説明

電気接点構造

【課題】本発明は電流を大きくすることができ、相手物との最適化も図れ、低背化も可能でコストアップにも繋がらない電気接点構造を提供する。
【解決手段】本目的はポリイミド15層を挟むように銅(Cu)箔40が表裏両側に配置されるFPC14に、一方方向からエッチング加工若しくはレーザ加工により所定の位置に複数のブラインドホール加工を施すことで他方(裏側)の銅箔40を露出させ、ブラインドホール27を加工すると同時に複数のスルーホール加工も行い、表裏両側の銅箔40上とブラインドホール27内とスルーホール22内に銅めっき50を施し、ブラインドホール27並びにスルーホール22を介して表裏両側の銅箔40を導通させることにより達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フレキシブルプリント基板(以下「FPC」という)を用いた電気接点構造に関するもので、特に相手物の形状に適合した形状で且つ、表裏両面側の銅箔を導通させたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板と電子部品との間の接触にあたっては、一方が平面上の場合、もう一方を突出させる(例えば、略半球状)場合が多々あり、また、場合によっては一方が突出している場合、もう一方を平面状にすることがある。
本出願人は、特許文献1(特開2004−335666)のような構造の電気接点を提案していたが、電気接点間の間隔が狭小化すると、ある一定高さの接点を形成しようとすると、接点の径も大きくなり隣接する電気接点同士が近接してしまい、しいては絶縁不良や短絡に繋がると言った課題や、隣接する電気接点同士が近接しないようにすると、所定の高さが得られないと言った課題があったため、特許文献2(特願2005−277320)のような構造のものをさらに提案した。
また、従来は、図4に示すように、下述する特許文献1や特許文献2のような構造の接点を、FPCのどちらか一方か若しくは両方の銅箔上に配置することにより電気接点を設けていた。
【特許文献1】特開2004−335666の要約によると、止め孔上の導電体自体がコネクタの接点になるよう、止め孔中に金属を充填させる工程に連続して、止め孔上の導電体が盛り上がり半球状となるように、金属を析出することを目的に、止め孔内は当初低電流密度、例えば0.5〜10A/dm2の電流密度でメッキを行い、止め孔上面に達した後に電流を調整して、当初の5倍〜10倍の電流密度を保ちながら、止め孔上の導電体が径方向の大きさと高さ方向の大きさの比が略1対1に近い半球状となるように、金属を析出する構造のものが開示されている。
【特許文献2】特願2005−277320の要約によると、電気接点同士の接続不良に繋がることがなく、所定の高さを形成することができる電気接点とその電気接点の製造方法を提供することを目的とし、電気接点は銅箔上に突出する電気接点であって、銅箔上に金属ペースト層を塗布するとともに金属ペースト層に金属ボールを焼結固定し、少なくとも金属ボールの相手物と接触する部分に金めっきを施す構造の電気接点と、電気接点の製造方法は銅箔上に突出する電気接点の製造方法において、第一工程として銅箔上に所定の大きさの金属ペースト層を塗布し、第二工程として金属ペースト層上に金属ボールを搭載した後に、金属ボールを銅箔方向に加圧し、第三工程として所定の温度により金属ボールを焼結固定し、第四工程として少なくとも金属ボールの相手物との接触部分に金めっきを施す電気接点の製造方法とが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、電気・電子機器の小型化が進むにつれ、電気コネクタも小型化や狭小ピッチ化が進んできている。また、電気接点としては、相手物の形状に適合するような最適化の要求もある。
従来で述べたように、FPCの銅箔上に特許文献1や特許文献2の構造の接点を配置する構造の電気接点では、銅箔が薄いために大きな電流を流すことが出来ないと言った課題があった。銅箔を厚くすれば、大きな電流を流すことはできるが、屈曲・柔軟性が阻害されるため銅箔を厚くすることは出来なかった。
また、特許文献1や特許文献2の構造の接点をFPCの銅箔上に配置したのでは、 銅めっきとカバーレイとの密着性が悪いためにカバーレイに特殊な処理を施す必要が生じるので非常に手間が掛かっており、しいてはコストアップに繋がってしまう。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、電流を大きくすることができ、相手物との接触最適化も図れ、コストアップにも繋がらない電気接点構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、ポリイミド15層を挟むように銅(Cu)箔40が表裏両側に配置されるフレキシブルプリント基板(FPC)14に、一方方向からエッチング加工若しくはレーザ加工により所定の位置に複数のブラインドホール加工を施すことで他方(裏側)の銅箔40を露出させ、前記ブラインドホール27を加工すると同時に複数のスルーホール加工も行い、表裏両側の銅箔40上と前記ブラインドホール27内と前記スルーホール22内に銅めっき50を施し、前記ブラインドホール27並びに前記スルーホール22を介して表裏両側の銅箔40を導通させることにより達成できる。
【0006】
請求項2の電気接点構造は、前記ブラインドホール27内に、相手物の形状に適合した形状の接点を設ける。
また、請求項3の電気接点構造は、前記ブラインドホール27内に、金属ボール44を金属ペースト42若しくは導電性ペーストにより硬化固定する。
さらに、請求項4の電気接点構造は、前記ブラインドホール27内に、前記銅箔表面までめっき54を施し、前記めっき上に山並み状の突起接点45を少なくとも1個以上設ける。
【0007】
請求項5の電気接点構造は、少なくとも前記金属ボール44若しくは前記突起接点の相手物と接触する部分に貴金属めっき52を施す。
また、請求項6の電気接点構造は、前記銅めっき50上に、前記ブラインドホール27と前記スルーホール22とを除いた部分にカバーレイ46を配置する。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明のような電気接点構造を用いると、次のような優れた顕著な効果が得られる。
(1)ポリイミド15層を挟むように銅(Cu)箔40が表裏両側に配置されるFPC14に、一方方向からエッチング加工若しくはレーザ加工により所定の位置に複数のブラインドホール加工を施すことで他方(裏側)の銅箔40を露出させ、前記ブラインドホール27を加工すると同時に複数のスルーホール加工も行い、表裏両側の銅箔40上と前記ブラインドホール27内と前記スルーホール22内に銅めっき50を施し、前記ブラインドホール27並びに前記スルーホール22を介して表裏両側の銅箔40を導通させているので、大きな電流を流すことができ、電気コネクタの低背も可能でコストアップにも繋がらないし、一つの信号に対して回路構成が2回路となるため万が一の銅箔回路断線に対する信頼性冗長度が倍増されることになる。
(2)請求項2の電気接点構造は、前記ブラインドホール27内に、相手物の形状に適合した形状の接点を設けているので、相手物との最適化も可能で、大きな電流を流すことができ、電気コネクタ10の低背も可能でコストアップにも繋がらないし、一つの信号に対して回路構成が2回路となるため万が一の銅箔回路断線に対する信頼性冗長度が倍増されることになる。
(3)請求項3の電気接点構造は、前記ブラインドホール27内に、金属ボール44を金属ペースト42若しくは導電性ペーストにより硬化固定しているので、相手物との接触最適化も可能で、大きな電流を流すことができ、電気コネクタ10の低背も可能でコストアップにも繋がらないし、一つの信号に対して回路構成が2回路となるため万が一の銅箔回路断線に対する信頼性冗長度が倍増されることになる。
(4)請求項4の電気接点構造は、前記ブラインドホール27内に、前記銅箔表面までめっきを施し、前記めっき上に山並み状の突起接点45を少なくとも1個以上設けているので、相手物との接触最適化も可能で、大きな電流を流すことができ、電気コネクタ10の低背も可能でコストアップにも繋がらないし、一つの信号に対して回路構成が2回路となるため万が一の銅箔回路断線に対する信頼性冗長度が倍増されることになる。
(5)請求項5の電気接点構造は、少なくとも前記金属ボール44若しくは前記突起接点の相手物と接触する部分に貴金属めっき52を施しているので、安定した導通を得ることができる。
(6)請求項6の電気接点構造は、前記銅めっき50上に、前記ブラインドホール27と前記スルーホール22とを除いた部分にカバーレイ46を配置しているので、相手物との接触最適化も可能で、大きな電流を流すことができ、電気コネクタ10の低背も可能でコストアップにも繋がらないし、一つの信号に対して回路構成が2回路となるため万が一の銅箔回路断線に対する信頼性冗長度が倍増されることになり、金属ボール44の保持強度アップにもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1から図3に基づいて、本発明の電気接点構造について説明する。本実施例では本発明の電気接点構造を用いた電気コネクタ10について説明する。
図1は本発明の電気接点構造を説明する図面である。図2(A)はブラインドホール上に金属ボールを配置した断面図であり、(B)はブラインドホールに突起接点を設けた断面図であり、(C)は(B)のA−Aで断面した断面図である。図3は一方面側のブラインドホール上に突起接点を配置し、もう一方面側のブラインドホール上に金属ボールを配置したコネクタの断面図である。
一実施例の電気コネクタは、少なくともエラストマー16と導電細線12とFPC14層とを備えている。
【0010】
まず、図1に基づいて、電気接点構造について説明する。ポリイミド15層を挟むように銅(Cu)箔40が表裏両側に配置されるFPC14に、一方方向からエッチング加工若しくはレーザ加工により所定の位置に複数のブラインドホール加工を施すことで他方(裏側)の銅箔40を露出させ、前記ブラインドホール27を加工すると同時に複数のスルーホール加工も行い、表裏両側の銅箔40上と前記ブラインドホール27内と前記スルーホール22内に銅めっき50を施し、前記ブラインドホール27並びに前記スルーホール22を介して表裏両側の銅箔40を導通させる構造になっている。表裏両側の銅箔40を導通させることで電流を大きくすることができるようになる。
【0011】
前記ブラインドホール27内には、相手物の形状に適合するような接点が設けることで、接点の最適化が図られている。例えば、相手物が平坦な場合には前記ブラインドホール27内に設ける接点としては図2(A)のように金属ボール44を配置させることで突出させている。また、相手物が突出している場合には図2(B)のように山並み状の突起接点45を設けている。
【0012】
図2(A)の金属ボール44を用いた電気接点について説明する。前記ブラインドホール27内に金属ペースト層42若しくは導電性ペースト層を塗布しておき、その上に金属ボール44を押圧しながら前記銅めっきと接触した状態で硬化固定する。前記金属ボール44には少なくとも相手物との接触部分に導電性のよい貴金属めっき52が施すことが望ましい。
【0013】
図2(B)の突起接点45を用いた電気接点について説明する。前記ブラインドホール27内に、前記銅箔40表面までめっき54を施し、前記めっき上に山並み状の突起接点45を少なくとも1個以上設けている。山並み状突起接点45は、まず銅めっきを前記銅箔40表面まで施した後にエッチングによって図2(B)のような形状に形成する。前記突起接点45には少なくとも相手物との接触部分に導電性のよい貴金属めっき52が施すことが望ましい。
【0014】
前記銅めっき50上に、前記ブラインドホール27と前記スルーホール22とを除いた部分にカバーレイ46を配置する。カバーレイ46を配置することで、前記金属ボール44を安定した位置にバランス良く硬化固定することができ、前記カバーレイ46の開口角度は30°〜60°にすることが望ましい。また、前記突起接点45を形成する意味でも、前記ブラインドホール27内に銅めっきを施し易くなる。
【0015】
次に、FPC層14について説明する。前記FPC14は、ポリイミド15層を挟むように銅(Cu)箔40が表裏両側に配置されている。前記相手物の接点に対応する位置に、電気接点20を設けるために一方方向からエッチング加工若しくはレーザ加工によりブラインドホール加工を施すことで他方(裏側)の銅箔40を露出させ、前記ブラインドホール27を加工すると同時に複数のスルーホール加工も行う。その後に、表裏両側の銅箔40上と前記ブラインドホール27内と前記スルーホール22内に銅めっき50を施し、前記ブラインドホール27並びに前記スルーホール22を介して表裏両側の銅箔40を導通させる。その後に、前記電気接点20の形状の最適化を図る意味から相手物の接点形状に適合するように、上述したような金属ボール44の配置や突起接点45の形成を行なっている。金属ボール44の大きさや突起接点45の大きさは接続安定性や電気コネクタ10の小型化や電気接点20間のピッチ等を考慮して適宜設計する。
【0016】
前記FPC14の電気接点20の周囲には、略U字形状をしたスリット22が設けられている。該スリット22は、相手コネクタの接点と接続した際に、前記エラストマー16の弾性によって、前記電気コネクタ10の電気接点20が摺動するようにするためのものである。前記スリット22の大きさは、このような役割とコネクタ10の小型化などを考慮して適宜設計する。前記電気接点20は、図1のように銅めっき50によってスルーホール26と接続され、該スルーホール26は前記導電細線12と接続する部分である。前記スルーホール26の大きさは、前記導電細線12が入り、半田付け等によって接続できればよく、コネクタ10の小型化や導電細線12の強度や接続性を考慮して適宜設計する。
【0017】
次に、導電細線12について説明する。前記導電細線12は略円柱状をしており、両端部が細い径で、中央部が太い径といった2段になっている。前記導電細線12は金属製であり、導電特性の良い金属、例えば黄銅製棒状体を所定寸法に切断し、両端部分を更に小径になるように加工したものである。両端部分は前記スルーホール26に入る部分であり、両端部分の径は前記スルーホール26に入り、半田付けによって接続できるように適宜設計している。中央部分の径は、前記エラストマー16に埋設する部分であり、コネクタ10の小型化や狭ピッチ化や導電性を考慮して適宜設計している。それぞれの径部分の長さは、前記FPC14の厚さや前記エラストマー16の厚さを考慮して適宜設計する。
【0018】
次に、エラストマー16について説明する。前記エラストマー16には、前記導電細線12を挿入するための挿入孔28が設けられ、該挿入孔28の大きさは前記導電細線12が挿入できればよく、前記導電細線12の保持力等を考慮して適宜設計する。本実施例では、前記導電細線12の中央部分の径より0.02mm程度小さくしている。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の活用例としては、回路基板と電子部品との間に嵌挿される電気コネクタ10に活用され、特に相手物の形状に適合した形状で且つ、表裏両面側の銅箔を導通させたものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電気接点構造を説明する図面である。
【図2】(A) ブラインドホール上に金属ボールを配置した断面図である。(B) ブラインドホールに突起接点を設けた断面図である。(C) (B)のA−Aで断面した断面図である。
【図3】一方面側のブラインドホール上に突起接点を配置し、もう一方面側のブラインドホール上に金属ボールを配置したコネクタの断面図である。
【図4】従来の電気接点構造を示す図面である。
【符号の説明】
【0021】
10 電気コネクタ
12 導電細線
14 FPC(フレキシブルプリント基板)
15 ポリイミド
16 エラストマー
18 電気接触子
20 電気接点
22 U字状スリット
26 スルーホール
27 ブラインドホール
28 挿入孔
40 銅箔
42 金属ペースト層
44 金属ボール
45 突起接点
46 カバーレイ
48 貫通孔
50 銅めっき
52 貴金属めっき
54 めっき

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド層を挟むように銅(Cu)箔が表裏両側に配置されるフレキシブルプリント基板(FPC)に、一方方向からエッチング加工若しくはレーザ加工により所定の位置に複数のブラインドホール加工を施すことで他方(裏側)の銅箔を露出させ、前記ブラインドホールを加工すると同時に複数のスルーホール加工も行い、表裏両側の銅箔上と前記ブラインドホール内と前記スルーホール内に銅めっきを施し、前記ブラインドホール並びに前記スルーホールを介して表裏両側の銅箔を導通させることを特徴とする電気接点構造。
【請求項2】
前記ブラインドホール内に、相手物の形状に適合した形状の接点を設けることを特徴とする請求項1記載の電気接点構造。
【請求項3】
前記ブラインドホール内に、金属ボールを金属ペースト若しくは導電性ペーストにより硬化固定することを特徴とする請求項2記載の電気接点構造。
【請求項4】
前記ブラインドホール内に、前記銅箔表面までめっきを施し、前記めっき上に山並み状の突起接点を少なくとも1個以上設けることを特徴とする請求項2記載の電気接点構造。
【請求項5】
少なくとも前記金属ボール若しくは前記突起接点の相手物と接触する部分に貴金属めっきを施すことを特徴とする請求項3または4記載の電気接点構造。
【請求項6】
前記銅めっき上に、前記ブラインドホールと前記スルーホールとを除いた部分にカバーレイを配置することを特徴とする請求項1から5項のうち1項記載の電気接点構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−157620(P2007−157620A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354517(P2005−354517)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000208835)第一電子工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】