説明

電気光学変調器を使用するシステム

【課題】補正中のスループットに影響を及ぼさない、および/または、他の光学的な特性を妨害しない、照明ビームおよび/またはパターニングビームの測定または検出された特性に応じて、調節可能、ことによると自動的に調節可能な動的な光学系を使用するシステムと方法を提供する。
【解決手段】システムが放射ビームを形成する照明システム802と、放射ビームをパターニングするパターニング装置804と、像平面における対象のターゲットポイントにパターニングビームを投影する投影システム808と、像平面に投影されたパターニングビームの少なくとも一部を検出し、この検出に基づき制御信号を形成するフィードバックシステム818と、動的に制御可能な光学素子と、制御信号に基づき、光学素子に印加される電界を発生させるジェネレータとを包含し、光学素子に印加される電界は光学素子内の少なくとも1つの方向の屈折率を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学変調器を使用するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
後に対象上に投影される衝突放射ビームをパターニングするパターン形成環境においては、照明放射ビームおよび/またはパターニングビームの特性を制御することが極めて重要である。何故ならば、対象上で精確なパターンを形成するためにはビームおよび/またはパターニングビームは精密に制御されなければならないからである。
【0003】
一般的にパターニングシステムは静的な光学系を使用しており、そのような光学系は典型的には所望の特性を有する光ビームを形成するために各用途に関して設計されて製造される。例えば静的な光学系において、照明特性の変更が所望されるか必要とされる場合には新たな光学系を設計して製造しなければならず、このことはお金と時間を要する。また、照明源の出力は時が経つに連れ変化するが、このことを通常は考慮することができず、これにより所望するよりも劣る結果が生じる可能性がある。
【0004】
別の例では、補正は不所望な光特性を有する光が領域に放射されることによって行われるので、および/または、補正が比較的緩慢な機械装置によって実施されているので、現行の方法で得られるスループットは低い。
【0005】
さらに幾つかの例では、1つの光学的な特性、例えば光強度の均一性に関して補正を行うことによって、他の特性、例えば楕円率および/またはテレセントリック性が不所望なものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、補正中のスループットに影響を及ぼさない、および/または、他の光学的な特性を妨害しない、照明ビームおよび/またはパターニングビームの測定または検出された特性に応じて、調節可能、ことによると自動的に調節可能な動的な光学系を使用するシステムと方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
システムに関する課題は、システムが放射ビームを形成する照明システムと、放射ビームをパターニングするパターニング装置と、像平面における対象のターゲットポイントにパターニングビームを投影する投影システムと、像平面に投影されたパターニングビームの少なくとも一部を検出し、この検出に基づき制御信号を形成するフィードバックシステムと、動的に制御可能な光学素子と、制御信号に基づき、光学素子に印加される電界を発生させるジェネレータとを包含し、光学素子に印加される電界は光学素子内の少なくとも1つの方向の屈折率を変化させることによって解決される。
【0008】
方法に関する課題は、方法が、(a)放射ビームをパターニングするステップと、(b)パターニングビームを像平面に配置されている対象のターゲットポイントに投影するステップと、(c)像平面におけるパターニングビームの1つまたは複数の特徴を検出するステップと、(d)検出された1つまたは複数の特徴からフィードバック制御信号を形成するステップと、(e)制御信号から電界を発生させるステップと、(f)動的に制御可能な光学素子に電界を印加するステップとを有し、光学素子に印加される電界は動的に制御可能な光学素子内の少なくとも1つの方向の屈折率を変化させることによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の1つの実施形態による電気光学変調器。
【図2】本発明の実施形態による電気光学変調器のアレイ。
【図3】本発明の実施形態による電気光学変調器のアレイ。
【図4】本発明の実施形態による電気光学変調器のアレイ。
【図5】本発明の実施形態による電気光学変調器における電極の種々の配置構成。
【図6】本発明の実施形態による電気光学変調器における電極の種々の配置構成。
【図7】本発明の実施形態による電気光学変調器における電極の種々の配置構成。
【図8】本発明の実施形態による電気光学変調器を有する種々のリソグラフィシステム。
【図9】本発明の実施形態による電気光学変調器を有する種々のリソグラフィシステム。
【図10】本発明の実施形態による電気光学変調器を有する種々のリソグラフィシステム。
【図11】本発明の1つの実施形態による電気光学変調器を使用する光ビームの偏向グラフ。
【図12】本発明の1つの実施形態による方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による実施形態は、照明システム、パターニング装置、投影システム、フィードバックシステム、光学素子およびジェネレータを包含するシステムを提供する。照明システムは放射ビームを形成する。パターニング装置は放射ビームをパターニングする。投影システムはパターニングビームを像平面における対象のターゲットポイントに投影する。フィードバックシステムは像平面に入射する投影されたパターニングビームの少なくとも一部を検出し、その検出に基づき制御信号を形成する。ジェネレータは制御信号に基づき電界を発生させる。電界は光学素子に印加され、この印加された電界は光学素子を通過するビームの伝播を制御するために光学素子内の少なくとも1つの方向の屈折率を変化させる。
【0011】
本発明の別の実施形態は以下のステップを包含する方法を提供する:パターンジェネレータを用いて放射ビームをパターニングするステップ;像平面内に位置する対象のターゲットポイント上にパターニングビームを投影するステップ;像平面に入射した投影されているパターニングビームの少なくとも一部を検出して、その検出から制御信号を形成するフィードバックシステムを使用してビームまたはパターニングビームの伝播を制御するステップ;パターンジェネレータまたは対象の近傍における所望の位置に光学素子を位置決めするステップ;制御信号に基づき電界を発生させるステップ;電界を光学素子に印加し、この印加された電界が光学素子を通過するビームの伝播を制御するために光学素子内の少なくとも1つの方向の屈折率を変化させるステップ。
【0012】
次に、本発明の別の実施形態、特徴および利点ならびに本発明の種々の実施形態の構造および動作について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
次に、図面を参照しながら本発明を説明する。図中、同一の要素または機能的に類似の要素には同じ参照番号を付すものとする。また、参照番号のうち一番左側の数字は、その参照番号が最初に現れた図面を表すものとする。
【0014】
概観
以下では特別な構成や装置について論じるが、これは単に例示を目的としていると理解すべきである。当業者であれば、本発明の着想や範囲を逸脱することなく他の構成や装置も使用できる。また、本発明を種々の他の用途において採用できることも当業者であれば自明である。
【0015】
本発明の実施形態は、光学素子内の少なくとも1つの方向の屈折率を変化させる電界によって制御される光学素子を使用するシステムと方法を提供する。屈折率の変化は光学素子を通過する放射ビームに変化をもたらす。電界はシステム内の像平面の近傍に配置されている検出器を包含するフィードバックシステムからのフィードバック/制御信号によって制御される。調節されるべき光特性に依存して、光学素子をシステム内の種々の位置、例えば照明システムの後方または光パターニングシステムの後方に配置することができる。1つの例では光学素子が照明光学系内に配置されている。このようにして、光学素子は動的な電界の制御下でその伝播特性を変化させ、照明システムからの照明ビームおよび/またはパターニングシステムからのパターニング放射ビームを動的に変化させ、その結果これらのビームは所望の光特性を示す。
【0016】
種々の例においては、光特性を局所的(例えば像平面におけるフィールド内の所望の位置)または全体的(例えば像平面における全体のフィールドにわたって)に調節することができる。
【0017】
動的に制御可能な光特性の例には強度、楕円率、テレセントリック性、指向性、均一性などが含まれるが、動的に制御可能な光特性はこれらに制限されるものではない。例えばこれらの特性を、強度制御を用いたパターンフィーチャの寸法、例えば線幅や、楕円率制御を用いたHVバイアス(例えば配向以外は同一であるべき、水平方向に配向されているレジストフィーチャと垂直方向に配向されているレジストフィーチャとの差)や、テレセントリック性制御を用いたオーバーレイ(例えば先行して成形されたパターンの上へのパターンの位置決め)の制御に使用することができる。別の例として、これらの特徴を瞳の充填(pupil fill)または瞳形状を制御するために使用することができる。
【0018】
電気光学変調器に関する実施例
図1は本発明の1つの実施形態によるシステム100を示す。例えば、システム100は電気光学変調器でよい。システム100は第1の部分102Aおよび第2の部分102B(例えば第1のプリズムおよび第2のプリズム、第1の光学くさびおよび第2の光学くさびなど)を包含する光学素子102を有し、この光学素子102は電界をジェネレータ104から受け取る。1つの例においては、光学素子102の第1の部分102Aおよび第2の部分102Bは逆の光学軸でもって一体的に結合されている。X,YおよびZ方向における光学素子102の配向は光学素子102の隣に示してある。ジェネレータ104を使用した電界E’の光学素子102への印加により電気光学変調器が形成される。投射図においては、ジェネレータ104が、紙の平面に対して平行である第1の面および第2の面に接続されている。例えばこのことはビーム106の進路を変えるために行うことができ、これによりビーム106に関して角度θの方向に伝播する出力ビーム108が形成される。この実施形態においては、光学素子102が電界により制御可能な1つまたは複数の性質を有する材料からなり、これを以下詳細に説明する。
【0019】
ビーム106は単一の出力ビーム108を形成するために、または別個に複数の出力ビーム108を形成するために、一緒に偏向させることができる種々のサブビームを包含できることは自明である。別の例においては、複数のビーム106を光学素子102によって受光することができ、光学素子102を多数の入力ビーム106から1つまたは複数の出力ビーム108を形成するために使用することができる。
【0020】
1つの実施例においては、各部分102Aおよび102Bが同様の寸法を有する。すなわち角度α、βおよびγが各部分102Aおよび102Bについて同様である。例えば、αおよびγを45°としβを90°とすることができる(例えば45°・45°・90°の三角形)、もしくは別の例ではαおよびγをそれぞれ30°と60°としβを90°とすることができる(例えば30°・60°・90°の三角形)。部分102Aおよび102Bの寸法は用途固有であり、所望の伝播特性に依存するものである。
【0021】
1つの実施例においては、部分102Aの表面および部分102Bの表面は、ビーム106が光学素子102を通過して伝播するように、ビーム106における不均一性をスメアリングできるよう所望のあらゆる仕上げを有することができる。
【0022】
1つの実施例においては、ジェネレータ104のノード110が、例えば像平面(図示せず)の近傍に配置されているフィードバックシステム(図示せず)から制御信号112を受信する。フィードバックシステム装置は例えば後述する図8,9および10に示されている。
【0023】
図1の実施例においては、光学素子102(例えば電気光学結晶)はビーム106を偏向するために使用される。1つの実施例においては、光学素子102の2つの部分102Aおよび102Bは逆の結晶軸でもって一体的に結合されている。ジェネレータ104を使用して第1の部分102Aおよび第2の部分102Bに電圧を印加することによって、第1の部分102Aおよび第2の部分102Bそれぞれの屈折率が相互に変化され、これにより偏向された出力ビーム108が得られる。部分102Aおよび102Bを通過する偏向角度(θ)は、(1)使用される電気光学テンソル要素の大きさ(例えば結晶配向に依存する)、(2)ジェネレータ104によって供給される制御信号110の値(例えば電圧信号の値)、また(3)光学素子102の寸法に依存する。
【0024】
図11は本発明の1つの実施形態による、例えば電気光学変調器100を使用する光ビーム偏向対電位差のグラフ1100を示す。
【0025】
1つの実施例においては、ビーム106が出力ビーム108を形成するために次式にしたがい偏向される。
【0026】
【数1】

この式においてlは結晶の深度であり、Eは電界であり、rは電気光学係数であり、η0は屈折率であり、Dは結晶の高さである。グラフ1100中の直線1102は後述するADPからなる電気光学変調器についてのものであり、グラフ1100中の直線1104は後述するKDPからなる電気光学変調器についてのものである。
【0027】
光学素子およびジェネレータの他の装置も電気光学変調器を形成するために使用できることは自明であり、このことは例えば2004年10月26日付けのU.S第10/972,582号「電気光学変調器を使用するシステムと方法(System and Method Utilizing an Electrooptical Modulator)」に記載されており、その記載内容は参照によりその全てが本明細書に取り入れられる。
【0028】
1つの実施例においては光学素子102が結晶材料である。例えば、使用できる結晶材料の1つとしてLithuania,VilniusのEKSMA Co.によって製造されている三ホウ酸リチウム(LiB)が挙げられる。別の実施例においては、(KDPとして公知である)リン酸二水素カリウム(KHPO)または(ADPとして公知である)リン酸二水素アンモニウム(NHPO)を使用することができ、これらの材料はLBOと同様の電気光学特性を示すが、LBOに比べて伝送効率は低い。しかしながら他の公知の材料も本発明の範囲から逸脱することなく使用することができる。典型的には両方の部分102Aおよび102Bが同一の材料からなるものではあるが、幾つかの実施形態においては各部分に対して異なる材料を使用できることは自明である。
【0029】
上述の実施形態においては、電気光学変調器100は線形の電気光学効果を使用し、このことは印加される電界に基づき光学素子(例えば結晶)内の種々の方向における屈折率の変化をもたらす。効果は反対対称性を有さない結晶内でのみ存在する。このことを楕円の方程式の指数で表すことができ、これは電界による結晶の異方性の変化を表す。下記の式は、結晶内の任意に選択された直交座標系に関する楕円の指数の式についての一般形を表す。
【0030】
【数2】

【0031】
ここでnは使用される材料に関する屈折率についての定数である。電界(E)が印加されることによる屈折率(n)の変化を以下のように行列の形で表すことができる。
【0032】
【数3】

【0033】
この式における第2の行列は、上記において図1に関連させて説明した電気光学テンソルである。ゼロ以外の要素がこのテンソルに存在する場合には、材料は電気光学的な効果を示す。
【0034】
通常の場合座標形は、電界が印加されている状態で式1が以下のように減少するようにして決定される。
【0035】
【数4】

【0036】
電気光学テンソルの正確な性質に依存して、垂直方向における屈折率の変化を惹起する、印加される電界に関する方向を決定することができる。したがって電気光学変調器100の性質を動的に制御することができる。何故ならば、屈折率の電圧依存性は垂直方向における入射電界成分間のリターディションを惹起するからである。選択された方向は該当する結晶の対称性に依存する。リターディションは印加される電圧と対応する電気光学テンソル成分に比例する。この正味効率は2つの方向間の位相差を変化させる電圧を発生させることができ、これを異なる用途に使用することができる。
【0037】
別の実施例においては、プリズム102Aとプリズム102Bの接触面が所望のプロフィールを有し、このプロフィールは印加される電圧を最適化することができる。例えば、一定のプロフィールが存在し且つ外部電圧を使用して変調できる場合には比較的低い電圧を使用することができる。
【0038】
別の実施例においては、1つの電気光学変調器100が光の角分布を制御するために使用されるので、順次配置されており且つ他方に関してy軸を中心に例えば90°回転されている第1および第2の光学変調器100はビームの開きを除去するため、もしくは直交方向においてビームの開きを等しくするために2つの方向におけるレーザビームの開きを制御することができ、このような電気光学変調器は瞳充填の楕円率が所望の許容差内にあることを保証することができる、および/または、ビーム方向の変更が望まれるあらゆる用途に使用することができる。
【0039】
別の実施例においては、電気光学変調器100はHVバイアスを補正するために全体的(例えば像平面の全体のフィールドにわたって)もしくは局所的(例えば像平面のフィールド内の1つまたは複数の位置)に楕円率を変化させることができる。
【0040】
1つの実施例においては、電気光学変調器100のための電気光学システムが、慣例のシステムにおける機械装置に比べて、均一性の変動を補正するために非常に短い時間で応答することができる。この短時間での応答は、放射線量の均一性を著しく改善するために、走査中にリアルタイムで補正を行うことができる。
【0041】
1つの実施例においては1つまたは複数の面が非反射性コーティングまたは高反射性コーティングなどを有することができ、それに基づいてビーム106が特定の面から反射されるか、反射されないかが制御される。このことは、迷光が特定の面を通過して電気光学変調器100から放射されないこと、および/または、電気光学変調器100を通過する光を適切に配向させることを保証できる。
【0042】
電気光学変調器のアレイに関する実施例
図2,3および4は本発明の種々の実施形態による電気光学変調器200,300および400のアレイ220,320および420を示す。電気光学変調器200,300および400はそれぞれ、部分102Aおよび部分102Bと同様に第1の部分および第2の部分を有するが(図示せず)、便宜上この第1の部分と第2の部分との間の傾斜面は図2,3および4には示していない。
【0043】
図2,3および4に示されている数、大きさおよび/またはビームの形状は単に例示的なものであって、電気光学変調器のアレイを使用する固有の用途に基づく種々の実施形態によれば、異なる形状および大きさ、または複数のビームが考えられることは自明である。
【0044】
図2は本発明の1つの実施形態による、電気光学変調器200の1×n(nは1より大きい正の整数)個のアレイ220を示す。各変調器200は、対向する2つの面に接続されている電極222と、変調器200の対向する2つの端部に接続されている支持体224を有する。この投射図において電極222は垂直電極である。この装置はアレイ220を介して伝播するビーム206の単一方向変調を行うことができる。この例ではビーム206が矩形の横断面を有する。したがってビーム206の横断面を考慮したアレイ220および電極222の配向に依存して、X方向またはY方向のいずれかの方向においてこのビーム206を変調することができる。4つの電気光学変調器200が示されているが、本発明の範囲内で意図されている限り、あらゆる個数の電気光学変調器を使用することができる。
【0045】
図3は本発明の1つの実施形態による、電気光学変調器300のスタック状のn×m(nおよびmは1より大きい正の整数か1である)個のアレイ320を示す。この実施形態においては、第1のスタックであるスタックAが電気光学変調器300Aを包含し、第2のスタックであるスタックBが電気光学変調器300Bを包含する。第1のスタックおよび第2のスタックが隣接していることが波線328で表されている。付加的なスタックも使用できることは自明である。図1における電気光学変調器100に関して、スタックAは電気光学変調器100と同様に配向されているが、スタックBにおける電気光学変調器300Bは電気光学変調器300Aに関してy軸を中心に90°回転されている、もしくはこれとは反対のことが行われている。これにより上述したように、また後述するように2方向制御を行うことができる。
【0046】
各変調器300は対向する2つの面に電極326を有する。またアレイ320は変調器300の対向する2つの端部に接続されている支持体324を包含する。この装置はアレイ320を介して伝播するビーム306の2方向変調を行うことができる。この例ではビーム306が矩形の横断面を有し、このビーム306の横断面を考慮したアレイ320および電極326の配向に基づき、X方向およびY方向においてビーム306を変調することができる。24個の電気光学変調器300が示されているが、本発明の範囲内で意図されている限り、あらゆる個数の電気光学変調器を使用できることは自明である。
【0047】
図4は本発明の1つの実施形態による電気光学変調器400の同心のアレイ420を示す。上述したアレイ220およびアレイ320内の変調器200および300と同様に、変調器400は上述した機能性を許容するためにその面に接続されている電極422/426を有する。単一の円形アレイ420が示されているが、1つまたは複数の同心円アレイ420を使用できることは当業者には自明である。
【0048】
1つの実施例においては、上述のアレイのうちの1つに衝突する入射ビームの種々のサブビームを別個に制御できる調節可能な方向に偏向させることができる。1つの実施例においては、サブビームを比較的高い強度を有する領域から比較的低い強度を有する領域に偏向させることによって、均一性のばらつきを平滑にすることができる。したがって実質的に光損失は殆ど無い、もしくは存在しない。
【0049】
別の実施例においては、多数の入射ビームを変調器の出力側の端部において、または変調器を通過した後において、単一のビームに結合される前に別個に偏向させることができる。
【0050】
1つの実施例においては、この装置は高い空間周波数の均一性の変動を補正することができる。
【0051】
1つの実施例においては、アレイが比較的高速に動作し、これにより像平面のフィールドのスキャン中に空間的な均一性を補正することができる。
【0052】
1つの実施例においては、図1に示されているような単一の素子、または図2から4に示されているような素子のアレイを、ポジションエラーを補正するために、マイクロリソグラフィーツールでのレーザビームの向きの変更に使用することができる。
【0053】
電極装置に関する実施例
図5,6および7は本発明の種々の実施形態による電気光学変調器700における電極722/726の種々の配置構成の端部、側面および投射図をそれぞれ示している。上述の実施形態においては、電極が対向する2つの面に接続されているか、1つまたは複数の電気光学変調器の向かい合う2組の面に接続されていた。しかしながら図5,6および7に示されているように、1つ以上の電極722/726を電気光学変調器700の各面に接続することができる。このことは変調器700を介して伝播する1つまたは複数の放射ビーム(図示せず)の可制御性を高めるために行うことができる。また、この投射図においては水平方向に接続されている電極が示されているが、垂直方向に接続されている電極も使用することができる。
【0054】
1つの実施例においては、多数の電極722/726を備えた2つのプリズム光学素子700を使用することによって、この光学素子700に衝突するビームの一部の進路を異なる方向へと変えることができる。このことは角分布における極めて高い解像度を提供することができる。
【0055】
したがって、異なる配置構成において光学素子102または光学素子102のアレイの側面に接続されている電極722/726を使用することによって、光学素子102または光学素子102のアレイを介して伝播する光を非常に精確に制御することができるか、必要に応じてまたは所望のように修正することができる。したがって光の特性、例えば均一性、楕円率、テレセントリック性などを必要に応じてまたは所望のように修正することができる。上述したように、また後述するように、このことを例えば照明システムまたは投影システムにおける瞳充填または瞳形状を制御するために使用することができる。
【0056】
上記の実施形態および実施例ではビームが入射側から放射側へと電気光学変調器を通過して放射されるが、他の実施形態においては入射側の面とは反対側の面が反射性のコーティング、層、物質または材料を有していてもよいことは自明である。したがって、ビームが電気光学変調器を通過して伝送される代わりに、電界の使用により特性が変化した後に、ビームは入射側の面とは反対側の面から入射面へと反射される。別の実施例においては、反射面は入射側の面とは反対側にある必要はない、もしくは光は3つの異なる面から入射、反射、放射してもよい。
【0057】
適用事例に関する実施形態:リソグラフィ
図8,9および10は本発明の種々の実施形態による電気光学変調器を有する種々のリソグラフィシステム800,900,1000を示す。これらのシステムにおいては、照明システム802/902/1002からの放射がパターニング光を形成するパターンジェネレータ804/904/1004を照明し、このパターニング光がパターンジェネレータ804/904/1004から投影システム808/908/1008を介してワークピース806/906/1006に向かって配向される。
【0058】
システム900においては、光がパターンジェネレータ904に配向され、このパターンジェネレータ904からビームスプリッタ905を介して配向される。
【0059】
1つの実施例においては、パターニング光816/916/1016をフィードバックシステム818/918/1018において検出器820/920/1020によって受光することができる。受光したパターニング光816/916/1016を表す信号824/924/1024は検出器820/920/1020から制御装置822/922/1022へと伝送され、制御信号824/924/1024を形成するために使用される。制御信号824/924/1024は上述したような光学的な特性、例えば強度、均一性、楕円率、テレセントリック性などに関する目下の(測定された)値と所望の値を基礎とする補償または調節信号でよい。例えば図1に示した実施形態では、制御信号824はジェネレータ104のノード110において受信された制御信号112であり、この制御信号112は光学素子102を通過する光ビーム106の伝播を動的に制御するための電界の発生を動的に制御するために使用される。
【0060】
種々の実施形態において、ワークピース806/906/1006は基板、ウェハ、フラットパネルディスプレイ基板、プリントヘッド、マイクロ流体装置またはナノ流体装置であるが、ワークピース806/906/1006はこれらに制限されるものではない。
【0061】
照明システム802/902/1002は光源810/910/1010および照明光学系812/912/1012を包含することができる。パターンジェネレータ804/904/1004は光学系814/914/1014を有することができる。これらのうちの一方または両方が1つまたは複数の光学素子(例えばレンズ、ミラーなど)を包含することができる。例えば、光学系812/912/1012または光学系814/914/1014のうちの一方または両方が、上記の電気光学変調器または電気光学変調器のアレイのいずれか1つを包含することができ、これらの光学系は照明光826/926/1026がパターンジェネレータ804/904/1004に到達する前にこの照明光826/926/1026を動的に制御するために使用することができる。これを慣例の環状、単一極、多重極またはクェーサーの照明モードのうちの1つを制御するために使用することができる。
【0062】
1つの実施例においては、投影システム808/908/1008が1つまたは複数の光学素子(例えばレンズ、ミラーなど)を包含する。例えば、投影システム808/908/1008が上述したような電気光学変調器または電気光学変調器のアレイのいずれかを包含することができ、この投影システムはパターニング光816/916/1016がワークピース806/906/1006に到達する前にこのパターニング光816/916/1016を動的に制御するために使用することができる。
【0063】
種々の実施例においては、パターンジェネレータ804/904/1004がマスクベースのパターンジェネレータまたはマスクレスのパターンジェネレータでよく、このことは当業者には自明である。マスクベースのシステムまたはマスクレスのシステムをリソグラフィ、フォトリソグラフィ、マイクロリソグラフィまたは液浸リソグラフィシステムと関連付けることができる。
【0064】
例えば、上記の電気光学変調器のアレイの1つのような電気光学変調器のアレイを使用することにより、リソグラフィシステム800,900または1000の内の1つにおいては、均一性の変動の能動的な制御が光分布の再配向(redirecting)によって実施され、これによりアレイ内の各電気光学変調器にわたる電圧の変化を介して光損失の量が低減される。
【0065】
1つの実施例においては、システム800,900または1000において使用される電気光学変調器をパターンジェネレータ804/904/1004またはワークピース806/906/1006が配置されている平面における光の角分布を制御するために使用することができ、瞳充填を発生させるための異なる回折アレイの必要性が排除される。
【0066】
1つの実施例においては、システム800,900または1000において使用される電気光学変調器を投影系808/908/1008における瞳充填を制御するために使用することができる。
【0067】
動作に関する実施形態
図12は本発明の1つの実施形態による方法1200を説明するフローチャートを示している。方法1200を上記のシステムの1つまたは複数を用いて実施することができる。ステップ1202においては、放射ビームがパターンジェネレータを用いてパターニングされる。ステップ1204においては、パターニングビームが像平面に配置されている対象のターゲットポイントに投影される。ステップ1206においては、ビームまたはパターニングされたビームの伝播が、像平面に入射した投影されているパターニングビームの少なくとも一部を検出し、その検出に基づき制御信号を形成するフィードバックシステムを使用して制御される。ステップ1208においては、電界が制御信号に基づき発生される。ステップ1210においては、電界がパターンジェネレータまたは対象の近傍に配置されている光学素子に印加され、この印加された電界は光学素子を通過するビームまたはパターニングビームの伝播を制御するために光学素子内の少なくとも1つの方向の屈折率を変化させる。
【0068】
結論
これまで本発明の様々な実施形態について説明してきたが、それらは例示にすぎず、限定を意味するものではない。形態や詳細について本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更を行えることは、当業者にとって自明である。したがって本発明の範囲は上記の実施形態によって制限されるものではなく、特許請求の範囲および同等のものによってのみ規定される。
概要および要約の部分ではなく、発明の詳細な説明の部分が請求項を解釈するために用いられることを意図していることは自明である。概要および要約は発明者によって考えつく限り本発明の1つまたは複数の実施例を記載することができるが、全ての実施例を記載しているものではなく、したがって本発明および請求項を決して何らかの形で制限することを意図していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムにおいて、
放射ビームを形成する照明システムと、
前記放射ビームをパターニングするパターニング装置と、
像平面における対象のターゲットポイントにパターニングビームを投影する投影システムと、
前記像平面に投影された前記パターニングビームの少なくとも一部を検出し、該検出に基づき制御信号を形成するフィードバックシステムと、
動的に制御可能な光学素子と、
前記制御信号に基づき、前記光学素子に印加される電界を発生させるジェネレータとを包含し、
前記光学素子に印加される前記電界は前記光学素子内の少なくとも1つの方向の屈折率を変化させることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記光学素子は三ホウ酸リチウム(LiB)、リン酸二水素カリウム(KHPO)またはリン酸二水素アンモニウム(NHPO)の内の1つを含有する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記屈折率の変化は前記放射ビームの少なくとも一部の強度変化を惹起する、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記強度変化は像平面にわたる一定の強度の発生を含む、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記屈折率の変化は前記放射ビームの少なくとも一部の楕円率変化を惹起する、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記楕円率変化は前記像平面にわたる一定の楕円率の発生を含む、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記楕円率変化は前記像平面内の種々の位置における楕円率の変動の発生を含む、請求項5記載のシステム。
【請求項8】
前記屈折率の変化は前記放射ビームのテレセントリック性変化を惹起する、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記テレセントリック性変化は前記像平面にわたる一定のテレセントリック性の発生を含む、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記テレセントリック性変化は前記像平面内の種々の位置におけるテレセントリック性の変動の発生を含む、請求項8記載のシステム。
【請求項11】
前記光学素子は一体的に結合されている第1のプリズムおよび第2のプリズムを包含する、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のプリズムおよび前記第2のプリズムは逆の結晶軸でもって一体的に結合されている、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記ジェネレータはさらに、
前記光学素子の第1の表面に接続されている第1の電極と、
前記光学素子の第2の表面に接続されている第2の電極とを包含する、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の表面および前記第2の表面は前記光学素子の対向する面に配置されている、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の電極および前記第2の電極の内の少なくとも1つは複数の電極を包含する、請求項13記載のシステム。
【請求項16】
前記光学素子はプリズムのアレイを包含する、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
前記プリズムのアレイは1×n個のプリズムのアレイであり、ここでnは正の整数である。請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記プリズムのアレイはm×n個のプリズムのアレイであり、ここでmおよびnは正の整数である。請求項16記載のシステム。
【請求項19】
前記プリズムのアレイは1つまたは複数の同心円内で一体的に結合されている、請求項16記載のシステム。
【請求項20】
前記光学素子はプリズムのアレイの複数のスタックを包含し、該プリズムのアレイはスタック内の隣接するスタックにおいて相互に関して異なる配向を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項21】
前記光学素子は単一の入力ビームから複数の出力ビームを形成する、請求項1記載のシステム。
【請求項22】
前記光学素子は複数の入力ビームから単一の出力ビームを形成する、請求項1記載のシステム。
【請求項23】
前記光学素子は瞳形状を制御するために伝播ビームの出力角度を制御する、請求項1記載のシステム。
【請求項24】
前記光学素子は慣例の環状、単一極、多重極またはクェーサーの照明モードのうちの1つを制御するために伝播ビームの出力角度を制御する、請求項1記載のシステム。
【請求項25】
前記光学素子はプリズムを包含し、
前記ジェネレータはプリズムを介して一方向に延びる電極を包含する、請求項1記載のシステム。
【請求項26】
前記光学素子は複数のプリズムを包含し、
前記ジェネレータは各プリズムの対向する面である第1の面および第2の面と接続されている電極の組を包含する、請求項1記載のシステム。
【請求項27】
前記対象は基板である、請求項1記載のシステム。
【請求項28】
前記基板は半導体基板またはフラットパネルディスプレイ基板である、請求項27記載のシステム。
【請求項29】
前記対象はプロジェクタのディスプレイまたは投影システムのディスプレイである、請求項1記載のシステム。
【請求項30】
前記光学素子は一体的に結合されている第1の光学くさびおよび第2の光学くさびを包含する、請求項1記載のシステム。
【請求項31】
前記第1の光学くさびおよび前記第2の光学くさびは所望の仕上げを有し、前記光学素子を通過して伝播するようビーム内の不均一性をスメアリングする、請求項30記載のシステム。
【請求項32】
方法において、
(a)放射ビームをパターニングするステップと、
(b)パターニングビームを像平面に配置されている対象のターゲットポイントに投影するステップと、
(c)像平面における前記パターニングビームの1つまたは複数の特徴を検出するステップと、
(d)検出された前記1つまたは複数の特徴からフィードバック制御信号を形成するステップと、
(e)前記制御信号から電界を発生させるステップと、
(f)動的に制御可能な光学素子に前記電界を印加するステップとを有し、
前記光学素子に印加される前記電界は前記動的に制御可能な光学素子内の少なくとも1つの方向の屈折率を変化させることを特徴とする、方法。
【請求項33】
前記屈折率の変化により前記放射ビームの少なくとも一部の強度変化を惹起させる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記強度変化は前記像平面にわたる所望の強度分布の発生を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記屈折率の変化により前記放射ビームの少なくとも一部の楕円率変化を惹起させる、請求項32記載の方法。
【請求項36】
前記楕円率変化は前記像平面にわたる一定の楕円率の発生を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記楕円率変化は前記像平面内の種々の位置における楕円率の変動の発生を含む、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記屈折率の変化により前記放射ビームのテレセントリック性変化を惹起させる、請求項32記載の方法。
【請求項39】
前記テレセントリック性変化は前記像平面にわたる一定のテレセントリック性の発生を含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記テレセントリック性変化は前記像平面内の種々の位置におけるテレセントリック性の変動の発生を含む、請求項38記載の方法。
【請求項41】
さらに、
(g)動的に制御可能な光学素子を用いて単一の入力ビームから複数の出力ビームを形成するステップを有する、請求項32記載の方法。
【請求項42】
さらに、
(g)動的に制御可能な光学素子を用いて複数の入力ビームから単一の出力ビームを形成するステップを有する、請求項32記載の方法。
【請求項43】
さらに、
(g)瞳形状を制御するために動的に制御可能な光学素子を用いて伝播ビームの出力角度を制御するステップを有する、請求項32記載の方法。
【請求項44】
さらに、
(g)慣例の環状、単一極、多重極またはクェーサーの照明モードのうちの1つを制御するために動的に制御可能な光学素子を用いて伝播ビームの出力角度を制御する、請求項32記載の方法。
【請求項45】
さらにプリズムのアレイを包含し、該プリズムのアレイは、
第1のプリズムのアレイと、
第2のプリズムのアレイとを包含し、該第2のプリズムのアレイは前記第1のプリズムのアレイに関して回転されている、請求項1記載のシステム。
【請求項46】
さらに前記プリズムのアレイの付加的な1つのプリズムのアレイを包含し、プリズムのアレイの隣接する1つは他方に関して回転されている、請求項45記載のシステム。
【請求項47】
前記動的に制御可能な光学素子は1つまたは複数の面において反射性コーティングを有する、請求項1記載のシステム。
【請求項48】
前記反射性コーティングは、光ビームが前記光学素子に入射する際に通過する面とは反対側の面に設けられており、前記光ビームは方向が変更された後に入射面へと反射される、請求項47記載のシステム。
【請求項49】
前記反射性コーティングは迷光が前記光学素子内に残ることを保証するために使用される、請求項47記載のシステム。
【請求項50】
前記反射性コーティングは前記光学素子を通過する光を配向するために使用される、請求項47記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−93263(P2010−93263A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234218(P2009−234218)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【分割の表示】特願2005−354000(P2005−354000)の分割
【原出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(503195263)エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ. (232)
【Fターム(参考)】