電気的貫通接続構造
本発明は優れた耐久性及び信頼性の電気的接続を新空室(225)の壁(27)を通って形成するための電気的貫通接続構造(200)を提供する。電気的貫通接続構造(200)は、開口端(217)及び閉口端(218)を持つチューブ状部材を備える。少なくとも1つの導電体(201)が閉口端(217)を通って伸びており、閉口端(217)に真空密閉接合部(214)によって固定される。接合部(214)は、開口端(217)からの視野方向に含まれないように構成されている。このようにすることで、衝突物(220)及び直熱放射(221)が接合部(214)に直接当たることを防ぎ、問題を起こし得る接合部(214)の汚染にかかる時間を延ばす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空室内の装置において電気的接続を形成するための電気的貫通接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空室内に位置する装置を真空室外に位置する電源に電気的接続を行う際には、真空室の壁を貫通し、1つ以上の導電体を通す気密通路である電気的貫通接続構造が一般的に必要となる。通常、貫通接続構造はセラミックのような絶縁体によって真空室の壁から絶縁されている。そのような電気的貫通接続構造は、真空室の外側から真空室内に設置された装置に電気的接続を成すために一般的に使われる。熱蒸発源、基板ヒータのような真空室内に設置された装置には、一般的に電源を提供する必要があり、及び/又は温度センサ、測定装置などの真空室内に設置された装置から電気信号を読み出す必要がある。
【0003】
蒸着などのような多くの真空処理は大量の熱を発し、真空室内の温度を例えば200℃以上の比較的高温に上げる。長期的は、真空処理から発する成分又は真空室内に残る残留物によって電気貫通接続構造の絶縁性能が劣化し、例えば導電性成分の凝結によって貫通接続構造を通る導電体の間、または導電体と真空フランジの間において漏電が発生し得る。更に、真空室に存在する反応性成分に触れることは、導電体と絶縁体との間の接合部を形成する材料の科学的反応又は腐食を招き得、最終的に真空密閉が破壊されることとなる。
【0004】
例えば、CU(InGa)Se2に基づいた薄膜太陽電池(CIGS)は、500℃の基板温度においてCu,In,Ga,及びSeの成分の高真空同時蒸発(High Vacuum co−evaporation)を行うことで製造される。真空室の内部のほとんどは200℃以上の温度に加熱され、全てのSeがすぐに反応してCu(InGa)Se2を形成するのではないため、真空室内には10−6mbar以上のSeの分圧が存在する。従ってSeは実質的に真空室内のすべての表面に接することになる。これらの表面には基板ヒータ及び蒸発源につながっている電源貫通接続構造も含まれる。この場合、Seは貫通接続構造の絶縁体に凝結し得、更には同じ場所に届いた他の成分と化学反応を起こし得、結果として貫通接続構造に導電層を形成し、漏電を発生させ、基板及び/又は蒸発源の誤動作を起こす。電気真空貫通接続構造に届いたSeは、導電体と絶縁体の間の接合部を形成する材料と化学的に反応し得る。これは、真空密閉の腐食及び破壊につながり得る。
【0005】
電気的貫通接続構造の導電体の短絡及び真空密閉の破壊は、漏電によって処理室内の装置の1つ以上が誤動作する場合、又は空気漏れによって真空気圧が上昇し始める場合、製造機器において問題である。そのような問題は、電気的貫通接続構造交換するために高価で時間のかかる製造機器の停止を必要とする。1つの例としては、CIGSのインライン製造装置であり、1つ以上の蒸発源が動作しなくなると薄膜の性質に致命的な影響を及ぼし、又は、電気的貫通接続構造において漏れが生じると望ましい減圧が不可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
明らかに、先行技術には、高温で処理が行われる真空室の壁を通る、耐久性及び信頼性のある電気的貫通接続構造を提供することに関しては欠点が残っている。
【0007】
本発明の目的は先行技術の欠点を克服することである。これは、請求項1に記載された電気的貫通接続構造によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、真空室の壁を通る、耐久性及び信頼性のある電気的接続を形成するための電気的貫通接続構造を提供する。該電気的貫通接続構造は開口端及び閉口端を持つチューブ状部材と、少なくとも1つの導電体とを備える。該閉口端は導電体ごとに1つの貫通孔を備える。各導電体は夫々の貫通孔を通って伸びており、真空密閉接合部によって該閉口端に固定される。該接合部は、該開口端からの視野方向に含まれない(即ち、通路の開口端から接合部まで至る直線経路は存在しない)ように構成される。このような構成では、衝突物及び直熱放射が、接合部に直接当たることが阻止される。したがって、衝突物及び直熱放射は、中間表面に反射しない限り接合部に届くことはできない。
【0009】
チューブ状部材は好ましくは曲がっており、本発明のある実施形態では該チューブ状部材は、真空室に隣接するように構成され開口端を持つ上部と、電気的貫通接続構造の真空密閉接合部によって閉鎖された閉口端を持つ下部とを持つ。該上部と該下部とは互いに所定の角度をなすように構成されており、その角度は該チューブ状部材の開口端から該接合部が見えないように選択されている(これは、チューブ状部材及び真空室の材料が透明でないことを前提としている)。
【0010】
本発明のある実施形態では、衝突物をトラップすること(捕まえること)をより効率的にするために、チューブ状部材のある部分に冷却トラップを構成し得る。
【0011】
各導電体は好ましくは引き伸ばされたシリンダ状であり、剛体である。追加的に、導電体は、角を成す剛体の接続部によって接続される第1導電体と第2導電体とに分かれ得る。角を成す剛体の接続部を用いることによって剛体で丈夫な曲線状の導電体を得ることができる。
【0012】
真空処理室の壁に少なくとも1つの通路を含む、CIGSを製造するインライン製造装置には、少なくとも1つ以上の本発明による電気的貫通接続構造が提供され、該電気的貫通接続構造の接合部は真空室の内部からの視野方向に含まれない。
【0013】
本発明によって、真空室の厳しい環境において改善された耐久性を持つ電気的貫通接続構造を提供することが可能となる。したがって、電気的貫通接続構造の信頼性は改善され、通常修理又は予想外の修理間の時間が長くなる。電気的貫通接続構造は低価格で提供でき、既存の真空処理室を作り直すことを必要としない。又、本発明の電気的貫通接続構造は、高度な減圧機能や所定の減圧を得るためのポンプ時間を妨げない。
【0014】
本発明の実施形態は従属請求項に定義されている。本発明の他の目的、利点、及び新たな特徴は、次に来る発明の詳細な説明を添付の図面及び請求項と共に考慮することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施形態は添付された図面を参照して説明される。
【図1】CIGS処理室の概略断面図である。
【図2】先行技術による電気的貫通接続構造の概略断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるL型電気的貫通接続構造の概略断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による電気的貫通接続構造の概略断面図である。
【図5】本発明の更なる実施形態による、棒状の接続部及び冷却トラップを持つ電気的貫通接続構造の概略断面図である。
【図6a】本発明の更なる実施形態による、二重壁のチューブ状部材を持つ電気的貫通接続構造である。
【図6b】本発明の更なる実施形態による突起、部を備えたチューブ状部材を持つ電気的貫通接続構造である。
【図6c】本発明の更なる実施形態による、複数の屈曲を備えたチューブ状部材を持つ電気的貫通接続構造である。
【図6d】本発明の更なる実施形態による、滑らか曲線状のチューブ状部材を持つ電気的貫通接続構造の概略断面図である。
【図7】本発明による蒸発源の一式の実施形態の概略断面図である。
【図8】本発明による電気的貫通接続構造を少なくとも1つ備える、薄膜太陽電池を製造するインライン製造装置である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
CIGSは一般的にCu,In,Ga,及びSeの成分の高真空同時蒸発によって製造される。そのような処理のための周知インライン製造装置124の一例が図1に示されている。この蒸着システムは、入口128と、出口129と、複数の基板ヒータ141と、銅蒸発源130と、ガリウム蒸発源131と、インジウム蒸発源132とを持つ真空処理室125を備える。更に、セレ二ウム源133及び134は、過剰なセレ二ウムを蒸着領域における全ての成長位置に提供し、セレ二ウム蒸気を蒸着領域に均等に分配する分配するために配置される。各蒸発源には夫々蒸発源ヒータ142が配置される。モリブデン(Mo)層を底面に持つガラス基板140は、CIGS処理室の入口128から出口129へと通り、その間基板140の底面には蒸発源140から蒸発された物質の流れ135が蒸着し、最終的には目的とするCIGS層が形成される。処理室125の内部に位置する他の電気装置の中で、蒸発源ヒータ142及び複数の基板ヒータ141は真空処理室125の外部から電源が提供されなければならない。電源は真空処理室125の外部にある電源から外部導電体103を介して、真空処理室125の壁127にある電気的貫通接続構造100を通り、更に内部導電体105を介して蒸発源ヒータ142及び基板ヒータ141に夫々供給される。
【0017】
これは、図2に示されているような従来の電気的貫通接続構造100の耐久性及び信頼性が不十分である処理の良い一例である。図2は、従来の電気的貫通接続構造100が処理室125の壁の中にある通路118内に配置される従来の構成を示している。真空フランジ126は真空室125の壁127と電気的貫通接続構造100との間に気密シールを提供する。従来の電気的貫通接続構造100は一般的に、真空フランジ126から伸びている直線のチューブ状部材113を備え、壁127に対して実質的に直角を成す。チューブ状部材113は壁通路118に隣接する開口端117を持ち、その反対側119は閉口端である。2つの導電体101は、真空室125の内部から実質的にチューブ状部材と平衡して伸びており、閉口端119の貫通孔111(ここで絶縁体110が導電体101をもう1つの導電体に対して、又導電体101をチューブ状部材113に対して絶縁している)を通り、真空処理室の125の外側にまで伸びている。導電体101と絶縁体110の間に気密の接合部114を提供するために、一般的に導電体101を取り付ける前に金属チューブ112が貫通孔111の壁に結合される。導電体101を挿入した後、導電体101を金属チューブ112にはんだ付け又はろう付けすることによって、気密接合部114が得られる。
【0018】
導電体101は、その一端が内部導電体105に接続され、もう一方の端が別個の外部導電体103に接続された、別個の導電体101であり得、又は導電体101は、内部導電体105及び外部導電体103の少なくとも1つと一体構造を形成する部分であり得る。
【0019】
CIGS層の処理中における基板140の温度は約500℃であり、蒸発源ヒータ142及び蒸発源130,131,132,133,134の夫々からはかなりの量の熱が発生する(例えば、銅蒸発源は1500℃に保たれる)。したがって、真空室125内のほとんどの表面が200℃以上に加熱される。全ての工程において十分な量のSeを提供し、保つために、真空室125の中には10−6mbarを超えるSeの分圧が存在する。全てのSeがすぐに反応し、Cu(InGa)Se2を形成することはないため、Seは真空室125の内部の全ての表面に実質的に接触する。これらの表面には、基板ヒータ141及び蒸発源ヒータ142に至る電源貫通接続構造100が含まれる。このような場合には、衝突するSe120は、貫通接続構造100の絶縁体110に凝結し得、又、同じ場所に届いた他の衝突物120と化学反応を起こし得、貫通接続構造100の絶縁体110に導電性の層を形成し、漏電を引き起こし、それに伴う基板ヒータ141及び/又は蒸発源ヒータ142の誤作動を招き得る。電気的貫通接続構造100の重大領域122に届くSe(図2に点線で示されている)は、導電体101と絶縁体110との間の接合部114を構成する材料と化学的に反応し得る。これは、真空密閉の浸食及び破壊につながり得る。
【0020】
本発明のある実施形態が図3に概略的に示されている。真空室225の壁227にある通路218を通る電気的接続は、電気的貫通接続構造200によって提供される。電気的貫通接続構造は、開口端217と閉口端219とを持つチューブ状部材213と、少なくとも1つの導電体201とを備える。開口端は真空室225の壁を貫通する通路218に配置されるように構成されており、閉口端は各導電体201を通す貫通孔211を含んでおり、各導電体201は夫々の貫通孔211を通って伸びている。閉口端は接合部214によって密閉される。トラップは、接合部214の重大領域222に衝突物220が届くことを防ぐ(トラップを使用しない場合には、接合部214の重大領域222における漏電及び/又は浸食、そしてそれによる真空密閉の破壊の恐れが深刻である)。トラップは、真空室225の内部からの成分220又は熱放射221が、開口部217から接合部214まで直線経路で届かないようにする(例えばL字型のチューブ状部材213を用いるなど)。即ち、接合部214は開口端217からの視野方向に含まれない。接合部214に届くためには、成分220はチューブ状部材の壁の内部表面に反射しなければならない。しかし、内部表面と接触すると、成分は接触した個所にとどまる傾向があり、又は低いエネルギーで反射されるため接合部まで届く成分分子の数はかなり少なくなり、接合部における問題の発生を遅らせることになる。図3に示された電気的貫通接続構造は2つの導電体201及び202を持つように例示されており、これは一般的案実施のひとつである。しかし、電気的貫通接続構造は、用途に応じてこれより少ない又は多い導電体を備え得る。
【0021】
図4に示されているように、本発明のある実施形態は、開口端217と閉口端219とを持つチューブ状部材213を備える電気的貫通接続構造200であって、開口端217は真空室225の壁にある通路218の中に設置されるように構成されており、チューブ状部材213は絶縁体板によって閉ざされている。お互いから離れている2つの導電体201は、真空室225の内部からチューブ状部材213と平衡して伸びており、閉口端219の絶縁体210にある別々の貫通孔211を通って真空室225の外部に伸びている。各貫通孔211は、その中に結合された金属チューブ212を持ち、接合部214は導電体を孔211に通して絶縁体に固定し、真空密閉を提供する。絶縁体210は導電体201をもう1つの導電体及びチューブ状部材213に対して電気的に絶縁させる。トラップは、例えば、2つの曲線状のチューブ状部材213を、お互いに対してこの実施形態のように90°で構成されたチューブ状部材の第1部分213aとチューブ状部材の第2部分213bに分けることで得られ、この構成により衝突物220が重大領域222(即ち、接合部214の絶縁体210)に届くことを防ぐことができる。即ち、重大領域222は、真空室225の高温部からの視野方向に含まれない。したがって、衝突物220は真空室と屈曲又は屈曲周辺との間にトラップされる(捕らわれる)。更に、絶縁体210は処理室の内部からの熱放射に直接さらされない。上記の従来の電気的貫通接続構造100同様、本発明による電気的貫通接続構造200は処理室225の壁227にある通路218の中に配置されるように構成されている。真空フランジ226は、真空室225の壁227と、電気的貫通接続構造200のチューブ状部材213との間を密閉する。
【0022】
薄膜太陽電池(CIGS)の処理中にSeのような衝突物220をトラップし、導電体201が閉口端219を貫通して伸びている重大領域22に衝突物220が届かないようにすることは、上記のような漏電を起こし得る成分の蓄積を防ぐ。更に、真空室225から来る反応性成分によって最終的に真空密閉を破壊する、科学的反応又は接合部214の材料の腐食を防ぐ。衝突物220の視野方向に含まれないことに加え、重大領域222は処理室225の直熱放射221から保護される。腐食を引き起こす化学的反応は、高温によって加速化されるため、この特徴は有利である。更に、重大領域における温度の変化は、電気的貫通接続構造の様々な部品の変形をもたらし、次に重大領域にストレスをかけ得る。これらの熱によるストレスは接合部214の劣化を早め得る。本発明による熱遮へいを用いると、このような問題を避けることができる。衝突物220及び直熱放射221を防ぐトラップを得るためには、上記の実施形態の角度αは、第1チューブ状部材213aと第2チューブ状部材213bとの長さによって、0°から180°の間で変更できる。好ましくは、角度αは90°から135°の間であり、第1及び第2のチューブ状部材は、一般的にチューブの直径の1〜3倍である。真空フランジの直径は、一般的に16,40または63mmである。しかし、本発明によればこれら以外の直径も装置において使用することが可能である。
【0023】
図5に概略的に示された、本発明のある実施形態では、チューブ状部材213は少なくとも1つの冷却トラップ216(即ち、チューブ状部材の一部を冷却する手段)がチューブ状部材213の屈曲に又はその近辺に配置されている。この冷却トラップ216は、衝突物220をトラップする(捕える)ことをより効率的にさせる。また、本発明による電気的貫通接続構造200における、チューブ状部材213による冷却は、主に処理室225から真空フランジ225を介してチューブ状部材213の壁に至る熱伝導による、重大領域222の加熱を防ぐ。図5に示されているように、導電体201は夫々第1及び第2の棒状導電体207、208の形をしている。棒状導電体207及び208は実質的に直線形である。
【0024】
本発明のある実施形態(不図示)では、チューブ状部材213を少なくとも部分的に二重壁構造にし、その中に水または液体窒素などの冷却媒体を持たせることで、チューブ状部材213に冷却トラップ216を提供する。二重壁構造の電気的貫通接続構造200の概略的な断面は図6aに示されている。冷却トラップ216の異なる配置及びデザインも可能であり、例えばチューブ状部材213を横断する冷却トラップ、又は冷却トラップを内部に配置することなどが可能である。
【0025】
導電体201は好ましくは剛体の棒であり、チューブ状部材213の形に従うように少なくとも一つの屈曲を持つ。そのような剛体の導電体201を用いることで、隣接する導電体201及びチューブ状部材213と接触する危険性が最小限になる。柔軟な導電体の場合、漏電を防ぐために導電体は好ましくは引き延ばされるか、複雑な手段で固定される必要がある。屈曲は導電体を曲げることで得られ、又は図5に示されているように2つの直線状導電体207の間に1つの接続部209を用いることで得られる。1つの代案としては、Mo接続部209で接続された2つのMo棒(導電体)207、208を用いることがある。Mo接続部209は、好ましくはMoで作られたブロックであり、開口端217及び閉口端219の方向に夫々向かう2つの、ねじ構造をもつ孔を備える。Mo棒207及び208は夫々、接続部209にねじ込むことができるねじ構造の端を備える。異なる代案としては、ねじ又は他の締め付け手段を用いてMo接続部209の孔に固定される、直線状のMo導電体207及び208を用いることがある。あくまでも例として挙げられたこれらの代案は、丈夫で剛体の導電体201を提供する。他の代案では、真空技術をよく知る当業者が理解するような、ステンレス鋼などの他の導電性材料を備え得る。
【0026】
本発明は、電気的貫通接続構造の耐久性が問題となる真空処理を例として説明されているが、本発明はこの例に限られることなく、他の如何なる真空処理室に適用可能であり、特に高温の処理温度を用いるもの、及び/又は導電性のもの及び/又は反応性のものを用いる場合に適用可能である。
【0027】
ここに説明された電気的貫通接続構造200は、処理温度が高く、真空処理から由来する物質又は真空室に残る残留物が従来の電気的貫通接続構造を劣化させるような真空処理室225に適している。
【0028】
電気的貫通接続構造200は、接合部214がチューブ状部材213の開口端217の視野方向に含まれないような通路をチューブ状部材に形成するために、図3〜5に示されたL型の他にも様々な形にデザインされ得る。図6bには、チューブ状部材213に一体化され、チューブ状部材213の中に湾曲経路を形成する突出部223を持つ直線状のチューブ状部材213の概略断面図が示されている。図6cには、本発明による電気的貫通接続構造200が示されている。チューブ状部材213は、上記実施形態のように鋭利な角度で曲がる必要はない。図6dには、丸まったコーナを持つ90°の屈曲が示されている。チューブ状部材213の前長にわたって、狭窄部分や障害物の持たないデザインの排出が好ましい。更に、チューブ状部材213の直径及び長さは、排出性質に大事である。通常使われているチューブの直径は上記のようである。図3〜5のようなL型デザインでは、垂直部分と水平部分の長さは好ましくは直径の1〜3倍である。導電体の構造も図3及び4に示されたようなデザインで単純化されている。複数の屈曲を用いると、導電体201もチューブ状部材213と同じ数の屈曲を持たなければいけないことを意味する。
【0029】
本発明のある実施形態では、真空室225の内部に配置される電気的貫通接続構造200の部分に蒸発源が一体化されている。これは蒸発源一式を形成し、1つのユニットとして真空室225内に配置できる。そのような構成の1つの例が図7に示されている。この場合の蒸発源は銅源である。しかし、他の蒸発源又は他の装置をこのような形に構成しても良い。
【0030】
本発明のある実施形態では、本発明による電気的貫通接続構造300はインライン製造装置350に用いられる。蒸着システム(図8を参照)は、入口328と、出口329と、複数の基板ヒータ341と、少なくとも1つの銅蒸発源330と、少なくとも1つのガリウム蒸発源331と、少なくとも1つのインジウム蒸発源332とを持つ真空処理室325を備える。更に、蒸着領域の全ての成長位置において過剰なセレニウムを与え、蒸着領域の全域にセレニウム蒸気を均等に配布するために、少なくとも1つのセレニウム源333が配置されている。各蒸発源332は、一緒に配置された蒸発源ヒータ342を持っている。モリブデン層を持つガラス基板340はCIGS処理室の中を通って入口328から出口239に向かって移動し、基板340の底面は蒸発源から蒸発された材料の流れによってコーティングされ、目的とするGIGS層が最終的に形成される。処理室325内部の他の電気装置の中、蒸発源ヒータ342及び基板ヒータ341は真空処理室325の外部から電源を供給されなければならない。電源は、真空処理室125の外部にある電源から外部導電体303を介して、真空処理室325の壁327の中にある電気的貫通接続構造300を通り、更には内部導電体305を介して内部蒸発源ヒータ342及び基板ヒータ341に供給される。本発明による電気的貫通接続構造300は、Cu,In,Ga,及びSeの蒸発源342、及び/又は基板ヒータ341の少なくとも1つに電源を提供するために用いられ得る。図8では、Cu源ヒータ330に電源を供給するために用いられる電気的貫通接続構造300が拡大断面図に示されている。この貫通接続構造のデザインは図5に示されたデザインによるものである。しかし、本発明による如何なる電気的貫通接続構造300を用いても良い。
【0031】
本発明は、現在において最も実質的で好ましいと思われる実施形態に関連付けて説明されているが、本発明はこれらの開示された実施形態に限られるべきではなく、添付の請求項の範囲内で様々な改良及び同等な構造を含むべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空室内の装置において電気的接続を形成するための電気的貫通接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空室内に位置する装置を真空室外に位置する電源に電気的接続を行う際には、真空室の壁を貫通し、1つ以上の導電体を通す気密通路である電気的貫通接続構造が一般的に必要となる。通常、貫通接続構造はセラミックのような絶縁体によって真空室の壁から絶縁されている。そのような電気的貫通接続構造は、真空室の外側から真空室内に設置された装置に電気的接続を成すために一般的に使われる。熱蒸発源、基板ヒータのような真空室内に設置された装置には、一般的に電源を提供する必要があり、及び/又は温度センサ、測定装置などの真空室内に設置された装置から電気信号を読み出す必要がある。
【0003】
蒸着などのような多くの真空処理は大量の熱を発し、真空室内の温度を例えば200℃以上の比較的高温に上げる。長期的は、真空処理から発する成分又は真空室内に残る残留物によって電気貫通接続構造の絶縁性能が劣化し、例えば導電性成分の凝結によって貫通接続構造を通る導電体の間、または導電体と真空フランジの間において漏電が発生し得る。更に、真空室に存在する反応性成分に触れることは、導電体と絶縁体との間の接合部を形成する材料の科学的反応又は腐食を招き得、最終的に真空密閉が破壊されることとなる。
【0004】
例えば、CU(InGa)Se2に基づいた薄膜太陽電池(CIGS)は、500℃の基板温度においてCu,In,Ga,及びSeの成分の高真空同時蒸発(High Vacuum co−evaporation)を行うことで製造される。真空室の内部のほとんどは200℃以上の温度に加熱され、全てのSeがすぐに反応してCu(InGa)Se2を形成するのではないため、真空室内には10−6mbar以上のSeの分圧が存在する。従ってSeは実質的に真空室内のすべての表面に接することになる。これらの表面には基板ヒータ及び蒸発源につながっている電源貫通接続構造も含まれる。この場合、Seは貫通接続構造の絶縁体に凝結し得、更には同じ場所に届いた他の成分と化学反応を起こし得、結果として貫通接続構造に導電層を形成し、漏電を発生させ、基板及び/又は蒸発源の誤動作を起こす。電気真空貫通接続構造に届いたSeは、導電体と絶縁体の間の接合部を形成する材料と化学的に反応し得る。これは、真空密閉の腐食及び破壊につながり得る。
【0005】
電気的貫通接続構造の導電体の短絡及び真空密閉の破壊は、漏電によって処理室内の装置の1つ以上が誤動作する場合、又は空気漏れによって真空気圧が上昇し始める場合、製造機器において問題である。そのような問題は、電気的貫通接続構造交換するために高価で時間のかかる製造機器の停止を必要とする。1つの例としては、CIGSのインライン製造装置であり、1つ以上の蒸発源が動作しなくなると薄膜の性質に致命的な影響を及ぼし、又は、電気的貫通接続構造において漏れが生じると望ましい減圧が不可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
明らかに、先行技術には、高温で処理が行われる真空室の壁を通る、耐久性及び信頼性のある電気的貫通接続構造を提供することに関しては欠点が残っている。
【0007】
本発明の目的は先行技術の欠点を克服することである。これは、請求項1に記載された電気的貫通接続構造によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、真空室の壁を通る、耐久性及び信頼性のある電気的接続を形成するための電気的貫通接続構造を提供する。該電気的貫通接続構造は開口端及び閉口端を持つチューブ状部材と、少なくとも1つの導電体とを備える。該閉口端は導電体ごとに1つの貫通孔を備える。各導電体は夫々の貫通孔を通って伸びており、真空密閉接合部によって該閉口端に固定される。該接合部は、該開口端からの視野方向に含まれない(即ち、通路の開口端から接合部まで至る直線経路は存在しない)ように構成される。このような構成では、衝突物及び直熱放射が、接合部に直接当たることが阻止される。したがって、衝突物及び直熱放射は、中間表面に反射しない限り接合部に届くことはできない。
【0009】
チューブ状部材は好ましくは曲がっており、本発明のある実施形態では該チューブ状部材は、真空室に隣接するように構成され開口端を持つ上部と、電気的貫通接続構造の真空密閉接合部によって閉鎖された閉口端を持つ下部とを持つ。該上部と該下部とは互いに所定の角度をなすように構成されており、その角度は該チューブ状部材の開口端から該接合部が見えないように選択されている(これは、チューブ状部材及び真空室の材料が透明でないことを前提としている)。
【0010】
本発明のある実施形態では、衝突物をトラップすること(捕まえること)をより効率的にするために、チューブ状部材のある部分に冷却トラップを構成し得る。
【0011】
各導電体は好ましくは引き伸ばされたシリンダ状であり、剛体である。追加的に、導電体は、角を成す剛体の接続部によって接続される第1導電体と第2導電体とに分かれ得る。角を成す剛体の接続部を用いることによって剛体で丈夫な曲線状の導電体を得ることができる。
【0012】
真空処理室の壁に少なくとも1つの通路を含む、CIGSを製造するインライン製造装置には、少なくとも1つ以上の本発明による電気的貫通接続構造が提供され、該電気的貫通接続構造の接合部は真空室の内部からの視野方向に含まれない。
【0013】
本発明によって、真空室の厳しい環境において改善された耐久性を持つ電気的貫通接続構造を提供することが可能となる。したがって、電気的貫通接続構造の信頼性は改善され、通常修理又は予想外の修理間の時間が長くなる。電気的貫通接続構造は低価格で提供でき、既存の真空処理室を作り直すことを必要としない。又、本発明の電気的貫通接続構造は、高度な減圧機能や所定の減圧を得るためのポンプ時間を妨げない。
【0014】
本発明の実施形態は従属請求項に定義されている。本発明の他の目的、利点、及び新たな特徴は、次に来る発明の詳細な説明を添付の図面及び請求項と共に考慮することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の実施形態は添付された図面を参照して説明される。
【図1】CIGS処理室の概略断面図である。
【図2】先行技術による電気的貫通接続構造の概略断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるL型電気的貫通接続構造の概略断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による電気的貫通接続構造の概略断面図である。
【図5】本発明の更なる実施形態による、棒状の接続部及び冷却トラップを持つ電気的貫通接続構造の概略断面図である。
【図6a】本発明の更なる実施形態による、二重壁のチューブ状部材を持つ電気的貫通接続構造である。
【図6b】本発明の更なる実施形態による突起、部を備えたチューブ状部材を持つ電気的貫通接続構造である。
【図6c】本発明の更なる実施形態による、複数の屈曲を備えたチューブ状部材を持つ電気的貫通接続構造である。
【図6d】本発明の更なる実施形態による、滑らか曲線状のチューブ状部材を持つ電気的貫通接続構造の概略断面図である。
【図7】本発明による蒸発源の一式の実施形態の概略断面図である。
【図8】本発明による電気的貫通接続構造を少なくとも1つ備える、薄膜太陽電池を製造するインライン製造装置である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
CIGSは一般的にCu,In,Ga,及びSeの成分の高真空同時蒸発によって製造される。そのような処理のための周知インライン製造装置124の一例が図1に示されている。この蒸着システムは、入口128と、出口129と、複数の基板ヒータ141と、銅蒸発源130と、ガリウム蒸発源131と、インジウム蒸発源132とを持つ真空処理室125を備える。更に、セレ二ウム源133及び134は、過剰なセレ二ウムを蒸着領域における全ての成長位置に提供し、セレ二ウム蒸気を蒸着領域に均等に分配する分配するために配置される。各蒸発源には夫々蒸発源ヒータ142が配置される。モリブデン(Mo)層を底面に持つガラス基板140は、CIGS処理室の入口128から出口129へと通り、その間基板140の底面には蒸発源140から蒸発された物質の流れ135が蒸着し、最終的には目的とするCIGS層が形成される。処理室125の内部に位置する他の電気装置の中で、蒸発源ヒータ142及び複数の基板ヒータ141は真空処理室125の外部から電源が提供されなければならない。電源は真空処理室125の外部にある電源から外部導電体103を介して、真空処理室125の壁127にある電気的貫通接続構造100を通り、更に内部導電体105を介して蒸発源ヒータ142及び基板ヒータ141に夫々供給される。
【0017】
これは、図2に示されているような従来の電気的貫通接続構造100の耐久性及び信頼性が不十分である処理の良い一例である。図2は、従来の電気的貫通接続構造100が処理室125の壁の中にある通路118内に配置される従来の構成を示している。真空フランジ126は真空室125の壁127と電気的貫通接続構造100との間に気密シールを提供する。従来の電気的貫通接続構造100は一般的に、真空フランジ126から伸びている直線のチューブ状部材113を備え、壁127に対して実質的に直角を成す。チューブ状部材113は壁通路118に隣接する開口端117を持ち、その反対側119は閉口端である。2つの導電体101は、真空室125の内部から実質的にチューブ状部材と平衡して伸びており、閉口端119の貫通孔111(ここで絶縁体110が導電体101をもう1つの導電体に対して、又導電体101をチューブ状部材113に対して絶縁している)を通り、真空処理室の125の外側にまで伸びている。導電体101と絶縁体110の間に気密の接合部114を提供するために、一般的に導電体101を取り付ける前に金属チューブ112が貫通孔111の壁に結合される。導電体101を挿入した後、導電体101を金属チューブ112にはんだ付け又はろう付けすることによって、気密接合部114が得られる。
【0018】
導電体101は、その一端が内部導電体105に接続され、もう一方の端が別個の外部導電体103に接続された、別個の導電体101であり得、又は導電体101は、内部導電体105及び外部導電体103の少なくとも1つと一体構造を形成する部分であり得る。
【0019】
CIGS層の処理中における基板140の温度は約500℃であり、蒸発源ヒータ142及び蒸発源130,131,132,133,134の夫々からはかなりの量の熱が発生する(例えば、銅蒸発源は1500℃に保たれる)。したがって、真空室125内のほとんどの表面が200℃以上に加熱される。全ての工程において十分な量のSeを提供し、保つために、真空室125の中には10−6mbarを超えるSeの分圧が存在する。全てのSeがすぐに反応し、Cu(InGa)Se2を形成することはないため、Seは真空室125の内部の全ての表面に実質的に接触する。これらの表面には、基板ヒータ141及び蒸発源ヒータ142に至る電源貫通接続構造100が含まれる。このような場合には、衝突するSe120は、貫通接続構造100の絶縁体110に凝結し得、又、同じ場所に届いた他の衝突物120と化学反応を起こし得、貫通接続構造100の絶縁体110に導電性の層を形成し、漏電を引き起こし、それに伴う基板ヒータ141及び/又は蒸発源ヒータ142の誤作動を招き得る。電気的貫通接続構造100の重大領域122に届くSe(図2に点線で示されている)は、導電体101と絶縁体110との間の接合部114を構成する材料と化学的に反応し得る。これは、真空密閉の浸食及び破壊につながり得る。
【0020】
本発明のある実施形態が図3に概略的に示されている。真空室225の壁227にある通路218を通る電気的接続は、電気的貫通接続構造200によって提供される。電気的貫通接続構造は、開口端217と閉口端219とを持つチューブ状部材213と、少なくとも1つの導電体201とを備える。開口端は真空室225の壁を貫通する通路218に配置されるように構成されており、閉口端は各導電体201を通す貫通孔211を含んでおり、各導電体201は夫々の貫通孔211を通って伸びている。閉口端は接合部214によって密閉される。トラップは、接合部214の重大領域222に衝突物220が届くことを防ぐ(トラップを使用しない場合には、接合部214の重大領域222における漏電及び/又は浸食、そしてそれによる真空密閉の破壊の恐れが深刻である)。トラップは、真空室225の内部からの成分220又は熱放射221が、開口部217から接合部214まで直線経路で届かないようにする(例えばL字型のチューブ状部材213を用いるなど)。即ち、接合部214は開口端217からの視野方向に含まれない。接合部214に届くためには、成分220はチューブ状部材の壁の内部表面に反射しなければならない。しかし、内部表面と接触すると、成分は接触した個所にとどまる傾向があり、又は低いエネルギーで反射されるため接合部まで届く成分分子の数はかなり少なくなり、接合部における問題の発生を遅らせることになる。図3に示された電気的貫通接続構造は2つの導電体201及び202を持つように例示されており、これは一般的案実施のひとつである。しかし、電気的貫通接続構造は、用途に応じてこれより少ない又は多い導電体を備え得る。
【0021】
図4に示されているように、本発明のある実施形態は、開口端217と閉口端219とを持つチューブ状部材213を備える電気的貫通接続構造200であって、開口端217は真空室225の壁にある通路218の中に設置されるように構成されており、チューブ状部材213は絶縁体板によって閉ざされている。お互いから離れている2つの導電体201は、真空室225の内部からチューブ状部材213と平衡して伸びており、閉口端219の絶縁体210にある別々の貫通孔211を通って真空室225の外部に伸びている。各貫通孔211は、その中に結合された金属チューブ212を持ち、接合部214は導電体を孔211に通して絶縁体に固定し、真空密閉を提供する。絶縁体210は導電体201をもう1つの導電体及びチューブ状部材213に対して電気的に絶縁させる。トラップは、例えば、2つの曲線状のチューブ状部材213を、お互いに対してこの実施形態のように90°で構成されたチューブ状部材の第1部分213aとチューブ状部材の第2部分213bに分けることで得られ、この構成により衝突物220が重大領域222(即ち、接合部214の絶縁体210)に届くことを防ぐことができる。即ち、重大領域222は、真空室225の高温部からの視野方向に含まれない。したがって、衝突物220は真空室と屈曲又は屈曲周辺との間にトラップされる(捕らわれる)。更に、絶縁体210は処理室の内部からの熱放射に直接さらされない。上記の従来の電気的貫通接続構造100同様、本発明による電気的貫通接続構造200は処理室225の壁227にある通路218の中に配置されるように構成されている。真空フランジ226は、真空室225の壁227と、電気的貫通接続構造200のチューブ状部材213との間を密閉する。
【0022】
薄膜太陽電池(CIGS)の処理中にSeのような衝突物220をトラップし、導電体201が閉口端219を貫通して伸びている重大領域22に衝突物220が届かないようにすることは、上記のような漏電を起こし得る成分の蓄積を防ぐ。更に、真空室225から来る反応性成分によって最終的に真空密閉を破壊する、科学的反応又は接合部214の材料の腐食を防ぐ。衝突物220の視野方向に含まれないことに加え、重大領域222は処理室225の直熱放射221から保護される。腐食を引き起こす化学的反応は、高温によって加速化されるため、この特徴は有利である。更に、重大領域における温度の変化は、電気的貫通接続構造の様々な部品の変形をもたらし、次に重大領域にストレスをかけ得る。これらの熱によるストレスは接合部214の劣化を早め得る。本発明による熱遮へいを用いると、このような問題を避けることができる。衝突物220及び直熱放射221を防ぐトラップを得るためには、上記の実施形態の角度αは、第1チューブ状部材213aと第2チューブ状部材213bとの長さによって、0°から180°の間で変更できる。好ましくは、角度αは90°から135°の間であり、第1及び第2のチューブ状部材は、一般的にチューブの直径の1〜3倍である。真空フランジの直径は、一般的に16,40または63mmである。しかし、本発明によればこれら以外の直径も装置において使用することが可能である。
【0023】
図5に概略的に示された、本発明のある実施形態では、チューブ状部材213は少なくとも1つの冷却トラップ216(即ち、チューブ状部材の一部を冷却する手段)がチューブ状部材213の屈曲に又はその近辺に配置されている。この冷却トラップ216は、衝突物220をトラップする(捕える)ことをより効率的にさせる。また、本発明による電気的貫通接続構造200における、チューブ状部材213による冷却は、主に処理室225から真空フランジ225を介してチューブ状部材213の壁に至る熱伝導による、重大領域222の加熱を防ぐ。図5に示されているように、導電体201は夫々第1及び第2の棒状導電体207、208の形をしている。棒状導電体207及び208は実質的に直線形である。
【0024】
本発明のある実施形態(不図示)では、チューブ状部材213を少なくとも部分的に二重壁構造にし、その中に水または液体窒素などの冷却媒体を持たせることで、チューブ状部材213に冷却トラップ216を提供する。二重壁構造の電気的貫通接続構造200の概略的な断面は図6aに示されている。冷却トラップ216の異なる配置及びデザインも可能であり、例えばチューブ状部材213を横断する冷却トラップ、又は冷却トラップを内部に配置することなどが可能である。
【0025】
導電体201は好ましくは剛体の棒であり、チューブ状部材213の形に従うように少なくとも一つの屈曲を持つ。そのような剛体の導電体201を用いることで、隣接する導電体201及びチューブ状部材213と接触する危険性が最小限になる。柔軟な導電体の場合、漏電を防ぐために導電体は好ましくは引き延ばされるか、複雑な手段で固定される必要がある。屈曲は導電体を曲げることで得られ、又は図5に示されているように2つの直線状導電体207の間に1つの接続部209を用いることで得られる。1つの代案としては、Mo接続部209で接続された2つのMo棒(導電体)207、208を用いることがある。Mo接続部209は、好ましくはMoで作られたブロックであり、開口端217及び閉口端219の方向に夫々向かう2つの、ねじ構造をもつ孔を備える。Mo棒207及び208は夫々、接続部209にねじ込むことができるねじ構造の端を備える。異なる代案としては、ねじ又は他の締め付け手段を用いてMo接続部209の孔に固定される、直線状のMo導電体207及び208を用いることがある。あくまでも例として挙げられたこれらの代案は、丈夫で剛体の導電体201を提供する。他の代案では、真空技術をよく知る当業者が理解するような、ステンレス鋼などの他の導電性材料を備え得る。
【0026】
本発明は、電気的貫通接続構造の耐久性が問題となる真空処理を例として説明されているが、本発明はこの例に限られることなく、他の如何なる真空処理室に適用可能であり、特に高温の処理温度を用いるもの、及び/又は導電性のもの及び/又は反応性のものを用いる場合に適用可能である。
【0027】
ここに説明された電気的貫通接続構造200は、処理温度が高く、真空処理から由来する物質又は真空室に残る残留物が従来の電気的貫通接続構造を劣化させるような真空処理室225に適している。
【0028】
電気的貫通接続構造200は、接合部214がチューブ状部材213の開口端217の視野方向に含まれないような通路をチューブ状部材に形成するために、図3〜5に示されたL型の他にも様々な形にデザインされ得る。図6bには、チューブ状部材213に一体化され、チューブ状部材213の中に湾曲経路を形成する突出部223を持つ直線状のチューブ状部材213の概略断面図が示されている。図6cには、本発明による電気的貫通接続構造200が示されている。チューブ状部材213は、上記実施形態のように鋭利な角度で曲がる必要はない。図6dには、丸まったコーナを持つ90°の屈曲が示されている。チューブ状部材213の前長にわたって、狭窄部分や障害物の持たないデザインの排出が好ましい。更に、チューブ状部材213の直径及び長さは、排出性質に大事である。通常使われているチューブの直径は上記のようである。図3〜5のようなL型デザインでは、垂直部分と水平部分の長さは好ましくは直径の1〜3倍である。導電体の構造も図3及び4に示されたようなデザインで単純化されている。複数の屈曲を用いると、導電体201もチューブ状部材213と同じ数の屈曲を持たなければいけないことを意味する。
【0029】
本発明のある実施形態では、真空室225の内部に配置される電気的貫通接続構造200の部分に蒸発源が一体化されている。これは蒸発源一式を形成し、1つのユニットとして真空室225内に配置できる。そのような構成の1つの例が図7に示されている。この場合の蒸発源は銅源である。しかし、他の蒸発源又は他の装置をこのような形に構成しても良い。
【0030】
本発明のある実施形態では、本発明による電気的貫通接続構造300はインライン製造装置350に用いられる。蒸着システム(図8を参照)は、入口328と、出口329と、複数の基板ヒータ341と、少なくとも1つの銅蒸発源330と、少なくとも1つのガリウム蒸発源331と、少なくとも1つのインジウム蒸発源332とを持つ真空処理室325を備える。更に、蒸着領域の全ての成長位置において過剰なセレニウムを与え、蒸着領域の全域にセレニウム蒸気を均等に配布するために、少なくとも1つのセレニウム源333が配置されている。各蒸発源332は、一緒に配置された蒸発源ヒータ342を持っている。モリブデン層を持つガラス基板340はCIGS処理室の中を通って入口328から出口239に向かって移動し、基板340の底面は蒸発源から蒸発された材料の流れによってコーティングされ、目的とするGIGS層が最終的に形成される。処理室325内部の他の電気装置の中、蒸発源ヒータ342及び基板ヒータ341は真空処理室325の外部から電源を供給されなければならない。電源は、真空処理室125の外部にある電源から外部導電体303を介して、真空処理室325の壁327の中にある電気的貫通接続構造300を通り、更には内部導電体305を介して内部蒸発源ヒータ342及び基板ヒータ341に供給される。本発明による電気的貫通接続構造300は、Cu,In,Ga,及びSeの蒸発源342、及び/又は基板ヒータ341の少なくとも1つに電源を提供するために用いられ得る。図8では、Cu源ヒータ330に電源を供給するために用いられる電気的貫通接続構造300が拡大断面図に示されている。この貫通接続構造のデザインは図5に示されたデザインによるものである。しかし、本発明による如何なる電気的貫通接続構造300を用いても良い。
【0031】
本発明は、現在において最も実質的で好ましいと思われる実施形態に関連付けて説明されているが、本発明はこれらの開示された実施形態に限られるべきではなく、添付の請求項の範囲内で様々な改良及び同等な構造を含むべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空室(225)の壁(227)にある通路(218)を通って電気的接続が可能な電気的貫通接続構造(200)であって、
開口端(217)と閉口端(219)とを持つチューブ状部材(213)と、
少なくとも1つの導電体(201)と、
前記導電体(201)ごとに前記閉口端に1つずつ備えられ、該導電体201を通す貫通孔(211)と、
前記導電体(201)を含む前記貫通孔(211)を密閉する接合部(214)と、を備え、
前記接合部(214)は、前記開口端(217)からの視野方向に含まれないことを特徴とする、電気的貫通接続構造(200)。
【請求項2】
前記チューブ状部材(213)は、前記開口端(217)を含む上部(213a)と、前記閉口端(219)を含む下部(213b)とを有しており、
前記上部(213a)と前記下部(213b)とは互いにαの角度をなすように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項3】
前記αの角度は90°から135°であることを特徴とする、請求項2に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項4】
前記上部及び前記下部は同じ直径を持っており、前記上部(213a)及び前記下部(213b)の長さは、前記直径の1〜3倍であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項5】
前記電気的貫通接続構造(200)は少なくとも1つの冷却トラップ(216)を備えることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項6】
前記冷却トラップ(216)は前記チューブ状部材(213)の外部に構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項7】
前記冷却トラップ(216)は少なくとも部分的に前記チューブ状部材(213)の内部に構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項8】
前記チューブ状部材(213)は二重壁構造になっており、冷却媒体によって満たされるように構成されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項9】
導電体(201)は、互いに接続された、第1の棒状導電体(207)と第2の棒状導電体(208)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項10】
前記第1の棒状導電体(207)と前記第2の棒状導電体(208)とは、コネクタ(209)によって接続されていることを特徴とする、請求項9に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項11】
前記第1の棒状導電体(207)、前記第2の棒状導電体(208)、及び前記コネクタ(209)はネジ構造を含み、前記ネジ構造は、前記コネクタ(209)のネジ穴に前記導電体(207、208)を接合させるために使われることを特徴とする、請求項10に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項12】
前記導電体(201)はモリブデンで作られていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項13】
前記コネクタ(209)はモリブデンで作られていることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項14】
前記チューブ状部材(213)の前記開口端(217)に、蒸発源又は基板ヒータのような装置が一体化されており、前記真空室(225)の壁にある通路(218)に配置される装置の一式を構成することを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項15】
真空処理室(325)の壁(327)に少なくとも1つの通路318を含む、薄膜太陽電池を製造するためのインライン製造装置(350)であって、前記通路(318)に請求項1乃至14のいずれか1項に記載の電気的貫通接続構造が構成されていることを特徴とする、製造装置(350)。
【請求項1】
真空室(225)の壁(227)にある通路(218)を通って電気的接続が可能な電気的貫通接続構造(200)であって、
開口端(217)と閉口端(219)とを持つチューブ状部材(213)と、
少なくとも1つの導電体(201)と、
前記導電体(201)ごとに前記閉口端に1つずつ備えられ、該導電体201を通す貫通孔(211)と、
前記導電体(201)を含む前記貫通孔(211)を密閉する接合部(214)と、を備え、
前記接合部(214)は、前記開口端(217)からの視野方向に含まれないことを特徴とする、電気的貫通接続構造(200)。
【請求項2】
前記チューブ状部材(213)は、前記開口端(217)を含む上部(213a)と、前記閉口端(219)を含む下部(213b)とを有しており、
前記上部(213a)と前記下部(213b)とは互いにαの角度をなすように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項3】
前記αの角度は90°から135°であることを特徴とする、請求項2に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項4】
前記上部及び前記下部は同じ直径を持っており、前記上部(213a)及び前記下部(213b)の長さは、前記直径の1〜3倍であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項5】
前記電気的貫通接続構造(200)は少なくとも1つの冷却トラップ(216)を備えることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項6】
前記冷却トラップ(216)は前記チューブ状部材(213)の外部に構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項7】
前記冷却トラップ(216)は少なくとも部分的に前記チューブ状部材(213)の内部に構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項8】
前記チューブ状部材(213)は二重壁構造になっており、冷却媒体によって満たされるように構成されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項9】
導電体(201)は、互いに接続された、第1の棒状導電体(207)と第2の棒状導電体(208)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項10】
前記第1の棒状導電体(207)と前記第2の棒状導電体(208)とは、コネクタ(209)によって接続されていることを特徴とする、請求項9に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項11】
前記第1の棒状導電体(207)、前記第2の棒状導電体(208)、及び前記コネクタ(209)はネジ構造を含み、前記ネジ構造は、前記コネクタ(209)のネジ穴に前記導電体(207、208)を接合させるために使われることを特徴とする、請求項10に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項12】
前記導電体(201)はモリブデンで作られていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項13】
前記コネクタ(209)はモリブデンで作られていることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項14】
前記チューブ状部材(213)の前記開口端(217)に、蒸発源又は基板ヒータのような装置が一体化されており、前記真空室(225)の壁にある通路(218)に配置される装置の一式を構成することを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電気的貫通接続構造(200)。
【請求項15】
真空処理室(325)の壁(327)に少なくとも1つの通路318を含む、薄膜太陽電池を製造するためのインライン製造装置(350)であって、前記通路(318)に請求項1乃至14のいずれか1項に記載の電気的貫通接続構造が構成されていることを特徴とする、製造装置(350)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2010−529830(P2010−529830A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512121(P2010−512121)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050674
【国際公開番号】WO2008/153485
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(509340252)ソリブロ リサーチ エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】SOLIBRO RESEARCH AB
【住所又は居所原語表記】Vallv. 5, S−756 51 Uppsala, Sweden
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050674
【国際公開番号】WO2008/153485
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(509340252)ソリブロ リサーチ エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】SOLIBRO RESEARCH AB
【住所又は居所原語表記】Vallv. 5, S−756 51 Uppsala, Sweden
【Fターム(参考)】
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