電気光学装置、その駆動方法、および電子機器
【課題】フリッカなどの表示不具合の発生を抑制すること。
【解決手段】電気光学装置1は、対向電極電位Comを第1の現象(フィールドスルー)の補正電圧分あらかじめシフトした値に設定するとともに、1フレームの期間長における第1および第2フィールドの期間長の割合を、指定値Qの値に応じて調整する駆動方法を行う。これにより、指定値Qが「−1」の場合、正極性の保持時間が、負極性の保持時間よりも短くなり、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。よって、フリッカ、または表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
【解決手段】電気光学装置1は、対向電極電位Comを第1の現象(フィールドスルー)の補正電圧分あらかじめシフトした値に設定するとともに、1フレームの期間長における第1および第2フィールドの期間長の割合を、指定値Qの値に応じて調整する駆動方法を行う。これにより、指定値Qが「−1」の場合、正極性の保持時間が、負極性の保持時間よりも短くなり、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。よって、フリッカ、または表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、その駆動方法、および当該電気光学装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置の一例として、液晶表示装置について説明する。
一般的に、画素電極を薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」という)により駆動するアクティブマトリクス型の液晶表示装置では、フリッカや、表示画像の焼き付き等の表示不具合を防止するために、例えば、各画素電極に印加される駆動電圧の極性を、走査線やデータ線ごと、または、画像信号におけるフレームごとに反転させる反転駆動(交流駆動)が採用されていた。
これは、反転駆動によって液晶層へ直流電圧成分が印加されることや、基板間における電荷の偏りを防止し、フリッカ等の表示不具合を解消しようとしたものであったが、単純に反転駆動を行うだけでは、直流電圧成分の印加は完全には解決されず、依然として表示不具合が発生していた。
【0003】
つまり、反転駆動を行ったとしても、液晶層への直流電圧成分の印加や、電荷の偏りが発生しており、これらに対して対策を講ずる必要があった。また、表示不具合の発生源としては、下記の2つの現象が知られていた。
まず、第1の現象は、いわゆるフィールドスルー(プッシュダウン、突き抜けとも呼ばれる)現象であり、TFTのゲート・ドレイン端子間、およびソース・ドレイン端子間の寄生容量に起因して、オンからオフ状態に切換るときに、ドレイン端子と接続された画素電極の電圧が低下してしまう現象である。具体的には、寄生容量および蓄積容量に蓄積された電荷が、TFTのオフのタイミングで、再分配されることによる画素電極の電圧低下現象である。
第2の現象は、液晶層を挟持する素子基板と対向基板との特性差に起因した直流電圧成分である。より詳しくは、画素電極やTFTなどが形成された素子基板と、対向電極が形成された対向基板とにおいて、それぞれの電気的特性が非対称であることによって、電荷の偏りが生じるためである。
【0004】
特許文献1には、上述した2つの現象に着目した液晶表示装置の駆動方法が提案されている。
当該駆動方法では、反転駆動における極性反転の基準となる対向電極電位を、あらかじめ第1の現象(フィールドスルー)および第2の現象(素子基板と対向基板の電気的特性差)による影響を補正するようにシフトさせることを提案している。
詳しくは、初期段階において第1の現象による電圧変動分と、第2の現象による電圧変動分とを、所定の計測条件により計測し、それらを加算した値を一定の補正電圧として、対向電極の設定電位に加味していた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−189460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図27は、第2の現象における補正電圧と駆動電圧との関係を示したグラフである。
しかしながら、発明者等の実験データによれば、第2の現象における補正電圧と駆動電圧との間には相関関係があるため、特許文献1における従来の駆動方法では、フリッカ、または表示画像の焼き付き等の表示不具合が発生してしまうという課題があった。
図27は、発明者等が実験により計測したグラフの一例であり、駆動電圧(横軸)と、補正電圧(縦軸)との相関関係を示している。
ここで、駆動電圧が10Vにおける補正電圧は−0.1Vであるが、5Vにおける補正電圧は−0.05Vとなり、0Vでは補正電圧も0Vとなっている。
つまり、第2の現象において、補正電圧は、駆動電圧の大きさ(振幅)に応じて変化している。また、駆動電圧は、表示階調に応じて変化するため、ピーク電圧が7Vの駆動電圧であった場合、補正電圧は、表示コンテンツにもよるが、表示期間において約−0.07V〜0Vの間で変化する可能性がある。
また、図27のグラフの傾きは、ピーク電圧が異なる駆動電圧にも適応することができる。例えば、15Vピークの駆動電圧の場合、ピーク電圧15Vにおける補正電圧は−0.15V(-0.1×1.5)となる。
【0007】
ここで、従来技術において、第1の現象の補正分−0.01Vと第2の現象の補正分−0.03Vとを加えた−0.04Vを一定の補正電圧として対向電極電位を設定していた場合を考えてみる。
まず、駆動電圧が0Vであった場合、第2の現象の補正電圧は0Vであるにも係らず、−0.04Vの補正がなされているため、第2の現象の補正分−0.03Vが直流電圧成分となって印加されてしまう。
また、駆動電圧が7Vの場合であった場合、第2の現象の補正電圧は−0.07Vであるにも係らず、第2の現象への補正分は−0.03Vであるため、その差分−0.04Vが直流電圧成分となって印加されてしまう。なお、第1の現象については、相殺されたものとしている。
このように、第1の現象および第2の現象に起因する直流電圧成分を一定の補正電圧値によって賄っていた従来の駆動方法では、液晶層へ直流電圧成分が印加されてしまい、フリッカなどの表示不具合が発生してしまうという課題があった。
【0008】
また、従来の駆動方法では、第1の現象および第2の現象による電圧変化分を加算した補正電圧を対向電極電位に加えていたが、第1の現象の補正電圧に対して第2の現象の補正電圧がある程度の大きさを持つ場合には、対向電極電位が正負のいずれかに大きくシフトしてしまい、表示不具合の発生要因の一つとなっていた。
詳しくは、第2の現象に対する補正電圧が大きいと、駆動電圧の正負における振幅差が大きくなり、そのために、フリッカなどの表示不具合が発生してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0010】
《適用例》
複数の走査線と複数のデータ線と、走査線とデータ線との交点に設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、画素電極と対向する対向電極と、画素電極と対向電極との間に挟持された電気光学層とを、備えた電気光学装置の駆動方法であって、対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、画素電極に対して、データ線を介して正極性の電圧と負極性の電圧とが交互に現れるデータ信号を供給し、対向電極電位は、スイッチングトランジスタの寄生容量に起因するフリッカを低減するように設定され、第1の期間と第2の期間とからなる所定の期間において、第1の期間では、正極性または負極性のうち、いずれか一方の極性の電圧である第1電圧が画素電極に供給され、第2の期間では、第1電圧とは異なる極性の第2電圧が画素電極に供給され、所定の期間における第1の期間の長さと、第2の期間の長さとの割合を可変としたことを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【0011】
この駆動方法によれば、まず、対向電極電位がスイッチングトランジスタの寄生容量に起因するフリッカを低減するようにあらかじめシフトして設定されているため、第1の現象についての補正が盛り込まれている。
発明者等の実験データからの知見によれば、第1の現象についても駆動電圧との相関性は認められるものの、第2の現象と比べてその影響度合いは小さいことが解っている。また、第2の現象の場合、図27に示したように、駆動電圧が0Vのときは補正電圧も0Vとなるが、第1の現象の場合においては0Vとならず、一定の補正電圧が必要となる。
このため、第1の現象の補正方法としては、駆動電圧に係らず一定の補正電圧を掛けることが好ましい。
【0012】
さらに、1フレームの期間長における第1および第2フィールドの期間長の割合を可変としたことにより、1フレーム内で印加される負極性および正極性の割合を調整することができる。
つまり、第2の現象に対する補正を、その特性差による直流電圧成分の方向および大きさに応じて、第1および第2フィールドの期間長の割合を調整することにより行うことができる。
さらに、あらかじめ設定された対向電極電位のシフト量は、第1の現象による直流電圧成分の印加に対する補正電圧分のみであるため、液晶層への直流電圧成分の印加を抑制することができる。
従って、従来の駆動方法と比べて、フリッカ、または表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる電気光学装置の駆動方法を提供することができる。
【0013】
また、所定の期間は、1フレームに相当し、1フレームは、第1フィールドと、第2フィールドとから構成され、第1フィールドは第1の期間に相当し、第2フィールドは第2の期間に相当することが好ましい。
また、第1フィールド、または第2フィールドのいずれかにおいて、所定の階調を表す第3電圧をデータ信号としてデータ線に所定の期間供給することにより、1フレームにおける第1および第2フィールドの期間長の割合を調整することが好ましい。
また、第3電圧は、黒表示に相当する階調の電圧であることが好ましい。
【0014】
また、走査線がN本設けられ、1番目の走査線乃至M番目の走査線までを第1走査線群とし、M+1番目の走査線乃至N番目の走査線までを第2走査線群としたとき、1フレームに渡って、第1走査線群におけるいずれか1本の走査線と第2走査線群におけるいずれか1本とが交互に選択され、第1フィールドでは、第1走査線群に対応した画素電極には第1電圧が印加され、第2走査線群に対応した画素電極には第2電圧が印加され、第2フィールドでは、第1走査線群に対応した画素電極には第2電圧が印加され、第2走査線群に対応した画素電極には第1電圧が印加されるように駆動されることが好ましい。
また、所定の期間は、連続した2つ以上のフレームからなる複数フレームに相当し、所定の期間における、正極性の電圧が印加される期間長と、負極性の電圧が印加される期間長との割合を可変とすることが好ましい。
【0015】
複数の走査線と複数のデータ線と、走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、画素電極と対向する対向電極と、画素電極と対向電極との間に挟持された電気光学層とを、備えた電気光学装置であって、対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、画素電極に対して、データ線を介して正極性の電圧と負極性の電圧とが交互に現れるデータ信号を供給し、対向電極には、スイッチングトランジスタの寄生容量に起因するフリッカを低減するように設定された対向電極電位を供給し、第1の期間と第2の期間とからなる所定の期間において、第1の期間では、正極性または負極性のうち、いずれか一方の極性の電圧である第1電圧を画素電極に供給し、第2の期間では、第1電圧とは異なる極性の第2電圧を画素電極に供給し、所定の期間における第1の期間の長さと、第2の期間の長さとの割合を調整する制御回路を、さらに備えることを特徴とする電気光学装置。
【0016】
上記記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0018】
(実施形態1)
《電気装置の概略構成》
図1は、本実施形態に係る電気光学装置の概略構成図である。
まず、本発明の実施形態1に係る電気光学装置1の概要構成について、図1を用いて説明する。
【0019】
電気光学装置1は、表示パネル10、処理回路50、電圧生成回路60、操作子70などから構成されている。
表示パネル10は、透過式のアクティブマトリクス型の液晶パネルである。なお、詳しい構成は後述する。
処理回路50は、制御回路52および表示データ処理回路56を含み、データ信号Vidの出力に合わせて表示パネル10の動作等を制御する回路モジュールであり、表示パネル10とは、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)基板によって接続されている。
【0020】
制御回路52には、タイミング信号発生回路53が内蔵されており、また、タイミング信号発生回路53には、クロック発生回路54が附属している。
クロック発生回路54は、各部の制御動作の基準となるクロック信号を生成してタイミング信号発生回路53に出力する。
タイミング信号発生回路53は、外部装置(図示省略)から供給される垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびドットクロック信号Dclkに同期して表示パネル10を制御するための各種の制御信号を生成する。
制御回路52は、タイミング信号発生回路53、および後述する表示データ処理回路56、電圧生成回路60などを制御する。
電圧生成回路60は、DC/DCコンバータなどを含んで構成され、外部装置から供給される直流電力から、各部で使用する複数の直流電圧を生成する。また、電圧生成回路60は、表示パネル10の対向電極に印加される対向電極電位Comを生成し、表示パネル10に供給する。
【0021】
操作子70は、例えばユーザ等により操作され、その操作に応じた指定値Qを例えば「+10」から「−10」までの範囲で出力するものである。詳しくは、例えば、電子機器などに搭載された場合には、その操作パネルや、リモコンなどの操作部によって、操作可能に設けられている。なお、この指定値Qにより、後述するようにスタートパルスDybの出力タイミングを前後に移動させるようになっている。
表示データ処理回路56には、フレームメモリ57およびDAコンバータ58が附属している。
表示データ処理回路56は、外部装置から供給される表示データVideoを、制御回路52による制御に従ってフレームメモリ57に記憶した後、表示パネル10の駆動に同期して読み出すとともに、DAコンバータ58によってアナログのデータ信号Vid(駆動電圧)に変換する。
なお、表示データVideoは、表示パネル10における画素の階調を規定しており、垂直同期信号Vsの供給タイミングを契機として1フレーム分供給されるとともに、水平同期信号Hsの供給タイミングを契機として1行分供給される。
【0022】
ここで、本実施形態における垂直同期信号Vsは、周波数60Hz(周期16.7ミリ秒)とするが、これに限定するものではない。また、ドットクロック信号Dclkについては、表示データVideoのうち、1画素分が供給される期間を規定するものとする。
つまり、制御回路52は、表示データVideoの供給に同期して各部を制御している。
【0023】
《表示パネルの構成》
図2は、表示パネル10の構成を示す図である。図3は、画素の等価回路図である。
次に、表示パネル10の構成について説明する。
図2に示されるように、表示パネル10は、表示領域100の周辺に走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140を内蔵した構成となっている。
表示領域100には、480行の走査線112が行(X)方向に延在するように設けられ、また、640列のデータ線114が列(Y)方向に延在するように、かつ、各走査線112と互いに電気的に絶縁を保つように設けられている。
また、480行の走査線112と640列のデータ線114との交差に対応して、複数の画素110が形成されている。換言すれば、複数の画素110が、縦480行×横640列のマトリクス状に配列されている。
なお、本実施形態では、説明を容易にするために、解像度をVGA(Video Graphics Array)としているが、これに限定するものではなく、例えば、XGA(eXtended Graphics Array)や、SXGA(Super-XGA)などの解像度であっても良い。
【0024】
図3は、i行及びこれと1行下で隣接する(i+1)行と、j列及びこれと1列右で隣接する(j+1)列との交差に対応する2×2の計4画素分の構成を示している。
なお、i、(i+1)は、画素110が配列する行を示しており、ここでは、1以上480以下の整数となる。また、j、(j+1)は、画素110が配列する列を示しており、ここでは、1以上640以下の整数となる。
複数の画素110の各々は、nチャネル型のTFT116と液晶容量120とを含んで構成されている。
【0025】
ここで、各画素110については互いに同一構成なので、i行j列に位置する画素110で代表して説明する。
当該i行j列の画素110におけるTFT116のゲート電極はi行目の走査線112に接続される一方、そのソース電極はj列目のデータ線114に接続され、そのドレイン電極は液晶容量120の一端である画素電極118に接続されている。
また、液晶容量120の他端は、対向電極108に接続されている。この対向電極108は、全ての画素110に渡って共通であって、時間的に一定の対向電極電位Comが印加されている。なお、詳しくは後述するが、対向電極電位Comは、前述した第1の現象における直流電圧成分を補償するための補正電圧分、基準値からシフトされた値となっている。
【0026】
表示パネル10は、特に図示しないが、素子基板と対向基板との一対の基板が一定の間隙を保って貼り合わせられるとともに、この間隙に液晶が封止された構成となっている。このうち、素子基板には、走査線112や、データ線114、TFT116および画素電極118が走査線駆動回路130やデータ線駆動回路140とともに形成される一方、対向基板に対向電極108が形成されて、これらの電極形成面が互いに対向するように一定の間隙を保って貼り合わせられている。
このため、液晶容量120は、画素電極118と対向電極108とが液晶105を挟持することによって構成されている。
なお、本実施形態では、液晶容量120において保持される電圧実効値がゼロに近ければ、液晶容量を通過する光の透過率が最大となって白色表示になる一方、電圧実効値が大きくなるにつれて透過する光量が減少して、ついには透過率が最小の黒色表示になるノーマリーホワイトモードに設定されているものとする。
【0027】
この構成において、走査線112に選択電圧を印加し、TFT116をオン(導通)させるとともに、画素電極118に、データ線114およびオン状態のTFT116を介して、階調(明るさ)に応じた電圧のデータ信号を供給すると、選択電圧を印加した走査線112とデータ信号を供給したデータ線114との交差に対応する液晶容量120に、階調に応じた電圧実効値を保持させることができる。
なお、走査線112が非選択電圧になると、TFT116がオフ(非導通)状態となるが、このときのオフ抵抗が理想的に無限大とはならないので、液晶容量120に蓄積された電荷が少なからずリークする。このオフリークの影響を少なくするために、蓄積容量109が画素毎に形成されている。この蓄積容量109の一端は、画素電極118(TFT116のドレイン)に接続される一方、その他端は、全画素に渡って容量線107に共通接続されている。この容量線107は、時間的に一定の電位、例えば対向電極108と同じ対向電極電圧Comに保たれている。
【0028】
図2に戻る。
走査線駆動回路130は、走査信号G1、G2、G3、…、G480を、それぞれ1、2、3、…、480行目の走査線112に供給するものである。走査線駆動回路130は、選択した走査線への走査信号を電圧Vddに相当するHレベルとし、それ以外の走査線への走査信号を非選択電圧(接地電位Gnd)に相当するLレベルとする。
データ線駆動回路140は、サンプリング信号出力回路142と、各データ線114にそれぞれ対応して設けられたnチャネル型のTFT146とによって構成される。データ線駆動回路140は、詳細は後述するが、選択された走査線における各画素に当該画素の階調を規定するデータ信号(駆動電圧)を供給する。
【0029】
《駆動方法1:走査線系》
まず、以下説明する駆動方法を創出した経緯について図27を用いて説明する。
第1の現象は、前述したとおり、フィールドスルー現象による電圧低下であり、これは電圧低下分に相当する直流電圧を補償することにより補正できる。
これに対して第2の現象は、画素電極基板と対向電極基板の電気的な特性差により生じる電荷の偏りである。これを補償するためには、電荷の偏りを打ち消すだけの余分な直流電圧の印加が必要となる。
さらに、前述した通り、発明者等は、第2の現象における補正電圧は、図27に示されるように、駆動電圧との相関性があることを見出した。
発明者等は、これらの実験データからの知見に基づき熟慮した結果、第1の現象に対する補正と、第2の現象に対する補正とを切り分けて補正するのが効果的であることに想到した。
つまり、第1の現象の補正方法としては駆動電圧に係らず一定の補正電圧を掛けるとともに、第2の現象に対する補正方法としては、その特性差による直流電圧成分の方向および大きさ応じて、正極性および負極性が保持される期間長の割合を調整する方法である。
以下説明する各実施形態の駆動方法は、発明者らが想到内容を具体的に実現するために熟慮および創意工夫の上創出したものである。
【0030】
図4は、指定値が「0」のときの走査信号系のタイミングチャートである。図5は指定値が「−1」のときの走査信号系のタイミングチャート、図6は指定値が「+1」のときの走査信号系のタイミングチャートである。
ここでは、本実施形態の電気光学装置における駆動方法について図4〜6を中心に、適宜図1〜3を交えて具体的に説明する。
また、本実施形態では、複数の走査線を第1走査線群と第2走査線群に分けて、1つのフレームにおいて、第1走査線群におけるいずれか1本の走査線と、第2走査線群におけるいずれか1本とを交互に選択するとともに、1つのフレームにおいて各走査線を2回ずつ選択する、いわゆる倍速領域走査反転駆動を用いている。
【0031】
まず、走査線の駆動方法について説明する。
図4は、走査線駆動回路130により出力される走査信号G1〜G480を、スタートパルスDya、Dybとクロック信号Clyとの関係において示すタイミングチャートである。
図4において、フレームとは、1枚の画像を表示パネル10に表示させるのに要する期間をいう。また、1フレームの期間のうち、スタートパルスDyaが出力されてからスタートパルスDybが出力されるまでの期間を第1フィールドとし、スタートパルスDybが出力されてから次のスタートパルスDyaが出力されるまでの期間を第2フィールドとしている。また、1つの走査線112は、1フレームの期間において、フィールドごとに1回ずつ、つまり、2回選択されている。
本実施形態における垂直同期信号Vsは、上述したように周波数60Hzであるので、1フレームの期間についても16.7ミリ秒で固定である。制御回路52(図1)は、デューティ比が50%のクロック信号Clyを、1フレームの期間に渡って走査線数に等しい480周期分出力する。なお、クロック信号Clyの1周期分の期間をHと表記している。
【0032】
また、制御回路52は、クロック信号Clyの1周期分のパルス幅を有するスタートパルスDya、Dybを、それぞれクロック信号ClyがHレベルの立ち上がり時において、それぞれ次のように出力する。
すなわち、制御回路52は、スタートパルスDyaを1フレームの期間の最初(第1フィールドの最初)に出力する一方、スタートパルスDybを、操作子70による指定値Qが「0」であれば、スタートパルスDybを出力してからクロック信号Clyの240周期分を出力した(すなわち、1フレームの半分期間が経過した)タイミングTで出力する。
また、指定値Qが負の値であれば、タイミングTよりも「−Q×H」分だけ早く出力し、指定値Qが正の値であれば、タイミングTよりも「Q×H」分だけ遅れて出力する。
【0033】
よって、図5に示されるように、例えば、指定値Qが「−1」であった場合、スタートパルスDybは、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけ先行したタイミングT(-1)で出力される。
また、図6に示されるように、指定値Qが「+1」であった場合、スタートパルスDybは、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけ遅延したタイミングT(+1)で出力される。
ここで、スタートパルスDya、Dybは交互に出力される一方、スタートパルスDyaの出力タイミングは、指定値Qにかかわらず変更されない。このため、1フレーム(16.7ミリ秒)毎に出力されるスタートパルスDyaを特定すると、必然的に第2フィールドの開始を規定するスタートパルスDybも特定することができる。このため、図1や、図4〜6においては、スタートパルスDya、Dybの両者を区別することなく、スタートパルスDyとして表記している。
【0034】
走査線駆動回路130は、このようなスタートパルスDya、Dybおよびクロック信号Clyから、次のような走査信号G1〜G480を出力する。
すなわち、走査線駆動回路130は、スタートパルスDyaが供給されると、クロック信号ClyがLレベルに変化するごとに走査信号G1〜G480を順次Hレベルとする一方、スタートパルスDybが供給されると、クロック信号ClyがHレベルに変化するごとに走査信号G1〜G480を順次Hレベルとする。
スタートパルスDyaは、1フレームの期間(第1フィールド)の最初に供給されるので、当該スタートパルスDyaの供給を契機とする走査線の選択は指定値Qによって変化しない。
また、当該スタートパルスDyaの供給を契機とする走査線の選択は、クロック信号ClyがLレベルである期間に実行されるので、第1および第2フィールドに渡って1行目の走査線を開始点として画面下方向に向って2、3、4、…、480行目の順番でクロック信号Clyの半周期の期間をおいて実行されることになる。
【0035】
一方、スタートパルスDybは、第2フィールドの最初に供給されるので、当該スタートパルスDybを契機とする走査線の選択は、指定値Qによって全体的に前後することになる。すなわち、当該スタートパルスDybの供給を契機とする走査線の選択は、クロック信号ClyがHレベルである期間に実行されるので、あるフレームの第2フィールドから次フレームの第1フィールドに渡って1行目の走査線を開始点として画面下方向に向って2、3、4、…、480行目の順番で、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択の合間にて実行されることになる。
つまり、あるフレームの第2フィールドにおける1〜240行目の選択は、例えば指定値Qが「−1」であれば、図5に示されるようにタイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけで全体的に先行し、また、指定値Qが「+1」であれば、図6に示されるようにタイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけで全体的に遅延した関係となる。
【0036】
《駆動方法2:データ線系》
図7は、データ信号系の第1フィールドにおけるタイミングチャートである。図8は、データ信号系の第2フィールドにおけるタイミングチャートである。
続いて、データ線の駆動方法について、図7,8を中心に適宜図1〜3を交えて説明する。
データ線駆動回路140のサンプリング信号出力回路142は、制御回路52による制御信号Ctrl-xに従って、図7または図8に示されるように、いずれかの走査線112が選択されて当該走査線に供給される走査信号がHレベルとなる期間に渡って、順次排他的にHレベルとなるサンプリング信号S1,S2,S3…S640を、データ線114の各々に出力する。なお、制御信号Ctrl-xとは、実際にはスタートパルスやクロック信号であるが、説明を省略している。
【0037】
なお、走査信号がHレベルとなる期間Ha,Hbは、実際には図7または図8に示されるように、クロック信号Clyの半分周期の期間よりも若干狭められている。
また、図7,8は、指定値Qが「0」である場合を示している。
この場合、図7に示されるように、第1フィールドにおいては走査信号G(i+240)がHレベルとなった後に走査信号GiがHレベルとなる。
また、図8に示されるように、第2フィールドにおいては走査信号GiがHレベルとなった後に走査信号G(i+240)がHレベルとなる。
【0038】
また、図1の表示データ処理回路56は、選択された走査線112における画素1行分の表示データVideoを、サンプリング信号出力回路142によるサンプリング信号S1〜S640の出力に合わせて次のような極性のデータ信号Vidに変換する。
すなわち、表示データ処理回路56は、クロック信号ClyがLレベルのときに選択された画素行における画素のデータ信号Vidを正極性(+)に変換し、クロック信号ClyがHレベルのときに選択された画素行における画素のデータ信号Vidを負極性(−)に変換する。換言すれば、表示データ処理回路56は、スタートパルスDyaの供給を契機として選択された画素行における画素のデータ信号Vidを正極性(+)に変換し、スタートパルスDybの供給を契機として選択された画素行における画素のデータ信号Vidを負極性(−)に変換する。
【0039】
図7,8に示すように、正極性(+)および負極性(−)とは、基準電圧Vcから高位側を正極性(+)とし、低位側を負極性(−)としている。また、ここでは、基準電圧Vcを0Vに設定しているが、これに限定するものではない。
ここで、本発明の駆動方法における特徴点の一つとして、対向電極電位Comが基準電圧Vcよりも負極性(−)側にシフトして設定されている。
具体的には、対向電極電位Comは、例えば、約−0.1Vから−0.2Vの範囲内の電圧値に設定されている。これは、前述した第1の現象(フィールドスルー)による電圧変化分が約−0.1Vから−0.2Vであるため、これを補正電圧として、対向電極電位Comの設定値を基準電圧Vcからシフトさせているからである。
なお、ここでは、TFT116がnチャネル型であるため、負極性(−)側への補正となっているが、これに限定するものではなく、第1の現象による影響を低減できるように対向電極電位Comをシフトすれば良い。
【0040】
これは、前述したように発明者等の実験データからの知見に基づくものである。
また、第1の現象における補正電圧は、個別の表示パネルごとに計測して求めることが好ましい。具体的には、同じ階調に相当する正・負極性の駆動電圧を交互に印加したときに、フリッカが充分小さくなる対向電極電位Comを求め、その値と、基準電圧Vcとの差から補正電圧を求める。また、このときの駆動電圧は、フリッカを視認しやすい中間階調に相当する電圧が好ましい。
このようにして補正電圧は求められ、制御回路52(図1)、または電圧生成回路60に設定される。そして、電圧生成回路60は、補正電圧分シフトした対向電極電位Comを生成し、表示パネル10の対向電極に供給する。
【0041】
《駆動方法3:全般》
続いて、駆動方法の全般について説明する。
なお、ここでは、指定値Qが「0」である場合の動作について説明した上で、指定値Qを操作子70により「0」以外の値に設定した場合の動作について説明する。
まず、図1において、制御回路52は、外部装置から供給される表示データVideoを、フレームメモリ57に記憶させた後、表示パネル10においてある画素行の走査線が選択されるとき、当該画素行の表示データを記憶速度の倍の速度で読み出させる。そして、DAコンバータ58によりアナログのデータ信号Vidに変換するとともに、表示データの読み出しに合わせて、サンプリング信号S1〜S640が順番にHレベルとなるように、制御信号Ctrl-xを介してサンプリング信号出力回路142を制御する。
【0042】
図4に示すように、指定値Qが「0」であれば、第1フィールドにおいて、走査線が241、1、242、2、243、3、…、480、240行目という順番で選択される。
このため、制御回路52は、はじめに241行目の走査線が選択されるように、走査線駆動回路130を制御する一方、表示データ処理回路56に対し、フレームメモリ57に記憶された241行目に相当する表示データVideoを倍速で読み出させる。
そして、DAコンバータ58により負極性のデータ信号Vidを生成させるとともに、データ信号Vidの読み出しに合わせて、図7に示すように、サンプリング信号S1〜S640が順番に排他的にHレベルとなるようにサンプリング信号出力回路142を制御する。
サンプリング信号S1〜S640が順番にHレベルになると、TFT116が順番にオンして画像信号線171に供給されたデータ信号Vidが1〜640列目のデータ線にサンプリングされる。
【0043】
一方、走査線が選択されると、走査信号G241がHレベルとなるので、241行目に位置する画素110のTFTがすべてオンする。
このため、データ線にサンプリングされたデータ信号Vidの負極性電圧がそのまま画素電極118に印加される。これにより、241行目であって1、2、3、4、…、639、640列の画素における液晶容量120には、表示データVideoで指定された階調に応じた負極性電圧が書き込まれて、保持される。
以下、第1フィールドにおいては、同様な電圧書込の動作が、1、242、2、243、3、…、480、240行目という順番で実行される。これにより、1〜240行目の画素に対しては階調に応じた正極性電圧が書き込まれ、241〜480行目の画素に対しては階調に応じた負極性電圧が書き込まれて、それぞれ保持される。
【0044】
また、第2フィールドにおいては、走査線が1、241、2、242、3、243、4、244、…、240、480行目という順番で選択されるともに、同一行における書込極性が反転される。
このため、1〜240行目の画素に対しては階調に応じた負極性電圧が書き込まれ、241〜480行目の画素に対しては階調に応じた正極性電圧が書き込まれて、それぞれ保持される。
【0045】
図7には、第1フィールドにおける(i+240)行目の走査線とi行目の走査線とが選択される期間におけるデータ信号Vidの電圧波形の一例が示されている。
図7において、電圧Vb(+)、Vb(-)は、それぞれ最低階調の黒色に相当する正極性、負極性の電圧であり、基準電圧Vcを中心に対称の関係にある。
表示データVideoで指定される階調値の十進値が「0」のときに最低階調の黒色を指定し、以後当該十進値が大きくなるにつれて明るい階調を指定する場合、本実施形態はノーマリーホワイトモードであるから、データ信号Vidの電圧は、正極性に変換する場合には、階調値が大きくなるにつれて電圧Vb(+)から低位側に振られた電圧となり、負極性に変換する場合には電圧Vb(-)から高位側に振られた電圧となる。
【0046】
第1フィールドでは、i行目よりも先に(i+240)行目の走査線が選択されるので、走査信号G(i+240)がHレベルになる期間のうち、例えばサンプリング信号S1がHレベルになる期間に、データ信号Vidは、i行1列の画素の階調に応じた負極性電圧となり、以降、サンプリング信号の変化に合わせて、2、3、4、…、640列目の画素の階調に応じた負極性電圧に変化する。
続いて選択されるi行目では、正極性書込が指定されるので、走査信号GiがHレベルになる期間のうち、例えばサンプリング信号S1がHレベルになる期間に、データ信号Vidは、i行1列の画素の階調に応じた正極性電圧となり、以降、サンプリング信号の変化に合わせて、2、3、4、…、640列の画素の階調に応じた正極性電圧に変化する。
なお、第2フィールドでは、i行目の後に(i+240)行目の走査線が選択されるので、走査信号GiがHレベルになるとともに、書込極性が反転するため、データ信号Vidの電圧波形は図8に示される通りとなる。
【0047】
なお、図7および図8においてデータ信号Vidの電圧を示す縦軸は、見易くするため他の信号における縦軸よりも拡大している。また、サンプリング信号S640がLレベルに変化してからサンプリング信号S1がHレベルに変化するまでの期間に渡って黒色に相当する電圧となっているが、その理由は、タイミングずれなどの理由により誤って画素に書き込まれても、表示に寄与させないためである。
【0048】
図9は、指定値Qが「0」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。また、最上段の走査線への書き込み、つまり正極性保持期間の開始時刻は、正確には、スタートパルスDyaが供給された後、クロック信号Clyの半周期遅延したタイミングとなるが、図9では、簡略化してスタートパルスDyaに合わせている。以降説明する同種の図面においても同様である。
図9に示されるように、本実施形態では、第1フィールドにおいて241、242、243、…、480行目の画素では負極性の書き込みがなされ、1、2、3、…、240行目の画素では正極性の書き込みがなされて、次の書き込みまで保持される。
一方、第2フィールドにおいて1、2、3、…、240行目の画素では負極性書き込みがなされ、241、242、243、…、480行目の画素では正極性の書き込みがなされて、同様に次の書き込みまで保持される。
つまり、各フィールドにおいて、正極性を書き込む走査線(A)と、負極性を書き込む走査線(B)とが2本選択されているとも捉えることができる。
このように、指定値Qが「0」であれば、第1および第2フィールドの期間は、クロック信号Clyの240周期分であるから、各画素において液晶容量120に正極性電圧が保持される期間と負極性電圧が保持される期間とはほぼ半分ずつとなる。
【0049】
次に、指定値Qが例えば「−1」である場合について説明する。
図5に示されるように、指定値Qが例えば「−1」であると、スタートパルスDybがタイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけ時間的に前方のタイミングで出力される。このため、指定値Qが「−1」であれば、第1フィールドの期間はクロック信号Clyの239周期分となるのに対し、第2フィールドの期間はクロック信号Clyの241周期分となる。
また、指定値Qが「−1」の場合、第1フィールドにおいて走査線が242、1、243、2、244、3、…、480、239行目という順番で選択され、第2フィールドにおいて走査線が1、240、2、241、3、242、…、241、480目という順番で選択される。
【0050】
図10は、指定値Qが「−1」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図10に示されるように、指定値Qが「−1」である場合、スタートパルスDybの出力タイミングが早まるので、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも長くなる。
つまり、指定値Qが負の値であれば、その絶対値が大きくなるにつれて、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも長くなる。
このため、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
【0051】
次に、指定値Qが例えば「+1」である場合について説明する。
図6に示されるように、指定値Qが例えば「+1」である場合、スタートパルスDybがタイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけ時間的に後方のタイミングで出力される。このため、指定値Qが「+1」であれば、第1フィールドの期間はクロック信号Clyの241周期分となるのに対し、第2フィールドの期間はクロック信号Clyの239周期分となる。
また、指定値Qが「+1」であれば、第1フィールドにおいて走査線が240、1、241、2、242、3、…、480行目という順番で実行され、第2フィールドにおいて走査線が1、242、2、243、3、244、…、239、480目という順番で実行される。
【0052】
図11は、指定値Qが「+1」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図11に示されるように、指定値Qが「+1」である場合、スタートパルスDybの出力タイミングが遅くなるので、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも短くなる。
つまり、指定値Qが正の値であれば、その絶対値が大きくなるにつれて、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも短くなる。
このため、液晶容量120に印加される負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を下回ることになる。
【0053】
図12は、本実施形態の駆動方法による実験データを示すグラフである。
図12において、横軸は経過時間(t)を示し、縦軸は第2の現象(特性差)の補正電圧(V)を示している。
また、グラフaは本実施形態の駆動方法を用いた製品における第2の補正電圧の時間依存性を表し、グラフbは比較のために従来の駆動方法を用いた製品における第2の補正電圧の時間依存性を表している。いずれの製品においても、対向電極電位Comは、第1の現象に対する補正電圧だけシフトした値に設定されている。
また、グラフaの製品については、計測データに基づき指定値Qによる補正がなされている。具体的には、指定値Qがプラスの値に設定されており、1フレーム内における正極性電圧の印加時間が55%、負極性電圧の印加時間が45%の割合になっている。
【0054】
グラフbに示すように、比較用の製品では、表示開始時点では第2の補正電圧はゼロとなっているが、その後、時間経過に伴い、第2の補正電圧が大きくなっている。つまり、時間経過に伴って、液晶層へ直流電圧成分が印加されてしまっている。
これに対して、本実施形態の駆動方法を用いた製品では、グラフaに示すように、表示開始から時間が経過しても第2の補正電圧は略ゼロのままである。
つまり、対向電極電位Comを第1の現象の補正電圧分あらかじめシフトするとともに、第2の現象については指定値Qをマイナス方向にシフトさせることにより、時間経過に拘らず、第1および第2の現象による液晶層への直流電圧成分の印加が抑制されていることが解る。
【0055】
上述した通り、本実施形態に係る電気光学装置1によれば、以下の効果を得ることができる。
上述した駆動方法によれば、対向電極電位Comが第1の現象に対する補正電圧分あらかじめシフトされた値に設定されているため、第1の現象についての補正が盛り込まれている。
さらに、指定値Qの値に応じて、スタートパルスDybの出力タイミングを前後させることにより、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧との電圧実効値の比率を調整することができる。換言すれば、1フレームの期間長における第1および第2フィールドの期間長の割合を可変としたことにより、1フレーム内で印加される負極性電圧の実効値と正極性電圧の実効値との割合を調整することができる。
よって、第1の現象に対する補正電圧と第2の現象に対する補正電圧とを加算した補正電圧を用いていた従来の駆動方法と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる電気光学装置の駆動方法を提供することができる。
【0056】
その上、あらかじめ設定された対向電極電位のシフト量は、第1の現象に対する補正電圧分のみであるため、第1の現象に対する補正電圧と第2の現象に対する補正電圧とを加算した補正電圧を用いていた従来の駆動方法に比べて対向電極電位のシフト量が少なくなり、液晶層への直流電圧成分の印加を抑制することができる。
従って、従来の駆動方法と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
また、駆動方法として、いわゆる倍速領域走査反転駆動を採用しているため、ライン反転駆動などの従来の駆動方法に比べて、ディスクリネーションの発生がなく、かつ、フリッカや、クロストークなどを低減することができる。
【0057】
また、これらの駆動方法は、表示データ処理回路56や、制御回路52を備えた処理回路50が、操作子70からの指定値Qの値に応じて、内蔵する各部や、電圧生成回路60を制御することにより実行される。そして、処理回路50、および電圧生成回路60によって生成された駆動信号によって、走査線駆動回路130や、データ線駆動回路140を備えた表示パネル10が表示駆動される。
ここで、電気光学装置1は、表示パネル10、処理回路50、電圧生成回路60、操作子70を含んで構成されている。
従って、従来の電気光学装置と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる電気光学装置を提供することができる。
【0058】
また、従来の電気光学装置では、初期段階に設定された補正電圧が、時間経過に拘らず、そのまま使用されていた。換言すれば、一度設定された補正電圧を使用段階で修正することは困難であった。
これに対して、電気光学装置1によれば、操作子70による指定値Qの設定は、例えば、電子機器に組み込まれた後であっても、当該電子機器の操作パネルや、リモコンなどの操作部で行うことができる。
従って、経時変化に伴うフリッカなどの表示不具合が発生した場合であっても、その段階において補正値を再設定することができる。
【0059】
(実施形態2)
図13は、実施形態2の駆動方法における走査信号系のタイミングチャートである。図14は、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態2における電気光学装置は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置と同じ構成であり、駆動方法のみが実施形態1と異なる。
詳しくは、実施形態2では、第1および第2フィールドのそれぞれにおいて、1、2、3、4、…、479、480行目という走査線の順番通りに走査線を選択し、かつ、各フィールドにおけるデータ信号の極性を反転させる、いわゆる面反転倍速駆動を採用している。
【0060】
まず、走査線の駆動方法について説明する。
図13は、指定値Qが「0」のときの走査信号系のタイミングチャートであり、実施形態1と同様に、1フレームは、第1および第2フィールドから構成されている。
本実施形態における駆動方式においても、実施形態1と同様に外部装置から供給される表示データVideoをフレームメモリ57に記憶させた後、ある画素行の走査線が選択されるとき、当該画素行の表示データを記憶速度の倍の速度で読み出す。
そして、第1および第2フィールドにおいて、当該読み出された表示データを走査線1〜480行目の順番で2倍の速度で書き込む。
【0061】
また、最上段の走査線に供給される走査信号G1は、スタートパルスDyaが供給された後、クロック信号Clyの半周期遅延したタイミングで出力される。
そして、走査信号G1に続いて、順次走査信号G2〜G480が、クロック信号Clyの論理レベルが変化する毎にクロック信号の半周期分の期間において順次Hレベルとなる。
よって、図13に示されるように、第1フィールドではスタートパルスDyaの供給を契機として1〜480行目の走査線が選択され、第2フィールドではスタートパルスDybの供給を契機として1〜480行目の走査線が選択される。また、スタートパルスDybの立ち上がりがタイミングTと一致している。
【0062】
ここで、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
また、データ信号の極性反転については、交流化信号FRによって規定されている。交流化信号FRは、スタートパルスDyaとスタートパルスDybとに同期して信号レベルが変化している。換言すれば、第1フィールドではHレベル、第2フィールドではLレベルという周期を持つ矩形波である。
データ信号は、交流化信号FRのH/Lレベルに対応して極性反転される。具体的には、第1フィールドにおいては正極性の電圧に変換され、第2フィールドにおいては負極性の電圧に変換され、1フレーム内において面反転駆動がなされている。
【0063】
また、第1フィールドにおいて480行目の走査線を選択してから、次の第2フィールドにおいて1行目の走査線を選択するまでの帰線期間Fb1が設けられている。同様に、第2フィールドにおいて480行目の走査線を選択してから、次のフレームの第1フィールドにおいて1行目の走査線を選択するまでの帰線期間Fb2が設けられている。
【0064】
図14は、指定値Qが「0」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図14に示されるように、第1フィールドにおいて1〜480行目の画素では正極性の書き込みがなされて、次の書き込みまで保持される。
一方、第2フィールドにおいて1〜480行目の画素では負極性の書き込みがなされて、同様に次の書き込みまで保持される。
このように、指定値Qが「0」であれば、第1および第2フィールドの期間は、クロック信号Clyの240周期分であるから、各画素において液晶容量120に正極性電圧が保持される期間と負極性電圧が保持される期間とはほぼ半分ずつとなる。
【0065】
図15は、指定値Qがマイナスの場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
次に、指定値Qがマイナスである場合について説明する。
図15に示されるように、指定値Qがマイナスである場合、スタートパルスDybの出力タイミングがタイミングTよりも早まるので、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも長くなる。
つまり、指定値Qが負の値であれば、その絶対値が大きくなるにつれて、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも長くなる。このため、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
なお、スタートパルスDybをタイミングTよりも早める場合において、その限界は、図15に示されるように、帰線期間Fb1がゼロとなるまでである。
【0066】
図16は、指定値Qがプラスの場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
次に、指定値Qがプラスである場合について説明する。
図16に示されるように、指定値Qがプラスである場合、スタートパルスDybの出力タイミングがタイミングTよりも遅くなるので、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも短くなる。
つまり、指定値Qが正の値であれば、その絶対値が大きくなるにつれて、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも短くなる。このため、正極性の電圧実効値が負極性の電圧実効値を上回ることになる。
なお、スタートパルスDybをタイミングTよりも遅延させる場合において、その限界は、図16に示されるように、帰線期間Fb2がゼロとなるまでである。
【0067】
上述した通り、本実施形態によれば、実施形態1における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本実施形態の駆動方法としては、面反転倍速駆動を採用しているため、ライン反転駆動などの従来の駆動方法に比べて、ディスクリネーションの発生を抑制することができる。
また、面反転倍速駆動を行う場合においても、対向電極電位Comを第1の現象に対する補正電圧分あらかじめシフトされた値に設定するとともに、1フレームの期間長における第1および第2フィールドの期間長の割合を可変とした駆動方法を適用することができる。
従って、従来の駆動方法と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
【0068】
(実施形態3)
図17は、実施形態3の駆動方法における各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。図18は、タイミングT2における画面態様を示す図である。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態3における電気光学装置は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置と同じ構成であり、駆動方法が実施形態1と異なる。
詳しくは、実施形態3では、実施形態1と同様にいわゆる倍速領域走査反転駆動を行うが、指定値Qの値に応じて、第1または第2フィールドのいずれかにおいて、所定の階調を書き込む3本目の走査線を選択する。
【0069】
また、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
また、液晶モードは、液晶容量120において保持される電圧実効値がゼロに近ければ、液晶容量を通過する光の透過率が最小となって黒色表示になる一方、電圧実効値が大きくなるにつれて透過する光量が増加して、透過率が最大の白色表示になるノーマリーブラックモードに設定されている。
【0070】
まず、本実施形態において、指定値Qが「0」のときのタイミングチャートを含む駆動態様は、図4,9で説明した通りである。
つまり、図9に示すように、指定値Qが「0」であれば、第1および第2フィールドの期間は、クロック信号Clyの240周期分であるから、各画素において液晶容量120に正極性電圧が保持される期間と負極性電圧が保持される期間とはほぼ半分ずつとなる。
【0071】
図17は、指定値Qが「−1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図17に示されるように、指定値Qが「−1」である場合、スタートパルスDybが供給されるよりもHだけ早いタイミングで、3本目の走査線を選択するためのスタートパルスDyiが供給される。換言すれば、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分早いタイミングでスタートパルスDyiが供給される。
そして、タイミングTにおいて、スタートパルスDybが供給されることになる。
【0072】
図18は、第2フィールドの略中間のタイミングT2における瞬間の書き込み態様を示している。
以下、スタートパルスDyaで選択される走査線を走査線A、スタートパルスDyiで選択される走査線を走査線I、スタートパルスDybで選択される走査線を走査線Bとして説明する。
走査線A,I,Bは、図18の上方から下方に向って移動している。つまり、ある行の画素は、走査線Aによる正極の書き込みが行われた後、走査線Iおよび走査線Bによって書き込みが行われる。
ここで、走査線Iによる書き込みは、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分早いため、その分、走査線Aによる正極性の保持期間が短くなっている。また、走査線Iによって書き込まれるデータ信号Vidの電圧は、初期段階で設定された所定階調の電圧となっている。データ信号Vidは、好適な態様として、対向電極電位Comと同電位に設定されている。
【0073】
図21(a)は、指定値Qがマイナスの場合におけるデータ信号の波形図であり、1フレーム内において1つの画素に印加されるデータ信号の波形を示している。
詳しくは、第1フィールドでは、走査線Aによって正極のデータ信号が印加された後、走査線Iによって対向電極電位Comと同電位のデータ信号が印加される。そして、第2フィールドでは、走査線Bによって負極のデータ信号が印加されている。
つまり、正極性の保持時間が、破線で示された走査線Iの走査期間分、負極性の保持時間よりも短くなっている。
このため、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
【0074】
また、本実施例ではノーマリーブラックモードを用いており、走査線Iによって書き込まれるデータ信号が対向電極電位Comと同電位であるため、走査線Iの走査期間の間は黒が書き込まれていることになる。
よって、特に、動画を表示する場合においては、1フレームごとに走査線Iによって黒挿入を行っていることになり、インパルス型の表示態様に近づくため、動画視認性を向上させることができる。
【0075】
図19は、指定値Qが「+1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図19に示されるように、指定値Qが「+1」である場合、スタートパルスDyaが供給されるよりもHだけ早いタイミングで、3本目の走査線を選択するためのスタートパルスDyjが供給される。換言すれば、次のフレームのスタートパルスDyaよりもクロック信号Clyの1周期分早いタイミングでスタートパルスDyjが供給される。
また、スタートパルスDybは、タイミングTにおいて供給されている。
【0076】
図20は、第2フィールドの略中間のタイミングT2における瞬間の書き込み態様を示している。
以下、スタートパルスDyjで選択される走査線を走査線Jとして説明する。
走査線J,A,Bは、図20の上方から下方に向って移動している。つまり、ある行の画素は、走査線Jによる正極の書き込みが行われた後、走査線Aおよび走査線Bによって書き込みが行われる。
ここで、走査線Jによる書き込みは、次のフレームのスタートパルスDyaよりもクロック信号Clyの1周期分早いため、その分、走査線Bによる負極性の保持期間が短くなっている。また、走査線Jによって書き込まれるデータ信号Vidの電圧は、初期段階で設定された所定階調の電圧となっている。データ信号Vidは、好適な態様として、対向電極電位Comと同電位に設定されている。
【0077】
図21(b)は、指定値Qがプラスの場合におけるデータ信号の波形図であり、1フレーム内において1つの画素に印加されるデータ信号の波形を示している。
詳しくは、第1フィールドでは、走査線Aによって正極のデータ信号が印加される。そして、第2フィールドでは、走査線Bによって負極のデータ信号が印加された後、走査線Jによって対向電極電位Comと同電位のデータ信号が印加される。
つまり、負極性の保持時間が、破線で示された走査線Jの選択期間分、正極性の保持時間よりも短くなっている。
このため、正極性の電圧実効値が負極性の電圧実効値を上回ることになる。
【0078】
また、指定値Qがマイナスの場合と同様に、動画視認性を向上させることができる。なお、走査線I,Jによって書き込まれる階調は、黒に限定するものではなく、例えば、灰色などの他の階調であっても良い。
また、これらの駆動制御は、図1の処理回路50が操作子70の指定値Qに応じて、3本目の走査線としての走査線I,Jを選択するためのスタートパルスDyi,Dyjを生成するとともに、データ信号Vidとして対向電極電位Comを供給することによって実現することができる。
【0079】
上述した通り、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
指定値Qの値に応じて、第1または第2フィールドのいずれかにおいて、所定の階調を書き込む3本目の走査線I、または走査線Jを選択する駆動方法によっても、実施形態1と同様に、従来の駆動方法と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
さらに、実施形態1における効果に加えて、走査線I,Jによって書き込まれる階調が黒であるため、動画を表示する場合においては、1フレームごとに黒挿入を行っていることになり、インパルス型の表示態様に近づくため、動画視認性を向上させることができる。
本実施形態においてはノーマリーブラックモードを例としてあげたが、ノーマリーホワイトモードにおいても、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制する効果を得ることができる。ノーマリーホワイトモードの場合は、VidをComではなく黒表示をするための電圧Vsatに近い値に設定すれば、さらに動画視認性を向上させることができる。とくに、Vid>Vsatとすれば、表示状態に関わらず、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制しつつ、動画視認性を向上させるという効果が得られる。ただし、Vid>Vsatの場合には、Qを調整する方向をVid=Vcomの場合とは逆方向にする。
【0080】
(実施形態4)
図22,23は、実施形態4の駆動方法における各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
ここでは、実施形態1〜3における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態4における電気光学装置は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置と同じ構成を備えている。
また、実施形態4の駆動方法では、実施形態2と同様に面反転倍速駆動を行うが、指定値Qの値に応じて、実施形態3と同様に第1または第2フィールドのいずれかにおいて、所定の階調を書き込む走査線を選択する。
また、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
また、液晶モードは、ノーマリーブラックモードに設定されている。
【0081】
まず、本実施形態において、指定値Qが「0」のときのタイミングチャートを含む駆動態様は、図13,14で説明した通りである。
つまり、図14に示すように、指定値Qが「0」であれば、第1および第2フィールドの期間は、クロック信号Clyの240周期分であるから、各画素において液晶容量120に正極性電圧が保持される期間と負極性電圧が保持される期間とはほぼ半分ずつとなる。
【0082】
図22は、指定値Qが「−1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図22に示されるように、指定値Qが「−1」である場合、スタートパルスDybが供給されるよりもHだけ早いタイミングで、所定の階調を書き込むための走査線を選択するためのスタートパルスDyiが供給される。換言すれば、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分早いタイミングでスタートパルスDyiが供給される。そして、タイミングTにおいて、スタートパルスDybが供給されることになる。
また、スタートパルスDyiを起点とした走査線Iによって書き込まれるデータ信号Vidは、対向電極電位Comと同電位に設定されている。
つまり、スタートパルスDyaを起点とした走査線Aによる正極性の保持期間が、スタートパルスDybを起点とした走査線Bによる負極性の保持期間よりも、走査線Iによる書き込み分(クロック信号Clyの1周期分)短くなっている。
【0083】
よって、図21(a)に示すように、1フレーム内で印加されるデータ信号Vidにおいて、正極性の保持時間が、破線で示された走査線Iの走査期間分、正極性の保持時間よりも短くなっている。
このため、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
【0084】
図23は、指定値Qが「+1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図23に示されるように、指定値Qが「+1」である場合、スタートパルスDyaが供給されるよりもHだけ早いタイミングで、所定の階調を書き込むための走査線Jを選択するためのスタートパルスDyjが供給される。換言すれば、次のフレームのスタートパルスDyaよりもクロック信号Clyの1周期分早いタイミングでスタートパルスDyjが供給される。そして、タイミングTにおいて、スタートパルスDybが供給されることになる。
また、スタートパルスDyjを起点とした走査線Jによって書き込まれるデータ信号Vidは、対向電極電位Comと同電位に設定されている。
つまり、スタートパルスDybを起点とした走査線Bによる負極性の保持期間が、スタートパルスDyaを起点とした走査線Aによる正極性の保持期間よりも、走査線Jによる書き込み分(クロック信号Clyの1周期分)短くなっている。
【0085】
よって、図21(b)に示すように、1フレーム内で印加されるデータ信号Vidにおいて、負極性の保持時間が、破線で示された走査線Jの走査期間分、正極性の保持時間よりも短くなっている。
このため、正極性の電圧実効値が負極性の電圧実効値を上回ることになる。
また、走査線Jによって書き込まれるデータ信号が対向電極電位Comと同電位であるため、ノーマリーブラックモードにおいては黒が書き込まれていることになる。
よって、特に、動画を表示する場合においては、1フレームごとに走査線Jによって黒挿入を行っていることになり、インパルス型の表示態様に近づくため、動画視認性を向上させることができる。
【0086】
上述した通り、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
面反転倍速駆動を行う場合においても、指定値Qの値に応じて、第1または第2フィールドのいずれかにおいて、所定の階調を書き込む3本目の走査線I、または走査線Jを選択する駆動方法を適用することができる。
従って、面反転倍速駆動を行う場合においても、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
本実施形態においてはノーマリーブラックモードを例としてあげたが、ノーマリーホワイトモードにおいても、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制する効果を得ることができる。ノーマリーホワイトモードの場合は、VidをComではなく黒表示をするための電圧Vsatに近い値に設定すれば、さらに動画視認性を向上させることができる。とくに、Vid>Vsatとすれば、表示状態に関わらず、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制しつつ、動画視認性を向上させるという効果が得られる。ただし、Vid>Vsatの場合には、Qを調整する方向をVid=Vcomの場合とは逆方向にする。
【0087】
(実施形態5)
図24は、実施形態5の駆動方法に係るタイミングチャートである。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態5における電気光学装置は、図1の処理回路50において、フレームメモリ57の構成を簡略化した構成となっている。詳しくは、フレームメモリ57において倍速駆動に用いられていた分のメモリ容量を削減した構成となっている。
また、実施形態5では、垂直同期信号Vsごとにデータ信号Vidの極性を反転させるフレーム反転駆動をベースとして、直流電圧成分を抑制することが可能な駆動方法を採用している。
【0088】
まず、本実施形態における駆動方法を説明するために、図24を用いて、従来技術におけるフレーム反転駆動の概要について説明する。
図24には、垂直同期信号Vs、本実施形態における交流化信号FR、データ信号Vid、および従来技術における交流化信号FRxの出力タイミングが示されている。
従来の駆動方法において、交流化信号FRxは、垂直同期信号Vsの出力タイミングと同期してレベルが変化していた。換言すると、1フレームごとにレベルが変化していた。
よって、交流化信号FRxの極性と同じ極性の出力となるデータ信号も、1フレームごとに極性反転する矩形波(図示せず)となっていた。
また、対向電極電位は、第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧と第2の現象(特性差)に対する補正電圧とを加算した補正電圧分シフトした値に設定されていた。
【0089】
これに対して、本実施形態の駆動方法では、まず、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
そして、例えば、連続する5つのフレームを一つの単位として、指定値Qの値に応じて、正負極性を印加するフレーム数の割合を調整する。換言すれば、5フレームの期間長において、正極性のデータ信号が印加される期間長と、負極性のデータ信号が印加される期間長との割合を調整する。
【0090】
指定値Qがマイナスの場合は、例えば、図24に示されるように、正極性のフレームが2フレーム、負極性のフレームが3フレームの順番で、正負の割合が2:3となるように交流化信号FRが生成される。よって、データ信号Vidも、交流化信号FRのレベルに従い、正極性のデータ信号Vidが2フレーム、負極性のデータ信号Vidが3フレームの順番で生成される。
これにより、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
なお、交流化信号FRのレベルの並びは、上記順番に限定するものではなく、正負の割合が2:3となれば良い。例えば、負極性で1フレーム、正極性で1フレーム、負極性で1フレーム、正極性で1フレーム、負極性で1フレームという順番であっても良い。
【0091】
また、指定値Qがプラスの場合、例えば、正極性のフレームが3フレーム、負極性のフレームが2フレームの順番で、正負の割合が3:2となる交流化信号FRが処理回路50で生成される。
よって、データ信号Vidも、交流化信号FRのレベルに従い、正極性のデータ信号Vidが3フレーム、負極性のデータ信号Vidが2フレームの順番で生成される。
これにより、正極性の電圧実効値が負極性の電圧実効値を上回ることになる。
また、指定値Qがゼロの場合は、従来の交流化信号FRxが生成される。
なお、ここでは、5つのフレームを一つの単位とした場合について説明したが、フレーム数は、3フレーム以上の複数であれば良く、第2の現象における補正電圧の大きさに応じて適宜定めれば良い。
また、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
【0092】
上述した通り、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
フレーム単位でデータ信号Vidの極性を反転させるフレーム反転駆動において、対向電極電位Comを第1の現象に対する補正電圧分シフトして設定するとともに、連続する3つ以上のフレームを一つの単位として、指定値Qの値に応じて、正負極性を印加するフレーム数の割合を調整することにより、従来の駆動方法と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
また、垂直同期信号Vsをトリガとした1フレームにおいて、各走査線は1回選択されるのみであるため、フレームメモリ57(図1)の構成が簡素化されるため、電気光学装置の構成をシンプルにすることができる。特に、外部装置から供給される表示データVideoや、垂直同期信号Vsなどを含む画像信号が、表示パネル10の解像度および特性に適合したものであった場合には、フレームメモリ57(図1)の構成をなくすことも可能であるため、小型、またはローエンドの電気光学装置にも適用することができる。
【0093】
連続する5つのフレームを一つの単位とした場合、20%刻みでの補正を行うことが可能であるため、第2の現象における補正電圧が大きい場合であっても補正を行うことができる。また、一単位を構成するフレーム数を増やすことによって、補正幅を小さくすることもできる。
【0094】
(実施形態6)
図25は、実施形態6の駆動方法に係るタイミングチャートである。
ここでは、実施形態5における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態6の電気光学装置の構成は、実施形態5の電気光学装置構成と同様である。
実施形態6の駆動方法は、交流化信号FRのレベル変化のタイミングを垂直同期信号Vsと非同期としたことのみ、実施形態5の駆動方法と異なる。
【0095】
本実施形態の駆動方法においても、実施形態5と同様に、例えば、5つのフレームを一つの単位として、指定値Qの値に応じて、正負極性をそれぞれ印加するフレーム数の割合を調整するが、極性が跨るフレームが発生する場合がある。
例えば、指定値Qがマイナスの場合、図25に示されるように、交流化信号FRは、正極性で1フレームの後に、正極性と負極性とに跨る1フレームが存在し、そして、負極性の3フレームという波形になっている。詳しくは、正負の割合が1.8:3.2となっている。
ここで、正極性と負極性とに跨る1フレームにおける極性反転タイミングは、垂直同期信号Vsに同期しておらず、指定値Qの値に応じたタイミングとなっている。詳しくは、当該極性反転タイミングは、5フレーム内において、第2の現象の補正電圧に応じて、垂直同期信号Vsに依存せずに、最適な正負極の分割割合となるタイミングに設定されている。なお、このタイミングは、垂直同期信号Vsよりも短い周期の信号、例えば、クロック信号Clyなどに同期させることによって、設定されている。
【0096】
よって、データ信号Vidも、交流化信号FRのレベルに従い、正負が1.8:3.2の割合で生成される。
これにより、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
また、指定値Qがプラスの場合は、例えば、正極性で3フレーム、正極性と負極性とに跨る1フレーム、負極性で1フレームの順番で、正負の割合が3.3:1.7となる交流化信号FRが生成される。
よって、データ信号Vidも、交流化信号FRの極性に従い、正負が3.3:1.7の割合で生成される。
これにより、正極性の電圧実効値が負極性の電圧実効値を上回ることになる。
また、指定値Qがゼロの場合は、従来の交流化信号FRxが生成される。
また、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
【0097】
上述した通り、本実施形態によれば、実施形態5における効果に加えて以下の効果を得ることができる。
正極性と負極性とに跨る1フレームにおける極性反転タイミングを垂直同期信号Vsとは非同期の指定値Qの値に応じたタイミングとしたことにより、フレーム単位よりも、細かな補正を行うことができる。
例えば、1フレームの期間長を10分割した場合、2%刻みでの調整を行うことができる。
従って、第2の現象における補正電圧が大きい場合であっても精度良く補正を行うことができる。
【0098】
(電子機器)
図26は、上述した電気光学装置1の表示パネル10をライトバルブとして用いた3板式プロジェクタの構成を示す平面図である。
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置を用いた電子機器の例について説明する。
プロジェクタ2100において、ライトバルブに入射させるための光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0099】
ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの構成は、上述した各実施形態における表示パネル10と同様であり、外部装置(図示省略)から供給されるR、G、Bの各色に対応する画像データでそれぞれ駆動される。
ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。
ダイクロイックプリズム2112において合成されたカラー画像を表す光は、レンズユニット2114によって拡大投射され、スクリーン2120上にフルカラー画像が表示される。
【0100】
なお、ライトバルブ100R、100Bの透過像がダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるため、ライトバルブ100R、100Bにより形成される画像と、ライトバルブ100Gにより形成される画像とが左右反転の関係になるように設定されている。
【0101】
また、電子機器としては、図26を参照して説明した他にも、リアプロジェクション型のテレビジョンや、直視型、例えば携帯電話や、パーソナルコンピュータ、ビデオカメラのモニタ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ディジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの電子機器に対しても、本発明に係る電気光学装置を適用させることができる。
【0102】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0103】
(変形例)
上述した各実施形態においては、ある1行の走査線112に沿った画素に対して、階調に応じた電圧を、1列〜640列のデータ信号Vidを順番にサンプリングすることによって、当該行の画素を1列から640列まで順に書き込むという、いわゆる点順次の構成としたが、データ信号を時間軸にn(nは2以上の整数)倍に伸長するとともに、n本の画像信号線に供給する、いわゆる相展開(シリアル−パラレル変換ともいう)駆動を併用した構成としても良い(特開2000−112437号公報参照)。
または、すべてのデータ線114に対してデータ信号を一括して供給する、いわゆる線順次の構成としても良い。
これらの駆動方法であっても、各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
また、上記各実施形態では、液晶モードとして、電圧無印加状態において白色を表示するノーマリーホワイトモード、または、電圧無印加状態において黒色を表示するノーマリーブラックモードのいずれか一方を適用した形態について説明したが、異なる他方の液晶モードにおいても適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施形態1に係る電気光学装置の概略構成図。
【図2】表示パネルの構成図。
【図3】画素の等価回路図。
【図4】指定値が「0」のときの走査信号系のタイミングチャートを示す図。
【図5】指定値が「−1」のときの走査信号系のタイミングチャートを示す図。
【図6】指定値が「+1」のときの走査信号系のタイミングチャートを示す図。
【図7】データ信号系の第1フィールドにおけるタイミングチャートを示す図。
【図8】データ信号系の第2フィールドにおけるタイミングチャートを示す図。
【図9】指定値が「0」の場合における、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図10】指定値が「−1」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図11】指定値が「+1」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図12】実施形態1の駆動方法による実験データを示すグラフを示す図。
【図13】実施形態2の駆動方法における走査信号系のタイミングチャートを示す図。
【図14】指定値が「0」の場合における、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図15】指定値がマイナスの場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図16】指定値がプラスの場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図17】実施形態3の駆動方法における指定値Qが「−1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図18】タイミングT2における画面態様図。
【図19】指定値が「+1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図20】タイミングT2における画面態様図。
【図21】(a)指定値がマイナスの場合におけるデータ信号の波形図、(b)指定値Qがプラスの場合におけるデータ信号の波形図。
【図22】実施形態4の駆動方法における指定値が「−1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図23】指定値が「+1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図24】実施形態5の駆動方法に係るタイミングチャートを示す図。
【図25】実施形態6の駆動方法に係るタイミングチャートを示す図。
【図26】プロジェクタの構成を示す平面図。
【図27】第2の現象における補正電圧と駆動電圧との関係を示す図。
【符号の説明】
【0105】
1…電気光学装置、10…表示パネル、50…処理回路、52…制御回路、56…表示データ処理回路、60…電圧生成回路、70…操作子、108…対向電極、112…走査線、114…データ線、116…スイッチングトランジスタとしてのTFT、118…画素電極、130…走査線駆動回路、140…データ線駆動回路、Com…対向電極電位、Q…指定値、Vid…データ信号、Vs…垂直同期信号。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、その駆動方法、および当該電気光学装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置の一例として、液晶表示装置について説明する。
一般的に、画素電極を薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」という)により駆動するアクティブマトリクス型の液晶表示装置では、フリッカや、表示画像の焼き付き等の表示不具合を防止するために、例えば、各画素電極に印加される駆動電圧の極性を、走査線やデータ線ごと、または、画像信号におけるフレームごとに反転させる反転駆動(交流駆動)が採用されていた。
これは、反転駆動によって液晶層へ直流電圧成分が印加されることや、基板間における電荷の偏りを防止し、フリッカ等の表示不具合を解消しようとしたものであったが、単純に反転駆動を行うだけでは、直流電圧成分の印加は完全には解決されず、依然として表示不具合が発生していた。
【0003】
つまり、反転駆動を行ったとしても、液晶層への直流電圧成分の印加や、電荷の偏りが発生しており、これらに対して対策を講ずる必要があった。また、表示不具合の発生源としては、下記の2つの現象が知られていた。
まず、第1の現象は、いわゆるフィールドスルー(プッシュダウン、突き抜けとも呼ばれる)現象であり、TFTのゲート・ドレイン端子間、およびソース・ドレイン端子間の寄生容量に起因して、オンからオフ状態に切換るときに、ドレイン端子と接続された画素電極の電圧が低下してしまう現象である。具体的には、寄生容量および蓄積容量に蓄積された電荷が、TFTのオフのタイミングで、再分配されることによる画素電極の電圧低下現象である。
第2の現象は、液晶層を挟持する素子基板と対向基板との特性差に起因した直流電圧成分である。より詳しくは、画素電極やTFTなどが形成された素子基板と、対向電極が形成された対向基板とにおいて、それぞれの電気的特性が非対称であることによって、電荷の偏りが生じるためである。
【0004】
特許文献1には、上述した2つの現象に着目した液晶表示装置の駆動方法が提案されている。
当該駆動方法では、反転駆動における極性反転の基準となる対向電極電位を、あらかじめ第1の現象(フィールドスルー)および第2の現象(素子基板と対向基板の電気的特性差)による影響を補正するようにシフトさせることを提案している。
詳しくは、初期段階において第1の現象による電圧変動分と、第2の現象による電圧変動分とを、所定の計測条件により計測し、それらを加算した値を一定の補正電圧として、対向電極の設定電位に加味していた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−189460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図27は、第2の現象における補正電圧と駆動電圧との関係を示したグラフである。
しかしながら、発明者等の実験データによれば、第2の現象における補正電圧と駆動電圧との間には相関関係があるため、特許文献1における従来の駆動方法では、フリッカ、または表示画像の焼き付き等の表示不具合が発生してしまうという課題があった。
図27は、発明者等が実験により計測したグラフの一例であり、駆動電圧(横軸)と、補正電圧(縦軸)との相関関係を示している。
ここで、駆動電圧が10Vにおける補正電圧は−0.1Vであるが、5Vにおける補正電圧は−0.05Vとなり、0Vでは補正電圧も0Vとなっている。
つまり、第2の現象において、補正電圧は、駆動電圧の大きさ(振幅)に応じて変化している。また、駆動電圧は、表示階調に応じて変化するため、ピーク電圧が7Vの駆動電圧であった場合、補正電圧は、表示コンテンツにもよるが、表示期間において約−0.07V〜0Vの間で変化する可能性がある。
また、図27のグラフの傾きは、ピーク電圧が異なる駆動電圧にも適応することができる。例えば、15Vピークの駆動電圧の場合、ピーク電圧15Vにおける補正電圧は−0.15V(-0.1×1.5)となる。
【0007】
ここで、従来技術において、第1の現象の補正分−0.01Vと第2の現象の補正分−0.03Vとを加えた−0.04Vを一定の補正電圧として対向電極電位を設定していた場合を考えてみる。
まず、駆動電圧が0Vであった場合、第2の現象の補正電圧は0Vであるにも係らず、−0.04Vの補正がなされているため、第2の現象の補正分−0.03Vが直流電圧成分となって印加されてしまう。
また、駆動電圧が7Vの場合であった場合、第2の現象の補正電圧は−0.07Vであるにも係らず、第2の現象への補正分は−0.03Vであるため、その差分−0.04Vが直流電圧成分となって印加されてしまう。なお、第1の現象については、相殺されたものとしている。
このように、第1の現象および第2の現象に起因する直流電圧成分を一定の補正電圧値によって賄っていた従来の駆動方法では、液晶層へ直流電圧成分が印加されてしまい、フリッカなどの表示不具合が発生してしまうという課題があった。
【0008】
また、従来の駆動方法では、第1の現象および第2の現象による電圧変化分を加算した補正電圧を対向電極電位に加えていたが、第1の現象の補正電圧に対して第2の現象の補正電圧がある程度の大きさを持つ場合には、対向電極電位が正負のいずれかに大きくシフトしてしまい、表示不具合の発生要因の一つとなっていた。
詳しくは、第2の現象に対する補正電圧が大きいと、駆動電圧の正負における振幅差が大きくなり、そのために、フリッカなどの表示不具合が発生してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
【0010】
《適用例》
複数の走査線と複数のデータ線と、走査線とデータ線との交点に設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、画素電極と対向する対向電極と、画素電極と対向電極との間に挟持された電気光学層とを、備えた電気光学装置の駆動方法であって、対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、画素電極に対して、データ線を介して正極性の電圧と負極性の電圧とが交互に現れるデータ信号を供給し、対向電極電位は、スイッチングトランジスタの寄生容量に起因するフリッカを低減するように設定され、第1の期間と第2の期間とからなる所定の期間において、第1の期間では、正極性または負極性のうち、いずれか一方の極性の電圧である第1電圧が画素電極に供給され、第2の期間では、第1電圧とは異なる極性の第2電圧が画素電極に供給され、所定の期間における第1の期間の長さと、第2の期間の長さとの割合を可変としたことを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【0011】
この駆動方法によれば、まず、対向電極電位がスイッチングトランジスタの寄生容量に起因するフリッカを低減するようにあらかじめシフトして設定されているため、第1の現象についての補正が盛り込まれている。
発明者等の実験データからの知見によれば、第1の現象についても駆動電圧との相関性は認められるものの、第2の現象と比べてその影響度合いは小さいことが解っている。また、第2の現象の場合、図27に示したように、駆動電圧が0Vのときは補正電圧も0Vとなるが、第1の現象の場合においては0Vとならず、一定の補正電圧が必要となる。
このため、第1の現象の補正方法としては、駆動電圧に係らず一定の補正電圧を掛けることが好ましい。
【0012】
さらに、1フレームの期間長における第1および第2フィールドの期間長の割合を可変としたことにより、1フレーム内で印加される負極性および正極性の割合を調整することができる。
つまり、第2の現象に対する補正を、その特性差による直流電圧成分の方向および大きさに応じて、第1および第2フィールドの期間長の割合を調整することにより行うことができる。
さらに、あらかじめ設定された対向電極電位のシフト量は、第1の現象による直流電圧成分の印加に対する補正電圧分のみであるため、液晶層への直流電圧成分の印加を抑制することができる。
従って、従来の駆動方法と比べて、フリッカ、または表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる電気光学装置の駆動方法を提供することができる。
【0013】
また、所定の期間は、1フレームに相当し、1フレームは、第1フィールドと、第2フィールドとから構成され、第1フィールドは第1の期間に相当し、第2フィールドは第2の期間に相当することが好ましい。
また、第1フィールド、または第2フィールドのいずれかにおいて、所定の階調を表す第3電圧をデータ信号としてデータ線に所定の期間供給することにより、1フレームにおける第1および第2フィールドの期間長の割合を調整することが好ましい。
また、第3電圧は、黒表示に相当する階調の電圧であることが好ましい。
【0014】
また、走査線がN本設けられ、1番目の走査線乃至M番目の走査線までを第1走査線群とし、M+1番目の走査線乃至N番目の走査線までを第2走査線群としたとき、1フレームに渡って、第1走査線群におけるいずれか1本の走査線と第2走査線群におけるいずれか1本とが交互に選択され、第1フィールドでは、第1走査線群に対応した画素電極には第1電圧が印加され、第2走査線群に対応した画素電極には第2電圧が印加され、第2フィールドでは、第1走査線群に対応した画素電極には第2電圧が印加され、第2走査線群に対応した画素電極には第1電圧が印加されるように駆動されることが好ましい。
また、所定の期間は、連続した2つ以上のフレームからなる複数フレームに相当し、所定の期間における、正極性の電圧が印加される期間長と、負極性の電圧が印加される期間長との割合を可変とすることが好ましい。
【0015】
複数の走査線と複数のデータ線と、走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、画素電極と対向する対向電極と、画素電極と対向電極との間に挟持された電気光学層とを、備えた電気光学装置であって、対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、画素電極に対して、データ線を介して正極性の電圧と負極性の電圧とが交互に現れるデータ信号を供給し、対向電極には、スイッチングトランジスタの寄生容量に起因するフリッカを低減するように設定された対向電極電位を供給し、第1の期間と第2の期間とからなる所定の期間において、第1の期間では、正極性または負極性のうち、いずれか一方の極性の電圧である第1電圧を画素電極に供給し、第2の期間では、第1電圧とは異なる極性の第2電圧を画素電極に供給し、所定の期間における第1の期間の長さと、第2の期間の長さとの割合を調整する制御回路を、さらに備えることを特徴とする電気光学装置。
【0016】
上記記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0018】
(実施形態1)
《電気装置の概略構成》
図1は、本実施形態に係る電気光学装置の概略構成図である。
まず、本発明の実施形態1に係る電気光学装置1の概要構成について、図1を用いて説明する。
【0019】
電気光学装置1は、表示パネル10、処理回路50、電圧生成回路60、操作子70などから構成されている。
表示パネル10は、透過式のアクティブマトリクス型の液晶パネルである。なお、詳しい構成は後述する。
処理回路50は、制御回路52および表示データ処理回路56を含み、データ信号Vidの出力に合わせて表示パネル10の動作等を制御する回路モジュールであり、表示パネル10とは、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)基板によって接続されている。
【0020】
制御回路52には、タイミング信号発生回路53が内蔵されており、また、タイミング信号発生回路53には、クロック発生回路54が附属している。
クロック発生回路54は、各部の制御動作の基準となるクロック信号を生成してタイミング信号発生回路53に出力する。
タイミング信号発生回路53は、外部装置(図示省略)から供給される垂直同期信号Vs、水平同期信号Hsおよびドットクロック信号Dclkに同期して表示パネル10を制御するための各種の制御信号を生成する。
制御回路52は、タイミング信号発生回路53、および後述する表示データ処理回路56、電圧生成回路60などを制御する。
電圧生成回路60は、DC/DCコンバータなどを含んで構成され、外部装置から供給される直流電力から、各部で使用する複数の直流電圧を生成する。また、電圧生成回路60は、表示パネル10の対向電極に印加される対向電極電位Comを生成し、表示パネル10に供給する。
【0021】
操作子70は、例えばユーザ等により操作され、その操作に応じた指定値Qを例えば「+10」から「−10」までの範囲で出力するものである。詳しくは、例えば、電子機器などに搭載された場合には、その操作パネルや、リモコンなどの操作部によって、操作可能に設けられている。なお、この指定値Qにより、後述するようにスタートパルスDybの出力タイミングを前後に移動させるようになっている。
表示データ処理回路56には、フレームメモリ57およびDAコンバータ58が附属している。
表示データ処理回路56は、外部装置から供給される表示データVideoを、制御回路52による制御に従ってフレームメモリ57に記憶した後、表示パネル10の駆動に同期して読み出すとともに、DAコンバータ58によってアナログのデータ信号Vid(駆動電圧)に変換する。
なお、表示データVideoは、表示パネル10における画素の階調を規定しており、垂直同期信号Vsの供給タイミングを契機として1フレーム分供給されるとともに、水平同期信号Hsの供給タイミングを契機として1行分供給される。
【0022】
ここで、本実施形態における垂直同期信号Vsは、周波数60Hz(周期16.7ミリ秒)とするが、これに限定するものではない。また、ドットクロック信号Dclkについては、表示データVideoのうち、1画素分が供給される期間を規定するものとする。
つまり、制御回路52は、表示データVideoの供給に同期して各部を制御している。
【0023】
《表示パネルの構成》
図2は、表示パネル10の構成を示す図である。図3は、画素の等価回路図である。
次に、表示パネル10の構成について説明する。
図2に示されるように、表示パネル10は、表示領域100の周辺に走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140を内蔵した構成となっている。
表示領域100には、480行の走査線112が行(X)方向に延在するように設けられ、また、640列のデータ線114が列(Y)方向に延在するように、かつ、各走査線112と互いに電気的に絶縁を保つように設けられている。
また、480行の走査線112と640列のデータ線114との交差に対応して、複数の画素110が形成されている。換言すれば、複数の画素110が、縦480行×横640列のマトリクス状に配列されている。
なお、本実施形態では、説明を容易にするために、解像度をVGA(Video Graphics Array)としているが、これに限定するものではなく、例えば、XGA(eXtended Graphics Array)や、SXGA(Super-XGA)などの解像度であっても良い。
【0024】
図3は、i行及びこれと1行下で隣接する(i+1)行と、j列及びこれと1列右で隣接する(j+1)列との交差に対応する2×2の計4画素分の構成を示している。
なお、i、(i+1)は、画素110が配列する行を示しており、ここでは、1以上480以下の整数となる。また、j、(j+1)は、画素110が配列する列を示しており、ここでは、1以上640以下の整数となる。
複数の画素110の各々は、nチャネル型のTFT116と液晶容量120とを含んで構成されている。
【0025】
ここで、各画素110については互いに同一構成なので、i行j列に位置する画素110で代表して説明する。
当該i行j列の画素110におけるTFT116のゲート電極はi行目の走査線112に接続される一方、そのソース電極はj列目のデータ線114に接続され、そのドレイン電極は液晶容量120の一端である画素電極118に接続されている。
また、液晶容量120の他端は、対向電極108に接続されている。この対向電極108は、全ての画素110に渡って共通であって、時間的に一定の対向電極電位Comが印加されている。なお、詳しくは後述するが、対向電極電位Comは、前述した第1の現象における直流電圧成分を補償するための補正電圧分、基準値からシフトされた値となっている。
【0026】
表示パネル10は、特に図示しないが、素子基板と対向基板との一対の基板が一定の間隙を保って貼り合わせられるとともに、この間隙に液晶が封止された構成となっている。このうち、素子基板には、走査線112や、データ線114、TFT116および画素電極118が走査線駆動回路130やデータ線駆動回路140とともに形成される一方、対向基板に対向電極108が形成されて、これらの電極形成面が互いに対向するように一定の間隙を保って貼り合わせられている。
このため、液晶容量120は、画素電極118と対向電極108とが液晶105を挟持することによって構成されている。
なお、本実施形態では、液晶容量120において保持される電圧実効値がゼロに近ければ、液晶容量を通過する光の透過率が最大となって白色表示になる一方、電圧実効値が大きくなるにつれて透過する光量が減少して、ついには透過率が最小の黒色表示になるノーマリーホワイトモードに設定されているものとする。
【0027】
この構成において、走査線112に選択電圧を印加し、TFT116をオン(導通)させるとともに、画素電極118に、データ線114およびオン状態のTFT116を介して、階調(明るさ)に応じた電圧のデータ信号を供給すると、選択電圧を印加した走査線112とデータ信号を供給したデータ線114との交差に対応する液晶容量120に、階調に応じた電圧実効値を保持させることができる。
なお、走査線112が非選択電圧になると、TFT116がオフ(非導通)状態となるが、このときのオフ抵抗が理想的に無限大とはならないので、液晶容量120に蓄積された電荷が少なからずリークする。このオフリークの影響を少なくするために、蓄積容量109が画素毎に形成されている。この蓄積容量109の一端は、画素電極118(TFT116のドレイン)に接続される一方、その他端は、全画素に渡って容量線107に共通接続されている。この容量線107は、時間的に一定の電位、例えば対向電極108と同じ対向電極電圧Comに保たれている。
【0028】
図2に戻る。
走査線駆動回路130は、走査信号G1、G2、G3、…、G480を、それぞれ1、2、3、…、480行目の走査線112に供給するものである。走査線駆動回路130は、選択した走査線への走査信号を電圧Vddに相当するHレベルとし、それ以外の走査線への走査信号を非選択電圧(接地電位Gnd)に相当するLレベルとする。
データ線駆動回路140は、サンプリング信号出力回路142と、各データ線114にそれぞれ対応して設けられたnチャネル型のTFT146とによって構成される。データ線駆動回路140は、詳細は後述するが、選択された走査線における各画素に当該画素の階調を規定するデータ信号(駆動電圧)を供給する。
【0029】
《駆動方法1:走査線系》
まず、以下説明する駆動方法を創出した経緯について図27を用いて説明する。
第1の現象は、前述したとおり、フィールドスルー現象による電圧低下であり、これは電圧低下分に相当する直流電圧を補償することにより補正できる。
これに対して第2の現象は、画素電極基板と対向電極基板の電気的な特性差により生じる電荷の偏りである。これを補償するためには、電荷の偏りを打ち消すだけの余分な直流電圧の印加が必要となる。
さらに、前述した通り、発明者等は、第2の現象における補正電圧は、図27に示されるように、駆動電圧との相関性があることを見出した。
発明者等は、これらの実験データからの知見に基づき熟慮した結果、第1の現象に対する補正と、第2の現象に対する補正とを切り分けて補正するのが効果的であることに想到した。
つまり、第1の現象の補正方法としては駆動電圧に係らず一定の補正電圧を掛けるとともに、第2の現象に対する補正方法としては、その特性差による直流電圧成分の方向および大きさ応じて、正極性および負極性が保持される期間長の割合を調整する方法である。
以下説明する各実施形態の駆動方法は、発明者らが想到内容を具体的に実現するために熟慮および創意工夫の上創出したものである。
【0030】
図4は、指定値が「0」のときの走査信号系のタイミングチャートである。図5は指定値が「−1」のときの走査信号系のタイミングチャート、図6は指定値が「+1」のときの走査信号系のタイミングチャートである。
ここでは、本実施形態の電気光学装置における駆動方法について図4〜6を中心に、適宜図1〜3を交えて具体的に説明する。
また、本実施形態では、複数の走査線を第1走査線群と第2走査線群に分けて、1つのフレームにおいて、第1走査線群におけるいずれか1本の走査線と、第2走査線群におけるいずれか1本とを交互に選択するとともに、1つのフレームにおいて各走査線を2回ずつ選択する、いわゆる倍速領域走査反転駆動を用いている。
【0031】
まず、走査線の駆動方法について説明する。
図4は、走査線駆動回路130により出力される走査信号G1〜G480を、スタートパルスDya、Dybとクロック信号Clyとの関係において示すタイミングチャートである。
図4において、フレームとは、1枚の画像を表示パネル10に表示させるのに要する期間をいう。また、1フレームの期間のうち、スタートパルスDyaが出力されてからスタートパルスDybが出力されるまでの期間を第1フィールドとし、スタートパルスDybが出力されてから次のスタートパルスDyaが出力されるまでの期間を第2フィールドとしている。また、1つの走査線112は、1フレームの期間において、フィールドごとに1回ずつ、つまり、2回選択されている。
本実施形態における垂直同期信号Vsは、上述したように周波数60Hzであるので、1フレームの期間についても16.7ミリ秒で固定である。制御回路52(図1)は、デューティ比が50%のクロック信号Clyを、1フレームの期間に渡って走査線数に等しい480周期分出力する。なお、クロック信号Clyの1周期分の期間をHと表記している。
【0032】
また、制御回路52は、クロック信号Clyの1周期分のパルス幅を有するスタートパルスDya、Dybを、それぞれクロック信号ClyがHレベルの立ち上がり時において、それぞれ次のように出力する。
すなわち、制御回路52は、スタートパルスDyaを1フレームの期間の最初(第1フィールドの最初)に出力する一方、スタートパルスDybを、操作子70による指定値Qが「0」であれば、スタートパルスDybを出力してからクロック信号Clyの240周期分を出力した(すなわち、1フレームの半分期間が経過した)タイミングTで出力する。
また、指定値Qが負の値であれば、タイミングTよりも「−Q×H」分だけ早く出力し、指定値Qが正の値であれば、タイミングTよりも「Q×H」分だけ遅れて出力する。
【0033】
よって、図5に示されるように、例えば、指定値Qが「−1」であった場合、スタートパルスDybは、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけ先行したタイミングT(-1)で出力される。
また、図6に示されるように、指定値Qが「+1」であった場合、スタートパルスDybは、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけ遅延したタイミングT(+1)で出力される。
ここで、スタートパルスDya、Dybは交互に出力される一方、スタートパルスDyaの出力タイミングは、指定値Qにかかわらず変更されない。このため、1フレーム(16.7ミリ秒)毎に出力されるスタートパルスDyaを特定すると、必然的に第2フィールドの開始を規定するスタートパルスDybも特定することができる。このため、図1や、図4〜6においては、スタートパルスDya、Dybの両者を区別することなく、スタートパルスDyとして表記している。
【0034】
走査線駆動回路130は、このようなスタートパルスDya、Dybおよびクロック信号Clyから、次のような走査信号G1〜G480を出力する。
すなわち、走査線駆動回路130は、スタートパルスDyaが供給されると、クロック信号ClyがLレベルに変化するごとに走査信号G1〜G480を順次Hレベルとする一方、スタートパルスDybが供給されると、クロック信号ClyがHレベルに変化するごとに走査信号G1〜G480を順次Hレベルとする。
スタートパルスDyaは、1フレームの期間(第1フィールド)の最初に供給されるので、当該スタートパルスDyaの供給を契機とする走査線の選択は指定値Qによって変化しない。
また、当該スタートパルスDyaの供給を契機とする走査線の選択は、クロック信号ClyがLレベルである期間に実行されるので、第1および第2フィールドに渡って1行目の走査線を開始点として画面下方向に向って2、3、4、…、480行目の順番でクロック信号Clyの半周期の期間をおいて実行されることになる。
【0035】
一方、スタートパルスDybは、第2フィールドの最初に供給されるので、当該スタートパルスDybを契機とする走査線の選択は、指定値Qによって全体的に前後することになる。すなわち、当該スタートパルスDybの供給を契機とする走査線の選択は、クロック信号ClyがHレベルである期間に実行されるので、あるフレームの第2フィールドから次フレームの第1フィールドに渡って1行目の走査線を開始点として画面下方向に向って2、3、4、…、480行目の順番で、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択の合間にて実行されることになる。
つまり、あるフレームの第2フィールドにおける1〜240行目の選択は、例えば指定値Qが「−1」であれば、図5に示されるようにタイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけで全体的に先行し、また、指定値Qが「+1」であれば、図6に示されるようにタイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけで全体的に遅延した関係となる。
【0036】
《駆動方法2:データ線系》
図7は、データ信号系の第1フィールドにおけるタイミングチャートである。図8は、データ信号系の第2フィールドにおけるタイミングチャートである。
続いて、データ線の駆動方法について、図7,8を中心に適宜図1〜3を交えて説明する。
データ線駆動回路140のサンプリング信号出力回路142は、制御回路52による制御信号Ctrl-xに従って、図7または図8に示されるように、いずれかの走査線112が選択されて当該走査線に供給される走査信号がHレベルとなる期間に渡って、順次排他的にHレベルとなるサンプリング信号S1,S2,S3…S640を、データ線114の各々に出力する。なお、制御信号Ctrl-xとは、実際にはスタートパルスやクロック信号であるが、説明を省略している。
【0037】
なお、走査信号がHレベルとなる期間Ha,Hbは、実際には図7または図8に示されるように、クロック信号Clyの半分周期の期間よりも若干狭められている。
また、図7,8は、指定値Qが「0」である場合を示している。
この場合、図7に示されるように、第1フィールドにおいては走査信号G(i+240)がHレベルとなった後に走査信号GiがHレベルとなる。
また、図8に示されるように、第2フィールドにおいては走査信号GiがHレベルとなった後に走査信号G(i+240)がHレベルとなる。
【0038】
また、図1の表示データ処理回路56は、選択された走査線112における画素1行分の表示データVideoを、サンプリング信号出力回路142によるサンプリング信号S1〜S640の出力に合わせて次のような極性のデータ信号Vidに変換する。
すなわち、表示データ処理回路56は、クロック信号ClyがLレベルのときに選択された画素行における画素のデータ信号Vidを正極性(+)に変換し、クロック信号ClyがHレベルのときに選択された画素行における画素のデータ信号Vidを負極性(−)に変換する。換言すれば、表示データ処理回路56は、スタートパルスDyaの供給を契機として選択された画素行における画素のデータ信号Vidを正極性(+)に変換し、スタートパルスDybの供給を契機として選択された画素行における画素のデータ信号Vidを負極性(−)に変換する。
【0039】
図7,8に示すように、正極性(+)および負極性(−)とは、基準電圧Vcから高位側を正極性(+)とし、低位側を負極性(−)としている。また、ここでは、基準電圧Vcを0Vに設定しているが、これに限定するものではない。
ここで、本発明の駆動方法における特徴点の一つとして、対向電極電位Comが基準電圧Vcよりも負極性(−)側にシフトして設定されている。
具体的には、対向電極電位Comは、例えば、約−0.1Vから−0.2Vの範囲内の電圧値に設定されている。これは、前述した第1の現象(フィールドスルー)による電圧変化分が約−0.1Vから−0.2Vであるため、これを補正電圧として、対向電極電位Comの設定値を基準電圧Vcからシフトさせているからである。
なお、ここでは、TFT116がnチャネル型であるため、負極性(−)側への補正となっているが、これに限定するものではなく、第1の現象による影響を低減できるように対向電極電位Comをシフトすれば良い。
【0040】
これは、前述したように発明者等の実験データからの知見に基づくものである。
また、第1の現象における補正電圧は、個別の表示パネルごとに計測して求めることが好ましい。具体的には、同じ階調に相当する正・負極性の駆動電圧を交互に印加したときに、フリッカが充分小さくなる対向電極電位Comを求め、その値と、基準電圧Vcとの差から補正電圧を求める。また、このときの駆動電圧は、フリッカを視認しやすい中間階調に相当する電圧が好ましい。
このようにして補正電圧は求められ、制御回路52(図1)、または電圧生成回路60に設定される。そして、電圧生成回路60は、補正電圧分シフトした対向電極電位Comを生成し、表示パネル10の対向電極に供給する。
【0041】
《駆動方法3:全般》
続いて、駆動方法の全般について説明する。
なお、ここでは、指定値Qが「0」である場合の動作について説明した上で、指定値Qを操作子70により「0」以外の値に設定した場合の動作について説明する。
まず、図1において、制御回路52は、外部装置から供給される表示データVideoを、フレームメモリ57に記憶させた後、表示パネル10においてある画素行の走査線が選択されるとき、当該画素行の表示データを記憶速度の倍の速度で読み出させる。そして、DAコンバータ58によりアナログのデータ信号Vidに変換するとともに、表示データの読み出しに合わせて、サンプリング信号S1〜S640が順番にHレベルとなるように、制御信号Ctrl-xを介してサンプリング信号出力回路142を制御する。
【0042】
図4に示すように、指定値Qが「0」であれば、第1フィールドにおいて、走査線が241、1、242、2、243、3、…、480、240行目という順番で選択される。
このため、制御回路52は、はじめに241行目の走査線が選択されるように、走査線駆動回路130を制御する一方、表示データ処理回路56に対し、フレームメモリ57に記憶された241行目に相当する表示データVideoを倍速で読み出させる。
そして、DAコンバータ58により負極性のデータ信号Vidを生成させるとともに、データ信号Vidの読み出しに合わせて、図7に示すように、サンプリング信号S1〜S640が順番に排他的にHレベルとなるようにサンプリング信号出力回路142を制御する。
サンプリング信号S1〜S640が順番にHレベルになると、TFT116が順番にオンして画像信号線171に供給されたデータ信号Vidが1〜640列目のデータ線にサンプリングされる。
【0043】
一方、走査線が選択されると、走査信号G241がHレベルとなるので、241行目に位置する画素110のTFTがすべてオンする。
このため、データ線にサンプリングされたデータ信号Vidの負極性電圧がそのまま画素電極118に印加される。これにより、241行目であって1、2、3、4、…、639、640列の画素における液晶容量120には、表示データVideoで指定された階調に応じた負極性電圧が書き込まれて、保持される。
以下、第1フィールドにおいては、同様な電圧書込の動作が、1、242、2、243、3、…、480、240行目という順番で実行される。これにより、1〜240行目の画素に対しては階調に応じた正極性電圧が書き込まれ、241〜480行目の画素に対しては階調に応じた負極性電圧が書き込まれて、それぞれ保持される。
【0044】
また、第2フィールドにおいては、走査線が1、241、2、242、3、243、4、244、…、240、480行目という順番で選択されるともに、同一行における書込極性が反転される。
このため、1〜240行目の画素に対しては階調に応じた負極性電圧が書き込まれ、241〜480行目の画素に対しては階調に応じた正極性電圧が書き込まれて、それぞれ保持される。
【0045】
図7には、第1フィールドにおける(i+240)行目の走査線とi行目の走査線とが選択される期間におけるデータ信号Vidの電圧波形の一例が示されている。
図7において、電圧Vb(+)、Vb(-)は、それぞれ最低階調の黒色に相当する正極性、負極性の電圧であり、基準電圧Vcを中心に対称の関係にある。
表示データVideoで指定される階調値の十進値が「0」のときに最低階調の黒色を指定し、以後当該十進値が大きくなるにつれて明るい階調を指定する場合、本実施形態はノーマリーホワイトモードであるから、データ信号Vidの電圧は、正極性に変換する場合には、階調値が大きくなるにつれて電圧Vb(+)から低位側に振られた電圧となり、負極性に変換する場合には電圧Vb(-)から高位側に振られた電圧となる。
【0046】
第1フィールドでは、i行目よりも先に(i+240)行目の走査線が選択されるので、走査信号G(i+240)がHレベルになる期間のうち、例えばサンプリング信号S1がHレベルになる期間に、データ信号Vidは、i行1列の画素の階調に応じた負極性電圧となり、以降、サンプリング信号の変化に合わせて、2、3、4、…、640列目の画素の階調に応じた負極性電圧に変化する。
続いて選択されるi行目では、正極性書込が指定されるので、走査信号GiがHレベルになる期間のうち、例えばサンプリング信号S1がHレベルになる期間に、データ信号Vidは、i行1列の画素の階調に応じた正極性電圧となり、以降、サンプリング信号の変化に合わせて、2、3、4、…、640列の画素の階調に応じた正極性電圧に変化する。
なお、第2フィールドでは、i行目の後に(i+240)行目の走査線が選択されるので、走査信号GiがHレベルになるとともに、書込極性が反転するため、データ信号Vidの電圧波形は図8に示される通りとなる。
【0047】
なお、図7および図8においてデータ信号Vidの電圧を示す縦軸は、見易くするため他の信号における縦軸よりも拡大している。また、サンプリング信号S640がLレベルに変化してからサンプリング信号S1がHレベルに変化するまでの期間に渡って黒色に相当する電圧となっているが、その理由は、タイミングずれなどの理由により誤って画素に書き込まれても、表示に寄与させないためである。
【0048】
図9は、指定値Qが「0」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。また、最上段の走査線への書き込み、つまり正極性保持期間の開始時刻は、正確には、スタートパルスDyaが供給された後、クロック信号Clyの半周期遅延したタイミングとなるが、図9では、簡略化してスタートパルスDyaに合わせている。以降説明する同種の図面においても同様である。
図9に示されるように、本実施形態では、第1フィールドにおいて241、242、243、…、480行目の画素では負極性の書き込みがなされ、1、2、3、…、240行目の画素では正極性の書き込みがなされて、次の書き込みまで保持される。
一方、第2フィールドにおいて1、2、3、…、240行目の画素では負極性書き込みがなされ、241、242、243、…、480行目の画素では正極性の書き込みがなされて、同様に次の書き込みまで保持される。
つまり、各フィールドにおいて、正極性を書き込む走査線(A)と、負極性を書き込む走査線(B)とが2本選択されているとも捉えることができる。
このように、指定値Qが「0」であれば、第1および第2フィールドの期間は、クロック信号Clyの240周期分であるから、各画素において液晶容量120に正極性電圧が保持される期間と負極性電圧が保持される期間とはほぼ半分ずつとなる。
【0049】
次に、指定値Qが例えば「−1」である場合について説明する。
図5に示されるように、指定値Qが例えば「−1」であると、スタートパルスDybがタイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけ時間的に前方のタイミングで出力される。このため、指定値Qが「−1」であれば、第1フィールドの期間はクロック信号Clyの239周期分となるのに対し、第2フィールドの期間はクロック信号Clyの241周期分となる。
また、指定値Qが「−1」の場合、第1フィールドにおいて走査線が242、1、243、2、244、3、…、480、239行目という順番で選択され、第2フィールドにおいて走査線が1、240、2、241、3、242、…、241、480目という順番で選択される。
【0050】
図10は、指定値Qが「−1」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図10に示されるように、指定値Qが「−1」である場合、スタートパルスDybの出力タイミングが早まるので、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも長くなる。
つまり、指定値Qが負の値であれば、その絶対値が大きくなるにつれて、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも長くなる。
このため、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
【0051】
次に、指定値Qが例えば「+1」である場合について説明する。
図6に示されるように、指定値Qが例えば「+1」である場合、スタートパルスDybがタイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分だけ時間的に後方のタイミングで出力される。このため、指定値Qが「+1」であれば、第1フィールドの期間はクロック信号Clyの241周期分となるのに対し、第2フィールドの期間はクロック信号Clyの239周期分となる。
また、指定値Qが「+1」であれば、第1フィールドにおいて走査線が240、1、241、2、242、3、…、480行目という順番で実行され、第2フィールドにおいて走査線が1、242、2、243、3、244、…、239、480目という順番で実行される。
【0052】
図11は、指定値Qが「+1」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図11に示されるように、指定値Qが「+1」である場合、スタートパルスDybの出力タイミングが遅くなるので、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも短くなる。
つまり、指定値Qが正の値であれば、その絶対値が大きくなるにつれて、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも短くなる。
このため、液晶容量120に印加される負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を下回ることになる。
【0053】
図12は、本実施形態の駆動方法による実験データを示すグラフである。
図12において、横軸は経過時間(t)を示し、縦軸は第2の現象(特性差)の補正電圧(V)を示している。
また、グラフaは本実施形態の駆動方法を用いた製品における第2の補正電圧の時間依存性を表し、グラフbは比較のために従来の駆動方法を用いた製品における第2の補正電圧の時間依存性を表している。いずれの製品においても、対向電極電位Comは、第1の現象に対する補正電圧だけシフトした値に設定されている。
また、グラフaの製品については、計測データに基づき指定値Qによる補正がなされている。具体的には、指定値Qがプラスの値に設定されており、1フレーム内における正極性電圧の印加時間が55%、負極性電圧の印加時間が45%の割合になっている。
【0054】
グラフbに示すように、比較用の製品では、表示開始時点では第2の補正電圧はゼロとなっているが、その後、時間経過に伴い、第2の補正電圧が大きくなっている。つまり、時間経過に伴って、液晶層へ直流電圧成分が印加されてしまっている。
これに対して、本実施形態の駆動方法を用いた製品では、グラフaに示すように、表示開始から時間が経過しても第2の補正電圧は略ゼロのままである。
つまり、対向電極電位Comを第1の現象の補正電圧分あらかじめシフトするとともに、第2の現象については指定値Qをマイナス方向にシフトさせることにより、時間経過に拘らず、第1および第2の現象による液晶層への直流電圧成分の印加が抑制されていることが解る。
【0055】
上述した通り、本実施形態に係る電気光学装置1によれば、以下の効果を得ることができる。
上述した駆動方法によれば、対向電極電位Comが第1の現象に対する補正電圧分あらかじめシフトされた値に設定されているため、第1の現象についての補正が盛り込まれている。
さらに、指定値Qの値に応じて、スタートパルスDybの出力タイミングを前後させることにより、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧との電圧実効値の比率を調整することができる。換言すれば、1フレームの期間長における第1および第2フィールドの期間長の割合を可変としたことにより、1フレーム内で印加される負極性電圧の実効値と正極性電圧の実効値との割合を調整することができる。
よって、第1の現象に対する補正電圧と第2の現象に対する補正電圧とを加算した補正電圧を用いていた従来の駆動方法と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる電気光学装置の駆動方法を提供することができる。
【0056】
その上、あらかじめ設定された対向電極電位のシフト量は、第1の現象に対する補正電圧分のみであるため、第1の現象に対する補正電圧と第2の現象に対する補正電圧とを加算した補正電圧を用いていた従来の駆動方法に比べて対向電極電位のシフト量が少なくなり、液晶層への直流電圧成分の印加を抑制することができる。
従って、従来の駆動方法と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
また、駆動方法として、いわゆる倍速領域走査反転駆動を採用しているため、ライン反転駆動などの従来の駆動方法に比べて、ディスクリネーションの発生がなく、かつ、フリッカや、クロストークなどを低減することができる。
【0057】
また、これらの駆動方法は、表示データ処理回路56や、制御回路52を備えた処理回路50が、操作子70からの指定値Qの値に応じて、内蔵する各部や、電圧生成回路60を制御することにより実行される。そして、処理回路50、および電圧生成回路60によって生成された駆動信号によって、走査線駆動回路130や、データ線駆動回路140を備えた表示パネル10が表示駆動される。
ここで、電気光学装置1は、表示パネル10、処理回路50、電圧生成回路60、操作子70を含んで構成されている。
従って、従来の電気光学装置と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる電気光学装置を提供することができる。
【0058】
また、従来の電気光学装置では、初期段階に設定された補正電圧が、時間経過に拘らず、そのまま使用されていた。換言すれば、一度設定された補正電圧を使用段階で修正することは困難であった。
これに対して、電気光学装置1によれば、操作子70による指定値Qの設定は、例えば、電子機器に組み込まれた後であっても、当該電子機器の操作パネルや、リモコンなどの操作部で行うことができる。
従って、経時変化に伴うフリッカなどの表示不具合が発生した場合であっても、その段階において補正値を再設定することができる。
【0059】
(実施形態2)
図13は、実施形態2の駆動方法における走査信号系のタイミングチャートである。図14は、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態2における電気光学装置は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置と同じ構成であり、駆動方法のみが実施形態1と異なる。
詳しくは、実施形態2では、第1および第2フィールドのそれぞれにおいて、1、2、3、4、…、479、480行目という走査線の順番通りに走査線を選択し、かつ、各フィールドにおけるデータ信号の極性を反転させる、いわゆる面反転倍速駆動を採用している。
【0060】
まず、走査線の駆動方法について説明する。
図13は、指定値Qが「0」のときの走査信号系のタイミングチャートであり、実施形態1と同様に、1フレームは、第1および第2フィールドから構成されている。
本実施形態における駆動方式においても、実施形態1と同様に外部装置から供給される表示データVideoをフレームメモリ57に記憶させた後、ある画素行の走査線が選択されるとき、当該画素行の表示データを記憶速度の倍の速度で読み出す。
そして、第1および第2フィールドにおいて、当該読み出された表示データを走査線1〜480行目の順番で2倍の速度で書き込む。
【0061】
また、最上段の走査線に供給される走査信号G1は、スタートパルスDyaが供給された後、クロック信号Clyの半周期遅延したタイミングで出力される。
そして、走査信号G1に続いて、順次走査信号G2〜G480が、クロック信号Clyの論理レベルが変化する毎にクロック信号の半周期分の期間において順次Hレベルとなる。
よって、図13に示されるように、第1フィールドではスタートパルスDyaの供給を契機として1〜480行目の走査線が選択され、第2フィールドではスタートパルスDybの供給を契機として1〜480行目の走査線が選択される。また、スタートパルスDybの立ち上がりがタイミングTと一致している。
【0062】
ここで、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
また、データ信号の極性反転については、交流化信号FRによって規定されている。交流化信号FRは、スタートパルスDyaとスタートパルスDybとに同期して信号レベルが変化している。換言すれば、第1フィールドではHレベル、第2フィールドではLレベルという周期を持つ矩形波である。
データ信号は、交流化信号FRのH/Lレベルに対応して極性反転される。具体的には、第1フィールドにおいては正極性の電圧に変換され、第2フィールドにおいては負極性の電圧に変換され、1フレーム内において面反転駆動がなされている。
【0063】
また、第1フィールドにおいて480行目の走査線を選択してから、次の第2フィールドにおいて1行目の走査線を選択するまでの帰線期間Fb1が設けられている。同様に、第2フィールドにおいて480行目の走査線を選択してから、次のフレームの第1フィールドにおいて1行目の走査線を選択するまでの帰線期間Fb2が設けられている。
【0064】
図14は、指定値Qが「0」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図14に示されるように、第1フィールドにおいて1〜480行目の画素では正極性の書き込みがなされて、次の書き込みまで保持される。
一方、第2フィールドにおいて1〜480行目の画素では負極性の書き込みがなされて、同様に次の書き込みまで保持される。
このように、指定値Qが「0」であれば、第1および第2フィールドの期間は、クロック信号Clyの240周期分であるから、各画素において液晶容量120に正極性電圧が保持される期間と負極性電圧が保持される期間とはほぼ半分ずつとなる。
【0065】
図15は、指定値Qがマイナスの場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
次に、指定値Qがマイナスである場合について説明する。
図15に示されるように、指定値Qがマイナスである場合、スタートパルスDybの出力タイミングがタイミングTよりも早まるので、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも長くなる。
つまり、指定値Qが負の値であれば、その絶対値が大きくなるにつれて、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも長くなる。このため、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
なお、スタートパルスDybをタイミングTよりも早める場合において、その限界は、図15に示されるように、帰線期間Fb1がゼロとなるまでである。
【0066】
図16は、指定値Qがプラスの場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
次に、指定値Qがプラスである場合について説明する。
図16に示されるように、指定値Qがプラスである場合、スタートパルスDybの出力タイミングがタイミングTよりも遅くなるので、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも短くなる。
つまり、指定値Qが正の値であれば、その絶対値が大きくなるにつれて、スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持期間は、スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持期間よりも短くなる。このため、正極性の電圧実効値が負極性の電圧実効値を上回ることになる。
なお、スタートパルスDybをタイミングTよりも遅延させる場合において、その限界は、図16に示されるように、帰線期間Fb2がゼロとなるまでである。
【0067】
上述した通り、本実施形態によれば、実施形態1における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本実施形態の駆動方法としては、面反転倍速駆動を採用しているため、ライン反転駆動などの従来の駆動方法に比べて、ディスクリネーションの発生を抑制することができる。
また、面反転倍速駆動を行う場合においても、対向電極電位Comを第1の現象に対する補正電圧分あらかじめシフトされた値に設定するとともに、1フレームの期間長における第1および第2フィールドの期間長の割合を可変とした駆動方法を適用することができる。
従って、従来の駆動方法と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
【0068】
(実施形態3)
図17は、実施形態3の駆動方法における各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。図18は、タイミングT2における画面態様を示す図である。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態3における電気光学装置は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置と同じ構成であり、駆動方法が実施形態1と異なる。
詳しくは、実施形態3では、実施形態1と同様にいわゆる倍速領域走査反転駆動を行うが、指定値Qの値に応じて、第1または第2フィールドのいずれかにおいて、所定の階調を書き込む3本目の走査線を選択する。
【0069】
また、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
また、液晶モードは、液晶容量120において保持される電圧実効値がゼロに近ければ、液晶容量を通過する光の透過率が最小となって黒色表示になる一方、電圧実効値が大きくなるにつれて透過する光量が増加して、透過率が最大の白色表示になるノーマリーブラックモードに設定されている。
【0070】
まず、本実施形態において、指定値Qが「0」のときのタイミングチャートを含む駆動態様は、図4,9で説明した通りである。
つまり、図9に示すように、指定値Qが「0」であれば、第1および第2フィールドの期間は、クロック信号Clyの240周期分であるから、各画素において液晶容量120に正極性電圧が保持される期間と負極性電圧が保持される期間とはほぼ半分ずつとなる。
【0071】
図17は、指定値Qが「−1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図17に示されるように、指定値Qが「−1」である場合、スタートパルスDybが供給されるよりもHだけ早いタイミングで、3本目の走査線を選択するためのスタートパルスDyiが供給される。換言すれば、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分早いタイミングでスタートパルスDyiが供給される。
そして、タイミングTにおいて、スタートパルスDybが供給されることになる。
【0072】
図18は、第2フィールドの略中間のタイミングT2における瞬間の書き込み態様を示している。
以下、スタートパルスDyaで選択される走査線を走査線A、スタートパルスDyiで選択される走査線を走査線I、スタートパルスDybで選択される走査線を走査線Bとして説明する。
走査線A,I,Bは、図18の上方から下方に向って移動している。つまり、ある行の画素は、走査線Aによる正極の書き込みが行われた後、走査線Iおよび走査線Bによって書き込みが行われる。
ここで、走査線Iによる書き込みは、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分早いため、その分、走査線Aによる正極性の保持期間が短くなっている。また、走査線Iによって書き込まれるデータ信号Vidの電圧は、初期段階で設定された所定階調の電圧となっている。データ信号Vidは、好適な態様として、対向電極電位Comと同電位に設定されている。
【0073】
図21(a)は、指定値Qがマイナスの場合におけるデータ信号の波形図であり、1フレーム内において1つの画素に印加されるデータ信号の波形を示している。
詳しくは、第1フィールドでは、走査線Aによって正極のデータ信号が印加された後、走査線Iによって対向電極電位Comと同電位のデータ信号が印加される。そして、第2フィールドでは、走査線Bによって負極のデータ信号が印加されている。
つまり、正極性の保持時間が、破線で示された走査線Iの走査期間分、負極性の保持時間よりも短くなっている。
このため、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
【0074】
また、本実施例ではノーマリーブラックモードを用いており、走査線Iによって書き込まれるデータ信号が対向電極電位Comと同電位であるため、走査線Iの走査期間の間は黒が書き込まれていることになる。
よって、特に、動画を表示する場合においては、1フレームごとに走査線Iによって黒挿入を行っていることになり、インパルス型の表示態様に近づくため、動画視認性を向上させることができる。
【0075】
図19は、指定値Qが「+1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図19に示されるように、指定値Qが「+1」である場合、スタートパルスDyaが供給されるよりもHだけ早いタイミングで、3本目の走査線を選択するためのスタートパルスDyjが供給される。換言すれば、次のフレームのスタートパルスDyaよりもクロック信号Clyの1周期分早いタイミングでスタートパルスDyjが供給される。
また、スタートパルスDybは、タイミングTにおいて供給されている。
【0076】
図20は、第2フィールドの略中間のタイミングT2における瞬間の書き込み態様を示している。
以下、スタートパルスDyjで選択される走査線を走査線Jとして説明する。
走査線J,A,Bは、図20の上方から下方に向って移動している。つまり、ある行の画素は、走査線Jによる正極の書き込みが行われた後、走査線Aおよび走査線Bによって書き込みが行われる。
ここで、走査線Jによる書き込みは、次のフレームのスタートパルスDyaよりもクロック信号Clyの1周期分早いため、その分、走査線Bによる負極性の保持期間が短くなっている。また、走査線Jによって書き込まれるデータ信号Vidの電圧は、初期段階で設定された所定階調の電圧となっている。データ信号Vidは、好適な態様として、対向電極電位Comと同電位に設定されている。
【0077】
図21(b)は、指定値Qがプラスの場合におけるデータ信号の波形図であり、1フレーム内において1つの画素に印加されるデータ信号の波形を示している。
詳しくは、第1フィールドでは、走査線Aによって正極のデータ信号が印加される。そして、第2フィールドでは、走査線Bによって負極のデータ信号が印加された後、走査線Jによって対向電極電位Comと同電位のデータ信号が印加される。
つまり、負極性の保持時間が、破線で示された走査線Jの選択期間分、正極性の保持時間よりも短くなっている。
このため、正極性の電圧実効値が負極性の電圧実効値を上回ることになる。
【0078】
また、指定値Qがマイナスの場合と同様に、動画視認性を向上させることができる。なお、走査線I,Jによって書き込まれる階調は、黒に限定するものではなく、例えば、灰色などの他の階調であっても良い。
また、これらの駆動制御は、図1の処理回路50が操作子70の指定値Qに応じて、3本目の走査線としての走査線I,Jを選択するためのスタートパルスDyi,Dyjを生成するとともに、データ信号Vidとして対向電極電位Comを供給することによって実現することができる。
【0079】
上述した通り、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
指定値Qの値に応じて、第1または第2フィールドのいずれかにおいて、所定の階調を書き込む3本目の走査線I、または走査線Jを選択する駆動方法によっても、実施形態1と同様に、従来の駆動方法と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
さらに、実施形態1における効果に加えて、走査線I,Jによって書き込まれる階調が黒であるため、動画を表示する場合においては、1フレームごとに黒挿入を行っていることになり、インパルス型の表示態様に近づくため、動画視認性を向上させることができる。
本実施形態においてはノーマリーブラックモードを例としてあげたが、ノーマリーホワイトモードにおいても、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制する効果を得ることができる。ノーマリーホワイトモードの場合は、VidをComではなく黒表示をするための電圧Vsatに近い値に設定すれば、さらに動画視認性を向上させることができる。とくに、Vid>Vsatとすれば、表示状態に関わらず、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制しつつ、動画視認性を向上させるという効果が得られる。ただし、Vid>Vsatの場合には、Qを調整する方向をVid=Vcomの場合とは逆方向にする。
【0080】
(実施形態4)
図22,23は、実施形態4の駆動方法における各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
ここでは、実施形態1〜3における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態4における電気光学装置は、図1〜3で説明した実施形態1の電気光学装置と同じ構成を備えている。
また、実施形態4の駆動方法では、実施形態2と同様に面反転倍速駆動を行うが、指定値Qの値に応じて、実施形態3と同様に第1または第2フィールドのいずれかにおいて、所定の階調を書き込む走査線を選択する。
また、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
また、液晶モードは、ノーマリーブラックモードに設定されている。
【0081】
まず、本実施形態において、指定値Qが「0」のときのタイミングチャートを含む駆動態様は、図13,14で説明した通りである。
つまり、図14に示すように、指定値Qが「0」であれば、第1および第2フィールドの期間は、クロック信号Clyの240周期分であるから、各画素において液晶容量120に正極性電圧が保持される期間と負極性電圧が保持される期間とはほぼ半分ずつとなる。
【0082】
図22は、指定値Qが「−1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図22に示されるように、指定値Qが「−1」である場合、スタートパルスDybが供給されるよりもHだけ早いタイミングで、所定の階調を書き込むための走査線を選択するためのスタートパルスDyiが供給される。換言すれば、タイミングTよりもクロック信号Clyの1周期分早いタイミングでスタートパルスDyiが供給される。そして、タイミングTにおいて、スタートパルスDybが供給されることになる。
また、スタートパルスDyiを起点とした走査線Iによって書き込まれるデータ信号Vidは、対向電極電位Comと同電位に設定されている。
つまり、スタートパルスDyaを起点とした走査線Aによる正極性の保持期間が、スタートパルスDybを起点とした走査線Bによる負極性の保持期間よりも、走査線Iによる書き込み分(クロック信号Clyの1周期分)短くなっている。
【0083】
よって、図21(a)に示すように、1フレーム内で印加されるデータ信号Vidにおいて、正極性の保持時間が、破線で示された走査線Iの走査期間分、正極性の保持時間よりも短くなっている。
このため、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
【0084】
図23は、指定値Qが「+1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図である。
図23に示されるように、指定値Qが「+1」である場合、スタートパルスDyaが供給されるよりもHだけ早いタイミングで、所定の階調を書き込むための走査線Jを選択するためのスタートパルスDyjが供給される。換言すれば、次のフレームのスタートパルスDyaよりもクロック信号Clyの1周期分早いタイミングでスタートパルスDyjが供給される。そして、タイミングTにおいて、スタートパルスDybが供給されることになる。
また、スタートパルスDyjを起点とした走査線Jによって書き込まれるデータ信号Vidは、対向電極電位Comと同電位に設定されている。
つまり、スタートパルスDybを起点とした走査線Bによる負極性の保持期間が、スタートパルスDyaを起点とした走査線Aによる正極性の保持期間よりも、走査線Jによる書き込み分(クロック信号Clyの1周期分)短くなっている。
【0085】
よって、図21(b)に示すように、1フレーム内で印加されるデータ信号Vidにおいて、負極性の保持時間が、破線で示された走査線Jの走査期間分、正極性の保持時間よりも短くなっている。
このため、正極性の電圧実効値が負極性の電圧実効値を上回ることになる。
また、走査線Jによって書き込まれるデータ信号が対向電極電位Comと同電位であるため、ノーマリーブラックモードにおいては黒が書き込まれていることになる。
よって、特に、動画を表示する場合においては、1フレームごとに走査線Jによって黒挿入を行っていることになり、インパルス型の表示態様に近づくため、動画視認性を向上させることができる。
【0086】
上述した通り、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
面反転倍速駆動を行う場合においても、指定値Qの値に応じて、第1または第2フィールドのいずれかにおいて、所定の階調を書き込む3本目の走査線I、または走査線Jを選択する駆動方法を適用することができる。
従って、面反転倍速駆動を行う場合においても、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
本実施形態においてはノーマリーブラックモードを例としてあげたが、ノーマリーホワイトモードにおいても、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制する効果を得ることができる。ノーマリーホワイトモードの場合は、VidをComではなく黒表示をするための電圧Vsatに近い値に設定すれば、さらに動画視認性を向上させることができる。とくに、Vid>Vsatとすれば、表示状態に関わらず、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制しつつ、動画視認性を向上させるという効果が得られる。ただし、Vid>Vsatの場合には、Qを調整する方向をVid=Vcomの場合とは逆方向にする。
【0087】
(実施形態5)
図24は、実施形態5の駆動方法に係るタイミングチャートである。
ここでは、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態5における電気光学装置は、図1の処理回路50において、フレームメモリ57の構成を簡略化した構成となっている。詳しくは、フレームメモリ57において倍速駆動に用いられていた分のメモリ容量を削減した構成となっている。
また、実施形態5では、垂直同期信号Vsごとにデータ信号Vidの極性を反転させるフレーム反転駆動をベースとして、直流電圧成分を抑制することが可能な駆動方法を採用している。
【0088】
まず、本実施形態における駆動方法を説明するために、図24を用いて、従来技術におけるフレーム反転駆動の概要について説明する。
図24には、垂直同期信号Vs、本実施形態における交流化信号FR、データ信号Vid、および従来技術における交流化信号FRxの出力タイミングが示されている。
従来の駆動方法において、交流化信号FRxは、垂直同期信号Vsの出力タイミングと同期してレベルが変化していた。換言すると、1フレームごとにレベルが変化していた。
よって、交流化信号FRxの極性と同じ極性の出力となるデータ信号も、1フレームごとに極性反転する矩形波(図示せず)となっていた。
また、対向電極電位は、第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧と第2の現象(特性差)に対する補正電圧とを加算した補正電圧分シフトした値に設定されていた。
【0089】
これに対して、本実施形態の駆動方法では、まず、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
そして、例えば、連続する5つのフレームを一つの単位として、指定値Qの値に応じて、正負極性を印加するフレーム数の割合を調整する。換言すれば、5フレームの期間長において、正極性のデータ信号が印加される期間長と、負極性のデータ信号が印加される期間長との割合を調整する。
【0090】
指定値Qがマイナスの場合は、例えば、図24に示されるように、正極性のフレームが2フレーム、負極性のフレームが3フレームの順番で、正負の割合が2:3となるように交流化信号FRが生成される。よって、データ信号Vidも、交流化信号FRのレベルに従い、正極性のデータ信号Vidが2フレーム、負極性のデータ信号Vidが3フレームの順番で生成される。
これにより、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
なお、交流化信号FRのレベルの並びは、上記順番に限定するものではなく、正負の割合が2:3となれば良い。例えば、負極性で1フレーム、正極性で1フレーム、負極性で1フレーム、正極性で1フレーム、負極性で1フレームという順番であっても良い。
【0091】
また、指定値Qがプラスの場合、例えば、正極性のフレームが3フレーム、負極性のフレームが2フレームの順番で、正負の割合が3:2となる交流化信号FRが処理回路50で生成される。
よって、データ信号Vidも、交流化信号FRのレベルに従い、正極性のデータ信号Vidが3フレーム、負極性のデータ信号Vidが2フレームの順番で生成される。
これにより、正極性の電圧実効値が負極性の電圧実効値を上回ることになる。
また、指定値Qがゼロの場合は、従来の交流化信号FRxが生成される。
なお、ここでは、5つのフレームを一つの単位とした場合について説明したが、フレーム数は、3フレーム以上の複数であれば良く、第2の現象における補正電圧の大きさに応じて適宜定めれば良い。
また、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
【0092】
上述した通り、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
フレーム単位でデータ信号Vidの極性を反転させるフレーム反転駆動において、対向電極電位Comを第1の現象に対する補正電圧分シフトして設定するとともに、連続する3つ以上のフレームを一つの単位として、指定値Qの値に応じて、正負極性を印加するフレーム数の割合を調整することにより、従来の駆動方法と比べて、フリッカおよび表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制することができる。
また、垂直同期信号Vsをトリガとした1フレームにおいて、各走査線は1回選択されるのみであるため、フレームメモリ57(図1)の構成が簡素化されるため、電気光学装置の構成をシンプルにすることができる。特に、外部装置から供給される表示データVideoや、垂直同期信号Vsなどを含む画像信号が、表示パネル10の解像度および特性に適合したものであった場合には、フレームメモリ57(図1)の構成をなくすことも可能であるため、小型、またはローエンドの電気光学装置にも適用することができる。
【0093】
連続する5つのフレームを一つの単位とした場合、20%刻みでの補正を行うことが可能であるため、第2の現象における補正電圧が大きい場合であっても補正を行うことができる。また、一単位を構成するフレーム数を増やすことによって、補正幅を小さくすることもできる。
【0094】
(実施形態6)
図25は、実施形態6の駆動方法に係るタイミングチャートである。
ここでは、実施形態5における説明と重複する部分は省略し、また、同一の構成部位については同一の番号を附して説明する。
実施形態6の電気光学装置の構成は、実施形態5の電気光学装置構成と同様である。
実施形態6の駆動方法は、交流化信号FRのレベル変化のタイミングを垂直同期信号Vsと非同期としたことのみ、実施形態5の駆動方法と異なる。
【0095】
本実施形態の駆動方法においても、実施形態5と同様に、例えば、5つのフレームを一つの単位として、指定値Qの値に応じて、正負極性をそれぞれ印加するフレーム数の割合を調整するが、極性が跨るフレームが発生する場合がある。
例えば、指定値Qがマイナスの場合、図25に示されるように、交流化信号FRは、正極性で1フレームの後に、正極性と負極性とに跨る1フレームが存在し、そして、負極性の3フレームという波形になっている。詳しくは、正負の割合が1.8:3.2となっている。
ここで、正極性と負極性とに跨る1フレームにおける極性反転タイミングは、垂直同期信号Vsに同期しておらず、指定値Qの値に応じたタイミングとなっている。詳しくは、当該極性反転タイミングは、5フレーム内において、第2の現象の補正電圧に応じて、垂直同期信号Vsに依存せずに、最適な正負極の分割割合となるタイミングに設定されている。なお、このタイミングは、垂直同期信号Vsよりも短い周期の信号、例えば、クロック信号Clyなどに同期させることによって、設定されている。
【0096】
よって、データ信号Vidも、交流化信号FRのレベルに従い、正負が1.8:3.2の割合で生成される。
これにより、液晶容量120に印加される正極性電圧と負極性電圧とのバランスが崩れ、負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
また、指定値Qがプラスの場合は、例えば、正極性で3フレーム、正極性と負極性とに跨る1フレーム、負極性で1フレームの順番で、正負の割合が3.3:1.7となる交流化信号FRが生成される。
よって、データ信号Vidも、交流化信号FRの極性に従い、正負が3.3:1.7の割合で生成される。
これにより、正極性の電圧実効値が負極性の電圧実効値を上回ることになる。
また、指定値Qがゼロの場合は、従来の交流化信号FRxが生成される。
また、対向電極電位Comについては、実施形態1と同様に、基準電圧Vcよりも第1の現象(フィールドスルー)に対する補正電圧分シフトして設定されている。
【0097】
上述した通り、本実施形態によれば、実施形態5における効果に加えて以下の効果を得ることができる。
正極性と負極性とに跨る1フレームにおける極性反転タイミングを垂直同期信号Vsとは非同期の指定値Qの値に応じたタイミングとしたことにより、フレーム単位よりも、細かな補正を行うことができる。
例えば、1フレームの期間長を10分割した場合、2%刻みでの調整を行うことができる。
従って、第2の現象における補正電圧が大きい場合であっても精度良く補正を行うことができる。
【0098】
(電子機器)
図26は、上述した電気光学装置1の表示パネル10をライトバルブとして用いた3板式プロジェクタの構成を示す平面図である。
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置を用いた電子機器の例について説明する。
プロジェクタ2100において、ライトバルブに入射させるための光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0099】
ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの構成は、上述した各実施形態における表示パネル10と同様であり、外部装置(図示省略)から供給されるR、G、Bの各色に対応する画像データでそれぞれ駆動される。
ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。
ダイクロイックプリズム2112において合成されたカラー画像を表す光は、レンズユニット2114によって拡大投射され、スクリーン2120上にフルカラー画像が表示される。
【0100】
なお、ライトバルブ100R、100Bの透過像がダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるため、ライトバルブ100R、100Bにより形成される画像と、ライトバルブ100Gにより形成される画像とが左右反転の関係になるように設定されている。
【0101】
また、電子機器としては、図26を参照して説明した他にも、リアプロジェクション型のテレビジョンや、直視型、例えば携帯電話や、パーソナルコンピュータ、ビデオカメラのモニタ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ディジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの電子機器に対しても、本発明に係る電気光学装置を適用させることができる。
【0102】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0103】
(変形例)
上述した各実施形態においては、ある1行の走査線112に沿った画素に対して、階調に応じた電圧を、1列〜640列のデータ信号Vidを順番にサンプリングすることによって、当該行の画素を1列から640列まで順に書き込むという、いわゆる点順次の構成としたが、データ信号を時間軸にn(nは2以上の整数)倍に伸長するとともに、n本の画像信号線に供給する、いわゆる相展開(シリアル−パラレル変換ともいう)駆動を併用した構成としても良い(特開2000−112437号公報参照)。
または、すべてのデータ線114に対してデータ信号を一括して供給する、いわゆる線順次の構成としても良い。
これらの駆動方法であっても、各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
また、上記各実施形態では、液晶モードとして、電圧無印加状態において白色を表示するノーマリーホワイトモード、または、電圧無印加状態において黒色を表示するノーマリーブラックモードのいずれか一方を適用した形態について説明したが、異なる他方の液晶モードにおいても適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施形態1に係る電気光学装置の概略構成図。
【図2】表示パネルの構成図。
【図3】画素の等価回路図。
【図4】指定値が「0」のときの走査信号系のタイミングチャートを示す図。
【図5】指定値が「−1」のときの走査信号系のタイミングチャートを示す図。
【図6】指定値が「+1」のときの走査信号系のタイミングチャートを示す図。
【図7】データ信号系の第1フィールドにおけるタイミングチャートを示す図。
【図8】データ信号系の第2フィールドにおけるタイミングチャートを示す図。
【図9】指定値が「0」の場合における、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図10】指定値が「−1」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図11】指定値が「+1」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図12】実施形態1の駆動方法による実験データを示すグラフを示す図。
【図13】実施形態2の駆動方法における走査信号系のタイミングチャートを示す図。
【図14】指定値が「0」の場合における、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図15】指定値がマイナスの場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図16】指定値がプラスの場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図17】実施形態3の駆動方法における指定値Qが「−1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図18】タイミングT2における画面態様図。
【図19】指定値が「+1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図20】タイミングT2における画面態様図。
【図21】(a)指定値がマイナスの場合におけるデータ信号の波形図、(b)指定値Qがプラスの場合におけるデータ信号の波形図。
【図22】実施形態4の駆動方法における指定値が「−1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図23】指定値が「+1」の場合において、各行の書込状態を連続するフレームに渡る時間経過とともに示した図。
【図24】実施形態5の駆動方法に係るタイミングチャートを示す図。
【図25】実施形態6の駆動方法に係るタイミングチャートを示す図。
【図26】プロジェクタの構成を示す平面図。
【図27】第2の現象における補正電圧と駆動電圧との関係を示す図。
【符号の説明】
【0105】
1…電気光学装置、10…表示パネル、50…処理回路、52…制御回路、56…表示データ処理回路、60…電圧生成回路、70…操作子、108…対向電極、112…走査線、114…データ線、116…スイッチングトランジスタとしてのTFT、118…画素電極、130…走査線駆動回路、140…データ線駆動回路、Com…対向電極電位、Q…指定値、Vid…データ信号、Vs…垂直同期信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線と複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、前記画素電極と対向する対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に挟持された電気光学層とを、備えた電気光学装置の駆動方法であって、
前記対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、前記画素電極に対して、前記データ線を介して前記正極性の電圧と前記負極性の電圧とが交互に現れるデータ信号を供給し、
前記対向電極電位は、前記スイッチングトランジスタの寄生容量に起因するフリッカを低減するように設定され、
第1の期間と第2の期間とからなる所定の期間において、
前記第1の期間では、前記正極性または前記負極性のうち、いずれか一方の極性の電圧である第1電圧が前記画素電極に供給され、
前記第2の期間では、前記第1電圧とは異なる極性の第2電圧が前記画素電極に供給され、
前記所定の期間における前記第1の期間の長さと、前記第2の期間の長さとの割合を可変としたことを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項2】
前記所定の期間は、1フレームに相当し、
前記1フレームは、第1フィールドと、第2フィールドとから構成され、
前記第1フィールドは前記第1の期間に相当し、
前記第2フィールドは前記第2の期間に相当することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項3】
前記第1フィールド、または前記第2フィールドのいずれかにおいて、
所定の階調を表す第3電圧を前記データ信号として前記データ線に所定の期間供給することにより、前記1フレームにおける前記第1および第2フィールドの期間長の割合を調整することを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項4】
前記第3電圧は、黒表示に相当する階調の電圧であることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項5】
前記走査線がN本設けられ、1番目の前記走査線乃至M番目の前記走査線までを第1走査線群とし、M+1番目の前記走査線乃至N番目の前記走査線までを第2走査線群としたとき、
前記1フレームに渡って、前記第1走査線群におけるいずれか1本の走査線と前記第2走査線群におけるいずれか1本とが交互に選択され、
前記第1フィールドでは、前記第1走査線群に対応した前記画素電極には前記第1電圧が印加され、前記第2走査線群に対応した前記画素電極には前記第2電圧が印加され、
前記第2フィールドでは、前記第1走査線群に対応した前記画素電極には前記第2電圧が印加され、前記第2走査線群に対応した前記画素電極には前記第1電圧が印加されるように駆動されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項6】
前記所定の期間は、連続した2つ以上のフレームからなる複数フレームに相当し、
前記所定の期間における、前記正極性の電圧が印加される期間長と、前記負極性の電圧が印加される期間長との割合を可変としたことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項7】
複数の走査線と複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、前記画素電極と対向する対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に挟持された電気光学層とを、備えた電気光学装置であって、
前記対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、前記画素電極に対して、前記データ線を介して前記正極性の電圧と前記負極性の電圧とが交互に現れるデータ信号を供給し、
前記対向電極には、前記スイッチングトランジスタの寄生容量に起因するフリッカを低減するように設定された対向電極電位を供給し、
第1の期間と第2の期間とからなる所定の期間において、
前記第1の期間では、前記正極性または前記負極性のうち、いずれか一方の極性の電圧である第1電圧を前記画素電極に供給し、
前記第2の期間では、前記第1電圧とは異なる極性の第2電圧を前記画素電極に供給し、
前記所定の期間における前記第1の期間の長さと、前記第2の期間の長さとの割合を調整する制御回路を、さらに備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
複数の走査線と複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、前記画素電極と対向する対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に挟持された電気光学層とを、備えた電気光学装置の駆動方法であって、
前記対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、前記画素電極に対して、前記データ線を介して前記正極性の電圧と前記負極性の電圧とが交互に現れるデータ信号を供給し、
前記対向電極電位は、前記スイッチングトランジスタの寄生容量に起因するフリッカを低減するように設定され、
第1の期間と第2の期間とからなる所定の期間において、
前記第1の期間では、前記正極性または前記負極性のうち、いずれか一方の極性の電圧である第1電圧が前記画素電極に供給され、
前記第2の期間では、前記第1電圧とは異なる極性の第2電圧が前記画素電極に供給され、
前記所定の期間における前記第1の期間の長さと、前記第2の期間の長さとの割合を可変としたことを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項2】
前記所定の期間は、1フレームに相当し、
前記1フレームは、第1フィールドと、第2フィールドとから構成され、
前記第1フィールドは前記第1の期間に相当し、
前記第2フィールドは前記第2の期間に相当することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項3】
前記第1フィールド、または前記第2フィールドのいずれかにおいて、
所定の階調を表す第3電圧を前記データ信号として前記データ線に所定の期間供給することにより、前記1フレームにおける前記第1および第2フィールドの期間長の割合を調整することを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項4】
前記第3電圧は、黒表示に相当する階調の電圧であることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項5】
前記走査線がN本設けられ、1番目の前記走査線乃至M番目の前記走査線までを第1走査線群とし、M+1番目の前記走査線乃至N番目の前記走査線までを第2走査線群としたとき、
前記1フレームに渡って、前記第1走査線群におけるいずれか1本の走査線と前記第2走査線群におけるいずれか1本とが交互に選択され、
前記第1フィールドでは、前記第1走査線群に対応した前記画素電極には前記第1電圧が印加され、前記第2走査線群に対応した前記画素電極には前記第2電圧が印加され、
前記第2フィールドでは、前記第1走査線群に対応した前記画素電極には前記第2電圧が印加され、前記第2走査線群に対応した前記画素電極には前記第1電圧が印加されるように駆動されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項6】
前記所定の期間は、連続した2つ以上のフレームからなる複数フレームに相当し、
前記所定の期間における、前記正極性の電圧が印加される期間長と、前記負極性の電圧が印加される期間長との割合を可変としたことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項7】
複数の走査線と複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスタおよび画素電極と、前記画素電極と対向する対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に挟持された電気光学層とを、備えた電気光学装置であって、
前記対向電極に印加される対向電極電位を基準として高位の電圧を正極性、低位の電圧を負極性としたときに、前記画素電極に対して、前記データ線を介して前記正極性の電圧と前記負極性の電圧とが交互に現れるデータ信号を供給し、
前記対向電極には、前記スイッチングトランジスタの寄生容量に起因するフリッカを低減するように設定された対向電極電位を供給し、
第1の期間と第2の期間とからなる所定の期間において、
前記第1の期間では、前記正極性または前記負極性のうち、いずれか一方の極性の電圧である第1電圧を前記画素電極に供給し、
前記第2の期間では、前記第1電圧とは異なる極性の第2電圧を前記画素電極に供給し、
前記所定の期間における前記第1の期間の長さと、前記第2の期間の長さとの割合を調整する制御回路を、さらに備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2010−79151(P2010−79151A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249799(P2008−249799)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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