説明

電気光学装置及び電気光学装置の製造方法、並びに電子機器

【課題】例えば、隣り合う画素電極間における液晶の配向乱れを一因とする光抜け等の表示不良を低減する。
【解決手段】画素電極9a1及び9a2の夫々に段差部27及び28が形成されているため、液晶装置1の動作時に画素電極9a1及び9a2の夫々の電位が相互に異なる電位に設定された場合でも、段差部27及び28間で基板面に沿って生じる横電界がこれら画素電極間に存在する液晶の配向状態に及ぼす影響を低減できる。より具体的には、段差部27及び28が設けられていることによって、これら段差部間における電界によって液晶の配向状態が乱される範囲を比較例に係る液晶装置に比べて小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶装置等の電気光学装置、及び電気光学装置の製造方法、並びにそのような電気光学装置をライトバルブとして具備してなるプロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の一例である液晶装置では、表示される画像のコントラストを高めることを目的として、これら画素電極を相互に電気的に絶縁する段差部を備えた液晶表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、電極材料の非対称性を一因として発生する内部起電力を低減するために段差部が形成された反射型液晶装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−31228号公報
【特許文献2】特開2004−170604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された液晶装置では、画素電極の縁の形状が、当該画素電極の表面から下地膜に向かって切り立った端面を有する形状であるため、これら画素電極間の領域において画素電極の表面より下地膜に向かって窪んだ凹部が形成されてしまい、画素電極上に形成される配向膜の表面が平坦な面とならない。このような配向膜によれば、配向膜に対するラビング処理が均一に行われず、画素電極間の領域で液晶の配向状態に乱れが生じ、光抜け等の表示不良が生じてしまう。
【0005】
加えて、画素電極の縁の形状が切り立った端面を有する形状であるため、例えば、隣り合う画素電極の夫々の電位が相互に異なる電位に設定された場合、これら画素電極間に生じる横電界によって、画素電極間領域における液晶の配向状態が乱される。特に、表示される画像の高精細化を目的として画素電極のピッチが狭められた場合、相互に隣り合う画素電極間の間隔が狭まるため、横電界に起因する液晶の配向の乱れはより一層顕著になる。
【0006】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、隣り合う画素電極間における液晶の配向乱れを一因とする光抜け等の表示不良を低減できる液晶装置等の電気光学装置、及びそのような電気光学装置を製造可能な電気光学装置の製造方法、並びに、プロジェクタ等の電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気光学装置は上記課題を解決するために、基板と、該基板上の表示領域を構成する複数の画素の一の画素に形成された第1画素電極と、前記複数の画素のうち前記一の画素に隣り合う他の画素に形成された第2画素電極とを備え、第1画素電極の複数の縁のうち前記第2画素電極に向かい合う縁に、前記第1画素電極の中央部より厚みが薄い部分を含む第1段差部が設けられている。
【0008】
本発明に係る電気光学装置によれば、基板は、例えば、画素スイッチング素子等の半導体素子が形成された素子基板である。素子基板等の基板上の表示領域を構成する複数の画素は、例えばマトリクス状に配列された領域であり、一の画素電極は、これら画素に形成された複数の画素電極の一つである。第2画素電極は、第1画素電極と相互に隣り合う画素電極である。
【0009】
第1段差部は、前記前記第1画素電極の中央部より厚みが薄い部分を含んであり、第1画素電極の複数の縁のうち前記第2画素電極に向かい合う縁に設けられた段差部である。より具体的には、第1画素電極の複数の縁のうち第2画素電極に向かい合う縁は、第1画素電極の中央部の厚みと等しい高さから第1画素電極の下地に向かって切り立った形状を有する端面から構成されているのではなく、中央部の高さから一旦低くなった部分、即ち、中央部より厚みが薄い部分と、中央部との夫々の厚みの違いに応じて形成された段差形状を有している。
【0010】
したがって、本発明に係る電気光学装置によれば、電気光学装置の動作時に第1画素電極及び第2画素電極の夫々の電位が相互に異なる電位に設定された際に、第1段差部と、第2画素電極の複数の縁のうち当該第1段差部に向かい合う縁との間で基板面に沿って生じる横電界が、これら画素電極間に存在する液晶などの電気光学物質の配向状態に及ぼす影響を低減できる。加えて、第1段差部を設けない場合に比べて、例えば、第1画素電極及び第2画素電極に亘って形成された配向膜を平坦に形成できるため、配向膜のラビングむらを低減でき、ラビングむらを一因として生じる光抜け等の表示不良を低減することが可能である。
【0011】
尚、横電界及び配向膜のラビングむらの夫々を低減する観点からみれば、第1画素電極の縁を断面上テーパ形状に形成することも考えられるが、製造プロセスにおける加工精度のばらつきを考えると、基板の基板面に対して傾斜したテーパ形状の傾斜面を複数の画素電極相互で均一となるように形成することは技術的困難である。しかしながら、本発明に係る電気光学装置によれば、第1画素電極の中央部の厚みより薄い部分を縁に形成すればよいので、縁の形状をテーパ形状にする場合に比べて、製造プロセスにおける加工条件を制御し易い利点もある。
【0012】
本発明に係る電気光学装置の一の態様では、前記第1段差部は、前記第1画素電極の中央部から前記第2画素電極に向かう向きに沿って順に厚みが薄くなる複数の平坦部を有していてもよい。
【0013】
この態様によれば、複数の平坦部の幅を狭めつつ、且つ各々の厚みを前記第1画素電極の中央部から前記第2画素電極に向かう向きに沿って順に薄く形成することによって、第1画素電極の複数の縁のうち第2画素電極に向かい合う縁の形状を、横電界及びラビングむらを低減するための理想的な形状であるテーパ形状に近づけることができる。
【0014】
本発明に係る電気光学装置の他の態様では、前記第2画素電極の複数の縁のうち前記第1段差部に向かい合う縁に、前記第2画素電極の中央部より厚みが薄い部分を含む第2段差部が設けられていてもよい。
【0015】
この態様によれば、第2段差部は、第1段差部と同様の形状を有している。相互に隣り合う第1画素電極及び第2画素電極の夫々において、互いに向い合う夫々の縁に第1段差部及び第2段差部の夫々が設けられているため、第1段差部のみを設けた場合に比べて、横電界及びラビングむらに起因して生じる液晶の配向の乱れを一層低減することが可能である。
【0016】
この態様では、前記第2段差部は、前記第2画素電極の中央部から前記第1画素電極に向かう向きに沿って順に厚みが薄くなる複数の平坦部を有していてもよい。
【0017】
この態様によれば、第1段差部のみが複数の平坦部を有している場合に比べて、横電界及びラビングむらに起因して生じる液晶の配向の乱れを一層低減することが可能である。
【0018】
本発明の第1の発明に係る電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々に一の導電膜を形成する工程と、前記一の導電膜上から電極材料を成膜することによって、前記一の導電膜全体に重なり、且つ前記一の導電膜の表面の中央部から前記一の導電膜の縁の外側まで延びる他の導電膜を前記複数の画素の夫々に形成する工程とを備える。
【0019】
本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々に一の導電膜を形成する。一の導電膜は、例えば、複数の画素の一の画素に形成されており、他の画素に形成された同種の導電膜と相互に間隔を隔てるように所定の形状にパターニングされている。このような一の導電膜は、例えば、液晶装置等の電気光学装置の画素電極の電極材料として汎用されるITO等の透明導電材料をスパッタリングにより成膜した後、フォトエッチング等のエッチング法を用いて当該成膜された膜部を所定の形状にパターニングすることによって形成される。
【0020】
その後、前記一の導電膜上から、例えば当該一の導電膜と同種の電極材料を成膜することによって、前記一の導電膜全体に重なり、且つ前記一の導電膜の表面の中央部から前記一の導電膜の縁の外側まで延びる他の導電膜を前記複数の画素の夫々に形成し、一の導電膜及び他の導電膜からなる画素電極を形成する。
【0021】
このような画素電極の構造は、その中央部は一の導電膜及び他の導電膜の夫々の厚みを合計した厚みを有する2層構造であり、一の導電膜の縁の外側に延びる部分は、他の導電膜の厚みを有する単層構造である。したがって、このように形成された画素電極の縁には、中央部及び縁の夫々の厚みに応じた段差部が形成されていることになる。
【0022】
したがって、本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、一に導電膜及び他の導電膜からなる画素電極の縁に段差部が形成できるため、上述の本発明に係る電気光学装置と同様に、横電界及びラビングむらに起因して生じる光抜け等の表示不良が低減された表示性能が高い電気光学装置を製造できる。
【0023】
本発明の第2の発明に係る電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板上の表示領域を構成する複数の画素に渡って導電膜を形成する工程と、前記複数の画素の夫々において前記導電膜上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜の中央部に比べて厚みが薄い平坦部が前記レジスト膜の縁に形成されるように前記レジスト膜をパターニングする工程と、該パターニングされたレジスト膜上から前記導電膜にエッチング処理を施すことによって、前記複数の画素の夫々において相互に分断された導電膜の中央部に比べて厚みが薄い部分を含む段差部を前記分断された導電膜の縁に形成する工程とを備える。
【0024】
本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、素子基板等の基板上の表示領域を構成する複数の画素に渡って、例えばITO等の透明導電材料から構成された導電膜を形成する。
【0025】
レジスト膜は、複数の画素の夫々において、前記導電膜上に形成される。より具体的には、レジスト膜は、複数の画素に夫々に対応して、画素毎に形成されている。
【0026】
このようなレジスト膜は、その中央部に比べて厚みが薄い平坦部がレジスト膜の縁に形成されるようにパターニングされる。
【0027】
このようにパターニングされたレジスト膜上から、前記導電膜にエッチング処理を施すことによって、相互に分断された導電膜の中央部に比べて厚みが薄い部分を含む段差部を前当該分断された導電膜の縁に形成する。より具体的には、レジスト膜の中央部及び縁の夫々の厚みの違いに応じて、ハーフトーン露光等のドライエッチングによって、導電膜の複数の画素相互で分断され、且つ分断された部分の縁が当該分断された部分の中央部より厚みが薄くなるようにエッチングされる。これにより、縁に段差部が形成された画素電極を複数の画素の夫々に形成される。
【0028】
したがって、本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、上述の発明の第1の発明に係る電気光学装置の製造方法と同様に、横電界及びラビングむらに起因して生じる光抜け等の表示不良が低減された表示性能が高い電気光学装置を製造できる。
【0029】
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備してなる。
【0030】
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な、プロジェクタ等の投写型表示装置、直視型ディスプレイ装置、携帯電話、カーナビゲーションシステムに適用されるディスプレイ装置、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ等の小型情報機器、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル等の各種電子機器を実現できる。
【0031】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電気光学装置及び電気光学装置の製造方法、並びに電子機器の各実施形態を説明する。本実施形態では、電気光学装置の一例としてアクティブマトリクス駆動方式を採用した液晶装置を例に挙げる。
【0033】
<1:電気光学装置>
先ず、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る液晶装置1の全体構成を説明する。図1は、本発明の「基板」の一例である素子基板10をその上に形成された各構成要素と共に、対向基板20の側から見た液晶装置1の平面図であり、図2は、図1のII−II´断面図である。
【0034】
図1及び図2において、液晶装置1では、素子基板10及び対向基板20が相互に対向配置されている。素子基板10及び対向基板20間に液晶層50が封入されており、素子基板10と対向基板20とは、複数の画素で構成された本発明の「表示領域」の典型例である画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0035】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等の樹脂材料からなり、製造プロセスにおいて素子基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、素子基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0036】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、素子基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。尚、画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域が存在する。より具体的には、本実施形態では、素子基板10の中心から見て、額縁遮光膜53より外側の領域が周辺領域として規定されている。
【0037】
液晶装置1は、データ線駆動回路101、及び走査線駆動回路104を備えている。周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域において、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が素子基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。走査線駆動回路104は、額縁遮光膜53に覆われるように形成された複数の配線105によって相互に電気的に接続されている。
【0038】
対向基板20の4つのコーナー部には、素子基板10及び対向基板20間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、素子基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、素子基板10及び対向基板20間で電気的な導通をとることができる。
【0039】
図2において、素子基板10上には、画素スイッチング用のトランジスタの一例としてのTFT、走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、液晶装置1の動作時に所定の配向状態をとる。
【0040】
次に、図3を参照しながら、画像表示領域10aにおける回路構成を説明する。図3は、本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域における回路構成を示した回路図である。
【0041】
図3において、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素部72の夫々は、画素電極9a、TFT30、及び液晶素子50aを備えている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、液晶装置1の動作時に画素電極9aをスイッチング制御し、当該制御に応じて液晶素子50aを駆動する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0042】
TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、液晶装置1は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態にすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0043】
液晶層50に含まれる液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素部の単位で印加された電圧に応じて入射光或いは反射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素部の単位で印加された電圧に応じて入射光或いは反射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。保持容量70は、画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶素子50aと電気的に並列に接続されており、固定電位線300を介して一方の容量電極に固定電位が供給される。
【0044】
次に、図4乃至図8を参照しながら、液晶装置1の具体的な構成を詳細に説明する。図4は、液晶装置1における複数の画素電極9aの配列状態を図式的に示した液晶装置1の図式的平面図である。図5は、液晶装置1の画像表示領域10aの一部を拡大して示した拡大平面図である。図6は、図5のVI−VI’線断面図である。尚、図6では、説明の便宜上、画素電極9a上の配向膜16より下層側の構造を示している。図7は、比較例と共に、液晶装置1の液晶に加わる電界強度を図式的に示した図式的断面図である。図8は、画素電極の変形例を示した断面図である。
【0045】
図4において、複数の画素電極9aの夫々は、素子基板10上の画像表示領域10aを構成するように、図中X方向及びY方向に沿って規定された複数の画素72gに形成されている。
【0046】
次に、図5及び図6を参照しながら、画素電極9aの構成を詳細に説明する。尚、以下では、説明を便宜上、複数の画素電極9aのうち相互に隣り合う画素72gの夫々に形成された画素電極9aを画素電極9a1及び9a2と表記する。
【0047】
図5及び図6において、本発明の「第1画素電極」の一例である画素電極9a1、及び本発明の「第2画素電極」の一例である画素電極9a2の夫々は、素子基板10に順次形成された絶縁膜41、42及び43上に形成されている。素子基板10には、ソース1s、チャネル1c、及びドレイン1dを含む半導体層1aを備えたTFT30が絶縁膜41及び42に埋め込まれるように形成されている。絶縁膜42上における画素電極9a1及び9a2間の領域には、TFT30に入射する光を遮光すると共に、画素72gの開口領域を規定する遮光膜80が形成されている。遮光膜80は、例えば、アルミニウム等の金属材料で構成されており、画素電極9a及びその下層側の回路部を電気的に接続する配線層として兼用されている。コンタクトホール83は、画素電極9aのうち縁部より厚みが厚い部分に形成されており、画素電極9aをその下層側の回路部等と電気的に接続している。
【0048】
画素電極9a1は、その表面を規定する複数の縁のうち画素電極9a2に向かい合う縁に、画素電極9a1の中央部を占める電極部分39a1より厚みが薄い電極部分39b1を有している。これら電極部分39a1及び39b1の厚みの違いに応じて構成された段差部27が、本発明の「第1段差部」の一例である。
【0049】
画素電極9a2は、その表面を規定する複数の縁のうち段差部27に向かい合う縁に、第2画素電極の中央部を占める電極部分39a2より厚みが薄い電極部分39b2を有している。これら電極部分39a2及び39b2の厚みの違いに応じて構成された段差部28が、本発明の「第2段差部」の一例である。配向膜16は、複数の画素72gに渡って形成されている。
【0050】
次に、図7を参照しながら、画素電極9aの特有の形状に応じて得られる液晶装置1の効果を説明する。尚、以下で参照する比較例に係る液晶装置、及び液晶装置の製造方法では、本実施形態に係る液晶装置1と共通する部分に共通の参照符号を付している。
【0051】
図7(a)に示すように、比較例に係る液晶装置によれば、相互に隣り合う画素電極19a1及び19a2の夫々に縁のうち相互に向かい合う縁の端面形状は、画素電極19a1及び19a2の夫々の表面から絶縁膜43の表面に向かって切り立った形状である。このような画素電極19a1及び19a2の夫々の電位が、液晶装置の動作時に相互に異なる電位に設定された場合、切り立った端面形状に起因して、画素電極19a1及び19a2間の領域に存在する液晶に加わる電界に乱れが生じる。即ち、画素電極19a1及び19a2間で基板面に沿って生じる横電界がこれら画素電極間に存在する液晶の配向状態に及ぼす影響が大きくなり、液晶の配向に乱れを生じさせる。このような液晶の配向の乱れが発生することによって、画素電極19a1及び19a2間の領域で光抜け等の表示不良が発生してしまう。
【0052】
加えて、画素電極19a1及び19a2間に、これら画素電極の夫々の表面の位置と、絶縁膜43の表面の位置との差、即ち画素電極19a1及び19a2の夫々の厚みに起因して溝部79が形成されてしまうため、画素電極19a1及び19a2に渡って形成された配向膜16のうち溝部79に重なる部分は、その他より窪んだ凹部なる。したがって、配向膜16aは平坦に形成されないことになる。このような配向膜16aによれば、配向膜16aをラビングするラビング処理を均一に行うことが困難となり、ラビングむらに起因した表示不良が発生してしまう。また、画素電極19a1及び19a2の夫々の肩部において、配向膜16aの膜厚が薄くなるため、液晶が安定して配向することができなくなり、この部分において表示不良が発生してしまう。
【0053】
また、横電界によって発生する液晶の配向乱れを低減すること及び配向膜のラビングむらを低減することの夫々の観点からみれば、画素電極19aの縁を断面上テーパ形状に形成することも考えられるが、製造プロセスにおける加工精度のばらつきを考えると、素子基板10の基板面に対して傾斜したテーパ形状を構成する傾斜面を複数の画素電極相互で均一となるように形成することは技術的困難である。
【0054】
そこで、図7(b)に示すように、液晶装置1によれば、画素電極9a1及び9a2の夫々に段差部27及び28が形成されているため、液晶装置1の動作時に画素電極9a1及び9a2の夫々の電位が相互に異なる電位に設定された場合でも、段差部27及び28間で基板面に沿って生じる横電界がこれら画素電極間に存在する液晶の配向状態に及ぼす影響を低減できる。より具体的には、段差部27及び28が設けられていることによって、これら段差部間における電界によって液晶の配向状態が乱される範囲を比較例に係る液晶装置に比べて小さくできる。加えて、画素電極9a1及び9a2極に渡って形成された配向膜16を平坦に形成できるため、配向膜のラビングむらを低減でき、ラビングむらを一因として生じる光抜け等の表示不良を低減することが可能である。また、画素電極9a1及び9a2の夫々の段差部において、本実施形態に係る配向膜16の膜厚が上記の比較例に係る配向膜16aよりも厚く形成されるため、液晶の配向が安定し、表示不良を防止できる。
【0055】
また、図6に示すように、液晶装置1によれば、画素電極9a1及び9a2の夫々の中央部を占める電極部分39a1及び39a2の夫々の厚みより薄い電極部分39b1及び39b2を各電極の縁に形成すればよいので、縁の形状をテーパ形状にする場合に比べて、製造プロセスにおける加工条件を制御し易い利点もある。
【0056】
尚、本実施形態では、相互に隣り合う画素電極9a1及び9a2における相互に向かう縁の両方に段差部27及び28が設けられた例を挙げたが、ラビングむらを低減すること、及び液晶の配向乱れが生じる範囲を小さくすることの夫々の観点から言えば、段差部27及び28のうち少なくとも一方が設けられていればよく、段差部を全く設けない場合に比べて、光抜け等の表示不良を低減する効果は得られる。
【0057】
次に、図8を参照しながら、本実施形態に係る液晶装置における画素電極の変形例を説明する。
【0058】
図8に示すように、本例に係る画素電極9a3は、画素電極9a1の中央部からその外側に向かう向きに沿って順に厚みが薄くなる複数の平坦部31a、31b及び31cを有する段差部31を備えている。このような段差部31は、相互に厚みが異なる平坦部を増やすほど、即ち、理想的には、平坦部の夫々の幅を狭め、且つその形成数を極限まで増やすことによって段差部の形状をテーパ形状に近づけることが可能である。このような段差部31によれば、平坦部を一つ備えた段差部に比べて、液晶の配向乱れが生じる範囲及びラビングむらをより一層低減できる。尚、段差部31は、上述した段差部27及び28の両方、或いは一方に適用可能であり、これら画素電極9a1及び9a2の夫々の縁のうち相互に向かい合う縁に形成可能である。
【0059】
<2:電気光学装置の製造方法>
次に、図9及び図10を参照しながら、本発明の第1の発明に係る電気光学装置の製造方法の一実施形態を説明する。図9は、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図である。図10は、図9に示した工程平面図に対応する工程断面図である。尚、以下で説明する電気光学装置の製造方法は、上述の液晶装置1を製造するための液晶装置の製造方法である。
【0060】
図9(a)及び図10(a)に示すように、素子基板10上の画像表示領域10aを構成する複数の画素72gの夫々に、各々が本発明の「一の導電膜」の一例である導電膜39aを形成する。導電膜39aは、複数の画素72gに渡って一様に導電膜を形成した後、当該導電膜のうち導電膜39aとして残す部分が残るようにその他の部分をフォトエッチング等の汎用のパターニング法を用いてパターニングすればよい。
【0061】
次に、導電膜39a上からITO等の電極材料を成膜することによって、導電膜39a全体に重なり、且つ導電膜39aの表面の中央部から導電膜39aの縁の外側まで延びる導電膜39bを、汎用のパターニング法を用いて複数の画素72gの夫々に形成する。
【0062】
このようにして形成された画素電極9a1及び9a2の構造は、その中央部は導電膜39a及び39bの夫々の厚みを合計した厚みを有する2層構造であり、導電膜39aの縁の外側に延びる部分は、導電膜39bの厚みを有する単層構造である。したがって、画素電極9a1及び9a2の縁には、その中央部及び縁の夫々の厚みに応じた段差部27お呼び28が形成されている。
【0063】
その後、配向膜等を画素電極9a1及び9a2上に形成し、液晶を介して素子基板10上に対向基板を配置することによって液晶装置1が形成される。
【0064】
このように、本実施形態に係る液晶装置によれば、導電膜39a及び導電膜39bからなる画素電極9a1及び9a2の縁に段差部27及び28が形成できるため、上述の本発明に係る電気光学装置と同様に、横電界及びラビングむらに起因して生じる光抜け等の表示不良が低減された表示性能が高い液晶装置1を製造できる。
【0065】
次に、図11乃至図14を参照しながら、本発明の第2の発明に係る電気光学装置の製造方法の一実施形態を説明する。図11及び図12は、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法の主要な工程を順に示した工程平面図である。図13及び図14は、図11及び図12に示した工程平面図に対応する工程断面図である。
【0066】
図11(a)及び図13(a)に示すように、素子基板10上の画像表示領域10aを構成する複数の画素72gに渡ってITO等の透明導電材料を成膜し、導電膜47を形成する。
【0067】
次に、図11(b)及び図13(b)に示すように、レジスト膜57を形成する。
【0068】
次に、図12(c)及び図14(c)に示すように、複数の画素72gの夫々においてレジスト膜57の中央部に比べて厚みが薄い平坦部がレジスト膜57の縁に形成されるように、ハーフトーン露光等の汎用のパターニング法を用いてレジスト膜57をパターニングし、複数の画素72gの夫々にレジストパターン57aを形成する。
【0069】
次に、図12(d)及び図14(d)に示すように、レジストパターン57a上から導電膜47にエッチング処理を施すことによって、中央部39aに比べて厚みが薄い部分39bを含む段差部27及び28を、画素電極9a1及び9a2の夫々の縁に形成する。その後、上述の液晶装置の製造方法と同様の工程を経て液晶装置1を完成させる。
【0070】
このような本実施形態に係る液晶装置によれば、上述の液晶装置の製造方法と同様に、横電界及びラビングむらに起因して生じる光抜け等の表示不良が低減された表示性能が高い電気光学装置を製造できる。
【0071】
<3:電子機器>
次に、図15を参照しながら、上述した液晶装置を用いた電子機器の一例を説明する。本実施形態に係る電子機器は、上述した液晶装置をライトバルブに用いたプロジェクタである。図15は、本実施形態に係るプロジェクタの構成例を示す平面図である。
【0072】
図15に示すように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gに入射される。
【0073】
液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。液晶パネル及び位相差板を含む光学系から出射された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、RおよびBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。したがって、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0074】
ここで、各液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0075】
尚、液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0076】
このようなプロジェクタは、ライトバルブとして上述の液晶装置を具備してなるので、スクリーン等の投写面に投写される投写画像の画質が高められており、高品位の画像を表示可能である。
【0077】
尚、本実施形態に係る液晶装置は、上述したプロジェクタに適用される場合に限定されるものではなく、直視型の液晶表示装置の一部を構成することも可能である。また、LCOS型の液晶装置を構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態に係る液晶装置の平面図である。
【図2】図1のII−II´線断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域における回路構成を示した回路図である。
【図4】本実施形態に係る液晶装置における複数の画素電極の配列状態を図式的に示した液晶装置の図式的平面図である。
【図5】本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域の一部を拡大して示した拡大平面図である。
【図6】図5のVI−VI’線断面図である。
【図7】本実施形態に係る液晶装置の液晶に加わる電界強度を比較例と共に図式的に示した図式的断面図である。
【図8】本実施形態に係る液晶装置における画素電極の変形例の断面形状を示した断面図である。
【図9】本発明の第1の発明に係る電気光学装置の製造方法における一実施形態の主要な工程を順に示した工程平面図である。
【図10】図9に対応した工程断面図である。
【図11】本発明の第2の発明に係る電気光学装置の製造方法における一実施形態の主要な工程を順に示した工程平面図(その1)である。
【図12】本発明の第2の発明に係る電気光学装置の製造方法における一実施形態の主要な工程を順に示した工程平面図(その2)である。
【図13】図11に対応した工程断面図である。
【図14】図12に対応した工程断面図である。
【図15】本実施形態に係る電子機器の一例を示した平面図である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・液晶装置、10・・・素子基板、20・・・対向基板、27,28・・・段差部、50・・・液晶層、50a・・・液晶素子、72・・・画素部、47・・・導電膜、57・・・レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上の表示領域を構成する複数の画素の一の画素に形成された第1画素電極と、
画素前記一の画素に隣り合う他の画素に形成された第2画素電極とを備え、
前記第1画素電極の複数の縁のうち前記第2画素電極に向かい合う縁に、前記第1画素電極の中央部より厚みが薄い部分を含む第1段差部が設けられていること
を特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1段差部は、前記第1画素電極の中央部から前記第2画素電極に向かう向きに沿って順に厚みが薄くなる複数の平坦部を有していること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第2画素電極の複数の縁のうち前記第1段差部に向かい合う縁に、前記第2画素電極の中央部より厚みが薄い部分を含む第2段差部が設けられていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第2段差部は、前記第2画素電極の中央部から前記第1画素電極に向かう向きに沿って順に厚みが薄くなる複数の平坦部を有していること
を特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々に一の導電膜を形成する工程と、
前記一の導電膜上から電極材料を成膜することによって、前記一の導電膜の表面の中央部から前記一の導電膜の縁の外側まで延びる他の導電膜を前記複数の画素の夫々に形成する工程と
を備えたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
基板上に導電膜を形成する工程と、
前記導電膜上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の中央部に比べて厚みが薄い平坦部が前記レジスト膜の縁に形成されるように前記レジスト膜をパターニングする工程と、
該パターニングされたレジスト膜上から前記導電膜にエッチング処理を施すことによって、前記導電膜を前記基板上の表示領域を構成する複数の画素の夫々に対応させて相互に分断すると共に、該分断された導電膜の縁に中央部に比べて厚みが薄い段差部を形成する工程と
を備えたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1から4の何れか一項に記載の電気光学装置を具備してなること
を特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−192831(P2009−192831A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33567(P2008−33567)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】