ウエーハ等が破損、損傷するのを防止することができる。
【0018】
請求項6に記載の本発明の電気めっき用治具は、開口部の周縁に第1の絶縁板と被めっき物との間をシールする内側シールを設け、導電ゴムの周囲に前記第1の絶縁板と第2の絶縁板との間をシールする外側シールを設け、前記第1の絶縁板および前記第2の絶縁板のうち少なくともいずれか一方には、前記第1の絶縁板、前記第2の絶縁板、前記内側シールおよび前記外側シールで取り囲まれる空間部を負圧状態に保持するための空気吸込み通路を形成したことを特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、空気吸込み通路にポンプを装着することにより、第1の絶縁板、第2の絶縁板、内側シールおよび外側シールで取り囲まれる空間部内の空気をポンプで吸込んで前記空間部を負圧状態に保持することができる。この結果、内側シール全体を被めっき物に対して均一な押付力をもって当接させることができると共に、外側シール全体を第1の絶縁体(または第2の絶縁体)に対して同じく均一な押付力をもって当接させることができる。このため、内側シールおよび外側シールのシール性能を高く維持することができ、前記空間部内にめっき液が浸入して被めっき物の被めっき面以外の部位がめっきされる不具合を防止することができる。
【0020】
請求項7に記載の本発明の電気めっき用治具は、第1の絶縁板または第2の絶縁板と、導電ゴムとの間に金属板を設けたことを特徴としている。
【0021】
このような構成によれば、被めっき物を第1の絶縁板と第2の絶縁板との間で挟持したときには、金属板により導電ゴム全体を被めっき物に対して均一な押付力をもって押圧することができ、導電ゴムから被めっき物に局所的な荷重が加えられるのを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1の絶縁板(または第2の絶縁板)と被めっき物との間に配置される伝導板を、導電ゴムを用いて形成したから、伝導板を被めっき物に対してソフトに弾接させることができ、これにより、被めっき物に破損、損傷等が生じるのを防止でき、電気めっき用治具の性能、信頼性等を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る電気めっき用治具の分解斜視図であり、図2は、本実施の形態に係る電気めっき用治具を示す平面図である。図3は、本実施の形態に係る電気めっき用治具を図2中の矢示II−II方向から拡大してみた部分拡大断面図であり、図4は図1中の導電ゴムを単体で示す斜視図である。
【0024】
図1ないし図4に示すように、電気めっき用治具1は、第1の絶縁板10、第2の絶縁板20、内側シール30、外側シール40、空気吸込み通路50、および伝導板である導電ゴム60によって概ね構成されている。
【0025】
第1の絶縁板10は、例えばアクリル等の絶縁物質を用いて略四角形状をなす平板体として形成され、図1ないし図3に示すように、表面10A、裏面10Bおよび上下左右(図2参照)の側面10C,10D,10E,10Fを有している。この第1の絶縁板10には略円形状の開口部10Gが形成され、この開口部10Gを介して被めっき物である後記する半導体ウエーハWの被めっき面Wa(図2参照)が外部に露出する(臨む)ようになっている。
【0026】
また、この第1の絶縁板10の裏面10Bには、第2の絶縁板20が嵌合して固定される有底の円形穴からなる嵌合凹溝11が形成され、この嵌合凹溝11は、底部11Aと側壁部11Bとを有している。嵌合凹溝11の底部11Aには、その中央に前記開口部10Gが開口すると共に、側壁部11Bには、その周方向に離間して4個の位置決め溝11C,11C,…が形成されている。また、嵌合凹溝11の底部11Aのうち、後記する内側シール取付凹溝12と外側シール取付凹溝13とで取り囲まれた部位には、底部11Aよりも一段低くなった段差部14が形成されている。
【0027】
ここで、嵌合凹溝11の底部11Aには、開口部10Gの周縁に位置して内側シール取付凹溝12が形成されている。また、この底部11Aには内側シール取付凹溝12の外側に当該取付凹溝12と同心円状に配置された外側シール取付凹溝13が形成されている。なお、底部11Aには、外側シール取付凹溝12の内周側に周方向に離間して複数のねじ穴11D,11D,…が形成されると共に、外側シール取付凹溝12の外周側に周方向に離間して複数のボルト穴11E,11E,…が形成されている。
【0028】
第2の絶縁板20は、第1の絶縁板10と同様に、例えばアクリル等の絶縁物質を用いて略円形状をなす平板体として形成され、その中央には半導体ウエーハWが収容(嵌合)して取り付けられるウエーハ収容凹部20Aが凹設されている。また、第2の絶縁板20には、周方向に離間してボルト挿通穴20B,20B,…が形成されると共に、この第2の絶縁板20の側面には、周方向に間隔をおいてかつ径方向外側に向けて4個の凸部20C,20C,…突設されている。そして、第2の絶縁板20は、各凸部20Cを第1の絶縁板10の各位置決め溝11Cにそれぞれ嵌合させることにより、各ボルト挿通穴20Bが各ボルト穴11Eと対応した位置に配置されるように位置決めされ、この状態で第2の絶縁板20は4個のボルト21,21,…(図1中に3個のみ図示)を用いて嵌合凹溝11に固定されている。これにより、半導体ウエーハWは後記する導電ゴム60等を介して第1の絶縁板10と第2の絶縁板20との間で挟持される。
【0029】
内側シール30は、図3に示すように、第1の絶縁板10の開口部10Gの周縁に位置して第1の絶縁板10と半導体ウエーハWとの間に介在して設けられている。この内側シール30は図1に示すように樹脂材料等を用いることにより横断面が略四角形状をなしたリングとして形成され、内側シール取付凹溝12内に嵌合して取り付けられている。そして、内側シール30は、図3に示すように半導体ウエーハWの表面に締代をもって当接することにより、半導体ウエーハWの周面Wb、特に周面Wbと導電ゴム60との接触部にめっき液が浸入するのを遮断している。
【0030】
外側シール40は、図3に示すように、導電ゴム60を外側から取り囲むようにして第1の絶縁板10と第2の絶縁板20との間に介在して設けられている。この外側シール40についても、内側シール30と同様に、樹脂材料等を用いることにより横断面が略四角形状をなしたリングとして形成され、外側シール取付凹溝13内に嵌合して取り付けられている。そして、外側シール40は、第2の絶縁板20に締代をもって当接することにより、後記する電源接続棒70の先端部70Bと導電ゴム60との接触部および半導体ウエーハWの周面Wbと導電ゴム60との接触部等にめっき液が浸入するのを内側シール30と共に遮断するものである。
【0031】
空気吸込み通路50は、図1および図2に示すように、第1の絶縁板10の内部を上下方向(図2参照)に延び、その上端側はねじ穴50Aとなって第1の絶縁板10の側面10Cに開口し、ポンプPと接続されている。また、空気吸込み通路50の下端側(先端側)は、略L字状に屈曲して第1の絶縁板10の段差部14に開口する開口端50Bとなっている。そして、ポンプPを作動したときには、図3に示すように、第1の絶縁板10、第2の絶縁板20、内側シール30および外側シール40で取り囲まれた空間部S内の空気が空気吸込み通路50を通じてポンプPにより吸い込まれ、空間部S内が負圧状態に保持される。
【0032】
導電ゴム60は、導電微粒子を混合した合成樹脂、例えば金属微粒子を混合したシリコンゴム等からなる導電性と弾性の両方を兼ね備えたゴム材料を用いて環状の平板として形成され、その周方向には間隔をおいて例えば4個のねじ挿通穴60A,60A,…が(図4参照)形成されている。
【0033】
ここで、導電ゴム60は、第1の絶縁板10の底部11Aに形成された段差部14内に嵌合して収容され、この状態で、ねじ(図示せず)をねじ挿通穴60Aを介してねじ穴11Dに螺着することにより、段差部14に後記する金属板80と共に固定されている。そして、導電ゴム60は、図3に示すように、第1の絶縁板10と半導体ウエーハWとの間および第1の絶縁板10と第2の絶縁板20との間に配置され、その内周縁60B側が半導体ウエーハWの周面Wbに均等な押付力をもって弾性的に面接触している。また、導電ゴム60は、その外周縁60C側が金属板80を介して電源接続棒70の先端部70Bと電気的に接続されている。
【0034】
電源接続棒70は、第1の絶縁板10の側面10Cから第1の絶縁板10の内部を下向き(図2参照)に延び、その上端部70Aは電源(図示せず)の陰極に接続されている。また、電源接続棒70の先端部(下端部)70Bは金属板80に面接触して電気的に接続されている。このため、半導体ウエーハWには、前記電源からの電気が電源接続棒70および金属板80を経由して伝導されるようになっている。なお、符号「71」は、電源接続棒70と第1の絶縁板10との間をシールするためのシール部材で、このシール部材71は、めっき液が電源接続棒70と第1の絶縁板10との間を経由して導電ゴム60周り(空間部Sを含む)に漏洩するのを遮断するものである。
【0035】
金属板80は、例えば燐青銅等の金属材料を用いて導電ゴム60とほぼ同様の形状をもって形成され、第1の絶縁板10の段差部14内に収容されている。そして、金属板80は、導電ゴム60と第1の絶縁板10の段差部14との間に配置され、第2の絶縁板20を第1の絶縁板10にボルト21で締め付けたときに導電ゴム60全体を半導体ウエーハWに対し、その周方向で均一な押付力をもって押圧するものである。
【0036】
符号「90」は第2の絶縁板20と半導体ウエーハWとの間に設けられた弾性シートで、この弾性シート90は、例えばシリコンゴムやフッ素系のゴムやシート等からなる硬質または軟質の弾性材料を用いて半導体ウエーハWとほぼ同様の形状をもって形成され、ウエーハ収容凹部20A内に収容されている。そして、この弾性シート90は半導体ウエーハWに加えられる導電ゴム60からの荷重を弾性的に受け止めるものである。
【0037】
このように構成される本実施の形態に係る電気めっき用治具1によれば、弾性を有する平板からなる導電ゴム60を、第1の絶縁板10と半導体ウエーハWとの間に介在させて半導体ウエーハWに弾性的に広く面接触させるようにしている。このため、半導体ウエーハWを第1の絶縁板10と第2の絶縁板20との間で挟持したときには、導電ゴム60が半導体ウエーハWに対するクッションとして機能し、半導体ウエーハWに加えられる導電ゴム60からの荷重(押付力)を確実に和らげることができ、前記従来技術で述べたような局所的な荷重が半導体ウエーハWに集中して付加される不具合を解消することができる。これにより、半導体ウエーハWに破損、損傷等が生じるおそれを防止することができ、電気めっき用治具1の性能、信頼性等を高めることができる。
【0038】
また、導電ゴム60を環状の平板として形成したので、半導体ウエーハWの被めっき面Waが導電ゴム60で覆われる不具合がなくなり、この被めっき面Waを確実にめっきすることができる。
【0039】
また、半導体ウエーハWと第2の絶縁板20との間には、半導体ウエーハWに対してその背面側(裏面側)から弾性的に当接する弾性シート90を介在させる構成としたので、半導体ウエーハWに加えられる導電ゴム60からの荷重を弾性シート90で弾性的に受け止めることができ、弾性シート90がクッションとなって半導体ウエーハWに局所的な荷重が集中して作用するのを一層防止することができる。
【0040】
さらに、導電ゴム60と第1の絶縁板10の段差部14との間には、導電ゴム60よりも硬質な金属板80を介在させる構成としたので、第2の絶縁板20を第1の絶縁板10に締め付けたときには、金属板80により導電ゴム60全体を半導体ウエーハWに対して均一な押付力をもって押圧することができ、導電ゴム60から半導体ウエーハWに局所的な荷重が加えられるのを確実に防止することができる。
【0041】
また、開口部10Gの周縁に第1の絶縁板10と半導体ウエーハWとの間をシールする内側シール30を設け、導電ゴム60の周囲に第1の絶縁板10と第2の絶縁板20との間をシールする外側シール40を設け、第1の絶縁板10には、第1の絶縁板10、第2の絶縁板20、内側シール30および外側シール40で取り囲まれる空間部Sを負圧状態に保持するための空気吸込み通路50を形成している。これにより、空間部S内の空気を空気吸込み通路50を通じてポンプPで吸込んで空間部Sを負圧状態に保持することができる。この結果、内側シール30全体を半導体ウエーハWに対して均一な押付力をもって当接させることができると共に、外側シール40全体を第2の絶縁体20に対して同じく均一な押付力をもって当接させることができる。このため、内側シール30および外側シール40のシール性能を高く維持することができ、空間部S内にめっき液が浸入して半導体ウエーハWの被めっき面Wa以外の部位(周面Wb等)がめっきされるのを遮断することができ、電気めっき用治具1の性能、信頼性等をより一層高めることができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、導電ゴム60を半導体ウエーハWの表面側となる周面Wbに面接触させる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば導電ゴム60を半導体ウエーハWと第2の絶縁板20との間に配置して半導体ウエーハWの周面Wbとは反対側となる裏面(背面)側に面接触させる構成としてもよい。この場合、導電ゴム60を半導体ウエーハWの形状とほぼ対応した円形状の平板として形成し、この導電ゴム60を半導体ウエーハWの裏面全体に面接触させるようにしてもよい。このようにすると、半導体ウエーハWの電位差を小さく抑えることができ、半導体ウエーハWに形成されるめっきのむらが生じにくいという利点がある。
【0043】
また、本実施の形態では、被めっき物として半導体ウエーハWを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、ガラス基板、セラミック基板、プリント基板またはアルミ基板でもよい。アルミ基板の場合、アルミ基板を導電ゴム60を介して電源の陽極に接続することにより、陽極酸化を行うことができる。
【0044】
また、本実施の形態では、空気吸込み通路50を第1の絶縁板10に形成する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば空気吸込み通路50を第2の絶縁板20に形成してもよい。
【0045】
さらに、本実施の形態では、金属板80を第1の絶縁板10と導電ゴム60との間に設ける場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば導電ゴム60を半導体ウエーハWと第2の絶縁板20との間に設けると共に、導電ゴム60と第2の絶縁板20との間に金属板80を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気めっき用治具の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電気めっき用治具を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電気めっき用治具を図2中の矢示II−II方向から拡大してみた部分拡大断面図である。
【図4】図1中の導電ゴムを単体で示す斜視図である。
【図5】従来技術による電気めっき用治具を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 電気めっき用治具
10 第1の絶縁板
10G 開口部
20 第2の絶縁板
30 内側シール
40 外側シール
50 空気吸込み通路
60 導電ゴム(伝導板)
80 金属板
90 弾性シート
W 半導体ウエーハ(被めっき物)
Wa 被めっき面
Wb 周面
S 空間部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する第1の絶縁板と、
被めっき物が前記開口部から外部に臨むように当該被めっき物を前記第1の絶縁板との間で挟持する第2の絶縁板と、
前記第1の絶縁板と前記被めっき物との間に介在して設けられ、前記被めっき物に外部から供給される電気を伝導させる伝導板と、を備えた電気めっき用治具であって、
前記伝導板は、前記被めっき物に弾性的に当接する導電ゴムを用いて形成したことを特徴とする電気めっき用治具。
【請求項2】
前記導電ゴムは、前記1の絶縁板の開口部を周囲から取り囲むように配置されて前記被めっき物に面接触する環状または枠状の平板であることを特徴とする請求項1に記載の電気めっき用治具。
【請求項3】
前記第2の絶縁板と前記被めっき物との間に前記被めっき物に弾性的に当接する弾性シートを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気めっき用治具。
【請求項4】
開口部を有する第1の絶縁板と、
被めっき物が前記開口部から外部に臨むように当該被めっき物を前記第1の絶縁板との間で挟持する第2の絶縁板と、
前記第2の絶縁板と前記被めっき物との間に介在して設けられ、前記被めっき物に外部から供給される電気を伝導させる伝導板と、を備えた電気めっき用治具であって、
前記伝導板は、前記被めっき物に弾性的に当接する導電ゴムを用いて形成したことを特徴とする電気めっき用治具。
【請求項5】
前記被めっき物は、半導体ウエーハ、ガラス基板、セラミック基板、プリント基板またはアルミ基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電気めっき用治具。
【請求項6】
前記開口部の周縁に前記第1の絶縁板と前記被めっき物との間をシールする内側シールを設け、前記導電ゴムの周囲に前記第1の絶縁板と前記第2の絶縁板との間をシールする外側シールを設け、前記第1の絶縁板および前記第2の絶縁板のうち少なくともいずれか一方には、前記第1の絶縁板、前記第2の絶縁板、前記内側シールおよび前記外側シールで取り囲まれる空間部を負圧状態に保持するための空気吸込み通路を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電気めっき用治具。
【請求項7】
前記第1の絶縁板または前記第2の絶縁板と、前記導電ゴムとの間に金属板を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の電気めっき用治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−348373(P2006−348373A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179358(P2005−179358)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(394016519)株式会社山本鍍金試験器 (13)
【Fターム(参考)】