説明

電気接続部材

【課題】 導電体間の短絡の発生を防止でき、電気的な検査による不良品のリペア効率が向上すること。
【解決手段】 接続対象物40と接続する電気接続部材10は、基材11と、該基材11の一面11aに配設された粘着剤層13と、該粘着剤層13に配設された導電体17とを有し、前記導電体17は前記粘着剤層13に前記接続対象物40を仮固着した後、少なくとも前記接続対象物41の端子部47と接続する接続側に、溶融することによって前記端子部47と前記導電体17とを接続する低融点金属層19を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続対象物と接続する電気接続部材に関し、特に、接続対象物と接続する電気接続部材を粘着剤層によって粘着し、低融点金属層を加熱することによって低融点金属層を溶融し接続対象物と接続する電気接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術1としては、液晶パネル基板上に形成した透明電極の引出し電極端子と駆動回路基板の電極端子とを導電性粒子を分散させた絶縁性接着層により接続する液晶表示装置の電極接続方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この液晶表示装置の電極接続方法では、液晶パネル基板の引出し電極端子と外部駆動回路の電極端子との間に配置した導電性粒子を分散した絶縁性接着剤のうち電極端子間の絶縁部分に配置された絶縁性接着剤を加圧する加圧ヘッドを設け、電極端子間の絶縁部分に配置された絶縁性接着剤を硬化又は半硬化させて液晶パネル基板と駆動回路基板とを仮接続状態とし、導電検査後に全ての絶縁性接着剤を硬化して本接続を行っている。
【0004】
加圧ヘッドはヘッド先端部を凹凸状に形成し、その凸部は駆動回路基板の電極端子ピッチと同じピッチを有し、電極端子の幅よりも狭い幅と電極端子の厚みよりも長い高さとを備え、ヘッド先端部の凸部が電極端子以外の部分を加圧する。
【0005】
また、加圧ヘッドは、ヘッド先端部を凹凸状に形成し、その凸部の端部の形状をアール状とし、ヘッド先端部のアール状の凸部により電極端子以外の部分を加圧する。
【0006】
先行技術2としては、フレキシブル配線基板と絶縁性固体基板の接続端子部同士のはんだ付け接合において、押さえ透明ガラス板で耐熱性の透明柔軟材を挟んで、はんだ付け部を加圧固定し、光ビームをはんだ付け部に照射してはんだをリフローさせてはんだ付けする光ビームはんだ法が知られている。
【0007】
先行技術3としては、接続端子を有するフレキシブル回路基板とセラミック回路基板とのレーザー半田付け方法が知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【0008】
このレーザー半田付け方法では、治具上のセラミック回路基板の接続端子部に、接続端子部の露出部分が広くなったフレキシブル回路基板の接続端子部を重ね合わせ、その上に接続端子部を直接加圧固定するための押えガラスを置く。
【0009】
次に、治具のガラス押圧子により押えガラスを締め付け、接続端子部を加圧固定する。このようにセットした状態で、レーザビームを端子列の端から端まで照射する。このとき、フレキシブル回路基板の接続端部にあらかじめメッキしておいた半田がレーザビーム照射による加熱によって溶融する。同時に溶融した半田は押えガラスの加圧によりセラミック回路基板の接続端子をぬらし金属間化合物を形成する。
【0010】
【特許文献1】特開平05−210107号公報
【特許文献2】特開平08−148256号公報
【特許文献3】特開昭62−211886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の液晶表示装置の電極接続方法では、導電検査後に全ての絶縁性接着剤を硬化して本接続を行った後のリペアの際に取り外しや取り付けを繰り返し行うと、安定した電気的な接続ができなくなるという問題がある。
【0012】
また、加圧ヘッドは、電極端子間の絶縁部分に配置された絶縁性接着剤(熱硬化性接着剤)を硬化又は半硬化させて液晶パネル基板と駆動回路基板とを仮接続状態とするので、選択的に仮固定するためのヘッドに凹凸を設ける細工が必要であるという問題がある。
【0013】
特許文献2,3は、フレキシブル回路基板の接続端子部にメッキをしておいた半田が、レーザービームを照射することにより加熱によって溶融するので、接続端子部間が狭いとブリッジの発生や、伝送特性インピーダンスの不整合及びクロストークの発生を起こすという問題がある。
【0014】
それ故に、本発明の課題は、ブリッジの発生や、伝送特性インピーダンスの不整合及びクロストークの発生も防ぐことができる電気接続部材を提供することにある。
【0015】
また、本発明の課題は、電気的な検査による不良品のリペア効率が向上する電気接続部材を提供することにある。
【0016】
また、本発明の課題は、短絡発生防止、低融点金属層のばらつき、低融点金属層の接合強度のばらつきなどを少なくすることができ、均一な接合が行うことができ、伝送特性が向上する電気接続部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、接続対象物と接続する電気接続部材において、基材と、該基材の一面に配設された粘着剤層と、該粘着剤層に配設された導電体とを含み、前記導電体は、前記粘着剤層に前記接続対象物を仮固着した後、少なくとも前記接続対象物の端子部と接続する接続側に、溶融することによって前記端子部と前記導電体とを接続する低融点金属層を有することを特徴とする電気接続部材であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電気接続部材は、粘着剤層による基材との粘着力によって電気接続部材と接続対象物とを仮固定できるので、電気接続部材及び接続対象物間のクリアランスを限りなくゼロに近づかせて仮固定することができ、低融点金属層の量を必要最低限にすることが可能となる。これにより、導電体間の短絡が発生しにくくなる。
【0019】
また、導電体には、粘着剤層が接続対象物に粘着によって機械的に接続されているため、導電体の短絡が起こりにくいので、ブリッジの発生や、伝送特性インピーダンスの不整合及びクロストークの発生も防ぐことができる。
【0020】
電気接続部材および接続対象物の接続方法は、接着ではなく粘着剤層による仮固定ができ、さらに、導電体に導電性粒子のような部材を介さないため仮固定後の電気的な検査による不良品のリペア効率が向上する。
【0021】
また、接続対象物の電気的な接続検査では、電気接続部材の導電体のみを加熱することにより、低融点金属層を溶融し金属結合を行うことができる。このとき、レーザー光は、他の部材はおおむね透過し、直接加熱されず、低融点金属層はゼロクリアランスのため低融点金属層を、薄くしても溶融接続することができる。
【0022】
また、レーザー光によって導電体と端子部とを低融点金属層により溶接する際には、低融点金属層が低融点であることや、他の材料をレーザー光が吸収しにくい部材にすることにより、部分的なレーザー光の照射をしなくても、選択的に導電体のみの接続を行うことができるという利点がある。
【0023】
さらに、電気接続部材では、電線ケーブルを接続対象物に接続する時に、短絡発生防止、電線ケーブルの位置のばらつきや、低融点金属層のばらつき、低融点金属層の接合強度のばらつきなどを少なくすることができ、均一な接合が行える。また、低融点金属層は、接合箇所の溶接形状が立体的になりにくく、伝送特性が向上するとともに短絡防止にも効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の電気接続部材は、接続対象物と接続する電気接続部材において、基材と、該基材の一面に配設された粘着剤層と、該粘着剤層に配設された導電体とを含み、前記導電体は、前記粘着剤層に前記接続対象物を仮固着した後、少なくとも前記接続対象物の端子部と接続する接続側に、溶融することによって前記端子部と前記導電体とを接続する低融点金属層を有することにより実現した。
【実施例1】
【0025】
図1乃至図4は、本発明の電気接続部材の実施例1を示している。図1乃至図4を参照して、電気接続部材10は、基材11と、基材11の一面11aに配設されている粘着剤層13と、粘着剤層13に配設されている複数の補強フィルム15と、補強フィルム15の一面15aに配設されている複数の導電体17と、導電体17に配設されている低融点金属層19とを有している。
【0026】
基材11は長方形のポリイミド樹脂フィルムであり、粘着剤層13はシリコーン系粘着剤であり、基材11の一面11a全体に粘着して配設されることによって基材11と一体になっている。なお、粘着剤層13の層の厚み寸法は、基材11の厚み寸法とほぼ同じ厚み寸法でもよいが、導体を埋めるのに十分な厚みでもよい。
【0027】
粘着剤層13には、基材11及び粘着剤層13の長手方向に平行な方向である第1の方向A(図2に示した矢印A)において複数の補強フィルム15が互いに間隔をもって配設されている。補強フィルム15は絶縁性を有する帯状のポリイミド樹脂フィルムであり、粘着剤層13の一面13aを含む第1の方向Aと直交する第2の方向B(図2に示した矢印B)に長い寸法で配設されている。補強フィルム15の第2の方向Bの寸法は、基材11及び粘着剤層13の第1の方向Aに平行な二辺間の寸法とほぼ同じ寸法と成っている。
【0028】
補強フィルム15は、粘着剤層13の内部に埋め込まれるように位置している。補強フィルム15の厚み寸法は、粘着剤層13の厚み寸法よりも薄いものである。補強フィルム15の一面15aとは反対の対向面は、粘着剤層13を介して基材11の一面11aに対してほぼ平行に対向している。さらに、補強フィルム15には、基材11の一面11aに対向して配設されている対向面とは反対面である一面15aに導電体17が配設されている。
【0029】
導電体17は、銅(Cu)であり、厚み方向のほぼ半分が粘着剤層13の内部に入り込んでいる。即ち、導電体17の厚み方向の他の半分及び補強フィルム15の一面15aとは反対側の一面17aは粘着剤層13の外へ露出している。導電体17の露出している面全体には、低融点金属層19が配設されている。
【0030】
低融点金属層19は、錫(Sn)を採用している。具体的には、導電体17に低融点金属層19が導電体17の露出している部分に融点が250℃以下であるメッキ処理によってSnメッキ層として配設されている。低融点金属層19は、導電体17の厚み寸法よりも薄い厚み寸法となっている。
【0031】
なお、基材11及び補強フィルム15は、ポリイミド樹脂シート、アラミド樹脂フィルムなどであってもよい。粘着剤層13は、アクリル系粘着剤であってもよい。導電体17は、銅合金、ニッケル(Ni)、もしくはニッケル(Ni)合金としてもよい。補強フィルム15と導電体17とは、スパッタ、蒸着、メッキ、印刷、接着等によって貼り付けられる。低融点金属層19は、Sn合金であってもよい。ようするに、低融点金属層19が導電体17よりも低融点となる金属であれば、導電体17や低融点金属層19の金属種類を設計上の構成で決めればよい。
【0032】
図5は、図1乃至図4に示した電気接続部材10と、電気接続部材10と接続する接続対象物40とを示している。
【0033】
図5を参照して、接続対象物40は、基材11とほぼ同形状の絶縁性の相手基材41と、相手基材41の一面41a上に配設されている複数の相手導電体(端子部)47と、相手導電体17に配設されている相手低融点金属層49とを有している。
【0034】
相手基材41の一面41aには、相手基材41の第1の方向A(図2に示した矢印Aと同じ方向)に間隔をもって相手導電体47が配設されており、相手基材41の第1の方向Aと直交する第2の方向B(図2に示した矢印Bと同じ方向)に長い寸法で相手導電体47が配設されている。相手基材41の一面41aには、複数の導電体17の間隔と同じ間隔をもって複数の相手導電体47が一対一に配設されている。
【0035】
相手導電体47は、導電体17とほぼ同じ形状であり、銅(Cu)を採用している。なお、相手導電体47は、銅合金、ニッケル(Ni)、もしくはニッケル(Ni)合金としてもよい。相手導電体47には、相手低融点金属層49が配設されている。相手低融点金属層49は、低融点金属層19と同じ形状で且つ同じ金属もしくは合金である。
【0036】
以下に、電気接続部材10と接続対象物40とを接続する方法を説明する。接続対象物40は、相手基材41の一面41aとは反対の面が、図示しない設置台に設置される。電気接続部材10と接続対象物40とは、図5に示したように、低融点金属層19が配設されている導電体17と相手低融点金属層49が配設されている相手導電体47とを対向させた後、図6に示すように電気接続部材10と接続対象物40と重ね合わせる。
【0037】
接続対象物40は、電気接続部材10を接続対象物40へ向けて荷重を加えると、低融点金属層19が配設されている導電体17と、相手低融点金属層49が配設されている相手導電体47とが粘着剤層13内に埋め込まれ、図6に示すように、相手基材41の一面41aが粘着剤層13によって粘着される。
【0038】
この際、絶縁フィルム15及び基材11間には、粘着剤層13が介在されている。相手基材41と粘着剤層13とが粘着されたときには仮固定となる。このとき、電気接続部材10と接続対象物40とは仮固定した状態において、低融点金属層19の一面19aと相手低融点金属層49の一面49aとが荷重を加えられることによって押圧された状態で互いに当接する。
【0039】
即ち、電気接続部材10に配設されている粘着剤層13がもっている弾性力及び粘着力(引力)によって電気接続部材10と接続対象物40が電気的に接続する。このとき、粘着剤層10が接続対象物40の一面41aに接触し、電気接続部材10と相手基材40とが機械的に接続することによって保持されて仮固定の状態となる。仮固定状態では、導電体17上の低融点金属層19の一面19aと相手導電体47上の相手低融点金属層49の一面49aとは、限りなくゼロクリアランスで面接触していることになる。
【0040】
電気接続部材10と接続対象物40とを仮固定した状態から電気接続部材10と接続対象物40と接続するには、低融点金属層19の一面19aと相手低融点金属層49の一面49aとが当接している状態において、低融点金属層19及び相手低融点金属層49に、図6に示すレーザー光51を照射し、レーザー光51によって低融点金属層19及び相手低融点金属層49を溶融することによって、図7に示すように導電体17と相手導電体47とを接続する。
【0041】
電気接続部材10と接続対象物40とを溶融して接続する具体的な方法としては、粘着剤層13によって接続対象物40を仮固着した後、レーザー光51により、低融点金属層19及び相手低融点金属層49とに熱を加えて溶融すると、低融点金属層19及び相手低融点金属層49とが金属接合されることによって、導電体17と相手導電部43とを電気的に接続することになる。
【0042】
レーザー光51は、図6に示したように、基材11の外側から相手基材41へ向けて互いに当接している低融点金属層19及び相手低融点金属層49の一組を溶融した後、図6に示した第1の方向A(操作方向)の一方向A1へ電気接続部材10と接続対象物40とを移動して、次の一組である低融点金属層19及び相手低融点金属層49とを溶融して導電体17と相手導電体47とを電気的に接続していく。
【0043】
なお、具体的には、導電体17、基材11、粘着剤層13、絶縁フィルム15の材質、厚さをそれぞれ設定し、レーザー光51の波長が800〜1000nmの領域において基材11の表面から絶縁フィルム15と導電体17の界面までの透過率を60%以上として低融点金属層19及び相手低融点金属層49とを溶融する。
【0044】
なお、電気接続部材10と相手基材41とが機械的に接続することによって保持されて仮固定の状態とした後に、接続対象物40の電気的な接続検査を行うことができる。電気的な接続検査は、低融点金属層19の一面19aと相手低融点金属層49の一面49aとを接続して導電体17と相手導電体47とに電流及び電圧を印加することにより行われる。なお、検査結果が思わしくない場合には、接続対象物40を交換し、新たな接続対象物40に交換して仮固定をし、再び検査を行う。
【0045】
粘着剤層13としてシリコーン系粘着剤を使用すると、接着、硬化、半硬化工程を必要とすることがないので、電気接続部材10と接続対象物40との取り外しや取り付けが容易になる。
【0046】
電気接続部材10と接続対象物40との取り外しや取り付けは、約20回以上繰り返しても再度接続を行うことができ安定した電気的な接続が可能であるという結果を得た。
【0047】
電気的な接続検査の結果が良好な場合、図6にあるように、例えば、波長800〜1000nmのレーザー光51を操作して電気接続部材10の導電体17を加熱(例えば、250℃)することにより、導電体17が発熱して低融点金属層19を溶融し接続対象物40の相手導電部47に溶接し、金属結合を行うことができる。このとき、レーザー光51は、他の部材はおおむね透過し、直接加熱されず、低融点金属層19の一面19aと相手低融点金属層49の一面49aとの間はゼロクリアランスのため低融点金属層19を、例えば10um以下と薄くしても溶融接続することができる。
【0048】
よって、導電体17及び相手導電体47間の短絡が発生しにくい。これは、治具や設備を不要で行うことができる。導電体17及び相手導電体47間の短絡を防止するには、低融点金属層19及び相手低融点金属層49の量を設計上で適宜決めておけば、第1の方向Aで間隔C(図7に示した間隔C)をもって隣り合っている導電体17間及び相手導電体47間のブリッジの発生や、伝送特性インピーダンスの不整合及びクロストークの発生も防ぐことができる。
【0049】
なお、低融点金属層19の厚さを10μm以下とした場合には、粘着剤層13による基材11と相手基材41との粘着力によって導電体17及び相手導電体47間のクリアランスを限りなくゼロに近づかせることができるので、低融点金属層19の量を必要最低限にすることが可能となる。これにより、導電体17及び相手導電体47間の短絡が発生しにくくなる。
【0050】
また、導電体17及び相手導電体47間には、粘着剤層13の一面13aが接続対象物40に粘着によって機械的に接続されているため、導電体17及び相手導電体47間の短絡が起こりにくい。
【0051】
電気接続部材10および接続対象物40の接続方法は、接着ではなく粘着剤層13による仮固定であり、また、導電体17の一面17aに導電性粒子のような部材を介さないため、仮固定後の電気的な検査による不良品のリペア効率が大変良い。
【0052】
また、レーザー光51によって導電体17及び相手導電体47間を低融点金属層19及び相手低融点金属層49により溶接する際には、低融点金属層19及び相手低融点金属層49が低融点であることや、他の材料をレーザー光51が吸収しにくい部材にすることにより、部分的なレーザー光51の照射をしなくても、選択的に導電体17及び相手導電体47間のみの接続を行うことができる。
【0053】
なお、電気接続部材10を接続対象物40に向けて荷重を加えて仮固定する手段としては、図9に示すように一例として示したガラス板61もしくはアクリル板を用いる。ガラス板61を採用した場合には、ガラス板61にて電気接続部材10に荷重を加えて押圧しながら、レーザー光51を照射し、電気接続部材10の低融点金属層19と接続対象物40の相手低融点金属層49とを溶融溶接する。
【0054】
低融点金属層19と相手低融点金属層49との金属溶融時には、熱による絶縁フィルム15,導電体17,相手導電体47の熱変形を少なくするために、ガラス板61によって押さえることによりレーザー光51による加工条件の幅が大幅に広がる。
【0055】
接続対象物40に向けて荷重を加えて仮固定する手段は、ガラス板61に限らず、透過率の高い(透過率90%以上の)材料を用いて電気接続部材10を接続対象物40へ向けて押圧する。
【0056】
なお、接続対象物40は、図10に示すように、相手導電体47に相手低融点金属層49が配設されていない状態で導電体17と相手導電体47とを接続することも可能である。即ち、導電体17に配設されている低融点金属層19のみによって、低融点金属層19をレーザー光51によって溶融することで、直接、相手導電体47と低融点金属層19とを接続するようにしてもよい。この際、低融点金属層19の量や厚みを設計上で適宜に定める。また、レーザー光51による照射のほかにはヒーターによる加熱手段もある。
【実施例2】
【0057】
図11乃至図13は、電気接続部材の実施例2を示している。実施例2における電気接続部材210は、基材11の全面に粘着させた粘着剤層13の一面13aにおいて、図12に示す第2の方向Bの両側面に粘着剤層13を残し、粘着剤層13中央部分に絶縁フィルム215が配設されている。
【0058】
補強フィルム215は、絶縁性を有する帯状のフィルムであり、粘着剤層13の内部に入り込んでいる。補強フィルム215は、基材11の一面11aに対向しており、かつ粘着剤層13よりも薄いものである。さらに、補強フィルム215には、基材11の一面11aに対向して配設されている対向面とは反対側の一面215aに複数の導電体17が第1の方向Aで互いに間隔をもって配設されている。
【0059】
導電体17は、厚み方向のほぼ半分が粘着剤層13の内部に入り込んでいる。導電体17の厚み方向の他の半分及び補強フィルム215の一面215aとは反対側の一面17aは、粘着剤層13の外で露出している。導電体17の露出している表面全体には、低融点金属層19が配設されている。
【0060】
その他、図1乃至図4に示した電気接続部材10と同じ部分に同じ符号によって示した導電体17、低融点金属層19などは、図1乃至図4に示した電気接続部材10と同じ構造である。さらに、電気接続部材210と図5に示した接続対象物40との接続方法も同様な接続方法で行われる。なお、接続対象物40には、相手導電体47に配設する相手低融点金属層49が除かれている構造であってもよい。
【実施例3】
【0061】
図14乃至図16は、電気接続部材の実施例3を示している。なお、図1乃至図4に示した電気接続部材10と同じ部分には、同じ符号を付して説明の一部を省略する。
【0062】
実施例3における電気接続部材310では、粘着剤層13の一面13a全体に絶縁フィルム315が配設されている。補強フィルム315には、基材11の一面11aに対向して配設されている対向面とは反対側の一面315aに複数の導電体17が配設されている。
【0063】
その他、導電体17に配設された低融点金属層19は、図1乃至図4に示した構造と同じ構造となっている。さらに、電気接続部材310と図5に示した接続対象物40との接続方法も同様な接続方法で行われる。
【0064】
ただし、粘着剤層13の一面13a全体に絶縁フィルム315が配設されているので、接続対象物40の相手基材41の一面41aに粘着剤層13が粘着することなく、電気接続部材310の低融点金属層19と接続対象物40の相手低融点金属層とがレーザー光51(図6を参照)によって溶融されて互いに接続される。なお、接続対象物40には、相手導電体47に配設する相手低融点金属層49が除かれているものであってもよい。
【実施例4】
【0065】
図17は、電気接続部材410の実施例4を示しており、電気接続部材410に接続対象物440を接続した状態を示している。なお、図1乃至図8に示した電気接続部材10と同じ部分には、同じ符号を付して説明の一部を省略する。
【0066】
実施例4における電気接続部材410は、導体部17と相手導電体47との接続部分となる導体部17のみに低融点金属層419が配設されており、導体部17と接続部分となる相手導電体47のみに相手低融点金属層449を配設した構造である。
【0067】
電気接続部材410と図17に示した接続対象物440との接続方法は、図1乃至図8に示した電気接続部材10と接続対象物40との接続方法と同様な接続方法で行われる。
【0068】
電気的な接続検査は、図18に示したように導電体17と相手導電体647とを接続して電流Am及び電圧Voを印加することによって行われる。なお、検査結果が思わしくない場合には、接続対象物640を交換し、新たな接続対象物640に交換して仮固定をし、再び検査を行う。
【0069】
検査後に電気接続部材410と接続対象物640とを仮固定した状態から電気接続部材410と接続対象物640と接続するには、低融点金属層419の一面419aと相手低融点金属層649の一面649aとが当接している状態において、低融点金属層419及び相手低融点金属層649を、図6に示したレーザー光51を照射し、レーザー光51によって低融点金属層419及び相手低融点金属層649を溶融することによって、導電体17と相手導電体647とを接続する。
【0070】
図19に示す如く、導電体17と相手導電体647とを接続するときには、レーザー光51によって低融点金属層419及び相手低融点金属層649が溶融することから、低融点金属層419及び相手低融点金属層649の溶融によって付加相手導電体647b上に立体形状のフィレット660が形成されるので、立体的な接続状態となることから電気接続部材410と接続対象部材640との接合強度を大幅に増すことができる。
【実施例5】
【0071】
図20及び図21は、電気接続部材の実施例5を示している。実施例5における電気接続部材710は、基材711と、基材711の一面711aの全面に配設されている粘着剤層713と、粘着剤層713に一部が埋め込まれるように配設されている複数の電線ケーブル771の芯線である導電体717と、導電体717の外周面に配設されている低融点金属層719とを有している。
【0072】
粘着剤層713には、導電体717と低融点金属層719の外周面の一部(円弧部分)が粘着剤層713に埋め込まれるように配設されている。電線ケーブル771は、導電体717と、導電体717を被覆している絶縁性の被覆部718とからなり、電線ケーブル771の軸方向における先端部分の被覆部718を剥ぎ取ることによって導電体717を露出させ、導電体717の露出部分に低融点金属層719を配設している。
【0073】
以下、電気接続部材710と図5によって説明した接続対象物40との接続方法について説明する。
【0074】
接続対象物40は、図示しない設置台に設置される。電気接続部材710と接続対象物40とは、低融点金属層719が配設されている導電体717と相手低融点金属層49が配設されている相手導電体47とを対向させた後、電気接続部材710と接続対象物40とを重ね合わせる。
【0075】
接続対象物40は、電気接続部材710を接続対象物40へ向けて荷重を加えると、低融点金属層719が配設されている導電体717と相手低融点金属層49が配設されている相手導電体47とが粘着剤層713内に円弧部分の一部が埋め込まれ、低融点金属層719が配設されている導電体717及び相手低融点金属層49が配設されている相手導電体47の第1の方向Aにおける両側の相手基板41の一面41aが粘着剤層713と粘着される。
【0076】
相手基材41の一面41aと粘着剤層713とが粘着されたときには、電気接続部材710を接続対象物40とが仮固定の状態となる。電気接続部材710と接続対象物40とは仮固定の状態にあるときには、低融点金属層719の一部と相手低融点金属層49の一面49aとが荷重を加えられて押圧された状態で互いに当接する。
【0077】
即ち、電気接続部材710に配設されている粘着剤層713がもっている弾性力及び粘着力(引力)によって電気接続部材710と接続対象物40が電気的に接続する。即ち、粘着剤層713が接続対象物40の一面49aに接触させて電気接続部材710と相手基材40とが機械的に接続することによって保持されて仮固定の状態となる。仮固定状態では、導電体717上の低融点金属層719の円弧面の一部分と相手導電体47上の相手低融点金属層49の一面49aとは、限りなくゼロクリアランスで接触していることになる。
【0078】
電気接続部材710と接続対象物40とを仮固定した状態から電気接続部材710と接続対象物40と接続するには、低融点金属層719の円弧面の一部分と相手低融点金属層49の一面49aとが当接している状態において、低融点金属層719及び相手低融点金属層49を、図22に示すレーザー光51を照射し、レーザー光51によって低融点金属層719及び相手低融点金属層49を溶融することによって、図22及び図23に示すように導電体717と相手導電体47とを接続する。
【0079】
電気接続部材710と接続対象物40とを溶融して接続する具体的な方法は、実施例1によって説明した方法で行われるが、第1の方向Aで0.3mm以下のピッチで配線されている電線ケーブル771の導電体717を、レーザー光51の波長800〜1000nmにおいて透過率が60%以上である部材からなる粘着テープで固定しながらレーザー光51を照射し、低融点金属719及び相手低融点金属層49のみを溶融し、電気接続部材710と接続対象物40と接続する。
【0080】
導電体717及び相手導電体47間の短絡を防止するには、低融点金属層719及び相手低融点金属層49の量を設計上で適宜決めておけば、第1の方向Aで間隔C´(図22に示した間隔C´)をもって隣り合っている導電体717及び相手導電体47間のブリッジの発生、伝送特性インピーダンスの不整合及びクロストークの発生も防ぐことができる。
【0081】
なお、低融点金属層719の厚さを10μm以下とした場合には、粘着剤層713による基材711と相手基材41との粘着力によって導電体17及び相手導電体47間のクリアランスを限りなくゼロに近づかせることができるので、低融点金属層719の量を必要最低限にすることが可能となる。これにより、導電体717及び相手導電体47間の短絡が発生しにくくなる。
【0082】
電気接続部材710および接続対象物40の接続方法は、粘着剤層713による仮固定であり、導電体717の円弧面に導電性粒子のような部材を介さないため、仮固定後の電気的な検査による不良品のリペア効率が大変良い。
【0083】
また、レーザー光51によって導電体717及び相手導電体47間を低融点金属層719及び相手低融点金属層49により溶接する際には、低融点金属層719及び相手低融点金属層49が低融点であることや、他の材料をレーザー光51が吸収しにくい部材にすることにより、部分的なレーザー光51の照射をしなくても、選択的に導電体717及び相手導電体47間のみの接続を行うことができる。
【0084】
なお、接続対象物40は、相手導電体47に相手低融点金属層49が配設されていなくてもよい。即ち、導電体717に配設されている低融点金属層719のみによって、低融点金属層719をレーザー光51によって溶融することで、直接、相手導電体47と低融点金属層719とを接続するようにしてもよい。この際、低融点金属層719の量や厚みを設計上で適宜に定める。
【実施例6】
【0085】
図24乃至図26は、電気接続部材の実施例6を示している。実施例6における電気接続部材810は、図20に示した電気接続部材710の基材711に配設した粘着剤層713を除いた構成となっている。したがって、基材711の一面711aには、低融点金属層719の円弧面の一部分が当接している。
【0086】
電気接続部材10を接続対象物40に向けて荷重を加えて仮固定する手段としては、ガラス板61を用いる。ガラス板61にて電気接続部材10に荷重を加えて押圧しながら、レーザー光51を照射し、電気接続部材810の低融点金属層719と接続対象物40の相手低融点金属層49と溶融溶接する。
【0087】
低融点金属層719と相手低融点金属層49との金属溶融時には、熱による導電体17及び相手導電体47の熱変形を少なくするための、ガラス板61によって押さえることによりレーザー光51による加工条件の幅が大幅に広がる。
【0088】
接続対象物40に向けて荷重を加えて仮固定する手段は、ガラス板61に限らず、透過率の高い(透過率90%以上の)材料を用いて電気接続部材810を接続対象物40へ向けて押圧することができる。
【0089】
電気接続部材810と接続対象物40とを溶融して接続する具体的な方法は、実施例1によって説明した方法で行われるが、0.3mm以下のピッチで配線されている導電体717を、レーザー光51の波長800〜1000nmにおいて透過率が60%以上である部材からなるガラス板61によって固定しながらレーザー光51を照射し、導電体717に施した低融点金属719のみを溶融し接続対象物40と接続する。
【0090】
電線ケーブル771を接続対象物40に接続する時には、短絡発生防止、電線ケーブル771の位置のばらつきや、低融点金属層719及び相手低融点金属層49の量のばらつき、低融点金属層719及び相手低融点金属層49の接合強度のばらつきなどを少なくすることができ、均一な接合が行える。また、低融点金属層719及び相手低融点金属層49は、接合箇所の溶接形状が立体的になりにくく、伝送特性が向上するとともに短絡防止にも効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明による電気接続部材は、液晶表示(LCD)装置の電極接続方法及び装置、プリント回路基板やフレキシブル配線基板(FPC基板)などと接続する電気接続部材の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の電気接続部材の実施例1を示す正面図である。
【図2】図1に示した電気接続部材の底面図である。
【図3】図2に示した電気接続部材の左側面図である。
【図4】図2に示した電気接続部材のIV-IV線断面図である。
【図5】図1に示した電気接続部材と接続対象物とを接続する前の状態で示した正面図である。
【図6】図5に示した電気接続部材と接続対象物とを重ね合わせた状態で示した正面図である。
【図7】図6に示した電気接続部材と接続対象物とを接続した後の状態を示した正面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線断面図である。
【図9】図6に示した電気接続部材と接続対象物とを重ね合わせた状態でガラス板によって荷重を加えた状態を拡大して示した正面図である。
【図10】図5に示した電気接続部材と、相手低融点金属層を持たない接続対象物との接続例を拡大して示した正面図である。
【図11】本発明の電気接続部材の実施例2を示す正面図である。
【図12】図11に示した電気接続部材の底面図である。
【図13】図12に示した電気接続部材の右側面図である。
【図14】本発明の電気接続部材の実施例3を示す正面図である。
【図15】図14に示した電気接続部材の底面図である。
【図16】図15に示した電気接続部材の右側面図である。
【図17】本発明の電気接続部材の実施例4を示しており、接続対象物に仮固定した状態を示した側面断面図である。
【図18】電気接続部材と接続対象物とを重ね合わせた状態を示し、電気的な接続検査を示す側面断面図である。
【図19】図18に示した電気接続部材と接続対象物とを接続した状態を示した側面断面図である。
【図20】本発明の電気接続部材の実施例5を示しており、電気接続部材と接続対象物とを接続する前の状態を示した正面図である。
【図21】図20のXXIII-XXIII線断面図である。
【図22】図20に示した電気接続部材と接続対象物とを接続する途中の状態を示しており、接続対象物の相手基材を断面して示した正面図である。
【図23】図22に示した電気接続部材と接続対象物とを接続した後の状態を図21に示した断面と同じ方向で示した断面図である。
【図24】本発明の電気接続部材の実施例6を示しており、電気接続部材と接続対象物とを重ね合わせた状態でガラス板によって荷重を加えた状態を拡大して示した正面図である。
【図25】図23に示した電気接続部材と接続対象物とを接続した状態を示しており、接続対象物の相手基材のみを断面して示した正面図である。
【図26】図25のXXVIII-XXVIII線断面図である。
【符号の説明】
【0093】
10,210,310,410,710,810 電気接続部材
11,711 基材
11a,13a,15a,17a,19a,41a,215a,315a,647a,711a 一面
13,713 粘着剤層
15,215,315 補強フィルム
17,717 導電体
19,419,719 低融点金属層
40,440,640 接続対象物
41,641 相手基材
47,647 相手導電体(端子部)
49,449,649 相手低融点金属層
51 レーザー光
61 ガラス板
641b 側面
660 フィレット
771 電線ケーブル
718 被覆部
A 第1の方向
B 第2の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物と接続する電気接続部材において、
基材と、該基材の一面に配設された粘着剤層と、該粘着剤層に配設された導電体とを含み、
前記導電体は、前記粘着剤層に前記接続対象物を仮固着した後、少なくとも前記接続対象物の端子部と接続する接続側に、溶融することによって前記端子部と前記導電体とを接続する低融点金属層を有することを特徴とする電気接続部材。
【請求項2】
請求項1記載の電気接続部材において、前記粘着剤層と前記導電体との間には、補強フィルムが配設されていることを特徴とする電気接続部材。
【請求項3】
接続対象物と接続する電気接続部材の製造方法において、
基材と、該基材の一面に粘着剤層を配設する工程と、
該粘着剤層に導電体を配設する工程と、
該導電体の少なくとも前記接続対象物の端子部と接続する接続側に、低融点金属層を配設する工程と、
前記粘着剤層に前記接続対象物を仮固着した後、前記基材の他面側からレーザー光を照射することにより、前記低融点金属層を溶融することによって前記端子部と前記導電体とを接続することを特徴とする電気接続部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−71700(P2008−71700A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251387(P2006−251387)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】