電気光学装置、駆動回路および電子機器
【課題】簡潔な方法で欠陥素子の影響を目立たなくする。
【解決手段】電気光学装置Hは、光量が可変である複数の電気光学素子Eと、各電気光学素子Eの光量を制御する駆動回路20とを具備する。駆動回路20は、複数の電気光学素子Eのうち、欠陥素子EAに近接した位置にある所定数の補填用素子EAと、各補填用素子EAと比較して欠陥素子EAから離間した位置にある標準素子E0とに対して同じ階調値が指定された場合に、各補填用素子EAが標準素子E0よりも大きい光量となるように、各電気光学素子Eを駆動する。
【解決手段】電気光学装置Hは、光量が可変である複数の電気光学素子Eと、各電気光学素子Eの光量を制御する駆動回路20とを具備する。駆動回路20は、複数の電気光学素子Eのうち、欠陥素子EAに近接した位置にある所定数の補填用素子EAと、各補填用素子EAと比較して欠陥素子EAから離間した位置にある標準素子E0とに対して同じ階調値が指定された場合に、各補填用素子EAが標準素子E0よりも大きい光量となるように、各電気光学素子Eを駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子などの電気光学素子を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電気光学素子を配列した電気光学装置においては、電気光学素子自体やその駆動に使用される能動素子または配線など各要素の不良に起因して、特定の電気光学素子(以下「欠陥素子」という)の光量が規定値を下回る場合や全く発光しない場合がある。特許文献1には、画像の位置をシフトしながら複数回にわたる露光を実施することで感光体の表面にひとつの潜像を形成する技術が開示されている。この技術によれば、欠陥素子の影響が画像のシフトによって分散されるから、実際に出力される可視像においては欠陥素子における光量の不足の影響を目立たなくすることが可能である。
【特許文献1】特開平9−61939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の構成においては、ひとつの画像について複数回の露光や画像のシフトといった煩雑な制御が必要になるという問題がある。また、ひとつの画像について1回の露光で潜像が形成される場合と比較して消費電力が増大するという問題もある。以上の事情に鑑みて、本発明は、簡潔な方法で欠陥素子の影響を目立たなくするという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、本発明のひとつの態様に係る電気光学装置は、光量が可変である複数の電気光学素子と、複数の電気光学素子の各々の光量を制御する駆動回路とを具備し、駆動回路は、複数の電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子(例えば図5や図7の欠陥素子ED)に近接した位置にある所定数(ひとつまたは複数)の第1電気光学素子(例えば図5や図7の補填用素子EA)と、所定数の第1電気光学素子と比較して欠陥に係る電気光学素子から離間した位置(すなわち欠陥に係る電気光学素子との距離が、所定数の第1電気光学素子と欠陥に係る電気光学素子との距離よりも大きい位置)にある第2電気光学素子(例えば図5や図7の標準素子E0)とに対して同じ階調値が指定された場合に、所定数の第1電気光学素子が第2電気光学素子よりも大きい光量となるように、各電気光学素子を駆動する。
【0005】
以上の構成においては、欠陥に係る電気光学素子に近接した位置にある第1電気光学素子が第2電気光学素子と比較して大きい光量に駆動される。したがって、複数回の露光や画素のシフトといった煩雑な制御を不要として消費電力を低減しながら、電気光学素子の欠陥を目立たなくすることが可能である。なお、電気光学素子は、駆動回路から付与される電気エネルギに応じた光量を出射する要素である。欠陥に係る電気光学素子とは、当該電気光学素子自体の不良やその駆動に使用される要素(例えば能動素子や配線など)の不良に起因して、特定の階調値を指定したときの光量が所定値を下回るか全く発光しない電気光学素子を意味する。
【0006】
また、欠陥に係る電気光学素子に第1電気光学素子が「近接する」とは、典型的には第1電気光学素子と欠陥に係る電気光学素子とが相互に隣接する場合(すなわち両者の間隙に他の電気光学素子が介在しない場合)であるが、第1電気光学素子と欠陥に係る電気光学素子との間隙に他の電気光学素子が介在する場合であっても、例えば電気光学装置が出力する画像を利用者が視認したときに、欠陥に係る電気光学素子の光量の不足の影響が、第1電気光学素子の光量の増加によって利用者に知覚されない程度に低減されるのであれば、第1電気光学素子と欠陥に係る電気光学素子とは「近接する」と言える。
【0007】
本発明の好適な態様に係る電気光学装置は、各電気光学素子の補正値を記憶する記憶回路を具備し、駆動回路は、各電気光学素子に対応した複数の単位回路を含み、複数の単位回路の各々は、当該単位回路に対応した電気光学素子の補正値に応じたレベル(電圧値または電流値)の駆動信号を生成する生成手段(例えば図3のトランジスタQ2)と、生成手段が生成した駆動信号を当該電気光学素子の階調値に応じた時間長にわたって各電気光学素子に供給する駆動制御手段(例えば図3のトランジスタQ3)とを含み、記憶回路が記憶する各補正値は、所定数の第1電気光学素子に供給される駆動信号が第2電気光学素子に供給される駆動信号よりも高いレベルとなるように設定される。以上の態様における駆動信号は、電流信号(例えば図2の駆動電流IDR)および電圧信号の何れでもよい。駆動信号のレベルとは、駆動信号が電流信号であれば電流値であり、駆動信号が電圧信号であれば電圧値である。また、単位回路ごとに個別の記憶回路が設置されてもよいし、複数の単位回路に共用されるひとつの記憶回路が設置されてもよい。
【0008】
さらに具体的な態様において、駆動回路は、各々に同じ階調値が指定されたときの複数の第2電気光学素子の光量が均一化されるように第2電気光学素子の光量を補正する。以上の態様によれば、電気光学素子の欠陥の影響に加えて各電気光学素子の光量のムラも抑制することが可能である。
【0009】
第1電気光学素子と欠陥に係る電気光学素子との位置的な関係は任意である。例えば、画像の内容に重大な影響を与えずに、欠陥に係る電気光学素子における光量の不足を有効に補填するという観点からすると、所定数の第1電気光学素子が、欠陥に係る電気光学素子に隣接する電気光学素子を含む構成(欠陥に係る電気光学素子の両側に第1電気光学素子が位置するか否かは不問)や、欠陥に係る電気光学素子の両側に位置する各電気光学素子を含む構成(欠陥に係る電気光学素子に第1電気光学素子が隣接するか否かは不問)が好適に採用される。また、例えば複数の電気光学素子が複数列(例えば2列かつ千鳥状)に配列された構成においては、欠陥に係る電気光学素子が存在するひとつの列内において当該電気光学素子の両側に位置する素子が第1電気光学素子とされる。
さらに具体的な態様において、所定数の第1電気光学素子は、欠陥に係る電気光学素子の一方の側に隣接する複数の電気光学素子と他方の側に隣接する複数の電気光学素子とを含む。本態様における駆動回路は、例えば、所定数の第1電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子に近い位置にある第1電気光学素子ほど相対的に大きい光量となるように、各電気光学素子を駆動する。以上の態様によれば、各電気光学素子の光量が欠陥からの距離に応じて段階的に制御されるから、電気光学素子の欠陥をいっそう目立たなくすることが可能である。
また、所定数の第1電気光学素子が、前記欠陥に係る電気光学素子に隣接する複数の電気光学素子を含む構成においては、所定数の第1電気光学素子のうち、前記欠陥に係る電気光学素子に近い位置にある第1電気光学素子ほど大きい光量となるように、前記各電気光学素子を駆動する構成としてもよい。
【0010】
なお、第1電気光学素子の光量を恒常的に増加させる必要は必ずしもない。例えば、本発明の好適な態様に係る駆動回路は、第1電気光学素子と第2電気光学素子とに対して同じ階調値が指定されたときに、欠陥に係る電気光学素子に所定値を上回る階調値が指定された場合には、所定数の第1電気光学素子が第2電気光学素子よりも大きい光量となり、欠陥に係る電気光学素子に所定値を下回る階調値が指定された場合には、所定数の第1電気光学素子が第2電気光学素子と同等の光量となるように、各電気光学素子を駆動する。以上の態様によれば、第1電気光学素子の光量を恒常的に増加させる構成と比較して、第1電気光学素子の劣化を抑制することが可能となる。
【0011】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。本発明に係る電子機器の典型例は、以上の各態様に係る電気光学装置を感光体ドラムなどの像担持体の露光に利用した電子写真方式の画像形成装置である。この画像形成装置は、露光によって潜像が形成される像担持体(例えば感光体ドラム)と、像担持体を露光する本発明の電気光学装置と、像担持体の潜像に対する現像剤(例えばトナー)の付加によって顕像を形成する現像器とを含む。もっとも、本発明に係る電気光学装置の用途は像担持体の露光に限定されない。例えば、スキャナなどの画像読取装置においては、本発明に係る電気光学装置を原稿の照明に利用することが可能である。この画像読取装置は、以上の各態様に係る電気光学装置と、電気光学装置から出射して読取対象(原稿)で反射した光を電気信号に変換する受光装置(例えばCCD(Charge Coupled Device)素子などの受光素子)とを具備する。
【0012】
さらに、電気光学素子がマトリクス状に配列された電気光学装置は、パーソナルコンピュータや携帯電話機など各種の電子機器の表示装置としても利用される。相互に交差する第1方向および第2方向にわたって平面状に複数の電気光学素子が配列された電気光学装置においては、第1方向および第2方向の少なくとも一方に沿って欠陥の電気光学素子に近接する第1電気光学素子の光量が増加するように駆動回路が各電気光学素子を駆動する。例えば、欠陥に係るひとつの電気光学素子に対して第1方向および第2方向の各々の両側に隣接する4個の第1電気光学素子の光量が増加する。
【0013】
また、以上の各態様に係る電気光学装置を駆動する回路としても本発明は特定される。本発明のひとつの態様に係る駆動回路は、複数の電気光学素子の各々の光量を制御する回路であって、複数の電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子に近接した位置にある所定数の第1電気光学素子と、第1電気光学素子と比較して欠陥に係る電気光学素子から離間した位置にある第2電気光学素子とに対して同じ階調値が指定された場合に、所定数の第1電気光学素子が第2電気光学素子よりも大きい光量となるように、各電気光学素子を駆動する。以上の駆動回路によっても、本発明に係る電気光学装置と同様の作用および効果が奏される。
【0014】
また、以上の各態様に係る電気光学装置を駆動する方法としても本発明は特定される。本発明のひとつの態様に係る駆動方法は、複数の電気光学素子の各々の光量を制御する方法であって、複数の電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子に近接した位置にある所定数の第1電気光学素子と、第1電気光学素子と比較して欠陥に係る電気光学素子から離間した位置にある第2電気光学素子とに対して同じ階調値が指定された場合に、所定数の第1電気光学素子が第2電気光学素子よりも大きい光量となるように、各電気光学素子を駆動する。以上の駆動方法によっても、本発明に係る電気光学装置と同様の作用および効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。電気光学装置Hは、感光体ドラムを露光するラインヘッド(露光装置)として電子写真方式の画像形成装置に利用される機器であり、図1に示すように素子部10と駆動回路20とを具備する。
【0016】
素子部10は、X方向(主走査方向)に沿って直線状に配列するn個の電気光学素子Eを含む(nは2以上の自然数)。電気光学素子Eは、相互に対向する陽極と陰極との間に有機EL(Electroluminescence)材料の発光層が介在する有機発光ダイオード素子である。各電気光学素子Eからの出射光が照射されることで感光体ドラムの表面には所望の潜像が形成される。なお、複数の電気光学素子Eが複数列(例えば2列かつ千鳥状)に配列された構成も採用される。
【0017】
駆動回路20は、各電気光学素子Eの光量を制御する。なお、駆動回路20は、ひとつまたは複数のICチップで構成されてもよいし、各電気光学素子Eとともに基板の表面に形成された多数の能動素子(例えば半導体層が低温ポリシリコンで形成された薄膜トランジスタ)で構成されてもよい。図1に示すように、駆動回路20は、各々が別個の電気光学素子Eに対応するn個の単位回路Uを含む。第i段目(iは1≦i≦nを満たす整数)の単位回路Uは駆動信号S[i]を出力する。
【0018】
図2は、駆動信号S[i](S[1]〜S[n])の波形を示すタイミングチャートである。図2に示すように、駆動信号S[i]は、所定の期間(例えば水平走査期間)Tのうち第i段目の電気光学素子Eに指定された階調値に応じた期間TGにて駆動電流IDRとなり、当該期間Tの残余の期間にて電流値がゼロとなる電流信号である。電気光学素子Eは、駆動電流IDRの供給によって発光するとともに駆動電流IDRの供給が停止すると消灯する。
【0019】
図3は、各単位回路Uの構成を示す回路図である。なお、同図においては、第i段目のひとつの単位回路Uのみが代表的に図示されている。図3に示すように、単位回路Uは、補正回路22とpチャネル型のトランジスタQ1〜Q3とを含む。補正回路22は、駆動電流IDRの基礎となる制御電流ICTを生成する手段である。
【0020】
図4は、補正回路22の具体的な構成を示す回路図である。同図に示すように、補正回路22は、基準電流源221と記憶回路223とD/A変換器225とを含む。基準電流源221は、自身のゲートに印加される基準電位VREF1に応じた基準電流IREFを生成するnチャネル型のトランジスタである。
【0021】
記憶回路223は、単位回路Uごとに設定された補正値A(ビットa1〜a4の4ビット)を記憶する。第i段目の単位回路Uの記憶回路223に格納される補正値Aは、駆動信号S[i]における駆動電流IDRの補正の程度(すなわち第i段目の電気光学素子Eの光量を補正する程度)を指定する数値である。本実施形態の記憶回路223は、電気光学装置Hの製造時に格納された補正値Aを不揮発的に記憶するメモリ(たとえばROM(Read Only Memory))である。ただし、外部から供給される補正値Aを電気光学装置Hの電源の投入のたびに記憶するメモリを記憶回路223として採用してもよい。なお、各単位回路Uの補正値Aを設定する方法については後述する。
【0022】
D/A変換器225は、記憶回路223に記憶された補正値Aに応じた補正電流Ixを生成する手段であり、補正値Aのビット数に相当する4個のnチャネル型のトランジスタTA(TA1〜TA4)と、各々のドレインがトランジスタTAのソースに接続された4個のnチャネル型のトランジスタTB(TB1〜TB4)とを含む。各トランジスタTAのドレインは基準電流源221のドレインとともにノードNに接続され、各トランジスタTBのソースは基準電流源221のソースとともに接地される。
【0023】
トランジスタTB1〜TB4は、各々のゲートに印加される基準電位VREF2に応じた電流を生成する電流源として機能する。トランジスタTB1〜TB4の電気的な特性(例えば利得係数)は、ゲートに対する基準電位VREF2の供給によって各々に流れる電流c1〜c4の電流値の相対比が2のべき乗(c1:c2:c3:c4=1:2:4:8)となるように設定される。
【0024】
図4に示すように、トランジスタTA1〜TA4の各々は、記憶回路223に記憶された補正値Aの各ビット(a1〜a4)に応じて選択的に導通する。したがって、ノードNとD/A変換器225とを連結する経路には、補正値Aに応じた電流値の補正電流Ixが流れる。以上の構成により、基準電流IREFと補正電流Ixとを加算した制御電流ICTがノードNに流れる。
【0025】
図3に示すように、トランジスタQ1およびQ2の各々のソースは高位側の電源(VEL)に接続される。トランジスタQ1のドレインは、補正回路22のノードNと自身のゲートとに接続される。トランジスタQ1およびQ2は、各々のゲートが相互に接続されることでカレントミラー回路を構成する。したがって、補正回路22の生成した制御電流ICTがトランジスタQ1のソース−ドレイン間に流れると、トランジスタQ2のソース−ドレイン間には、制御電流ICTに対応した電流値(例えば制御電流ICTと同じ電流値)の駆動電流IDRが発生する。制御電流ICT(補正電流Ix)の電流値は補正値Aに応じて制御されるから、図2の補正回路22およびトランジスタQ1は、駆動電流IDRを補正値Aに応じて補正する手段として機能する。
【0026】
トランジスタQ3は、トランジスタQ2が生成する駆動電流IDRの経路上に配置されたスイッチング素子であり、電気光学素子Eに指定された階調値に応じた期間TGにて選択的に導通状態とされる。トランジスタQ3が導通状態になると、トランジスタQ2の生成した駆動電流IDRが電気光学素子Eに供給される。トランジスタQ3が非導通状態になると、電気光学素子Eに対する駆動電流IDRの供給が停止する。すなわち、駆動信号S[i]は、第i段目の単位回路Uの階調値に対応するパルス幅(TG)にわたって補正値Aに応じた電流値(IDR)となる。したがって、各電気光学素子Eは階調値と補正値Aとに応じた光量で発光する。
【0027】
次に、図5は、各電気光学素子Eに同じ階調値が指定された場合の各々の光量を図示した概念図である。同図に図示された各正方形はひとつの電気光学素子Eを示し、各正方形の面積は電気光学素子Eの光量を意味する。すなわち、正方形が大面積であるほど電気光学素子Eの光量が大きい。
【0028】
いま、図5の部分(a)に例示するように、何れの電気光学素子Eにも欠陥が存在しないと仮定したときに、同じ階調値を指定された各電気光学素子Eが相互に同等の光量で発光する場合を想定する。一方、図5の部分(b)には、各電気光学素子Eの光量が補正されない構成において第i番目の電気光学素子Eが欠陥素子EDである場合の各電気光学素子Eの光量が図示されている。欠陥素子EDとは、自身の不良や単位回路Uの各部(例えばトランジスタQ1〜Q3や各々を接続する配線)の不良に起因して、光量が規定値を下回る(典型的には図5の部分(b)のように全く発光しない)電気光学素子Eである。図5の部分(b)の状態にある各電気光学素子Eを利用して感光体ドラムを露光すると、画像形成装置によって実際に形成される画像のうち欠陥素子EDに対応した位置には、副走査方向(感光体ドラムの感光面が進行する方向)に沿ったスジ状のムラが発生する。
【0029】
図5の部分(c)は、本実施形態による補正後の各電気光学素子Eの光量を示す概念図である。同図に示すように、本実施形態においては、欠陥素子EDに近接する他の電気光学素子E(以下では欠陥素子EDとの関係で特に「補填用素子EA」と表記する場合がある)の光量が、図5の部分(b)に例示した非補正時よりも増加するように、各単位回路Uの補正値Aが設定される。以上のように補填用素子EAの光量を増加させることで欠陥素子EDによる光量の不足が補填されるから、欠陥素子EDに起因したスジ状のムラは図5の部分(b)の場合と比較して低減される。
【0030】
本実施形態においては、第i段目の欠陥素子EDに対してX方向に沿った両側に隣接する第(i-1)段目および第(i+1)段目の2個の電気光学素子Eが補填用素子EAとされる。図5の部分(d)に示すように、補填用素子EAの補正値Aは、n個の電気光学素子Eのうち補填用素子EAと欠陥素子EDとを除外した各電気光学素子E(以下では特に「標準素子E0」と表記する場合がある)の補正値A(A0)よりも大きい数値A1に設定される(A1>A0)。以上のように補正値Aを選定することで、補填用素子EAに供給される駆動電流IDRは、標準素子E0に供給される駆動電流IDRよりも高い電流値に設定される。したがって、補填用素子EAと標準素子E0とに同じ階調値が指定された場合、図5の部分(c)に示すように補填用素子EAは標準素子E0よりも大きい光量で発光する。
【0031】
なお、欠陥素子EDにおける光量の不足を確実に補填するという観点からすると、例えば、非補正時と比較した各補填用素子EAの光量の増加分の総和が、欠陥素子EDに指定された階調値に応じた光量(すなわち欠陥素子EDが正常であると仮定したときの光量)と略一致するように、各補填用素子EAの補正値Aを決定することが望ましい。すなわち、2個の補填用素子EAの補正後の光量の総和は、第i段目の電気光学素子Eに欠陥がない場合の第(i-1)段目から第(i+1)段目までの3個の電気光学素子Eの光量の総和に略一致する。
【0032】
以上のように、本実施形態においては、欠陥素子EDに近接する補填用素子EAが、補填用素子EAと比較して欠陥素子EDから離間した位置の標準素子E0よりも大きい光量に駆動される。したがって、複数回の露光や画素のシフトといった特許文献1の煩雑な制御を不要として消費電力の増大を抑制しながら、素子部10における光量のムラ(さらには画像形成装置によって形成される画像におけるスジ状のムラ)を抑制することが可能である。また、素子部10に欠陥素子EDが存在する場合であっても光量の補填によって電気光学装置Hを有効に利用できるから、電気光学装置Hの実質的な歩留まりを改善することが可能である。
【0033】
次に、図6を参照して、各電気光学素子Eの補正値Aを設定する手順について説明する。同図の各処理は、例えば電気光学装置Hの製造から出荷までの期間内に検査装置(例えば情報処理装置)によって自動的に実行される。
【0034】
同図に示すように、まず、検査装置は、電気光学装置Hの素子部10について欠陥素子EDの探索を実行する(ステップS10)。例えば、検査装置は、n個の電気光学素子Eの各々に順番に駆動電流IDRが供給されるように駆動回路20を制御するとともに、そのときの各電気光学素子Eの光量を受光装置(例えばCCD素子を利用した撮像装置)からの信号によって順次に測定したうえで、光量が所定値を下回る電気光学素子Eを欠陥素子EDと判定する。ステップS10においては素子部10における欠陥素子EDの位置も特定される。
【0035】
次いで、検査装置は、ステップS10にて欠陥素子EDが発見されたか否かを判定する(ステップS11)。欠陥素子EDが発見されなかった場合、検査装置は、n個の電気光学素子Eの各々の補正値Aを数値A0(例えばゼロ)に設定する(ステップS12)。これに対し、欠陥素子EDが発見された場合、検査装置は、欠陥素子EDに隣接する各補填用素子EAの補正値Aを数値A1(A1>A0)に設定するとともに、欠陥素子EDと補填用素子EAとを除外した標準素子E0の補正値Aを数値A0に設定する(ステップS13)。そして、検査装置は、ステップS12またはステップS13にて設定した補正値Aを電気光学装置Hの各記憶回路223に書き込む(ステップS14)。以上が補正値Aの設定の手順である。
【0036】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、欠陥素子ED以外の各電気光学素子Eの特性(階調値と光量との関係)が同等である場合を想定したが、実際には各電気光学素子Eの特性が相違する場合もある。そこで、以下に例示する形態においては、欠陥素子EDによる光量の不足に加えて、各電気光学素子Eの特性の相違に起因した光量のムラも併せて低減される構成となっている。なお、本実施形態のうち作用や機能が第1実施形態と共通する要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0037】
図7は、各電気光学素子Eに対して同じ階調値が指定された場合の各々の光量を図示した概念図である。同図においては、図5と同様に、各正方形がひとつの電気光学素子Eを示し、各正方形の面積は電気光学素子Eの光量を意味する。
【0038】
図7の部分(a)および部分(b)においては、各電気光学素子Eの光量が補正されない場合が想定されている。図7の部分(a)は、素子部10に欠陥素子EDが存在しない場合の各電気光学素子Eの光量を示し、図7の部分(b)は、第i段目の電気光学素子Eが欠陥素子EDである場合の各電気光学素子Eの光量を示す。図7の部分(a)および部分(b)に示すように、欠陥素子EDの有無に拘わらず、各電気光学素子Eの特性のバラツキや各単位回路Uの要素(例えばトランジスタQ1〜Q3)の特性のバラツキに起因して、各電気光学素子Eの光量は相違する。本実施形態においては、単に補填用素子EAの光量を増加させるだけでなく、各補填用素子EA同士の光量や各標準素子E0同士の光量が均一化されるように、各電気光学素子Eの補正値Aが各々の特性に応じて個別に決定される。
【0039】
図7の部分(c)は、補正値Aに応じた補正後の各電気光学素子Eの光量を示す概念図である。同図に示すように、本実施形態においては、各々に同じ階調値が指定されたときの各標準素子E0の光量が所定値に近づく(理想的には均一化される)ように、標準素子E0の補正値Aが各々の特性に応じて設定される。例えば、非補正時における光量が少ない(ただし欠陥素子EDと判定される閾値は上回る)電気光学素子Eの補正値Aほど相対的に大きい数値に設定される。さらに、欠陥素子EDに対してX方向の両側に位置する2個の補填用素子EAの補正値Aは、標準素子E0と同じ階調値が指定された場合の各補填用素子EAの光量が、補正後の標準素子E0の光量よりも大きい所定値に近づくように設定される。
【0040】
以上の条件を満たす補正値Aは、例えば検査装置が図8に例示する各処理を実行することで設定される。まず、検査装置は、素子部10を構成するn個の電気光学素子Eの各々について光量を測定する(ステップS20)。例えば、検査装置は、各電気光学素子Eに対して順番に駆動電流IDRが供給されるように駆動回路20を制御し、そのときの各電気光学素子Eの光量を受光装置からの信号によって順次に測定する。次いで、検査装置は、ステップS20にて測定した各光量に基づいて、n個の電気光学素子Eについて光量が均一化されるように各電気光学素子Eの補正値Aを設定する(ステップS21)。ステップS21の処理は、ステップS20にて測定された光量が所定値を上回る電気光学素子E(すなわちn個の電気光学素子Eから欠陥素子EDを除外した補填用素子EAおよび標準素子E0)を対象として実行される。
【0041】
次いで、検査装置は、素子部10から欠陥素子EDを探索する(ステップS22)。ステップS22においては、ステップS20にて測定された光量が所定値を下回る電気光学素子Eを欠陥素子EDと判定してもよいし、ステップS20とは別個に図6のステップS10と同様の処理を実行することで欠陥素子EDを探索してもよい。ステップS22においては欠陥素子EDの位置も特定される。そして、検査装置は、ステップS22にて欠陥素子EDが発見されたか否かを判定する(ステップS23)。
【0042】
欠陥素子EDが発見された場合、検査装置は、欠陥素子EDに隣接する各補填用素子EAについてステップS21で設定した補正値Aを修正する(ステップS24)。例えば、検査装置は、補填用素子EAについてステップS21で設定した補正値Aと所定値との加算値を新たな補正値Aとして算定する。すなわち、ステップS21における補正値Aの設定で各補填用素子EA同士の光量のバラツキが抑制され、ステップS24における補正値Aの修正で、欠陥素子EDの光量の不足を補填するように各補填用素子EAの光量が増加する。なお、標準素子E0の補正値AはステップS21にて設定された数値(すなわち各標準素子E0同士の光量を均一化する数値)に維持される。
【0043】
一方、ステップS22にて欠陥素子EDが発見されなかった場合、検査装置は、ステップS24を実行せずにステップS25に処理を移行する。したがって、総ての電気光学素子Eの補正値AはステップS21にて設定された数値(すなわち総ての電気光学素子Eの光量を均一化し得る数値)に維持される。そして、検査装置は、以上の手順(S21・S24)で設定した補正値Aを電気光学装置Hの各記憶回路223に書き込む(ステップS25)。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態においては、欠陥素子EDに近接する補填用素子EAが標準素子E0よりも大きい光量に駆動されるから、第1実施形態と同様の効果が奏される。さらに、本実施形態によれば、各電気光学素子Eの補正値Aを各々の特性に応じて設定することで欠陥素子ED以外の電気光学素子Eの光量の誤差が抑制されるから、素子部10における光量のムラ(さらには画像形成装置によって形成される画像の階調のムラ)を第1実施形態よりも効果的に抑制することが可能である。
【0045】
しかも、本実施形態においては、欠陥素子EDによる光量の不足の補填と各電気光学素子Eの光量のバラツキの補償とが補正値Aの設定によって実現されるから、各々を実現するための要素を個別に用意する必要はない。例えば、図3に例示した構成の回路や、電気光学素子Eの光量のバラツキのみを補正値Aに応じて補正する回路を、本実施形態の各単位回路Uとして流用することが可能である。すなわち、本実施形態によれば、電気光学装置Hの構成を複雑化や回路の肥大化を伴なうことなく、光量のムラの抑制という所期の効果を得ることができる。
【0046】
<C:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0047】
(1)変形例1
以上の各形態においては、欠陥素子EDの両側に隣接する各電気光学素子Eが補填用素子EAとされた場合を例示したが、欠陥素子EDと補填用素子EAとの位置的な関係は適宜に変更される。例えば、欠陥素子EDに対してX方向の片側に隣接する1個の電気光学素子Eのみを補填用素子EAとしてもよい。
【0048】
また、欠陥素子EDを含む所定の範囲に属する3個以上の電気光学素子Eを補填用素子EAとしてもよい。例えば、図9には、欠陥素子EDに対してX方向の両側に位置する2個ずつの電気光学素子E(合計4個)を補填用素子EAとした場合の補正後の各電気光学素子Eの光量が図示されている。
【0049】
欠陥素子EDに対してX方向に沿った各側方に隣接する2個以上の電気光学素子Eが補填用素子EAとされた構成においては、図9に示すように、欠陥素子EDに近い位置にある補填用素子EAほど光量が段階的に大きくなるように各電気光学素子Eの補正値Aを設定してもよい。すなわち、図9の例においては、第(i-2)段目および第(i+2)段の各補填用素子EAが標準素子E0よりも大きい光量で発光し、かつ、さらに欠陥素子EDに近い位置にある第(i-1)段目および第(i+1)段目の各補填用素子EAが第(i-2)段目および第(i+2)段目の各補填用素子EAよりも大きい光量で発光するように補正値Aが決定される。図9の構成によれば、第1実施形態や第2実施形態のように欠陥素子EDに隣接する2個の電気光学素子Eのみが補填用素子EAとされた構成や、欠陥素子EDに近接する3個以上の補填用素子EAが同等の光量で発光する構成と比較して、欠陥素子EDによる光量の不足をいっそう目立たなくすることが可能である。
【0050】
(2)変形例2
以上の各形態においては、階調値に応じて駆動信号S[i]のパルス幅が制御されるとともに補正値Aに応じて駆動電流IDRの電流値が制御される構成を例示したが、階調値および補正値Aと駆動信号S[i]の波形との関係は適宜に変更される。例えば、補正値Aに応じて駆動信号S[i]のパルス幅を制御するとともに階調値に応じて駆動電流IDRの電流値を制御する構成や、補正値Aおよび階調値の双方に応じて駆動信号S[i]のパルス幅および駆動電流IDRの電流値の一方を制御する構成も採用される。また、例えば電圧の印加によって光量が変化する電圧駆動型の電気光学素子Eを利用した電気光学装置Hにおいては駆動信号S[i]が電圧信号とされるから、駆動信号S[i]の電圧値を補正値Aに応じて補正してもよい。以上の例示から理解されるように、本発明のひとつの態様に係る駆動回路20は、補填用素子EAと標準素子E0とに同じ階調が指定された場合に補填用素子EAが標準素子E0よりも大きい光量となるように各電気光学素子Eを駆動する回路であれば足りる。
【0051】
(3)変形例3
補填用素子EAの光量を恒常的に増加させる必要は必ずしもない。例えば欠陥素子EDに指定された階調値が所定の条件を満たす場合に限って補填用素子EAの光量を増加させる構成も採用される。例えば、非発光(消灯)に相当する階調値が欠陥素子EDに対して指定された場合には、欠陥素子EDに起因した光量の不足は本来的に問題とならない。したがって、欠陥素子EDに指定された階調値が所定値を下回る場合には補填用素子EAの光量の増加を停止するといった構成としてもよい。
【0052】
すなわち、駆動回路20は、各補填用素子EAと標準素子E0とに対して同じ階調値が指定されたときに、所定値を上回る階調値が欠陥素子EDに指定された場合には、各補填用素子EAが標準素子E0よりも大きい光量となり、所定値を下回る階調値が欠陥素子EDに指定された場合には各補填用素子EAが標準素子E0と同等の光量となるように、各電気光学素子Eを駆動する。さらに詳述すると、欠陥素子EDに非発光が指示された場合には、補填用素子EAに供給される駆動電流IDRが、標準素子E0に供給される駆動電流IDRと同等の電流値に設定される。例えば、補填用素子EAの補正値Aが標準素子E0と同等の数値A0に変更される。以上の構成によれば、補填用素子EAの光量を恒常的に増加させる構成と比較して、補填用素子EAの劣化を抑制することが可能である。
【0053】
(4)変形例4
有機発光ダイオード素子は電気光学素子の例示に過ぎない。本発明に適用される電気光学素子について、自身が発光する自発光型と外光の透過率を変化させる非発光型(例えば液晶素子)との区別や、電流の供給によって駆動される電流駆動型と電圧の印加によって駆動される電圧駆動型との区別は不問である。例えば、無機EL素子、フィールド・エミッション(FE)素子、表面導電型エミッション(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子、LED(Light Emitting Diode)素子、液晶素子、電気泳動素子、エレクトロクロミック素子など様々な電気光学素子を本発明に利用することができる。
【0054】
<D:応用例>
本発明に係る電気光学装置Hを利用した電子機器(画像形成装置)の具体的な形態を説明する。
図10は、以上の形態に係る電気光学装置Hを採用した画像形成装置の構成を示す断面図である。画像形成装置は、タンデム型のフルカラー画像形成装置であり、以上の形態に係る4個の電気光学装置H(HK,HC,HM,HY)と、各電気光学装置Hに対応する4個の感光体ドラム70(70K,70C,70M,70Y)とを具備する。ひとつの電気光学装置Hは、これに対応した感光体ドラム70の像形成面(外周面)と対向するように配置される。なお、各符号の添字「K」「C」「M」「Y」は、黒(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各顕像の形成に利用されることを意味している。
【0055】
図10に示すように、駆動ローラ711と従動ローラ712とには無端の中間転写ベルト72が巻回される。4個の感光体ドラム70は、相互に所定の間隔をあけて中間転写ベルト72の周囲に配置される。各感光体ドラム70は、中間転写ベルト72の駆動に同期して回転する。
【0056】
各感光体ドラム70の周囲には、電気光学装置Hのほかにコロナ帯電器731(731K,731C,731M,731Y)と現像器732(732K,732C,732M,732Y)とが配置される。コロナ帯電器731は、これに対応する感光体ドラム70の像形成面を一様に帯電させる。この帯電した像形成面を各電気光学装置Hが露光することで静電潜像が形成される。各現像器732は、静電潜像に現像剤(トナー)を付着させることで感光体ドラム70に顕像(可視像)を形成する。
【0057】
以上のように感光体ドラム70に形成された各色(黒・シアン・マゼンタ・イエロー)の顕像が中間転写ベルト72の表面に順次に転写(一次転写)されることでフルカラーの顕像が形成される。中間転写ベルト72の内側には4個の一次転写コロトロン(転写器)74(74K,74C,74M,74Y)が配置される。各一次転写コロトロン74は、これに対応する感光体ドラム70から顕像を静電的に吸引することによって、感光体ドラム70と一次転写コロトロン74との間隙を通過する中間転写ベルト72に顕像を転写する。
【0058】
シート(記録材)75は、ピックアップローラ761によって給紙カセット762から1枚ずつ給送され、中間転写ベルト72と二次転写ローラ77との間のニップに搬送される。中間転写ベルト72の表面に形成されたフルカラーの顕像は、二次転写ローラ77によってシート75の片面に転写(二次転写)され、定着ローラ対78を通過することでシート75に定着される。排紙ローラ対79は、以上の工程を経て顕像が定着されたシート75を排出する。
【0059】
以上に例示した画像形成装置は有機発光ダイオード素子を光源(露光手段)として利用しているので、レーザ走査光学系を利用した構成よりも装置が小型化される。なお、以上に例示した以外の構成の画像形成装置にも電気光学装置Hを適用することができる。例えば、ロータリ現像式の画像形成装置や、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムからシートに対して直接的に顕像を転写するタイプの画像形成装置、あるいはモノクロの画像を形成する画像形成装置にも電気光学装置Hを利用することが可能である。
【0060】
なお、電気光学装置Hの用途は像担持体の露光に限定されない。例えば、電気光学装置Hは、原稿などの読取対象に光を照射する照明装置として画像読取装置に採用される。この種の画像読取装置としては、スキャナ、複写機やファクシミリの読取部分、バーコードリーダ、あるいはQRコード(登録商標)のような二次元画像コードを読む二次元画像コードリーダがある。
【0061】
また、電気光学素子Eがマトリクス状に配列された電気光学装置Hは、各種の電子機器の表示装置としても利用される。本発明が適用される電子機器としては、例えば、可搬型のパーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器などがある。
【0062】
なお、表示装置においては欠陥素子EDによる光量の不足が利用者に知覚されにくいから、例えば素子部10にひとつの欠陥素子EDが存在する程度であれば、電気光学装置Hが良品であると判定される可能性もある。しかし、図10のように電気光学装置Hを露光装置として利用した画像形成装置においては、欠陥素子EDの影響が画像におけるスジ状のムラとして顕在化するから、仮に光量の不足が補填されないとすれば、素子部10にひとつの欠陥素子EDが存在するだけでも電気光学装置Hの全体として不良品と判定される場合がある。すなわち、電気光学装置Hを良品と判定するために要求される電気光学素子Eの条件は画像形成装置において特に厳格である。以上の事情を考慮すると、欠陥素子EDの影響が低減される以上の各形態の電気光学装置Hは、画像形成装置の露光装置として特に好適であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態に係る電気光学装置Hの構成を示すブロック図である。
【図2】駆動信号S[i]の波形を例示するタイミングチャートである。
【図3】単位回路の構成を示す回路図である。
【図4】補正回路の構成を示す回路図である。
【図5】各電気光学素子の光量の補正を説明するための概念図である。
【図6】補正値を設定する手順を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態における各電気光学素子の光量の補正を説明するための概念図である。
【図8】補正値を設定する手順を示すフローチャートである。
【図9】変形例における各電気光学素子の光量の補正を説明するための概念図である。
【図10】電子機器のひとつの形態(画像形成装置)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
H……電気光学装置、10……素子部、E……電気光学素子(EA……補填用素子、E0……標準素子、ED……欠陥素子)、20……駆動回路、U……単位回路、22……補正回路、Q1〜Q3……トランジスタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子などの電気光学素子を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電気光学素子を配列した電気光学装置においては、電気光学素子自体やその駆動に使用される能動素子または配線など各要素の不良に起因して、特定の電気光学素子(以下「欠陥素子」という)の光量が規定値を下回る場合や全く発光しない場合がある。特許文献1には、画像の位置をシフトしながら複数回にわたる露光を実施することで感光体の表面にひとつの潜像を形成する技術が開示されている。この技術によれば、欠陥素子の影響が画像のシフトによって分散されるから、実際に出力される可視像においては欠陥素子における光量の不足の影響を目立たなくすることが可能である。
【特許文献1】特開平9−61939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の構成においては、ひとつの画像について複数回の露光や画像のシフトといった煩雑な制御が必要になるという問題がある。また、ひとつの画像について1回の露光で潜像が形成される場合と比較して消費電力が増大するという問題もある。以上の事情に鑑みて、本発明は、簡潔な方法で欠陥素子の影響を目立たなくするという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、本発明のひとつの態様に係る電気光学装置は、光量が可変である複数の電気光学素子と、複数の電気光学素子の各々の光量を制御する駆動回路とを具備し、駆動回路は、複数の電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子(例えば図5や図7の欠陥素子ED)に近接した位置にある所定数(ひとつまたは複数)の第1電気光学素子(例えば図5や図7の補填用素子EA)と、所定数の第1電気光学素子と比較して欠陥に係る電気光学素子から離間した位置(すなわち欠陥に係る電気光学素子との距離が、所定数の第1電気光学素子と欠陥に係る電気光学素子との距離よりも大きい位置)にある第2電気光学素子(例えば図5や図7の標準素子E0)とに対して同じ階調値が指定された場合に、所定数の第1電気光学素子が第2電気光学素子よりも大きい光量となるように、各電気光学素子を駆動する。
【0005】
以上の構成においては、欠陥に係る電気光学素子に近接した位置にある第1電気光学素子が第2電気光学素子と比較して大きい光量に駆動される。したがって、複数回の露光や画素のシフトといった煩雑な制御を不要として消費電力を低減しながら、電気光学素子の欠陥を目立たなくすることが可能である。なお、電気光学素子は、駆動回路から付与される電気エネルギに応じた光量を出射する要素である。欠陥に係る電気光学素子とは、当該電気光学素子自体の不良やその駆動に使用される要素(例えば能動素子や配線など)の不良に起因して、特定の階調値を指定したときの光量が所定値を下回るか全く発光しない電気光学素子を意味する。
【0006】
また、欠陥に係る電気光学素子に第1電気光学素子が「近接する」とは、典型的には第1電気光学素子と欠陥に係る電気光学素子とが相互に隣接する場合(すなわち両者の間隙に他の電気光学素子が介在しない場合)であるが、第1電気光学素子と欠陥に係る電気光学素子との間隙に他の電気光学素子が介在する場合であっても、例えば電気光学装置が出力する画像を利用者が視認したときに、欠陥に係る電気光学素子の光量の不足の影響が、第1電気光学素子の光量の増加によって利用者に知覚されない程度に低減されるのであれば、第1電気光学素子と欠陥に係る電気光学素子とは「近接する」と言える。
【0007】
本発明の好適な態様に係る電気光学装置は、各電気光学素子の補正値を記憶する記憶回路を具備し、駆動回路は、各電気光学素子に対応した複数の単位回路を含み、複数の単位回路の各々は、当該単位回路に対応した電気光学素子の補正値に応じたレベル(電圧値または電流値)の駆動信号を生成する生成手段(例えば図3のトランジスタQ2)と、生成手段が生成した駆動信号を当該電気光学素子の階調値に応じた時間長にわたって各電気光学素子に供給する駆動制御手段(例えば図3のトランジスタQ3)とを含み、記憶回路が記憶する各補正値は、所定数の第1電気光学素子に供給される駆動信号が第2電気光学素子に供給される駆動信号よりも高いレベルとなるように設定される。以上の態様における駆動信号は、電流信号(例えば図2の駆動電流IDR)および電圧信号の何れでもよい。駆動信号のレベルとは、駆動信号が電流信号であれば電流値であり、駆動信号が電圧信号であれば電圧値である。また、単位回路ごとに個別の記憶回路が設置されてもよいし、複数の単位回路に共用されるひとつの記憶回路が設置されてもよい。
【0008】
さらに具体的な態様において、駆動回路は、各々に同じ階調値が指定されたときの複数の第2電気光学素子の光量が均一化されるように第2電気光学素子の光量を補正する。以上の態様によれば、電気光学素子の欠陥の影響に加えて各電気光学素子の光量のムラも抑制することが可能である。
【0009】
第1電気光学素子と欠陥に係る電気光学素子との位置的な関係は任意である。例えば、画像の内容に重大な影響を与えずに、欠陥に係る電気光学素子における光量の不足を有効に補填するという観点からすると、所定数の第1電気光学素子が、欠陥に係る電気光学素子に隣接する電気光学素子を含む構成(欠陥に係る電気光学素子の両側に第1電気光学素子が位置するか否かは不問)や、欠陥に係る電気光学素子の両側に位置する各電気光学素子を含む構成(欠陥に係る電気光学素子に第1電気光学素子が隣接するか否かは不問)が好適に採用される。また、例えば複数の電気光学素子が複数列(例えば2列かつ千鳥状)に配列された構成においては、欠陥に係る電気光学素子が存在するひとつの列内において当該電気光学素子の両側に位置する素子が第1電気光学素子とされる。
さらに具体的な態様において、所定数の第1電気光学素子は、欠陥に係る電気光学素子の一方の側に隣接する複数の電気光学素子と他方の側に隣接する複数の電気光学素子とを含む。本態様における駆動回路は、例えば、所定数の第1電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子に近い位置にある第1電気光学素子ほど相対的に大きい光量となるように、各電気光学素子を駆動する。以上の態様によれば、各電気光学素子の光量が欠陥からの距離に応じて段階的に制御されるから、電気光学素子の欠陥をいっそう目立たなくすることが可能である。
また、所定数の第1電気光学素子が、前記欠陥に係る電気光学素子に隣接する複数の電気光学素子を含む構成においては、所定数の第1電気光学素子のうち、前記欠陥に係る電気光学素子に近い位置にある第1電気光学素子ほど大きい光量となるように、前記各電気光学素子を駆動する構成としてもよい。
【0010】
なお、第1電気光学素子の光量を恒常的に増加させる必要は必ずしもない。例えば、本発明の好適な態様に係る駆動回路は、第1電気光学素子と第2電気光学素子とに対して同じ階調値が指定されたときに、欠陥に係る電気光学素子に所定値を上回る階調値が指定された場合には、所定数の第1電気光学素子が第2電気光学素子よりも大きい光量となり、欠陥に係る電気光学素子に所定値を下回る階調値が指定された場合には、所定数の第1電気光学素子が第2電気光学素子と同等の光量となるように、各電気光学素子を駆動する。以上の態様によれば、第1電気光学素子の光量を恒常的に増加させる構成と比較して、第1電気光学素子の劣化を抑制することが可能となる。
【0011】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。本発明に係る電子機器の典型例は、以上の各態様に係る電気光学装置を感光体ドラムなどの像担持体の露光に利用した電子写真方式の画像形成装置である。この画像形成装置は、露光によって潜像が形成される像担持体(例えば感光体ドラム)と、像担持体を露光する本発明の電気光学装置と、像担持体の潜像に対する現像剤(例えばトナー)の付加によって顕像を形成する現像器とを含む。もっとも、本発明に係る電気光学装置の用途は像担持体の露光に限定されない。例えば、スキャナなどの画像読取装置においては、本発明に係る電気光学装置を原稿の照明に利用することが可能である。この画像読取装置は、以上の各態様に係る電気光学装置と、電気光学装置から出射して読取対象(原稿)で反射した光を電気信号に変換する受光装置(例えばCCD(Charge Coupled Device)素子などの受光素子)とを具備する。
【0012】
さらに、電気光学素子がマトリクス状に配列された電気光学装置は、パーソナルコンピュータや携帯電話機など各種の電子機器の表示装置としても利用される。相互に交差する第1方向および第2方向にわたって平面状に複数の電気光学素子が配列された電気光学装置においては、第1方向および第2方向の少なくとも一方に沿って欠陥の電気光学素子に近接する第1電気光学素子の光量が増加するように駆動回路が各電気光学素子を駆動する。例えば、欠陥に係るひとつの電気光学素子に対して第1方向および第2方向の各々の両側に隣接する4個の第1電気光学素子の光量が増加する。
【0013】
また、以上の各態様に係る電気光学装置を駆動する回路としても本発明は特定される。本発明のひとつの態様に係る駆動回路は、複数の電気光学素子の各々の光量を制御する回路であって、複数の電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子に近接した位置にある所定数の第1電気光学素子と、第1電気光学素子と比較して欠陥に係る電気光学素子から離間した位置にある第2電気光学素子とに対して同じ階調値が指定された場合に、所定数の第1電気光学素子が第2電気光学素子よりも大きい光量となるように、各電気光学素子を駆動する。以上の駆動回路によっても、本発明に係る電気光学装置と同様の作用および効果が奏される。
【0014】
また、以上の各態様に係る電気光学装置を駆動する方法としても本発明は特定される。本発明のひとつの態様に係る駆動方法は、複数の電気光学素子の各々の光量を制御する方法であって、複数の電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子に近接した位置にある所定数の第1電気光学素子と、第1電気光学素子と比較して欠陥に係る電気光学素子から離間した位置にある第2電気光学素子とに対して同じ階調値が指定された場合に、所定数の第1電気光学素子が第2電気光学素子よりも大きい光量となるように、各電気光学素子を駆動する。以上の駆動方法によっても、本発明に係る電気光学装置と同様の作用および効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。電気光学装置Hは、感光体ドラムを露光するラインヘッド(露光装置)として電子写真方式の画像形成装置に利用される機器であり、図1に示すように素子部10と駆動回路20とを具備する。
【0016】
素子部10は、X方向(主走査方向)に沿って直線状に配列するn個の電気光学素子Eを含む(nは2以上の自然数)。電気光学素子Eは、相互に対向する陽極と陰極との間に有機EL(Electroluminescence)材料の発光層が介在する有機発光ダイオード素子である。各電気光学素子Eからの出射光が照射されることで感光体ドラムの表面には所望の潜像が形成される。なお、複数の電気光学素子Eが複数列(例えば2列かつ千鳥状)に配列された構成も採用される。
【0017】
駆動回路20は、各電気光学素子Eの光量を制御する。なお、駆動回路20は、ひとつまたは複数のICチップで構成されてもよいし、各電気光学素子Eとともに基板の表面に形成された多数の能動素子(例えば半導体層が低温ポリシリコンで形成された薄膜トランジスタ)で構成されてもよい。図1に示すように、駆動回路20は、各々が別個の電気光学素子Eに対応するn個の単位回路Uを含む。第i段目(iは1≦i≦nを満たす整数)の単位回路Uは駆動信号S[i]を出力する。
【0018】
図2は、駆動信号S[i](S[1]〜S[n])の波形を示すタイミングチャートである。図2に示すように、駆動信号S[i]は、所定の期間(例えば水平走査期間)Tのうち第i段目の電気光学素子Eに指定された階調値に応じた期間TGにて駆動電流IDRとなり、当該期間Tの残余の期間にて電流値がゼロとなる電流信号である。電気光学素子Eは、駆動電流IDRの供給によって発光するとともに駆動電流IDRの供給が停止すると消灯する。
【0019】
図3は、各単位回路Uの構成を示す回路図である。なお、同図においては、第i段目のひとつの単位回路Uのみが代表的に図示されている。図3に示すように、単位回路Uは、補正回路22とpチャネル型のトランジスタQ1〜Q3とを含む。補正回路22は、駆動電流IDRの基礎となる制御電流ICTを生成する手段である。
【0020】
図4は、補正回路22の具体的な構成を示す回路図である。同図に示すように、補正回路22は、基準電流源221と記憶回路223とD/A変換器225とを含む。基準電流源221は、自身のゲートに印加される基準電位VREF1に応じた基準電流IREFを生成するnチャネル型のトランジスタである。
【0021】
記憶回路223は、単位回路Uごとに設定された補正値A(ビットa1〜a4の4ビット)を記憶する。第i段目の単位回路Uの記憶回路223に格納される補正値Aは、駆動信号S[i]における駆動電流IDRの補正の程度(すなわち第i段目の電気光学素子Eの光量を補正する程度)を指定する数値である。本実施形態の記憶回路223は、電気光学装置Hの製造時に格納された補正値Aを不揮発的に記憶するメモリ(たとえばROM(Read Only Memory))である。ただし、外部から供給される補正値Aを電気光学装置Hの電源の投入のたびに記憶するメモリを記憶回路223として採用してもよい。なお、各単位回路Uの補正値Aを設定する方法については後述する。
【0022】
D/A変換器225は、記憶回路223に記憶された補正値Aに応じた補正電流Ixを生成する手段であり、補正値Aのビット数に相当する4個のnチャネル型のトランジスタTA(TA1〜TA4)と、各々のドレインがトランジスタTAのソースに接続された4個のnチャネル型のトランジスタTB(TB1〜TB4)とを含む。各トランジスタTAのドレインは基準電流源221のドレインとともにノードNに接続され、各トランジスタTBのソースは基準電流源221のソースとともに接地される。
【0023】
トランジスタTB1〜TB4は、各々のゲートに印加される基準電位VREF2に応じた電流を生成する電流源として機能する。トランジスタTB1〜TB4の電気的な特性(例えば利得係数)は、ゲートに対する基準電位VREF2の供給によって各々に流れる電流c1〜c4の電流値の相対比が2のべき乗(c1:c2:c3:c4=1:2:4:8)となるように設定される。
【0024】
図4に示すように、トランジスタTA1〜TA4の各々は、記憶回路223に記憶された補正値Aの各ビット(a1〜a4)に応じて選択的に導通する。したがって、ノードNとD/A変換器225とを連結する経路には、補正値Aに応じた電流値の補正電流Ixが流れる。以上の構成により、基準電流IREFと補正電流Ixとを加算した制御電流ICTがノードNに流れる。
【0025】
図3に示すように、トランジスタQ1およびQ2の各々のソースは高位側の電源(VEL)に接続される。トランジスタQ1のドレインは、補正回路22のノードNと自身のゲートとに接続される。トランジスタQ1およびQ2は、各々のゲートが相互に接続されることでカレントミラー回路を構成する。したがって、補正回路22の生成した制御電流ICTがトランジスタQ1のソース−ドレイン間に流れると、トランジスタQ2のソース−ドレイン間には、制御電流ICTに対応した電流値(例えば制御電流ICTと同じ電流値)の駆動電流IDRが発生する。制御電流ICT(補正電流Ix)の電流値は補正値Aに応じて制御されるから、図2の補正回路22およびトランジスタQ1は、駆動電流IDRを補正値Aに応じて補正する手段として機能する。
【0026】
トランジスタQ3は、トランジスタQ2が生成する駆動電流IDRの経路上に配置されたスイッチング素子であり、電気光学素子Eに指定された階調値に応じた期間TGにて選択的に導通状態とされる。トランジスタQ3が導通状態になると、トランジスタQ2の生成した駆動電流IDRが電気光学素子Eに供給される。トランジスタQ3が非導通状態になると、電気光学素子Eに対する駆動電流IDRの供給が停止する。すなわち、駆動信号S[i]は、第i段目の単位回路Uの階調値に対応するパルス幅(TG)にわたって補正値Aに応じた電流値(IDR)となる。したがって、各電気光学素子Eは階調値と補正値Aとに応じた光量で発光する。
【0027】
次に、図5は、各電気光学素子Eに同じ階調値が指定された場合の各々の光量を図示した概念図である。同図に図示された各正方形はひとつの電気光学素子Eを示し、各正方形の面積は電気光学素子Eの光量を意味する。すなわち、正方形が大面積であるほど電気光学素子Eの光量が大きい。
【0028】
いま、図5の部分(a)に例示するように、何れの電気光学素子Eにも欠陥が存在しないと仮定したときに、同じ階調値を指定された各電気光学素子Eが相互に同等の光量で発光する場合を想定する。一方、図5の部分(b)には、各電気光学素子Eの光量が補正されない構成において第i番目の電気光学素子Eが欠陥素子EDである場合の各電気光学素子Eの光量が図示されている。欠陥素子EDとは、自身の不良や単位回路Uの各部(例えばトランジスタQ1〜Q3や各々を接続する配線)の不良に起因して、光量が規定値を下回る(典型的には図5の部分(b)のように全く発光しない)電気光学素子Eである。図5の部分(b)の状態にある各電気光学素子Eを利用して感光体ドラムを露光すると、画像形成装置によって実際に形成される画像のうち欠陥素子EDに対応した位置には、副走査方向(感光体ドラムの感光面が進行する方向)に沿ったスジ状のムラが発生する。
【0029】
図5の部分(c)は、本実施形態による補正後の各電気光学素子Eの光量を示す概念図である。同図に示すように、本実施形態においては、欠陥素子EDに近接する他の電気光学素子E(以下では欠陥素子EDとの関係で特に「補填用素子EA」と表記する場合がある)の光量が、図5の部分(b)に例示した非補正時よりも増加するように、各単位回路Uの補正値Aが設定される。以上のように補填用素子EAの光量を増加させることで欠陥素子EDによる光量の不足が補填されるから、欠陥素子EDに起因したスジ状のムラは図5の部分(b)の場合と比較して低減される。
【0030】
本実施形態においては、第i段目の欠陥素子EDに対してX方向に沿った両側に隣接する第(i-1)段目および第(i+1)段目の2個の電気光学素子Eが補填用素子EAとされる。図5の部分(d)に示すように、補填用素子EAの補正値Aは、n個の電気光学素子Eのうち補填用素子EAと欠陥素子EDとを除外した各電気光学素子E(以下では特に「標準素子E0」と表記する場合がある)の補正値A(A0)よりも大きい数値A1に設定される(A1>A0)。以上のように補正値Aを選定することで、補填用素子EAに供給される駆動電流IDRは、標準素子E0に供給される駆動電流IDRよりも高い電流値に設定される。したがって、補填用素子EAと標準素子E0とに同じ階調値が指定された場合、図5の部分(c)に示すように補填用素子EAは標準素子E0よりも大きい光量で発光する。
【0031】
なお、欠陥素子EDにおける光量の不足を確実に補填するという観点からすると、例えば、非補正時と比較した各補填用素子EAの光量の増加分の総和が、欠陥素子EDに指定された階調値に応じた光量(すなわち欠陥素子EDが正常であると仮定したときの光量)と略一致するように、各補填用素子EAの補正値Aを決定することが望ましい。すなわち、2個の補填用素子EAの補正後の光量の総和は、第i段目の電気光学素子Eに欠陥がない場合の第(i-1)段目から第(i+1)段目までの3個の電気光学素子Eの光量の総和に略一致する。
【0032】
以上のように、本実施形態においては、欠陥素子EDに近接する補填用素子EAが、補填用素子EAと比較して欠陥素子EDから離間した位置の標準素子E0よりも大きい光量に駆動される。したがって、複数回の露光や画素のシフトといった特許文献1の煩雑な制御を不要として消費電力の増大を抑制しながら、素子部10における光量のムラ(さらには画像形成装置によって形成される画像におけるスジ状のムラ)を抑制することが可能である。また、素子部10に欠陥素子EDが存在する場合であっても光量の補填によって電気光学装置Hを有効に利用できるから、電気光学装置Hの実質的な歩留まりを改善することが可能である。
【0033】
次に、図6を参照して、各電気光学素子Eの補正値Aを設定する手順について説明する。同図の各処理は、例えば電気光学装置Hの製造から出荷までの期間内に検査装置(例えば情報処理装置)によって自動的に実行される。
【0034】
同図に示すように、まず、検査装置は、電気光学装置Hの素子部10について欠陥素子EDの探索を実行する(ステップS10)。例えば、検査装置は、n個の電気光学素子Eの各々に順番に駆動電流IDRが供給されるように駆動回路20を制御するとともに、そのときの各電気光学素子Eの光量を受光装置(例えばCCD素子を利用した撮像装置)からの信号によって順次に測定したうえで、光量が所定値を下回る電気光学素子Eを欠陥素子EDと判定する。ステップS10においては素子部10における欠陥素子EDの位置も特定される。
【0035】
次いで、検査装置は、ステップS10にて欠陥素子EDが発見されたか否かを判定する(ステップS11)。欠陥素子EDが発見されなかった場合、検査装置は、n個の電気光学素子Eの各々の補正値Aを数値A0(例えばゼロ)に設定する(ステップS12)。これに対し、欠陥素子EDが発見された場合、検査装置は、欠陥素子EDに隣接する各補填用素子EAの補正値Aを数値A1(A1>A0)に設定するとともに、欠陥素子EDと補填用素子EAとを除外した標準素子E0の補正値Aを数値A0に設定する(ステップS13)。そして、検査装置は、ステップS12またはステップS13にて設定した補正値Aを電気光学装置Hの各記憶回路223に書き込む(ステップS14)。以上が補正値Aの設定の手順である。
【0036】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、欠陥素子ED以外の各電気光学素子Eの特性(階調値と光量との関係)が同等である場合を想定したが、実際には各電気光学素子Eの特性が相違する場合もある。そこで、以下に例示する形態においては、欠陥素子EDによる光量の不足に加えて、各電気光学素子Eの特性の相違に起因した光量のムラも併せて低減される構成となっている。なお、本実施形態のうち作用や機能が第1実施形態と共通する要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0037】
図7は、各電気光学素子Eに対して同じ階調値が指定された場合の各々の光量を図示した概念図である。同図においては、図5と同様に、各正方形がひとつの電気光学素子Eを示し、各正方形の面積は電気光学素子Eの光量を意味する。
【0038】
図7の部分(a)および部分(b)においては、各電気光学素子Eの光量が補正されない場合が想定されている。図7の部分(a)は、素子部10に欠陥素子EDが存在しない場合の各電気光学素子Eの光量を示し、図7の部分(b)は、第i段目の電気光学素子Eが欠陥素子EDである場合の各電気光学素子Eの光量を示す。図7の部分(a)および部分(b)に示すように、欠陥素子EDの有無に拘わらず、各電気光学素子Eの特性のバラツキや各単位回路Uの要素(例えばトランジスタQ1〜Q3)の特性のバラツキに起因して、各電気光学素子Eの光量は相違する。本実施形態においては、単に補填用素子EAの光量を増加させるだけでなく、各補填用素子EA同士の光量や各標準素子E0同士の光量が均一化されるように、各電気光学素子Eの補正値Aが各々の特性に応じて個別に決定される。
【0039】
図7の部分(c)は、補正値Aに応じた補正後の各電気光学素子Eの光量を示す概念図である。同図に示すように、本実施形態においては、各々に同じ階調値が指定されたときの各標準素子E0の光量が所定値に近づく(理想的には均一化される)ように、標準素子E0の補正値Aが各々の特性に応じて設定される。例えば、非補正時における光量が少ない(ただし欠陥素子EDと判定される閾値は上回る)電気光学素子Eの補正値Aほど相対的に大きい数値に設定される。さらに、欠陥素子EDに対してX方向の両側に位置する2個の補填用素子EAの補正値Aは、標準素子E0と同じ階調値が指定された場合の各補填用素子EAの光量が、補正後の標準素子E0の光量よりも大きい所定値に近づくように設定される。
【0040】
以上の条件を満たす補正値Aは、例えば検査装置が図8に例示する各処理を実行することで設定される。まず、検査装置は、素子部10を構成するn個の電気光学素子Eの各々について光量を測定する(ステップS20)。例えば、検査装置は、各電気光学素子Eに対して順番に駆動電流IDRが供給されるように駆動回路20を制御し、そのときの各電気光学素子Eの光量を受光装置からの信号によって順次に測定する。次いで、検査装置は、ステップS20にて測定した各光量に基づいて、n個の電気光学素子Eについて光量が均一化されるように各電気光学素子Eの補正値Aを設定する(ステップS21)。ステップS21の処理は、ステップS20にて測定された光量が所定値を上回る電気光学素子E(すなわちn個の電気光学素子Eから欠陥素子EDを除外した補填用素子EAおよび標準素子E0)を対象として実行される。
【0041】
次いで、検査装置は、素子部10から欠陥素子EDを探索する(ステップS22)。ステップS22においては、ステップS20にて測定された光量が所定値を下回る電気光学素子Eを欠陥素子EDと判定してもよいし、ステップS20とは別個に図6のステップS10と同様の処理を実行することで欠陥素子EDを探索してもよい。ステップS22においては欠陥素子EDの位置も特定される。そして、検査装置は、ステップS22にて欠陥素子EDが発見されたか否かを判定する(ステップS23)。
【0042】
欠陥素子EDが発見された場合、検査装置は、欠陥素子EDに隣接する各補填用素子EAについてステップS21で設定した補正値Aを修正する(ステップS24)。例えば、検査装置は、補填用素子EAについてステップS21で設定した補正値Aと所定値との加算値を新たな補正値Aとして算定する。すなわち、ステップS21における補正値Aの設定で各補填用素子EA同士の光量のバラツキが抑制され、ステップS24における補正値Aの修正で、欠陥素子EDの光量の不足を補填するように各補填用素子EAの光量が増加する。なお、標準素子E0の補正値AはステップS21にて設定された数値(すなわち各標準素子E0同士の光量を均一化する数値)に維持される。
【0043】
一方、ステップS22にて欠陥素子EDが発見されなかった場合、検査装置は、ステップS24を実行せずにステップS25に処理を移行する。したがって、総ての電気光学素子Eの補正値AはステップS21にて設定された数値(すなわち総ての電気光学素子Eの光量を均一化し得る数値)に維持される。そして、検査装置は、以上の手順(S21・S24)で設定した補正値Aを電気光学装置Hの各記憶回路223に書き込む(ステップS25)。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態においては、欠陥素子EDに近接する補填用素子EAが標準素子E0よりも大きい光量に駆動されるから、第1実施形態と同様の効果が奏される。さらに、本実施形態によれば、各電気光学素子Eの補正値Aを各々の特性に応じて設定することで欠陥素子ED以外の電気光学素子Eの光量の誤差が抑制されるから、素子部10における光量のムラ(さらには画像形成装置によって形成される画像の階調のムラ)を第1実施形態よりも効果的に抑制することが可能である。
【0045】
しかも、本実施形態においては、欠陥素子EDによる光量の不足の補填と各電気光学素子Eの光量のバラツキの補償とが補正値Aの設定によって実現されるから、各々を実現するための要素を個別に用意する必要はない。例えば、図3に例示した構成の回路や、電気光学素子Eの光量のバラツキのみを補正値Aに応じて補正する回路を、本実施形態の各単位回路Uとして流用することが可能である。すなわち、本実施形態によれば、電気光学装置Hの構成を複雑化や回路の肥大化を伴なうことなく、光量のムラの抑制という所期の効果を得ることができる。
【0046】
<C:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0047】
(1)変形例1
以上の各形態においては、欠陥素子EDの両側に隣接する各電気光学素子Eが補填用素子EAとされた場合を例示したが、欠陥素子EDと補填用素子EAとの位置的な関係は適宜に変更される。例えば、欠陥素子EDに対してX方向の片側に隣接する1個の電気光学素子Eのみを補填用素子EAとしてもよい。
【0048】
また、欠陥素子EDを含む所定の範囲に属する3個以上の電気光学素子Eを補填用素子EAとしてもよい。例えば、図9には、欠陥素子EDに対してX方向の両側に位置する2個ずつの電気光学素子E(合計4個)を補填用素子EAとした場合の補正後の各電気光学素子Eの光量が図示されている。
【0049】
欠陥素子EDに対してX方向に沿った各側方に隣接する2個以上の電気光学素子Eが補填用素子EAとされた構成においては、図9に示すように、欠陥素子EDに近い位置にある補填用素子EAほど光量が段階的に大きくなるように各電気光学素子Eの補正値Aを設定してもよい。すなわち、図9の例においては、第(i-2)段目および第(i+2)段の各補填用素子EAが標準素子E0よりも大きい光量で発光し、かつ、さらに欠陥素子EDに近い位置にある第(i-1)段目および第(i+1)段目の各補填用素子EAが第(i-2)段目および第(i+2)段目の各補填用素子EAよりも大きい光量で発光するように補正値Aが決定される。図9の構成によれば、第1実施形態や第2実施形態のように欠陥素子EDに隣接する2個の電気光学素子Eのみが補填用素子EAとされた構成や、欠陥素子EDに近接する3個以上の補填用素子EAが同等の光量で発光する構成と比較して、欠陥素子EDによる光量の不足をいっそう目立たなくすることが可能である。
【0050】
(2)変形例2
以上の各形態においては、階調値に応じて駆動信号S[i]のパルス幅が制御されるとともに補正値Aに応じて駆動電流IDRの電流値が制御される構成を例示したが、階調値および補正値Aと駆動信号S[i]の波形との関係は適宜に変更される。例えば、補正値Aに応じて駆動信号S[i]のパルス幅を制御するとともに階調値に応じて駆動電流IDRの電流値を制御する構成や、補正値Aおよび階調値の双方に応じて駆動信号S[i]のパルス幅および駆動電流IDRの電流値の一方を制御する構成も採用される。また、例えば電圧の印加によって光量が変化する電圧駆動型の電気光学素子Eを利用した電気光学装置Hにおいては駆動信号S[i]が電圧信号とされるから、駆動信号S[i]の電圧値を補正値Aに応じて補正してもよい。以上の例示から理解されるように、本発明のひとつの態様に係る駆動回路20は、補填用素子EAと標準素子E0とに同じ階調が指定された場合に補填用素子EAが標準素子E0よりも大きい光量となるように各電気光学素子Eを駆動する回路であれば足りる。
【0051】
(3)変形例3
補填用素子EAの光量を恒常的に増加させる必要は必ずしもない。例えば欠陥素子EDに指定された階調値が所定の条件を満たす場合に限って補填用素子EAの光量を増加させる構成も採用される。例えば、非発光(消灯)に相当する階調値が欠陥素子EDに対して指定された場合には、欠陥素子EDに起因した光量の不足は本来的に問題とならない。したがって、欠陥素子EDに指定された階調値が所定値を下回る場合には補填用素子EAの光量の増加を停止するといった構成としてもよい。
【0052】
すなわち、駆動回路20は、各補填用素子EAと標準素子E0とに対して同じ階調値が指定されたときに、所定値を上回る階調値が欠陥素子EDに指定された場合には、各補填用素子EAが標準素子E0よりも大きい光量となり、所定値を下回る階調値が欠陥素子EDに指定された場合には各補填用素子EAが標準素子E0と同等の光量となるように、各電気光学素子Eを駆動する。さらに詳述すると、欠陥素子EDに非発光が指示された場合には、補填用素子EAに供給される駆動電流IDRが、標準素子E0に供給される駆動電流IDRと同等の電流値に設定される。例えば、補填用素子EAの補正値Aが標準素子E0と同等の数値A0に変更される。以上の構成によれば、補填用素子EAの光量を恒常的に増加させる構成と比較して、補填用素子EAの劣化を抑制することが可能である。
【0053】
(4)変形例4
有機発光ダイオード素子は電気光学素子の例示に過ぎない。本発明に適用される電気光学素子について、自身が発光する自発光型と外光の透過率を変化させる非発光型(例えば液晶素子)との区別や、電流の供給によって駆動される電流駆動型と電圧の印加によって駆動される電圧駆動型との区別は不問である。例えば、無機EL素子、フィールド・エミッション(FE)素子、表面導電型エミッション(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子、LED(Light Emitting Diode)素子、液晶素子、電気泳動素子、エレクトロクロミック素子など様々な電気光学素子を本発明に利用することができる。
【0054】
<D:応用例>
本発明に係る電気光学装置Hを利用した電子機器(画像形成装置)の具体的な形態を説明する。
図10は、以上の形態に係る電気光学装置Hを採用した画像形成装置の構成を示す断面図である。画像形成装置は、タンデム型のフルカラー画像形成装置であり、以上の形態に係る4個の電気光学装置H(HK,HC,HM,HY)と、各電気光学装置Hに対応する4個の感光体ドラム70(70K,70C,70M,70Y)とを具備する。ひとつの電気光学装置Hは、これに対応した感光体ドラム70の像形成面(外周面)と対向するように配置される。なお、各符号の添字「K」「C」「M」「Y」は、黒(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各顕像の形成に利用されることを意味している。
【0055】
図10に示すように、駆動ローラ711と従動ローラ712とには無端の中間転写ベルト72が巻回される。4個の感光体ドラム70は、相互に所定の間隔をあけて中間転写ベルト72の周囲に配置される。各感光体ドラム70は、中間転写ベルト72の駆動に同期して回転する。
【0056】
各感光体ドラム70の周囲には、電気光学装置Hのほかにコロナ帯電器731(731K,731C,731M,731Y)と現像器732(732K,732C,732M,732Y)とが配置される。コロナ帯電器731は、これに対応する感光体ドラム70の像形成面を一様に帯電させる。この帯電した像形成面を各電気光学装置Hが露光することで静電潜像が形成される。各現像器732は、静電潜像に現像剤(トナー)を付着させることで感光体ドラム70に顕像(可視像)を形成する。
【0057】
以上のように感光体ドラム70に形成された各色(黒・シアン・マゼンタ・イエロー)の顕像が中間転写ベルト72の表面に順次に転写(一次転写)されることでフルカラーの顕像が形成される。中間転写ベルト72の内側には4個の一次転写コロトロン(転写器)74(74K,74C,74M,74Y)が配置される。各一次転写コロトロン74は、これに対応する感光体ドラム70から顕像を静電的に吸引することによって、感光体ドラム70と一次転写コロトロン74との間隙を通過する中間転写ベルト72に顕像を転写する。
【0058】
シート(記録材)75は、ピックアップローラ761によって給紙カセット762から1枚ずつ給送され、中間転写ベルト72と二次転写ローラ77との間のニップに搬送される。中間転写ベルト72の表面に形成されたフルカラーの顕像は、二次転写ローラ77によってシート75の片面に転写(二次転写)され、定着ローラ対78を通過することでシート75に定着される。排紙ローラ対79は、以上の工程を経て顕像が定着されたシート75を排出する。
【0059】
以上に例示した画像形成装置は有機発光ダイオード素子を光源(露光手段)として利用しているので、レーザ走査光学系を利用した構成よりも装置が小型化される。なお、以上に例示した以外の構成の画像形成装置にも電気光学装置Hを適用することができる。例えば、ロータリ現像式の画像形成装置や、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムからシートに対して直接的に顕像を転写するタイプの画像形成装置、あるいはモノクロの画像を形成する画像形成装置にも電気光学装置Hを利用することが可能である。
【0060】
なお、電気光学装置Hの用途は像担持体の露光に限定されない。例えば、電気光学装置Hは、原稿などの読取対象に光を照射する照明装置として画像読取装置に採用される。この種の画像読取装置としては、スキャナ、複写機やファクシミリの読取部分、バーコードリーダ、あるいはQRコード(登録商標)のような二次元画像コードを読む二次元画像コードリーダがある。
【0061】
また、電気光学素子Eがマトリクス状に配列された電気光学装置Hは、各種の電子機器の表示装置としても利用される。本発明が適用される電子機器としては、例えば、可搬型のパーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器などがある。
【0062】
なお、表示装置においては欠陥素子EDによる光量の不足が利用者に知覚されにくいから、例えば素子部10にひとつの欠陥素子EDが存在する程度であれば、電気光学装置Hが良品であると判定される可能性もある。しかし、図10のように電気光学装置Hを露光装置として利用した画像形成装置においては、欠陥素子EDの影響が画像におけるスジ状のムラとして顕在化するから、仮に光量の不足が補填されないとすれば、素子部10にひとつの欠陥素子EDが存在するだけでも電気光学装置Hの全体として不良品と判定される場合がある。すなわち、電気光学装置Hを良品と判定するために要求される電気光学素子Eの条件は画像形成装置において特に厳格である。以上の事情を考慮すると、欠陥素子EDの影響が低減される以上の各形態の電気光学装置Hは、画像形成装置の露光装置として特に好適であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態に係る電気光学装置Hの構成を示すブロック図である。
【図2】駆動信号S[i]の波形を例示するタイミングチャートである。
【図3】単位回路の構成を示す回路図である。
【図4】補正回路の構成を示す回路図である。
【図5】各電気光学素子の光量の補正を説明するための概念図である。
【図6】補正値を設定する手順を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態における各電気光学素子の光量の補正を説明するための概念図である。
【図8】補正値を設定する手順を示すフローチャートである。
【図9】変形例における各電気光学素子の光量の補正を説明するための概念図である。
【図10】電子機器のひとつの形態(画像形成装置)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
H……電気光学装置、10……素子部、E……電気光学素子(EA……補填用素子、E0……標準素子、ED……欠陥素子)、20……駆動回路、U……単位回路、22……補正回路、Q1〜Q3……トランジスタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光量が可変である複数の電気光学素子と、
前記複数の電気光学素子の各々の光量を制御する駆動回路とを具備し、
前記駆動回路は、前記複数の電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子に近接した位置にある所定数の第1電気光学素子と、前記所定数の第1電気光学素子と比較して前記欠陥に係る電気光学素子から離間した位置にある第2電気光学素子とに対して同じ階調値が指定された場合に、前記所定数の第1電気光学素子が前記第2電気光学素子よりも大きい光量となるように、前記各電気光学素子を駆動する
電気光学装置。
【請求項2】
前記各電気光学素子の補正値を記憶する記憶回路を具備し、
前記駆動回路は、前記各電気光学素子に対応した複数の単位回路を含み、
前記複数の単位回路の各々は、
当該単位回路に対応した電気光学素子の補正値に応じたレベルの駆動信号を生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した駆動信号を当該電気光学素子の階調値に応じた時間長の少なくとも一部において前記各電気光学素子に供給する駆動制御手段とを含み、
前記記憶回路が記憶する各補正値は、前記所定数の第1電気光学素子に供給される駆動信号が前記第2電気光学素子に供給される駆動信号よりも高いレベルとなるように設定される
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、各々に同じ階調値が指定されたときの複数の第2電気光学素子の光量が均一化されるように前記第2電気光学素子の光量を補正する
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記所定数の第1電気光学素子は、前記欠陥に係る電気光学素子に隣接する電気光学素子を含む
請求項1から請求項3の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記所定数の第1電気光学素子は、前記欠陥に係る電気光学素子の両側に位置する各電気光学素子を含む
請求項1から請求項3の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記所定数の第1電気光学素子は、前記欠陥に係る電気光学素子の一方の側に隣接する複数の電気光学素子と他方の側に隣接する複数の電気光学素子とを含む
請求項1から請求項3の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記駆動回路は、前記所定数の第1電気光学素子のうち、前記欠陥に係る電気光学素子に近い位置にある第1電気光学素子ほど大きい光量となるように、前記各電気光学素子を駆動する
請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記所定数の第1電気光学素子は、前記欠陥に係る電気光学素子に隣接する複数の電気光学素子を含み、
前記所定数の第1電気光学素子のうち、前記欠陥に係る電気光学素子に近い位置にある第1電気光学素子ほど大きい光量となるように、前記各電気光学素子を駆動する
請求項1から請求項3の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載の電気光学装置を具備する電子機器。
【請求項10】
複数の電気光学素子の各々の光量を制御する駆動回路であって、
前記複数の電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子に近接した位置にある所定数の第1電気光学素子と、前記所定数の第1電気光学素子と比較して前記欠陥に係る電気光学素子から離間した位置にある第2電気光学素子とに対して同じ階調値が指定された場合に、前記所定数の第1電気光学素子が前記第2電気光学素子よりも大きい光量となるように、前記各電気光学素子を駆動する
電気光学装置の駆動回路。
【請求項1】
光量が可変である複数の電気光学素子と、
前記複数の電気光学素子の各々の光量を制御する駆動回路とを具備し、
前記駆動回路は、前記複数の電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子に近接した位置にある所定数の第1電気光学素子と、前記所定数の第1電気光学素子と比較して前記欠陥に係る電気光学素子から離間した位置にある第2電気光学素子とに対して同じ階調値が指定された場合に、前記所定数の第1電気光学素子が前記第2電気光学素子よりも大きい光量となるように、前記各電気光学素子を駆動する
電気光学装置。
【請求項2】
前記各電気光学素子の補正値を記憶する記憶回路を具備し、
前記駆動回路は、前記各電気光学素子に対応した複数の単位回路を含み、
前記複数の単位回路の各々は、
当該単位回路に対応した電気光学素子の補正値に応じたレベルの駆動信号を生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した駆動信号を当該電気光学素子の階調値に応じた時間長の少なくとも一部において前記各電気光学素子に供給する駆動制御手段とを含み、
前記記憶回路が記憶する各補正値は、前記所定数の第1電気光学素子に供給される駆動信号が前記第2電気光学素子に供給される駆動信号よりも高いレベルとなるように設定される
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、各々に同じ階調値が指定されたときの複数の第2電気光学素子の光量が均一化されるように前記第2電気光学素子の光量を補正する
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記所定数の第1電気光学素子は、前記欠陥に係る電気光学素子に隣接する電気光学素子を含む
請求項1から請求項3の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記所定数の第1電気光学素子は、前記欠陥に係る電気光学素子の両側に位置する各電気光学素子を含む
請求項1から請求項3の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記所定数の第1電気光学素子は、前記欠陥に係る電気光学素子の一方の側に隣接する複数の電気光学素子と他方の側に隣接する複数の電気光学素子とを含む
請求項1から請求項3の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記駆動回路は、前記所定数の第1電気光学素子のうち、前記欠陥に係る電気光学素子に近い位置にある第1電気光学素子ほど大きい光量となるように、前記各電気光学素子を駆動する
請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記所定数の第1電気光学素子は、前記欠陥に係る電気光学素子に隣接する複数の電気光学素子を含み、
前記所定数の第1電気光学素子のうち、前記欠陥に係る電気光学素子に近い位置にある第1電気光学素子ほど大きい光量となるように、前記各電気光学素子を駆動する
請求項1から請求項3の何れかに記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載の電気光学装置を具備する電子機器。
【請求項10】
複数の電気光学素子の各々の光量を制御する駆動回路であって、
前記複数の電気光学素子のうち、欠陥に係る電気光学素子に近接した位置にある所定数の第1電気光学素子と、前記所定数の第1電気光学素子と比較して前記欠陥に係る電気光学素子から離間した位置にある第2電気光学素子とに対して同じ階調値が指定された場合に、前記所定数の第1電気光学素子が前記第2電気光学素子よりも大きい光量となるように、前記各電気光学素子を駆動する
電気光学装置の駆動回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−55817(P2008−55817A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237374(P2006−237374)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]