説明

電気コネクタ

【課題】簡易な構成で、信号伝送媒体Fの抜き差しに伴うロック解除操作部材16の操作を効率的に行うことを可能とする。
【解決手段】本体ハウジング11を覆うシールドシェル13から一体的に延出する弾性連結部材14の弾性力によってロック解除操作部材16を解除位置から待機位置に復帰する方向に付勢したことによって、ロック解除操作部材16を解除位置まで移動操作した後に、そのままロック解除操作部材16から手を離すだけで当該ロック解除操作部材16を元の待機位置に向かって自動復帰させ、従来のようにロック解除操作部材を元に戻す操作等を行わなくても、新たな信号伝送媒体を直ちに挿入することを可能とする構成を採用したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に挿入された信号伝送媒体にロック部を嵌合させるとともに、そのロック部をロック解除操作部材の移動操作によって解除させる構成を備えた電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、種々の電気機器等には電気コネクタが広く用いられているが、そのような電気コネクタにおいて、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)又はフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等のフラットケーブルやその他の信号伝送媒体の端末部分を、主配線基板に実装した電気コネクタに挿入して接続する構成を備えたものが知られている。このような構成の電気コネクタは、単体のコネクタのみを用いればよいため、コスト的に有利である点において近年着目されている。
【0003】
一方、このような電気コネクタにおいてしばしば問題となる電磁波干渉への対策(EMI対策)を施すために、本体ハウジングの外表面を導電性部材からなるシールドシェルで覆うことが従来から行われている。そして、そのシ−ルドシェルに、一体的に延出する弾性連結部材を設けるとともに、当該弾性連結部材の一部にロック部を設けておき、本体ハウジング内に挿入された信号伝送媒体(FPCやFFC)の係止ロック部に、上述した弾性連結部材の弾性力によりロック部を嵌合させて、信号伝送媒体の抜け止めを行うようにした構成がしばしば採用されている。このように信号電送媒体に対するロック機構を備えた電気コネクタにおいては、本体ハウジングから信号伝送媒体を抜去させるにあたって、往復移動可能に設けられたロック解除操作部材を待機位置から解除位置に移動させ、それによって上述したロック部の嵌合状態を解除状態に切り替える構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−52993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようなロック機構を備えた従来の電気コネクタでは、ロック解除操作部材を、一旦、解除位置に移動させると、そのロック解除操作部材は解除位置のままに維持されるようになっている。従って、信号伝送媒体(FPCやFFC)を電気コネクタから抜去してから再び新たな信号伝送媒体を挿入し、ロックする場合、信号伝送媒体(FPCやFFC)を電気コネクタに挿入した後に、解除位置に移動されているロック解除操作部材を再び元の待機位置まで戻す移動操作を行わねばならない。そして、そのようなロック解除操作部材の戻し操作を行う分だけ電気コネクタの操作性が低下することとなり、本来的には余分な作業が必要となるために製造の効率が低下するという問題がある。なお、上述したロック解除操作部材に対して、戻し操作を行わせる部品を新たに追加することも考えられるが、そのように新たな部品を追加することは製造コスト等の観点から望ましいことではない。
【0006】
そこで本発明は、簡易な構成で、信号伝送媒体の抜き差しに伴うロック解除操作部材の操作を効率的に行うことができるようにした電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明では、本体ハウジング内に挿入された信号伝送媒体にロック部を嵌合させるように構成されたものであって、前記ロック部が、前記本体ハウジングを覆うシールドシェルから帯板状をなすようにして一体的に延出する弾性連結部材の一部に設けられ、その弾性連結部材の弾性力によって前記ロック部が前記信号伝送媒体の係止ロック部と嵌合する方向に付勢されているとともに、ロック解除操作部材を待機位置から解除位置に移動させることにより前記ロック部を前記信号伝送媒体との嵌合状態から解除させる構成になされた電気コネクタにおいて、前記弾性連結部材は、当該弾性連結部材の弾性力によって前記ロック解除操作部材を前記解除位置から前記待機位置に復帰させる方向に付勢するように配置された構成が採用されている。
【0008】
このような構成を有する本発明によれば、ロック解除操作部材を解除位置まで移動操作することによって信号伝送媒体(FPCやFFC)からロック部を解除させた際に、そのままロック解除操作部材から手を離すだけで当該ロック解除操作部材が、弾性連結部材の弾性力により元の待機位置に向かって自動復帰することとなる。従って、従来のようにロック解除操作部材を元に戻す操作等を行わなくても、新たな信号伝送媒体を直ちに挿入することが可能となる。
【0009】
また、本発明においては、ロック解除操作部材がコネクタ前後方向に往復移動されるように構成されたものであって、前記弾性連結部材に、前記ロック解除操作部材に向かって側面略U字状をなして突出する折返し弾性部が設けられているとともに、前記ロック解除操作部材には、前記弾性連結部材の折返し弾性部に当接して当該折返し弾性部の弾性力を前記ロック解除操作部材の復帰作用力に変換するテーパ状案内部が設けられていることが望ましい。
【0010】
このような構成を有する本発明によれば、弾性連結部材を折り曲げ成形した折返し弾性部によって、ロック解除操作部材に対する復帰作用力が得られることとなるため、より一層、簡易な構成が可能となる。
【0011】
また、本発明においては、前記ロック解除操作部材が、コネクタ後端側に突出するように配置されていることが望ましい。
【0012】
このような構成を有する本発明によれば、コネクタ後端側に突出するロック解除操作部材をコネクタ前方側に向かって押し込むようにしてロック部の解除操作が行われると、それに続いて行われる信号伝送媒体(FPCやFFC)の抜去動作が、その前のロック解除操作部材の押し込み操作と略同一の方向(コネクタ前方向)に行われることとなる。従って、このようなロック解除操作部材の押し込み操作、及びそれに続く信号伝送媒体の抜去動作が、操作の方向において円滑に継続されることとなるため、信号伝送媒体の抜去作業が効率的に行われる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように本発明にかかる電気コネクタは、本体ハウジングを覆うシールドシェルから一体的に延出する弾性連結部材の弾性力によってロック解除操作部材を解除位置から待機位置に復帰する方向に付勢したことによって、新たな部品を追加することなく、ロック解除操作部材を解除位置まで移動操作した後に、そのままロック解除操作部材から手を離すだけで当該ロック解除操作部材を元の待機位置に向かって自動復帰させ、従来のようにロック解除操作部材を元に戻す操作等を行わなくても、新たな信号伝送媒体を直ちに挿入することを可能とする構成を採用したものであるから、簡易な構成で、信号伝送媒体の抜き差しに伴うロック解除操作部材の操作を効率的に行うことができ、電気コネクタの操作性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電気コネクタを前方側から見たときの外観斜視説明図である。
【図2】図1に示された電気コネクタを後方側から見たときの外観斜視説明図である。
【図3】図1及び図2に示された電気コネクタタの正面説明図である。
【図4】図3中のIV−IV線に沿った横断面説明図である。
【図5】図3中のV−V線に沿った横断面説明図である。
【図6】図1〜図5に示された電気コネクタタに挿入される信号伝送媒体の一例としてのフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)の端末部分を表した外観斜視説明図である。
【図7】信号伝送媒体(FFC)を挿入する際におけるロック部の動作を表したものであって、(a)は信号伝送媒体(FFC)を挿入した初期の状態を表し、(b)は信号伝送媒体(FFC)を最終位置まで挿入した嵌合状態を表し、(c)はロック解除操作部材を解除位置まで移動させた状態を表した図5相当の横断面説明図である。
【図8】図3中の VIII − VIII 線に沿った横断面説明図である。
【図9】図2中の IX 指示部分を拡大して表した外観斜視説明図である。
【図10】ロック解除操作部材を図9に示された待機位置から解除位置まで押し込み移動させた状態を表した図9相当の外観斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
まず、図1〜図5に示された本発明の第1の実施形態にかかる電気コネクタ10は、細長の中空状薄形筐体をなすように形成された絶縁性部材からなる本体ハウジング11を備えている。この本体ハウジング11の長手方向に直交する幅方向(図4の左右方向)における前端側(図4の左端側)には、後段において説明するフレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)などのフラットケーブル等から構成される信号伝送媒体Fを挿入可能とする細長状の挿入開口部11aが形成されているとともに、当該本体ハウジング11の幅方向(図4の左右方向)における後端側(図4の右端側)には、導電コンタクト(導電端子)12を挿入して組み付けるための部品挿入取付口11bが設けられている。
【0017】
また、前記本体ハウジング11の外表面には、薄板状の金属部材からなるシールドシェル13が装着されている。このシールドシェル13は、前記本体ハウジング11の表面形状に沿う形状をなすように折り曲げ形成されており、前記本体ハウジング11の外表面のうちの前記挿入開口部11a及び部品挿入取付口11bを除くほぼ全面を覆うように設けられている。このシールドシェル13は、印刷配線基板上に載置される複数のホールドダウン13fを有しており、それらのホールドダウン13fが印刷配線基板上に形成されたグランド配線導電路(図示省略)に半田接続されることによって、グランド回路が形成されるとともに、コネクタ全体が強固に保持されるようになっている。
【0018】
さらに、上述した本体ハウジング11に設けられた部品挿入取付口11bの後方側(図4の右方側)には、後述するような構成を備えたロック解除操作部材16が、コネクタ前後方向(図4の左右方向)に往復移動可能となるように装着されている。
【0019】
本実施形態にかかる電気コネクタ10は、概略このような構造を有するものであるが、図示を省略した主配線基板上に実装された状態で使用され、当該電気コネクタ10のコネクタ前方側(図4の左方側)の挿入開口部11aから、前記FFC又はFPC等のフラットケーブルやその他の信号伝送媒体(以下、単に信号伝送媒体と呼ぶ。)Fが、コネクタ後方側(図4の右方側)に向かって押し込まれるようにして本体ハウジング11の内部に挿入されるようになっている。なお、信号伝送媒体Fとしては、信号伝送用導電路(信号線)を金属箔等で覆ったシールド・フラットケーブル等が用いられる。
【0020】
上述したように本体ハウジング11を構成している薄形筐体は、中空状をなすように形成されているとともに、その中空状の内部に導電コンタクト(導電端子)12が挿入され組み付けられている。それらの各導電コンタクト12は、本体ハウジング11の横幅方向(長手方向)に沿って同一形状のものが適宜の間隔をなして多極状に配列されている。これらの各導電コンタクト12は、信号伝送用又はグランド用のいずれかとして用いられており、後述するように各導電コンタクト12の一端部分(図4の右端部分)が、印刷配線基板上に載置されて使用されるようになっている。
【0021】
前記導電コンタクト12の各々は、上述したようにコネクタ後端側に設けられた部品取付口11bから前方側(図4の左方側)に向かって押し込むようにして装着されており、信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの表面又は裏面に形成された信号伝送用導電路又はグランド用導電路のいずれかに対応した位置に当該導電コンタクト12のそれぞれが配置されている。これらの各導電コンタクト12は、信号伝送媒体Fの挿入方向(図4の右方向)に沿って延在する一対の細長状ビーム部材からなる可動ビーム12a及び固定ビーム12bをそれぞれ有している。
【0022】
それらの可動ビーム12a及び固定ビーム12bは、前記本体ハウジング11の内部空間において図示上下方向に適宜の間隔をなして互いに対向した状態に配置されており、コネクタ前後方向(図4の左右方向)に延在している。そのうちの固定ビーム12bは、前記本体ハウジング11の底部内壁面に沿って延在するように配置されていて、当該本体ハウジング11の内部で略不動状態となるように固定されている。
【0023】
そのような固定ビーム12bには、コネクタ前後延在方向(図4の左右方向)の略中央部分において略鉛直方向(図4の上下方向)に延在する細幅板状の連結支柱部12cが一体的に連結されている。そして、その連結支柱部12cの上端部分には、前記可動ビーム12aが片持ち状をなすようにして一体的に連結されていて、前記連結支柱部12c又はその近傍を中心として可動ビーム12aが回動するように弾性変形することにより、前記固定ビーム12bに対して可動ビーム12aが弾性的な可撓性を有する構成になされている。このときの各可動ビーム12aの回動は、図4の紙面を含む平面内において行われる構成になされており、当該可動ビーム12aの延在方向における前端部分(図4の左端部分)が図示上下方向に弾性変位される構成になされている。
【0024】
さらに、前記可動ビーム12aのコネクタ前端部分(図4の左端部分)には、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの図示上面側に形成された信号伝送用又はグランド用の導電路のいずれかに接続される接点部として端子接触凸部12a1が図示下向きの凸形状をなすように設けられている。
【0025】
一方、前述した本体ハウジング11の表面に装着されたシールドシェル13には、信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの裏面側(図6の下面側)に設けられたグランド用導電路に接触する端子接触凸部13aが複数個所にわたって設けられている。すなわち、本実施形態にかかるシールドシェル13の底板部13bは、前述した本体ハウジング11の挿入開口部11aの前端縁部から開口内方側に向かって延出するように形成されており、当該底板部13bが挿入開口部11aの開口内方部分を覆う部位に、上述した端子接触凸部13aが小突起状をなすようにして設けられている。これらの端子接触凸部13aは、上述した導電コンタクト12に対応した位置に多極状をなすように配置されていて、当該シールドシェル13に設けられた端子接触凸部13aと、上述したように可動ビーム12aに設けられた端子接触凸部12a1とは、上下方向に対面するように配置されている。
【0026】
つまり、グランド用導電路は、シールドシェル13に設けられた端子接触凸部13aと可動ビーム12aに設けられた端子接触凸部12a1とが上下方向に対面するように配置されているので、信号伝送媒体Fの上面側に配置されていても裏面側に配置されていても、グランド回路を形成できる構成となっている。なお、信号伝送媒体Fの上面側にグランド用導電路を形成する場合は、信号伝送媒体Fの信号伝送用導電路が配置されている部分以外に新たにグランド用導電路を配置してもよく、信号伝送用導電路をグランド用導電路として利用してもよい。
【0027】
そして、それらの端子接触凸部12a1,13aどうしの間に、前記信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fが挿入されたときに、上述した連結支柱部12c又はその近傍を中心として可動ビーム12aが押し上げられるようにして上方に弾性変位し、そのときの弾性復元力によって信号伝送媒体Fが可動ビーム12aとシールドシェル13との間に挟持されるようになっている。
【0028】
なお、これらの両端子接触凸部12a1,13aどうしは、互いの位置をコネクタ前方側(図4の左方側)或いはコネクタ後方側(図4の右方側)にずらして配置することも可能であり、また一方の端子接触凸部のみを設けることも可能である。また、本実施形態におけるシールドシェル13の底板部13bは、基本的に不動状態となるように固定されているが、信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの挿入を容易化する等の目的で、当該シールドシェル13の底板部13bの後端縁部分が、本体ハウジング11の底壁面から僅かに浮き上がるように形成して弾性変位可能となるように形成することも可能である。
【0029】
また、上述した固定ビーム12bのコネクタ後端側部分(図4の右端側部分)には、印刷配線基板上に形成された配線導電路(図示省略)に半田接続される基板接続端子部12b1が形成されていて、この基板接続端子部12b1を介して信号接続およびグランド接続が行われるようになっている。
【0030】
さらに、前記シールドシェル13の長手方向両端からやや内側寄りの部位には、特に図5及び図9に示されているように、当該シールドシェル13の後端縁部分(図5の右端縁部分)から一体的に突出する弾性連結部材14がそれぞれ設けられている。それらの各弾性連結部材14は、以下において詳細に説明するようにコネクタ前方側(図5の左方側)に折り返されるように延出しており、その延出端部分に、本体ハウジング11の内部に挿入された信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fに嵌合して抜け止めを行うロック部15が設けられている。
【0031】
すなわち、前記弾性連結部材14は、適宜の幅寸法を有する帯板状部材から形成されていて、上述したようにシールドシェル13の後端縁部分から後方側(図5の右方側)に向かって突出する部分に、側面略U字状をなすように折り曲げ形成された折返し弾性部14aを備えている。この折返し弾性部14aは、シールドシェル13の後端縁部分から下方段差を介して略水平に延出する上方ビーム14a1と、その上方ビーム14a1から下方側に湾曲するように折り曲げ形成されてから前方側(図5の左方側)に折り返された下方ビーム14a2とから構成されている。さらにその下方ビーム14a2は、上述した前方側(図5の左方側)への折り返し部分から斜め下方に向かって延在しており、それによって上方ビーム14a1との間の距離が、前方側(図5の左方側)に向かって連続的に拡大している。従って、これらの上方ビーム14a1と下方ビーム14a2とは、側面視において略楔形状をなすように形成されている。
【0032】
さらに、上述した折返し弾性部14aの下方ビーム14a2からは前方側(図5の左方側)に向かって支持ビーム14bが略水平に延出していて、その支持ビーム14bの前端部分(図5の左端部分)に、上述したロック部15が下方に向かって突出するように設けられている。そのロック部15は、側面視において略三角形状をなす板状部材から形成されており、尖塔形状になされた前端部分(図5の左端部分)から後方側(図5の右方側)に向かって、斜め下方に延出する案内傾斜面15aを有している。このように当該ロック部15は、上述した弾性連結部材14により弾性的に支持された構成になされている。従って、例えば図5のような初期状態にある弾性連結部材14における折返し弾性部14aの下方ビーム14a2が、例えば上方側に向かって強制的に変位されたときには、当該弾性連結部材14の弾性復元力によって上記ロック部15が、元の初期状態に戻される方向である下方向に付勢される構成になされている。
【0033】
一方、特に図6に示されているように、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの端末部分には、その幅方向における両端縁部分に係止ロック部Faがそれぞれ切欠き形成されている。これらの両係止ロック部Faは、平面略矩形状をなすように形成されており、信号伝送媒体Fの幅方向外方に向かって開放された形状になされている。なお、係止ロック部Faは、信号伝送媒体Fの幅方向外方に向かって開放された形状に限られず、ロック部15が係合する形状であれば、貫通穴であっても良い。
【0034】
そして、このような信号伝送媒体Fの端末部分が本体ハウジング11の内部に挿入された際には、当該信号伝送媒体Fの挿入側先端部分が、図7(a)のように上述したロック部15の案内傾斜面15aに当接し、信号伝送媒体Fの挿入に伴ってロック部15の全体が上方側へ押し上げられる。このようにして上方に持ち上げられたロック部15は、上述したように弾性連結部材14の弾性復元力によって初期状態、つまり下方に向かって戻される方向に付勢された状態となる。
【0035】
そして、図7(b)のように、前記信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの両端縁部分に切欠き形成された係止ロック部Faが、上述したロック部15の直下まで挿入されると、当該信号伝送媒体Fの係止ロック部Faに対してロック部15が、上述した弾性連結部材14の弾性復元力によって上方側から落とし込まれることとなり、それによってロック部15が、信号伝送媒体Fの係止ロック部Faと嵌合状態となるように構成されている。このようにして、信号伝送媒体Fの係止ロック部Faの内部にロック部15が嵌合された状態になされると、これら両部材どうしの嵌合作用によって、信号伝送媒体Fの全体が不動状態となるように保持され、当該信号伝送媒体Fの抜け止めが行われることとなる。
【0036】
一方、上述したようにして信号伝送媒体Fに嵌合状態になされたロック部15の解除操作が、コネクタ後端部分(図5の右方側部分)に配置されたロック解除操作部材16の押し込み操作にて行われるようになっている。すなわち、そのロック解除操作部材16は、前述した本体ハウジング11の部品挿入取付口11bに対して後方側(図5の右方側)に対面するように配置されたものであって、コネクタ長手方向の略全長にわたって配置された横断面略矩形状の長尺状部材から形成されている。このロック解除操作部材16は、上述したシールドシェル13に対してコネクタ前後方向(図7の左右方向)に往復移動可能となるように装着されている。
【0037】
すなわち、特に図9に示されているように、前記ロック解除操作部材16における長手方向両端面の各々には、一対の棒状部材からなる滑動軸16a,16aが、外方に向かって突出するように設けられている。一方、上述したシールドシェル13の同じく長手方向の両端部分には、コネクタ後方側(図5の右方向側)に向かって板状をなして突出する立支持板13cが設けられている。それらの立支持板13cは、上述したロック解除操作部材16の長手方向両端面に対して外方から近接対面するように配置されており、当該立支持板13cに貫通形成された一対の長穴からなる案内支持穴13d,13dに対して、前記ロック解除操作部材16側の滑動軸16a,16aがそれぞれ遊嵌状態で挿入されている。
【0038】
このとき、前記立支持板13cに設けられた案内支持穴13dは、コネクタ前後方向(図7の左右方向)に適宜の長さを有するように形成されており、その案内支持穴13dの長さの範囲にわたって、上述したロック解除操作部材16側の滑動軸16aが、ロック解除操作部材16の全体とともにコネクタ前後方向(図7の左右方向)に往復移動可能となるように構成されている。
【0039】
また、そのようなロック解除操作部材16には、上述した弾性連結部材14の折返し弾性部14aに対応した位置に、当該弾性連結部材14の折返し弾性部14aを受け入れる操作案内穴16bが設けられている。この操作案内穴16bは、コネクタ前後方向(図7の左右方向)に貫通するように形成されており、前述したようにロック解除操作部材16がコネクタ前後方向(図7の左右方向)に往復移動するに伴って、当該操作案内穴16b内において弾性連結部材14の折返し弾性部14aが、コネクタ前後方向(図7の左右方向)に相対移動するように構成されている。
【0040】
より具体的には、操作案内穴16bは、上述した弾性連結部材14の上方ビーム14a1及び下方ビーム14a2にそれぞれ接触する、上壁面16b1及び下壁面16b2を有している。そのうちの上壁面16b1は、前記弾性連結部材14の上方ビーム14a1とほぼ平行となるように略水平に延在している。従って、当該操作案内穴16bの上壁面16b1は、上述したロック解除操作部材16の往復移動に伴って弾性連結部材14の上方ビーム14a1に接触した状態で滑動するように構成されている。これに対して、操作案内穴16bの下壁面16b2は、弾性連結部材14の下方ビーム14a2と同方向の傾斜面、つまりコネクタ前方(図7の左方)に向かって連続的に下降する傾斜面から構成されている。そして、その操作案内穴16bの下壁面16b2に付与された傾斜面は、弾性連結部材14の折返し弾性部14aに対するテーパ状案内部になされている。
【0041】
すなわち、図5のように、信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fが未挿入の状態において、上述したロック解除操作部材16の下壁面16b2がなす傾斜角度は、前記弾性連結部材14の下方ビーム14a2の傾斜角度に対して、より緩やかな角度となるように設定されている。従って、ロック解除操作部材16が、図5に示された状態からコネクタ前方向(図5の左方向)に向かって押し込まれたときには、当該ロック解除操作部材16の下壁面16b2であるテーパ状案内部が、弾性連結部材14の下方ビーム14a2に対して下方側から圧接することとなり、それによって当該弾性連結部材14の下方ビーム14a2が上方向への付勢力を受けて持ち上げられることとなる。
【0042】
より具体的な動作で説明すると、まず図7(b)の状態、つまり信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの係止ロック部Faにロック部15が嵌合された状態においては、ロック解除操作部材16は同図のように待機位置にある。次いで、その待機位置にあるロック解除操作部材16が、作業者の操作力によってコネクタ前方(図7の左方)に向かって押し込まれていくと、上述したように弾性連結部材14の下方ビーム14a2がロック部15とともに上方に持ち上げられる。そして、図7(c)及び図10のようにロック解除操作部材16が最終の解除位置まで押し込まれた際には、前記信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの係止ロック部Faから、ロック部15が上方に離脱された状態になされる。
【0043】
そのようにしてロック解除操作部材16が解除位置まで押し込まれることによってロック部15が上方に持ち上げられると、弾性連結部材14の折返し弾性部14aは上下方向(図7の上下方向)に押し縮められた状態に撓ませられている。そのため、弾性連結部材14には、そのときの反発応力、つまり弾性復元力が発生しており、当該弾性復元力によってロック部15は信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの係止ロック部Faに対する嵌合状態に戻されるように下方側に付勢された状態になされる。このようにロック部15の解除状態においては、弾性連結部材14の弾性復元力によって下方ビーム14a2が、前記ロック解除操作部材16の下壁面16b2、つまりテーパ状案内部を下方に押圧することとなるが、そのテーパ状案内部であるロック解除操作部材16の下壁面16b2は、上述した下方押圧力を、ロック解除操作部材16をコネクタ後方向(図7の右方向)へ戻す方向の作用力、つまり待機位置への復帰力に変換する構成になされている。
【0044】
すなわち、上述したように弾性連結部材14は、当該弾性連結部材14の弾性復元力によってロック解除操作部材16を、図7(c)の解除位置から、図7(b)の待機位置に復帰させる方向に付勢する配置関係になされている。なお、本実施形態では、ロック解除操作部材16の下壁面16b2に、弾性連結部材14の下方ビーム14a2の傾斜角度より緩やかな傾斜を形成しているが、下壁面16b2の傾斜は平面にしてもよい。ただし、ある程度の傾斜を設けた方が下方ビーム14a2に対するガイドとして機能するため、ロック解除操作部材16の動作をより安定させるには、下壁面16b2を平面とするよりも傾斜面とした方がよい。
【0045】
さらにまた、前記シールドシェル13の長手方向の両端部分には、戻し補助板13eがコネクタ後方側(図5の右方側)に向かって突出するように設けられている。この戻し補助板13eは、前記シールドシェル13の天井板から斜め下方に延出するように形成されており、当該戻し補助板13eの延出側の先端部分が、上述したロック解除操作部材16の前端面(図5の左端面)に当接する配置関係になされている。このような戻し補助板13eの弾性復元力によっても、前記ロック解除操作部材16は、図7(c)の解除位置から図7(b)の待機位置に復帰させる方向に付勢されている。
【0046】
このように本実施形態によれば、シールドシェル13から延出する弾性連結部材14の弾性復元力によってロック解除操作部材16が解除位置から待機位置に向かって復帰する方向に付勢されていることから、ロック部15を信号伝送媒体(FPCやFFC)から解除させるようにロック解除操作部材16を移動操作した後に、そのロック解除操作部材16から作業者が手を離すだけで、当該ロック解除操作部材16は、弾性連結部材14の弾性復元力により元の待機位置に向かって自動で復帰することとなる。従って、従来のようにロック解除操作部材16を戻す操作を行うことなく新たな信号伝送媒体Fを直ちに挿入することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態によれば、シールドシェル13に一体に形成された弾性連結部材14を折り曲げ成形した折返し弾性部14aによって、ロック解除操作部材16に対する復帰作用力が得られることとなるため、新たな部品を追加することなく、より一層、簡易な構成が可能となっている。
【0048】
さらに、本実施形態においては、ロック解除操作部材16が、コネクタ後端側に突出するように配置されていることから、コネクタ後端側に突出するロック解除操作部材16をコネクタ前方側に向かって押し込むようにしてロック部15の解除操作が行われると、それに続いて行われる信号伝送媒体(FPCやFFC)Fの抜去動作が、その前のロック解除操作部材16の押し込み操作と略同一の方向(コネクタ前方向)に行われることとなる。従って、このようなロック解除操作部材16の押し込み操作、及びそれに続く信号伝送媒体Fの抜去動作が、操作の方向において円滑に継続されることとなるため、信号伝送媒体Fの抜去作業が効率的に行われる。
【0049】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0050】
例えば、上述した実施形態においては、電気コネクタに固定される信号伝送媒体として、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)を採用しているが、その他の信号伝送用媒体等を用いた場合に対しても本発明は同様に適用することができる。また、その信号伝送媒体としては、上述した実施形態のような信号伝送用導電路(信号線)を金属箔等で覆ったシールド・信号伝送媒体に限定されることなく適用が可能である。
【0051】
さらに、上述した実施形態にかかる電気コネクタは、同一形状の導電コンタクトを並設したものであるが、異なる形状の導電コンタクトを採用したものに対しても、本発明は同様に適用することが可能である。
【0052】
さらにまた、上述した実施形態においては、信号伝送媒Fの係止ロック部Faが、信号伝送媒体Fを貫通するように形成されているが、貫通することなく凹状に窪んだ形状とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように本発明は、各種電気機器に使用する多種多様な電気コネクタに対して広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 電気コネクタ
11 本体ハウジング
11a 挿入開口部
11b 部品挿入取付口
12 導電コンタクト(導電性部材)
12a 可動ビーム
12a1 端子接触凸部
12b 固定ビーム
12b1 基板接続端子部
12c 連結支柱部
13 シールドシェル
13a 端子接触凸部
13b 底板部
13c 立支持板
13d 案内支持穴
13e 戻し補助板
13f ホールドダウン
14 弾性連結部材
14a 折返し弾性部
14a1 上方ビーム
14a2 下方ビーム
14b 支持ビーム
15 ロック部
15a 案内傾斜面
16 ロック解除操作部材
16a 滑動軸
16b 操作案内穴
16b1 上壁面
16b2 下壁面
F 信号伝送媒体(FPC又はFFC)
Fa 係止ロック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ハウジング内に挿入された信号伝送媒体にロック部を嵌合させるように構成されたものであって、
前記ロック部が、前記本体ハウジングを覆うシールドシェルから帯板状をなすようにして一体的に延出する弾性連結部材の一部に設けられ、その弾性連結部材の弾性力によって前記ロック部が前記信号伝送媒体の係止ロック部と嵌合する方向に付勢されているとともに、
ロック解除操作部材を待機位置から解除位置に移動させることにより前記ロック部を前記信号伝送媒体との嵌合状態から解除させる構成になされた電気コネクタにおいて、
前記弾性連結部材は、当該弾性連結部材の弾性力によって前記ロック解除操作部材を前記解除位置から前記待機位置に復帰させる方向に付勢するように配置されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ロック解除操作部材が、コネクタ前後方向に往復移動されるように構成されたものであって、
前記弾性連結部材に、前記ロック解除操作部材に向かって側面略U字状をなして突出する折返し弾性部が設けられているとともに、
前記ロック解除操作部材には、前記弾性連結部材の折返し弾性部に当接して当該折返し弾性部の弾性力を前記ロック解除操作部材の復帰作用力に変換するテーパ状案内部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ロック解除操作部材が、コネクタ後端側に突出するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−14397(P2011−14397A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157963(P2009−157963)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(394009278)株式会社アイペックス (148)
【Fターム(参考)】