説明

電気を発生させる設備

本発明は、電気を発生させる設備であって、コンプレッサ(2)を装備し、酸素運搬が保証されることにより金属酸化物が交互に酸化および還元される熱化学的なサイクルを有する燃焼系によりガスが供給さるガスタービン(1)と、燃料が供給される還元チャンバ(5)と、前記タービンのコンプレッサ(2)により搬送される空気が加圧下で供給される酸化チャンバ(7)とを備える形式のものに関する。本発明は、前記酸化チャンバ(7)に空気だけが供給され、かつ両チャンバ(5,7)が、固体を分離するためのサイクロン(11,12)をそれぞれ装備している、循環する流動層を備える反応器であって、前記サイクロン(11,12)に、前記固体の少なくとも第1の部分を相応の反応器(5,7)に再導入するための管路が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素運搬が保証されることにより金属酸化物が交互に酸化および還元される熱化学的なサイクルによる燃焼のための系に対応配置されているガスタービンと、燃料が供給される還元チャンバと、空気が供給される酸化チャンバとを備える、電気を発生させる設備に関する。
【0002】
FR0300432号の明細書から、ガス状または固体状の燃料への酸素運搬が保証されることにより金属酸化物が交互に酸化および還元される熱化学的なサイクルによって燃焼を実現することが公知である。この系は、大気圧で機能し、蒸気を発生させるために熱を回収する手段を備えるように設計されている。この蒸気は、引き続いて、蒸気タービン内で電気を発生させるために膨張される。この系は、750〜950℃の熱化学的なサイクルの温度で機能する。
【0003】
US6572761号の明細書には、ガスタービンのための燃焼チャンバとして役立つために、灰および硫黄を含む固体状の燃料、例えば石炭への酸素運搬が保証されることにより金属酸化物、有利には酸化鉄が交互に酸化および還元される熱化学的なサイクルによる燃焼のための系が記載されている。
【0004】
この酸化鉄は、2つの燃焼チャンバの間を循環し、第1のチャンバ内で固体状の燃料により還元され、第2のチャンバ内で空気により酸化される。温度は、第2のチャンバ内で天然ガスまたは適当な燃料の使用により制御され、かつ第2のチャンバ内への固体状の燃料の供給の百分率は、第2のチャンバを後にするガス中の二酸化硫黄の量を制限するために制御される。適当な燃料という概念は、現行の規定に対応する燃料を意味する。
【0005】
この種の系は以下の技術的な課題を呈する。
【0006】
2つの燃料、すなわち、第1のチャンバ内の固体状の燃料と、第2のチャンバ内の天然ガスまたは適当な燃料が、この燃焼系内で使用される。燃料のこのような使用は、不可避的に、2つのチャンバのスモーク中の二酸化炭素の発生に至る。
【0007】
二酸化炭素は、排出規制の対象とならざるを得ない温室効果を有するガスである。このことは、この二酸化物の完全なまたは部分的な捕集の実施に至る。
【0008】
本発明はこの問題を、二酸化炭素の最大の捕集を可能にする、熱化学的なサイクルを有する燃焼のためのこの種の系の提案により解決する。
【0009】
このために本発明は、電気を発生させる設備であって、コンプレッサを装備し、酸素運搬が保証されることにより金属酸化物が交互に酸化および還元される熱化学的なサイクルを有する燃焼系によりガスが供給さるガスタービンと、燃料が供給される還元チャンバと、前記タービンのコンプレッサにより搬送される空気が加圧下で供給される酸化チャンバとを備える形式のものにおいて、前記酸化チャンバに空気だけが供給され、かつ両チャンバが、固体を分離するためのサイクロンをそれぞれ装備している、循環する流動層を備える反応器であって、前記サイクロンに、前記固体の少なくとも第1の部分を相応の反応器に再導入するための管路が設けられていることを特徴とする、電気を発生させる設備を提案する。このことは、付加的な燃料を酸化チャンバに導入せず、したがって、酸化チャンバ内での二酸化炭素の発生を回避することを可能にする。
【0010】
循環する流動層を有する反応器の各々が、別の反応器に供給するために固体の一部が取り出される、固体のための再循環ループを有するという事実は、ある程度、2つの反応器の流体動力学的な機能を切り離すことを可能にする。
【0011】
これにより、シンプルかつコンパクトな設備が実現される。
【0012】
さらに油田は、しばしば灯明で燃焼されるか、または単純に大気に排出される所属の天然ガス量を発生する。この2つの方法は、温室効果を有する特に有害なガスエミッションを形成する。
【0013】
天然ガスからの電気の発生は、主として、2より高い空気過剰で機能するガスタービンの使用に基づく。このことは、燃焼に由来する二酸化炭素をかなり希薄化する効果を有する。その結果、この二酸化炭素はしばしば、タービンを後にする放出されるスモークの5体積%を占める。
【0014】
コンバインドサイクルは、しばしばサイクルの58%の効率を達成することを可能にするが、二酸化炭素のこのエミッションは、油田およびガス田の貯留(Lagerung)および助成回収(unterstuetzte Wiedergewinnung)の目的のための、放出される二酸化炭素の完全な捕集の要求に対して極めて高いままである。
【0015】
有利な実施の形態によれば、本発明は、最適な熱力学的な効率を提供するガスタービンを使用する一方、二酸化炭素の回収を伴う発電のために天然ガスまたは石油留分を使用することも提案する。
【0016】
この有利な実施の形態によれば、燃料が天然ガスまたは石油留分である。
【0017】
本発明により、エネルギ欠点は最小である。それというのも、極めて純粋な二酸化炭素が還元チャンバ内に生成され、この二酸化炭素は既に圧縮された状態にあるからである。このことは、搬送目的のための二酸化炭素の最終状態を達成するために、圧縮の度合を制限する。
【0018】
有利には、分離サイクロンの少なくとも1つが、固体を分離するための少なくとも1つの補足的なサイクロンを装備している。
【0019】
したがって、タービンのベーンを損傷しないために、酸化反応器のアウトプットにおける希薄な空気の除塵の促進が保証され得る。同様に、二酸化炭素のハンドリングおよびプロセッシングを保証する一連のコンプレッサのベーンを損傷しないために、還元反応器のアウトプットにおける二酸化炭素の除塵の促進も保証され得る。
【0020】
有利には、サイクロンおよび場合によっては補足的なサイクロンを装備している反応器から形成されている各構成群が、耐火性とされている。
【0021】
サイクロンおよび場合によっては補足的なサイクロンを装備している反応器から形成されている各構成群は、カバー内に加圧下で組み込まれていてもよい。
【0022】
有利には、ガスタービンが、2つの膨張段を備えるタービンである。
【0023】
本発明は、上に詳説したような設備を用いて電気を発生させる方法において、酸化反応器内の運転温度が、1200℃のオーダにあることを特徴とする、電気を発生させる方法にも関する。この温度は、存在する材料に鑑みて、ガスタービンの冷却されるベーンのための最大で許容可能な温度を形成する。
【0024】
有利には、還元反応器内の運転温度が、酸化反応器内の運転温度より100〜200℃低い。
【0025】
有利には、金属酸化物が、ニッケルを含む混合酸化物である。
【0026】
本発明について以下により詳細に、本発明による設備の有利な実施の形態を示す唯一の図面を参照しながら説明する。
【0027】
本発明によれば、電気を発生させる設備もしくは施設は、コンプレッサ2を装備するガスタービン1を有する。ガスタービン1には、酸素運搬が保証されることにより、高められた融点を有する金属酸化物、有利にはニッケルを含有する混合酸化物、例えばアルミニウムベースの酸化ニッケルが交互に酸化および還元される熱化学的なサイクルを有する燃焼系によりガスが供給される。
【0028】
コンプレッサ2には供給管路3により空気が供給される。コンプレッサ2はアウトプットで、25〜40バールの圧力を有する圧縮された空気を放出する。圧縮された空気は、燃焼系に導入される。このとき、この空気の一部はさらに、管路4によりタービンの羽根の冷却のために使用される。
【0029】
燃焼系は還元チャンバ5および酸化チャンバ7を有する。還元チャンバ5には、天然ガスまたは石油留分からなる燃料が、チャンバの床に配置されているインジェクタに供給される燃料6の到来により供給される。酸化チャンバ7には、タービンのコンプレッサ2によりインプット管路8を介して搬送される空気のみが供給される。
【0030】
熱化学的なサイクルは、金属酸化物がサイロ9から制御可能な不連続式のゲート10により酸化チャンバ7に導入されることにより実現される。
【0031】
これらのチャンバ5,7は、循環する流動層を有する反応器(zirkulierende Wirbelschicht)であり、それぞれ、固体を分離するためのサイクロン11,12を備える。サイクロン11,12には、前記固体の第1の部分を相応の反応器にサイフォン13,14により再導入するための管路15,16が設けられている。
【0032】
金属酸化物の酸化が約1200℃の温度で行われる酸化反応器7に対応配置されているサイフォン14のアウトプットで、酸化された金属酸化物を含む固体の第2の部分が、還元反応器5に案内される。還元反応器5の運転温度は、酸化反応器の運転温度より100〜200℃低く、すなわち、1000〜1100℃のオーダにある。還元反応器5に対応配置されているサイフォン13のアウトプットで、還元された金属酸化物を含む固体の第2の部分が、酸化反応器7に案内される。これにより、2つの反応器間での酸素運搬による熱化学的なサイクルが実現される。
【0033】
分離サイクロン11,12の少なくとも1つは、固体を分離するための少なくとも1つの別のサイクロンを備える。
【0034】
より正確に言えば、有利な実施の形態により、酸化反応器7が備えるサイクロン12は、上側の部分で、固体を分離するための補足的なサイクロン12Aに接続されている。補足的なサイクロン12Aはガス側のアウトプットで、直径が5μm未満の粒子を含む5ppm未満のダストを有する、酸素の希薄な空気を搬送する。この空気は、タービン1の2つの段に、インプット通路17により導入される。希薄な空気の一部は、場合によっては、タービンの効率を高めるために、第2の膨張段の前に導入され得る。
【0035】
酸化反応器に対応配置されている補足的なサイクロン12Aと、タービン1とを接続するためのインプット通路17は、可及的に短く実現されている。このために、ガスタービン1は、設備の運転形式を示すものであって、その物理的な組み付け位置を示すものではない図面に対して、物理的にこの補足的なサイクロン12Aの可及的近傍に組み付けられている。
【0036】
さらにこのインプット管路17は、2つの同心的なジャケットを有する。ジャケット内では、補足的なサイクロン12Aを後にした1200℃の高温の空気が、中央のジャケット内に存在し、低温の流体が、2つのジャケット間の環状の室内を循環される。有利には、低温の流体として、コンプレッサ2によりインプット管路8を介して搬送される空気が使用され得る。
【0037】
還元反応器5が備えるサイクロン11も、上側の部分で、固体を分離するための補足的なサイクロン11Aに接続されている。補足的なサイクロン11Aの、直径が5μm未満の粒子を含む5ppm未満のダストを有する、高温の二酸化炭素を含むガス側のアウトプットは、冷却器18内で冷却される。反応器に対応配置されている補足的なサイクロン11Aおよび12Aを後にした、固体を含む固体側のアウトプットと、冷却器18を後にした固体側のアウトプットとは、制御可能な不連続式のゲート23を介して排出される。
【0038】
サイクロンおよび補足的なサイクロンを備える反応器5,7から形成されている各構成群は、還元反応器内のエネルギのあらゆる損失を抑制するために、耐火性とされている。さらにこれらの構成群は、有利には、エネルギ論的な機能と圧力保持の機能とを分離するために、1つのカバー内に加圧下で組み込まれている。
【0039】
冷却器18のアウトプットで、ガスは、二酸化炭素の処理および再生のための系内に導入される。この系は、一連のコンプレッサ19A〜19Dからなる。コンプレッサ19A〜19Dは、150バールまでの圧縮を保証する。ここで、ガスはアウトプット21で貯蔵される。この一連のコンプレッサから再獲得される水の一部は、石油の助成回収タイプの使用25のために排出され、一部は、処理装置20内で処理される。
【0040】
タービン1のアウトプットには、約600℃の温度を有する膨張された希薄な空気が、3つの圧力ゲージを備える熱の回収のためのボイラ22内に導入される。ボイラ22は、空気を24で大気に放出する前に、90℃まで冷却することを可能にする。
【0041】
熱の回収のためのボイラは処理装置20により給水される。処理装置20は冷却器18にも給水する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による設備の有利な実施の形態を示す唯一の図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気を発生させる設備であって、コンプレッサ(2)を装備し、酸素運搬が保証されることにより金属酸化物が交互に酸化および還元される熱化学的なサイクルを有する燃焼系によりガスが供給さるガスタービン(1)と、燃料が供給される還元チャンバ(5)と、前記タービンのコンプレッサ(2)により搬送される空気が加圧下で供給される酸化チャンバ(7)とを備える形式のものにおいて、前記酸化チャンバ(7)に空気だけが供給され、かつ両チャンバ(5,7)が、固体を分離するためのサイクロン(11,12)をそれぞれ装備している、循環する流動層を備える反応器であって、前記サイクロン(11,12)に、前記固体の少なくとも第1の部分を相応の反応器(5,7)に再導入するための管路が設けられていることを特徴とする、電気を発生させる設備。
【請求項2】
燃料が天然ガスまたは石油留分である、請求項1記載の設備。
【請求項3】
分離サイクロン(11,12)の少なくとも1つが、固体を分離するための少なくとも1つの補足的なサイクロン(11A,12A)を装備している、請求項1または2記載の設備。
【請求項4】
サイクロン(11,12)および場合によっては補足的なサイクロン(11A,12A)を装備している反応器(5,7)から形成されている各構成群が、耐火性とされている、請求項1から3までのいずれか1項記載の設備。
【請求項5】
サイクロン(11,12)および場合によっては補足的なサイクロン(11A,12A)を装備している反応器(5,7)から形成されている各構成群が、カバー内に加圧下で組み込まれている、請求項1から4までのいずれか1項記載の設備。
【請求項6】
ガスタービンが、2つの膨張段を備えるタービンである、請求項1から5までのいずれか1項記載の設備。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の設備を用いて電気を発生させる方法において、酸化反応器内の運転温度が、1200℃のオーダにあることを特徴とする、電気を発生させる方法。
【請求項8】
還元反応器内の運転温度が、酸化反応器内の運転温度より100〜200℃低い、請求項7記載の方法。
【請求項9】
金属酸化物が、ニッケルを含む混合酸化物である、請求項7または8記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−529651(P2009−529651A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558767(P2008−558767)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051951
【国際公開番号】WO2007/104655
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】