説明

電気エネルギーを送電網に供給するための装置および当該装置のための直流変換機

直流発電機(1)と直流変換機(2)とインバータ(3)とを備える、電気エネルギーを送電網(8)に供給するための装置、ならびに、特にこれに適している直流変換機(2)が記載される。直流変換機(2)は、磁気接続および電気接続されている2つの巻線(W1、W2)と2つの回路(S5、S6)と3つのダイオード(D6、D7、D8)とを有する格納チョークコイル(15)を備える。また、直流変換機(2)は、直流発電機(1)がその負の出力部(5)にアースされることを可能にするとともに回路(S5、S6)の電圧負荷を小さいままにするように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載されている形式の装置および当該装置に適した直流変換機に関する。
【背景技術】
【0002】
光電池設備または燃料電池設備等の直流発電機によって生成される電気エネルギーを交流網、特に公的な送電網(50/60Hz)に供給するために、さまざまな形式のインバータが使用されている。直流発電機とインバータとの間には、たいていの場合、直流変換機(DC−DC−チョッパ)が設けられている。この直流変換機は、直流発電機から搬送された直流を、インバータによって必要とされるまたはインバータに適合された交流に変化するために用いられる。
【0003】
さまざまな理由から、直流発電機の出力部の一つにアースすることが望ましい。その際、本発明の範疇では、特に、直流変換機の負の出力部にアース端子が設けられるという場合が観察される。このようにアースが望まれる理由は、一つには、このようなアースが法律で規定されている国々が存在するということである。また、他の理由として、アースが施されていないと、運転の際にさまざまな欠点が生じることになるからである。この欠点としては、特に、高周波数の迷走電流の問題が挙げられる。直流発電機と大地との間に存在する不可避の寄生容量に起因して、電位が変動する際に、結果として、許容不可能な安全リスクである多大な均等化電流となる。したがって、このような均等化電流は、接触保護のために、または電磁的両極性(EMC)を生成するために、エラー電流センサ等を用いる高価な監視手段を必要とすることになり、均等化電流は、アースを行うことによってしか回避することはできない。直流発電機における電位の変動は、たとえば薄膜モジュール等の特定のソーラーモジュールの際にも、持続的な故障につながるおそれがある。
【0004】
上記の形式のアースは、変圧器を有する直流変換機を用いる場合には簡単に可能になる。この変圧器は、直流側を交流側から電気的に絶縁するものである。しかしながら、変圧器は、用いられるのが電源変圧器または高周波数変圧器であるかにかかわらず、特に効率の低下が一方では構造サイズの巨大な重量に、かつ/または、追加の制御コストを結果としてもたらす。したがって、基本的には、変圧器を有さない電流交換器が好まれる。変圧器を有さない直流変換機のその他のトポロジーは、望ましいアースを不可能にする。その理由は、このアースが必要とされる回路、容量等の短絡につながるからである。あるいは、変圧器を有さない直流変換機のその他のトポロジーは、増大化した回路コストおよび他の欠点を結果としてもたらす。
【0005】
したがって、上述した欠点が生じることを別の方法で回避するための数々の試みがなされてきた。特に、不所望の迷走電流を減少させるための目的で用いられる回路が公知となっている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。これらの回路では、たとえば太陽発電機が、送電網による内部の電流の搬送の特定の位相で運転される。この場合、周期的に新しくなる、太陽発電機と送電網との電気接続の際、送電網の規制容量はわずかしか移送されない。したがって、網周波数を有する太陽発電機の電位は、送電網の電流の半分に相当する電圧振幅の際には正弦波状に変化する。この場合、高周波電流は、2つの回路サイクル間のみの太陽発電機のわずかな電圧差によって、かつ、回路接続の際の非対称によって生じる。したがって、容量性の迷走電流は、このようにして、大いに減少されるが、基本的には完全に防止することはできない。
【0006】
さらに、中心でアースされている分割した太陽発電機を使用する回路機構(特許文献4)が公知となっている。これによって、太陽発電機のすべての部分が固定電位を有するようになり、容量性の迷走電流は、基本的に流れないことになる。2つの直流源が異なる生産性を有しているので、性能差および電圧の補償のための回路が設けられる。この回路機構において不都合なのは、太陽発電機および回路における高い電圧差、補償回路内の追加の損失、および少なくとも4つの高周波に同期された回路が必要であるという手間である。
【0007】
これに加えて、既に、発電機が存在しないにも関わらず太陽発電機が一方にアースされ得る回路設備が公知となっている。これによって、容量性の迷走電流が、原則的に防止される。しかしながら、こうした回路設備の中のひとつ(特許文献5)は、5つの能動回路を必要とする。ここで、1つまたは2つの回路が同時に高周波数で切り替わって平均出力電流を提供する必要がある。したがって、この「フライングインダクター(Flying Inductor)」という名称でも呼ばれる回路では、同時に直列に電流につながる多数の構造部材によって効率が損なわれる。この回路において不都合なのは、継続的な電流パルスが送電網内に刻み込まれることである。これは、容量性の送電網フィルターを必要とする。このフィルターは、基本的に自身の無効電力需要および力率を必要とし、部分負荷範囲における回路の効率を悪化させる。このような容量性の送電網フィルターは、別の公知の回路では回避することができる(特許文献6)。しかし、この目的のために、9つの能動回路が必要となり、そのうち、少なくとも2つが高周波数で切り替えられる必要がある。その結果、構造コストがさらに増加し、装置全体の堅牢性も効率も悪影響を被ることになる。フライングインダクターのトポロジーは、さらに、回路の電圧負荷が送電網の電圧に依存し、送電網の故障に影響を受けやすくなり、したがって三相でのみ運転可能である、かつ、フライングインダクターは3つのインバータによって三通りに応用される、という欠点を有する。それ以外にも、電流源の特徴を有するインバータを必要とするが、これは多くの場合には望ましくない。
【0008】
最終的に、冒頭に記載した形式の装置(特許文献7)が公知となっている。この装置は、イバイポーラ電圧中間回路を有するインバータのために設計されたものである。このバイポーラ電圧中間回路は、直列に並ぶアース端子において接続された2つのコンデンサを有している。本願で話題にしている目的のために今日よく使用されるこの種のインバータは、いわゆる半ブリッジインバータとして、すなわち、3点切り替えの半ブリッジインバータとして、さらには必要に応じて、単相または三相の送電網供給のためのインバータとして構成され得る。これらすべての場合において、2つのコンデンサの間の接続点がアース端子を構成している。このアース端子は、各送電網のゼロ線または中性線に対応して設けられており、かつそれと接続される。
【0009】
この公知の装置の交流変換機は、格納チョークコイル、2つのダイオードおよび回路を有する。インバータのアース端子は、この場合には、直流発電機の負の出力部に接続され得る。このことは、格納チョークコイルによって可能になる。この格納チョークコイルは、磁気接続された2つの巻線から構成されている。この格納チョークコイルの2つの巻線は、回路が閉じている場合には2つの巻線のうち1つが直流発電機によって充電され他方の巻線は磁気接続を介して1つ目の巻線から充電されるように、また、回路が開いている場合には2つの巻線が対応して設けられている2つのコンデンサのうちの1つおよびそれぞれ付属のダイオードを介して放電されるように、端部において互いに電気接続されている。
【0010】
この装置が比較的簡単な手段を有していること、特に、変圧器がなく1つのカイロで直流電圧気のアースを可能にするという利点は、しかしながら、回路が開いた状態では電圧の負荷にさらされるという欠点と対比される。この電圧は直流発電機の出力電圧とインバータの電圧中間回路の2つのコンデンサのうちの1つの電圧との合計から生じる。これによって、逆に、回路の故障を確実に防ぐためには、直流発電機の出力電圧がせいぜい回路の許容電圧と該当するコンデンサの電圧との差になる程度でなくてはならないということになる。直流発電機の出力電圧に対するこのような制限は望ましくない。流出電流およびそれによって損失を最小に抑えるためには、上記の電圧差に相当する電圧よりもはるかに大きい電圧が望ましい。そして、この大きな電圧を得るためには、高価で、したがって高負荷の回路が必要となるか、通常の回路を使用した場合には直流発電機の出力電圧の減少が絶対に必要となる。よって、この種の装置は、使用できる利用分野が限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許公開公報第102004037466号明細書
【特許文献2】独国特許公開公報第10221592号明細書
【特許文献3】独国特許第102004030912号明細書
【特許文献4】独国特許公開公報第102205020号明細書
【特許文献5】独国特許第19642522号明細書
【特許文献6】独国特許第19732218号明細書
【特許文献7】米国特許公開公報第2007/0047277号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術を踏まえて、本発明の技術的課題は、冒頭に記載した形式の装置および特に当該装置に適している直流変換機を、直流発電機の負の接続部のアースを比較的簡単な構成手段を用いるだけではなく交流交換器の回路の電圧負荷を大いに減少させながら可能にするように構成するということである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、上記課題は、請求項1、2および11の特徴部の特徴によって解決される。
【0014】
本発明によって、直流変換機を用いることによって直流発電機をアースした状態で運転することが可能になる。この直流変換機は、最も簡単な場合には、格納チョークコイル、2つのダイオード、および2つの回路だけを必要とする。わずかにコストが上がっただけにもかかわらず、これによって、回路のうちの1つの最大負荷が、交流発電機の出力電圧に相当する負荷よりも大きくならず、一方、他の回路の電圧負荷がコンデンサの電圧よりも大きくならないので、結果として直流発電機の出力電圧が冒頭に記載した形式の装置と比較して回路の負荷限界まで上昇することができる、という利点が得られる。
【0015】
本発明のさらなる有利な特徴は、従属請求項から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を添付の図面を参照しながら実施例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】送電網に電気エネルギーを供給するためのアースされた直流発電機を有する装置の公知の構造を示す図である。
【図2】送電網に電気エネルギーを供給するためのアースされた直流発電機を有する本発明に係る装置を示す図である。
【図3】図2に係る装置の2つの回路を制御するための信号とそれによって生じた電流路を示す図である。
【図4】図2に係る装置であるが、変更された直流変換機を有する装置の図である。
【図5】図2に係る装置であるが、変更された直流変換機を有する装置の図である。
【図6】図1に係る装置であるが、変更された直流変換機を有する装置の図である。
【図7】本発明に係る装置を運転することができる図1に係るインバータの代替となる様々なインバータのうちの1つを示す図である。
【図8】本発明に係る装置を運転することができる図1に係るインバータの代替となる様々なインバータのうちの1つを示す図である。
【図9】本発明に係る装置を運転することができる図1に係るインバータの代替となる様々なインバータのうちの1つを示す図である。
【0018】
図1によると、本発明の範疇とみなされる通常の装置は、直流発電機1、直流変換機2およびインバータ3を有している。直流発電機1は、たとえば、太陽電池設備または燃料電池設備から成り、自身の2つの出力部4(+)および5(−)を並行に接続するコンデンサCを有している(たとえば、特許文献7、図10を参照)。
【0019】
公知の装置のインバータ3は、出力部6および7を有している。これら出力部は、この場合、送電網8への電気エネルギーの単相供給のために用いられる。相Lは、出力部6に接続されており、ゼロ線または中性線Nは出力部7に接続されている。インバータ3は、さらに、3つの入力部E1、E2およびE3を有する。入力部E1およびE2の間には、直列に接続された2つのコンデンサC1およびC2が設けられており、これらコンデンサの接続点は入力部E3のところにある。コンデンサC1およびC2は、インバータ3の通常のバイポーラ電圧中間回路を構成する。図1によると、インバータ3は、半ブリッジインバータとして構成されており、それに加えて、回路S1およびS2が設けられている。これら回路の端子のうちの1つは、それぞれ入力部E1またはE2に接続されており、これら回路のもう一方の端子は共通の接続点9に接続され、そこから平滑リアクトルまたはラインリアクトルL1を経由して出力部6につながっている。2つの回路S1、S2には、さらに、それぞれ1つのダイオードD1、D2が並行に接続されている。ここで、ダイオードD1は、接続点9から入力部E1の方向へ、そして、ダイオードD2は、入力部E3から接続点9の方向へ通電されるとともに反対方向では電流が遮断され得るようになっている。最終的に、入力部E3は、出力部7に直接接続されるとともに、アースにも接しており、よってアース端子として構成され、直流発電機1の負の出力部5に接続されている。
【0020】
直流変換機2は、直流発電機1の出力部4および5に接続される2つの入力部10および11を有する。入力部10には、回路S4が接続されている。この回路は、接続点14につながっている。この接続点14には、連結されたチョークコイルとして構成されている格納チョークコイル15の端子のうちの1つが接続されている。格納チョークコイル15は、第1の巻線W1および第2の巻線W2を有する。これらは互いに磁気接続されており、さらに共通の芯16に巻きつけられている。これらの巻線の一方の端部は、さらなる接続点17を構成しながら巻線W1およびW2を互いに接続する。
【0021】
アース端子として構成されている、インバータ3の入力部E3は、直流発電機1の負の出力部5に接続されている入力部11とだけではなく、直流変換機2の2つの巻線W1、W2の接続点17とに電気的に接続されている。さらに、巻線W2の他方の端子が、ダイオードD4を介して、入力部E1に接続され、入力部E2が、さらなるダイオードD5を介して回路S4と巻線W1との間の接続点14に接続されている。これによって、全体として、3つの回路機構が成立する。第1の回路機構は、直流変換機3の入力部10から始まって、回路S4と、回路S4に直列になっている巻線W1と、接続点17から入力部11に延びる配線とによって構成されている。第2の回路機構は、第1の巻線W1を有し、かつ、接続点14から、全体として直列になっている第1の巻線W1と、アース端子E3と、巻線W1に対応して設けられているコンデンサC2とダイオードD5とを介して、接続点14に戻るようになっている。第3の回路機構は、最終的に、第2の巻線W2を有し、かつ、接続点14から、巻線W2とダイオードD4とを介して入力部E1へつながり、そこから、巻線W2に対応して設けられている2つのコンデンサのうちの1つC1を介して、アース端子E3へつながり、そこから、2つの巻線W1およびW2の間の接続点17に戻るようになっている。
【0022】
2つの巻線W1、W2は、巻線W2が巻線W1を充電している際に磁気接続によって第1の巻線W1から同様に充電されるように、共通の芯16に巻きつけられている。この場合、2つの巻線W1、W2の巻き方向は、図2の点線で示された端子において同一の電圧極性が得られるように選択される。
【0023】
回路S1、S2およびS4は、公知の方法で、半ブリッジ回路として構成されることが目的にかなっている。これら回路は、運転の際に、図示されていない制御ユニット(マイクロコントローラ、PWM制御部等)によって、周期的にスイッチオン・オフすることができる。その際、切り替え周波数は、たとえば16kHz以上である。
【0024】
上記の装置の機能方法は以下のとおりである。
【0025】
直流発電機1の側において、回路S4が閉じられている状態で、連結されている格納チョークコイル15が、第1の回路機構10、S4、W1、11によって充電される。回路S4が解放されている状態では、巻線W1が、第2の回路機構を介して、C2によって充電される(14、W1、E1、C2、D5および14の経路を介して)。一方、巻線W2が、第3の回路機構を介して、C1によって放電され得る(17、W2、D4、E1、C1、E3および17の経路を介して)。これらの機能のために、回路(S4)、連結されたチョークコイル(15)および2つのダイオード(D4、D5)のみが必要となるので、結果として、コストは比較的少なくなり効率は高くなる。さらに、所望の場合には、直流発電機1の負の出力部5をアースするか、または地上に接続可能とする。これはちょうど、送電網8の中性線Nと同様である。したがって、電圧中間回路は、ここでは、3つの有効な出力部E1、E2およびE3を有している。電圧中間回路が別体の回路部分として製造および/または提供されている場合、これら出力部には、直流変換機2が、出力部18、19または入力部11で接続されているかまたは接続可能である。
【0026】
インバータ3の側では、回路S1、S2が、交互にスイッチオン・オフされる。これによって、たとえば、回路信号の正の半波の間(最初回路S1が閉じられ、回路S2が開放されている)、コンデンサC1のE3に対して正の側(E1)が、接続点9およびラインリアクトルL1を介して位相Lに印加される。その後、回路S1を開放すると、電流は再びラインリアクトルL1、コンデンサC2およびダイオードD2を通って流れることができる。これに対して、送電網8の負の半波の間(回路S1が開放され、最初回路S2が閉止されている)、コンデンサC2のE3に対して負の側(入力部E2)が、接続点9およびリアクトルL1を介して、位相Lに印加される。ここで、回路2を閉じた後では電流は再びダイオードD1およびコンデンサC1を介して流れることができる。2つのコンデンサC1およびC2は、これによって、交替で放電および再充電される。
【0027】
対称に負荷を受けるとともにW1とW2が同じ巻き数を有していることによって、電圧が、C1およびC2において同じ大きさになる。運転中にたとえばC1がC2よりも送電網側のインバータ3によって強い負荷を受けると、自動的にW2からの放電電流はW1からの放電電流よりも大きくなる。これによって、回路機構が自動的に「対称化」することになり、これは、インバータ3を送電網側で運転するための基本条件である。
【0028】
直流変換機2の上記の構成は、比較的大きな範囲を有する直流発電機1を出力電圧によって運転することができるという利点をもたらす。直流変換機2が欠けていると、不都合な状況下であっても直流発電機1が、常にコンデンサC1およびC2が送電網の振幅(通常は訳±325V)に相当するだけの高い電圧で充電されるように、高い出力電圧を入力部E1およびE2に送るようにしなければならなくなる。これに対して、増加する直流変換機2があると、直流発電機1の出力電圧がインバータ3(または送電網8)が最低限必要とするよりも小さいものである場合には、コンデンサC1、C2の電圧が、回路S4を運転するためのデューティーファクターの選択によって所望の高さまで調整されなければならない。
【0029】
ここまで記載してきた装置は、さらに、とても柔軟に使用することができる。このことは、C1およびC2への電圧が選択されたS4のためのデューティーファクターに依存して、コンデンサCの入力電圧よりも大きくなったり小さくなったりすることができるということから結果としてもたらされたものである。デューティーファクターが0.5よりも大きい場合には、直流変換機は電圧を増加させる。デューティーファクターが0.5よりも小さい場合は、直流変換機2は電圧を減少させる。0.5のデューティーファクターは、実質的に、直流発電機1の出力部に印加された電圧の直接供給となる。これによって、アースされた直流発電機1の場合、直流変換機2には1つの回路のみによって、大きな運転電圧領域が得られるようになる。インバータ回路S1およびS2の最大電圧負荷は、約2・UC1である。ここで、UC1は、コンデンサC1の最大電圧である。最も簡単な場合には、これらの回路のうちの1つのみが、半分の送電網周期ごとに高周波に切り替えられることができる。一方、他方の回路は、スイッチオフされたままである。さらに、インバータ側では、連続する電流が送電網8に流れることができる。
【0030】
すでに上述したように、上記の装置の欠点は、回路S4が開放された状態でUS4=UC+UC2の電圧の負荷を受けるということであり、その際、UCおよびUC2は、コンデンサCおよびC2の電圧である。この欠点は、本発明によると回避される。
【0031】
図2は、本発明に係る装置の第1の実施例を示す。ここで、所望の作用は、図1に係る連結されたチョークコイル15および2つの回路S5、S6および3つのダイオードD6、D7、D8によって達成される。すなわち、この場合も回路のコストは低い。第1の回路S5は、入力部10と接続点22との間に設けられている。この接続点において、格納チョークコイル15が巻線W1の端子のうちの1つと接続されている。巻線W1の他方の端子は、第2の接続点23を介して、および、第2の回路S5によって、アース端子として構成されている、インバータ3の入力部E3に接続されている。この端子E3は、直流変換機2の入力部11への接続のために、または、直流発電機1の負の出力部5への接続のために機能する。これによって、10からS5、22、W1、23、S6、11を介して10に戻る電流経路は、第1の回路機構を形成する。
【0032】
図2によるとアース端子E3から延長された第1のダイオードD6が接続点22、巻線W1、接続点23、第2のダイオードD7および、ここでは巻線W1に対応して設けられているコンデンサC1を経由して、アース端子E3に戻るようになっている。これによって、第2の回路機構が形成される。この回路機構では、ダイオードD6、D7は、方向E1にのみ導電するようになっている。そして、第2の巻線W2を備える第3の回路機構が存在する。この回路機構は、アース端子E3から、ここでは巻線W2に対応して設けられているコンデンサC2、第3のダイオードD8および第2の巻線W2を経由して、アース端子E3に戻るようになっている。
【0033】
回路S5およびS6の始動制御および格納チョークコイル15の巻線W1、W2内の電流プロファイルのための信号が、図3で例示的に示されている。この図から分かるのは、2つの回路S5、S6は、常に同時にスイッチオン・オフされるということである。したがって、その他の点では図1の装置同じように構成されている図2に係る装置の機能方法は、実質的に以下のようになっている。
【0034】
回路S5およびS6を同時にスイッチオンすると、上記の第1の回路機構が閉止される。それによって、格納チョークコイル15が上記の通りに充電される。これに対して、回路S5およびS6が開放された状態では、一方では、巻線W1がD6、W1、D7およびC1を介して放電され、また、巻線W2がC2およびD8を介して放電される。これによって、図1と同様に、コンデンサC1、C2のうちの1つが、対応して設けられている巻線W1、W2のうちのいずれかによって充電される。
【0035】
図2に係る装置によって、上記のすべての利点が、対応の方法によって、図1の装置同様に達成される。しかしながら、図1の装置とは異なりかつ図2の装置の利点として、開放された状態の回路S5の最大電圧負荷がコンデンサCの圧力UCによって、または、直流発電機1の出力電圧が付与され、一方、回路S6の最大負荷がC1の最大電圧によって達成されるということが挙げられる。
【0036】
その他の点においては、図2に係る装置は、図1に係る装置と同様に順庵である。その理由は、C1およびC2の電圧が、直流発電機1の出力電圧よりも大きくも小さくもなり得るので、大きな運転電圧範囲が達成できるからである。
【0037】
図4は、図2に対して、巻線W1が2つの巻線部分W11およびW12(=巻き数)に分割されているという点で変更されている実施例を示す。この場合、この機構は、巻線W1の中央端子または巻線タップ21が第1の回路S5への接続点22に存在しており、また、このタップ21によって固定されている巻線W1の部分W11が第1の回路機構に存在しており、この回路機構は、格納チョークコイル20の充電のために用いられる。これに対して、第2の回路機構は、ダイオードD6およびD7の間に存在する第1の巻線W1全体または部分W11+W12を有している。これによって、本発明によると、本発明による機構のさらなる最適電位が、入力電圧とよび出力電圧の関係、回路S5およびダイオードD6、D7、D8の関係に関して、理解できるものになる。大きな変圧比の場合、S5およびS6のデューティーファクターのほかにも、W12対(W12+W11)の比率に関して、構成要素の効率的な電流および電圧負荷に影響を与えるという可能性がある。タップ21の位置は、基本的には任意で選択することができる。タップ21の特別な利点は、開放された状態の回路S5の最大の電圧負荷が、電圧US5=UC−[W12/(W12+W11)]・UC1によってのみ与えられ、回路S6では再びUS6=UC1となる、ということである。
【0038】
代替的に、図5に係るタップ21は、第2の回路S6への接続点24に存在し得る。一方、部分W11およびW12から成る格納チョークコイル15の部分は、図2に示すように接続点22および23の間に存在する。これによって、タップ21によって固定されている巻線W1の部分W12のみが、第1の回路機構内に存在し、充電サイクル中に使用される。これに対して、巻線W1全体または部分W11+W12は、第2の回路機構内に存在し、放電サイクル中に機能する。回路S5の最大負荷は、この場合、US5=UCであり、これに対して、回路S6の最大負荷はUS6=UC1−[W11/(W12+W11)]・UC1である。
【0039】
図6は、格納チョークコイル25の第1の巻線W1の分解によって回路S4のみを有する図1に係る装置を使用する場合であっても電圧負荷の減少が可能になっている実施例を示す。この目的のために、連結された格納チョークコイル25の第1の巻線W1は、巻線タップ26によって2つの部分W11およびW12(=巻き数)に分割される。図1とは異なり、さらに、タップ26が、回路S4によって接続点14に接続されている。これに対して、W1の通常の入力端子は、図1と同じように、ダイオードD5の出力部に接続されている。これによって、タップ2と出力端子との間に存在する第1の巻線W1の部分W11のみが、上述した回路機構(10、S4、14、W11、11)内に存在する。一方、図1と同様に、巻線W1全体または部分W11+W12は、C2およびD5を有する第2の回路機構に存在する。これによって、本発明によると、回路S4の最大の負荷を、値US4=[W11/(W11+W12)]UC2+UCに減少することができる。タップ26の位置は、図4および図5のように、基本的には任意で選択することができる。
【0040】
インバータ3の機能法は、上述したすべての場合において基本的に同一である。
【0041】
ここまでの記載は、もっぱら半ブリッジインバータとして構成されているインバータ3に関連するものであったが、バイポーラ電圧中間回路を有する他のインバータも本発明に係る直流変換機2に接続することができる、ということは当業者には明らかである。このことが、図5ないし図7に概略的に示されている。図5は、3点切り替えの半ブリッジインバータを示している。図6は、中央点を有する3点切り替え(それぞれ単相構成)のさらなるインバータを示している。図7は、送電網8への3相供給のためのインバータを示している。上記の記載に従うと、これら3つすべてのインバータは、バイポーラ電圧中間回路、入力部E1ないしE3および出力部6、7を有している。この種のインバータ事態は公知であるので、ここでは更なる説明は不要である。
【0042】
巻線W1およびW2の磁気接続は、好適には、これらの巻線が需要に応じて上下または左右に共通の芯上二巻きつけられることによって達成される。これら巻線は、好適には、同じ巻き数を有しており、図2および図4に係る概略化された構成では、反対の巻き方向で芯16上に巻きつけられ、それによって充電・放電プロセスの際に正しい電流方向を得ることが目的にかなっている。
【0043】
本発明は、様々なやり方で変更することができる上記の実施例に限定されない。このことは、たとえ、図面でインバータ3と直流変換機2とが完成された構造ユニットとして製造および販売されているように示されているとしても、インバータ3および直流変換機2が互いに別体の部材として製造および販売することができる限り当てはまる。したがって、本発明は、直流変換機2とインバータ3の組み合わせだけではなく、直流変換機2のみにも関する。さらに、上記の記載では本発明の理解に必要な部材の実を説明し、特に、必要であるがそれ自体は公知の制御機器、メッセージ処理プログラム制御等も追加で存在する場合があるということは明らかである。さらに、さまざまな特徴は、記載および図示された組み合わせ以外の組み合わせでも使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを送電網(8)に供給するための装置であって、直流発電機(1)への接続のために設計された直流変換機(2)と、この直流変換機に接続されている、送電網(8)への接続のために設計されたインバータ(3)であって、直流発電機(1)の負の出力部(5)に接続されているアース端子(E3)において互いに接続されている直列に並んでいる2つのコンデンサ(C1、C2)を有する電圧中間回路を備える、インバータと、を備え、
直流変換機(2)は少なくとも2つのダイオードと、回路と、第1の巻線(W1)および第2の巻線(W2)を有する格納チョークコイルと、を備え、
これら2つの巻線(W1、W2)は、互いに磁気的に接続されるとともにそれぞれ1つの接続端子に電気的に接続され、それにより、第1の切り替え状態において第1の巻線(W1)が直流発電機(1)によって充電されるとともに第2の巻線(W2)が磁気接続によって第1の巻線(W1)を介して充電され、また、第2の切り替え状態において両方の巻線(W1、W2)がそれぞれ対応して設けられている2つのコンデンサ(C1、C2)および対応して設けられているダイオードを介して放電される、装置において、
第1の巻線(W1)の第1の端子は、第1の接続点(22)において第1の回路(S5)に、そして、第1の巻線(W1)の第2の端子は、第2の接続点(23)において第2の回路(S6)に接続されており、それにより、第1の巻線(W1)が2つの回路(S5、S6)とともに、直流発電機(1)に対応して設けられている出力部(4、5)に接続されている第1の回路機構を形成するとともに、第2の回路機構に存在し、この第2の回路機構は、アース端子(E3)から第1のダイオード(D6)、第1の接続点(22)、第1の巻線(W1)、第2の接続点(23)、第2のダイオード(D7)およびそれに対応して設けられているコンデンサ(C1)を経由して再びアース端子(E3)につながり、また、第2の巻線(W2)は、第3の回路機構内に存在し、この第3の回路機構はアース端子(E3)からそれに対応して設けられているコンデンサ(C2)、第3のダイオード(D8)および第2の巻線(W2)を経由して再びアース端子(E3)につながるようになっていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
電気エネルギーを送電網(8)に供給するための装置であって、直流発電機(1)への接続のために設計された直流変換機(2)と、この直流変換機に接続されている、送電網(8)への接続のために設計されたインバータ(3)であって、直流発電機(1)の負の出力部(5)に接続されているアース端子(E3)において互いに接続されている直列に並んでいる2つのコンデンサ(C1、C2)を有する電圧中間回路を備える、インバータと、を備え、
直流変換機(2)は少なくとも2つのダイオードと、回路(S4)と、第1の巻線(W1)および第2の巻線(W2)を有する格納チョークコイルと、を備え、
これら2つの巻線(W1、W2)は、互いに磁気的に接続されるとともにそれぞれ1つの接続端子に電気的に接続され、それにより、第1の切り替え状態において第1の巻線(W1)が直流発電機(1)によって充電されるとともに第2の巻線(W2)が磁気接続によって第1の巻線(W1)を介して充電され、また、第2の切り替え状態において両方の巻線(W1、W2)がそれぞれ対応して設けられている2つのコンデンサ(C1、C2)および対応して設けられているダイオード(D4、D5)を介して放電される、装置において、
巻線うちの1つ(W1)が分割されるとともに回路(S4)に接続されている巻線タップ(26)を有しており、それにより、タップ(26)によって固定されている第1の巻線(W1)の第1の部分(W11)が第1の回路機構に存在し、一方、第2の回路機構には第1の巻線(W1)の第2の部分(W11+W12)が設けられていることを特徴とする、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
巻線のうちの1つ(W1)が分割されるとともに接続点(21、23)のうちのひとつに接続されている巻線タップ(22)を有しており、それにより、前記タップ(22)によって固定されている第1の巻線(W1)の第1の部分(W11)が第1の回路機構に存在し、一方、第2の回路機構には第1の巻線(W1)の第2の部分(W11+W12)が設けられていることを特徴とする、装置。
【請求項4】
請求項1から3に記載の装置において、
2つの巻線(W1、W2)が共通の芯(16)上に巻きつけられていることを特徴とする、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、
巻線(W1、W2)は、反対方向に芯(16)の上に巻きつけられていることを特徴とする、装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置において、
2つの巻線(W1、W2)が同じ巻き数を有することを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置において、
インバータ(3)が、半ブリッジを有するインバータとして構成されていることを特徴とする、装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置において、
インバータ(3)が、3点切り替えの半ブリッジを有するインバータとして構成されている(図7)ことを特徴とする、装置。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置において、
インバータ(3)が、中央に3点切り替えの半ブリッジを有するインバータとして構成されている(図8)ことを特徴とする、装置。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置において、
インバータ(3)が、送電網(8)への電気エネルギーの単相または三相供給のために構成されている(図2ないし8または図9)ことを特徴とする、装置。
【請求項11】
電気エネルギーを送電網(8)に供給するための、また、直流発電機(1)とバイポーラ電圧中間回路(C1、C2)を備えるインバータ(3)との間に配置されるための装置用の直流変換機であって、
当該直流変換機は請求項1ないし6の少なくとも1つに従って構成されていることを特徴とする、直流変換機。
【請求項12】
請求項11に記載の直流変換機において、
当該直流変換機は、インバータ(3)とともに1つの構造ユニットにまとめられていることを特徴とする、直流変換機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−530205(P2010−530205A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511482(P2010−511482)
【出願日】平成20年4月12日(2008.4.12)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000619
【国際公開番号】WO2008/151587
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(509322225)エスエムエー ソーラー テクノロジー エージー (3)
【Fターム(参考)】