説明

電気炊飯器

【課題】 ICタグを炊飯試験に利用することにより、炊飯試験の簡略化、精度向上等を図る。
【解決手段】 電気炊飯器M1の適所にセットされる製品識別用のICタグ1に、前記電気炊飯器M1による炊飯試験時の炊き上げ温度T3の温度データを記憶させる記憶手段を付設して、炊飯試験時の炊き上げ温度T3を製品識別用のICタグ1に記憶させることができるようにし、これを適宜読み出すだけで、炊飯試験時の炊き上げ温度T3を読み出すことが可能となるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気炊飯器に関するものであり、さらに詳しくは、製品識別用のICタグを工程検査に利用し得るように構成した電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器や電気貯湯容器、空気清浄器等の家庭用電気製品には、例えば、温度情報や空気の汚れ度(即ち、環境情報)等を検出するセンサーが設けられている。一方、この種の家庭用電気製品には、製品を識別するための部品(例えば、JANシール)が付設されている。製品識別部品としては、バーコードも多用されている。
【0003】
例えば、家庭用電気製品の一種である電気炊飯器の場合、特許文献1にも開示されているように、米と水とを収容する内鍋を取出自在に収納する器体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記内鍋の底面中央部の温度を検出する温度センサーとを備えて構成される一方、製品を識別するための部品(例えば、製品識別用タグ)は、電気炊飯器を梱包する個装箱に付設されることとなっている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−112888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の製品識別用タグは、単に製品を識別する機能のみしか有しておらず、製造ライン等における炊飯試験には利用することができなかった。従って、炊飯試験においては、炊飯試験専用機を用いるよりなかった。
【0006】
近年、情報蓄積量の大きなICチップをタグに利用したICタグ(電子荷札)の開発が進み、実用化されてきている。
【0007】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、ICタグを炊飯試験に利用することにより、炊飯試験の簡略化、精度向上等を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、電気炊飯器の適所にセットされる製品識別用のICタグに、前記電気炊飯器による炊飯試験時の炊き上げ温度の温度データを記憶させる記憶手段を付設している。
【0009】
上記のように構成したことにより、炊飯試験時の炊き上げ温度を製品識別用のICタグに記憶させることができることとなり、これを適宜読み出すだけで、炊飯試験時の炊き上げ温度を読み出すことが可能となり、炊飯試験を簡略且つ精度良く行うことができる。
【0010】
本願発明では、上記課題を解決するための第2の手段として、電気炊飯器の適所にセットされる製品識別用のICタグに、前記電気炊飯器による炊飯試験時の保温温度の温度データを記憶させる記憶手段を付設している。
【0011】
上記のように構成したことにより、炊飯試験時の保温温度を製品識別用のICタグに記憶させることができることとなり、これを適宜読み出すだけで、炊飯試験時の保温温度を読み出すことが可能となり、炊飯試験を簡略且つ精度良く行うことができる。
【0012】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2の手段を備えた電気炊飯器において、前記電気炊飯器による炊飯試験時の温度データを送受信ユニットを介してマイコンに入力し、該マイコンにおいて前記温度データにおける温度上昇度から求められる合数判定の補正を行い得るように構成することもでき、そのようにした場合、ユーザ使用時に、炊飯試験時の温度データが送受信ユニットを介してマイコンに入力され、マイコンにおいて、温度上昇度から求められる合数判定を補正することもできるところから、合数判定の精度向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の第1の手段によれば、電気炊飯器の適所にセットされる製品識別用のICタグに、前記電気炊飯器による炊飯試験時の炊き上げ温度の温度データを記憶させる記憶手段を付設して、炊飯試験時の炊き上げ温度を製品識別用のICタグに記憶させることができるようにしたので、これを適宜読み出すだけで、炊飯試験時の炊き上げ温度を読み出すことが可能となり、炊飯試験を簡略且つ精度良く行うことができるという効果がある。
【0014】
本願発明の第2の手段によれば、電気炊飯器の適所にセットされる製品識別用のICタグに、前記電気炊飯器による炊飯試験時の保温温度の温度データを記憶させる記憶手段を付設して、炊飯試験時の保温温度を製品識別用のICタグに記憶させることができるようにしたので、これを適宜読み出すだけで、炊飯試験時の保温温度を読み出すことが可能となり、炊飯試験を簡略且つ精度良く行うことができるという効果がある。
【0015】
本願発明の第3の手段におけるように、上記第1又は第2の手段を備えた電気炊飯器において、前記電気炊飯器による炊飯試験時の温度データを送受信ユニットを介してマイコンに入力し、該マイコンにおいて前記温度データにおける温度上昇度から求められる合数判定の補正を行い得るように構成することもでき、そのようにした場合、ユーザ使用時に、炊飯試験時の温度データが送受信ユニットを介してマイコンに入力され、マイコンにおいて、温度上昇度から求められる合数判定を補正することもできるところから、合数判定の精度向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の好適な実施の形態について詳述する。
【0017】
まず、以下の実施の形態において使用されるICタグおよび送受信ユニットの構成について、図1を参照して説明する。
【0018】
製品M側にセットされるICタグ1は、電源回路1bと、無線周波数(RF)回路(ワイヤレス送受信回路)1cと、変調回路1dと、復調回路1eと、CPU1fと、該CPU1fに対して入出力可能に接続され、製品識別情報が記憶されているメモリ1aとを有して構成されている。
【0019】
前記電源回路1bは、蓄電池として作用するコンデンサ(図示省略)を内蔵しており、このコンデンサは、コイル型の第1の送受信アンテナ3とともに共振回路を形成している。このコンデンサには、第1の送受信アンテナ3が特定の周波数の電波(前述の共振回路が共振する周波数の電波)を受信したときに、その相互誘導作用により生じる電力が充電されるようになっている。そして、この電源回路1bは、前記コンデンサからの電力を整流し安定化してCPU1fに供給し、ICタグ1を活性化することとなっている。また、前記第1の送受信アンテナ3は、例えば複数枚の軟磁性アモルファス箔又は複数枚の金属箔を耐熱性樹脂又は耐熱性無機材料からなる絶縁層を介して積層してなる磁芯部材3aと、該磁芯部材3aの外周に巻成された耐熱性被覆導線3bとからなっており、耐熱性の高いものとされている。
【0020】
また、前記メモリ1aは、例えばROM、RAMおよびEEPROMを含み、CPU1fの制御の下で、後述する送受信ユニット2からの送信電波のデジタル・データ通信による読み出しコマンドに応じて、前記メモリ1aに記憶されている製品識別情報等の読み出しを行うとともに、必要に応じ、送受信ユニット2からの書き込みコマンドに応じて必要なデータの書き込みを行うことができるようになっている。
【0021】
なお、前記ICタグ1および第1の送受信アンテナ3は、所定の耐熱プラスチックケース内にパッケージングされて、製品の適所にセットされているが、同プラスチックケースは、例えばポリイミド、エポキシ、ポリフェニールスルフォイド又はフェノールのような耐熱性の高い合成樹脂により形成され、例えば150℃〜250℃の高温下でも使用可能となっている。
【0022】
上記したように、製品識別情報等のメモリ、ワイヤレス送信機能等を有して構成されたICタグ1は、それに対応して読み取り器Y側(あるいは/および製品の適所)に配設された送受信ユニット3とワイヤレスに送受信可能に構成されている。
【0023】
前記送受信ユニット3は、前記ICタグ1側に記憶された製品識別情報等を読み出して、読み取り器Y側(あるいは/および製品側)のマイコンに転送して入力するとともに、ICタグ1側のメモリ1a内に必要な情報を書き込むように構成されており、前記第1の送受信アンテナ3と相互誘導作用する同じくコイル型の第2の送受信アンテナ4が受信した電波データを処理するデータ処理回路部を有する。第2の送受信アンテナ4は、前記ICタグ1側の第1の送受信アンテナ3に対して所定の電波を送信し、且つICタグ1側の第1の送受信アンテナ3からの所定の電波を受信するように構成されている。また、データ処理回路部は、前記第2の送受信アンテナ4に接続されており、バッテリを内蔵する電源回路2aと、無線周波数(RF)回路(ワイヤレス送受信回路)2bと、変調回路2cと、復調回路2dと、CPU2eと、該CPU2eに対して入出力可能に接続され、前記ICタグ1のメモリ1aから読み取った情報(製品識別情報等)を記憶するメモリ2fとを有して構成されている。
【0024】
前記ICタグ1中のメモリ1aに記憶された製品識別情報の読み出しは、前記送受信ユニット2側の第2の送受信アンテナ4から前記ICタグ1側の第1の送受信アンテナ3に向けて2値化されたデジタル・データ信号を特定周波数の電波により送信することにより行われる。このデジタル・データ信号は、変調回路2cで変調を受け、RF回路2bで増幅されて第2の送受信アンテナ4から送信される。該送信された電波は、ICタグ1側の第1の送受信アンテナ3により受信され、この受信時のアンテナコイル間の相互誘導作用により電源回路1bの蓄電用コンデンサに電力が充電される。そして、この充電電力は、電源回路1bからCPU1fに動作電力として供給され、ICタグ1を活性化して、RF回路1cを作動させる。
【0025】
そして、ICタグ1側のCPU1fは、この受信信号(読み出しコマンド信号)に基づいて、前記メモリ1aに記憶されている製品識別情報をデータとして送信する。この製品識別情報データの送信は、上記同様に2値化されたデジタル・データ信号を変調回路1dで変調した後、RF回路1cで増幅することによって第1の送受信アンテナ3から送出することにより行われる。この送信されたデジタル・データは、送受信ユニット2側の第2の送受信アンテナ4で受信され、前記データ処理回路部でデータ処理されて、読み取り器Y側のマイコンに転送される。これにより、適切な製品識別が実現される。
【0026】
また、前記送受信ユニット2側のCPU2eの入力ゲートには、入力装置(入力回路)2gが接続されており、所定の外部入力手段(例えば、読み取り器Y)からの必要な追加情報が入力装置2gを介して入力され、CPU2e、RF回路2bを通してICタグ1側のメモリ1aに書き込まれるようになっている。
【0027】
第1の実施の形態
図2には、本願発明の実施の形態にかかる電気炊飯器の工程検査ラインの一部が示されている。
【0028】
この工程検査ラインL1は、製品である電気炊飯器M1を組み立てる組立工程K1、ICタグ1を製品M1の適所にセットするタグ取付工程K2、種々の検査を行う検査工程K3および製品M1を付属部品とともに梱包する梱包工程K4を備えており、前記タグ取付工程K2、前記検査工程K3および梱包工程K4には、それぞれ読み取り器Y1,Y2,Y3が付設されている。これらの読み取り器Y1,Y2,Y3には、前述の送受信ユニット2がセットされており、ICタグ1からの各種情報の読み取りに加えて、ICタグ1への各種情報(例えば、不良品情報等)の書き込みが行えることとなっている。
【0029】
前記タグ取付工程K2においては、図3に示すように、電気炊飯器M1の前面にICタグ1がセットされるとともに、各種の計測試験を行って、その結果が読み取り器Y1によりICタグ1にインプットされる。例えば、炊飯試験を行い、吸水温度T1、沸騰温度T2、炊き上げ温度T3、保温温度T4を計測し(図4参照)、これらの温度データをICタグ1にインプットしておく。このようにしておくと、ユーザ使用時に、これらの温度データが送受信ユニット2を介してマイコン14に入力され、マイコン14において、吸水温度、沸騰温度、炊き上げ温度、保温温度を理想温度に補正することができるし、温度上昇度から求められる合数判定を補正することもできる。その結果、炊飯性能、保温性能の向上と、合数判定の精度向上とを図ることができる。図3において、符号5は操作パネル部、6は液晶表示装置、7は各種スイッチ群である。
【0030】
ついで、図5に示す電気回路図に基づいて、上記電気炊飯器M1における電気的構成を説明する。
【0031】
商用交流電源8からの電力は、内鍋の異常加熱を検知して溶断する温度ヒューズ9および整流回路10を経て内鍋加熱手段として作用するIHコイル11に供給されることとなっている。符号12は平滑コンデンサ、13は共振コンデンサである。
【0032】
前記IHコイル11には、マイクロコンピュータユニット(以下、マイコンと略称する)14からIGBTドライブ回路15を経た指令によりそれぞれON/OFF制御されるパワートランジスタ16からの制御信号が与えられることとなっている。
【0033】
前記マイコン14は、所定のプログラムに従ってパワートランジスタ15の制御を行い、これによりIHコイル11への通電を制御する。また、マイコン14は、ヒータ駆動回路17を介して保温ヒータ18への通電を制御する。これらの通電制御は、前記温度センサー19およびICタグ1からの出力信号に基づいて行なわれる。なお、ICタグ1からの出力信号は、制御基板20にセットされた送受信ユニット2を介してマイコン14に入力されることとなっている。
【0034】
前記検査工程K3においては、読み取り器Y2によりICタグ1のメモリ1aに蓄積された各種情報(例えば、製品識別情報、不良品情報等)が読み取られる。例えば、検査工程K3においては、良品不良品選別が行われるが、ICタグ1からの情報により不良品を確実に除外することができる。
【0035】
前記梱包工程K4においては、図6に示すように、製品である電気炊飯器M1とともに付属部品(例えば、シャモジA、シャモジ受けB、計量カップCおよび蒸し台D)が同一の個装箱21に梱包されることとなっている。そこで、付属部品であるシャモジA、シャモジ受けB、計量カップCおよび蒸し台Dのそれぞれに付属部品固有の情報を有する付属部品用ICタグ1A,1B,1C,1Dを予めセットしておけば、梱包後に、これらのICタグ1A,1B,1C,1Dからの情報を読み取り器Y3によって読み取ることにより、欠品の確認を容易に行うことができる。また、シャモジの場合、数種類あって使用してはいけないものがあるが、間違い防止としても利用できる。なお、付属部品としては、取説等も考えられる。また、この欠品確認は、販売店での販売時においても行うことができる。
【0036】
また、工場出荷段階で、消費電力値をICタグ1にインプットしておけば、個々の電気炊飯器における入力電圧を監視するプログラムを設定することにより、ICタグ1の入力電力値より、炊飯電力量、保温電力量を演算することができ、その結果に基づいて、電気料金を算出することができる。かくして得られた電気料金を操作パネル部5の液晶表示装置6に表示すれば、省エネ意識の向上に大いに寄与する。
【0037】
ところで、海外生産品の場合は、1コンテナに同一製品でも生産日(生産ロット)が異なる2〜3種類の生産ロットを混載することにより満量とされている。つまり、ロット毎に見ると、分散された2〜3個のコンテナに入っている状態となっているのである。従って、ロックアウト、注意返品が発生した場合、全国の倉庫の在庫を完全にチェックすることが難しく、不良品がそのまま市場に出るおそれがある。そこで、海外生産品に、生産国、生産日等の情報をインプットしたICタグをセットすれば、海外(例えば、中国、韓国等)から直接本社以外の物流倉庫に到着した場合でも、各物流倉庫においてICタグからの情報を認識することができる。かくして認識された情報を、コンピュータネットワークにより本社に送信すれば、ロックアウト、注意返品が発生した場合、即座に日本のどこにいつの生産ロットが何台あるかが判明する。従って、いつでも回収処理が間違いなく行えることとなり、市場に不良品が流出することがなくなる。
【0038】
本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本願発明の実施の形態にかかる電気炊飯器に用いられるICタグおよび送受信ユニットの回路構成図である。
【図2】本願発明の実施の形態にかかる電気炊飯器の工程検査ラインを示すブロック図である。
【図3】本願発明の実施の形態にかかる電気炊飯器の正面図である。
【図4】本願発明の実施の形態にかかる電気炊飯器における炊飯理想温度曲線を示す特性図である。
【図5】本願発明の実施の形態にかかる電気炊飯器における電気的要素の結線回路図である。
【図6】本願発明の実施の形態にかかる電気炊飯器の梱包時の内部部品を示す正面図である。
【符号の説明】
【0040】
1はICタグ
1aは記憶手段(メモリ)
2は送受信ユニット
1は製品(電気炊飯器)
1は工程検査ライン
3は検査工程
3は炊き上げ温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炊飯器の適所にセットされる製品識別用のICタグには、前記電気炊飯器による炊飯試験時の炊き上げ温度の温度データを記憶させる記憶手段を付設したことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
電気炊飯器の適所にセットされる製品識別用のICタグには、前記電気炊飯器による炊飯試験時の保温温度の温度データを記憶させる記憶手段を付設したことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項3】
前記電気炊飯器による炊飯試験時の温度データを送受信ユニットを介してマイコンに入力し、該マイコンにおいて前記温度データにおける温度上昇度から求められる合数判定の補正を行い得るように構成したことを特徴とする請求項1および2のいずれか一項記載の電気炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−554(P2009−554A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241390(P2008−241390)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【分割の表示】特願2003−413437(P2003−413437)の分割
【原出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】