説明

電気掃除機

【課題】電動機によって進行方向の順方向または逆方向に回動される回転清掃体を備えつつ、吸込口体が走行する被掃除面の性質に応じて電動送風機の運転出力を制御可能な電気掃除機を提案する。
【解決手段】電気掃除機1は、負圧を発生させる電動送風機13と、電動送風機13の排気に含まれる臭気を検出する臭気検出部21と、臭気検出部21で検出された臭気に基づいて電動送風機13の運転制御する制御部37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送風機の故障を早期に検出可能な電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気掃除機は、被掃除面から塵埃を除去するための吸引力を発生させる電動送風機を備える。電動送風機は、遠心ファンと、遠心ファンを駆動させるモータ部とを備える。電動送風機は、モータ部が駆動されると遠心ファンが回転され、空気を吸い込んで負圧を発生させる。この負圧が電気掃除機の吸引力に利用される。
【0003】
電動送風機のモータ部は、一般に電動モータで構成される。モータ部は、遠心ファン部が設けられた回転軸と、回転軸が回転自在に軸支されたモータケース部と、回転軸に設けられた回転子と、モータケース部に設けられた固定子とから構成される。回転子は、ロータコイルと、ロータコイルに接続された整流子とから構成される。整流子には、モータケース部に設けられたカーボンブラシが当接されて電気的に結合される。ロータコイルには、カーボンブラシから整流子を経て電気が供給される。
【0004】
ここで、整流子と、カーボンブラシとの摩擦状態に不具合が生じると、火花が生じる虞がある。このような状態で電動送風機の運転を継続すると、発煙や発火に至る虞がある。
【0005】
そこで、ガスセンサを用いて整流子とカーボンブラシとの摩擦状態の健全性を監視し、発煙を検出すると電動送風機の運転を停止させる電気掃除機が知られる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−192280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動送風機が異物を吸い込むなどしてロックすると、固定子や回転子のコイル部分が発熱し、層間短絡(レアショート)する虞がある。このような不具合モードにおいて、従来の電気掃除機では、初期発煙の煙が検出されるまでには相当の時間を要するため、ガスセンサで異常が検出された時点では電動送風機が発火に至る虞がある。
【0007】
一方、電動送風機がレアショートに至る前兆として、絶縁被覆が溶損される独特な臭気が生じることが知られる。また、電動送風機の寿命末期におけるカーボンブラシの損耗においても同様に独特な臭気が生じる。
【0008】
本発明は、電動送風機の故障を早期に検出可能で、極めて安全性の高い電気掃除機を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため本発明では、掃除機本体と、前記掃除機本体に収容された電動送風機と、前記電動送風機の排気口よりも下流の流路に配置され、前記流路中の空気に含まれる前記電動送風機のモータ部の異常加熱に伴い発生する臭気を検出する臭気検出部と、前記臭気検出部で検出された臭気に基づいて、前記電動送風機に供給される電力を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電動送風機の故障を早期に検出可能で、極めて安全性の高い電気掃除機を提案できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る電気掃除機の実施形態について図1から図4を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る電気掃除機の外観を示した斜視図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1は、掃除機本体2と、集塵ホース3と、手元操作管4と、把持部5と、操作部6と、延長管7と、吸込口体8とを備える。
【0014】
掃除機本体2には接続口2aが形成される。掃除機本体2の内部には、接続口2aに連通された集塵室10が形成される。掃除機本体2の前方上部には、蓋ケース11が設けられる。蓋ケース11は、集塵室10の上部を開閉自在に覆う蓋である。集塵室10には分離集塵装置12が着脱自在に収容される。また、掃除機本体2には、電動送風機13が収容される。電動送風機13は、集塵室10に連通される。掃除機本体2は、電源コード14を備える。電源コード14の自由端部には、電源プラグ15が形成される。
【0015】
集塵ホース3は可撓性を有し、湾曲可能な細長略円筒状に形成される。集塵ホース3の一端は接続口2aに着脱可能に接続されて、掃除機本体2の内部に連通される。
【0016】
手元操作管4の一端は集塵ホース3の他端に設けられ、集塵ホース3を介して掃除機本体2の内部に連通される。
【0017】
把持部5は電気掃除機1の使用者が把持して電気掃除機1を操作するものである。把持部5は手元操作管4の他端部から、集塵ホース3が設けられた手元操作管4の一端部に向かって、湾曲させて突設される。
【0018】
操作部6は把持部5に設けられる。操作部6が電気掃除機1の使用者に操作されると、電気掃除機1は複数の駆動モードに設定される。操作部6は電気掃除機1の運転を停止させる切スイッチ6aや電気掃除機1の運転を開始させる起動スイッチ6bなどを有する。
【0019】
延長管7は、伸縮可能な細長略円筒状に形成される。延長管7の一端は手元操作管4の他端に着脱可能に接続されて、手元操作管4および集塵ホース3を介して掃除機本体2の内部に連通される。
【0020】
吸込口体8は、延長管7の一端に着脱可能に接続されて、延長管7、手元操作管4および集塵ホース3を介して掃除機本体2の内部に連通される。
【0021】
電気掃除機1を運転すると、電動送風機13が作動して、掃除機本体2の内に負圧が作用する。この負圧は接続口2aから集塵ホース3と手元操作管4と延長管7とを経て吸込口体8に作用する。そうすると、電気掃除機1は吸込口体8から空気とともに床などの被掃除面に溜まった塵埃を吸い込んで被掃除面を掃除する。吸込口体8に吸い込まれた含塵空気は、掃除機本体2に収容された分離集塵装置12によって空気と塵埃とに分離される。分離された塵埃は分離集塵装置12に集塵される。他方、分離された空気は、電動送風機13に吸い込まれて、掃除機本体2から吐出される。
【0022】
図2は、本発明に係る電気掃除機の平断面図である。
【0023】
図2に示すように、電気掃除機1の掃除機本体2は、分離集塵装置12が収容された集塵室10と、電動送風機13が収容された電動送風機室17と、コードリール18が収容されたコードリール室19とが区画される。集塵室10は、掃除機本体2の前側に配置される。電動送風機室17と、コードリール室19とは、掃除機本体2の後側に並設される。電動送風機室17には、臭気検出部21が設けられる。臭気検出部21は、電動送風機13の排気に含まれる臭気の検出に適した任意の位置に設けることができる。具体的には、臭気検出部21は、電動送風機13の排気口22よりも下流の流路を構成する電動送風機室17と、コードリール室19との少なくとも一方に設けられる。
【0024】
分離集塵装置12は、いわゆる紙パックフィルタ等の集塵フィルタである。分離集塵装置12は、接続口2aに連通される。
【0025】
集塵室10は、分離集塵装置12を介して接続口2aに連通される。
【0026】
電動送風機13は、モータ部23と、モータ部23によって駆動される遠心ファン部24とを備える。遠心ファン部24の吸込口25は、集塵室10に連通され、排気口22は、電動送風機室17内に配置される。
【0027】
電動送風機室17は、掃除機本体2の後部に形成された複数の本体排気口28によって、掃除機本体2の外部に連通される。
【0028】
コードリール18は、樹脂材料で形成される。コードリール18には、電源コード14が巻き取られる。コードリール18は、電源コード14を巻き取る方向へ付勢され、コードリール室19に回動自在に軸支される。また、コードリール18は、電源コード14と電動送風機13とを電気的に接続する回転接点部29を備える。回転接点部29は、コードリール18の回転軸の一方の端部に配置される。
【0029】
コードリール室19は、区画壁31が有する連通口32を介して電動送風機室17に連通される。区画壁31は、コードリール室19と、電動送風機室17とを区画する。コードリール室19は、掃除機本体2の後部に形成された電源コード14の引出口33を有する。
【0030】
臭気検出部21は、電動送風機室17内の空気に含まれる臭気を検出する。具体的には、臭気検出部21は、電動送風機13が異物を吸い込むなどしてロックし、電動送風機13に過電流が流れて温度が上昇した際に、固定子や回転子のコイル部分の異常発熱に伴って絶縁被覆が発生させるカーボン成分を含む臭気を検出する。
【0031】
また、臭気検出部21は、コードリール室19に設けても良い。この場合には、臭気検出部21は、電動送風機13が発生させる臭気に加えて、コードリール18の回転接点部29の不具合や、電源コード14の発熱によるコードリール18の熱変形にともなう臭気を検出する。
【0032】
電動送風機13が運転されると、電動送風機13は、吸込口25から空気を吸い込み、排気口から空気を排気する。これによって電動送風機13の吸込口25側には負圧が生じる。電動送風機13が発生させた負圧は、集塵室10と、分離集塵装置12と、接続口2aとに順次に作用する。他方、電動送風機13の排気口22から排気された空気の一部は、電動送風機室17の本体排気口28から掃除機本体2の外部に排気される。また、電動送風機室17に排気された空気の他の部分は、区画壁31の連通口32からコードリール室19に案内され、コードリール18および電源コード14を冷却しつつ引出口33から掃除機本体2の外部に排気される。
【0033】
このとき、臭気検出部21は、電動送風機13の排気口22の下流の流路を構成する電動送風機室17とコードリール室19との少なくとも一方において、排気に含まれる臭気を検出する。
【0034】
図3は、本発明に係る電気掃除機のブロック図である。
【0035】
図3に示すように、電気掃除機1は、操作部6と、電動送風機13と、スイッチング素子35と、制御用電源回路36と、臭気検出部21と、制御部37とを備える。電動送風機13と、スイッチング素子35とは直列に接続される。
【0036】
操作部6は、電気掃除機1の使用者が入力した操作内容に対応する操作信号を制御部37に出力する。具体的には、操作部6は、電気掃除機1の使用者が切スイッチ6aを操作すると、電気掃除機1の停止信号Soffを制御部37に出力する。また、操作部6は、電気掃除機1の使用者が起動スイッチ6bを操作すると電気掃除機1の起動信号Sonを制御部37に出力する。
【0037】
電動送風機13は、スイッチング素子35を介して商用電源Eに接続される。
【0038】
スイッチング素子35は、制御部37の制御に応じて電動送風機13に電力を供給する。また、スイッチング素子35は、電力制御用に双方向サイリスタや逆阻止3端子サイリスタなどの素子が用いられる。スイッチング素子35のゲート端子は、制御部37に接続される。
【0039】
制御用電源回路36は、商用交流電源Eの電圧を5V程度に降圧させた直流電圧を制御部37に供給する。
【0040】
臭気検出部21は、例えば電力により動作する半導体型の臭気センサから構成される。臭気検出部21は、制御部37に電気的に接続される。
【0041】
制御部37は、操作部6が出力した操作信号に応じてスイッチング素子35を介して電動送風機13の運転を開始または停止する。具体的には、操作部6が起動信号Sonを出力すると、電動送風機13の運転を開始する。他方、操作部6が停止信号Soffを出力すると、電動送風機13の運転を停止する。制御部37は、商用交流電源Eが半サイクルごとに0VからONするまでの時間、すなわち位相角をトリガーレベル値とするトリガー信号Stをスイッチング素子35に出力して、電動送風機13に供給される電力を制御し、電動送風機13の運転出力を制御する。
【0042】
また、制御部37は、臭気検出部21で検出された臭気sに基づいてスイッチング素子35を介して電動送風機13の運転制御する。制御部37は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを用いた記憶部38を備える。記憶部38には、臭気検出部21で検出された臭気sが判定閾値St(所定の閾値)以上になったか否かが記憶される。具体的には、記憶部38には、臭気正常または臭気異常のいずれかの状態値が記憶される。記憶部38には、初期値として臭気正常が記憶される。一方、制御部37は、臭気検出部21で検出された臭気sが、判定閾値St以上になると、記憶部38に臭気異常を記憶する。制御部37は、記憶部38が臭気異常を記憶していれば、記憶内容を書き換えない。記憶部38は、初期化されるまでは、記憶の内容を維持する。
【0043】
さらに、制御部37は、記憶部38の記憶内容が臭気異常の場合には、スイッチング素子35を介して電動送風機13に供給される電力を制御し、電動送風機13を停止させる。
【0044】
図4は、本発明に係る電気掃除機の電動送風機の運転制御のフローチャートである。
【0045】
図4に示すように、電気掃除機1は、操作部6の起動スイッチ6bが操作されると、電動送風機13の起動信号Sonが制御部37に入力される。そうすると、制御部37は、電動送風機13の運転制御を開始する。
【0046】
先ず、ステップS1では、制御部37は、記憶部38の記憶内容が臭気正常か否かを確認する。臭気正常の場合には、ステップS2に進む。その他の場合には、ステップS5に進む。
【0047】
次に、ステップS2では、制御部37は、臭気検出部21で検出された臭気sを取得する。
【0048】
次に、ステップS3では、制御部37は、ステップS2で取得した臭気sと、判定閾値Stとを比較して、臭気sが判定閾値Stよりも小さいか否かを判断する。臭気sが判定閾値Stよりも小さい場合は、ステップS2に戻る。その他の場合は、ステップS4に進む。
【0049】
次に、ステップS4では、制御部37は、記憶部38に臭気異常を記憶する。
【0050】
次に、ステップS5では、制御部37は、スイッチング素子35を介して電動送風機13に供給される電力を制御して、電動送風機13を停止し、制御を終了する。
【0051】
本実施形態に係る電気掃除機1によれば、制御部37は、電動送風機13がロックし、固定子や回転子のコイル部分が発熱したり、コードリール18の回転接点部29の不具合や、電源コード14の発熱によりコードリールが熱変形し始めたりすると、発煙や発火に至る前に絶縁被覆が溶損される独特な臭気や、樹脂製のコードリール18から発せられる臭気を臭気検出部21で検出して、電動送風機13の電源供給を遮断できる。したがって、電気掃除機1は、電動送風機13や電源コード14等の異常を早期に検出し、未然に発煙や発火を防ぐことができる。
【0052】
また、本実施形態に係る電気掃除機1によれば、制御部37は、一旦臭気異常と判断されると、記憶部38に臭気異常の状態値を記憶することで、電気掃除機1の使用者が、初期異常状態の電気掃除機1を誤って使用することを回避できる。
【0053】
したがって、本発明に係る電気掃除機1によれば、電動送風機の故障を早期に検出可能で、極めて安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る電気掃除機の外観を示した斜視図。
【図2】本発明に係る電気掃除機の平断面図。
【図3】本発明に係る電気掃除機のブロック図。
【図4】本発明に係る電気掃除機の電動送風機の運転制御のフローチャート。
【符号の説明】
【0055】
1 電気掃除機
2 掃除機本体
2a 接続口
3 集塵ホース
4 手元操作管
5 把持部
6 操作部
6a 切スイッチ
6b 起動スイッチ
7 延長管
8 吸込口体
10 集塵室
11 蓋ケース
12 分離集塵装置
13 電動送風機
14 電源コード
15 電源プラグ
17 電動送風機室
18 コードリール
19 コードリール室
21 臭気検出部
22 排気口
23 モータ部
24 遠心ファン部
25 吸込口
28 本体排気口
29 回転接点部
31 区画壁
32 連通口
33 引出口
35 スイッチング素子
36 制御用電源回路
37 制御部
38 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃除機本体と、
前記掃除機本体に収容された電動送風機と、
前記電動送風機の排気口よりも下流の流路に配置され、前記流路中の空気に含まれる前記電動送風機のモータ部の異常加熱に伴い発生する臭気を検出する臭気検出部と、
前記臭気検出部で検出された臭気に基づいて、前記電動送風機に供給される電力を制御する制御部とを備えたことを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記臭気検出部で検出された臭気が所定の閾値以上になると、前記電動送風機に供給される電力を遮断することを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記制御部は、
前記臭気検出部で検出された臭気が所定の閾値以上か否かを記憶する記憶部を備え、
前記記憶部に前記臭気検出部で検出された臭気が所定の閾値以上になったことが記憶されると、前記電動送風機に供給される電力の遮断状態を保つことを特徴とする請求項2に記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−75504(P2010−75504A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247981(P2008−247981)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】