電気化学キャパシタ及び電気化学キャパシタ亜鉛電極の作製方法
【課題】電気化学キャパシタである、ハイブリッドキャパシタは片方の電極が電荷移動過程を伴う大きな擬似容量を持つため、EDLCより大きな静電容量、エネルギー密度、出力密度を有することができるので、そのために、資源的に豊富であるニ次電池の電極材料に用いられる亜鉛を利用して、軽量で、さらに環境適合性にも優れている材料として、活用することを提供する。
【解決手段】本発明の第1の解決手段は、活性炭素布電極を正極とし、亜鉛電極を負極とし、電解質として酸化亜鉛を含む水酸化アルカリ水溶液とからなるハイブリッドキャパシタとなる電気化学キャパシタを提供する。
【解決手段】本発明の第1の解決手段は、活性炭素布電極を正極とし、亜鉛電極を負極とし、電解質として酸化亜鉛を含む水酸化アルカリ水溶液とからなるハイブリッドキャパシタとなる電気化学キャパシタを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系電解質使用の電気化学キャパシタ及びその亜鉛電極の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気二重層キャパシタ(図及び明細書中ではEDLCと略称する場合あり)は分極性電極とイオン導電体との界面に形成される電気二重層に電荷を蓄える電気化学的エネルギーデバイスであり、電極/電解液界面での電子の移動を伴わないことが特徴である。また、広い温度範囲で優れた充放電サイクル特性をもつことや、環境に優しい材料を使用していることから、これまでに半導体メモリバックアップ用電源やアクチュエータバックアップ用電源として幅広く用いられてきた。
【0003】
EDLCには水系電解液を用いたものと有機系電解液を用いたものの二種類がある。水系電解液としては硫酸水溶液、有機系電解液としてはプロピレンカーボネートのような溶媒に、テトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボレートのような電解質を溶解したものが主に用いられる。水系電解液は基本的に誘電率が高く、粘度が低いためにイオン伝導度は有機系電解液に比べて高い。そのため急速充放電に対しては有利な系であるといえる。
【0004】
そこで、近年、新しいキャパシタの系として炭素型の電極である活性炭素繊維布と速いファラディックな電子移動過程を伴う電極を組み合わせたハイブリッドキャパシタが提案され、活発に研究が行われている。ハイブリッドキャパシタは、片方の電極が電荷移動過程を伴う大きな擬似容量を持つため、EDLCより大きな静電容量、エネルギー密度、出力密度を有することができる。
【0005】
例えば、集電体と、活性炭を有する分極性電極と、セパレータと、有機系電解液とを具備する電気二重層キャパシタにおいて、前記活性炭を、硫酸水溶液中で標準電極Ag/AgClに対し+1.0V以上+1.4V以下の電圧で酸化した後、−0.3V以上−0.7V以下の電圧で還元した電気二重層キャパシタ用分極性電極(特許文献1を参照)や、電気二重層コンデンサ用炭素材料が、炭素材料に賦活処理を施して製造される黒鉛類似の微結晶炭素を有する電気二重層コンデンサ用炭素材料であって、その微結晶炭素の層間距離が0.365nm〜0.385nmであることを特徴とする方法(特許文献2)、水に可溶でかつ酸性物質又は塩基性物質に対してゲル状を呈する高分子化合物とセパレータと水系電解液とからなるセパレータ複合型のゲル状固体電解質を使用することを特徴とする電気二重層キャパシタ(特許文献3)等が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−124078号公報
【特許文献2】特開2005−294850号公報
【特許文献3】特開2005−39196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電気化学キャパシタ、即ちハイブリッドキャパシタ(図及び明細書中ではHCと略称する場合あり)において片方の電極が電荷移動過程を伴う大きな擬似容量を持つため、EDLCより大きな静電容量、エネルギー密度、出力密度を有することができるので、その開発として、ニ次電池の電極材料に用いられる亜鉛が一般的に水系電解質への適合性があり、また標準電極電位が標準水素電極に対して−0.76Vと低く、水素過電圧が大きく、高エネルギー密度を有している。そして、資源的に豊富であるため安価であり、軽量で、さらに環境適合性にも優れている材料であることを利用した点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の解決手段は、電気化学キャパシタとして活性炭素布電極を正極とし、亜鉛電極を負極とし、電解質として酸化亜鉛を含む水酸化アルカリ水溶液とからなることにある。
【0009】
前記水酸化アルカリ水溶液が高分子ヒドロゲル電解質中に含有固定されていることである。
【0010】
前記亜鉛電極は、表面を均一な表面処理した銅箔に亜鉛メッキを施した電極を用いたことにある。
【0011】
本発明の第2の解決手段は、放電容量を正極規制とした電気化学キャパシタとすることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の活性炭素電極と亜鉛電極を用いたハイブリッドキャパシタは、普通の電気二重層キャパシタの約3倍の静電容量をもち、また、+0.4V〜+1.4Vの広い電圧範囲で安定に作動することに特徴がある。このように、大きなエネルギー密度、出力密度を持つ新たな蓄電デバイスとして期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
亜鉛電極を使用することに着目し、それがハイブリッドキャパシタの電極として適応するかどうかを実験した。図1は、この実施例に用いた電極作製に関する実施例フローの模型的概略図である。
【0014】
図1(a)は、活性炭電極の作製方法であり、活性炭素繊維布1に7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液2を含浸し、布状態の一片にニッケル箔3をスポット溶接により溶接して集電体とした。一方、図1(b)は、亜鉛電極の作製方法を示し、銅(Cu)箔4を基板として四辺形のものを電極とし、細長状態4aはCu集電体とする。次に、前記銅箔を負極とし、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液5中に浸漬し、対極(正極)6にNiOOH/Ni(OH)2を用いて、電流密度30mA cm-2で10分間電析して銅箔に亜鉛を析出させた。このようにして作製した二つ電極を7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液を含浸させたセパレータ7を介して相対峙して支持体8で以って保持して測定セルを形成し(図1(c))、各種試験を実施した。
【0015】
図2は、本発明による亜鉛電極の1実施例作製方法概略図であり、四辺形のカーボンペーパーを基板としてこの上辺の一端にリード端子となる長方形のニッケル箔で挟みスポット溶接したものを用意し、電析浴として、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液水溶液、対極にはNiOOH/Ni(OH)2電極電極を用いて、30mA cm-2で10分間、一定の電流で1.5×1.5cmの範囲に亜鉛を電析させた。電析後は、純水にて水洗した後、すぐに用いる。
【0016】
上記にて作製した亜鉛電極を、7.3M KOH水溶液、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液、7.3M KOH/1.3M ZnO水溶液のそれぞれ20mlに浸し、溶解するまでの電位を測定した。実験装置にはパーソナルコンピューターによって制御された充放電ユニット(北斗電工製,HJ10018M8型)を用いた。
【0017】
亜鉛の腐食(溶解)挙動に及ぼす電解液の濃度の影響について実験した結果では、電解液の酸化亜鉛の濃度を変化させた時の亜鉛の腐食挙動を図3の亜鉛電極腐食挙動に示す。
【0018】
亜鉛が存在している時は、約−1.37Vを示し、亜鉛の溶解とともに電位は上昇する。亜鉛の電解液への溶解は次のような過程で進行する。
【数1】
まず、亜鉛が式(1)および式(2)の固相反応により酸化され、中間生成物層を形成する。
【0019】
次に、生成した中間生成物が亜鉛錯イオンとなり電解液中へ溶解する(式(3),式(4))。
【数2】
【0020】
酸化亜鉛が入っていない電解液と入っている電解液とでは亜鉛が完全に溶解するまでの時間には大きな差が生じた。これは電解液中に酸化亜鉛があらかじめ存在することにより、濃度勾配が緩やかになるため亜鉛の溶解が遅くなるためだと考えられる。また、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液と7.3M KOH/1.3M ZnO水溶液とでは溶解するまでの時間に差はあまり生じていない。即ち、7.3M水酸化アリカリ中のZnOの濃度0.7〜1.3Mでは大差なく、大体同程度であることがわかる。
【0021】
次に、電解質を固定することについて、高分子ヒドロゲル電解質の利用を考えて、図2における場合で、電析浴を、7.3M KOH/PAAK、7.3M KOH/0.7M ZnO/PAAK、7.3M KOH/1.3M ZnO/PAAK、ヒドロゲル電解質で作製した。PAAKは、架橋型ポリアクリル酸カリウムの略称とする。これに、図2の手順で作製した亜鉛電極をそれぞれの高分子ヒドロゲル中に浸し、5分間真空引きを行って亜鉛と高分子ヒドロゲル電解質を密着させた後、溶解するまでの電位を測定した。
【0022】
高分子ヒドロゲル電解質中での亜鉛の腐食挙動について、酸化亜鉛の濃度が異なる高分子ヒドロゲル電解質中での亜鉛の溶解を図4高分子ヒドロゲル電解質中での亜鉛電極の腐食挙動に示す。電解液の時と同様に酸化亜鉛が入っているものといないものでは亜鉛が完全に溶解するまでの時間に大きな差が生じている。これも電解液のときと同様に亜鉛が電解質中に存在することにより濃度勾配が緩やかになるためであると考えられる。また、完全に溶解するまでの時間は全体的には電解液も高分子ヒドロゲル電解質も同様であることがわかった。
【0023】
(実施例2)
カーボンシート(東レ製 TGP−H−060)、アルミナで研磨し、3分間超音波処理したNi箔(Nilaco製)およびグラッシーカーボン(Nilaco製)を、塩酸で1分間エッチングしたCu箔(Nilaco製)およびCuメッシュ(Nilaco製)を基板とし、図5基板を異にした亜鉛電極の作成概略図に示すように、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液を電析浴に用いて30mA cm-2で10分間、亜鉛を電析させた。
【0024】
このように作製した亜鉛を、20mlの7.3M KOH/1.3M ZnO水溶液、または、7.3M KOH/0.7M ZnO/PAAKヒドロゲル電解質に浸し、溶解するまでの電位を測定した。図6は、上記作成の亜鉛電極の電解液に対する溶解度及び図7は、高分子ヒドロゲル電解質に対する溶解度を示すものである。
【0025】
どちらの電解質中においても、亜鉛が完全に溶解するまでの時間は基板の表面形態に依存していることがわかる。即ち、カーボンペーパーやCuメッシュのような表面積が大きく、表面が平坦でない基板上に亜鉛を析出させると溶解速度は大きくなる。しかし、Cu箔やNi箔のように表面が平坦なものではすべて溶解するまでの時間は長くなっている。これは、基板表面が平坦な方が析出の際に亜鉛がより均一に析出することができ、表面積が小さくなることから溶解速度が小さくなるためであると考えられる。
【0026】
また、グラッシーカーボンは表面は平坦であるため比較的溶解しにくい基板であると考えられるが、溶解時に亜鉛が全部溶解し終わる前に基板から剥がれ落ちてしまうため、電解液中では溶解時間は短くなっている。CuとNiでは、Niの方が水素過電圧が小さいにも関わらず、Niの方が溶解するまでの時間は長くなっている。これは表面をアルミナ研磨し、超音波処理を行ったために、Ni表面上に酸化皮膜が形成されたためであると思われる。
【0027】
エメリーペーパーまたはアルミナ研磨・超音波で処理を行ったNiの表面のX線光電子スペクトル(XPS)を図8に示す。アルミナ研磨・超音波で処理を行うことにより、エメリーペーパーで処理を行った時よりも基板自体のNiのピークは小さくなり、またNi酸化物のピークが出現している(図8(a)に示す)。そして、図8(b)では酸素のピークが大きく現れている。したがって、超音波によってNi表面上に酸化皮膜が形成されていることがわかる。
【0028】
また、因みに、エメリーペーパーで研磨したNiおよびアルミナで研磨して超音波処理を行ったNiを用いた時の亜鉛の溶解(腐食)挙動を図9に示す。エメリーペーパーで研磨した時の方が超音波で処理したものより亜鉛がすべて溶解するまでの時間は短くなっている。したがって、ニッケルの場合、超音波処理によって生成した酸化皮膜によって水素過電圧が銅よりも大きくなったため、亜鉛の溶解までの時間が銅に比べて長くなったのではないかと考えられる。
【0029】
(実施例3)
電気二重層キャパシタ用活性炭素電極の作製については、水系電解液を用いた電気二重層キャパシタの電極はすべて図10活性炭素電極作製方法概略図の手順に従って作製した。1cm×1cmの大きさに切った活性炭素繊維布(株式会社クラレ製)を不純物除去のために、120℃で12時間真空引きを行いながら乾燥させた。乾燥させた活性炭素繊維布を10M KOH水溶液に入れ、真空引きを行うことにより、活性炭素繊維布の細孔内に電解質を含浸させた。
【0030】
次にカーボンペーストを塗布したニッケル集電体(1cm×1cm:Nilaco製)に電解液を含浸させた活性炭素繊維布を載せ、60℃で1時間加熱することにより貼り付け、電気ニ重層キャパシタ用活性炭素電極を作製した。
【0031】
(実施例4)
一方、高分子ヒドロゲル電解質を用いた活性炭素電極は、すべて図11高分子ヒドロゲル電解質を含浸した活性炭素電極作製概略図の手順に従って作製した。水溶液系電解液と同様に1cm×1cmの大きさに切った活性炭素維布を不純物除去のために、120℃で12時間真空引きを行いながら乾燥させた。乾燥させた活性炭素繊維布を、10M KOH水溶液に入れ真空引きを行うことにより、活性炭素繊維布の細孔内に電解質を含浸させた。
【0032】
次に電解液を含浸した活性炭素繊維布を50mlの10M KOH中に入れ、架橋型ポリアクリル酸カリウム(PAAK:Aldrich Chemical Company Inc.製)5gを撹拝しながら加えゲル化させた。その後、5分間真空引きを行いゲル内の気泡を除去し、30℃で72時間熟成させた。そして、高分子ヒドロゲルを含浸した活性炭素繊維布を、カーボンペーストを塗布したニッケル集電体に載せ、60℃で1時間加熱することにより貼り付け、電気二重層キャパシタ用活性炭素電極を作製した。
【0033】
(実施例5)
電気二重層キャパシタセルの組み立てについて、高分子ヒドロゲル電解質またはKOH水溶液を含浸させたスルホン化ポリプロピレン製のセパレータ(乾燥厚さ120μm)と活性炭素電極を用いて図1に示すような測定セルを構成した装置としたセパレータに高分子ヒドロゲル電解質を含浸させる場合は、電極作製の際と同様にまずKOH水溶液を真空引きによって含浸させ、架橋型ポリアクリル酸カリウムを加えてゲル化を行い熟成させた。測定には、二極式および三極式のセルを用いた。三極式セルは図12測定セル実験装置に示すようにKOH水溶液をセパレータで介してHg/HgO参照電極を設置した。また、種々の電気化学測定は25℃で行った。
【0034】
ハイブリッドキャパシタ用の活性炭素布電極は、図13他実施例の活性炭素電極作製方法概略図の手順に従って作製した。1cm×1cmの大きさに切った活性炭素繊維布(株式会社クラレ製)を不純物除去のために、120℃で12時間真空引きを行いながら乾燥させた。乾燥させた活性炭素繊維布を7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液に入れ真空引きを行うことにより、活性炭素繊維布の細孔内に電解質を含浸させた。次に、カーボンペーストを塗布したニッケル集電体(1cm×1cm:Nilaco製)に電解液を含浸させた活性炭素繊維布を載せ、60℃で1時間加熱することにより貼り付け、ハイブリッドキャパシタ用活性炭素電極を作製した。
【0035】
ハイブリッドキャパシタ用の亜鉛電極は図14他実施例の亜鉛電極作製方法概略図の手順に従って作製した。塩酸で1分間エッチングした銅箔(1cm×1cm:Nilaco製)を基板として、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液を電析浴に用いて30mA cm-2で10分間亜鉛を電析させた。その後、亜鉛表面を超純水で濯ぎ、乾燥させたものを亜鉛電極として用いた。
【0036】
(特性試験)
活性炭素電極と亜鉛電極を用いたハイブリッドキャパシタについて、電気化学キャパシタの正極と負極の静電容量とセルの静電容量の間には式(6)のような関係がある。
【数3】
ここで、Ccell:セルの静電容量、Cn:負極の静電容量、Cp:正極の静電容量である。式(6)は正極と負極のどちらかの静電容量が大きくなる、すなわち放電曲線の傾きが緩やかになれば、セルの静電容量も大きくなることを示している。
【0037】
亜鉛と活性炭素繊維布を組み合わせた本発明によるハイブリッドキャパシタが安定に作動する電圧範囲を決定するため、充放電試験を行った。図15にハイブリッドキャパシタの充放電曲線を示す。図15(a)より、ハイブリッドキャパシタは、上限電圧が+1.4Vと、EDLC(−0.9V)に比べて約1.5倍であり、+0.4V〜+1.4Vの電圧範囲で安定に作動することがわかった。EDLCの作動電圧範囲は0V〜−0.9Vで電圧差が0.9Vであったのに対して、ハイブリッドキャパシタの電圧差は1.0Vとなっている。ハイブリッドキャパシタは電気二重層キャパシタより大きな電圧範囲で安定に作動することがわかった。これは亜鉛の水素過電圧が大きいために高い電圧においても水の電気分解がほとんど起こらず、キャパシタとして安定に作動しているためであると考えられる。また、式(6)を用いて図15の放電曲線から算出した静電容量は1.9Fであり、電気二重層キャパシタの約3倍になっている。
【0038】
また、図15(b)より、充放電における正極と負極の挙動を見ると負極の電位変化はほとんどないことから、ほぼ正極規制になっていることがわかる。従って、活性炭素電極の静電容量がハイブリッドキャパシタの静電容量を大きく支配していることがわかる。
【0039】
本発明によるハイブリッドキャパシタの高率放電試験の結果を図16に示す。
EDLCの場合は40mA cm-2以上の電流密度になるとIRドロップが生じはじめ、電流密度が大きくなるにつれてIRドロップも大きくなり、100mA cm-2の時、約+0.2Vになった。ハイブリッドキャパシタの場合も40mA cm-2以上の電流密度になると、IRドロップが生じはじめているが、電流密度が大きくなってもIRドロップの大きさはあまり変化しておらず、またIRドロップの大きさも電気二重層キャパシタと比較して小さくなっている。
【0040】
各電流密度での放電容量を図17ハイブリッドキャパシタの静電容量曲線図に示す。
本発明によるハイブリッドキャパシタ(●で表示)は100mA cm-2までの静電容量の減少は比較的小さく、静電容量が低下し始める100mA cm-2以上でも、電気ニ重層キャパシタ(○で表示)より大きな静電容量を有している。
【0041】
図18には高率放電率(HRD)を示す。ハイブリッドキャパシタ(●で表示)のHRDは100mA cm-2までは電気二重層キャパシタ(○で表示)とほぽ同じになっている。
【0042】
エネルギー密度と出力密度について、図16の放電曲線から式(7)および(8)を用いてハイブリッドキャパシタのエネルギー密度と出力密度を算出し、そのRagoneプロットを図19に示す。
【数4】
この式で、E:エネルギー密度(Whg-1)、C:キャパシタンス(Fg-1)、
V:電圧差(V)、P:出力密度(Wg-1)、Δt:放電時間(h)である。
【0043】
Ragoneプロットは一般的に、エネルギー密度がより大きくかつそのエネルギー密度が高出カ密度になってもあまり低下しないものほど優れているといえる。Ragoneプロットより、ハイブリッドキャパシタのエネルギー密度は、電気二重層キャパシタの約5倍と大きな値になっている。これはハイブリッドキャパシタの作動電圧範囲、上限電圧および静電容量が電気二重層キャパシタより大きいためである。また、高率放電特性が優れているため高出力密度になっても、エネルギー密度の低下は小さく、非常に優れた出力特性を有している。
【0044】
ハイブリッドキャパシタを上限電圧に保持した時に流れる電流の経時変化を測定した結果を図20に示す。
【0045】
電気二重層キャパシタに比べて全体的にハイブリッドキャパシタのリーク電流は大きくなっている(図20(a)は、リークの初期状態変化(秒単位)を示し、図20(b)は、時間単位の変化を示す)。また、溶出の少ない初期には、リーク電流に振動は見られないが、溶出が進行してくる1〜2時間後では、リーク電流に振動が生じている。これは、負極の亜鉛の電解液への溶出に起因するものと考えられる。
【0046】
KOH水溶液(実線表示)と高分子ヒドロゲル電解質(点線表示)を用いたもので夫々にキャパシタを形成し、それぞれについて充電後、開回路にしたときのセル電圧の経時変化を図21高分子ヒドロゲル電解質とKOH水溶液使用の場合のELDCの電極での自己放電曲線図に示す。
【0047】
これから、高分子ヒドロゲルを用いている方(実線)は自己放電が抑制されていることがわかる。図22において、測定中の正極と負極の電位変化を示し、図22(a)は高分子ヒドロゲル電解質使用の場合を示し、図22(b)は、KOH水溶液の場合を示し、KOH水溶液も高分子ヒドロゲル電解質も正極は初期に電圧が低下し、その後はあまり変動していない。
【0048】
一方、負極とした亜鉛電極は、比較的一定の割合で電圧が上昇している。このことから、負電荷を持つ水酸化物イオンなどは電極表面から離れにくく、一方カリウムイオンなどの正電荷をもつものは離れやすいことがわかる。そして、KOH水溶液に比べて高分子ヒドロゲル電解質の方がイオンが離れにくくなっていると考えられる。
【0049】
次に、本発明によるハイブリッドキャパシタのうち、亜鉛電極KOH系で比較すると、充電後の開回路にしたときのセル電圧の経時変化を図23充電後開回路での電圧経時変化図(図23(a)はセル電圧の変化であり、図23(b)は個々の電極の電位変化)を示すと、普通の電気二重層キャパシタに比べて時間は大幅に長くなっている。
【0050】
また、普通の電気二重層キャパシタの場合(図21および図22)は、ほぼ一定の割合で電圧が低下していたのに対して、ハイブリッドキャパシタの場合は、初期に少し低下するもののしばらく一定であり、その後急激に低下している。亜鉛電極における急激な電圧の低下は亜鉛の溶解を表しているものと考えられる。したがって、リーク電流と同様に電圧保持特性にも亜鉛の溶解が大きく影響していると考えられる。
【0051】
ハイブリッドキャパシタのサイクル安定性を評価するために充放電サイクルを繰り返した。その結果を図24に示す。
【0052】
100サイクル目までは比較的静電容量は一定であるが、100サイクルを超えると少しずつ低下している。これは時間の経過とともに亜鉛が電解液中へ溶解し、活物質の量が少なくなるためであると考えられる。したがって、亜鉛の溶出を抑制することができればサイクル特性が改善することにつながる。
【0053】
ハイブリッドキャパシタの界面の抵抗を交流インピーダンス法によって評価した。そのときのNyquistプロットを図25に示す。
【0054】
KOH水溶液を用いた普通の電気二重層キャパシタよりも抵抗値は大きくなっている。これは、ハイブリッドキャパシタが片方の電極にファラディックな電荷蓄積過程を含むものを用いているためであると考えられる。
【0055】
高率放電曲線におけるIRドロップから算出した抵抗値を図26に示す。この結果では抵抗値は、20〜120mA cm-2で平均約1.3Ωとなっており、KOH水溶液を用いた普通の電気二重層キャパシタの抵抗値とほぼ一致した。
【0056】
図15よりハイブリッドキャパシタは正極規制になっていることがわかった。そのため、活性炭素繊維布の作動電位範囲が広がればハイブリッドキャパシタとしての作動電圧範囲もより広がることが予想される。そこで、活性炭素繊維布の作動電位範囲を広げてハイブリッドキャパシタに使用することを検討した。
【0057】
図27にサイクリックボルタンメトリーを行った後の活性炭素繊維布のサイクリックボルタモグラムを示す。400サイクル後(点線表示)には+0.2V付近の活性炭素繊維布の酸化ピークの立ち上がりが、正電位側にシフトしている。これは、サイクルを重ねることにより活性炭素繊維布の酸化が終わりに近づいているためである。そのため、活性炭素繊維布の作動電圧範囲は少し拡大されたと思われる。
【0058】
次に、この400サイクル後の活性炭素繊維布を用いたハイブリッドキャパシタの充放電試験の結果を図28(図28(a)はセル電圧で、点線は放電電圧曲線、実線は充電電圧曲線を示す。また、図28(b)は個々の電極電位を示している。)に示す。電位範囲は+0.3V〜+1.6Vとなり、以前と比較するとその電圧差は0.3V広がったことになる。しかし、充電過程において+1.5V付近から時間がかかっており、左右対称である典型的な普通のキャパシタの充放電曲線とは少し異なってしまっている。
【0059】
また、式(9)より求めたクーロン効率は約80%であり、不可逆な反応によるものであることが分かり、活性炭素繊維布の酸化が完全には終了していないことが一因として考えられる。
【数5】
この式で、q:クーロン効率(%)、Qd:放電電気量(mA s cm-2)、
Qc:充電電気量(mA s cm-2)である。
【0060】
次に、水系電解液について、上記実施例に用いたKOHに変えて、NaOHを使用して実施した。
【0061】
(実施例6)
7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液を活性炭素繊維布に含浸させて活性炭素電極を作製した。次に7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液を電析浴に用いて電析を行い(30mA cm-2の電流を10分間)、銅基板上に亜鉛を析出させて亜鉛電極を作製した。このように作製したハイブリッドキャパシタ(HC)を用いて、各種の特性試験を実施した。比較電極は上記実施例に用いたKOH水溶液で処理したもので、他の条件は同じにして作製したものである。
【0062】
(イ)亜鉛電極のインピーダンスの測定
インピーダンスの測定は、二極式セルで0.01〜20kHzの周波数領域で±5mVの印加電圧を加えて、そのときの応答インピーダンスを測定した。その結果を図29に示すように、NaOH水溶液(●表示)を用いた方が、KOH(○表示)よりも抵抗は小さくなっていることが分かる。
【0063】
(ロ)リーク電流
HCキャパシタに電圧を+1.4Vに保持したときに流れる電流を計測すると、図30(a)に示すKOHの場合と、図30(b)に示すNaOHの場合とは、ほとんどリーク電流は変わらないが、NaOHの場合の方が振動が少ないことが分かる。
【0064】
(ハ)エネルギー密度
Ragoneプロット図31に示すように、NaOH(●表示)とKOH(○表示)とでは、エネルギー密度に関してはほとんど変わらず、NaOHの方が若干低下が緩やかである。
【0065】
(ニ)電圧保持特性
+1.4Vに充電し、開回路にしたときの電圧経時変化を測定した結果は、図32に示す通り、NaOH(実線表示)はKOH(点線表示)よりも約2倍以上の電圧特性を示した。
【0066】
(ホ)充放電試験
1mA cm-2で充放電特性試験を行った。作動電圧範囲は、+0.4V〜+1.4Vで実施した。図33に示すように、NaOH(実線表示)の場合は、静電容量は1.3Fとなり、KOH(点線表示)の場合よりも減少したが、同じような特性曲線になり、特に大きな変化ではなかった。
【0067】
(ヘ)高率放電試験
1mA cm-2充電後、放電電流密度を変えて、静電容量を図34(a)に、放電効率図34(b)に、KOHとの比較として示した。全体的には静電容量はKOH(●表示)よりも小さいが、NaOH(○表示)は大電流でも静電容量の低下がないことの特性が大きく、高率放電能はKOHの場合とほとんど同じである。
【0068】
(ト)サイクル特性試験
5mA cm―2で充放電し、サイクル特性を評価したところ、図35に示すように、NaOH(○表示)は、KOH(●表示)に比べて約3倍のサイクル特性があった。
【0069】
このような特性は、NaOH使用による電極作製において、亜鉛電極の亜鉛の溶解の抑制による効果と考えられる。しかし、KOH使用の場合でもハイブリッドキャパシタとして、十分に使用できるものである。
【0070】
次に亜鉛電極を電析方法で作製する場合の電流密度について、着目して試験を実施した。その結果を次に述べる。
【0071】
試験用ハイブリッドキャパシタは、実施例6と同じように電極作製する方法で作製し、即ち、7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液を用いて、電流密度30mA cm-2,10分電析(試験電極A)と、15mA cm―2,20分電析(試験電極B)の場合で比較した。亜鉛の析出状態にも着目した。
【0072】
(イ)インピーダンス特性試験
上記と同じように、0.01〜20kHzで±5mVの印加電圧で実施した結果を図36で示す。試験電極A(○表示)は抵抗が小さく、試験電極B(●表示)の方が抵抗の大きいことを表している。
【0073】
(ロ)電圧保持特性試験
試験電極をハイブリッドキャパシタにして、1mA cm-2で充電し、+1.4Vまで充電した後、休止し、電圧の経時変化を測定した。その結果は図37に示す。電圧保持特性試験では、試験電極A(実線表示)と試験電極B(点線表示)にほとんど差はなく、電圧保持特性は良好である。
【0074】
(ハ)高率放電試験
試験電極について、ハイブリッドキャパシタとして充電電流1mA cm-2で充電した後、各放電電流で行った結果を図38に示す。1mA cm-2での静電容量は、試験電極A(●表示)使用のものと試験電極B(○表示)使用のものとで、ほとんど同じであるが、大電流では試験電極Bは、静電容量が低下している。高率放電性能としては、図39に示すように、試験電極B(○表示)は高率放電性能が低下するが、試験電極A(●表示)ではあまり低下していない。
【0075】
(ニ)サイクル特性試験
5mA cm-2で繰り返し充放電した結果を図40で示す。試験電極A(●表示)は比較的に静電容量が安定している。試験電極B(○表示)は緩やかに低下していることを示している。
【0076】
上記試験について、亜鉛電極の挙動と電極の表面状態をみると、試験電極Aは不規則でデンドライトが形成していることが見て取れ、全体的に粗い状態であり、表面積も大きいことが予想される。これに対して、試験電極Bは表面が均一で緻密な結晶構造を形成しており、表面積も小さいことが予想される。このことは、前者の方が後者よりもインピーダンス(界面抵抗)の小さいこと(図36)、ならびに高率放電特性に優れていること(図38.39)からも支持される。したがって、比較的小さい電流密度で時間をかけて作製した方が、キャパシタの特性がよいことがわかる。
【0077】
(実施例7)
次に、NaOH水溶液を含むヒドロゲルの特性試験を行う。
7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液100mlに架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)10gを加えて撹拌し、30℃で3日間熟成させてPAANaゲルを作製した。次にあらかじめ塩酸で処理した銅を基板に、対極に水酸化ニッケルを用いて、7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液中で電析を行い(電流密度15mA cm-2,10分間)亜鉛を析出させた。そして、析出させた亜鉛をPAANaゲル中に浸して(表面、底からそれぞれ5mmずつ離れたところ)、亜鉛が溶解するまでの時間を測定した。
【0078】
結果は図41に示すように、PAANaゲル中(点線表示)では40時間以上溶解が抑制されるが、水溶液中(実線表示)では、25時間程度であることがわかる。この試験では、NaOH水溶液を吸収させたヒドロゲル電解質とすることで、亜鉛の溶解をさらに抑制できることを示している。
【0079】
(実施例8)
セルを用いて、7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液およびPAANaゲルの伝導率を測定した。測定は、10Hz〜10kHzの周波数領域で±5mVの印加電圧を加えて行い、応答インピーダンスを測定することにより伝導率を算出した。
0.1M KClの比電気伝導率(0.012856 S/cm)を用いて式(10)よりセル定数を算出した。
【0080】
κ=R-1(l/A) (10)
ただし、l/A=1.23
【0081】
得られたセル定数より式(10)を用いて7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液とPAANaゲルの伝導率を求めた。
(イ)7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液:0.27S/cm
(ロ)PAANaゲル:0.19S/cm
7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液は、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液に比べて、相当に伝導率は小さいことが分かった。また、同様にPAANaゲルも、PAAKゲルに比べて伝導率は低いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
このように、ハイブリッドキャパシタは片方の電極が電荷移動過程を伴う大きな擬似容量を持つことができ、EDLCより大きな静電容量、エネルギー密度、出力密度を有することができ、コンピュータのバックアップ電源やその他の産業にも大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明による電極作製方法概略図である。
【図2】本発明による亜鉛電極の作製方法概略図である。
【図3】亜鉛電極の腐食挙動である。
【図4】高分子ヒドロゲル電解質中の亜鉛電極の腐食挙動である。
【図5】基板を異にした亜鉛電極の作製概略図である。
【図6】基板を異にした亜鉛電極の電解液に対する溶解度曲線図である。
【図7】基板を異にした亜鉛電極の高分子ヒドロゲル電解質に対する溶解度曲線図である。
【図8】ニッケル基板表面のXPS解析図である。
【図9】ニッケル基板処理に対する亜鉛電極の溶解挙動である。
【図10】活性炭素電極作製方法概略図である。
【図11】高分子ヒドロゲル電解質を含浸した活性炭素電極作製概略図である。
【図12】測定セル実験装置である。
【図13】他実施例の活性炭素電極作製方法概略図である。
【図14】他実施例の亜鉛電極作製方法概略図である。
【図15】ハイブリッドキャパシタ充放電特性曲線図である。
【図16】ハイブリッドキャパシタ高率放電特性曲線図である。
【図17】ハイブリッドキャパシタの静電容量曲線図である。
【図18】ハイブリッドキャパシタ高率放電率(HRD)曲線図である。
【図19】EDLCとHCとの比較Ragoneプロット図である。
【図20】ハイブリッドキャパシタのリーク電流経時変化図である。
【図21】高分子ヒドロゲル電解質と水溶液使用の場合のELDCの自己放電曲線図である。
【図22】高分子ヒドロゲル電解質と水溶液使用の場合のELDC電極の自己放電曲線図である。
【図23】充放電開回路でのセル電圧経時変化図である。
【図24】ハイブリッドキャパシタの充放電サイクル特性図である。
【図25】Nyquist plots for the HC cellである。
【図26】高率放電曲線におけるハイブリッドキャパシタのIRドロップ算出抵抗値曲線図である。
【図27】ELDCの活性炭素電極における400サイクル前/後のサイクリックボルタモグラム図である。
【図28】ハイブリッドキャパシタにおける活性炭素電極の400サイクル後の充放電曲線図である。
【図29】インピーダンス測定結果を示す。
【図30】リーク電流測定結果を示すグラフである。
【図31】エネルギー密度のRagoneプロット図である。
【図32】電圧保持特性図である。
【図33】充放電特性曲線図である。
【図34】高率放電試験結果を示すプロット図である。
【図35】充放電サイクル特性曲線図である。
【図36】インピーダンス測定結果を示す。
【図37】電圧保持特性曲線図である。
【図38】高率放電試験結果を示す。
【図39】高率放電能試験結果を示す。
【図40】サイクル特性試験結果を示す。
【図41】亜鉛電極の溶解挙動を示す。
【符号の説明】
【0084】
1 活性炭素繊維布
2 7.3M KOH/0.7MZnO水溶液
3 ニッケル(Ni)集電体
4 銅(Cu)基板
4a 銅(Cu)集電体
5 7.3M KOH/0.7MZnO水溶液
6 NiOOH/Ni(OH)2電極
7 セパレータ
8 支持体
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系電解質使用の電気化学キャパシタ及びその亜鉛電極の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気二重層キャパシタ(図及び明細書中ではEDLCと略称する場合あり)は分極性電極とイオン導電体との界面に形成される電気二重層に電荷を蓄える電気化学的エネルギーデバイスであり、電極/電解液界面での電子の移動を伴わないことが特徴である。また、広い温度範囲で優れた充放電サイクル特性をもつことや、環境に優しい材料を使用していることから、これまでに半導体メモリバックアップ用電源やアクチュエータバックアップ用電源として幅広く用いられてきた。
【0003】
EDLCには水系電解液を用いたものと有機系電解液を用いたものの二種類がある。水系電解液としては硫酸水溶液、有機系電解液としてはプロピレンカーボネートのような溶媒に、テトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボレートのような電解質を溶解したものが主に用いられる。水系電解液は基本的に誘電率が高く、粘度が低いためにイオン伝導度は有機系電解液に比べて高い。そのため急速充放電に対しては有利な系であるといえる。
【0004】
そこで、近年、新しいキャパシタの系として炭素型の電極である活性炭素繊維布と速いファラディックな電子移動過程を伴う電極を組み合わせたハイブリッドキャパシタが提案され、活発に研究が行われている。ハイブリッドキャパシタは、片方の電極が電荷移動過程を伴う大きな擬似容量を持つため、EDLCより大きな静電容量、エネルギー密度、出力密度を有することができる。
【0005】
例えば、集電体と、活性炭を有する分極性電極と、セパレータと、有機系電解液とを具備する電気二重層キャパシタにおいて、前記活性炭を、硫酸水溶液中で標準電極Ag/AgClに対し+1.0V以上+1.4V以下の電圧で酸化した後、−0.3V以上−0.7V以下の電圧で還元した電気二重層キャパシタ用分極性電極(特許文献1を参照)や、電気二重層コンデンサ用炭素材料が、炭素材料に賦活処理を施して製造される黒鉛類似の微結晶炭素を有する電気二重層コンデンサ用炭素材料であって、その微結晶炭素の層間距離が0.365nm〜0.385nmであることを特徴とする方法(特許文献2)、水に可溶でかつ酸性物質又は塩基性物質に対してゲル状を呈する高分子化合物とセパレータと水系電解液とからなるセパレータ複合型のゲル状固体電解質を使用することを特徴とする電気二重層キャパシタ(特許文献3)等が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−124078号公報
【特許文献2】特開2005−294850号公報
【特許文献3】特開2005−39196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電気化学キャパシタ、即ちハイブリッドキャパシタ(図及び明細書中ではHCと略称する場合あり)において片方の電極が電荷移動過程を伴う大きな擬似容量を持つため、EDLCより大きな静電容量、エネルギー密度、出力密度を有することができるので、その開発として、ニ次電池の電極材料に用いられる亜鉛が一般的に水系電解質への適合性があり、また標準電極電位が標準水素電極に対して−0.76Vと低く、水素過電圧が大きく、高エネルギー密度を有している。そして、資源的に豊富であるため安価であり、軽量で、さらに環境適合性にも優れている材料であることを利用した点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の解決手段は、電気化学キャパシタとして活性炭素布電極を正極とし、亜鉛電極を負極とし、電解質として酸化亜鉛を含む水酸化アルカリ水溶液とからなることにある。
【0009】
前記水酸化アルカリ水溶液が高分子ヒドロゲル電解質中に含有固定されていることである。
【0010】
前記亜鉛電極は、表面を均一な表面処理した銅箔に亜鉛メッキを施した電極を用いたことにある。
【0011】
本発明の第2の解決手段は、放電容量を正極規制とした電気化学キャパシタとすることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の活性炭素電極と亜鉛電極を用いたハイブリッドキャパシタは、普通の電気二重層キャパシタの約3倍の静電容量をもち、また、+0.4V〜+1.4Vの広い電圧範囲で安定に作動することに特徴がある。このように、大きなエネルギー密度、出力密度を持つ新たな蓄電デバイスとして期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
亜鉛電極を使用することに着目し、それがハイブリッドキャパシタの電極として適応するかどうかを実験した。図1は、この実施例に用いた電極作製に関する実施例フローの模型的概略図である。
【0014】
図1(a)は、活性炭電極の作製方法であり、活性炭素繊維布1に7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液2を含浸し、布状態の一片にニッケル箔3をスポット溶接により溶接して集電体とした。一方、図1(b)は、亜鉛電極の作製方法を示し、銅(Cu)箔4を基板として四辺形のものを電極とし、細長状態4aはCu集電体とする。次に、前記銅箔を負極とし、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液5中に浸漬し、対極(正極)6にNiOOH/Ni(OH)2を用いて、電流密度30mA cm-2で10分間電析して銅箔に亜鉛を析出させた。このようにして作製した二つ電極を7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液を含浸させたセパレータ7を介して相対峙して支持体8で以って保持して測定セルを形成し(図1(c))、各種試験を実施した。
【0015】
図2は、本発明による亜鉛電極の1実施例作製方法概略図であり、四辺形のカーボンペーパーを基板としてこの上辺の一端にリード端子となる長方形のニッケル箔で挟みスポット溶接したものを用意し、電析浴として、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液水溶液、対極にはNiOOH/Ni(OH)2電極電極を用いて、30mA cm-2で10分間、一定の電流で1.5×1.5cmの範囲に亜鉛を電析させた。電析後は、純水にて水洗した後、すぐに用いる。
【0016】
上記にて作製した亜鉛電極を、7.3M KOH水溶液、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液、7.3M KOH/1.3M ZnO水溶液のそれぞれ20mlに浸し、溶解するまでの電位を測定した。実験装置にはパーソナルコンピューターによって制御された充放電ユニット(北斗電工製,HJ10018M8型)を用いた。
【0017】
亜鉛の腐食(溶解)挙動に及ぼす電解液の濃度の影響について実験した結果では、電解液の酸化亜鉛の濃度を変化させた時の亜鉛の腐食挙動を図3の亜鉛電極腐食挙動に示す。
【0018】
亜鉛が存在している時は、約−1.37Vを示し、亜鉛の溶解とともに電位は上昇する。亜鉛の電解液への溶解は次のような過程で進行する。
【数1】
まず、亜鉛が式(1)および式(2)の固相反応により酸化され、中間生成物層を形成する。
【0019】
次に、生成した中間生成物が亜鉛錯イオンとなり電解液中へ溶解する(式(3),式(4))。
【数2】
【0020】
酸化亜鉛が入っていない電解液と入っている電解液とでは亜鉛が完全に溶解するまでの時間には大きな差が生じた。これは電解液中に酸化亜鉛があらかじめ存在することにより、濃度勾配が緩やかになるため亜鉛の溶解が遅くなるためだと考えられる。また、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液と7.3M KOH/1.3M ZnO水溶液とでは溶解するまでの時間に差はあまり生じていない。即ち、7.3M水酸化アリカリ中のZnOの濃度0.7〜1.3Mでは大差なく、大体同程度であることがわかる。
【0021】
次に、電解質を固定することについて、高分子ヒドロゲル電解質の利用を考えて、図2における場合で、電析浴を、7.3M KOH/PAAK、7.3M KOH/0.7M ZnO/PAAK、7.3M KOH/1.3M ZnO/PAAK、ヒドロゲル電解質で作製した。PAAKは、架橋型ポリアクリル酸カリウムの略称とする。これに、図2の手順で作製した亜鉛電極をそれぞれの高分子ヒドロゲル中に浸し、5分間真空引きを行って亜鉛と高分子ヒドロゲル電解質を密着させた後、溶解するまでの電位を測定した。
【0022】
高分子ヒドロゲル電解質中での亜鉛の腐食挙動について、酸化亜鉛の濃度が異なる高分子ヒドロゲル電解質中での亜鉛の溶解を図4高分子ヒドロゲル電解質中での亜鉛電極の腐食挙動に示す。電解液の時と同様に酸化亜鉛が入っているものといないものでは亜鉛が完全に溶解するまでの時間に大きな差が生じている。これも電解液のときと同様に亜鉛が電解質中に存在することにより濃度勾配が緩やかになるためであると考えられる。また、完全に溶解するまでの時間は全体的には電解液も高分子ヒドロゲル電解質も同様であることがわかった。
【0023】
(実施例2)
カーボンシート(東レ製 TGP−H−060)、アルミナで研磨し、3分間超音波処理したNi箔(Nilaco製)およびグラッシーカーボン(Nilaco製)を、塩酸で1分間エッチングしたCu箔(Nilaco製)およびCuメッシュ(Nilaco製)を基板とし、図5基板を異にした亜鉛電極の作成概略図に示すように、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液を電析浴に用いて30mA cm-2で10分間、亜鉛を電析させた。
【0024】
このように作製した亜鉛を、20mlの7.3M KOH/1.3M ZnO水溶液、または、7.3M KOH/0.7M ZnO/PAAKヒドロゲル電解質に浸し、溶解するまでの電位を測定した。図6は、上記作成の亜鉛電極の電解液に対する溶解度及び図7は、高分子ヒドロゲル電解質に対する溶解度を示すものである。
【0025】
どちらの電解質中においても、亜鉛が完全に溶解するまでの時間は基板の表面形態に依存していることがわかる。即ち、カーボンペーパーやCuメッシュのような表面積が大きく、表面が平坦でない基板上に亜鉛を析出させると溶解速度は大きくなる。しかし、Cu箔やNi箔のように表面が平坦なものではすべて溶解するまでの時間は長くなっている。これは、基板表面が平坦な方が析出の際に亜鉛がより均一に析出することができ、表面積が小さくなることから溶解速度が小さくなるためであると考えられる。
【0026】
また、グラッシーカーボンは表面は平坦であるため比較的溶解しにくい基板であると考えられるが、溶解時に亜鉛が全部溶解し終わる前に基板から剥がれ落ちてしまうため、電解液中では溶解時間は短くなっている。CuとNiでは、Niの方が水素過電圧が小さいにも関わらず、Niの方が溶解するまでの時間は長くなっている。これは表面をアルミナ研磨し、超音波処理を行ったために、Ni表面上に酸化皮膜が形成されたためであると思われる。
【0027】
エメリーペーパーまたはアルミナ研磨・超音波で処理を行ったNiの表面のX線光電子スペクトル(XPS)を図8に示す。アルミナ研磨・超音波で処理を行うことにより、エメリーペーパーで処理を行った時よりも基板自体のNiのピークは小さくなり、またNi酸化物のピークが出現している(図8(a)に示す)。そして、図8(b)では酸素のピークが大きく現れている。したがって、超音波によってNi表面上に酸化皮膜が形成されていることがわかる。
【0028】
また、因みに、エメリーペーパーで研磨したNiおよびアルミナで研磨して超音波処理を行ったNiを用いた時の亜鉛の溶解(腐食)挙動を図9に示す。エメリーペーパーで研磨した時の方が超音波で処理したものより亜鉛がすべて溶解するまでの時間は短くなっている。したがって、ニッケルの場合、超音波処理によって生成した酸化皮膜によって水素過電圧が銅よりも大きくなったため、亜鉛の溶解までの時間が銅に比べて長くなったのではないかと考えられる。
【0029】
(実施例3)
電気二重層キャパシタ用活性炭素電極の作製については、水系電解液を用いた電気二重層キャパシタの電極はすべて図10活性炭素電極作製方法概略図の手順に従って作製した。1cm×1cmの大きさに切った活性炭素繊維布(株式会社クラレ製)を不純物除去のために、120℃で12時間真空引きを行いながら乾燥させた。乾燥させた活性炭素繊維布を10M KOH水溶液に入れ、真空引きを行うことにより、活性炭素繊維布の細孔内に電解質を含浸させた。
【0030】
次にカーボンペーストを塗布したニッケル集電体(1cm×1cm:Nilaco製)に電解液を含浸させた活性炭素繊維布を載せ、60℃で1時間加熱することにより貼り付け、電気ニ重層キャパシタ用活性炭素電極を作製した。
【0031】
(実施例4)
一方、高分子ヒドロゲル電解質を用いた活性炭素電極は、すべて図11高分子ヒドロゲル電解質を含浸した活性炭素電極作製概略図の手順に従って作製した。水溶液系電解液と同様に1cm×1cmの大きさに切った活性炭素維布を不純物除去のために、120℃で12時間真空引きを行いながら乾燥させた。乾燥させた活性炭素繊維布を、10M KOH水溶液に入れ真空引きを行うことにより、活性炭素繊維布の細孔内に電解質を含浸させた。
【0032】
次に電解液を含浸した活性炭素繊維布を50mlの10M KOH中に入れ、架橋型ポリアクリル酸カリウム(PAAK:Aldrich Chemical Company Inc.製)5gを撹拝しながら加えゲル化させた。その後、5分間真空引きを行いゲル内の気泡を除去し、30℃で72時間熟成させた。そして、高分子ヒドロゲルを含浸した活性炭素繊維布を、カーボンペーストを塗布したニッケル集電体に載せ、60℃で1時間加熱することにより貼り付け、電気二重層キャパシタ用活性炭素電極を作製した。
【0033】
(実施例5)
電気二重層キャパシタセルの組み立てについて、高分子ヒドロゲル電解質またはKOH水溶液を含浸させたスルホン化ポリプロピレン製のセパレータ(乾燥厚さ120μm)と活性炭素電極を用いて図1に示すような測定セルを構成した装置としたセパレータに高分子ヒドロゲル電解質を含浸させる場合は、電極作製の際と同様にまずKOH水溶液を真空引きによって含浸させ、架橋型ポリアクリル酸カリウムを加えてゲル化を行い熟成させた。測定には、二極式および三極式のセルを用いた。三極式セルは図12測定セル実験装置に示すようにKOH水溶液をセパレータで介してHg/HgO参照電極を設置した。また、種々の電気化学測定は25℃で行った。
【0034】
ハイブリッドキャパシタ用の活性炭素布電極は、図13他実施例の活性炭素電極作製方法概略図の手順に従って作製した。1cm×1cmの大きさに切った活性炭素繊維布(株式会社クラレ製)を不純物除去のために、120℃で12時間真空引きを行いながら乾燥させた。乾燥させた活性炭素繊維布を7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液に入れ真空引きを行うことにより、活性炭素繊維布の細孔内に電解質を含浸させた。次に、カーボンペーストを塗布したニッケル集電体(1cm×1cm:Nilaco製)に電解液を含浸させた活性炭素繊維布を載せ、60℃で1時間加熱することにより貼り付け、ハイブリッドキャパシタ用活性炭素電極を作製した。
【0035】
ハイブリッドキャパシタ用の亜鉛電極は図14他実施例の亜鉛電極作製方法概略図の手順に従って作製した。塩酸で1分間エッチングした銅箔(1cm×1cm:Nilaco製)を基板として、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液を電析浴に用いて30mA cm-2で10分間亜鉛を電析させた。その後、亜鉛表面を超純水で濯ぎ、乾燥させたものを亜鉛電極として用いた。
【0036】
(特性試験)
活性炭素電極と亜鉛電極を用いたハイブリッドキャパシタについて、電気化学キャパシタの正極と負極の静電容量とセルの静電容量の間には式(6)のような関係がある。
【数3】
ここで、Ccell:セルの静電容量、Cn:負極の静電容量、Cp:正極の静電容量である。式(6)は正極と負極のどちらかの静電容量が大きくなる、すなわち放電曲線の傾きが緩やかになれば、セルの静電容量も大きくなることを示している。
【0037】
亜鉛と活性炭素繊維布を組み合わせた本発明によるハイブリッドキャパシタが安定に作動する電圧範囲を決定するため、充放電試験を行った。図15にハイブリッドキャパシタの充放電曲線を示す。図15(a)より、ハイブリッドキャパシタは、上限電圧が+1.4Vと、EDLC(−0.9V)に比べて約1.5倍であり、+0.4V〜+1.4Vの電圧範囲で安定に作動することがわかった。EDLCの作動電圧範囲は0V〜−0.9Vで電圧差が0.9Vであったのに対して、ハイブリッドキャパシタの電圧差は1.0Vとなっている。ハイブリッドキャパシタは電気二重層キャパシタより大きな電圧範囲で安定に作動することがわかった。これは亜鉛の水素過電圧が大きいために高い電圧においても水の電気分解がほとんど起こらず、キャパシタとして安定に作動しているためであると考えられる。また、式(6)を用いて図15の放電曲線から算出した静電容量は1.9Fであり、電気二重層キャパシタの約3倍になっている。
【0038】
また、図15(b)より、充放電における正極と負極の挙動を見ると負極の電位変化はほとんどないことから、ほぼ正極規制になっていることがわかる。従って、活性炭素電極の静電容量がハイブリッドキャパシタの静電容量を大きく支配していることがわかる。
【0039】
本発明によるハイブリッドキャパシタの高率放電試験の結果を図16に示す。
EDLCの場合は40mA cm-2以上の電流密度になるとIRドロップが生じはじめ、電流密度が大きくなるにつれてIRドロップも大きくなり、100mA cm-2の時、約+0.2Vになった。ハイブリッドキャパシタの場合も40mA cm-2以上の電流密度になると、IRドロップが生じはじめているが、電流密度が大きくなってもIRドロップの大きさはあまり変化しておらず、またIRドロップの大きさも電気二重層キャパシタと比較して小さくなっている。
【0040】
各電流密度での放電容量を図17ハイブリッドキャパシタの静電容量曲線図に示す。
本発明によるハイブリッドキャパシタ(●で表示)は100mA cm-2までの静電容量の減少は比較的小さく、静電容量が低下し始める100mA cm-2以上でも、電気ニ重層キャパシタ(○で表示)より大きな静電容量を有している。
【0041】
図18には高率放電率(HRD)を示す。ハイブリッドキャパシタ(●で表示)のHRDは100mA cm-2までは電気二重層キャパシタ(○で表示)とほぽ同じになっている。
【0042】
エネルギー密度と出力密度について、図16の放電曲線から式(7)および(8)を用いてハイブリッドキャパシタのエネルギー密度と出力密度を算出し、そのRagoneプロットを図19に示す。
【数4】
この式で、E:エネルギー密度(Whg-1)、C:キャパシタンス(Fg-1)、
V:電圧差(V)、P:出力密度(Wg-1)、Δt:放電時間(h)である。
【0043】
Ragoneプロットは一般的に、エネルギー密度がより大きくかつそのエネルギー密度が高出カ密度になってもあまり低下しないものほど優れているといえる。Ragoneプロットより、ハイブリッドキャパシタのエネルギー密度は、電気二重層キャパシタの約5倍と大きな値になっている。これはハイブリッドキャパシタの作動電圧範囲、上限電圧および静電容量が電気二重層キャパシタより大きいためである。また、高率放電特性が優れているため高出力密度になっても、エネルギー密度の低下は小さく、非常に優れた出力特性を有している。
【0044】
ハイブリッドキャパシタを上限電圧に保持した時に流れる電流の経時変化を測定した結果を図20に示す。
【0045】
電気二重層キャパシタに比べて全体的にハイブリッドキャパシタのリーク電流は大きくなっている(図20(a)は、リークの初期状態変化(秒単位)を示し、図20(b)は、時間単位の変化を示す)。また、溶出の少ない初期には、リーク電流に振動は見られないが、溶出が進行してくる1〜2時間後では、リーク電流に振動が生じている。これは、負極の亜鉛の電解液への溶出に起因するものと考えられる。
【0046】
KOH水溶液(実線表示)と高分子ヒドロゲル電解質(点線表示)を用いたもので夫々にキャパシタを形成し、それぞれについて充電後、開回路にしたときのセル電圧の経時変化を図21高分子ヒドロゲル電解質とKOH水溶液使用の場合のELDCの電極での自己放電曲線図に示す。
【0047】
これから、高分子ヒドロゲルを用いている方(実線)は自己放電が抑制されていることがわかる。図22において、測定中の正極と負極の電位変化を示し、図22(a)は高分子ヒドロゲル電解質使用の場合を示し、図22(b)は、KOH水溶液の場合を示し、KOH水溶液も高分子ヒドロゲル電解質も正極は初期に電圧が低下し、その後はあまり変動していない。
【0048】
一方、負極とした亜鉛電極は、比較的一定の割合で電圧が上昇している。このことから、負電荷を持つ水酸化物イオンなどは電極表面から離れにくく、一方カリウムイオンなどの正電荷をもつものは離れやすいことがわかる。そして、KOH水溶液に比べて高分子ヒドロゲル電解質の方がイオンが離れにくくなっていると考えられる。
【0049】
次に、本発明によるハイブリッドキャパシタのうち、亜鉛電極KOH系で比較すると、充電後の開回路にしたときのセル電圧の経時変化を図23充電後開回路での電圧経時変化図(図23(a)はセル電圧の変化であり、図23(b)は個々の電極の電位変化)を示すと、普通の電気二重層キャパシタに比べて時間は大幅に長くなっている。
【0050】
また、普通の電気二重層キャパシタの場合(図21および図22)は、ほぼ一定の割合で電圧が低下していたのに対して、ハイブリッドキャパシタの場合は、初期に少し低下するもののしばらく一定であり、その後急激に低下している。亜鉛電極における急激な電圧の低下は亜鉛の溶解を表しているものと考えられる。したがって、リーク電流と同様に電圧保持特性にも亜鉛の溶解が大きく影響していると考えられる。
【0051】
ハイブリッドキャパシタのサイクル安定性を評価するために充放電サイクルを繰り返した。その結果を図24に示す。
【0052】
100サイクル目までは比較的静電容量は一定であるが、100サイクルを超えると少しずつ低下している。これは時間の経過とともに亜鉛が電解液中へ溶解し、活物質の量が少なくなるためであると考えられる。したがって、亜鉛の溶出を抑制することができればサイクル特性が改善することにつながる。
【0053】
ハイブリッドキャパシタの界面の抵抗を交流インピーダンス法によって評価した。そのときのNyquistプロットを図25に示す。
【0054】
KOH水溶液を用いた普通の電気二重層キャパシタよりも抵抗値は大きくなっている。これは、ハイブリッドキャパシタが片方の電極にファラディックな電荷蓄積過程を含むものを用いているためであると考えられる。
【0055】
高率放電曲線におけるIRドロップから算出した抵抗値を図26に示す。この結果では抵抗値は、20〜120mA cm-2で平均約1.3Ωとなっており、KOH水溶液を用いた普通の電気二重層キャパシタの抵抗値とほぼ一致した。
【0056】
図15よりハイブリッドキャパシタは正極規制になっていることがわかった。そのため、活性炭素繊維布の作動電位範囲が広がればハイブリッドキャパシタとしての作動電圧範囲もより広がることが予想される。そこで、活性炭素繊維布の作動電位範囲を広げてハイブリッドキャパシタに使用することを検討した。
【0057】
図27にサイクリックボルタンメトリーを行った後の活性炭素繊維布のサイクリックボルタモグラムを示す。400サイクル後(点線表示)には+0.2V付近の活性炭素繊維布の酸化ピークの立ち上がりが、正電位側にシフトしている。これは、サイクルを重ねることにより活性炭素繊維布の酸化が終わりに近づいているためである。そのため、活性炭素繊維布の作動電圧範囲は少し拡大されたと思われる。
【0058】
次に、この400サイクル後の活性炭素繊維布を用いたハイブリッドキャパシタの充放電試験の結果を図28(図28(a)はセル電圧で、点線は放電電圧曲線、実線は充電電圧曲線を示す。また、図28(b)は個々の電極電位を示している。)に示す。電位範囲は+0.3V〜+1.6Vとなり、以前と比較するとその電圧差は0.3V広がったことになる。しかし、充電過程において+1.5V付近から時間がかかっており、左右対称である典型的な普通のキャパシタの充放電曲線とは少し異なってしまっている。
【0059】
また、式(9)より求めたクーロン効率は約80%であり、不可逆な反応によるものであることが分かり、活性炭素繊維布の酸化が完全には終了していないことが一因として考えられる。
【数5】
この式で、q:クーロン効率(%)、Qd:放電電気量(mA s cm-2)、
Qc:充電電気量(mA s cm-2)である。
【0060】
次に、水系電解液について、上記実施例に用いたKOHに変えて、NaOHを使用して実施した。
【0061】
(実施例6)
7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液を活性炭素繊維布に含浸させて活性炭素電極を作製した。次に7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液を電析浴に用いて電析を行い(30mA cm-2の電流を10分間)、銅基板上に亜鉛を析出させて亜鉛電極を作製した。このように作製したハイブリッドキャパシタ(HC)を用いて、各種の特性試験を実施した。比較電極は上記実施例に用いたKOH水溶液で処理したもので、他の条件は同じにして作製したものである。
【0062】
(イ)亜鉛電極のインピーダンスの測定
インピーダンスの測定は、二極式セルで0.01〜20kHzの周波数領域で±5mVの印加電圧を加えて、そのときの応答インピーダンスを測定した。その結果を図29に示すように、NaOH水溶液(●表示)を用いた方が、KOH(○表示)よりも抵抗は小さくなっていることが分かる。
【0063】
(ロ)リーク電流
HCキャパシタに電圧を+1.4Vに保持したときに流れる電流を計測すると、図30(a)に示すKOHの場合と、図30(b)に示すNaOHの場合とは、ほとんどリーク電流は変わらないが、NaOHの場合の方が振動が少ないことが分かる。
【0064】
(ハ)エネルギー密度
Ragoneプロット図31に示すように、NaOH(●表示)とKOH(○表示)とでは、エネルギー密度に関してはほとんど変わらず、NaOHの方が若干低下が緩やかである。
【0065】
(ニ)電圧保持特性
+1.4Vに充電し、開回路にしたときの電圧経時変化を測定した結果は、図32に示す通り、NaOH(実線表示)はKOH(点線表示)よりも約2倍以上の電圧特性を示した。
【0066】
(ホ)充放電試験
1mA cm-2で充放電特性試験を行った。作動電圧範囲は、+0.4V〜+1.4Vで実施した。図33に示すように、NaOH(実線表示)の場合は、静電容量は1.3Fとなり、KOH(点線表示)の場合よりも減少したが、同じような特性曲線になり、特に大きな変化ではなかった。
【0067】
(ヘ)高率放電試験
1mA cm-2充電後、放電電流密度を変えて、静電容量を図34(a)に、放電効率図34(b)に、KOHとの比較として示した。全体的には静電容量はKOH(●表示)よりも小さいが、NaOH(○表示)は大電流でも静電容量の低下がないことの特性が大きく、高率放電能はKOHの場合とほとんど同じである。
【0068】
(ト)サイクル特性試験
5mA cm―2で充放電し、サイクル特性を評価したところ、図35に示すように、NaOH(○表示)は、KOH(●表示)に比べて約3倍のサイクル特性があった。
【0069】
このような特性は、NaOH使用による電極作製において、亜鉛電極の亜鉛の溶解の抑制による効果と考えられる。しかし、KOH使用の場合でもハイブリッドキャパシタとして、十分に使用できるものである。
【0070】
次に亜鉛電極を電析方法で作製する場合の電流密度について、着目して試験を実施した。その結果を次に述べる。
【0071】
試験用ハイブリッドキャパシタは、実施例6と同じように電極作製する方法で作製し、即ち、7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液を用いて、電流密度30mA cm-2,10分電析(試験電極A)と、15mA cm―2,20分電析(試験電極B)の場合で比較した。亜鉛の析出状態にも着目した。
【0072】
(イ)インピーダンス特性試験
上記と同じように、0.01〜20kHzで±5mVの印加電圧で実施した結果を図36で示す。試験電極A(○表示)は抵抗が小さく、試験電極B(●表示)の方が抵抗の大きいことを表している。
【0073】
(ロ)電圧保持特性試験
試験電極をハイブリッドキャパシタにして、1mA cm-2で充電し、+1.4Vまで充電した後、休止し、電圧の経時変化を測定した。その結果は図37に示す。電圧保持特性試験では、試験電極A(実線表示)と試験電極B(点線表示)にほとんど差はなく、電圧保持特性は良好である。
【0074】
(ハ)高率放電試験
試験電極について、ハイブリッドキャパシタとして充電電流1mA cm-2で充電した後、各放電電流で行った結果を図38に示す。1mA cm-2での静電容量は、試験電極A(●表示)使用のものと試験電極B(○表示)使用のものとで、ほとんど同じであるが、大電流では試験電極Bは、静電容量が低下している。高率放電性能としては、図39に示すように、試験電極B(○表示)は高率放電性能が低下するが、試験電極A(●表示)ではあまり低下していない。
【0075】
(ニ)サイクル特性試験
5mA cm-2で繰り返し充放電した結果を図40で示す。試験電極A(●表示)は比較的に静電容量が安定している。試験電極B(○表示)は緩やかに低下していることを示している。
【0076】
上記試験について、亜鉛電極の挙動と電極の表面状態をみると、試験電極Aは不規則でデンドライトが形成していることが見て取れ、全体的に粗い状態であり、表面積も大きいことが予想される。これに対して、試験電極Bは表面が均一で緻密な結晶構造を形成しており、表面積も小さいことが予想される。このことは、前者の方が後者よりもインピーダンス(界面抵抗)の小さいこと(図36)、ならびに高率放電特性に優れていること(図38.39)からも支持される。したがって、比較的小さい電流密度で時間をかけて作製した方が、キャパシタの特性がよいことがわかる。
【0077】
(実施例7)
次に、NaOH水溶液を含むヒドロゲルの特性試験を行う。
7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液100mlに架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)10gを加えて撹拌し、30℃で3日間熟成させてPAANaゲルを作製した。次にあらかじめ塩酸で処理した銅を基板に、対極に水酸化ニッケルを用いて、7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液中で電析を行い(電流密度15mA cm-2,10分間)亜鉛を析出させた。そして、析出させた亜鉛をPAANaゲル中に浸して(表面、底からそれぞれ5mmずつ離れたところ)、亜鉛が溶解するまでの時間を測定した。
【0078】
結果は図41に示すように、PAANaゲル中(点線表示)では40時間以上溶解が抑制されるが、水溶液中(実線表示)では、25時間程度であることがわかる。この試験では、NaOH水溶液を吸収させたヒドロゲル電解質とすることで、亜鉛の溶解をさらに抑制できることを示している。
【0079】
(実施例8)
セルを用いて、7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液およびPAANaゲルの伝導率を測定した。測定は、10Hz〜10kHzの周波数領域で±5mVの印加電圧を加えて行い、応答インピーダンスを測定することにより伝導率を算出した。
0.1M KClの比電気伝導率(0.012856 S/cm)を用いて式(10)よりセル定数を算出した。
【0080】
κ=R-1(l/A) (10)
ただし、l/A=1.23
【0081】
得られたセル定数より式(10)を用いて7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液とPAANaゲルの伝導率を求めた。
(イ)7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液:0.27S/cm
(ロ)PAANaゲル:0.19S/cm
7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液は、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液に比べて、相当に伝導率は小さいことが分かった。また、同様にPAANaゲルも、PAAKゲルに比べて伝導率は低いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
このように、ハイブリッドキャパシタは片方の電極が電荷移動過程を伴う大きな擬似容量を持つことができ、EDLCより大きな静電容量、エネルギー密度、出力密度を有することができ、コンピュータのバックアップ電源やその他の産業にも大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明による電極作製方法概略図である。
【図2】本発明による亜鉛電極の作製方法概略図である。
【図3】亜鉛電極の腐食挙動である。
【図4】高分子ヒドロゲル電解質中の亜鉛電極の腐食挙動である。
【図5】基板を異にした亜鉛電極の作製概略図である。
【図6】基板を異にした亜鉛電極の電解液に対する溶解度曲線図である。
【図7】基板を異にした亜鉛電極の高分子ヒドロゲル電解質に対する溶解度曲線図である。
【図8】ニッケル基板表面のXPS解析図である。
【図9】ニッケル基板処理に対する亜鉛電極の溶解挙動である。
【図10】活性炭素電極作製方法概略図である。
【図11】高分子ヒドロゲル電解質を含浸した活性炭素電極作製概略図である。
【図12】測定セル実験装置である。
【図13】他実施例の活性炭素電極作製方法概略図である。
【図14】他実施例の亜鉛電極作製方法概略図である。
【図15】ハイブリッドキャパシタ充放電特性曲線図である。
【図16】ハイブリッドキャパシタ高率放電特性曲線図である。
【図17】ハイブリッドキャパシタの静電容量曲線図である。
【図18】ハイブリッドキャパシタ高率放電率(HRD)曲線図である。
【図19】EDLCとHCとの比較Ragoneプロット図である。
【図20】ハイブリッドキャパシタのリーク電流経時変化図である。
【図21】高分子ヒドロゲル電解質と水溶液使用の場合のELDCの自己放電曲線図である。
【図22】高分子ヒドロゲル電解質と水溶液使用の場合のELDC電極の自己放電曲線図である。
【図23】充放電開回路でのセル電圧経時変化図である。
【図24】ハイブリッドキャパシタの充放電サイクル特性図である。
【図25】Nyquist plots for the HC cellである。
【図26】高率放電曲線におけるハイブリッドキャパシタのIRドロップ算出抵抗値曲線図である。
【図27】ELDCの活性炭素電極における400サイクル前/後のサイクリックボルタモグラム図である。
【図28】ハイブリッドキャパシタにおける活性炭素電極の400サイクル後の充放電曲線図である。
【図29】インピーダンス測定結果を示す。
【図30】リーク電流測定結果を示すグラフである。
【図31】エネルギー密度のRagoneプロット図である。
【図32】電圧保持特性図である。
【図33】充放電特性曲線図である。
【図34】高率放電試験結果を示すプロット図である。
【図35】充放電サイクル特性曲線図である。
【図36】インピーダンス測定結果を示す。
【図37】電圧保持特性曲線図である。
【図38】高率放電試験結果を示す。
【図39】高率放電能試験結果を示す。
【図40】サイクル特性試験結果を示す。
【図41】亜鉛電極の溶解挙動を示す。
【符号の説明】
【0084】
1 活性炭素繊維布
2 7.3M KOH/0.7MZnO水溶液
3 ニッケル(Ni)集電体
4 銅(Cu)基板
4a 銅(Cu)集電体
5 7.3M KOH/0.7MZnO水溶液
6 NiOOH/Ni(OH)2電極
7 セパレータ
8 支持体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭素布電極を正極とし、亜鉛電極を負極とし、電解質として酸化亜鉛を含む水酸化アルカリ水溶液とからなることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項2】
前記水酸化アルカリ水溶液は、高分子ヒドロゲル電解質中に含有固定されていることを特徴とする請求項1記載の電気化学キャパシタ。
【請求項3】
前記水酸化アルカリ水溶液7.3M中における酸化亜鉛量は0.7〜1.3Mの範囲とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電気化学キャパシタ。
【請求項4】
前記亜鉛電極は、表面を均一な表面処理した銅箔に亜鉛メッキした電極を用いたことを特徴とする請求項1記載の電気化学キャパシタ。
【請求項5】
前記銅箔は平板であることを特徴とする請求項4記載の電気化学キャパシタ。
【請求項6】
前記銅箔はエッチング処理されていることを特徴とする請求項5記載の電気化学キャパシタ。
【請求項7】
前記水酸化アルカリが水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学キャパシタ。
【請求項8】
放電容量は正極規制としたことを特徴とする請求項1記載の電気化学キャパシタ。
【請求項9】
表面をエッチングした銅箔に電析浴として、7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液を用い、対極にはNiOOH/Ni(OH)2電極を用いて、電流密度15〜30mA cm-2の一定電流で亜鉛を電析させることを特徴とする電気化学キャパシタ亜鉛電極の作製方法。
【請求項10】
表面をエッチングした銅箔に電析浴として、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液を用い、対極にはNiOOH/Ni(OH)2電極を用いて、電流密度15〜30mA cm-2の一定電流で亜鉛を電析させることを特徴とする電気化学キャパシタ亜鉛電極の作製方法。
【請求項11】
前記記載におけるZnOが0.7〜1.3Mの範囲にあることを特徴とする請求項9又は請求項10記載の電気化学キャパシタ亜鉛電極の作製方法。
【請求項1】
活性炭素布電極を正極とし、亜鉛電極を負極とし、電解質として酸化亜鉛を含む水酸化アルカリ水溶液とからなることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項2】
前記水酸化アルカリ水溶液は、高分子ヒドロゲル電解質中に含有固定されていることを特徴とする請求項1記載の電気化学キャパシタ。
【請求項3】
前記水酸化アルカリ水溶液7.3M中における酸化亜鉛量は0.7〜1.3Mの範囲とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電気化学キャパシタ。
【請求項4】
前記亜鉛電極は、表面を均一な表面処理した銅箔に亜鉛メッキした電極を用いたことを特徴とする請求項1記載の電気化学キャパシタ。
【請求項5】
前記銅箔は平板であることを特徴とする請求項4記載の電気化学キャパシタ。
【請求項6】
前記銅箔はエッチング処理されていることを特徴とする請求項5記載の電気化学キャパシタ。
【請求項7】
前記水酸化アルカリが水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気化学キャパシタ。
【請求項8】
放電容量は正極規制としたことを特徴とする請求項1記載の電気化学キャパシタ。
【請求項9】
表面をエッチングした銅箔に電析浴として、7.3M NaOH/0.7M ZnO水溶液を用い、対極にはNiOOH/Ni(OH)2電極を用いて、電流密度15〜30mA cm-2の一定電流で亜鉛を電析させることを特徴とする電気化学キャパシタ亜鉛電極の作製方法。
【請求項10】
表面をエッチングした銅箔に電析浴として、7.3M KOH/0.7M ZnO水溶液を用い、対極にはNiOOH/Ni(OH)2電極を用いて、電流密度15〜30mA cm-2の一定電流で亜鉛を電析させることを特徴とする電気化学キャパシタ亜鉛電極の作製方法。
【請求項11】
前記記載におけるZnOが0.7〜1.3Mの範囲にあることを特徴とする請求項9又は請求項10記載の電気化学キャパシタ亜鉛電極の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図2】
【図3】
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【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【公開番号】特開2008−66681(P2008−66681A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246178(P2006−246178)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】
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