電気抵抗体
【課題】任意の形状に切断して簡単に形成できるヒーター素材を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して薄板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体。
【解決手段】熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して薄板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状あるいは薄板状で可撓性があり、100Vより遙に低い低電圧、例えは30V以下で作動する電気抵抗体、特に低温発熱用ヒーター(面状発熱体)に関し、そのヒーターは平坦な状態で使用されることは勿論、被加熱物の曲面形状に合わせて貼付けて使用することもでき、また、各種の図形やキャラクタなどの形状に切断してもその図形などに合わせて発熱するヒーターを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、湯沸かしポットや鍋型の調理器あるいはプレートヒーターなどの調理器、足温器などの健康器具、更に魚焼器やパン焼器などの小型の焼き調理器具には高温加熱用電熱ヒーターが使用されている。この電熱ヒーターは一般にニクロム線やシーズヒーターが最も多く使用されている。その他に金属箔を絶縁板に積層し、これを所定のパターンにエッチングした低温発熱用ヒーターなどが使用されている。
【0003】
これらの電熱ヒーターのうち、例えば人体を直接加熱する足温器の場合は40℃以下の低温のものであるが、これに対して焼き調理器にはかなり高温のものが使用されている。そしてこれらのヒーターの多くは100Vあるいは200Vで作動するように設計されている。
【0004】
また、凍結する道路や屋根の融雪装置には大型の電熱ヒーターが使用されているが、これにはケーブルヒーターや熱可塑性樹脂を成形した面状ヒーター、あるいは金属薄箔を電気絶縁シートに積層接着し、この金属薄箔をエッチング加工して発熱部のパターンを形成したエッチング型の面状ヒーターなどが使用されている。また、床暖房装置の加熱ヒーターとしては、低温特性と安全性に優れた熱可塑性樹脂を使用した面状ヒーターが使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
前記特許文献1に記載された面状ヒーターの素材に熱可塑性樹脂が使用されている。この熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、プリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、飽和ポリエステルの単体、あるいはそれらの混合体等の熱可塑性樹脂をベース材料として使用し、これに電気抵抗体としてカーボン微粉末を5〜25%前後添加して混合体を形成し、これを押出機で溶融してシート状(薄板状)に押出すと共に、その両縁に沿って2本の電極線を設けたものである。この面状ヒーターは最近、床暖房用の部材として多く使用されるようになっているが、その理由は、製造が連続的で効率的に行なえる上に、電流を自動的に制限する効果(PTC効果)を有するからである。
【0006】
この面状ヒーターは熱可塑性樹脂を素材としていることから、その発熱範囲が20℃〜40℃前後の比較的低温の劣化しない温度で作動するように設計されている。そしてこの面状ヒーターは温度上昇に対する熱膨張率が大きく、それに伴なって電気抵抗が急に増加するという独特の特性を持っており、この特性を「PTC特性」と称している。このPTC特性により温度がある範囲を越えて上昇すると、抵抗値の急激な増加により電流値が急速に制限され、それに伴なって温度上昇が自動的に抑制されることになる。この独特の特性のためにヒーターの過熱による火災などの事故が全く発生せず、安全な暖房装置を構成している。
【0007】
また、この面状ヒーターは素材が熱可塑性樹脂であることから、本質的に耐蝕性を持っており、例えば動物(養豚、養鶏)の養殖や植物や樹木の栽培における加熱、特に魚の養殖に使用する漁礁で育成される稚魚自体の加熱などに効果的に利用できる。
【0008】
前記特許文献1に記載された熱可塑性樹脂とカーボン微粉末とを混合し、これを押出成形機によって円筒状のシート状に押出してヒーターを製造する方法は大量生産には余り適していない。特に、口金の特性よりシートの厚さを均一に調節する操作が困難であると共にその面状ヒーターの幅の変更は困難であった。
【0009】
そこで、本発明者は、従来の押出装置の欠点を改善した押出成形装置を発明し、先にこれを提案している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第1232594号(特公昭55−31598号公報)
【特許文献2】特許代3466171号(特開平2000−17226号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記熱可塑性樹脂製の面状ヒーター(電気抵抗体)の主な用途は、床暖房装置の構成部材である。この面状ヒーターの場合は、一般的な幅が100〜450mm前後で発熱量や用途に応じて幅を変更したものを押出し、その両縁に電極線を平行に配置して一体化したもので、2本の電極線の間に電流を平面的に流すように構成したヒーターである。この床暖房用ヒーターの電源として通常は100Vの交流電圧を供給している。
【0011】
最近、自動車のシート、オートバイの搭乗者の手袋、医療用のベッド、更に、アロマオイルを少量づつ蒸発させる器具などが提案されているが、このような小発熱量の用途に使用するヒーターの要件としては、下記のものを挙げることができる。
【0012】
イ.万一漏電しても人体に実質的に電気的な損傷を与えず、かつ、火災や火傷などの危険性が殆んどない低電圧(例えば30V以下、特に12V程度)で加熱できること。
【0013】
ロ.柔軟性があり、平坦な被加熱体の表面は勿論であるが、曲面部分でも簡単に対応できることができること。
【0014】
ハ.矩形や短冊形など通常に使用される単純な形状は勿論、例えば円形、リング形、ハート形あるいは手袋の手の形などの被加熱部の形状や用途に合わせて加熱できるヒーターとすることができること。
【0015】
ニ.加熱が不要な部分、あるいは平板の所定の部分に所定の形状や大きさの開口部をあけたり、規則的に多数の窓を格子状にあけたり、更に、複雑な形状の部分を発熱させたり、あるいは発熱させない部分を形成したヒーターを簡単に製造できること。
【0016】
本発明は、薄いシート状の電気抵抗体、具体的には電熱用ヒーターである。そして例えば、円筒体や被加熱物の曲面に合わせて張り付けたり、適宜必要な寸法や形状に切断しても、「その形状に発熱することができる」低電圧用のシート状ヒーター用電気抵抗体を提供することを目的とするものである。
【0017】
なお、本発明においては、熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形したものを「導電層」と称し、また、この導電層の両面に平板状電極を接着して両電極間(シートの厚さ方向)を通電可能に構成したものを「電気抵抗体」即ち面状ヒーターと称する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するための本発明に係る低電圧で作動する電気抵抗体、即ち、面状ヒーターとその応用品は次のように構成されている。
【0019】
1)請求項1の発明は、熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して薄板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体である。
【0020】
この電気抵抗体は薄い電熱ヒーターを構成しており、薄く、ハサミやカッターナイフで切断可能であり、従来のヒーターとは異なった用途に使用できる。
【0021】
2)請求項2の発明は、前記導電層の厚さは長さや幅に比較して遙かに薄く、前記両平面電極間に通電した際、この導電層の厚さ方向に電流が流れ、前記電気抵抗体の全面積にわたって発熱する特性を有しており、切断して面積や形状を変更しても全表面が発熱する電気抵抗体であり、可撓性があり、この特性を活かした用途に使用できる。
【0022】
3)請求項3の発明は、前記電気抵抗体の厚さを0.2mmない2mmにしたことを特徴としている。この電気抵抗体は、一般のヒーターと異なって、その厚さ方向に電流を流して発熱させるものである。なお、従来のヒーターは平面方向である。
【0023】
本発明に係るヒーターの厚さは、0.2〜2.0mmの薄物であり、切断可能である上に可撓性があり、加工性に優れている。
【0024】
4)請求項4の発明は、前記平面電極と導電層との間の接着手段として導電性ペーストを使用しており、容易に切断でき、物体の形状に合わせて成形したり、また、物体の形状にあわせて張付けが可能である。
【0025】
5)請求項5の発明は、熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体において、この電気抵抗体の厚さが0.2mmないし2mmのものを前提とし、
印架する電圧は、30V以下の低電圧の交流であり、更に電力消費量が500W/m2 以下、好ましくは100〜250W/m2 である。
【0026】
本発明に係る電気抵抗体、即ち、ヒーターは、低電圧作動用であり、従って、発熱量も比較的小さく、用途な限定される可能性がある。
【0027】
6)請求項6の発明は、前記平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に設けた平面電極とからなる電気抵抗体において、前記平面電極は金属薄板ないし金属箔であることを特徴としている。
【0028】
7)請求項7の発明は、前記平面電極として、細い金属線を編織した編織物,細い金属線と耐熱性繊維を使用した編織物で構成したことを特徴としている。
【0029】
薄い金属板あるいは金属箔を電極として使用した場合、導電層との間の接着程度が問題となる。そこで本発明は、細い金属線の編織物を電極として使用すると、導電層への食い込みによる接着性が極めて良好であり、例えばそのシートに曲げが与えられても通電不良とするおそれはない。また、電気抵抗体に対して多少の伸縮に耐える性質を与えることができる。
【0030】
8)請求項8の発明は、導電層の一方に配置されたの平面電極の面積に対して、他方の面の平面電極は、1枚ではなく、小型、且つ、任意の形状や寸法に形成されている。しかもこれらの電極同士が電気的に接続しないように予備間隔をもって形成されている。
【0031】
従って、この予備間隔を利用して個々に切断・分離して多数の小型ヒーターを適宜製造することができる。
【0032】
9)請求項9の発明は、被加熱体側に配置される平面電極の外面に、前記導電層の発熱に応じて遠赤外線を放射するセラミックス層、好ましくは2層構造のセラミックス層を形成したことを特徴としている。
【0033】
このセラミックス層は、電気抵抗体であるヒーターが発生した熱エネルギーを積極的にセラミックス層側に引出し、遠赤外線として放射する機能を持っている。このセラミックス層は、2層構造で下地層(第1層)が酸化チタンなどの高温域に放射エネルギーの中心波長をもつもの(短波長のもの)を、その上地層(第2層)に酸化アルミなどの前記波長より低温域に放射エネルギーの中心波長を持つもの(長波長のもの)を配置することによって最大を効果を発揮することができる。
【0034】
10)請求項10の発明は、電気抵抗体を発泡樹脂などの断熱層に積層し、前記電気抵抗体側を加熱面としたことを特徴とするものである。
【0035】
この発明によると、発泡樹脂などの断熱層で自動車のダッシュボードを成形し、更に電気抵抗体をフロントガラス面に向けておけば、これより発する放射熱でフロントガラス面を加熱してデフロストタとして作用させることができる。
【0036】
また、前記電気抵抗体を内面に形成した合成樹脂発泡体からなる断熱性ダクトを形成することによって、このダクトに空気を供給して通過する間に空気を加熱し、この空気を暖房用に使用することもできる。
【0037】
11)請求項11の発明は、前記電気抵抗体、即ち電気ヒーターを柔らかい絶縁層で包んで保護した上で、これを人体の一部を加熱する保温部材の中に収容したことを特徴とする人体採暖具である。この人体採暖具、子供用のぬいぐるみを暖房具としたり、自動車の運転席などの暖房シートに適用できる。
【0038】
12)請求項12の発明は、前記保温部材を手袋や椅子のクッション、あるいは屋外で使用するチョッキなどに利用できる。
【0039】
本発明に係る電気抵抗体、即ち、電熱ヒーターの材料は公知の方法で製造される熱可塑性樹脂からなる導電層と、その両面に配置された平板状電極とからなる三層構造のものである。そして従来の面状ヒーターにおける面方向の電流の流れを、厚さ方向の流れに変更した点に大きな特徴がある。
【0040】
その結果、この面状ヒーターは、恰も合成樹脂シートをハサミやカッターナイフで切断して所定の形状のものとしても、分離された個々のヒーターは、ヒーターとして満足で作用することができるものである。しかも、両平板状電極の間の導電層は、その形状に合わせて発熱する特性を持っている。
【0041】
この面状ヒーターは、熱可塑性樹脂を基礎的な材料としてので本質的に可撓性、弾力があり、この特性を利用して被加熱物に合わせて成形することができる。また、リボン状にスリットしたり、面状のものに格子状に穴をあけてヒーターとしたり、あるいは任意の形状と大きさの穴を抜いたものに形成して使用することも可能である。
【0042】
また、この面状ヒーターを発泡樹脂板などの断熱材等の他の板材等の材料に積層したり、みいぐるみのようなもの、ベッドの中、あるいはシートの中などに内蔵させて使用することができる。
【0043】
この特殊な構造を持つ面状ヒーターは、電極間距離が短いことから低電圧で作動するので電気的に安全である。また、例えば、この面状ヒーターに針や釘やナイフなどを貫通させた場合、その部分だけ導電層が局部的に溶融して通電が断たれる特性があり、ショートによる局部発熱などの事故がない。
【0044】
更に、本発明の熱可塑性樹脂を主原料として製造された導電層を中心部材とする面状ヒーターは、従来の発熱線を使用したヒーターのように線状に電流を流さなく、電極間の厚さ方向に流すことから、強力な電流が流れないことから人体に影響を与える電磁波が発生することが殆んどない。
【0045】
また、導電層に少量の発泡剤を添加して発泡率が低い発泡体(あまり発泡率が高いと通電に影響が発生する)として形成することにより、クッションのある面状ヒーターとすることも可能である。
【0046】
導電層の主体を形成する熱可塑性樹脂(主原料)としては、ポリエチレン、プリプロピレン、エチレン、酢酸ビニル共重合体(EVA)、飽和ポリエステルの単体あるいはそれらの混合体である。
【0047】
また、前記導電性微粉末(副原料)はハーネスブラック、グラファイト、ケッチェンブラックあるいはアセチレンブラックから選ばれた一種あるいはその混合体などである。
【0048】
そしてこの導電性微粉末の添加量は、前記熱可塑性樹脂に対して5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%程度であることを特徴としている。
【0049】
本発明に係る電気抵抗体はシート状、且つ柔軟である。従って、この特性を活かして絞り成形が可能であり、この絞り特性を利用すると、例えば、洋式風呂のバスタブの外面にスッポリと嵌めてこのバスタブを電熱式に加熱することが十分に可能である。従って、バスタブなどの加熱手段や保温手段に適用できる。
【0050】
この成形性を利用して壁面を円錐状にした鉢形のものを成形し、これで植木鉢の底部を保温することによって、例えば屋上の植木を低電圧で加熱することができる。特に屋上の電気の管理で面倒である上に漏電や感電などの危険性がある。そこで低電圧で作動するヒーターを使用することによって、温度差が激しい屋上の植物な魚類の冬季における管理が容易となる。
【0051】
本発明の電気抵抗体の主要部を構成する導電層はシート状で薄く、しかも可撓性があり、恰もゴムシートを取り扱うと同様に扱うことができ、また、面積に関係なく単位面積当たりの発熱量は同じである。
【0052】
繰り返しになるが、本発明の電気抵抗体、即ち、面状ヒーターは下記する重要な特性を持っている。
【0053】
a.加工性に優れている。
【0054】
本発明に係る電気抵抗体は、熱可塑性樹脂をベース材料としてシートを形成し、その両面に平板状電極を配置して薄板状の三層構造としていることから、前記電極間の熱可塑性樹脂層が発熱体そのものであり、従って、電気抵抗体を微細な抵抗体ないし発熱体の集合体として把握することができる。
【0055】
その結果、シート状のものを小片に切断したり、各種の形状、例えばキャラクター等に合わせて切断することができる。また、多数の小孔をあけた多孔シートとして液体や気体を通過させながら加熱することができる。(如何なる形状に切断しても、導電層の両面に配置された平板状電極の間に給電すれば発熱させることができる。)
b.多用途に利用できる。
【0056】
例えば、面状の電気抵抗体、即ち、面状ヒーターを切断して短冊形として使用したり、これを渦巻き状に成形して異形ヒーターとしたり、また、スパイラル状に巻いた特殊なヒーターとすることができる。
【0057】
大型の装置としては、バスタブのような被加熱物の外面に沿わせて貼ってバスタブ自体を加熱したり、工業用途としては、自動車のダッシュボードの加熱空気の通路部分に貼って空気を加熱してデフロスターとして使用したり、加熱ダクトとして使用することができる。
【0058】
また、曲率半径が小さくて、単にヒーターを曲げただけでは皺が発生したり、曲面に正確に貼ることが困難な場合が発生するが、その曲がりの激しい部分に、多数の小孔やスリットをあけて面状ヒーターそのものに柔軟性を増して必要な曲げを与えることができる。
【0059】
なお、通常のヒーターにおいては、一旦決定された形状を簡単に切断して適当な形状のヒーターに変更することが不可能である。
【発明の効果】
【0060】
本発明は、熱可塑性樹脂を主原料とし、これに導電材料を所定量添加して混合し、これを溶融してスリット状の開口を持つ口金より吐出させて成形して導電性シート(導電層)を形成し、更にこの導電性シートの両面に金属薄板や金属箔を平面電極として通電可能に積層し、この2枚の平面電極の間に通電するように構成して低電圧用ヒーターを形成している。
【0061】
このヒーターの発熱材料である導電性シートは厚さが薄く、しかも、この導電性シートは厚さ方向に電流を流して発熱させるもので平面的に発熱する。この特異な機能より、導電材性シートを切断して面積を変更したり、被加熱物に合わせた形状やパターンを持つヒーターとすることが可能である。
【0062】
付言すれば、従来の加熱装置ないしヒーターは、ニクロム線を使用したものや金属箔をエッチングして発熱パターンを形成したものであるから、被加熱物に合わせて当初から設計する必要があった。これに対して本発明は、前記のように、恰も厚手の接着テープを使用する場合のように、必要な形や大きさに切断して被加熱物に沿わせて取付けることができることから、従来のヒータートとは異なった用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0064】
〔実施例1〕
A.導電性シートの製造
a)材料1:主原料として熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)の単体あるいはそれらの混合体を使用することができる。
【0065】
この実施例においては熱可塑性樹脂としてポリプロピレン40%(重量)、ポリエチレン40%、EVA10%の混合物を使用した。
【0066】
b)材料2、副原料である導電材料としてケッチエンブラック30%、グラファイト70%の混合体を使用し、前記材料1に対して13%(重量)添加した。
【0067】
c)成形方法:通常の合成樹脂の押出機と、特許第3466171号(特開2003−17226号:特許文献2)に記載された構造を持ち、2枚のシートを上下同時に押出し、両側に電極線を配置し、更にこれらのシートの軟化状態で加圧して1枚のシートに接着する高能力の面状発熱体の製造装置を利用した。
【0068】
前記成形装置において一段目(上段)の樹脂経路を閉止させ、更に2本の電極線を供給を停止させた状態で、下側のスリットより1枚の導電性シートを連続的に成形した。
【0069】
前記の口金の吐出幅を180mmとし、口金のスリットの全長にわたる間隔を微調整して0.5、1.0、1.5、2.0mmの厚さの異なる4種類のシートを押出成形し、次いでこれを約15℃の冷却水中に浸漬して導電性シート(導電層)を成形した。
B.面状ヒーターの製造
図1は、前記のようにして得られた導電性シート1を拡大して示す断面図である。この4種類の導電性シート1のうち、厚さが1.0mmのものを選び、縦・横が200mm×200mmの四角形に切断して電気抵抗シート1aとした。
【0070】
そして厚さが0.05mmの銅箔を電極材料として使用し、前記電気抵抗シート1aの両面に東洋紡(株)製の導電性ペースト4「商品名:バイロン」(ホットメルト接着剤用途)により平面電極2、3を加熱接着して三層構造の面状ヒーター材料5を製造した。なお、この銅箔は、その厚さが0.05〜0.15mmの範囲のものを使用することができるが、その厚さは導電層の厚さとの関係で決定する。
【0071】
この面状ヒーター材料5は低電圧(例えば、12Vのバッテリ、30V以下の交流電源)で作動するように設計されている。また、前記導電性ペースト4としては、溶剤が含まれているものは経時的に劣化する可能性が大きいことから、この溶剤を含まない成分の接着剤を使用するのが良い。
【0072】
電気抵抗シート5(電気抵抗体)の厚さは、ヒーターとして使用する際に電気ショート等の電気絶縁上の問題が発生する懸念がないこと、電極に配線を接続する際に導電性シート1に熱的な損傷を与えないことを考慮して、最も薄いシートの厚さを0.2mmに制限し、厚いものを2.0mmに限定しているが、実際に使用し易いものとしては0.5〜1.0mmの範囲のものである。
【0073】
また、電気抵抗シート5の柔軟性が失なわれなく、十分に可撓性を保持する意味において、最も厚いものでも2mmに限定している。この上限の厚さより厚いとと屈曲性が悪くなり、柔軟性のあるヒーターとしての機能が低下する。また、無理にこの電気抵抗シートを小半径で曲げると電気抵抗シート1aと電極2、3との間の伸びの相違から剥離が発生することから2mmを上限とした。
【0074】
しかし、面状ヒーター材料5に多数の孔をあけたものは、ある程度厚くても柔軟性があり、低電圧用ヒーターとしての機能が失なわれない範囲において厚さを変更することができる。
【0075】
次に、前記のように加工された面状ヒーター材料5を、縦・横が200mmの四角形に切断した。なお、面状ヒーター材料5を構成する電気抵抗シート1aの上下面に積層した電極2、3の周縁部を繊細なグラインダー研磨などの方法で電気的に接触がないように整理し、その研磨面に必要に応じて耐熱性と電気絶縁性を持つ塗料を塗布して電気ショートの危険性がない面状ヒーター材料5とした。この面状ヒーター材料5の標準発熱量は150W/m2 であった。
【0076】
なお、導電性シートが例えば0.4mm以下のように薄い場合には、両電極2、3がかなり接近して電気的に問題が発生する可能性もある。そこで、このような状態を回避するために、一方の平板状電極の大きさに対して他方の電極の大きさを小さくすることによって電気抵抗シート1aが露出する部分、即ち、「短絡距離」を長くする構造を採用するのが良い。
【0077】
前記のようにして製造された面状ヒーター材料5の両面の電極2、3に、それぞれ電線を連結し、これに12Vのバッテリーを接続すると短時間内に約35〜45℃に発熱した。この実験により30V以下の低電圧で作動する面状ヒーターが完成していることが分かった。
【0078】
〔実施例2〕
図3は、図2のようにして製造された面状ヒーター材料5をハート形に切断し、その周縁部を研磨して電気絶縁性を確保した異形のヒーター6(通常の製造方法ではこのようなヒーターを簡単に製造できない。)を製造した。
【0079】
このヒーター6を構成する電気抵抗シート1aの厚さは1.0mm、その面積は約25cm2 であった。この電気抵抗シート1aの両面の電極2、3にそれぞれ接続された電線7a、7bの間に20Vのバッテリを接続すると、約35〜45℃に穏やかに発熱した。
【0080】
この小型のヒーター6は、例えば、幼児の好む縫いぐるみなどの中に入れて幼児の体を低温で加熱する暖房具などの用途にに使用できる。この場合、ヒーター6が固くて縫いぐるみとして違和感がある場合には、このヒーター6に適宜、小孔を打ち抜いて柔軟性を増して使用するのが良い。
【0081】
図13は前記図1に示した面状ヒーター材料5を使用して所定の大きさに切断した電気抵抗体、即ち、面状ヒーター60であって、この面状ヒーター60は多数の突起物がある物体の表面にあてがってこの物体を加熱するような場合に使用されるもので、突起物が突出ないし貫通するようにヒーター60に多数の穴61、62、63を開口している。
【0082】
このような形状のヒーターは、本発明に係る電気抵抗体を使用して始めて目的を達成することができるもので、被加熱物の表面形状に合わせた型紙を作成し、この型紙を使用して必要な箇所をヒーターで覆って加熱することができるものである。驚くべきことに、このヒーター60の場合、切れ目64を形成しても、発熱作用には何らの影響を及ぼすものではない。極端な場合、このヒーター60を更に細かく切断して小片としてもヒーターとして利用することができる。
【0083】
なお、図3に示すヒーター6を暖房具として使用する場合は、電気絶縁性と耐水性のあるプラスチック製の柔軟な袋に収容し、シールして水密性と電気的な安全性を確保し、更に、肌と接触する面にタオル地などを設けて衛生面と安全面を確保しておくのが良い(図13のヒーターの場合も同様))。
【0084】
〔実施例3〕
図4はアルミパイプ10(厚さ2mm、直径26mm、長さ500mm)の表面にポリエステルフイルムの絶縁層10aを形成し、その上にこのパイプ10の周面を包む程度の幅を持つ面状ヒーター11を巻付けたパイプ型ヒーター12を示している。14aは電極3側の下部電極の接続部、14bは電極2側の上部電極接続部をそれぞれ示している。
【0085】
この実施例においては、この面状ヒーター11の下側の電極3は連続した平面を持つ金属箔で形成されている。これに対して、上側の電極2には開口部13をあけて電極2の面積を減少させることで、その部分の発熱量を調節したものを採用している。
【0086】
この円筒形の加熱装置は、アルミパイプ10の内部に被加熱物を収容できるので、例えば、調理品や菓子類などの食品の保温、肩こりなどの部分に当てる加熱体や薬品の保温あるいは液体の加熱などの各種の用途に使用することができる。
〔実施例4〕
図5(A)は、平面電極の一種として“網状電極”を使用した面状ヒーター15の断面図、(B)は同平面図である。
【0087】
この面状ヒーター15は実施例1において製造したものと同様な導電性シート1bを導電層として使用し、その両面に網状電極2a、2b(10μm程度の直径の細い金属線を使用した柔軟性のある金属網)を配置する。そしてこれを2枚の加熱板の間に挟持させてこの導電性シート1bの軟化温度程度(約110℃)に加熱した。所定の温度に導電性シート1bが加熱されると前記網状電極2a、3aを導電性シート1bの両面に加熱・加圧によりエンボス状に没入させて電気的接触を確保した。
【0088】
この面状ヒーター15は、平面電極として網状電極2a、3aを使用していることから導電性シート1bと網状電極2a、3aとの電気的接合は良好であることが確認された。また、網状電極2a、3aが持つ柔軟性により、ヒーター15全体として柔軟性を持っている。
【0089】
従って、各種の被加熱物の表面あるいは内面の曲面(曲率)に対応して変形させて使用できることから、微妙な曲面を持つ被加熱体の加熱でも効果的に使用できる。更に、金属線の太さと網状物の密度を選定することにより、また、クリンプ付きの金属線を使用することによって伸縮性と柔軟特性を変更できる。金属線の材質と太さの変更により、かなり柔軟性のある面状ヒーター15でも簡単に製造することができる。
【0090】
〔実施例5〕
図6は、図1(実施例1)のようにして製造した導電性シート1の表面、例えば、上側の金属箔からなる平面電極2bに各種の形状にパターン化された開口部17を配置し、下側の金属箔からなる電極には、このような開口部を形成しない通常の平板状電極2bを使用した面状ヒーター16(電気抵抗体)の正面図を示している。
【0091】
この面状ヒーター16の場合は、この開口部17を被加熱体の位置や被加熱部の大きさや加熱場所に合わせて設け、省電力型の低電圧用ヒーターとすることができる。
【0092】
〔実施例6〕
図7は、断熱材付ヒーター22の断面図を示している。このヒーター22はポリエチレンなどの合成樹脂発泡体などの断熱材からなる断熱層19の表面に導電性シート1cの両面に平面電極2d、3dをそれぞれ設けた面状ヒーター20(電気抵抗シート)を配置ないしは接合し、更に前記ヒーター20の表面全体を覆うように合成樹脂製の電気絶縁性シート21を接着部21aで接着して“断熱材付ヒーター22”を構成したものを示している。
【0093】
〔実施例7〕
図8は断面が四角形のダクト24の内面に沿わせて前記実施例6(図7)で製作した断熱材付ヒーター22を設けたもので、空気等の気体(場合によっては液体)を案内しながら加熱する装置を示している。そして、このヒーター22を曲げる部分に、スリット25を所定間隔に開口して曲げ易く形成している。
【0094】
なお、本発明に係る面状ヒーターは、導電性シートの両面に配置された平面電極の間を通電して導電性シート(電気抵抗シート)が発熱するものであるから、前記のように必要な部分にスリットを開口しても電気的には全く問題がない。
【0095】
〔実施例8〕
図9は、図5(実施例4)に示した網状電極2a、3aを導電性シート1bの両面に設けた面状ヒーター15を、電気絶縁性の袋体15aの内部に収容した面状ヒーター26をウレタン発泡樹脂などの断熱層19(断熱シート)の表面に積層(付着)して使用する加熱装置27を示す断面図である。この加熱装置27は前記図7(実施例6)に示す断熱材付ヒーター22と同様に使用することが可能なものである。
【0096】
図9に示すように断熱層19を設けた加熱装置27は、例えば、冬季における花や植物の栽培装置や水槽の加熱装置に使用することができる。
【0097】
〔実施例9〕
図10は第9の実施例に係る面状ヒーター材料30の分解斜視図である。
実施例1で製造した導電性シート1(図1)を使用し、これの裏面に全面的に銅箔からなる平面電極3を図2と同様に導電性ペーストで接着する。そして導電性シート1上面に各種の形状・大きさを持つ銅箔からなる電極2mを導電性ペーストで接着したものである。
【0098】
この電極2mは用途によって必要な形状を持っており、電極2mを構成する電極Aは長方形のもの、電極Bは四角形のもの、また、電極Cは円形のもの、そして電極Dは多数の開口部dを開口した格子形のものを示している。この面状ヒーター材料30は電極A、B、C・・の周囲に導電性シート1が露出した非通電区域Fが形成されている。
【0099】
この面状ヒーター材料30を使用する際には、非通電区域Fに切れ目を入れて前記電極A、B、C・・をそれぞれ切り離して多数の小型の面状ヒーターを一挙に形成することができる。そして両面の電極に給電用の電線を接続する。また、裸のままのヒーターでは電気的に問題がある場合には、電気絶縁性の袋体に収容し、前記電線を引出した状態で使用する。
【0100】
〔実施例10〕
図11及び図12は本発明の洋式バスタブへの応用である。
図に示すようにバスタブ31の外面に、図2に示す構造の面状ヒーター32を成形して貼付け、更にその外面を断熱層33で覆った構造を示している。
【0101】
前記面状ヒーター32は、電気抵抗シート(導電層)1aと、その両面の平面電極2、3とを積層し、更にこの電極2に表面にセラミックス層34を形成している。そしてこのセラミックス層34の表面に絶縁層35を積層して安全性を確保している。
【0102】
前記セラミックス層34は2層構造であり、電気抵抗シート1a側に酸化チタン層を、その上に酸化アルミ層をプラズマ溶射によって形成しており、この構造のセラミックス層により電気抵抗シート1aより発生した熱エネルギー(遠赤外線)はバスタブ31側に効率的に案内され、バスタブ31内の水を加熱することができる。
【0103】
本発明に係る電気抵抗シートは、如何なる形状に切断しても、その両面の平板状電極に給電することによって全面的に発熱させることができることから、前記のような用途にも簡単に適用することができるのである。
【0104】
〔実施例11〕
(他の用途への応用)
a)図3に示す実施例2においてはハート形のヒーター6を示しているが、これの用途が幼児用もしくは子供用の加熱装置であれば、幼児や子供達に人気のある各種のキャラクタに切断加工ないし整形して使用することが好ましい。勿論、このヒーター6のままでは使用することが困難であるので、必要なクッション材や保温材を併用して子供に好まれる状態のもの、安全性を高めたものとして使用する。
【0105】
b)例えばバイクのライダー用の手袋は、冬季に特に暖房が必要である。このような場合にはその手袋に内蔵できる形状に面状ヒーター材料5(図2)を適宜切断し、必要に応じて孔やスリットを形成し、その表面に電気絶縁と耐水性のある柔軟なカバー等の処理を施して手形のヒーターを形成する。
【0106】
そしてこのこの面状ヒーターを手袋の内面(特に背面側)に配置する。そしてこのヒーターにバッテリを接続して加熱して使用する。なお、図10に示すように一方の電極を多数の小型の電極で構成する場合は、この電極の形状を手袋にあわせたものに形成し、その形状に合わせて切断したものをヒーターとして使用することができる。
【0107】
c)自動車のシートへの応用
特に長距離で運転するトラックなどには、冬季に臀部が冷える。また、通常の自動車でも冬季には運転席などの暖房を必要とする。このような用途に使用するヒーターは既に提案されているが、実際には普及されているものは少ない。その理由は、ニクロム線を主体とする電線状の発熱体を使用していることから、加熱できる範囲が局部的で、広い面積を加熱することができず、また、コード状のものを人体に近接する部分に配置することは使用感が悪くなるという問題があるからである。更に、発熱線は伸縮性に欠けることから、これを解消できる特別な配線の形状が必要となる。
【0108】
このような用途に、本発明に係る電気抵抗体からなる面状ヒーターを使用する場合は、伸縮と柔軟性を持たせた構造とする。例えば、網状(好ましくはクリンプ糸を使用した網状物)からなる平面電極を使用した短冊形のヒーター材料とし、これをクッション材の中に収容したものをカバー内に収容して使用する。
【0109】
d)幼児用のキャラクター形の抱き枕の場合は、幼児が抱く枕の部分に、細い短冊形の面状ヒーターを適宜の本数配置し、これを低温で加熱するようにしても良い。
【0110】
また、病院のベッドの上に敷いて使用するシーツ形の加熱装置の場合や掛けふとん側に使用する加熱装置の場合は、面状ヒーターに柔軟性を与えることが必要である。それには前記の各種の面状ヒーターより選定し、更に各種の柔軟性付与の加工方法、構造を利用して違和感がなく、安全な加熱装置を構成するのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】導電性シート(導電層)の断面図である。
【図2】導電性シート(導電層)の両面に金属箔を貼った面状ヒーター材料の断面図である。
【図3】前記面状ヒーター材料を加工したハート形のヒーターの斜視図である。
【図4】パイプ形ヒーターの斜視図である。
【図5】(A)は網状電極を使用した面状ヒーターの断面、(B)は同平面図である。
【図6】一方の電極に多数の十字形の開口部を設けた面状ヒーターの平面図である。
【図7】断熱材付き面状ヒーターの断面図である。
【図8】断熱材付き面状ヒーターで形成した加熱ダクトの斜視図である。
【図9】断熱材付き面状ヒーターの断面図である。
【図10】多数の小型のヒーターを製作できる面状ヒーター材料の分解斜視図である。
【図11】ヒーター付き風呂桶の要部断面図である。
【図12】図11の一部拡大図である。
【図13】多数の穴をあけた面状ヒーターの斜視図である。
【符号の説明】
【0112】
1 導電性シート(導電層) 1a 電気抵抗シート
2、3 銅箔(平板電極) 4 導電性ペースト
5 面状ヒーター材料 7a、7b 電線
10 アルミパイプ 11 面状ヒーター
10a ポリエステルフイルム 12 パイプヒーター
13 開口部 15,16 面状ヒーター
19 断熱層 20 面状ヒーター
21 電気絶縁シート 22 断熱材付きヒーター
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状あるいは薄板状で可撓性があり、100Vより遙に低い低電圧、例えは30V以下で作動する電気抵抗体、特に低温発熱用ヒーター(面状発熱体)に関し、そのヒーターは平坦な状態で使用されることは勿論、被加熱物の曲面形状に合わせて貼付けて使用することもでき、また、各種の図形やキャラクタなどの形状に切断してもその図形などに合わせて発熱するヒーターを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、湯沸かしポットや鍋型の調理器あるいはプレートヒーターなどの調理器、足温器などの健康器具、更に魚焼器やパン焼器などの小型の焼き調理器具には高温加熱用電熱ヒーターが使用されている。この電熱ヒーターは一般にニクロム線やシーズヒーターが最も多く使用されている。その他に金属箔を絶縁板に積層し、これを所定のパターンにエッチングした低温発熱用ヒーターなどが使用されている。
【0003】
これらの電熱ヒーターのうち、例えば人体を直接加熱する足温器の場合は40℃以下の低温のものであるが、これに対して焼き調理器にはかなり高温のものが使用されている。そしてこれらのヒーターの多くは100Vあるいは200Vで作動するように設計されている。
【0004】
また、凍結する道路や屋根の融雪装置には大型の電熱ヒーターが使用されているが、これにはケーブルヒーターや熱可塑性樹脂を成形した面状ヒーター、あるいは金属薄箔を電気絶縁シートに積層接着し、この金属薄箔をエッチング加工して発熱部のパターンを形成したエッチング型の面状ヒーターなどが使用されている。また、床暖房装置の加熱ヒーターとしては、低温特性と安全性に優れた熱可塑性樹脂を使用した面状ヒーターが使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
前記特許文献1に記載された面状ヒーターの素材に熱可塑性樹脂が使用されている。この熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、プリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、飽和ポリエステルの単体、あるいはそれらの混合体等の熱可塑性樹脂をベース材料として使用し、これに電気抵抗体としてカーボン微粉末を5〜25%前後添加して混合体を形成し、これを押出機で溶融してシート状(薄板状)に押出すと共に、その両縁に沿って2本の電極線を設けたものである。この面状ヒーターは最近、床暖房用の部材として多く使用されるようになっているが、その理由は、製造が連続的で効率的に行なえる上に、電流を自動的に制限する効果(PTC効果)を有するからである。
【0006】
この面状ヒーターは熱可塑性樹脂を素材としていることから、その発熱範囲が20℃〜40℃前後の比較的低温の劣化しない温度で作動するように設計されている。そしてこの面状ヒーターは温度上昇に対する熱膨張率が大きく、それに伴なって電気抵抗が急に増加するという独特の特性を持っており、この特性を「PTC特性」と称している。このPTC特性により温度がある範囲を越えて上昇すると、抵抗値の急激な増加により電流値が急速に制限され、それに伴なって温度上昇が自動的に抑制されることになる。この独特の特性のためにヒーターの過熱による火災などの事故が全く発生せず、安全な暖房装置を構成している。
【0007】
また、この面状ヒーターは素材が熱可塑性樹脂であることから、本質的に耐蝕性を持っており、例えば動物(養豚、養鶏)の養殖や植物や樹木の栽培における加熱、特に魚の養殖に使用する漁礁で育成される稚魚自体の加熱などに効果的に利用できる。
【0008】
前記特許文献1に記載された熱可塑性樹脂とカーボン微粉末とを混合し、これを押出成形機によって円筒状のシート状に押出してヒーターを製造する方法は大量生産には余り適していない。特に、口金の特性よりシートの厚さを均一に調節する操作が困難であると共にその面状ヒーターの幅の変更は困難であった。
【0009】
そこで、本発明者は、従来の押出装置の欠点を改善した押出成形装置を発明し、先にこれを提案している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第1232594号(特公昭55−31598号公報)
【特許文献2】特許代3466171号(特開平2000−17226号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記熱可塑性樹脂製の面状ヒーター(電気抵抗体)の主な用途は、床暖房装置の構成部材である。この面状ヒーターの場合は、一般的な幅が100〜450mm前後で発熱量や用途に応じて幅を変更したものを押出し、その両縁に電極線を平行に配置して一体化したもので、2本の電極線の間に電流を平面的に流すように構成したヒーターである。この床暖房用ヒーターの電源として通常は100Vの交流電圧を供給している。
【0011】
最近、自動車のシート、オートバイの搭乗者の手袋、医療用のベッド、更に、アロマオイルを少量づつ蒸発させる器具などが提案されているが、このような小発熱量の用途に使用するヒーターの要件としては、下記のものを挙げることができる。
【0012】
イ.万一漏電しても人体に実質的に電気的な損傷を与えず、かつ、火災や火傷などの危険性が殆んどない低電圧(例えば30V以下、特に12V程度)で加熱できること。
【0013】
ロ.柔軟性があり、平坦な被加熱体の表面は勿論であるが、曲面部分でも簡単に対応できることができること。
【0014】
ハ.矩形や短冊形など通常に使用される単純な形状は勿論、例えば円形、リング形、ハート形あるいは手袋の手の形などの被加熱部の形状や用途に合わせて加熱できるヒーターとすることができること。
【0015】
ニ.加熱が不要な部分、あるいは平板の所定の部分に所定の形状や大きさの開口部をあけたり、規則的に多数の窓を格子状にあけたり、更に、複雑な形状の部分を発熱させたり、あるいは発熱させない部分を形成したヒーターを簡単に製造できること。
【0016】
本発明は、薄いシート状の電気抵抗体、具体的には電熱用ヒーターである。そして例えば、円筒体や被加熱物の曲面に合わせて張り付けたり、適宜必要な寸法や形状に切断しても、「その形状に発熱することができる」低電圧用のシート状ヒーター用電気抵抗体を提供することを目的とするものである。
【0017】
なお、本発明においては、熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形したものを「導電層」と称し、また、この導電層の両面に平板状電極を接着して両電極間(シートの厚さ方向)を通電可能に構成したものを「電気抵抗体」即ち面状ヒーターと称する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するための本発明に係る低電圧で作動する電気抵抗体、即ち、面状ヒーターとその応用品は次のように構成されている。
【0019】
1)請求項1の発明は、熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して薄板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体である。
【0020】
この電気抵抗体は薄い電熱ヒーターを構成しており、薄く、ハサミやカッターナイフで切断可能であり、従来のヒーターとは異なった用途に使用できる。
【0021】
2)請求項2の発明は、前記導電層の厚さは長さや幅に比較して遙かに薄く、前記両平面電極間に通電した際、この導電層の厚さ方向に電流が流れ、前記電気抵抗体の全面積にわたって発熱する特性を有しており、切断して面積や形状を変更しても全表面が発熱する電気抵抗体であり、可撓性があり、この特性を活かした用途に使用できる。
【0022】
3)請求項3の発明は、前記電気抵抗体の厚さを0.2mmない2mmにしたことを特徴としている。この電気抵抗体は、一般のヒーターと異なって、その厚さ方向に電流を流して発熱させるものである。なお、従来のヒーターは平面方向である。
【0023】
本発明に係るヒーターの厚さは、0.2〜2.0mmの薄物であり、切断可能である上に可撓性があり、加工性に優れている。
【0024】
4)請求項4の発明は、前記平面電極と導電層との間の接着手段として導電性ペーストを使用しており、容易に切断でき、物体の形状に合わせて成形したり、また、物体の形状にあわせて張付けが可能である。
【0025】
5)請求項5の発明は、熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体において、この電気抵抗体の厚さが0.2mmないし2mmのものを前提とし、
印架する電圧は、30V以下の低電圧の交流であり、更に電力消費量が500W/m2 以下、好ましくは100〜250W/m2 である。
【0026】
本発明に係る電気抵抗体、即ち、ヒーターは、低電圧作動用であり、従って、発熱量も比較的小さく、用途な限定される可能性がある。
【0027】
6)請求項6の発明は、前記平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に設けた平面電極とからなる電気抵抗体において、前記平面電極は金属薄板ないし金属箔であることを特徴としている。
【0028】
7)請求項7の発明は、前記平面電極として、細い金属線を編織した編織物,細い金属線と耐熱性繊維を使用した編織物で構成したことを特徴としている。
【0029】
薄い金属板あるいは金属箔を電極として使用した場合、導電層との間の接着程度が問題となる。そこで本発明は、細い金属線の編織物を電極として使用すると、導電層への食い込みによる接着性が極めて良好であり、例えばそのシートに曲げが与えられても通電不良とするおそれはない。また、電気抵抗体に対して多少の伸縮に耐える性質を与えることができる。
【0030】
8)請求項8の発明は、導電層の一方に配置されたの平面電極の面積に対して、他方の面の平面電極は、1枚ではなく、小型、且つ、任意の形状や寸法に形成されている。しかもこれらの電極同士が電気的に接続しないように予備間隔をもって形成されている。
【0031】
従って、この予備間隔を利用して個々に切断・分離して多数の小型ヒーターを適宜製造することができる。
【0032】
9)請求項9の発明は、被加熱体側に配置される平面電極の外面に、前記導電層の発熱に応じて遠赤外線を放射するセラミックス層、好ましくは2層構造のセラミックス層を形成したことを特徴としている。
【0033】
このセラミックス層は、電気抵抗体であるヒーターが発生した熱エネルギーを積極的にセラミックス層側に引出し、遠赤外線として放射する機能を持っている。このセラミックス層は、2層構造で下地層(第1層)が酸化チタンなどの高温域に放射エネルギーの中心波長をもつもの(短波長のもの)を、その上地層(第2層)に酸化アルミなどの前記波長より低温域に放射エネルギーの中心波長を持つもの(長波長のもの)を配置することによって最大を効果を発揮することができる。
【0034】
10)請求項10の発明は、電気抵抗体を発泡樹脂などの断熱層に積層し、前記電気抵抗体側を加熱面としたことを特徴とするものである。
【0035】
この発明によると、発泡樹脂などの断熱層で自動車のダッシュボードを成形し、更に電気抵抗体をフロントガラス面に向けておけば、これより発する放射熱でフロントガラス面を加熱してデフロストタとして作用させることができる。
【0036】
また、前記電気抵抗体を内面に形成した合成樹脂発泡体からなる断熱性ダクトを形成することによって、このダクトに空気を供給して通過する間に空気を加熱し、この空気を暖房用に使用することもできる。
【0037】
11)請求項11の発明は、前記電気抵抗体、即ち電気ヒーターを柔らかい絶縁層で包んで保護した上で、これを人体の一部を加熱する保温部材の中に収容したことを特徴とする人体採暖具である。この人体採暖具、子供用のぬいぐるみを暖房具としたり、自動車の運転席などの暖房シートに適用できる。
【0038】
12)請求項12の発明は、前記保温部材を手袋や椅子のクッション、あるいは屋外で使用するチョッキなどに利用できる。
【0039】
本発明に係る電気抵抗体、即ち、電熱ヒーターの材料は公知の方法で製造される熱可塑性樹脂からなる導電層と、その両面に配置された平板状電極とからなる三層構造のものである。そして従来の面状ヒーターにおける面方向の電流の流れを、厚さ方向の流れに変更した点に大きな特徴がある。
【0040】
その結果、この面状ヒーターは、恰も合成樹脂シートをハサミやカッターナイフで切断して所定の形状のものとしても、分離された個々のヒーターは、ヒーターとして満足で作用することができるものである。しかも、両平板状電極の間の導電層は、その形状に合わせて発熱する特性を持っている。
【0041】
この面状ヒーターは、熱可塑性樹脂を基礎的な材料としてので本質的に可撓性、弾力があり、この特性を利用して被加熱物に合わせて成形することができる。また、リボン状にスリットしたり、面状のものに格子状に穴をあけてヒーターとしたり、あるいは任意の形状と大きさの穴を抜いたものに形成して使用することも可能である。
【0042】
また、この面状ヒーターを発泡樹脂板などの断熱材等の他の板材等の材料に積層したり、みいぐるみのようなもの、ベッドの中、あるいはシートの中などに内蔵させて使用することができる。
【0043】
この特殊な構造を持つ面状ヒーターは、電極間距離が短いことから低電圧で作動するので電気的に安全である。また、例えば、この面状ヒーターに針や釘やナイフなどを貫通させた場合、その部分だけ導電層が局部的に溶融して通電が断たれる特性があり、ショートによる局部発熱などの事故がない。
【0044】
更に、本発明の熱可塑性樹脂を主原料として製造された導電層を中心部材とする面状ヒーターは、従来の発熱線を使用したヒーターのように線状に電流を流さなく、電極間の厚さ方向に流すことから、強力な電流が流れないことから人体に影響を与える電磁波が発生することが殆んどない。
【0045】
また、導電層に少量の発泡剤を添加して発泡率が低い発泡体(あまり発泡率が高いと通電に影響が発生する)として形成することにより、クッションのある面状ヒーターとすることも可能である。
【0046】
導電層の主体を形成する熱可塑性樹脂(主原料)としては、ポリエチレン、プリプロピレン、エチレン、酢酸ビニル共重合体(EVA)、飽和ポリエステルの単体あるいはそれらの混合体である。
【0047】
また、前記導電性微粉末(副原料)はハーネスブラック、グラファイト、ケッチェンブラックあるいはアセチレンブラックから選ばれた一種あるいはその混合体などである。
【0048】
そしてこの導電性微粉末の添加量は、前記熱可塑性樹脂に対して5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%程度であることを特徴としている。
【0049】
本発明に係る電気抵抗体はシート状、且つ柔軟である。従って、この特性を活かして絞り成形が可能であり、この絞り特性を利用すると、例えば、洋式風呂のバスタブの外面にスッポリと嵌めてこのバスタブを電熱式に加熱することが十分に可能である。従って、バスタブなどの加熱手段や保温手段に適用できる。
【0050】
この成形性を利用して壁面を円錐状にした鉢形のものを成形し、これで植木鉢の底部を保温することによって、例えば屋上の植木を低電圧で加熱することができる。特に屋上の電気の管理で面倒である上に漏電や感電などの危険性がある。そこで低電圧で作動するヒーターを使用することによって、温度差が激しい屋上の植物な魚類の冬季における管理が容易となる。
【0051】
本発明の電気抵抗体の主要部を構成する導電層はシート状で薄く、しかも可撓性があり、恰もゴムシートを取り扱うと同様に扱うことができ、また、面積に関係なく単位面積当たりの発熱量は同じである。
【0052】
繰り返しになるが、本発明の電気抵抗体、即ち、面状ヒーターは下記する重要な特性を持っている。
【0053】
a.加工性に優れている。
【0054】
本発明に係る電気抵抗体は、熱可塑性樹脂をベース材料としてシートを形成し、その両面に平板状電極を配置して薄板状の三層構造としていることから、前記電極間の熱可塑性樹脂層が発熱体そのものであり、従って、電気抵抗体を微細な抵抗体ないし発熱体の集合体として把握することができる。
【0055】
その結果、シート状のものを小片に切断したり、各種の形状、例えばキャラクター等に合わせて切断することができる。また、多数の小孔をあけた多孔シートとして液体や気体を通過させながら加熱することができる。(如何なる形状に切断しても、導電層の両面に配置された平板状電極の間に給電すれば発熱させることができる。)
b.多用途に利用できる。
【0056】
例えば、面状の電気抵抗体、即ち、面状ヒーターを切断して短冊形として使用したり、これを渦巻き状に成形して異形ヒーターとしたり、また、スパイラル状に巻いた特殊なヒーターとすることができる。
【0057】
大型の装置としては、バスタブのような被加熱物の外面に沿わせて貼ってバスタブ自体を加熱したり、工業用途としては、自動車のダッシュボードの加熱空気の通路部分に貼って空気を加熱してデフロスターとして使用したり、加熱ダクトとして使用することができる。
【0058】
また、曲率半径が小さくて、単にヒーターを曲げただけでは皺が発生したり、曲面に正確に貼ることが困難な場合が発生するが、その曲がりの激しい部分に、多数の小孔やスリットをあけて面状ヒーターそのものに柔軟性を増して必要な曲げを与えることができる。
【0059】
なお、通常のヒーターにおいては、一旦決定された形状を簡単に切断して適当な形状のヒーターに変更することが不可能である。
【発明の効果】
【0060】
本発明は、熱可塑性樹脂を主原料とし、これに導電材料を所定量添加して混合し、これを溶融してスリット状の開口を持つ口金より吐出させて成形して導電性シート(導電層)を形成し、更にこの導電性シートの両面に金属薄板や金属箔を平面電極として通電可能に積層し、この2枚の平面電極の間に通電するように構成して低電圧用ヒーターを形成している。
【0061】
このヒーターの発熱材料である導電性シートは厚さが薄く、しかも、この導電性シートは厚さ方向に電流を流して発熱させるもので平面的に発熱する。この特異な機能より、導電材性シートを切断して面積を変更したり、被加熱物に合わせた形状やパターンを持つヒーターとすることが可能である。
【0062】
付言すれば、従来の加熱装置ないしヒーターは、ニクロム線を使用したものや金属箔をエッチングして発熱パターンを形成したものであるから、被加熱物に合わせて当初から設計する必要があった。これに対して本発明は、前記のように、恰も厚手の接着テープを使用する場合のように、必要な形や大きさに切断して被加熱物に沿わせて取付けることができることから、従来のヒータートとは異なった用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0064】
〔実施例1〕
A.導電性シートの製造
a)材料1:主原料として熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)の単体あるいはそれらの混合体を使用することができる。
【0065】
この実施例においては熱可塑性樹脂としてポリプロピレン40%(重量)、ポリエチレン40%、EVA10%の混合物を使用した。
【0066】
b)材料2、副原料である導電材料としてケッチエンブラック30%、グラファイト70%の混合体を使用し、前記材料1に対して13%(重量)添加した。
【0067】
c)成形方法:通常の合成樹脂の押出機と、特許第3466171号(特開2003−17226号:特許文献2)に記載された構造を持ち、2枚のシートを上下同時に押出し、両側に電極線を配置し、更にこれらのシートの軟化状態で加圧して1枚のシートに接着する高能力の面状発熱体の製造装置を利用した。
【0068】
前記成形装置において一段目(上段)の樹脂経路を閉止させ、更に2本の電極線を供給を停止させた状態で、下側のスリットより1枚の導電性シートを連続的に成形した。
【0069】
前記の口金の吐出幅を180mmとし、口金のスリットの全長にわたる間隔を微調整して0.5、1.0、1.5、2.0mmの厚さの異なる4種類のシートを押出成形し、次いでこれを約15℃の冷却水中に浸漬して導電性シート(導電層)を成形した。
B.面状ヒーターの製造
図1は、前記のようにして得られた導電性シート1を拡大して示す断面図である。この4種類の導電性シート1のうち、厚さが1.0mmのものを選び、縦・横が200mm×200mmの四角形に切断して電気抵抗シート1aとした。
【0070】
そして厚さが0.05mmの銅箔を電極材料として使用し、前記電気抵抗シート1aの両面に東洋紡(株)製の導電性ペースト4「商品名:バイロン」(ホットメルト接着剤用途)により平面電極2、3を加熱接着して三層構造の面状ヒーター材料5を製造した。なお、この銅箔は、その厚さが0.05〜0.15mmの範囲のものを使用することができるが、その厚さは導電層の厚さとの関係で決定する。
【0071】
この面状ヒーター材料5は低電圧(例えば、12Vのバッテリ、30V以下の交流電源)で作動するように設計されている。また、前記導電性ペースト4としては、溶剤が含まれているものは経時的に劣化する可能性が大きいことから、この溶剤を含まない成分の接着剤を使用するのが良い。
【0072】
電気抵抗シート5(電気抵抗体)の厚さは、ヒーターとして使用する際に電気ショート等の電気絶縁上の問題が発生する懸念がないこと、電極に配線を接続する際に導電性シート1に熱的な損傷を与えないことを考慮して、最も薄いシートの厚さを0.2mmに制限し、厚いものを2.0mmに限定しているが、実際に使用し易いものとしては0.5〜1.0mmの範囲のものである。
【0073】
また、電気抵抗シート5の柔軟性が失なわれなく、十分に可撓性を保持する意味において、最も厚いものでも2mmに限定している。この上限の厚さより厚いとと屈曲性が悪くなり、柔軟性のあるヒーターとしての機能が低下する。また、無理にこの電気抵抗シートを小半径で曲げると電気抵抗シート1aと電極2、3との間の伸びの相違から剥離が発生することから2mmを上限とした。
【0074】
しかし、面状ヒーター材料5に多数の孔をあけたものは、ある程度厚くても柔軟性があり、低電圧用ヒーターとしての機能が失なわれない範囲において厚さを変更することができる。
【0075】
次に、前記のように加工された面状ヒーター材料5を、縦・横が200mmの四角形に切断した。なお、面状ヒーター材料5を構成する電気抵抗シート1aの上下面に積層した電極2、3の周縁部を繊細なグラインダー研磨などの方法で電気的に接触がないように整理し、その研磨面に必要に応じて耐熱性と電気絶縁性を持つ塗料を塗布して電気ショートの危険性がない面状ヒーター材料5とした。この面状ヒーター材料5の標準発熱量は150W/m2 であった。
【0076】
なお、導電性シートが例えば0.4mm以下のように薄い場合には、両電極2、3がかなり接近して電気的に問題が発生する可能性もある。そこで、このような状態を回避するために、一方の平板状電極の大きさに対して他方の電極の大きさを小さくすることによって電気抵抗シート1aが露出する部分、即ち、「短絡距離」を長くする構造を採用するのが良い。
【0077】
前記のようにして製造された面状ヒーター材料5の両面の電極2、3に、それぞれ電線を連結し、これに12Vのバッテリーを接続すると短時間内に約35〜45℃に発熱した。この実験により30V以下の低電圧で作動する面状ヒーターが完成していることが分かった。
【0078】
〔実施例2〕
図3は、図2のようにして製造された面状ヒーター材料5をハート形に切断し、その周縁部を研磨して電気絶縁性を確保した異形のヒーター6(通常の製造方法ではこのようなヒーターを簡単に製造できない。)を製造した。
【0079】
このヒーター6を構成する電気抵抗シート1aの厚さは1.0mm、その面積は約25cm2 であった。この電気抵抗シート1aの両面の電極2、3にそれぞれ接続された電線7a、7bの間に20Vのバッテリを接続すると、約35〜45℃に穏やかに発熱した。
【0080】
この小型のヒーター6は、例えば、幼児の好む縫いぐるみなどの中に入れて幼児の体を低温で加熱する暖房具などの用途にに使用できる。この場合、ヒーター6が固くて縫いぐるみとして違和感がある場合には、このヒーター6に適宜、小孔を打ち抜いて柔軟性を増して使用するのが良い。
【0081】
図13は前記図1に示した面状ヒーター材料5を使用して所定の大きさに切断した電気抵抗体、即ち、面状ヒーター60であって、この面状ヒーター60は多数の突起物がある物体の表面にあてがってこの物体を加熱するような場合に使用されるもので、突起物が突出ないし貫通するようにヒーター60に多数の穴61、62、63を開口している。
【0082】
このような形状のヒーターは、本発明に係る電気抵抗体を使用して始めて目的を達成することができるもので、被加熱物の表面形状に合わせた型紙を作成し、この型紙を使用して必要な箇所をヒーターで覆って加熱することができるものである。驚くべきことに、このヒーター60の場合、切れ目64を形成しても、発熱作用には何らの影響を及ぼすものではない。極端な場合、このヒーター60を更に細かく切断して小片としてもヒーターとして利用することができる。
【0083】
なお、図3に示すヒーター6を暖房具として使用する場合は、電気絶縁性と耐水性のあるプラスチック製の柔軟な袋に収容し、シールして水密性と電気的な安全性を確保し、更に、肌と接触する面にタオル地などを設けて衛生面と安全面を確保しておくのが良い(図13のヒーターの場合も同様))。
【0084】
〔実施例3〕
図4はアルミパイプ10(厚さ2mm、直径26mm、長さ500mm)の表面にポリエステルフイルムの絶縁層10aを形成し、その上にこのパイプ10の周面を包む程度の幅を持つ面状ヒーター11を巻付けたパイプ型ヒーター12を示している。14aは電極3側の下部電極の接続部、14bは電極2側の上部電極接続部をそれぞれ示している。
【0085】
この実施例においては、この面状ヒーター11の下側の電極3は連続した平面を持つ金属箔で形成されている。これに対して、上側の電極2には開口部13をあけて電極2の面積を減少させることで、その部分の発熱量を調節したものを採用している。
【0086】
この円筒形の加熱装置は、アルミパイプ10の内部に被加熱物を収容できるので、例えば、調理品や菓子類などの食品の保温、肩こりなどの部分に当てる加熱体や薬品の保温あるいは液体の加熱などの各種の用途に使用することができる。
〔実施例4〕
図5(A)は、平面電極の一種として“網状電極”を使用した面状ヒーター15の断面図、(B)は同平面図である。
【0087】
この面状ヒーター15は実施例1において製造したものと同様な導電性シート1bを導電層として使用し、その両面に網状電極2a、2b(10μm程度の直径の細い金属線を使用した柔軟性のある金属網)を配置する。そしてこれを2枚の加熱板の間に挟持させてこの導電性シート1bの軟化温度程度(約110℃)に加熱した。所定の温度に導電性シート1bが加熱されると前記網状電極2a、3aを導電性シート1bの両面に加熱・加圧によりエンボス状に没入させて電気的接触を確保した。
【0088】
この面状ヒーター15は、平面電極として網状電極2a、3aを使用していることから導電性シート1bと網状電極2a、3aとの電気的接合は良好であることが確認された。また、網状電極2a、3aが持つ柔軟性により、ヒーター15全体として柔軟性を持っている。
【0089】
従って、各種の被加熱物の表面あるいは内面の曲面(曲率)に対応して変形させて使用できることから、微妙な曲面を持つ被加熱体の加熱でも効果的に使用できる。更に、金属線の太さと網状物の密度を選定することにより、また、クリンプ付きの金属線を使用することによって伸縮性と柔軟特性を変更できる。金属線の材質と太さの変更により、かなり柔軟性のある面状ヒーター15でも簡単に製造することができる。
【0090】
〔実施例5〕
図6は、図1(実施例1)のようにして製造した導電性シート1の表面、例えば、上側の金属箔からなる平面電極2bに各種の形状にパターン化された開口部17を配置し、下側の金属箔からなる電極には、このような開口部を形成しない通常の平板状電極2bを使用した面状ヒーター16(電気抵抗体)の正面図を示している。
【0091】
この面状ヒーター16の場合は、この開口部17を被加熱体の位置や被加熱部の大きさや加熱場所に合わせて設け、省電力型の低電圧用ヒーターとすることができる。
【0092】
〔実施例6〕
図7は、断熱材付ヒーター22の断面図を示している。このヒーター22はポリエチレンなどの合成樹脂発泡体などの断熱材からなる断熱層19の表面に導電性シート1cの両面に平面電極2d、3dをそれぞれ設けた面状ヒーター20(電気抵抗シート)を配置ないしは接合し、更に前記ヒーター20の表面全体を覆うように合成樹脂製の電気絶縁性シート21を接着部21aで接着して“断熱材付ヒーター22”を構成したものを示している。
【0093】
〔実施例7〕
図8は断面が四角形のダクト24の内面に沿わせて前記実施例6(図7)で製作した断熱材付ヒーター22を設けたもので、空気等の気体(場合によっては液体)を案内しながら加熱する装置を示している。そして、このヒーター22を曲げる部分に、スリット25を所定間隔に開口して曲げ易く形成している。
【0094】
なお、本発明に係る面状ヒーターは、導電性シートの両面に配置された平面電極の間を通電して導電性シート(電気抵抗シート)が発熱するものであるから、前記のように必要な部分にスリットを開口しても電気的には全く問題がない。
【0095】
〔実施例8〕
図9は、図5(実施例4)に示した網状電極2a、3aを導電性シート1bの両面に設けた面状ヒーター15を、電気絶縁性の袋体15aの内部に収容した面状ヒーター26をウレタン発泡樹脂などの断熱層19(断熱シート)の表面に積層(付着)して使用する加熱装置27を示す断面図である。この加熱装置27は前記図7(実施例6)に示す断熱材付ヒーター22と同様に使用することが可能なものである。
【0096】
図9に示すように断熱層19を設けた加熱装置27は、例えば、冬季における花や植物の栽培装置や水槽の加熱装置に使用することができる。
【0097】
〔実施例9〕
図10は第9の実施例に係る面状ヒーター材料30の分解斜視図である。
実施例1で製造した導電性シート1(図1)を使用し、これの裏面に全面的に銅箔からなる平面電極3を図2と同様に導電性ペーストで接着する。そして導電性シート1上面に各種の形状・大きさを持つ銅箔からなる電極2mを導電性ペーストで接着したものである。
【0098】
この電極2mは用途によって必要な形状を持っており、電極2mを構成する電極Aは長方形のもの、電極Bは四角形のもの、また、電極Cは円形のもの、そして電極Dは多数の開口部dを開口した格子形のものを示している。この面状ヒーター材料30は電極A、B、C・・の周囲に導電性シート1が露出した非通電区域Fが形成されている。
【0099】
この面状ヒーター材料30を使用する際には、非通電区域Fに切れ目を入れて前記電極A、B、C・・をそれぞれ切り離して多数の小型の面状ヒーターを一挙に形成することができる。そして両面の電極に給電用の電線を接続する。また、裸のままのヒーターでは電気的に問題がある場合には、電気絶縁性の袋体に収容し、前記電線を引出した状態で使用する。
【0100】
〔実施例10〕
図11及び図12は本発明の洋式バスタブへの応用である。
図に示すようにバスタブ31の外面に、図2に示す構造の面状ヒーター32を成形して貼付け、更にその外面を断熱層33で覆った構造を示している。
【0101】
前記面状ヒーター32は、電気抵抗シート(導電層)1aと、その両面の平面電極2、3とを積層し、更にこの電極2に表面にセラミックス層34を形成している。そしてこのセラミックス層34の表面に絶縁層35を積層して安全性を確保している。
【0102】
前記セラミックス層34は2層構造であり、電気抵抗シート1a側に酸化チタン層を、その上に酸化アルミ層をプラズマ溶射によって形成しており、この構造のセラミックス層により電気抵抗シート1aより発生した熱エネルギー(遠赤外線)はバスタブ31側に効率的に案内され、バスタブ31内の水を加熱することができる。
【0103】
本発明に係る電気抵抗シートは、如何なる形状に切断しても、その両面の平板状電極に給電することによって全面的に発熱させることができることから、前記のような用途にも簡単に適用することができるのである。
【0104】
〔実施例11〕
(他の用途への応用)
a)図3に示す実施例2においてはハート形のヒーター6を示しているが、これの用途が幼児用もしくは子供用の加熱装置であれば、幼児や子供達に人気のある各種のキャラクタに切断加工ないし整形して使用することが好ましい。勿論、このヒーター6のままでは使用することが困難であるので、必要なクッション材や保温材を併用して子供に好まれる状態のもの、安全性を高めたものとして使用する。
【0105】
b)例えばバイクのライダー用の手袋は、冬季に特に暖房が必要である。このような場合にはその手袋に内蔵できる形状に面状ヒーター材料5(図2)を適宜切断し、必要に応じて孔やスリットを形成し、その表面に電気絶縁と耐水性のある柔軟なカバー等の処理を施して手形のヒーターを形成する。
【0106】
そしてこのこの面状ヒーターを手袋の内面(特に背面側)に配置する。そしてこのヒーターにバッテリを接続して加熱して使用する。なお、図10に示すように一方の電極を多数の小型の電極で構成する場合は、この電極の形状を手袋にあわせたものに形成し、その形状に合わせて切断したものをヒーターとして使用することができる。
【0107】
c)自動車のシートへの応用
特に長距離で運転するトラックなどには、冬季に臀部が冷える。また、通常の自動車でも冬季には運転席などの暖房を必要とする。このような用途に使用するヒーターは既に提案されているが、実際には普及されているものは少ない。その理由は、ニクロム線を主体とする電線状の発熱体を使用していることから、加熱できる範囲が局部的で、広い面積を加熱することができず、また、コード状のものを人体に近接する部分に配置することは使用感が悪くなるという問題があるからである。更に、発熱線は伸縮性に欠けることから、これを解消できる特別な配線の形状が必要となる。
【0108】
このような用途に、本発明に係る電気抵抗体からなる面状ヒーターを使用する場合は、伸縮と柔軟性を持たせた構造とする。例えば、網状(好ましくはクリンプ糸を使用した網状物)からなる平面電極を使用した短冊形のヒーター材料とし、これをクッション材の中に収容したものをカバー内に収容して使用する。
【0109】
d)幼児用のキャラクター形の抱き枕の場合は、幼児が抱く枕の部分に、細い短冊形の面状ヒーターを適宜の本数配置し、これを低温で加熱するようにしても良い。
【0110】
また、病院のベッドの上に敷いて使用するシーツ形の加熱装置の場合や掛けふとん側に使用する加熱装置の場合は、面状ヒーターに柔軟性を与えることが必要である。それには前記の各種の面状ヒーターより選定し、更に各種の柔軟性付与の加工方法、構造を利用して違和感がなく、安全な加熱装置を構成するのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】導電性シート(導電層)の断面図である。
【図2】導電性シート(導電層)の両面に金属箔を貼った面状ヒーター材料の断面図である。
【図3】前記面状ヒーター材料を加工したハート形のヒーターの斜視図である。
【図4】パイプ形ヒーターの斜視図である。
【図5】(A)は網状電極を使用した面状ヒーターの断面、(B)は同平面図である。
【図6】一方の電極に多数の十字形の開口部を設けた面状ヒーターの平面図である。
【図7】断熱材付き面状ヒーターの断面図である。
【図8】断熱材付き面状ヒーターで形成した加熱ダクトの斜視図である。
【図9】断熱材付き面状ヒーターの断面図である。
【図10】多数の小型のヒーターを製作できる面状ヒーター材料の分解斜視図である。
【図11】ヒーター付き風呂桶の要部断面図である。
【図12】図11の一部拡大図である。
【図13】多数の穴をあけた面状ヒーターの斜視図である。
【符号の説明】
【0112】
1 導電性シート(導電層) 1a 電気抵抗シート
2、3 銅箔(平板電極) 4 導電性ペースト
5 面状ヒーター材料 7a、7b 電線
10 アルミパイプ 11 面状ヒーター
10a ポリエステルフイルム 12 パイプヒーター
13 開口部 15,16 面状ヒーター
19 断熱層 20 面状ヒーター
21 電気絶縁シート 22 断熱材付きヒーター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して薄板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体。
【請求項2】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して薄板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる切断容易な電気抵抗体において、前記導電層の厚さは長さや幅に比較して遙かに薄く、前記両平面電極間に通電した際、この導電層の厚さ方向に電流が流れ、前記電気抵抗体の全面積にわたって発熱する特性を有しており、切断して面積や形状を変更しても全表面が発熱する請求項1記載の電気抵抗体。
【請求項3】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる切断容易な電気抵抗体において、この電気抵抗体の厚さを0.2mmない2mmにしたことを特徴とする請求項1記載の電気抵抗体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体において、前記平面電極と導電層との間の接着手段として導電性ペーストを使用しており、容易に切断でき、物体の形状に合わせて成形したり、また、物体の形状にあわせて張付けが可能である請求項1記載の電気抵抗体。
【請求項5】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平面ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体において、この電気抵抗体の厚さが0.2mmないし2mmであり、30V以下の低電圧の交流で作動し、更に電力消費量が500W/m2 以下である請求項1記載の電気抵抗体。
【請求項6】
前記平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に設けた平面電極とからなる電気抵抗体において、前記平面電極は金属薄板ないし金属箔である請求項1ないし5に記載の電気抵抗体。
【請求項7】
前記平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に設けた平面電極とからなる電気抵抗体において、前記平面電極は細い金属線を編織した編織物あるいは細い金属線と耐熱性繊維を使用した編織物で構成されている請求項1ないし6記載の電気抵抗体。
【請求項8】
前記平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体において、一方の平面電極の面積に対して、他方の平面電極は、小型、且つ、任意の形状や寸法に形成され、しかもこれらの電極同士が電気的に接続しないように予備間隔をもって配列されており、この予備間隔を利用して個々に分離できるように構成した請求項1ないし7に記載の電気抵抗体。
【請求項9】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体において、被加熱体側に配置される平面電極の外面に、前記導電層の発熱に応じて遠赤外線を放射するセラミックス層を形成した請求項1記載の電気抵抗体。
【請求項10】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体と、この電気抵抗体の一面に断熱層を形成し、この断熱層と反対側の面を放熱面としたことを特徴とする電気抵抗体。
【請求項11】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体を絶縁層により保護した上で、人体の一部を加熱する保温部材の中に収容したことを特徴とする人体採暖具。
【請求項12】
前記保温部材は、手袋、椅子のクッション、チョッキなどである請求項11記載の採暖具。
【請求項13】
前記電気抵抗体の一面に断熱層を積層した複合材を使用した空気を通過させる流体案内部材の壁、空気を加熱する部屋の壁などに配置した請求項10記載の電気抵抗体。
【請求項1】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して薄板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体。
【請求項2】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して薄板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる切断容易な電気抵抗体において、前記導電層の厚さは長さや幅に比較して遙かに薄く、前記両平面電極間に通電した際、この導電層の厚さ方向に電流が流れ、前記電気抵抗体の全面積にわたって発熱する特性を有しており、切断して面積や形状を変更しても全表面が発熱する請求項1記載の電気抵抗体。
【請求項3】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる切断容易な電気抵抗体において、この電気抵抗体の厚さを0.2mmない2mmにしたことを特徴とする請求項1記載の電気抵抗体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体において、前記平面電極と導電層との間の接着手段として導電性ペーストを使用しており、容易に切断でき、物体の形状に合わせて成形したり、また、物体の形状にあわせて張付けが可能である請求項1記載の電気抵抗体。
【請求項5】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平面ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体において、この電気抵抗体の厚さが0.2mmないし2mmであり、30V以下の低電圧の交流で作動し、更に電力消費量が500W/m2 以下である請求項1記載の電気抵抗体。
【請求項6】
前記平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に設けた平面電極とからなる電気抵抗体において、前記平面電極は金属薄板ないし金属箔である請求項1ないし5に記載の電気抵抗体。
【請求項7】
前記平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に設けた平面電極とからなる電気抵抗体において、前記平面電極は細い金属線を編織した編織物あるいは細い金属線と耐熱性繊維を使用した編織物で構成されている請求項1ないし6記載の電気抵抗体。
【請求項8】
前記平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体において、一方の平面電極の面積に対して、他方の平面電極は、小型、且つ、任意の形状や寸法に形成され、しかもこれらの電極同士が電気的に接続しないように予備間隔をもって配列されており、この予備間隔を利用して個々に分離できるように構成した請求項1ないし7に記載の電気抵抗体。
【請求項9】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体において、被加熱体側に配置される平面電極の外面に、前記導電層の発熱に応じて遠赤外線を放射するセラミックス層を形成した請求項1記載の電気抵抗体。
【請求項10】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体と、この電気抵抗体の一面に断熱層を形成し、この断熱層と反対側の面を放熱面としたことを特徴とする電気抵抗体。
【請求項11】
熱可塑性樹脂と導電性微粉末との混合体を溶融して平板状ないしシート状に成形した導電層と、この導電層の両面に形成した平面電極とからなる電気抵抗体を絶縁層により保護した上で、人体の一部を加熱する保温部材の中に収容したことを特徴とする人体採暖具。
【請求項12】
前記保温部材は、手袋、椅子のクッション、チョッキなどである請求項11記載の採暖具。
【請求項13】
前記電気抵抗体の一面に断熱層を積層した複合材を使用した空気を通過させる流体案内部材の壁、空気を加熱する部屋の壁などに配置した請求項10記載の電気抵抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−54131(P2006−54131A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235767(P2004−235767)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(592132981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(592132981)
【Fターム(参考)】
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